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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1087958
異議申立番号 異議2003-70808  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-31 
確定日 2003-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3329902号「表面処理方法及び表面処理装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3329902号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第3329902号については、平成5年9月13日に特許出願され、同14年7月19日に設定の登録がされ、その後、同15年3月31日に山口雅行より本件の請求項1及び請求項2に係る特許について特許異議の申立てがされ、同15年7月2日付で取消しの理由の通知がされ、その指定期間内である同15年9月9日に明細書について訂正の請求がされた。

第2 特許異議申立ての理由及び取消しの理由の概要
特許異議申立人は、証拠として本件特許の出願前に日本国内において頒布された刊行物である下記の甲第1号証乃至甲第7号証を提出して、本件の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明であるか、或いは、それらの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1及び請求項2に係る特許は、特許法第29条の規定に違反して特許されたものであり、取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証 特開平 2- 47293号公報
甲第2号証 特開平 2-190496号公報
甲第3号証 特開昭61- 73333号公報
甲第4号証 特開昭55- 35935号公報
甲第5号証 特開平 3- 49223号公報
甲第6号証 特開平 2-102529号公報
甲第7号証 特開平 2- 54800号公報
また、当審で通知した取消しの理由は、特許異議申立ての理由に沿うものである。

第3 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
特許権者は、本件登録時の明細書(以下「登録明細書」という。)を訂正請求書に添付した明細書(以下「訂正明細書」という。)記載のとおり以下のように訂正しようとするものである。
(1) 訂正事項a
登録明細書の特許請求の範囲の請求項1における「被処理体」を「半導体基板」と訂正し、表面処理を行う際に「前記水溶液を収容する収容体に前記半導体基板を保持し」との限定を付加し、「水溶液の電位に対して負の電位を前記被処理体に与え」を「水溶液の電位に対して1.0 V 以下の負の電位を前記半導体基板に与え」と訂正する。
そして、訂正個所に下線を付して訂正後の請求項1全体を示すと以下のとおりである。
「【請求項1】 水溶液を用いて半導体基板の表面処理を行う表面処理方法であって、
前記表面処理を行う際に、前記水溶液を収容する収容体に前記半導体基板を保持し、前記水溶液の電位に対して1.0 V 以下の負の電位を前記半導体基板に与え、前記半導体基板に陽イオンに配位する陰イオンとの反発力を誘起させることを特徴とする表面処理方法。」
(2) 訂正事項b
登録明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3) 訂正事項c
登録明細書の【発明の名称】並びに【発明の詳細な説明】の段落【0001】及び【0008】の「表面処理方法及び表面処理装置」を「表面処理方法」と訂正し、【課題を解決するための手段】の段落【0010】を削除する。
(4) 訂正事項d
登録明細書の段落【0034】及び【0036】の「Ze」を「Zn」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無及び拡張・変更の存否
(1) 訂正事項aについて
訂正事項aは、「被処理体」を「半導体基板」に限定し、「前記水溶液を収容する収容体に前記半導体基板を保持し」という限定条件を付加し、さらに、「水溶液の電位に対して1.0V以下の負の電位を前記半導体基板に与え」として、与える電位を限定するものである。
そして、半導体基板の表面処理方法に関するという点については、例えば登録明細書の段落【0001】、【0011】及び【0013】以下の【実施例】に記載されており、また、半導体基板を収容体に保持する点は、例えば、同段落【0017】及び図1に記載されており、さらに、半導体基板に印加する電位は1.0V以下で効果がある点は、同段落【0019】の記載を根拠とするものである。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2) 訂正事項bについて
