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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1087998
異議申立番号 異議2002-70398  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-06-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-20 
確定日 2003-10-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3200406号「治験支援装置」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3200406号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
本件特許異議の申立てに係る特許第3200406号は、平成9年11月20日の出願であって、平成13年6月15日に設定登録され、同年8月20日に特許公報が発行されたものである。
その後、平成14年2月20日に、河井清悦より、全請求項(請求項1〜5)に係る特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成15年6月26日付け(発送日:平成15年7月8日)で取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年8月22日に訂正請求がなされたものである。

第2.取消理由通知の概要
平成15年6月26日付け取消理由通知は、「本件特許第3200406号の請求項1〜5に係る特許は、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」及び「本件特許第3200406号の請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反する。」というもので、その概要は次のとおりである。

A.特許法第36条第4項及び第6項違反について
1.請求項1第3行と第17行の「治験実施計画書」が同じものか、別のものか明確でなく、「治験実施計画書」が何を表しているか明確でない。
2.同じく請求項1第14行の「システム」が何のシステムであるのか明確でない。
3.請求項2第1行の「治験実施計画書」が、請求項1に記載された「治験実施計画書」のどちらのものか明確でない。
4.請求項2〜5は、上記1と同様の点が明確でない。
5.発明の詳細な説明が、特許請求の範囲或いは図面の記載に対応しておらず、明確でない。

B.特許法第29条第2項違反について
刊行物1:特開平9-97286号公報
刊行物2:特開平1-320049号公報
刊行物3:特開平6-187361号公報
刊行物4:「電子カルテシステムの開発(1)」
東京都立科学技術大学研究報告第2号(1988.3発行)第83〜88頁
刊行物5:特開平4-318675号公報

【請求項1、5について】
本願の請求項1に係る発明は、特許異議申立書に記載された理由により、上記刊行物第1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【請求項2、3について】
本願の請求項2、3に係る発明は、特許異議申立書に記載された理由により、上記刊行物第1〜3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【請求項4について】
本願の請求項4に係る発明は、特許異議申立書に記載された理由により、上記刊行物第1〜5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
特許権者は、上記取消理由通知に対して、平成15年8月22日付けで訂正請求書を提出し、その請求の趣旨は、本件特許明細書及び図面を訂正請求書に添付した訂正明細書及び図面のとおり訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は次の(1)〜(21)のとおりである。
(1)訂正事項a
明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「システム」(特許公報2欄3行)を「病院情報システム」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の「項目ごとにタグが付された治験実施計画書」(同2欄6〜7行)を「医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(3)訂正事項c
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2の「治験実施計画書」(同2欄10行)を「タグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(4)訂正事項d
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項2の「症例記録フォーマット」(同2欄11行)を「タグ付き症例記録フォーマット」と訂正する。
(5)訂正事項e
明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の請求項2の「該症例記録フォーマット」(同2欄14行)を「症例記録フォーマット」と訂正する。
(6)訂正事項f
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項g
誤記の訂正を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0007】4行(指摘行数は特許公報による。以下同じ)の「検査結果が」を「検査結果を」と訂正する。
(8)訂正事項h
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0017】14行の「システム」を「病院情報システム」と訂正する。
(9)訂正事項i
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0017】18〜19行の「項目ごとにタグが付された治験実施計画書」を「医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(10)訂正事項j
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0022】2〜3行の「項目ごとにタグが付された治験実施計画書」を「医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(11)訂正事項k
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0023】2行の「治験実施計画書」を「タグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(12)訂正事項l
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0025】2行の「治験実施計画書」を「タグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(13)訂正事項m
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0025】3行の「症例記録フォーマット」を「タグ付き症例記録フォーマット」と訂正する。
(14)訂正事項n
誤記の訂正を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0045】7行の「コンピュータシステム500」を「コンピュータシステム600」と訂正する。
(15)訂正事項o
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0045】7及び8行の「治験実施計画書」を「タグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(16)訂正事項p
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0046】1〜2及び2〜3行の「治験実施計画書」を「タグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(17)訂正事項q
誤記の訂正を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0047】1〜2行の「概念図」を「図」と訂正する。
(18)訂正事項r
明りょうでない記載の釈明を目的として、発明の詳細な説明の段落番号【0047】7行の「治験実施計画書(症例記録フォーマット)」を「タグ付き治験実施計画書(タグ付き症例記録フォーマット)」と訂正する。
(19)訂正事項s
