ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 一部無効 特17条の2、3項新規事項追加の補正 無効とする。(申立て全部成立) E01F |
---|---|
管理番号 | 1087934 |
審判番号 | 無効2001-35504 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-10-14 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-11-15 |
確定日 | 2003-11-27 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3069770号発明「透光・吸音パネルの組立構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3069770号の請求項1、3、4、7に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
(一)手続の経緯 1)出願(特願平8-104526号) 平成8年4月2日 2)拒絶理由通知 平成11年5月24日 3)手続補正書 平成11年7月7日 4)登録(特許第3069770号) 平成12年5月26日 5)無効審判請求 平成13年11月15日 6)答弁書 平成14年2月13日 (二)本件請求項1、3、4、7に係る発明 【請求項1】 四方を囲み厚さを有する枠部材と、前記枠部材の片面側に取付けられる光を通す透光パネル部材と、前記透光パネル部材と空間を隔てて前記枠部材の他面側に取付けられる光を通し音を吸収する透光吸音パネル部材とを備え、前記透光吸音パネル部材は、互いに隣合う多数の孔を各々が有し互いに重ね合わされて設けられる2枚の網目部材と、前記2枚の網目部材間に挾まれて重ね合わされる極薄透光フィルムとを有することを特徴とする透光・吸音パネルの組立構造。 【請求項3】 前記透光パネル部材及び前記透光吸音パネル部材のうちの少なくとも一方が取外し可能に前記枠部材に取付けられることを特徴とする請求項1に記載の透光・吸音パネルの組立構造。 【請求項4】 前記透光パネル部材及び前記透光吸音パネル部材のうちの少なくとも一方が回動可能に前記枠部材に取付けられることを特徴とする請求項1に記載の透光・吸音パネルの組立構造。 【請求項7】 前記透光吸音パネル部材が、極薄の透光フィルムを大孔径エクスパンドメタルと小孔径エクスパンドメタルとにより挾みこんで形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の透光・吸音パネルの組立構造。 なお、本件特許明細書において、「エクスパンドメタル」と「エキスパンドメタル」が混在しているが、いずれも同じものであるので、以下、「エキスパンドメタル」で統一して、記載する。 (三)請求人の主張及び提出した証拠方法 請求人は、「特許第3069770号発明の明細書の請求項1、3、4、7に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求し、審判請求書において、請求の理由を以下のように主張している。 無効理由1 本件特許は、願書に最初に添附された明細書及び図面(以下「出願明細書等」という。)から、補正を経て登録されている(以下、登録時の明細書及び図面を「特許明細書等」という。)。上記補正により、補正後の請求項1には「前記透光吸音パネル部材は、互いに隣合う多数の孔を各々が有し互いに重ね合わされて設けられる2枚の網目部材と、前記2枚の網目部材間に挾まれて重ね合わされる極薄透光フィルムとを有する」という事項が追加されたが、この追加された事項は、出願明細書等のどこにも記載されていない。 出願明細書等には、段落番号0011に、「膜構造形透光吸音パネル部材19は、図3に示すような小孔径エキスパンドメタル25と、図4に示すような大孔径エキスパンドメタル27の間に、厚さが6〜12μm位の極薄で光を通すプラスチック等の透光フィルム(図示せず)を挾み込んだ三層構造となって構成されているものである。」との記載があるにすぎない。そして、この記載と補正後の請求項1とを比較すると、補正により「小孔径エキスパンドメタル」及び「大孔径エキスパンドメタル」を「2枚の網目部材」に上位概念化していることが分かる。しかし、「小孔径エキスパンドメタル」及び「大孔径エキスパンドメタル」からは、エキスパンドメタル以外の材料を包括し、かつ、その孔径の大小も問わない概念である「2枚の網目部材」を、直接的かつ一義的には、到底導き出せないし、出願明細書等に記載した「小孔径エキスパンドメタル」及び「大孔径エキスパンドメタル」以外の事項をも総合して検討したとしても、「2枚の網目部材」が直接的かつ一義的に導き出せると認められる理由は何ら見出せない。 したがって、補正後の特許請求の範囲に記載された事項は、出願明細書等に記載した事項でもなく、それから当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項でもないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。 