訂正事項bは、請求項を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3) 訂正事項cについて
訂正事項cは、訂正事項a及び訂正事項bに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、明りょうでない記載の釈明に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4) 訂正事項dについて
「Ze」なる金属イオンは存在せず、汚染金属濃度の測定結果を表す【表1】の内容から、これは明らかに「Zn」の誤記であり、訂正事項dは、誤記の訂正に相当し、且つ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるから、本件の訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第4 特許異議の申立てについての判断
1 本件発明
本件については第3の3に示すように訂正が認められており、本件特許は請求項1に係るものだけであるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正明細書及び登録時の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された第3の1(1)に示すとおりの「表面処理方法」であると認める。
2 甲各号証の記載内容
これに対して、特許異議申立人の提出した甲第1号証乃至甲第7号証にはそれぞれ以下の発明乃至技術的事項が記載されていると認める。
(1) 甲第1号証
スポット溶接性に優れためっき鋼板の製造方法において、亜鉛イオンと酸化剤を含有する酸性浴中で鋼板を陰極とし電解により酸化物層を形成すること。
(2) 甲第2号証
スポット溶接性に優れためっき鋼板の製造方法において、硝酸亜鉛を主成分とする浴中で鋼板を陰極とし電解処理すること。
(3) 甲第3号証
洗浄装置において、被洗浄物(ウエハ)を純水中で洗浄する際に、被洗浄物を陰極として洗浄を行うこと。
(4) 甲第4号証
グリス除去方法において、グリスフイルタをカ性アルカリを含んだ水溶液中で洗浄する際に、グリスフィルタを陰極として洗浄を行うこと。
(5) 甲第5号証
ウエハの洗浄装置において、ウエハを洗浄する際に、ウエハの表面に-1〜-5Vの負電圧を印加すること。
(6) 甲第6号証
マスク洗浄方法において、被洗浄基板を電解質溶液中で洗浄する際に、被洗浄基板を陰極として電圧を印加すること。
(7) 甲第7号証
半導体基板の洗浄方法および装置において、半導体基板を洗浄液中で洗浄する際に、半導体基板に電位を与えること。
3 対比・検討
本件発明と甲各号証記載の発明乃至技術的事項とを対比すると、甲各号証記載の発明乃至技術的事項は、本件発明と部分的に共通するものの、いずれも本件発明の「前記水溶液を収容する収容体に前記半導体基板を保持し、前記水溶液の電位に対して1.0 V 以下の負の電位を前記半導体基板に与え、前記半導体基板に陽イオンに配位する陰イオンとの反発力を誘起させること」という構成要件を備えていない。
そして、本件発明は、上記構成要件を備えることによって訂正明細書記載の「本発明によれば、水溶液を使用して被処理体の表面処理を行う際の被処理体の表面の水酸化や表面荒れ及び金属吸着等を大幅に低減して、被処理体の表面及び内部の欠陥密度を極めて低いレベルに抑制することができる。」とういう効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明であるとすることができないだけでなく、それらの発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。
4 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する特許異議申立ての理由及び提出した証拠によっては、本件の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件の請求項1に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表面処理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液を用いて半導体基板の表面処理を行う表面処理方法であって、