明りょうでない記載の釈明を目的として、図面の簡単な説明の【図4】の「治験実施計画書」を「タグ付き治験実施計画書」と訂正する。
(20)訂正事項t
誤記の訂正を目的として、図面の簡単な説明における【図6】の「概念図」を「図」と訂正する。
(21)訂正事項u
誤記の訂正を目的として、【図3】における、左上の引き出し線に付記された「500」を「600」と訂正する。
(22)訂正事項v
誤記の訂正を目的として、【図3】における「3312」と付記された枠内の「実施計画」を「治験実施計画書」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
当該訂正は、この「システム」が、本件発明において存在する2つのシステム、即ち「病院情報システム」と「医薬品開発元のコンピュータシステム」とのどちらのシステムであるかを明確にするものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たり、又、「病院情報システム」については、発明の詳細な説明の段落番号【0034】及び図1、3に記載されている事項であるから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(2)訂正事項bについて
当該訂正は、読取手段により読み取られて治験データベースに格納される「項目ごとにタグが付された治験実施計画書」が、医薬品開発元において作成されたタグ付きのものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、「医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書」は、発明の詳細な説明の段落【0033】後半部及び段落番号【0046】、段落番号【0047】に記載されている事項であるから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(3)訂正事項cについて
当該訂正は、「治験実施計画書」が「タグ付き」のものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落番号【0046】及び図4に記載されている事項であるから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(4)訂正事項dについて
当該訂正は、「症例記録フォーマット」が「タグ付き」のものであることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落番号【0047】に記載されている事項であるから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(5)訂正事項eについて
当該訂正は、請求項2の前段において「症例記録フォーマット」なる用語はなく、これを「該」で受けることは明確でないことを訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たり、又、「症例記録ファーマット」については、発明の詳細な説明の図6に記載されている事項であるから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(6)訂正事項fについて
当該訂正は、特許請求の範囲の請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。
(7)訂正事項gについて
当該訂正は、文の前後関係からみて、助詞の「が」が誤りであることは明らかであり、それを訂正するものであるから、誤記の訂正に当たる。
(8)訂正事項h〜m、o、p、r、sについて
これら訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴う、明細書の記載の整合性をとるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たり、又、これらの点は、上記のとおり、明細書或いは図面に記載されている事項であるから、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(9)訂正事項n、uについて
当該訂正は、医薬品開発元のコンピュータシステムに付記されている「500」なる番号が、図1及び符号の説明から明らかなように「通信回線」のことであり、番号が重複していることを訂正するためのものであるから、誤記の訂正を目的とするものに当たる。
(10)訂正事項q、tについて
当該訂正は、症例記録フォーマットを表す図は、図6のとおり、症例記録そのものを表す図であって、概念図ではないから、誤記の訂正に当たる。
(11)訂正事項vについて
当該訂正は、治験データベースには「実施計画」は格納されておらず、正しくは「治験実施計画書」が格納されているから、誤記の訂正に当たり、又、この点は、願書に最初に添付した明細書の段落番号【0041】に記載されていた事項であるから、当該訂正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。
(12)さらに、上記訂正事項a〜vは、何れも、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.まとめ
以上のとおりであるから、上記各訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き各号に規定する目的に適合し、同法第120条の4第3項により準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に違反するものではないから、当該訂正請求を認める。

第4.特許異議の申立てについての判断
1.申立ての理由の概要
特許異議申立人 河井 清悦は、甲第1号証乃至甲第7号証を提出し、本件請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許法第113条第2項の規定により取り消されるべきものである、と主張する。
【証拠方法】
(1)甲第1号証:特開平9-97286号公報
(2)甲第2号証:特開平1-320049号公報
(3)甲第3号証:特開平6-187361号公報
(4)甲第4号証:「電子カルテシステムの開発(1)」
東京都立科学技術大学研究報告第2号(1988.3発行)第83〜88頁
(5)甲第5号証:特開平4-318675号公報
(6)甲第6号証:特開平9-218880号公報
(7)甲第7号証:特開平7-225709号公報

2.本件発明
上記第3.に記載したとおり、本件特許について訂正請求が認められたので、特許第3200406号に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める(以下「本件発明1〜4」という。)。
【請求項1】
治験を特定する治験IDと、
該治験IDに紐付けられた、治験の実施計画が記述された治験実施計画書、および治験の対象者を特定する患者IDと、
該患者IDに紐付けられた、治験対象者のプロフィールをあらわす患者情報、治験対象者への投薬を特定する投薬情報、および治験対象者の検査結果を特定する検査情報とが記録される治験データベースが記憶される記憶手段と、
前記治験データベースを構築するための情報を入力する入力手段と、
前記治験データベースから抽出された情報を含む、治験対象者に関する治験経過をあらわす情報を出力する出力手段とを備え、
前記入力手段が、治験対象者を一部に含む複数の患者に関する患者情報、投薬情報、および検査情報を含む情報を管理する病院情報システムに治験対象者を特定する患者IDを渡し、該システムから送られてきた、該患者IDに対応する患者情報、投薬情報、および検査情報を受け取って前記治験データベースに格納する通信手段と、医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書を読み取って前記治験データベースに格納する読取手段とを含むものであることを特徴とする治験支援装置。
【請求項2】
前記タグ付き治験実施計画書が、治験対象者の治験経過の記録様式をあらわすタグ付き症例記録フォーマットを含むものであって、
前記出力手段が、治験対象者に関する治験経過をあらわす情報を症例記録フォーマットに則した形式で出力するものであることを特徴とする請求項1記載の治験支援装置。
【請求項3】
前記治験データベースが、病名および症状名のりストを含むものであって、
この治験支援装置が、重篤事象の発生を報告するための重篤事象報告書の作成を支援する作成支援手段を有し、
該作成支援手段が、重篤事象報告書に書き入れる病名もしくは症状名を前記リストの中から選択させるものであることを特徴とする請求項1記載の治験支援装置。
【請求項4】
前記治験データベースが、前記治験IDに紐付けられた、治験に関する文書をあらわす画像情報、および前記患者IDに紐付けられた、治験対象者に関する文書をあらわす画像情報が記録されるものであって、
この治験支援装置が、画像情報を読み取って前記治験データベースに格納する画像読取手段を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の治験支援装置。

