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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01D
管理番号 1085627
審判番号 不服2001-8085  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-16 
確定日 2003-10-14 
事件の表示 平成7年特許願第304607号「乗用中刈機における送風装置」拒絶査定に対する審判事件[平成8年9月3日出願公開、特開平8-224030]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 一、手続の経緯及び本願発明
本願は、平成4年2月13日に実用新案登録出願された実願平4-13930号を、特許法第46条第1項の規定により、平成7年11月22日に特許出願に出願変更した特願平7-304607号の特許出願であって、本願の発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年7月18日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】茶樹の冠部全面を所定深さに細断する複数のフレール刃を有した細断機構と、この細断機構によって細断された茶樹の冠部全面を所定形状に剪枝して整えるための剪枝刃を有した剪枝機構とを有し、走行機構の駆動による自走の一行程によって細断及び剪枝の両作業を連続的に行う乗用中刈機において、
上記中刈機には、上記剪枝機構によって剪枝された切断枝葉を茶樹の左右両側の畦間に吹き落とすように、送風機の送風口に接続された2本の送風管の各ノズルを剪枝刃上方の略中央部において左右に向けて配置させた送風機構を設けていることを特徴とする乗用中刈機における送風装置。」

なお、上記請求項1中の「フレーム刃」は、出願当初の明細書の記載に照らせば、「フレール刃」の明らかな誤記であるから、本願発明を、上記のとおりに認定した。

二、引用刊行物における記載事項
(1)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である実願昭62-26945号(実開昭63-134628号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物1」という。)には、茶樹細断装置を備えた茶樹剪枝機に関し、次の事項が記載されている。
『茶樹の冠部を細断する細断装置と、茶樹の冠部を所定の形状に剪枝する剪枝刈刃とを有し、一行程で細断と剪枝の両作業を行う茶樹剪枝機において、前記細断装置を、機体の進行方向に対し逆方向に回転するフレール刃で構成し、このフレール刃は、その細断後の茶樹形状が、剪枝刈刃による茶樹の剪枝形状とほぼ同様の形状になるように配置されていることを特徴とする茶樹細断装置を備えた茶樹剪枝機。』(明細書1頁5行〜同1頁14行)
『【従来の技術】茶樹の冠部を細断する細断装置と、茶樹の冠部を所定の形状に剪枝する剪枝刈刃とを有し、一行程で細断と剪枝の両作業を行うようにした茶樹剪枝機が、例えば実開昭53-I28259号公報および実開昭60-1254号公報により周知である。』(明細書1頁20行〜同2頁6行)
『この茶樹剪枝機1は、左右方向に長い本体フレーム兼保護カバー2の一側上面上に原動機3を搭載し、原動機3の出力プーリ4から細断装置5の入力プーリ6にベルト伝動され、そのベルトには張り車7が設けられている。細断装置5は、機体の進行方向と逆方向に回転する主軸8の軸周に多数のフレール刃9を所定の間隔に装着したもので、フレール刃9の長さは主軸8の中央部のものが短く両側端側にいくに従い長くなり、その先端部の画くラインは後述する剪枝刈刃の形状とほぼ同様となっている。細断装置5の前側には、細断された茶樹が前方へ飛出すの防止し、また、細断深さを調整する円弧状をした飛出し防支止兼深さ調整カバー10が設けられてる。このカバー10は、その上端部が蝶番11で本体フレーム兼保護カバー2に蝶着され、下端部がカバー調整ねじ12、カバー調整長孔13により上下調節可能となっている。細断装置5の後方には、左右方向に円弧状に弯曲したレシプロ刃からなる剪枝刈刃14が設けられている。この剪枝刈刃14は、前記出力プーリ4から張り車15を介装してベルト伝達される入力プ-リ16により駆動機構17に動力伝達され、剪枝刈刃14を左右に往復動させる。符号18は走行安定板である。』(明細書5頁2行〜同6頁6行)