前記表面処理を行う際に、前記水溶液を収容する収容体に前記半導体基板を保持し、前記水溶液の電位に対して1.0V以下の負の電位を前記半導体基板に与え、前記半導体基板に陽イオンに配位する陰イオンとの反発力を誘起させることを特徴とする表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は表面処理方法に関し、特に水溶液を用いた半導体基板の表面処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子に形成される電子回路の高集積化に伴い、半導体素子の表面あるいは接合面の欠陥密度を小さく抑える必要性がますます高まってきている。この欠陥とは、一般に、半導体表面に存在する電子やホールのトラップを生ぜしめる界面準位、及び結晶の格子欠陥である。たとえば、従来のMOSトランジスタの界面準位密度は109〜1011個/cm2のレベルにあるが、より集積度の高い記憶素子或いは量子デバイス等の高性能デバイスを実現するためには、界面準位密度を109個/cm2ないしはそれ以下の水準に抑制する必要があるとされている。
【0003】
これらの界面準位や結晶の格子欠陥が発生する原因の1つは、半導体基板に洗浄等の表面処理を加える工程において半導体基板表面に生じる水酸化や表面荒れ、またこれらに伴う水溶液中の金属イオンの吸着であると考えられる。
【0004】
すなわちSi半導体基板等の表面処理を水溶液中で行う場合は、通常、酸性やアルカリ性や中性の、広範囲のpH領域の水溶液が処理液として用いられる。しかし、たとえばアルカリ性の水溶液を用いて表面処理を行う場合には、比較的安定な水素終端Si表面でも表面荒れが生ずる。また、中性の水溶液を処理液として用いる場合でも、水溶中にOH-イオンが存在することに起因し必ずSi表面が水酸化することが知られている。
【0005】
このような水酸化や表面荒れは、水溶液中に必ず存在する金属イオンの吸着を誘起し、特にアルカリ性のpH領域で表面処理する場合に、金属吸着が生じやすい。また、これらの表面荒れ、水酸化、金属吸着は半導体表面に欠陥を発生させると同時に、吸着金属が半導体結晶の内部に入り込み、結晶内部にも格子欠陥を発生させる。つまり半導体基板内部にpn接合等の接合面を形成するときには、接合面に必ず欠陥が発生することになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来、水溶液を処理液として用いて、半導体基板の表面処理を行う場合には、半導体基板表面及び結晶内部における欠陥の発生は避けられなかった。この欠陥の発生を極力抑制するためには、pH=7の純水中で処理するのが好ましいが、半導体素子の製造工程中には、アルカリ性及び酸性のpH領域で処理する工程が必ず含まれている。そのため、たとえばアルカリ性の水溶液を用いた場合は半導体基板の表面荒れ、水酸化、金属吸着が必ず発生し、さらに強アルカリ性の水溶液では著しいエッチング現象が生ずる。また含有金属イオンの濃度が検出限界以下の水溶液を用いた場合でも、かなりの金属吸着が発生して欠陥を誘起する。
【0007】
したがって、半導体基板を広範囲のpH領域の水溶液で表面処理する際、水酸化や表面荒れや金属吸着等を、極めて低い水準に抑制する有効な手段がなかった。これは、半導体素子の欠陥密度が非常に小さいことが要求される高性能デバイスの開発をする際の大きな障害となっていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、半導体基板等の表面処理を水溶液を用いて行う際の、水酸化、表面荒れ、及び金属吸着の発生を低減し、半導体素子表面や内部の欠陥密度を極めて低く抑制することのできる表面処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためなされた本願第1の発明は、水溶液を用いて、被処理部材の表面処理を行う表面処理方法であって、表面処理を行う際、前記被処理部材に、前記水溶液の電位に対して負の電位を与えることを要旨とする。
【0010】
【0011】
なお、本発明は、水溶液による表面清浄化処理及び純水による洗浄処理、または一般的な化学的表面処理等水溶液を用いた被処理体の表面処理、水溶液中での被処理体の表面処理の全てに適用され得る。さらに前記被処理体としては特に限定されないが、たとえばSi、GeまたはSi-Ge混晶等の半導体基板が例示される。また、本発明において水溶液とは、純水及び洗浄用の任意の処理液等を含むものとする。
【0012】
【作用】
上述の如く構成したことにより、本発明では、被処理体表面や結晶内部に欠陥を誘起する被処理体表面の水酸化、表面荒れ、金属吸着等を低減することができる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。まず、本発明の原理について説明する。
【0014】