3.証拠方法に記載された事項及び発明
(1)甲第1号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ア)処理装置、表示装置、及び入力装置を有した試験データ管理支援システムであって、
イメージ化された記録フォームが複数の試験対象についての試験データの記録のための台紙として前記処理装置に登録され、登録された前記記録フォームが前記表示装置の画面に表示可能とされ、且つ、前記画面上に表示される前記記録フォームについて入力すべき項目毎に入力枠が設けられて当該入力枠に対して試験データの入力が可能とされており、
前記入力装置によって入力される試験データのログファイルが、前記各試験対象毎に作成されるように構成されている、
ことを特徴とする試験データ管理支援システム。(特許請求の範囲請求項1)
(イ)【発明の属する技術分野】
本発明は、試験データ管理支援システムに関し、例えば臨床試験における治験担当医師が作成するCRF(Case Report Form:症例報告書)のデータ入力及びデータ管理に利用される。(段落番号0001)
(ウ)本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、試験データの内容が変更されたり追加されることがあったとしても、新旧の試験データの読み合わせを行うことなく試験データの管理を行うことのできる試験データ管理支援システムを提供することを目的とする。(段落番号0011)
(エ)【発明の実施の形態】図1は本発明に係る試験データ管理支援システム1の構成を示すブロック図、図2は利用者ファイル21を示す図、図3は薬治験ファイル22を示す図、図4はログファイル24を示す図、図5は更新メモログファイル25を示す図、図6は入力モードログファイル26を示す図である。(段落番号0018)
(オ)図1において、試験データ管理支援システム1は、処理装置11、表示装置12、キーボード13、電子ペン14、フレキシブル磁気記録装置15、他のコンピュータとの間でデータ転送又は通信を行うための回線16などからなっている。(段落番号0019)
(カ)処理装置11に内蔵した磁気ディスク装置又はRAMには、利用者ファイル21、薬治験ファイル22、CRFファイル23、ログファイル24、更新メモログファイル25、入力モードログファイル26、イメージファイル27、メモファイル28、メールファイル29、及びコードマスタファイル30などが格納されている。(段落番号0020)
(キ)薬治験ファイル22は、各治験(臨床試験)の試験対象である患者の一覧表であり、図3に示すように、治験の状況ST、患者のイニシャルNI、性別、年齢などが登録されている。薬治験ファイル22への登録、修正、変更などは、治験担当医師が行うことができる。治験担当医師は、薬治験ファイル22の内容を適宜参照することによって、治験の進捗状況を把握することができる。(段落番号0022)
(ク)CRFファイル23には、イメージ化されたCRF(記録フォーム)が台紙として登録されている。CRFファイル23に登録する方法として、例えば、ワードプロセッサ又は他のパーソナルコンピュータなどを用い、CRFを文書として作成して用紙に印刷し、それをイメージスキャナを用いてイメージ化し、得られたイメージデータをフレキシブルディスクなどを介して処理装置11にアップロードする。又は、CRFの文書データを直接にイメージデータに変換して用いる。CRFファイル23に登録されたCRFは、薬治験ファイル22と関連付けられることにより、特定の治験について薬治験ファイル22に登録された患者の台紙として使用される。(段落番号0023)
(ケ)ログファイル24は、CRFに入力された試験データを時系列に記録したファイルである。試験データの入力方法には、CRFが表示された画面上において各項目の入力枠に電子ペン14又はキーボード13を用いて入力する方法、フレキシブル磁気記録装置15を用いてフレキシブルディスクから試験データをアップロードする方法、回線16を経由して他のコンピュータや試験装置から試験データをアップロードする方法、イメージスキャナによってデータを読み込む方法など、種々の方法が可能である。なお、試験データには、患者の氏名又は年齢などの患者に関する情報、治験担当医師に関する情報、病院に関する情報、治験の内容、経過、及び結果などの治験に関する情報など、CRFに書き込むべきあらゆる情報及びデータが含まれる。(段落番号0024)
(コ)図4に示すように、ログファイル24は、試験データを入力した日付時刻DT、CRFの項目を示すタグTG、試験データの内容CT、その他の種々の事項である備考RMなどについて、入力された試験データ毎に順に記録される。例えば図4において、7年8月11日のある時刻に、投与開始日として「7(年)8(月)12(日)」が入力されている。また、同日のある時刻に、コメントとして電子ペン14による文字入力があってそれがイメージデータとして記録されている。また、同日のある時刻に、メモとして電子ペン14による文字入力があってそれがコードデータとして格納され、その格納場所のアドレスが記録されている。また、7年8月12日のある時刻に、コメントとして電子ペン14による再度の文字入力があってそれが新しいイメージデータとして記録されている。また、7年9月8日のある時刻に、4周後の赤血球数として「430」が入力されている。(段落番号0025)
(サ)フレキシブル磁気記録装置15は、上述の種々のデータをフレキシブルディスクに書き込み又はそれから読み出すものであり、フレキシブルディスクを媒体としてデータのダウンロード及びアップロードを行う場合などに用いられる。(段落番号0032)
(シ)次に、画面HGに表示されるCRF及びその入力方法について説明する。
図7〜図9はCRF第1〜第3画面HG1〜3を示す図である。図7に示すCRF第1画面HG1では、患者の氏名をそのイニシャルで入力するための入力枠FM1、薬品の投与開始日及び投与終了日を入力するための入力枠FM2、3、病院名などを入力するための入力枠FM4などが表示されている。これらの入力枠FMに対して、電子ペン14又はキーボード13によって書き込むことにより、試験データの入力が行われる。また、画面HG1の上端縁には、種々のボタンBTが表示されている。例えば、ページボタンBT1によって次の頁が表示され、文字ボタンBT2によって文字入力モードが設定されて文字入力が行われ、数値ボタンBT3によって数値入力モードが設定されて数値入力が行われ、外部ボタンBT4によって外部との間でデータのアップロード又はダウンロードが行われる。メモボタンBT5によってメモモードが設定され、イメージボタンBT6によってイメージモードが設定される。(段落番号0033)
(ス)図13において、試験データ管理支援システム1を立ち上げた後で、利用者ID、パスワードなどの入力を行う(#11)。利用者が治験担当医師である場合には、薬治験ファイル22への登録、変更、修正、又はCRFへの試験データの入力、更新などを行うことができる(#12,13)。利用者が薬品メーカ側の治験担当者である場合にはCRFのイメージデータのCRFファイル23へのアップロード、CRFに入力された試験データのダウンロード、及び更新モードの設定などを行うことができる(#14,15)。また、両者ともにメール処理や印刷などを行うことができる(#16)。メール処理では、例えば、CRFへの試験データの入力の際における注意書き、通達事項、連絡事項などを回線16を経由して転送し、それらを参照することができる。印刷では、図示しないプリンタによってCRFの内容を過去のある時点に逆上って用紙に印刷することができる。(段落番号0041)
(セ)図14において、試験データを入力するに当たり、まず、メニューの中から試験データの入力を選択し、治験Noを指定してCRFをオープンする(#21)。そして、例えばイメージデータの入力を行う(#22)。文字入力モードに変更した場合には(#23)、文字入力を行う(#24)。細かい情報を入力する場合には、必要に応じて入力枠FMを拡大し、又は縮小することができる。入力を終了すると(#25)、更新モードが設定されている場合には、更新メモRNを記録する(#26,27)。最後にCRFをクローズする(#28)。(段落番号0042)
(ソ)上述の試験データ管理支援システム1によると、治験担当医師が画面HG1〜3において試験データを入力することによって、CRFが完成するので、CRFの用紙に記入した場合のように後でコンピュータに入力する必要がない。CRFに入力された試験データは、ログファイル24によって入力された履歴が記録されるので、入力した経過を後から総て辿ることができる。したがって、途中で修正され、変更され、又は削除された試験データについても、その事実及びその内容を後で容易に知ることができる。したがって、ログファイル24に記録された試験データを適宜ダウンロードし、その試験データに基づいて解析及び統計の処理を行うことによって、試験データの内容が途中で変更されたり追加されたことがあったとしても、従来のような読み合わせを行うことなく試験データの管理を容易且つ確実に行うことができる。(段落番号0043)
