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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20061739 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 (訂正、訂正請求) 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1087404
審判番号 不服2001-23753  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-01-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-12-28 
確定日 2003-11-17 
事件の表示 特許権存続期間延長登録願2000-700019「医薬」拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,本件特許及び本件発明
特許第1663594号(以下、本件特許という。)は、昭和61年6月24日(パリ条約による優先権主張1985年6月25日 イギリス)に出願され、平成3年4月3日に出願公告され、平成4年5月19日に特許権の設定登録がなされたものであって、その特許発明の要旨は、出願公告された明細書(特公平3-24447号公報)の記載から見てその特許請求の範囲の請求項1に記載のとおりのものである。

「活性成分として、1,2,3,9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチル-1H-イミダゾル-1-イル)メチル]-4H-カルバゾル-4-オン又はその生理学的に許容される塩又は溶媒和物を含むことを特徴とする、吐き気及び嘔吐の軽減及び/又は胃内容物排出の促進のためにヒト及び獣医学で用いるための薬剤組成物。」

2,本件出願

本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、本件出願という。)は、平成12年3月23日に出願され、平成13年10月2日に拒絶査定がなされ、平成14年1月4日に審判請求がされたものである。本件出願には以下の資料が添付されている。

資料1 本件特許の公告公報(特公平3-24447号公報)
資料2 承認番号21100AMY00283000の医薬品輸入承認書
資料3 治験計画届書

本件出願は、本件出願の願書の記載及び処分を受けたことを証明する添付資料から見て、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったその政令で定める処分として、以下の内容を特定している。

(1)延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同法第23条において準用する第14条第1項の承認
(2)処分を特定する番号
承認番号21100AMY00283000号
(3)処分を受けた日
平成11年12月24日
(4)処分の対象となった物
一般名称
オンダンセトロン
化学名
1,2,3,9-テトラヒドロ-9-メチル-3-[(2-メチル-1H-イミダゾル-1-イル)メチル]-4H-カルバゾール-4-オン
化学構造式 (省略)
一般名称、化学名および化学構造式で表される物は同一物質である。
(5)処分の対象となった物について特定された用途
抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)

3,原審の拒絶理由の概要

原審の拒絶の理由は、有効成分が「塩酸オンダンセトロン」であり、効能・効果が「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」である医薬品の製造承認は既になされている(承認日平成6年1月19日。必要ならば「最近の新薬(第46集)」薬事日報社 第23,254-257頁参照)。そして、今回承認された有効成分「オンダンセトロン」は、上述の「塩酸オンダンセトロン」とは効能効果の点でも同一の物である。そうすると、この出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、この出願は、特許法第67条の3第1項第1号に該当するというものである。
(以下上記「最近の新薬(第46集)」を参考文献という。)

