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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない B27B
管理番号 1085600
審判番号 無効2002-35415  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-19 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-02 
確定日 2003-06-30 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3161225号発明「丸のこ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許第3161225号に係る発明(以下「本件特許発明」という。)についての出願は、平成6年6月10日に出願されたものであって、平成13年2月23日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。

2 これに対して、審判請求人株式会社マキタは、平成14年9月30日付けで、本件特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めて、無効審判を請求した。
被請求人は、平成15年3月4日付の無効理由通知に対する応答期間内である平成15年4月4日に訂正請求書を提出して訂正(以下「本件訂正」という。)を求めた。

第2 本件訂正について
1 訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を訂正前の、
「電動機を内蔵した本体と、電動機により駆動されるのこ刃と、本体下方に位置し、被削材上を摺動する長方形状のベースとを備えた丸のこであって、
前記のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように、本体とベースを連結したことを特徴とする丸のこ。」から、
「電動機を内蔵した本体と、電動機により駆動されるのこ刃と、本体下方に位置し、被削材上を摺動する長方形状のベースとを備え、ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され、一方の連結部はのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整するためのべベルプレートをベースに連結して形成され、ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整可能な丸のこであって、
のこ刃とべース側面との平行度が調整できるように、ベべルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けたことを特徴とする丸のこ。」と訂正。

(2)訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2及び3を削除。

(3)訂正事項c
発明の詳細な説明の段落【0008】の記載を訂正前の、
「【課題を解決するための手段】上記目的は、丸のこ本体とべースの連結において、一方をのこ刃軸方向に回動可能な中心とし、もう一方に中心側の回動を固定する締結部を設け、さらに、回動を固定する締結部側にボルトの回転を用いた微調整機構を設けることにより達成される。」から、
「【課題を解決するための手段】上記目的は、ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され、一方の連結部はのこ刃とべースとの傾斜角度を調整するためのべベルプレートをベースに連結して形成され、べベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とべースとの傾斜角度を調整可能な丸のこであって、のこ刃とべース側面との平行度が調整できるように、べベルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けることにより達成される。」と訂正。

(4)訂正事項d
発明の詳細な説明の段落【0009】の記載を訂正前の、
「【作用】上記のように構成された丸のこは、のこ刃とべースの関係を中心側の連結部を支点として回動できるため、のこ刃とべース側面の平行度や、ベースに取り付けた直線ガイド案内部との平行度を調整することができる。また、回動を固定する締結部側に微調整機構を設けたため、平行度を微調整することができる。」から、
「【作用】上記のように構成された丸のこは、一方の連結部に設けられたべベルプレートをベース面に沿って移動させることによって、のこ刃とベースの関係を他方の連結部を支点として回動できるため、のこ刃とべース側面の平行度や、ベースに取り付けた直線ガイド案内部との平行度を調整することができる。」と訂正。

(5)訂正事項e
発明の詳細な説明の段落【0015】の記載を訂正前の、
「【発明の効果】本発明によれば、丸のこ本体とべースの連結部において、一方をのこ刃軸方向に回動可能な中心とし、もう一方に中心側の回動を固定する締結部を設けたので、のこ刃とべース側面の平行度やベースに取り付けた直線ガイド案内面との平行度が調整でき、ガイドを使用した切断において、ガイド通りの切断ができる。また、前記回動に沿い固定できる締結部側に、ボルトの回転を用いた微調整機構を設けたので、のこ刃とべース側面の平行度の調整が、精度よく簡単にできる。」から、
「【発明の効果】本発明によれば、一方の連結部に設けられたべベルプレートをベース面に沿って移動させることによって、のこ刃とべースの関係を他方の連結部を支点として回動できるため、のこ刃とべース側面の平行度やベースに取り付けた直線ガイド案内面との平行度が調整でき、ガイドを使用した切断において、ガイド通りの切断ができる。」と訂正。

2 訂正の目的の適否
(1)訂正事項a
上記訂正事項aは、
「本体とベースを連結した」を「ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され」と限定し、
「のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように」を「のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように、ベベルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けた」と限定し、
また、「一方の連結部はのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整するためのべベルプレートをベースに連結して形成され、ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整可能な」という構成を直列的に付加したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)訂正事項b
上記訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。