(2)甲第2号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(タ)医用診断機器10において検査された患者の検査情報は、通信インターフェース13を通じて患者データベースと呼ばれる記録装置に転送される。なお、医用診断機器10では、患者ID番号と共に検査方法に関する情報、例えば使った薬剤、被検部位、その角度などが投入されており、これらも検査結果と一緒にデータベース14へ記録される。医師が診断報告書を書こうとするときは、レポートプロセッサ16はキーボード22より患者IDを入力して、患者データベース14より患者ID番号をもとに、情報を呼び出す。(公報第左下欄2〜14行)
(3)甲第3号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(チ)この図1に例示したように、この発明のシステムにおいては、患者症例の登録・割付、中止・脱落、進捗調査、および薬剤の各種の管理データの体系的集積による構造化保存と、随時これらの構造化された保存データを抽出し、かつ、各種の報告書、論文等に提示することのできる文書データ変換することを可能としている。そして、この保存とそのデータ利用について、画像処理を実現し、かつ、各種手段での外部通信を可能としていることを大きな特徴としている。(公報2欄10〜18行)
(4)甲第4号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ツ)総合医療情報システムTHINKの特徴は、このシステムが単にレセプト作成などの医療事務にのみ使用されるのではなく、各種のオーダに応えるための、オーダリングシステムを備えており、直接的に診療活動を支援できる機能を有していることである。THINKのソフトウエア構成は、患者基本データベースおよび医療事務データベースから構成される医療事務パッケージ(IBARS)と、オーダーデータベースおよび検索用データベースべ一スをリンクさせたものとなっている(図1参照)。
患者から医事課において抽出された情報は患者基本テー夕べ一スおよび医療事務データベースへ入力される。一方、診療現場ではこれらのデータベースから患者、病歴などを取り出し参照しながら診療活動に当る。診療活動の結果生じる各種の検査、薬剤処方等のオーダが診療現場からオーダされると、この情報がオーダデータベースに貯えられ、オーダの実行状況もデータベースに貯えられる。こうして作られるオーダデータべ一スから自動的に医療事務データベースへ必要な情報が取り込まれレセプト作成などに利用される。(甲第4号証84頁左欄26行〜右欄18行)
(5)甲第5号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(テ)上記診療行為に関する診療内容や処置内容等は、医事システムに転送
する。医事システムでは、そこから医事関連情報のみを取り出し処理する。上記保管ファイルへのファイリング情報は、当該患者が複数の科を受診中であれば、他の科の保管ファイル内の当該患者のカルテにも転送する。複数科受診の情報は前記病院内一元管理情報を通じて認識する。この機能により他科における患者の診療経過および最新状態も把握することができ、患者の総合的状態の把握によるよりよい医療の実現につなげられる。また、カルテの内容は、当該科に関する部分のみを操作可能とし、他科のカルテ情報は参照のみ可能で操作はできないようにする。(甲第5号証6欄42行〜7欄3行)
(ト)診療科で操作可能なカルテの内容としては、当該科直接関連し、かつ、各々の医師について自分の担当患者情報のみに限定することを原則とする。従って、複数科受診の患者の場合には、一つの診療科の医師はその患者についての他科での検査データや処置等、最新診療内容を参照することはできるが、他科カルテへの入力等操作は一切できないようにする。(同11欄21〜27行)
(6)甲第6号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ナ)さて、検索サーバ500を初めて運用する場合、ドキュメント索引情報520は無の状態であるので、WWWサーバ100、データベースサーバ200及びファイルサーバ300では、それぞれ、検索エージェントプログラム115,215,315が起動し、CPU130,230,330はそれらプログラムに従って、次のような処理を行なう。即ち、格納している全ドキュメントデータから、それぞれ、ドキュメントデータの書誌情報やキーワードやデータ格納場所などを含むサマリー情報を抽出し、その抽出したサマリー情報をネットワークインタフェース140,240,340より通信回線610,620,630を介して検索サーバ500に転送する。(甲第6号証段落番号0033)
(7)甲第7号証には、次の事項が図面と共に記載されている。
(ニ)次に、ローカルデータベース側システムの動作について説明する。ローカルDB側システム2は、読み込み専用とし、ローカルDB21を具備し、ローカルDB21の更新時に、ローカルDB更新ID(前回の更新データの最大(最新)更新ID)と履歴DB12の記録開始IDを比較し、ローカルDB更新IDが履歴DB12の記録開始IDよりも小さい場合には、マスタDB11の全データのデータを読み込んで、ローカルDB更新IDより大きい更新IDを持つデータをローカルDB21に転写し、ローカルDB更新IDが履歴DB12の記録開始IDよりも大きい場合には、履歴DBの識別名でローカル更新IDより大きい更新IDを持つマスタDB11の更新データ(ローカルDB21更新後のマスタDB11更新データ)をローカルDB21に転写するようになっている。これにより、ローカルDB21には最新のデータのみ転写することができ、マスタDB側11で削除されたデータがローカルDB21側に残るという問題はなくなる。また、履歴データベース12のデータのうち、所定期間を経過した更新IDを持つ識別名について履歴データベース12から削除するようにした。これにより、不必要な履歴のアクセスをできるだけ少なくすることができる。(甲第7号証段落番号0023)

4.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1は、「治験に関する情報の管理に好適なデータ構造を有する治験データベースを記憶してなる治験データベースを備え、治験の実施を支援する治験支援装置を提供すること」を目的とするものである。
ところで、本件発明1を特定する事項である「治験データベース」には、「治験を特定する治験ID」、「治験IDに紐付けられた、治験の実施計画が記述された治験実施計画書」及び「(治験IDに紐付けられた、)治験の対象者を特定する患者ID」が記録されている。
この点に関して、異議申立人は「甲第1号証には、「治験ID」に該当する「治験No」(図3〜図7)が開示され、「治験実施計画書」に該当する「CRF」(図7〜図9)が開示され、「患者ID」に該当する「No.1〜3」(図3左端欄)が開示され、」と主張(異議申立書25頁最下行〜26頁2行)しているので、これについて検討する。
(a)治験実施計画書について
異議申立人が「治験実施計画書」に該当すると主張する「CRF」は、上記(イ)の記載からみて、「症例報告書」のことであるところ、本件発明1の「治験実施計画書」は、治験データベースに電子データとして格納されているものであるから、本件発明1の「治験実施計画書」と対比すべきものは、「CRF」を処理装置に内蔵される磁気ディスクに格納した「CRFファイル」であることは明らかである。
そこで、「CRFファイル」について検討するに、上記(ク)の「CRFファイル23には、イメージ化されたCRF(記録フォーム)が台紙として登録されている。CRFファイル23に登録する方法として、例えば、ワードプロセッサ又は他のパーソナルコンピュータなどを用い、CRFを文書として作成して用紙に印刷し、それをイメージスキャナを用いてイメージ化し、得られたイメージデータをフレキシブルディスクなどを介して処理装置11にアップロードする。又は、CRFの文書データを直接にイメージデータに変換して用いる。」の記載からみて、「CRFファイル」とは、台紙となるCRFを作成して用紙に印刷し、それをイメージスキャナを用いて、フレキシブルディスクなどを介して処理装置(が内蔵する磁気ディスク)に格納されるものであるから、用紙に印刷されたCRFをイメージスキャナで読み取って、データ記入用の台紙をイメージデータとして磁気ディスクに格納したものであることは明らかである。
したがって、甲第1号証に記載された「CRFファイル」は、タグが付されたものとは認められず、まして、実施計画が記述されているものとは到底認められない。
これに対して、本件発明1の「治験実施計画書」は、医薬品開発元において作成された、実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付された(SGMLの規則に従った)タグ付き治験実施計画書であり、(フロッピィディスクにダウンロードされ、)治験支援装置が設置された医療機関において、入力手段である「読取手段」により(フロッピィディスクから)タグ付き治験実施計画書が読み取られて治験データベースに格納される、実施計画が記述されたものである(段落番号0033参照)。即ち、本件発明1の治験データベースに格納されている治験実施計画書は、医薬品開発元で作成された、実施計画までもが記述された、項目ごとにタグが付されたものである。