4,当審の判断

(4-1)延長登録制度における「物」について

特許法第68条の2は、「特許権の存続期間が延長された場合・・・の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となった第67条第2項の政令で定める処分の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあっては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。」と定めている。この規定は、特許権の存続期間延長登録の制度の趣旨、立法の経緯及び条文の文言に照らし、存続期間が延長された後の特許権の効力につき、一方では、処分と無関係な範囲には及ぼさないこととすると同時に、他方では、期間延長後の特許権者の権利主張の実効性を確保するため、処分単位で認めることとしないで、その処分において特定の用途が定められている場合には、処分の対象となった物につき、その処分において定められた特定の用途について実施する場合全般にまで拡大して及ぼしたものであることが明らかである。これを前提とした場合、特許法第68条の2のみならず、特許法第67条及び67条の3にいう「特許発明の実施」の文言についても、具体的な処分の対象そのもの(品目)を単位としてではなく、処分の対象となった「物」と、その処分において定められた特定の「用途」によって特定される範囲のものすべてを単位として解釈するのが自然かつ合理的である。(平成10年(行ケ)362号判決)
そうすると、延長登録が認められるためには、同じ「物」と「用途」によって特定される範囲において既に別の処分を受け特許発明の実施をすることができるようになっていないことが必要である。
ところで、医薬品における「物」とは「有効成分」に相当するが、薬事法においては、医薬品の有効成分が既承認の医薬品の有効成分と完全に同一な物質でない場合は、それがきわめて類似していても新有効成分医薬品としての承認を受けなければならないとされている。したがって、薬事法による取り扱いに倣えば「物」の同一性は物質として完全に同一であることを意味することとなる。
しかしながら、承認された医薬品が含有する具体的な有効成分と完全に一致する場合のみ「物」が同一であるとすると、その処分にもとづき、期間延長登録がなされても、その有効成分の効能効果に影響しない形態の変更を施すことで別の有効成分とし第三者はたやすく類似の医薬品の実施を行うことができるから(例えば、有効成分が「化合物Aのナトリウム塩」である場合、それと同じ効能効果を有する「化合物Aのカリウム塩」の使用は特許権の効力の範囲外となる)、特許権者の権利主張の実効性を確保することができないことになる。
上記した特許法第68条の2で処分単位で認めることとせず、処分対象の物につきその処分において特定された用途について実施する場合全般にまで拡大して及ぼしたことの趣旨からすれば、その「物」についても、その処分の対象となった医薬品が含有する具体的な有効成分と完全に一致する「物」とせず、それと実質的に同一の有効成分(例えば処分を受けた具体的な有効成分と形態は異なるが同等の効能効果を保持する化合物)については同じ「物」と解するのが制度の趣旨にかなうとすべきである。
請求人は「物」の同一性は、処分の対象とされた有効成分との完全一致によって判断すべきと主張するが、以上のとおりであるから、かかる主張は採用することができない。

(4-2)「オンダンセトロン」と「塩酸オンダンセトロン」との同一性に ついて

上記の「物」の考え方に従い「オンダンセトロン」が「塩酸オンダンセトロン」と「物」として同一であるかどうかにつき検討する。

添付資料2の「オンダンセトロン」を有効成分とする医薬品の〔効能又は効果〕の欄には「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」と記載されているところ、添付資料3の備考欄の記載及び参考資料(第257頁)によれば「塩酸オンダンセトロン製剤」(CG032錠)の効能効果は同じ「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)」であって、両者の効能効果は同一である。
一方「塩酸オンダンセトロン」は「オンダンセトロン」の塩酸塩であって、「オンダンセトロン」の遊離塩基とは形態が異なるが、医薬品の有効成分としての効能効果は「オンダンセトロン」(遊離塩基)部分に存することは明らかである。
したがって、両者は有効成分として実質的に同一、すなわち「物」として同一であるということができる。

また、このことは以下の(1)(2)の事項によっても支持されるものである。

(1)添付資料1の本件特許公告公報には、1,2,3,9-メチル-3-[(2-メチル-1H-イミダゾル-1-イル)メチル]-4H-カルバゾール-4-オンもその生理学的に許容される塩(例、塩酸塩)、溶媒和物(例、水和物)も、吐き気及び嘔吐の軽減及び/又は胃内容物排出の促進のために使用できること、すなわち同等の活性成分として記載されていること。