一般に、半導体基板の表面処理に際しては、酸性の処理液からアルカリ性の処理液に及ぶ広範囲のpH領域のものが適宜用いられる。このような水溶液を用いて、半導体基板の表面処理を行うと、半導体基板の表面に化学変化が生じ、その化学変化が表面欠陥を誘起して半導体素子の特性を劣化させる大きな原因となっている。
【0015】
そこで本発明者らが研究を進めた結果、この化学変化には水溶液中に存在する負電荷のある種のアニオン、たとえばOH-、Cl-、F-等が大きく影響していることが明らかになった。この種のアニオンは、水溶液中に、電離した状態で必ず存在する。一方、特にSiやGe系の半導体表面は、このアニオンと5配位の反応中間体を容易に形成し、その反応中間体が半導体基板表面の化学反応を促進すると考えられる。アニオンを含むイオン種が最も少ない水溶液はpH=7の純水であるが、この純水においてもOH-イオンは存在する。したがって、たとえばSi半導体表面で最も安定と考えられる水素終端Si表面でも、純水中で水酸化が進行する。さらにアルカリ性のpH領域の水溶液では、OH-イオンの数が大幅に増加するために化学変化の速度は急激に上昇し、半導体基板の表面荒れが顕著となる。これらの水酸化や表面荒れは、水溶液に存在する金属イオンの吸着点となり、金属吸着の原因になると考えられる。
【0016】
つまり、半導体基板を水溶液で表面処理する際に、半導体基板表面の化学反応を抑制する有効な手段は、水溶液中に存在するアニオンを半導体基板表面に近付けないことである。そこで、本発明では、水溶液の電位に対して半導体基板を負の電位にするためにカソードバイアス(ネガティブバイアス)を印加し、クーロン反発によって、負の電荷をもつアニオンが半導体基板表面に近付かないようにした。
【0017】
図1は本発明の表面処理方法の原理を示す概略図である。図示されるように本発明の表面処理方法では、被処理体となる半導体基板1と標準電極3が、液槽9に満たされた水溶液11中に浸されている。半導体基板1はカセット5に収容されて支持され、さらに電源7の負の電極に接続され、電源7の正の電極は標準電極3に接続している。標準電極3は、半導体基板1にカソードバイアスを印加するための一方の電極であり、また水溶液11に浸される半導体基板1等のイオン化傾向の差によって生じる起電力を補正して電位の標準を保つためのものである。したがって、カソードバイアスの電位は開放電位(OCP)を基準にして値が決められる。また、半導体基板1を水溶液11に浸す深さは、半導体基板1を電源7に接続するための配線の接続部分が水溶液11の中に入らない深さであることが好ましい。これは、半導体基板1に接続されている配線の金属イオンが、水溶液11に溶解することを防止するためである。
【0018】
以上のような構成で半導体基板1にカソードバイアスを印加することによって、水溶液11中の負電荷のアニオンは、負にバイアスされた半導体基板1と反発して、半導体基板1表面に近付く確率が著しく低減される。したがって、半導体基板1表面の化学反応の媒体となる反応中間体がアニオンとの間で形成されにくくなり、水酸化や表面荒れ及び金属吸着の発生が抑制され、半導体基板表面や内部の欠陥密度を小さくすることができると考えられる。
【0019】
カソードバイアスは、必ずしもバイアス電圧を時間的に一定にさせる必要はないが、水溶液11中のアニオンを半導体基板1の表面から連続的に遠ざけるためには、定電圧の方が好ましい。電圧値としては水溶液11のpHの値にもよるが、開放電位に対してカソードバイアスの絶対値を、0.3V以上とすることが好ましく、通常は1.0V程度とすればよい。しかしながらカソードバイアスの絶対値を10V以上にすると、半導体基板1表面の絶縁破壊により格子欠陥が生じる可能性が高くなるので好ましくない。なお、表面処理の目的によって半導体基板1に高電位を印加できない場合は、開放電位に対して-100mV程度(最低でも-20mV〜-30mV)のカソードバイアスでもかなりの効果が認められる。
【0020】
水溶液11としては、pH=7の純水(超純水を含む)の他、酸性からアルカリ性まで広範囲のpH領域の処理液が用いられる。ここで、水溶液11中に含有されるアルカリ性成分としては、たとえばNH4OH、KOH及びC5H15NO2等の有機コリンや有機アミン、酸性成分としては、たとえばHF、HCl、HNO3、H2SO4が用いられる。また場合によっては、酸性成分とアルカリ性成分との混合物も用いられる。さらに表面処理が有機物や粒状不純物の除去を目的とする場合には、前記成分を含む水溶液に、さらにH2O2が加えられる。
【0021】
これらの水溶液系を例示すると、NH4OH/H2O、NH4OH/H2O2/H2O、HCl/H2O、HCl/H2O2/H2O、HF/H2O、HF/H2O2/H2O、H2SO4/H2O、H2SO4/H2O2/H2O、HCl/HNO3/H2O、HF/NH4OH/H2O、HF/NH4OH/H2O2/H2O、KOH/HF/H2O、コリン/H2O、コリン/H2O2/H2O、コリン/NH4OH/H2O、HF/HNO3/H2O、KOH/H2O等である。