『このような構成の茶樹剪枝機においては、第3図に示す深刈りBまたは中切りCの剪枝作業を行うとき、まず、左右の高さ調節ハンドル19を回動して高さ調節装置20により剪枝刈刃14、細断装置5等を所望の高さに設定し、カバー調節ねじ12で飛出し防止兼深さ調整カバー10の先端高さを調整し、次に原動機3を始動して張り車7,15を介して主軸8を回転させると共に、駆動機構17を介して剪枝刈刃14を駆動させる。そして、2人の作業者により両側の牽引把手26を持って原動機側車輪22、尾輪23および車輪25を茶樹列の両側の畝に位置させ、茶樹列に沿って機体を牽引、前進させる。すると、茶樹Tの冠部は、まず細断装置5のフレール刃9が機体の進行方向と逆方向に高速回転して茶樹を数ミリの細片として細断して後方に向け放出し、放出された茶樹細片は、茶樹の上方か茶樹内を通って下方の圃場面に落下する。細断装置5により細断剪枝された茶樹の冠部は、剪枝刈刃14によって仕上げられて茶樹の表面はきれいな円弧状となるが、剪枝刈刃14によって刈取られた茶樹の長さも短いものであり、茶樹下方の圃場面に落下する。』(明細書6頁16行〜同7頁17行)
『茶樹下方の圃場面に落下した茶樹細片は、いずれも極めて細かく細断されているので、風化、分解が早く、有機肥料としての効果もあり、また、茶樹の根元への日光の直射を防ぐので乾燥を防止し、寒さを防ぐ等の効果もある。第4図に示す本考案の他の実施例においては、細断装置5の主軸を8a,8bの2つに分け、中央部から左右に下降するよう傾斜して軸支したものである。この場合、フレール刃9は全体が同じ長さでよく、フレール刃9の先端が画くラインは、剪枝刈刃14の形状とほぼ同様となる。この実施例の場合においても、前記第1図および第2図の実施例のものと同様の作業が行える。なお、上記2つの実施例は、本考案を人力牽引方式としたが、これを動力で走行する自走式に、あるいは乗用型摘採機のアタッチメントとして構成してもよいものである。』(明細書8頁5行〜同9頁1行)
そうしてみると、引用刊行物1の上記摘記事項からみて、前記引用刊行物1には、「茶樹の冠部を細断する細断装置5と、茶樹の冠部を所定の形状に剪枝するレシプロ刃からなる剪枝刈刃14とを有し、動力による自走の一行程で細断と剪枝の両作業を行う茶樹剪枝機において、前記細断装置5を、機体の進行方向に対し逆方向に回転するフレール刃9で構成し、このフレール刃9は、その細断後の茶樹形状が、剪枝刈刃14による茶樹の剪枝形状とほぼ同様の形状になるように配置されている茶樹細断装置を備えた自走式の乗用型茶樹剪枝機」の発明についての記載が認められる。

(2)原審における拒絶査定の理由に引用された、本願の特許出願前に頒布された刊行物である実願昭61-11078号(実開昭62-122526号)のマイクロフイルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、茶樹剪枝機における風量調節装置に関し、次の事項が記載されている。
『茶樹畝の幅方向に沿って延びるフレームと、このフレームの前縁側に設けられ、フレームの長さ方向に往復動するバリカン式の刈刃体と、フレームの側部に設けられ、刈刃体を駆動するための伝動機構および原動機と、フレームの後縁側に設けられた茶葉誘導板に圧力風を送出し、茶葉誘導板上の枝葉を吹き落すための送風機とを備える茶樹剪枝機において、原動機と、送風機と、刈刃体に動力を伝達する伝動ケースとを上下に重設して原動機から送風機および伝動ケースへ動力を同軸的に伝動するようにすると共に、送風機の吸気側に吸気面積を変えて吸気量を調節し、吐出風量を調節する吸気量調節機構を設けたことを特徴とする茶樹剪枝機における風量調節装置。』(明細書1頁5行〜同1頁19行)