無効理由2 証拠方法として、いずれも本件特許出願前に頒布された、甲第1号証(特公平6-49348号公報)、甲第2号証(特開昭55-95999号公報)、甲第3号証(日本道路公団監修「遮音壁標準設計図集」 財団法人道路厚生会 平成7年4月改訂版)、甲第4号証(実願平3-19068号(実開平4-114950号)のマイクロフィルム)、甲第5号証(特開平8-35211号公報)、甲第6号証(実公平6-3844号公報)、甲第7号証(特開平6-83365号公報)、甲第8号証(「環境と測定技術」Vol.22 No.8 1995 社団法人日本環境測定分析協会 平成7年8月20日 p.56〜61)を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、もしくは甲第1号証に記載された発明及び甲第2乃至4号証に記載された周知技術に基づいて、本件請求項3に係る発明は、甲第1、4、5号証に記載された発明に基づいて、本件請求項4に係る発明は、甲第1、6号証に記載された発明に基づいて、本件請求項7に係る発明は、甲第1、7、8号証に記載された発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、これらの特許は、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきであると主張している。 (四)被請求人の主張 被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。との審決を求める。」という趣旨で、答弁書において、以下のように、審判請求人の主張はいずれも失当であり、本件特許はいずれの請求項についても無効となるものではないと主張している。 無効理由1について 本件特許に係る出願の出願明細書等には、段落番号0011に、「膜構造形透光吸音パネル部材19は、図3に示すような小孔径エキスパンドメタル25と、図4に示すような大孔径エキスパンドメタル27の間に、厚さが6〜12μm位の極薄で光を通すプラスチック等の透光フィルム(図示せず)を挾み込んだ三層構造となって構成されているものである。」と記載され、この記載からは、少なくとも、2枚のエキスパンドメタルが構成要件であることが理解できるとともに、その具体的構成は図3及び図4であることが示されている。そして、その出願明細書等の、図3及び図4を見ると、図示上、いずれの部材の形状も網目部材であることが明らかである。 このように、段落番号0011のみならず、図3及び図4を考慮して検討すれば、出願当初より、「2枚の網目部材」が示されていることは明白であって、特に図示上、網目部材であることが明瞭であることから、「2枚の網目部材」という構成要素が十分に、「直接的かつ一義的に導き出せるもの」であることもまた明白である。 したがって、審判請求人の主張するような、補正要件違反による無効理由は、請求項1には何ら存在しないものである。 無効理由2について 甲第1号証には、本件請求項1に係る発明の特徴とする構成が何も示されておらず、甲第2、3号証における枠体の主張も意味のない主張であるから、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証によって進歩性が欠如するような発明ではない。 また、請求項3、4、7に係る発明は、請求項1に係る発明を引用している発明であって、請求項1に係る発明は、甲第1号証によって進歩性が欠如するような発明ではなく、他の甲号証においても、請求項1に係る発明の進歩性を阻却するような事項は何も示されていないから、請求項3、4、7に係る発明は、甲第1号証及び甲第5乃至8号証によって進歩性が否定されるような発明ではない。 (五)無効理由1についての検討 本件特許に係る出願の出願明細書等において、「(膜構造形)透光吸音パネル部材」に関し、以下のような記載がある。 a.【特許請求の範囲】に「【請求項1】 四方を囲み厚さを有する枠部材と、前記枠部材の片面側に取付けられる光を通す透光パネル部材と、前記透光パネル部材と空間を隔てて前記枠部材の他面側に取付けられる光を通し音を吸収する透光吸音パネル部材とを備えることを特徴とする透光・吸音パネルの組立構造。 【請求項7】 前記透光吸音パネル部材が、極薄の透光フィルムを大孔径エクスパンドメタルと小孔径エクスパンドメタルとにより挾みこんで形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項6に記載の透光・吸音パネルの組立構造。」 b.段落【0011】に「膜構造形透光吸音パネル部材19は、図3に示すような小孔径エキスパンドメタル25と、図4に示すような大孔径エキスパンドメタル27の間に、厚さが6〜12μm位の極薄で光を通すプラスチック等の透光フィルム(図示せず)を挾み込んだ三層構造となって構成されているものである。」