そして、本件発明1は、上記の事項によって、治験データベースの作成の手間が大幅に省力化され、又、タグをキーワードとしてタグに対応して記述された情報を特定することができるという効果を奏するものである。
以上のとおり、甲第1号証には、本件発明1のような「タグ付き治験実施計画書」については記載も示唆もないから、異議申立人の「「治験実施計画書」に該当する「CRF」(図7〜図9)が開示され、」との主張は失当であり、この点を前提とする異議申立人の一致点に関する主張は採用できない。
(b)甲第2〜7号証について
異議申立人の提出した甲第2乃至7号証には、上記(a)に記載した「治験実施計画書」に関しては記載も示唆もない。
(c)まとめ
以上のとおりであるから、甲第1号証には、治験実施計画書を、医薬品開発元で、実施計画を記述したタグ付きのものとして作成し、それを読取手段により読み取って治験データベースに格納することについては、記載も示唆もなく、又、他の甲号各証を検討しても、これらの点を開示する記載はないから、甲第1〜7号証を以てしては、当業者が、本件発明1を容易に発明することができたものということはできない。

(2)本件発明2〜4について、
本件発明2〜4は、何れも本件発明1を引用するものであるから、本件発明1が、甲第1号証乃至甲第7号証に基づいて発明をすることができたものと言えない以上、本件発明2〜4も、甲第1号証乃至甲第7号証に基づいて発明をすることができたものと言えない。

5.当審において通知した取消理由通知について
本件明細書及び図面は、上記「第3 1.」のように訂正され、その訂正請求が認められたので、当審において通知した取消理由Aにおいて指摘した、特許法第36条に関する不備な点は解消したものである。
同じく、当審において通知した取消理由のBにおいて指摘した、特許法第29条第2項については上記「第4 4.」のとおりである。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明に係る特許を、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるとすることはできない。
又、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由は見いだせない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
治験支援装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 治験を特定する治験IDと、
該治験IDに紐付けられた、
治験の実施計画が記述された治験実施計画書、および
治験の対象者を特定する患者IDと、
該患者IDに紐付けられた、
治験対象者のプロフィールをあらわす患者情報、
治験対象者への投薬を特定する投薬情報、および
治験対象者の検査結果を特定する検査情報と
が記録される治験データベースが記憶される記憶手段と、
前記治験データベースを構築するための情報を入力する入力手段と、
前記治験データベースから抽出された情報を含む、治験対象者に関する治験経過をあらわす情報を出力する出力手段とを備え、
前記入力手段が、治験対象者を一部に含む複数の患者に関する患者情報、投薬情報、および検査情報を含む情報を管理する病院情報システムに治験対象者を特定する患者IDを渡し、該システムから送られてきた、該患者IDに対応する患者情報、投薬情報、および検査情報を受け取って前記治験データベースに格納する通信手段と、医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書を読み取って前記治験データベースに格納する読取手段とを含むものであることを特徴とする治験支援装置。
【請求項2】 前記タグ付き治験実施計画書が、治験対象者の治験経過の記録様式をあらわすタグ付き症例記録フォーマットを含むものであって、
前記出力手段が、治験対象者に関する治験経過をあらわす情報を症例記録フォーマットに則した形式で出力するものであることを特徴とする請求項1記載の治験支援装置。
【請求項3】 前記治験データベースが、病名および症状名のリストを含むものであって、
この治験支援装置が、重篤事象の発生を報告するための重篤事象報告書の作成を支援する作成支援手段を有し、
該作成支援手段が、重篤事象報告書に書き入れる病名もしくは症状名を前記リストの中から選択させるものであることを特徴とする請求項1記載の治験支援装置。
【請求項4】 前記治験データベースが、前記治験IDに紐付けられた、治験に関する文書をあらわす画像情報、および前記患者IDに紐付けられた、治験対象者に関する文書をあらわす画像情報が記録されるものであって、
この治験支援装置が、画像情報を読み取って前記治験データベースに格納する画像読取手段を備えたものであることを特徴とする請求項1記載の治験支援装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品開発過程の最終段階で実施される臨床における治験(GCP;Good Clinical Practice)のうち医療機関が治験対象者(症例)に対して行なう投薬および、検査等のいわゆる治験行為を情報管理の面から支援する治験支援装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療機関が症例(治験対象者)に対して行なう治験は、薬事法(GCP関連法令)遵守の元、製薬メーカ等の医薬品開発元が立案した治験実施計画書に従い実施される。図7は、治験行為の流れを示すフローチャートである。
【0003】
医療機関では、先ず医薬品開発元からの治験の依頼を受け付ける(ステップ101)。このとき、医療機関は、治験実施計画書201(症例記録フォーマット202を含む)を受け取る。治験実施計画書201は、医薬品開発元により作成され、治験の実施計画が記録されたものである。また症例記録フォーマット202は、症例(治験対象者)に対して行なった治験(投薬や検査)の経過を記録するための記録様式である。
【0004】
次に、その医療機関では、治験審査が行なわれ、その治験の要請を受けるのが妥当か否か判断される(ステップ102)。このとき治験審査結果を記録した治験審査記録203が作成される。この治験審査記録203は、保存が義務づけられている文書である。その治験審査によりその治験の実施が承認されると(ステップ103)、その治験の実施について、医薬品開発元とその医療機関との間で契約が結ばれる(ステップ104)。
【0005】
次に、その医療機関では、症例(治験対象者)の選定が行なわれる(ステップ105)。この症例の選定に当っては、治験実施計画書201に症例選定の基準(例えばある特定の病気を患っている患者、男女の別、年齢等)が記載されており、その基準に従って症例の選定が行なわれる。次に、そのようにして選定した症例に対し、インフォームドコンセント(Informed Consent)を実施する(ステップ106)。これは、その症例に選定された患者に対しその治験に関し十分な説明を行なった上でその患者の同意を得る行為である。このとき、その患者の治験同意文書204が作成される。この治験同意文書204も保存が義務づけられている文書である。
【0006】
次に、その同意の得られた患者(症例)に対する投薬・検査計画が立案される(ステップ107)。治験実施計画書201には、投薬の種類、用法、容量や検査の項目、時期等が、治験開始からの相対的な時間の流れに沿って記載されており、ステップ107では、それに従って、具体的な症例(治験対象者)に対し、何月何日に何を行なう、等の具体的な計画が立案される。この投薬・検査計画は、その症例(患者)のカルテ205に記載される。
【0007】
その後、その計画に従って投薬や検査が行なわれ(ステップ108)、投薬や検査が行なわれるたびにその旨がその症例のカルテ205に記入され、あるいは検査結果を示すデータシート206がカルテに貼付される。その治験の途中で重篤事象が発生したときは(ステップ109)、重篤事象報告書207が作成される(ステップ110)。重篤事象とは、投薬等による、あるいはその投薬等との因果関係は不明であっても、その症例(治験対象者)にあらわれた何らかの症状の異変をいい、重篤事象があらわれたときは、その後所定の期間内に速やかに、その症例にあらわれた病気や症状をまとめた重篤事象報告書207を作成して医薬品開発元に報告する義務がある。この重篤事象報告書には、担当医師の署名等が必要とされる。
【0008】
この重篤事象報告書をまとめるにあたっては、その症例のカルテ205にそれまでの治験の経過が記録されているため、そのカルテ205からデータ等が転記される。また、その治験の途中で、治験中止・脱落が発生したときは(ステップ111)、治験中止・脱落報告書208が作成され、その報告がなされる。治験中止とは、それ以上治験を続けることのできないような何らかの理由が発生したときに担当医師の判断でその治験を中止することをいい、脱落とは、症例(治験対象者)が体調の不調等、何らかの理由で治験の続行を拒否することをいう。