(3)訂正事項c〜e
上記訂正事項c〜eは、いずれも、上記訂正された特許請求の範囲に整合させるため、発明の詳細な説明の記載を訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

3 新規事項の有無及び実質的な拡張・変更の存否
(1)訂正事項a
上記訂正事項aにおける、「ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され」という構成は、願書に添付した図面の記載から明らかに認定できるから、新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
また、「のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように、ベベルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けた」という構成は、明細書の段落【0013】の「図3に示すように、ベース2の前方壁に長穴13を2個所設けており、該長穴13を介して、ボルト14によりべベルプレート15が固定される。」及び段落【0014】の「図4は図2のD-D線断面図である。…ボルト22のネジ部は前記べベルプレート15とネジ結合し、ボルト22を左右に回すことにより、のこ刃とべース側面の平行度の調整を微調整することができる。」という記載並びに第2乃至4図から直接的かつ一義的に導き出せる事項であり、願書に添付した明細書又は図面に記載されていたものと認められる。
そして、「一方の連結部はのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整するためのべベルプレートをベースに連結して形成され、ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整可能な」という構成は、明細書の段落【0011】乃至【0012】の「【0011】図1に示すように、ベース2にプレート9がのこ刃4軸方向に回動可能なようにリベット10で連結され、該プレート9にリンク11がベース2の傾斜が可能なようにリベット12で連結されている。
【0012】前記リンク11には中央に溝部が設けられており、溝部の範囲で丸のこ本体1を固定することにより、ベース面からののこ刃4の突出量を設定することができる。」
及び段落【0013】の「べベルプレート15はベース2が傾斜可能なように、ヒンジ16とリベット17により連結され、ヒンジ16はベース2が図1の2点鎖線のように回動できるよう丸のこ本体1とロールピン18で連結されている。丸のこ本体1と連結されたヒンジ16を、前記べベルプレート15の溝部19の範囲で固定することにより、のこ刃4とベース2面の傾斜を設定することができる。」という記載並びに第1乃至3図から直接的かつ一義的に導き出せる事項であり、願書に添付した明細書又は図面に記載されていたものと認められる。
よって、上記限定及び上記構成を直列的に付加した点は、新規事項の追加には該当しない。また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(2)訂正事項b
上記訂正事項bは、請求項の削除であり、新規事項の追加には該当せず、また、明らかに実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

(3)訂正事項c〜e
上記訂正事項c〜eは、いずれも、上記訂正事項aによって訂正された特許請求の範囲に、発明の詳細な説明の記載を整合させる訂正であり、いずれも、新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。

4 むすび
したがって、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書並びに同条第5項で準用する第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4 無効の理由について
1 請求人の主張
請求人は、証拠として甲第1号証(米国特許第3242953号明細書)及び甲第2号証(実公昭62-34725号公報)、甲第3号証(実公昭57-34010号公報)、甲第4号証(実公平2-37523号公報)、甲第5号証(米国特許第2986178号明細書)、甲第6号証(米国特許第4982501号明細書)を提出し、本件特許発明の特許は、特許法第29条第1項又は同法29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件特許発明は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきであると主張している。

2 無効の理由
当審における、平成15年3月4日付けの無効の理由は、次の通り。
「請求項1ないし3にかかる発明は、審判請求書に提示された甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。」
したがって、本件特許発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、無効とすべきものである。

第5 本件特許発明
本件特許発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「電動機を内蔵した本体と、電動機により駆動されるのこ刃と、本体下方に位置し、被削材上を摺動する長方形状のベースとを備え、ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され、一方の連結部はのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整するためのべベルプレートをベースに連結して形成され、ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とべ-スとの傾斜角度を調整可能な丸のこであって、
のこ刃とべース側面との平行度が調整できるように、ベべルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けたことを特徴とする丸のこ。」。