【0022】
また、これらの水溶液系に、有機キレート剤を含む以下の添加剤を加える場合もある。すなわち、クエン酸、酒石酸、ジンコン、カテコール、レゾルシン、ピロガロール、チロン、2オキシシトロポン、アセチルアセトン、トリエタノールアミン、メチレンホフフィン酸、ジエチレントリアミンペンタホスフィン酸、トリエチレンテトラヘキサホスフィン酸、エチレンジアミンテトラ酢酸クロラニル、シアヌール酸等の添加物である。
【0023】
また半導体基板1としては、Si、Geの単結晶や多結晶あるいはアモルファスを使用することができ、またはSi-Geの混晶からなる半導体でもよい。さらに、GaAsやGaAlAs等の化合物半導体を使用することもできる。
【0024】
なお、液槽9は、水溶液11中への金属イオンの混入を極力避けるために、合成樹脂等金属以外の材料からなることが好ましい。
【0025】
次に、本発明の表面処理装置を図面を参照して説明する。図2は、本発明の表面処理装置の構成図である。ここで全体は、被処理体である半導体基板21にカソードバイアスを印加しながらその電位を制御する電位付与手段としての電圧制御系30と、水溶液31の温度を制御しながら半導体基板21の表面処理を行う温度制御系40とに大きく分けられる。
【0026】
電圧制御系30は、水溶液31に浸された半導体基板21と標準甘汞電極23と制御用電極27に接続して半導体基板21に印加されるカソードバイアスを制御するポテンショスタット33と電源35及び電圧-電流表示装置37等から構成される。半導体基板21は支持手段としてのカセット25に収容されて、水溶液31に浸されて支持される。水溶液31中には、標準甘汞電極23と制御用電極27も浸されている。この制御用電極27は、半導体基板21に印加されるカソードバイアスの電位をポテンショスタット33で制御する際の基準となるベース電圧を与えるものである。制御用電極27の材料としては、金属イオンの発生しない高純度炭素を用いることもできるが、より好ましくは白金である。標準甘汞電極23は標準電極の1つで、水溶液31の電位に対する半導体基板21のカソードバイアス電位を、標準水素電極の標準的な値に換算するために用いられる。
【0027】
これらの半導体基板21と標準甘汞電極23と制御用電極27はポテンショスタット33と接続している。ポテンショスタット33は、電源35の電圧をカソードバイアスの設定電位に変換して、表面処理中半導体基板21と標準甘汞電極23に一定の電圧を印加し、カソードバイアス電位を安定させる。カソードバイアスの電流と電圧の値は、電圧-電流表示装置37で確認される。
【0028】
温度制御系40は、水溶液31を収容する収容体としての液槽29を温度制御媒体である水41を介して収容する恒温槽43と、その水41の温度を制御して循環させる温度制御媒体循環装置45からなる。ここでは、温度が一定にされた水41を、温度制御媒体循環装置45で恒温槽43の中に循環させることにより、水41の温度が液槽29を介して水溶液31に伝達し、水溶液31の温度は設定された一定の温度に保たれる。水溶液31の温度は、表面処理の進行速度等に影響する。様々な表面処理に対応するために、この水溶液31の温度は、0.1℃オーダーの精度で制御できることが好ましい。
【0029】
なお、本発明の表面処理装置の構成は、装置を使用する目的及び状況に応じ適宜変更が可能である。たとえば、表面処理をクリーンルームのように周囲の温度が一定に保たれた環境で行う場合、また表面処理の際の化学的変化が温度にあまり影響されないような場合等には、恒温槽を含む温度制御系は特に設ける必要がない。
【0030】
次に、本発明に係る第1の実施例について説明する。まず、抵抗率4Ωcmのn型Si半導体基板の(100)表面について、48%のHF水溶液で1分間、pH=5.5のHF/NH4F水溶液で1分間、pH=7.0で純水で2分間、順次表面処理を行った。次いでこのSi半導体基板を、図2に示した表面処理装置において、温度25℃でpH=7.0の純水に浸し、開放電位(OCP)に対して-0.5Vの一定のカソードバイアスをSi半導体基板に印加しながら表面を洗浄した(試料A)。
【0031】
また、比較例として、あらかじめ同様の表面処理を行った同様の抵抗率4Ωcmのn型Si半導体基板を、図4に示す表面処理装置において、25℃でpH=7.0の純水中に放置して表面を洗浄した(試料B)。ここで図4は、従来の表面処理装置の構成図であり、被処理体である半導体基板1がカセット5に収容されて、液相9に満たされた水溶液11としての純水に浸される。さらに液槽9は温度制御媒体としての水51で満たされた恒温槽53に収容されて温度制御される。
【0032】