【0009】
治験中止・脱落報告書208の作成にあたっては、やはりその症例のカルテ205からの転記が行なわれ、その治験中止・脱落報告書208には担当医師の署名等が必要とされる。治験が終了すると(ステップ113)、決められた様式の症例記録フォーマット202への記録が行なわれ、その記録が行なわれた症例記録フォーマットが医薬品開発元へ渡される。この症例記録のフォーマットの記録に際しても、その症例のカルテ205からデータ等の転記が行なわれる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上の治験実施手順からわかるように、従来は、医薬品開発元が指定した症例記録フォーマットへの治験経過の記録(投薬の記録、検査の記録、症状の記録、所見の記録等)、および重篤事象発生時の報告書作成など、臨床治験で取り扱う情報の大部分が、手作業(医師が対象症例について記入したカルテから各種様式の書類への手作業による転記)で管理されていた。このため、従来は、以下に示すような問題があった。
【0011】
(1)症例記録フォーマットへの治験経過転記の際に記入ミス、記入漏れ、情報不足等が発生するおそれがある。新薬の効能・効果、用法、用量および使用上の注意事項などは、臨床での治験結果に基づいて決定されるが、臨床での治験結果に記入ミスや記入漏れ等があると、新薬の開発計画に重大な影響を与え、最悪の場合、薬害問題へと発展する危険性がある。
【0012】
(2)重篤事象に対する報告が遅れたり、誤った報告がなされるおそれがある。重篤事象発生に際しては、規定の様式に治験経過や症状等を記載し所定の短時間内に医薬品開発元へ報告する義務があるが、カルテからの転記のため、報告の遅れが発生したり、記入ミス、記入漏れ等による誤った報告がなされる危険性がある。
【0013】
(3)治験担当医師の、臨床治験実施に対する作業負荷が大きい。臨床治験の情報が一般患者の情報に混在しており、臨床治験の情報が集約されていないため、治験担当医師が医薬品開発元へ各種規定様式で報告する際、情報の集約と転記といった付加作業が発生し、かなりのマンパワーを必要としていた。
【0014】
具体的には、治験対象者のカルテが一般の患者のカルテと一緒になって管理されていたり、検査データ等が患者のものと混在しており、治験対象者に関するデータを収集するのに手間がかかり、さらにその収集したデータを所定の様式に転記するのに手間がかかっていた。一般の患者を対象とした投薬情報や検査情報の管理を行なうシステムは既に存在しており、かなり広く医療機関に普及してきているが、治験対象者に関するデータの収集や転記という点では、改善されていない。
【0015】
(4)治験に関する情報が漏れるおそれがある。一般患者の場合も、プライバシーの保護は重要であるが、治験に関しては特に情報の管理を徹底する必要がある。ところが治験対象者の情報も一般の患者に対する情報と混在しているため、治験に関する情報の保護の徹底が図られないおそれがある。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑み、治験に関する情報の管理に好適なデータ構造を有する治験データベースを記憶してなる治験データベースを備え、治験の実施を支援する治験支援装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する治験支援装置は、
治験を特定する治験IDと、
治験IDに紐付けられた、
治験の実施計画が記述された治験実施計画書、および
治験の対象者を特定する患者IDと、
患者IDに紐付けられた、
治験対象者のプロフィールをあらわす患者情報、
治験対象者への投薬を特定する投薬情報、および
治験対象者の検査結果を特定する検査情報と
が記録される治験データベースが記憶される記憶手段と、
前記治験データベースを構築するための情報を入力する入力手段と、
前記治験データベースから抽出された情報を含む、治験対象者に関する治験経過をあらわす情報を出力する出力手段とを備え、
前記入力手段が、治験対象者を一部に含む複数の患者に関する患者情報、投薬情報、および検査情報を含む情報を管理する病院情報システムに治験対象者を特定する患者IDを渡し、該システムから送られてきた、該患者IDに対応する患者情報、投薬情報、および検査情報を受け取って前記治験データベースに格納する通信手段と、医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書を読み取って前記治験データベースに格納する読取手段とを含むものであることを特徴とする。
【0018】
本発明の治験支援装置の記憶手段に記憶された治験データベースは、治験IDをインデックスとして治験実施計画および治験対象者(症例)が検索され、その治験対象者(症例)を特定する患者IDをインデックスとして患者情報、投薬情報、検査情報が検索される構造を有しているため、その治験データベースから特定の治験や特定の治験対象者の情報が容易に抽出され、所定様式の各種書類の作成が極めて容易となる。
【0019】
ここで、治験データベースは、治験IDに紐付けられた、治験に関する文書をあらわす画像情報、および前記患者IDに紐付けられた、治験対象者に関する文書をあらわす画像情報が記録されるものであることが好ましい。前述したように、治験審査記録、治験同意文書は原文での管理が義務づけられており、重篤事象報告書や治験中止・脱落報告書には担当医師の文書への署名等が必要となる。そこで、これらを、その文書の性質に応じ治験IDや患者IDに紐づけて画像情報として治験データベースに格納しておくことにより、その治験に関する情報を、文書として作成された情報を含め、一括管理しておくことができる。
【0020】
さらに、上記治験データベースは、病名および症状名のリストを含むものであることが好ましい。重篤事象報告書を作成する際、その重篤事象報告書に病名や症状名を記入する必要を生じるが、従来は、担当医師により、同じ病気あるいは同じ症状であっても、その表記が異なる場合が多々生じており、重篤事象の統一的な管理、分析が極めて困難であった。そこで治験データベースに病名および症状名のリストを格納しておき、重篤事象報告書の作成にあたっては、そこに格納された中から選択するというルールを定めておくことにより、重篤事象の統一的な管理、統計分析等が極めて容易となる。
【0021】
【0022】
ここで、上記本発明の治験支援装置において、上記入力手段は、医薬品開発元で作成された、治験の実施計画が記述されるとともに項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書を読み取って治験データベースに格納する読取手段を含むものである。
【0023】
医薬品開発元から項目ごとにタグが付されたタグ付き治験実施計画書を電子文書として入手し、その電子文書を読み取って治験データベースに格納することにより、治験データベース作成の手間が大幅に省力化される。さらに、上記本発明の治験支援装置において、上記入力手段は、治験対象者を一部に含む複数の患者に関する患者情報、投薬情報、および検査情報を含む情報を管理するシステムに治験対象者を特定する患者IDを渡し、そのシステムから送られてきた、その患者IDに対応する患者情報、投葉情報、および検査情報を受け取って治験データベースに格納する通信手段を含むものである。
【0024】
前述したように、多くの医療機関には、一般の患者の情報(患者情報、投薬情報、検査情報等)を管理する病院情報システムが存在している。そこで、上記通信手段を備え、この病院情報システム上の情報の中に混入している治験対象者の情報を抽出して治験データベースに組み込むことにより、情報の一貫性が保証され、転記漏れや転記ミスが防止される。
【0025】
また、上記本発明の治験支援装置において、上記タグ付き治験実施計画書が、治験対象者の治験経過の記録様式をあらわすタグ付き症例記録フォーマットを含むものであって、上記出力手段が治験対象者に関する治験経過をあらわす情報を症例記録フォーマットに則した形式で出力するものであることが好ましい。これにより、症例記録フォーマットへの自動記録が達成され、この症例記録フォーマットへの記録の段階でも転記漏れや転記ミスが防止される。
【0026】
さらに、上記本発明の治験支援装置において、上記治験データベースが、病名および症状名のリストを含むものであって、この治験支援装置が、重篤事象の発生を報告するための重篤事象報告書の作成を支援する作成支援手段を有し、その作成支援手段が、重篤事象報告書に書き入れる病名もしくは症状名を上記リストの中から選択させるものであることが好ましい。
【0027】
前述したように、重篤事象報告書に記入される病名や症状名は、同じ病気あるいは同じ症状であっても、その表記が異なることが多々生じており、重篤事象の統一的な管理、分析が極めて困難であったが、治験データベースに上記のリストを格納しておき、そのリストの中から病名や症状名を選択することにより病気や症状の表記の仕方が統一され、重篤事象の統一的な管理や分析に大きく寄与することになる。