第6 甲号証
(1)甲第1号証には、次の記載がある。
「本発明は、携帯電動丸鋸のためのシュープレート整列手段に関し、詳しくは、のこ刃の回転面をシュープレートの縦方向側縁と整列させるための手段における改良に関する。」(翻訳文第1頁第3〜5行)
「球状のナックル43は(アームメンバ38およびブラケットリテーナ46との組み合わせにおいて)、ハウジング17を、当該ハウジング17の主たる固定手段と対向する側においてシュープレート11に回転可能に取り付ける付随的な手段を構成する。この回動可能な付随的な支持は、シュープレート11に対するハウジング17の二つの軸周りの回動を生じさせる。一つは、のこ刃の回転軸CDに対し実質的に平行な軸ABであり、もう一つは、軸CDに実質的に直交する軸EFである。上記第1の回動軸は切り込み深さの調整を容易とし、他方の回動軸は傾斜切りを容易にする。調整メンバ42の球状のナックル43は、図5に示すように、ねじ回し51の刃部を受承するためのねじ回し(ドライバ)用切欠を有する。調整メンバ42はリテーナ46に回転可能に支持されるものの、シュープレート11に対する軸方向変位に対して保持されている。調整メンバ42が一の方向、あるいは他の方向に回転されると、そのネジ部41は、ハウジング17に取り付けられたアームメンバ38の雌ネジ状の一体状後部39に対して進退する。その効果として、ハウジング構造17は、シュープレート11への取り付け手段回りに僅かに移動または偏向する。モータはハウジング構造17の構成部材であるので、モータおよびのこ刃の回転軸CDがシュープレート11に対して変位する。このため、のこ刃20の回転面、より詳しくは、のこ刃20の内側平坦面は、図4に示すように、シュープレート11の縦方向側縁14と整列されることとなる。のこ刃の整列状態はロックナット52によって保持される。図2に示すようにユニットがボードあるいはテーブルT上に通常のアップライト状に支持されつつ整列が効果を奏する。かかる整列は、シュープレート11の側縁(あるいは縁部)14をボードの縁に合致するように沿わせ、ユニット上で見下ろしながら、のこ刃20が側縁14と整列するように調整メンバ42の調整を行うことで実現される。しかしながら所望の場合には、のこ刃の内側平坦面がボードの側縁と面一とされ、シュープレート11の縦方向側縁14の位置と目視で比較しながら整列作業、特に、ボードあるいはテーブルの対応側縁に対する平行度調整作業を行っても良い。しかしながら、本発明の教示に従い他の比較を採用してもよい。」(翻訳文第4頁第3行〜同下から5行)
これらの記載事項を図面を参酌しながら、本件特許発明に照らして整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「電動機を内蔵した本体と、電動機により駆動されるのこ刃と、本体下方に位置し、被削材上を摺動する長方形状のベースとを備え、ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され、連結部はのこ刃とベースとの傾斜角度を調整可能にベースに連結して形成され、本体とベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切り込み深さを調整可能で、連結部の一方は、本体にベースを回動可能に取り付ける球状のナックルで構成され、球状のナックルと本体の位置を調整することにより、のこ刃とベース側面との平行度が調整可能な丸のこ」。

(2)甲第2号証乃至甲第4号証には、丸のこにおいて、ベースと本体との回動支点をベースの前方側連結部に配するとともに、切り込み深さの調整機構がベースの後方側連結部に配される構成が記載されている。