、段落【0012】に「エキスパンドメタルとは、概略として金属板に互い違いに直線状の切れ目を入れた後、その切れ目の長さ方向と直交する方向にその金属板を引張ることにより展延されて、図3及び図4に示すような多数の目(孔)25a,27aを有するよう形成されたものである。」 c.【図面の簡単な説明】に「【図3】 膜構造形透光吸音パネル部材19の一面側を構成する小孔径エキスパンドメタル25の正面図である。 【図4】 膜構造形透光吸音パネル部材19の他面側を構成する大孔径エキスパンドメタル27の正面図である。」 d.【符号の説明】に「25 小孔径エキスパンドメタル 27 大孔径エキスパンドメタル 25a,27a 目」 e.図3に、符号25と25aが引き出された網目状物、図4に、符号27と27aが引き出された網目状物。 以上の各記載事項によれば、出願明細書等において、図3及び図4に網目状物は記載されているものの、「図3の網目状物は、多数の目(孔)25aを有する小孔径エキスパンドメタル25、図4の網目状物は、多数の目(孔)27aを有する大孔径エキスパンドメタル27」としか解すことができないから、「透光吸音パネル部材」は、「極薄の透光フィルムを大孔径エクスパンドメタルと小孔径エクスパンドメタルとにより挾みこんで形成した」(【請求項7】)ものであって、実施の態様においても、「図3に示す小孔径エキスパンドメタル25と図4に示す大孔径エキスパンドメタルの間に、厚さが6〜12μm位の極薄で光を通すプラスチック等の透光フィルムを挾み込んだ三層構造」(段落【0011】)のものしか記載されていない。 一方、本件請求項1に係る発明の構成の一部である、「前記透光吸音パネル部材は、・・・2枚の網目部材と、前記2枚の網目部材間に挾まれて重ね合わされる極薄透光フィルムとを有する」という構成においては、極薄透光フィルムの両側にある部材は「網目部材」と記載されていることから、網目部材として、エキスパンドメタル以外の網目部材、例えば、従来から網目部材として知られている、金属線を縦横に連結した金網や、繊維で作られた網等をも含むことになり、さらに、2枚の網目部材の目(孔)の大きさについても、2枚の網目部材の目(孔)が同じ大きさのものをも含むことになる。 しかしながら、出願明細書等には、網目部材として、上記したエキスパンドメタル以外の網目部材や、目(孔)の大きさが同じ構造のものについては、何ら記載されていないし、かつ、出願明細書等を総合して検討したとしても、「網目部材として、上記したエキスパンドメタル以外の網目部材や、目(孔)の大きさが同じ構造のものをも含む」という事項が直接的かつ一義的に導き出せない。 したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。また、請求項1を引用している、請求項3、4、7に係る発明についても同様のことがいえる。 なお、被請求人は、図3及び図4を見ると、図示上、いずれの部材の形状も網目部材であることが明らかであり、図3及び図4を考慮して検討すれば、出願当初より、「2枚の網目部材」が示されていることは明白であると、主張する。 しかしながら、上記したように、出願明細書等において、図3及び図4に網目状物は記載されているものの、「図3の網目状物は、多数の目(孔)25aを有する小孔径エキスパンドメタル25、図4の網目状物は、多数の目(孔)27aを有する大孔径エキスパンドメタル27」としか解すことができず、透光吸音パネル部材に、網目部材として、エキスパンドメタルを用いたことは認められるものの、エキスパンドメタルの上位概念としての網目部材については何ら記載されていないので、被請求人の主張は採用できない。 (五)結論 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1,3,4,7に係る発明は、いずれも、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第1号の規定により、これを無効にすべきものである。 また、審判費用の負担については、特許法第169条第2項の規定により準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-03-04 |
結審通知日 | 2002-03-07 |
審決日 | 2002-03-19 |
出願番号 | 特願平8-104526 |
審決分類 |
P
1
122・
561-
Z
(E01F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 川島 陵司 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
伊波 猛 鈴木 憲子 |
登録日 | 2000-05-26 |
登録番号 | 特許第3069770号(P3069770) |
発明の名称 | 透光・吸音パネルの組立構造 |
代理人 | 渡辺 望稔 |
代理人 | 吉原 省三 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 中澤 直樹 |