【0028】
さらに、上記本発明の治験支援装置において、上記治験データベースが、治験IDに紐付けられた、治験に関する文書をあらわす画像情報、および、患者IDに紐付けられた、治験対象者に関する文書をあらわす画像情報が記録されるものであって、この治験支援装置が、画像情報を読み取って治験データベースに格納する画像読取手段を備えたものであることが好ましい。
【0029】
これにより、前述した紙面としての取扱いが要求される文書を含め、治験に関する情報が統一的に管理される。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の治験支援装置の一実施形態の外観を含む、その治験支援装置が設置された医療機関の情報管理ネットワークの一例を示す概要図である。ここには、本発明の一実施形態である治験支援装置300と、その医療機関内での患者一般の情報を管理し会計等に利用される病院情報システム400が示されており、それら病院情報システム400と治験支援装置300は通信回線500で相互に接続されている。また、病院情報システム400は、患者に関する様々な情報(後述する患者情報、投薬情報、検査情報等)を管理するホストコンピュータ410や、そのホストコンピュータ410において管理されている情報をアクセスするための端末コンピュータ420等からなり、それらホストコンピュータ410、端末コンピュータ420等も通信回線500で相互に接続されている。ここでは、ホストコンピュータ410は、CPUや大容量のハードディスク等が内蔵された本体部411、CRT表示装置412、キーボード413、マウス414等で構成されており、端末コンピュータ420は、やはりCPUやハードディスク等が内蔵された本体部421、CRT表示装置422、キーボード423、マウス424、プリンタ425等から構成されている。
【0031】
また、本発明の一実施形態である治験支援装置300もコンピュータシステムで構成されており、ここには、CPUやハードディスク等が内蔵された本体部301、CRT表示装置302、キーボード303、マウス304、プリンタ305、イメージスキャナ306等が備えられている。また本体部301には、フロッピィディスク310が装填されてそのフロッピィディスク310に記憶されている情報がこの治験支援装置300にアップロードされ、あるいは装填されたフロッピィディスクに治験支援装置300に蓄積されていた情報がダウンロードされる。
【0032】
また、プリンタ305では、用紙311上に、所定の様式に従って所定の情報が文字でプリントアウトされ、イメージスキャナ312では、用紙311上に記録された文書等が画像情報として読み込まれる。図2は、図1に外観を示す治験支援装置300の機能構成図である。ここに示す治験支援装置300は、入力手段320、記憶手段330、出力手段340、および支援手段350を備えている。
【0033】
記憶手段330には、後述する構造の治験データベース331が記憶されている。この治験データベース331は、固定された情報ではなく、必要に応じて情報が追記される。また、入力手段320には、フロッピィディスク310に格納された情報を読み取って治験データベース331に格納する読取手段321が備えられている。この読取手段321は、ハードウェア上は、図1に示す治験支援装置300の本体部301に備えられたフロッピィディスクドライブ装置がこれに相当する。医薬品開発元では、治験の実施計画が記述された、SGMLの規則に従ったタグ付きの治験実施計画書が作成されてフロッピィディスク310にダウンロードされ、この治験支援装置300が設置された医療機関では、その治験支援装置300を構成する読取手段321により、そのフロッピィディスク310からそのタグ付きの治験実施計画書が読み取られて治験データベース331に格納される。
【0034】
また、入力手段320には、通信回線500を介して病院情報システム400との間で通信を行なう通信手段322が備えられている。この通信手段322は、図1に示す治験支援装置300の本体部301に内蔵された通信用回路および通信プログラムがこれに相当する。この通信手段322では、病院情報システム400に対し、治験対象者を特定する患者IDが渡され、病院情報システム400から送信されてきた、その患者IDに対応する、治験対象者のプロフィール(例えばその治験対象者の身長、体重、年齢、性別等)をあらわす患者情報、治験対象者への投薬(薬品名、投薬の時期、用量等)を特定する投薬情報、および治験対象者の検査結果を特定する検査情報が受け取られて、治験データベース331に格納される。
【0035】
また、入力手段320には、画像入力手段323が備えられている。この画像入力手段323は、ハードウェア上は、図1に示す治験支援装置300のイメージスキャナ306がこれに相当し、前述した治験審査記録、治験同意文書、重篤事象報告書、治験中止・脱落報告書等が画像情報として読み取られ治験データベース331に格納される。
【0036】
さらに、入力手段320には、入力操作手段324が備えられている。この入力操作手段324は、ハードウェア上は、図1に示す治験支援装置300を構成するキーボード303やマウス304に相当し、治験データベース331へ各種情報を手入力で入力したり、この治験支援装置300へ各種の指示を入力するためのものであり、担当医師による、従来カルテに記入していた情報、例えば治験対象者の診察の際の所見や症状等がその入力操作手段324から入力され、治験データベース331に格納される。
【0037】
また、出力手段340は帳票手段341を備えている。帳票手段341は、ハードウェア上は、図1に示す治験支援装置300に備えられたプリンタ305がこれに相当し、用紙上に各所定の様式で、例えば症例記録フォーマット、重篤事象報告書、治験中止・脱落報告書等が出力される。尚、プリントアウトされた重篤事象報告書および治験中止・脱落報告書には、担当医師による署名がなされ、画像入力手段323から画像情報として読み込まれて治験データベース331に格納される。
【0038】
また、出力手段340を構成する書込手段342は、治験経過が記録された症例記録フォーマットを電子情報としてフロッピィディスク314に記録するものであり、ハードウェア上は、読取手段321と同様、図1に示す治験支援装置300の本体部301に備えられたフロッピィディスク装置が、これに相当する、本実施形態では、フロッピィディスク312に書き込まれる症例記録フォーマットには、SGMLに準拠したタグが付されたタグ付情報の形式と、帳票手段341から用紙311に出力される文書と同様なテキスト形式との2種類の形式が存在し、オペレータの指示によっていずれの形式でもフロッピィディスク312に格納することができる。この治験経過が記録された症例記録フォーマットは、例えばフロッピィディスク312に電子情報の形式で格納された状態のまま、医薬品開発元に渡される。
【0039】
さらに、この図2に示す治験支援装置300には、支援手段350が備えられている。この支援手段350は、重篤事象が発生したときに作成される重篤事象報告書や、治験の中止あるいは脱落が発生したときに作成される治験中止・脱落報告書の作成を支援する手段であり、ハードウェア上は、図1に示す治験支援装置300のCRT表示装置302、キーボード303、マウス304、プリンタ305等がこれに相当する。重篤事象報告書や治験中止・脱落報告書の作成にあたっては、CRT表示装置302の表示画面上に所定の様式を表示しておいて、その様式上に、操作者である担当医師の指示に応じて治験データベース331から抽出された情報が表示され、さらにその担当医師により必要な所見等が手入力される。特に、重篤事象報告書の作成に関し、治験データベース331には、病名や症状名のリストが格納されており、重篤事象報告書に病名や症状名を記入する際は、CRT表示装置302の表示画面上にそのリストを表示しそのリスト中から病名や症状名が選択される。こうすることにより、従来不統一であった病名や症状名の表記が統一される。
【0040】
上記のようにして作成された重篤事象報告書や治験中止・脱落報告書は、前述したように、プリンタ305で用紙311上にプリントアウトされ、担当医師による署名がなされ、イメージスキャナ306で画像情報として読み込まれて治験データベース331に格納され、その署名した原紙は医薬品開発元への報告に使用される。
【0041】
図3は、図1および図2に示す治験支援装置を、治験データベースを中心に示した模式図である。治験データベース331は、治験支援装置300内に構成されるが、この図3では、わかりやすさのため、治験データベース331が治験支援装置300の外に取り出された形で示されている。この治験データベース331には、治験ID(治験名、治験番号等)3311と、その治験の実施計画が記述された治験実施計画書3312と、治験対象者(症例)を特定する患者ID3313と、その治験に関する画像情報3314が格納されている。画像情報3314としては、例えば、治験審査記録203(図7参照)の画像情報がこれに相当する。
【0042】