(3)甲第5号証及び甲第6号証には、丸のこにおいて、のこ刃とベース側面との平行度を調整するという技術的思想が記載されている。

第7 対比・判断
本件特許発明と甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明とを比較すると、前者は、「ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とベースとの傾斜角度を調整可能」及び「のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように、ベベルプレートを他方の連結部を支点とするとともに、ベース面に沿って移動可能にかつベースに固定可能に設けた」という構成を備えているのに対して、後者は、これらの構成を備えていない点で相違している。
そして、本件特許発明のごとく、「のこ刃とベースとの平行度調整時に、べベルプレートを他方の連結部を支点としてベース面に沿って移動すると、ベベルプレートに軸支されたヒンジを介して本体及びのこ刃もベース面に沿って回動する。」という、平成15年4月4日付け審判事件意見書第5頁第10〜12行で被請求人が主張するとおりの作用を奏するものは、甲第1号証乃至甲第6号証のいずれにも開示されていない。
そして、上記相違点としての構成に基づき、本件特許発明は、のこ刃とベース側面との平行度調整に際して「ベベルプレートをベース面に沿って移動するようにしているから、本体及びのこ刃もベース面に沿って移動するので、のこ刃の突出量は変化しない。したがって、切り込み深さ調整と平行度調整の手順(後、先)は問われないから、使い勝手が良い。」という、上記審判事件意見書第6頁第2〜5行で被請求人が主張するとおりの、上記構成から自明な効果を生じるものと認める。
また、いずれの証拠にも、のこ刃の突出量を変化させずにのこ刃とベース側面との平行度調整を行う点に関する記載もしくはそれを示唆する記載はない。
したがって、本件特許発明は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、審判請求人は、平成15年4月25日付けの弁駁書の第2頁第2〜7行において、「平成15年4月4日付けの訂正請求に係る特許請求の範囲に記載の発明では、「ベベルプレートを他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能」とすることで、のこ刃とベース側面との平行度の調整を可能とする構成を有するが、この構成からは、「ベース面に対しのこ刃が所定角だけ傾斜した状態(いわゆるベベルカット対応)での平行度調整作業が切込み深さのずれを生じさせない」という効果を依然として導き出すことができない。」と主張している。
しかしながら、本件特許発明のベベルプレート上には、ベース面に対してのこ刃を傾斜させる際の回動中心となるヒンジの回転軸が設けられており、また、該ヒンジには、のこ刃の突出量を調整する際の回動中心となる第1の支点が設けられていることから、当該ベベルプレートをベース面に沿って移動させると、上記二つの回動中心もベース面と平行に移動することになり、結局、ベース面に対しのこ刃が所定角だけ傾斜した状態での平行度調整作業を、のこ刃の突出量(切り込み深さ)を一定に維持したままで行うことが可能になっているものと解される。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