上記の純水による表面処理の過程で、単位時間ごとに両方の試料A,Bを取り出して、Si半導体基板表面の水酸化の時間的変化を調べた。具体的には、試料表面に発生するSi-OH結合の伸縮振動(374.0cm-1)の強度変化を、高分解能電子損失スペクトロスコピーによって測定した。その測定結果を図3に示す。
【0033】
図3中、横軸は純水中での表面処理時間、縦軸はSi-OH結合の伸縮振動の吸収スペクトル強度比率である。図3から明らかなように、カソードバイアスを印加しない従来の表面処理装置で表面処理を行った試料Bは、最初の数分間で急激に被処理体表面の水酸化が進行し、その後さらにゆっくりと水酸化が進んでいる。これに対し、半導体基板にカソードバイアスを印加して表面処理を行った試料Aは、表面のSi-OH結合の吸収スペクトル強度が漸増してはいるが検出限界に近く、試料Bに比べて1桁以上も低いことがわかる。すなわち、Si半導体基板表面の水酸化の進行は、試料Aの方が試料Bよりもはるかに低く、被処理体にカソードバイアスを印加することにより、安定な水素終端Si表面が比較的よく保たれたまま表面処理が行われることが確認された。
【0034】
次に本発明に係る第2の実施例を説明する。まず、第1の実施例と全く同様にn型Si半導体基板(100)表面について、48%のHF水溶液で1分間、pH=5.5のHF/NH4F水溶液で1分間、pH=7.0の純水で2分間、順次表面処理を行った。その後、NH4OH水溶液(30%)、H2O2水溶液(35%)及びH2Oが1:1:5の容積比で混合されてなる洗浄液を用いて、上記Si半導体基板表面を70℃で10分間洗浄した。なお、この洗浄液は、AlとFeとZnの各金属イオンにより、1ppbの濃度で強制汚染されたものである。
【0035】
次いで、図2に示した表面処理装置において、水溶液としてpH=7.0の純水を用いSi半導体基板表面を10分間洗浄した。このときカソードバイアスは、開放電位に対して-0.5Vの定電圧で印加した(試料A)。また比較のため、図4に示した従来の表面処理装置において、金属イオンで汚染された同様のSi半導体基板をpH=7.0の純水で10分間洗浄した試料B)。
【0036】
上記の純水による表面処理の後、試料A、Bを取り出し、それぞれのSi半導体基板の鏡面仕上げ面に弗化水素酸液を滴下して、表面に吸着しているAlとFeとZnの汚染金属を液滴中に溶解した。この液滴を、フレームレス原子吸光法で分析し、純水による表面処理後にSi半導体基板表面に吸着している汚染金属の濃度を測定した。その測定結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

表1に示されるように、カソードバイアスを印加しない従来の表面処理装置で表面処理を行った試料Bと比較すると、本発明の表面処理装置で半導体基板にカソードバイアスを印加して表面処理を行った試料Aでは、半導体基板表面のそれぞれの汚染金属の濃度が、5分の1程度に抑制されていることが確認された。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、水溶液を使用して被処理体の表面処理を行う際の被処理体の表面の水酸化や表面荒れ及び金属吸着等を大幅に低減して、被処理体の表面及び内部の欠陥密度を極めて低いレベルに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の表面処理方法の原理を概略的に示す説明図である。
【図2】
本発明の表面処理装置を示す構成図である。
【図3】
表面処理の過程でのSi半導体基板表面の水酸化の時間的変化を示す特性図である。
【図4】
従来の表面処理装置を示す構成図である。
【符号の説明】
1,21 半導体基板
3 標準電極
5,25 カセット
7,35 電源
9,29 液槽
11,31 水溶液
23 標準甘汞電極
27 制御用電極
30 電圧制御系
33 ポテンショスタット
37 電圧-電流表示装置
40 温度制御系
41 水
43 恒温槽
45 温度制御媒体循環装
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-24 
出願番号 特願平5-227586
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 神崎 孝之
宮崎 侑久
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3329902号(P3329902)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 表面処理方法  
代理人 外川 英明  
代理人 外川 英明  

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