これら治験実施計画書3312、患者ID3313、画像情報3314は、治験ID3311に紐づけられており、治験IDをキーワードとして、その治験IDによって特定される治験に関する治験実施計画書、患者ID、画像情報が検索される。尚、ここには簡単のため、患者IDは1つのみ示されているが、治験対象者(症例)の数はその治験により異なり、患者IDは、治験対象者(症例)の数だけ存在する。
【0043】
この治験データベース331には、さらに、前述した患者情報3315、投薬情報3316、検査情報3317、および治験対象者(症例)に関する画像情報3318が格納されている。治験対象者(症例)に関する画像情報3318としては、例えば、図7に示す治験同意文書204、重篤事象報告書207、治験中止・脱落報告書208等の画像情報が存在する。
【0044】
これら患者情報3315、投薬情報3316、検査情報3317、および画像情報3318は、患者IDに紐づけられており、患者IDをキーワードとしてその患者IDによって特定される治験対象者(症例)に関する患者情報、投薬情報、検査情報、画像情報が検索される。さらに、この治験データベース331には、病名および症状名のリスト3319が格納されている。前述したように、重篤事象報告書作成の際は、このリスト3319にリストアップされている病名、症状名の中からのみ、病名や症状名が選択される。
【0045】
この治験データベース331のうち、この病名・症状名リスト3319は、この治験支援装置300の立ち上げの際にローディングされており、この治験データベース331中の他の情報は、新たな治験の開始時、およびその治験の進行に従って順次に構築される。図3に示す医薬品開発元に装置されたコンピュータシステム600では、SGMLに則ったタグが付されたタグ付き治験実施計画書が作成され、その作成されたタグ付き治験実施計画書がフロッピィディスク310にローディングされる。
【0046】
図4は、医薬品開発元により作成されるタグ付き治験実施計画書の一部を示す概念図、図5は、図4に示すタグ付き治験実施計画書の一部を画面に展開した状態を示した図である。図4に示す<……>は全てタグであり、そのタグをキーワードとしてそのタグに対応して記述された情報を特定することができる。
【0047】
また、図6は、症例記録フォーマットの図である。この図6には、既に検査結果が記入されているが、検査結果が未記入の、タグ付きの症例記録フォーマットが医薬品開発元で作成され、治験実施計画書の一部としてフロッピィディスク310にローディングされる。医薬品開発元で作成されフロッピィディスク310に格納されたタグ付き治験実施計画書(タグ付き症例記録フォーマットを含む)は、その治験を実施する医療機関に渡され、その医療機関に設置された治験支援装置300にローディングされ、治験データベース331に格納される。その後、その医療機関では、図7に示したフローに従い、治験審査、治験対象者(症例)の選定、その症例へのインフォームドコンセント等が実施され、その治験の準備が進められる。この段階では、治験データベース331には、治験IDに紐づけられて患者IDが格納される。また、治験審査記録、治験同意文書が作成され、イメージスキャナ306で画像情報として読み込まれて治験データベース311に格納される。
【0048】
また、病院情報システム400には、治験対象者(症例)を含む患者一般について患者情報4001、投薬情報4002、検索情報4003等が蓄積されている。治験支援装置300から病院情報システム400に治験対象者(症例)の患者IDが通知されると、病院情報システム400では、その患者IDにより特定される患者に、マーク4004が付される。病院情報システム400内では、患者情報と投薬情報と検査情報が患者毎に紐付けられており、マーク4004が付された患者の情報が抽出されて、図3に矢印で示す如く一方的に治験支援装置331に送られ、治験データベース331に患者IDに紐づけられて格納される。その後も、病院情報システム400においてそのマーク4004の付された患者に関し新たな情報が収集されると、その情報も治験支援装置300に送られ、患者IDに紐づけられて治験データベース331に格納される。
【0049】
治験の途中で重篤事象が発生したときは、重篤事象報告書が作成されるが、その際は、治験データベース331中の病名・症状名リスト3319がCRT表示装置302の表示画面上に表示され、その中から病名や症状名が選択される。作成された重篤事象報告書は、用紙311上にプリントアウトされ、担当医師により署名され、イメージスキャナ306により画像情報として読み込まれ、患者ID3313に紐づけられた画像情報3318として治験データベース331に格納される。その署名された重篤事象報告書は、医薬品開発元への報告に使用される。
【0050】
治験の途中で治験の中止、脱落が発生したときは、治験中止・脱落報告書が作成される。この作成された治験中止・脱落報告書は、重篤事象報告書と同様、用紙311上にプリントアウトされ、担当医師により署名され、イメージスキャナ306により画像情報として読み込まれ、患者ID3313に紐づけられた画像情報3318として治験データベース331に格納される。その署名された治験中止・脱落報告書は、医薬品開発元への報告に使用される。
【0051】
治験が終了すると、医薬品開発元で作成された症例記録フォーマット(図6参照)に検査結果等が記入される。この記入済の症例記録フォーマットは、用紙311上にプリントアウトされ、あるいはフロッピィディスク310に格納される。フロッピィディスク310に格納される症例記録フォーマットとしては、用紙311上にプリントアウトされた形式と同様のテキスト形式、および、タグ付きの形式が用意されており、フロッピィディスク310に記入済の症例記録フォーマットを格納するにあたっては、それら2通りの形式のうちいずれか一方あるいは双方が選択される。
【0052】
用紙311上にプリントアウトされた、あるいはフロッピィディスク310に格納された記入済の症例記録フォーマットは、医薬品開発元に渡される。尚、上記実施形態では、医薬品開発元と医療機関との間での情報の受け渡しにフロッピィディスク310が使用されているが、医療機関に設置された治験支援装置にCD-ROMから情報を読み込むCD-ROMドライブ装置を備えておき、医薬品開発元では、CD-ROMに治験実施計画書を格納して医療機関に渡し、医療機関から医薬品開発元へは、記入済みの症例記録フォーマットを、用紙あるいはフロッピィディスクで渡してもよく、医薬品開発元から医療機関へのタグ付きの治験実施計画書の受渡しに用いられる可搬型記憶媒体は、特定のものに限られるものではない。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、治験の効率化が図られ、さらに、記入漏れや記入ミス等が防止される。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の治験支援装置の一実施形態の外観を含む、その治験支援装置が設置された医療機関の情報管理ネットワークの一例を示す概要図である。
【図2】
図1に外観を示す治験支援装置の機能構成図である。
【図3】
図1および図2に示す治験支援装置を、治験データベースを中心に示した模式図である。
【図4】
医薬品開発元により作成されるタグ付き治験実施計画書の一部を示す概念図である。
【図5】
図4に示す治験実施計画書の一部を画面に展開した状態を示した図である。
【図6】
症例記録フォーマットの図である。
【図7】
治験行為の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
300 治験支援装置
301 本体部
302 CRT表示装置
303 キーボード
304 マウス
305 プリンタ
306 イメージスキャナ
310 フロッピィディスク
311 用紙
320 入力手段
321 読取手段
322 通信手段
323 画像入力手段
324 入力操作手段
330 記憶手段
331 治験データベース
340 出力手段
341 帳票手段
342 書込手段
350 支援手段
400 病院情報システム
410 ホストコンピュータ
420 端末コンピュータ
500 通信回線
3311 治験ID
3312 治験実施計画書
3313 患者ID
3314 画像情報
3315 患者情報
3316 投薬情報
3317 検査情報
3318 画像情報
3319 病名および症状名のリスト
【図面】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-24 
出願番号 特願平9-319593
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高瀬 勤  
特許庁審判長 小林 信雄
特許庁審判官 岡 千代子
久保田 健
登録日 2001-06-15 
登録番号 特許第3200406号(P3200406)
権利者 株式会社エフ・エフ・シー 富士通株式会社
発明の名称 治験支援装置  
代理人 山田 正紀  
代理人 山田 正紀  
代理人 山田 正紀  

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