第8 結び
以上のとおりであるから、本件特許発明に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものではない。
よって、本件の無効審判請求は理由がなく、本件の請求は成り立たない。また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
丸のこ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動機を内蔵した本体と、電動機により駆動されるのこ刃と、本体下方に位置し、被削材上を摺動する長方形状のベースとを備え、ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され、一方の連結部はのこ刃とベースとの傾斜角度を調整するためのベベルプレートをベースに連結して形成され、ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とベースとの傾斜角度を調整可能な丸のこであって、
のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように、ベベルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けたことを特徴とする丸のこ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、のこ刃とベース側面の平行度を調整できる丸のこのベースの精度に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来技術を図5〜図8を用いて説明する。
【0003】
従来の丸のこは、丸のこ本体1に対し、ベース2が支点3を中心として図5の2点鎖線のように回動できる構造を有し、これにより、ベース面からののこ刃4の突出量を変えることができる。また、丸のこ本体1に対し、ベース2は、支点5、6を中心として、図6の2点鎖線の様に回動できる構造を有し、これにより、のこ刃4に対しベース2が傾斜でき、ベース面とのこ刃4の直角度が調整できるものである。
【0004】
以上のように従来の丸のこは、のこ刃4の突出量や直角度の調整はできるが、のこ刃4の周方向に対するベース側面の平行度は、構成部品の精度で決まるため、平行度がでないという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の丸のこにおいて、被削材を直線に沿って切断する場合、図7のようにベース2自体に直線ガイド7を取付け、該直線ガイド7の案内部を被削材に沿わせて行なう方法と、図8のようにベース側面にガイド8を沿わせて行なう方法があり、常に直線ガイド7、ガイド8を使用しているのが現状である。
【0006】
従来の丸のこでは、のこ刃4とベース側面の平行度、のこ刃4と直線ガイド7やガイド8の案内部の平行度が調整できないため、平行度が狂った状態でガイド7、8等を使用すると、ガイド通り切断できないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、ガイドに沿わせて被削材を切断する場合、ガイド通りに切断できる丸のこを提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、ベースの両端側に設けられた連結部によりベースと本体とが連結され、一方の連結部はのこ刃とベースとの傾斜角度を調整するためのベベルプレートをベースに連結して形成され、ベベルプレートに回動可能に軸支されたヒンジに設けられた第1の支点を中心として本体に対しベースが回動してベース下面からののこ刃の突出量すなわち切込み深さを調整可能で、ヒンジの回動軸と他方の連結部に設けられた第2の支点を中心として本体に対しベースが回動してのこ刃とベースとの傾斜角度を調整可能な丸のこであって、のこ刃とベース側面との平行度が調整できるように、ベベルプレートを、他方の連結部を支点とするとともにベース面に沿って移動可能に、かつベースに固定可能に設けることにより達成される。
【0009】
【作用】
上記のように構成された丸のこは、一方の連結部に設けられたベベルプレートをベース面に沿って移動させることによって、のこ刃とベースの関係を他方の連結部を支点として回動できるため、のこ刃とベース側面の平行度や、ベースに取り付けた直線ガイド案内部との平行度を調整することができる。
【0010】
【実施例】
以下本発明の実施例を図1〜図4を用いて説明する。
【0011】
図1に示すように、ベース2にプレート9がのこ刃4軸方向に回動可能なようにリベット10で連結され、該プレート9にリンク11がベース2の傾斜が可能なようにリベット12で連結されている。
【0012】
前記リンク11には中央に溝部が設けられており、溝部の範囲で丸のこ本体1を固定することにより、ベース面からののこ刃4の突出量を設定することができる。
【0013】
図2は図1をBから見た図であり、図3は図1をCから見た図である。図3に示すように、ベース2の前方壁に長穴13を2個所設けており、該長穴13を介して、ボルト14によりベベルプレート15が固定される。該ベベルプレート15はベース2が傾斜可能なように、ヒンジ16とリベット17により連結され、ヒンジ16はベース2が図1の2点鎖線のように回動できるよう丸のこ本体1とロールピン18で連結されている。丸のこ本体1と連結されたヒンジ16を、前記ベベルプレート15の溝部19の範囲で固定することにより、のこ刃4とベース2面の傾斜を設定することができる。
【0014】
図4は図2のD-D線断面図である。図に示すように中央にU字溝20を有したL字形のプレート21をべベルプレート15の近傍に設けている。U字溝20にはボルト22の根元の細くなった部分がはめこまれている。ボルト22のネジ部は前記ベベルプレート15とネジ結合し、ボルト22を左右に回すことにより、のこ刃とベース側面の平行度の調整を微調整することができる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、一方の連結部に設けられたベベルプレートをベース面に沿って移動させることによって、のこ刃とベースの関係を他方の連結部を支点として回動できるため、のこ刃とベース側面の平行度やベースに取り付けた直線ガイド案内面との平行度が調整でき、ガイドを使用した切断において、ガイド通りの切断ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明になる丸のこの正面図。
【図2】 図1をBから見た図。
【図3】 図1をCから見た図。
【図4】 図2のD-D線断面図。
【図5】 従来の丸のこの正面図。
【図6】 図5をAから見た図。
【図7】 直線ガイドを使用し切断中の丸のこの斜視図。
【図8】 ガイドを使用し切断中の丸のこの斜視図。
【符号の説明】
1は丸のこ本体、2はベース、4はのこ刃、9はプレート、10はリベット、12はリベット、13は長穴、14はボルト、15はベベルプレート、16はヒンジ、20はU字溝、21はL字形のプレート、22はボルトである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-05-06 
結審通知日 2003-05-09 
審決日 2003-05-20 
出願番号 特願平6-128956
審決分類 P 1 112・ 121- YA (B27B)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 三原 彰英
高山 芳之
登録日 2001-02-23 
登録番号 特許第3161225号(P3161225)
発明の名称 丸のこ  
代理人 池田 敏行  
代理人 鵜沼 辰之  
代理人 岩田 哲幸  
代理人 吉岡 宏嗣  
代理人 吉岡 宏嗣  

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