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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1087847
審判番号 不服2002-3302  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-26 
確定日 2003-12-05 
事件の表示 平成 7年特許願第310438号「大きな比表面積を有する多孔質金属体」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 6月 3日出願公開、特開平 9-143511]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]本願発明
本願は、平成7年11月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年12月14日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「(a)気泡形成処理で形成された気孔と、焼結により形成された気孔を10〜55%の気孔率で有する有孔金属焼結体のスケルトン(骨格)からなり、
(b)かつ300〜3000cm2 /cm3の全体比表面積、および80〜97%の全体気孔率を有することを特徴とする大きな比表面積を有する多孔質金属体。」

[2]先願発明
(1)優先権主張出願の請求項に係る発明
原査定の拒絶の理由に引用した特願平7-311744号(出願日:平成7年11月30日;以下、「優先権主張出願」という。)は、特願平7-101773号(出願日:平成7年4月3日;以下、「優先権基礎出願」という。)の願書に添付した明細書又は図面に記載された発明に基づいて優先権を主張をした出願であり、優先権主張出願の拒絶査定によって確定した請求項1に係る発明は、平成13年10月12日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された下記の事項により特定されるものである。
「(a)気泡形成処理で形成された気孔と、焼結により形成された気孔を10〜55%の気孔率で有する有孔金属焼結体のスケルトン(骨格)で構成され、
(b)300〜3000cm2 /cm3 の全体比表面積、および80〜97%の全体気孔率を有し、
(c)さらに、片面または両面に、上記の気泡形成処理で形成された気孔の孔径が内部の同孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有することを特徴とする大きな比表面積を有する多孔質金属板材。」

(2)基礎明細書に記載された発明
また、優先権基礎出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「基礎明細書」という。)には、「30〜55%の気孔率を有する有孔金属焼結体のスケルトンで構成され、かつ全体比表面積:1000cm2 /cm3 以上、全体気孔率:80〜97%を有すると共に、片面または両面に、スケルトンによって形成される気孔の孔径が内部孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有することを特徴とする大きな比表面積を有する多孔質金属板材。」(請求項1)が記載されているが、この多孔質金属板材は、「・・・非水溶性炭化水素系有機溶剤・・・からなる配合組成を有する混合物を調製し、この混合物から、・・・板状成形体を形成し、この板状成形体の片面または両面に遠赤外線を照射し、・・・上記非水溶性炭化水素系有機溶剤が・・・ガスとなって前記板状成形体から蒸発することから、前記板状成形体内には微細な気泡が多数発生し、・・・遠赤外線が照射された片面または両面の表面部分に形成された気孔の孔径が内部気孔の孔径に比して相対的に小孔の多孔質板状成形体が形成され、・・・さらにこの多孔質板状成形体を通常の条件で焼結すると、図1に概略説明図で示される通り30〜55%の気孔率を有する有孔金属焼結体のスケルトン(骨格)で構成され、かつ図2に概略斜視図および要部拡大図面で示される通り片面または両面にスケルトンによって形成された気孔の孔径が内部孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有する・・・」(【0004】)という記載によれば、気泡形成処理で形成された内部孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有する気孔を有し、焼結により形成されたスケルトンの気孔率が30〜55%であり、かつ、全体気孔率が80〜97%のものであるから、「焼結により形成されたスケルトンの気孔」と、「気泡形成処理で形成された気孔」とを併せて全体気孔率とするものであることは明らかであり、また、基礎明細書の請求項1に記載された「スケルトンによって形成される気孔」とは、気泡形成処理である遠赤外線照射により生じる内部孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有する気孔であるから、「気泡形成処理で形成された気孔」を意味することが明らかである。
よって、基礎明細書には、「気泡形成処理で形成された気孔と、焼結により形成された30〜55%の気孔率を有する有孔金属焼結体のスケルトンで構成され、かつ全体比表面積:1000cm2 /cm3 以上、全体気孔率:80〜97%を有すると共に、片面または両面に、上記の気泡形成処理で形成された気孔の孔径が内部孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有することを特徴とする大きな比表面積を有する多孔質金属板材。」の発明が記載されているといえる。

(3)優先権主張出願において、先願とみなされる発明
特許法第39条第1項の規定の適用において、本願発明の先願とみなされる発明は、上記優先権主張出願の請求項に係る発明であって、かつ、上記基礎明細書に記載された発明であるから、以下のとおりである。
「(a)気泡形成処理で形成された気孔と、焼結により形成された気孔を30〜55%の気孔率で有する有孔金属焼結体のスケルトン(骨格)で構成され、
(b)1000 〜3000cm2 /cm3の全体比表面積、および80〜97%の全体気孔率を有し、
(c)さらに、片面または両面に、上記の気泡形成処理で形成された気孔の孔径が内部の同孔径に比して相対的に小径の細孔表面層を有する大きな比表面積を有する大きな比表面積を有する多孔質金属板材。」(以下、「先願発明」という。)

[3]対比・判断
本願発明(前者)と、先願発明(後者)とを対比すると、両者は、
「(a)気泡形成処理で形成された気孔と、焼結により形成された気孔を30〜55%の気孔率で有する有孔金属焼結体のスケルトン(骨格)からなり、
(b)かつ1000 〜3000cm2 /cm3の全体比表面積、および80〜97%の全体気孔率を有する大きな比表面積を有する多孔質金属体。」
である点で一致し、以下の点で、相違する。

相違点1:前者は、後者の有する(c)の構成を有しない点。
相違点2:前者は、形状に限定のない多孔質金属体であるのに対して、後者は、「板材」に特定された多孔質金属体である点。

しかしながら、相違点1,2はともに、本願発明が先願発明の特定事項の一部を欠くことにより、より上位概念の発明となったことにより生じる相違であり、上位概念の本願発明は、下位概念の先願発明を包含するものであるから、先願発明と同一の発明であるといえる。

[4]むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第39条第1項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-09-19 
結審通知日 2003-09-30 
審決日 2003-10-14 
出願番号 特願平7-310438
審決分類 P 1 8・ 4- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 一正  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 後藤 政博
吉水 純子
発明の名称 大きな比表面積を有する多孔質金属体  
代理人 富田 和夫  
代理人 鴨井 久太郎  

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