『本考案は、主として茶樹畝の上面を所定の形状に整形する茶樹剪枝機に関し、特に、刈取られた枝葉を畝間に吹き落す送風機からの送風量を調節可能とした風量調節装置に関するものである。』(明細書2頁2行〜同2頁5行)
『上記刈りならし、剪枝機を用いて、第3図に示すような作業を行なう場合、刈取られる茶葉、枝葉の大きさは茶樹の成育状況によって異り、送風機から吐出される風量は一定なので、その風による茶葉、枝葉の飛散の仕方は一定でない。例えば茶樹の表層を浅く刈りならす程度に作業する場合には、畝間に落下させるべき茶葉、枝葉が隣接する茶畝上に飛散して、以後の茶葉摘葉作業時にこれら飛散茶葉等が新しい茶葉に混入し、製茶品質に悪影響を及ぼすことになる。』(明細書3頁4行〜同3頁13行)
『【作用】この構成により本考案の茶樹剪枝機は、刈取られる茶樹、茶畝の形状、成育状況、さらに刈取り深さの浅深度合に合せて風量を調節し、茶葉、枝葉を確実に畝間に落下させることができるものである。』(明細書4頁8行〜同頁13行)
『第1図および第2図において、符号6は、第3図に示すような茶樹畝Tの幅方向の円弧に沿って延び、所定幅を有するフレームで、このフレーム6の前縁側には、上刃4、下刃5からなるバリカン式の刈刃体が配設されている。この上刃4および下刃5は、フレーム6の一側に固着された刈刃体の伝動ケース3から動力を受け、フレーム6の長さ方向に往復動するもので、伝動ケース3内には、図示しないが減速歯車、クランク、ロッド等が内装され、刈刃体を往復駆動するようになっている。また、フレーム6の後縁側には茶葉誘導板7、安定板8が設けられ、さらに、フレーム6には、その左右両側に複数の締結具15を介して把手13と把手14とが取付けられている。上記刈刃体の伝動ケース3上には、送風機のケーシング2がその送風口21を茶葉誘導板7に臨ませて固定され、このケーシング2内に、伝動ケ-ス3から突出した入力軸31に固着した羽根車24が設けられている。この羽根車24にはクラッチドラム23が形成され、このクラッチドラム23内に、原動機1の出力軸11に取付けられた遠心クラッチ22が同軸的に嵌挿されている 。』(明細書4頁17行〜同5頁18行)
『原動機1の回転を高速にすると、遠心クラッチ22がクラッチドラム23と摩擦係合して羽根車24および入力軸31を回転させ、羽根車24で起風された圧力風は、送風口21から茶葉誘導板7上に送出され、また、刈刃体の上刃4および下刃5は相互に往復運動する。この状態で2人の作業者が両側から把手13,14を持って、第3図に示すように茶樹畝Tを間に向き合うようにして刈刃体を茶樹の上面円弧に沿わせて前進すれば、刈刃体によって茶樹畝Tの上側の茶葉、枝葉が刈取られる。刈取られた茶葉、枝葉は茶葉誘導板7上に載るが、ここには送風機からの圧力風が吐出しているので、茶葉、枝葉は茶葉誘導板7の長さ方向に吹き落されて畝間に落下し、剪枝作業を連続して行うことができ、茶樹畝Tの上面に凹凸や段差を生ずることなく整然とした作業が行われる。』(明細書6頁17行〜同7頁12行)

三、当審の判断
(1)比較・対比及び一致点・相違点
本願発明と上記引用刊行物1に記載の発明(以下、「引用発明1」という。)とを比較・対比すると、引用発明1における「フレール刃9で構成された細断装置5」「剪枝刈刃14」が、本願発明の「フレール刃を有した細断機構」「剪枝刃を有した剪枝機構」にそれぞれ対応することは明らかである。
また、引用刊行物1に『なお、上記2つの実施例は、本考案を人力牽引方式としたが、これを動力で走行する自走式に、あるいは乗用型摘採機のアタッチメントとして構成してもよいものである。』と記載されていることにより、引用発明の茶樹細断装置を備えた茶樹剪枝機は、自走式の乗用型茶樹剪枝機として記載されているといえるから、引用発明1の「自走式の乗用型茶樹剪枝機」が、本願発明の「乗用中刈機」に対応する。
そうすると、両者は「茶樹の冠部全面を所定深さに細断する複数のフレール刃を有した細断機構と、この細断機構によって細断された茶樹の冠部全面を所定形状に剪枝して整えるための剪枝刃を有した剪枝機構とを有し、走行機構の駆動による自走の一行程によって細断及び剪枝の両作業を連続的に行う乗用中刈機」である点で一致し、次の点で両者の構成が相違する。