(2)参考文献によれば、既承認の塩酸オンダンセトロン製剤の有効成分の化学名は、2,3-dihydro-9-methyl-3-[(2-methylimidazol-1-yl)methyl]carbazol-4(1H)-one mono hydrochloride dihydrateと記載されており(第254頁)、正確にはオンダンセトロンの塩酸塩の2水和物である。
また、塩酸オンダンセトロン製剤の薬効薬理の欄(第255頁)の「1,制吐作用」のうち「1)シスプラチン誘発嘔吐に対する作用」は「塩酸オンダンセトロン」を用いた試験、「2)シクロホスファミド誘発,嘔吐に対する作用」は「オンダンセトロン」を用いた試験、「2,5-HT3受容体拮抗作用」「3,5-HT3受容体への親和性」「4,その他の受容体に対する作用」は「オンダンセトロン」を用いた試験の結果に基づく記述がなされ、薬効薬理において遊離塩基と塩酸塩の区別をしていないこと、さらにゾフラン(登録商標)錠の組成(第256頁)として、「塩酸オンダンセトロン2.5mg、5mg、5mg(オンダンセトロンとして2mg、4mg、4mg)」と記載され、用法(第257頁)として「〔ゾフラン(登録商標)錠2.錠4〕.通常成人オンダンセトロンとして1回4mg、1日1回経口投与・・〔ゾフラン(登録商標)注4〕通常成人オンダンセトロンとして1回4mg、1日1回緩徐に静脈内投与・・」との記載もなされ、塩酸オンダンセトロン製剤の有効成分である塩酸オンダンセトロン2水和物の効能効果をもたらす本体は「オンダンセトロン」に存在すること、すなわち「塩酸オンダンセトロンの2水和物 」「塩酸オンダンセトロン」「オンダンセトロン」は同等の成分であり、これらの物質の薬理効果の本質は「オンダンセトロン」部分に存在すると解されること。

(4-3)請求人の主張について

請求人は、「オンダンセトロン」は、「塩酸オンダンセトロン」とは化学的、物理的、薬理的性質が異なり、実質同一の「物」ではない、特に苦味を有しないため急速に崩壊する凍結乾燥投与形態での経口投与を可能にするものであると主張する。
確かに、オンダンセトロン(遊離塩基)は塩酸オンダンセトロンとは物質の形態としては異なるから、薬効それ自体に影響を及ぼさない物性に何らかの差異があることは当然予測されるところであり、「オンダンセトロン」の場合、味覚の点での差異が生じているものであるが、この点が「塩酸オンダンセトロン」では得られない製剤上の利点をもたらすとしても、そのことは、有効成分としての差異をもたらす要素にはならない

また、請求人は「オンダンセトロン」は、「塩酸オンダンセトロン」とは薬事法では別物質であって、承認申請は医療用医薬品の添付資料による分類(1)〜(8)のうち従前に処分を受けたことのない有効成分を含有する医薬品の「(1)新有効成分含有医薬品」の分類区分で申請したものであり、承認申請に要する労力は新有効成分含有医薬とほとんどかわらないとも主張するが、添付資料3において、請求人が行った治験の目的は「GC32X錠とGC032錠の生物学的同等性をクロスオーバー法により検討する。(生物学的同等性)」であり、備考欄には「 GC32錠成分の一般名称(JAN)塩酸オンダンセトロンは、・・・・通知された。GC032X錠成分は塩酸オンダンセトロンの遊離塩基であり、一般名称(JAN)は未定である。CG032錠は・・・・・製造承認を受けている。」と記載されているように、「オンダンセトロン」が「塩酸オンダンセトロン」と同一の効能効果を有することを確認しようとしたものであり、このような生物学的同等性の試験は、既承認医薬品と有効成分、投与経路、効能効果、用法用量が同一であるが、剤型、含量が異なる医薬品についての薬事法の分類(7)に対応する医薬品の承認申請時に必要なデータであるから、薬事法の分類が(1)であっても、その実質は剤形追加に係る医薬品とほとんど変わらないものである。

5,むすび

以上のとおりであるから、本件出願に係る承認については、その「物」「用途」で特定される範囲が同一である承認が既に存在しており、これを最初の処分ということはできない。
したがって、本件延長登録に係る処分は、本件発明の実施に必要な処分であったとは認められないから、本件出願は特許法第67条の3第1項1号の規定に該当し、本件特許権存続期間の延長登録を受けることができない。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-06-20 
結審通知日 2003-06-24 
審決日 2003-07-08 
出願番号 特願2000-700019(P2000-700019)
審決分類 P 1 8・ 71- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉住 和之瀬下 浩一  
特許庁審判長 森田 ひとみ
特許庁審判官 竹林 則幸
深津 弘
発明の名称 医薬  
代理人 中村 行孝  
代理人 紺野 昭男  
代理人 佐藤 一雄  
代理人 横田 修孝  

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