相違点:本願発明の乗用中刈機が「剪枝機構によって剪枝された切断枝葉を茶樹の左右両側の畦間に吹き落とすように、送風機の送風口に接続された2本の送風管の各ノズルを剪枝刃上方の略中央部において左右に向けて配置させた送風機構」を設けているのに対し、引用発明1は、前記送風機構を具備していない点。

(2)相違点についての検討
上記相違点について検討する。
本願特許出願前に頒布された刊行物である上記引用刊行物2には、茶樹剪枝機に送風機を設けることが記載されていて、前記茶樹剪枝機は、「茶樹畝Tの幅方向の円弧に沿って延び、所定幅を有するフレーム6の前縁側に設けられ、フレーム6の長さ方向に往復動する上刃4、下刃5からなるバリカン式の刈刃体と、フレーム6の側部に設けられ、刈刃体を駆動するための伝動機構および原動機1と、フレーム6の後縁側に設けられた茶葉誘導板7に圧力風を送出し、茶葉誘導板7上の枝葉を吹き落すための送風機とを備え、前記刈刃体を茶樹の上面円弧に沿わせて前進させることにより、前記刈刃体によって茶樹畝Tの上側の茶葉、枝葉を刈取る茶樹剪枝機において、前記バリカン式の刈刃体に沿うように茶葉誘導板7が設けられ、前記バリカン式の刈刃体の一方端で茶樹畝の中央側に送風機が設けられていて、送風機から吐出される圧力風により、バリカン式の刈刃体上に載った刈取られた茶葉、枝葉が、茶葉誘導板7の長さ方向に吹き落されて畝間に落下させるようにした茶樹剪枝機の送風機」の構成を有している。
そして、前記茶樹剪枝機の送風機による作用効果は、『茶樹畝Tを間に向き合うようにして刈刃体を茶樹の上面円弧に沿わせて前進すれば、刈刃体によって茶樹畝Tの上側の茶葉、枝葉が刈取られる。刈取られた茶葉、枝葉は茶葉誘導板7上に載るが、ここには送風機からの圧力風が吐出しているので、茶葉、枝葉は茶葉誘導板7の長さ方向に吹き落されて畝間に落下し、剪枝作業を連続して行うことができ、茶樹畝Tの上面に凹凸や段差を生ずることなく整然とした作業が行われる。』というものである。
しかして、引用刊行物2に添付の第3図の記載を参酌すれば、剪枝作業により刈取られて、茶葉誘導板7上に載った茶葉、枝葉は、送風機の送風口21からの圧力風により茶葉誘導板7の長さ方向に吹き落されて畝間に落下するのであるから、引用刊行物2に記載の茶樹剪枝機の送風機の役割が、茶葉、枝葉を茶葉誘導板7の長さ方向に吹き落すことにより、茶葉誘導板7上に載った茶葉、枝葉を畝間に落下させることにあることは、明らかである。
そうしてみると、引用発明に前記公知技術を適用するに際して、剪枝作業により刈取られた茶葉、枝葉を畝間に落下させるために、引用刊行物2に記載の送風機の送風口21を、引用発明の茶樹剪枝機の茶樹細断装置の略中央部に左右に向けて配置させて、茶葉誘導板7の長さ方向に茶葉、枝葉を吹き落すことができるようにすることにより、本願発明の相違点に係る前記「送風機の送風口に接続された2本の送風管の各ノズルを剪枝刃上方の略中央部において左右に向けて配置させた送風機構」の構成を得ることは、当業者にとって格別の困難性を要することではない。そして、本願発明の相違点に係る前記構成とした点に格別の相乗効果を認めることができない。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

四、むすび
以上のとおりであり、請求項1に係る本願発明は、上記引用刊行物1及び引用刊行物2にそれぞれ記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-08-08 
結審通知日 2003-08-19 
審決日 2003-09-01 
出願番号 特願平7-304607
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 隆彦山田 昭次小野 忠悦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 佐藤 昭喜
渡部 葉子
発明の名称 乗用中刈機における送風装置  
代理人 小橋 信淳  
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