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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H03H
管理番号 1088028
異議申立番号 異議2003-70201  
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-05-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-24 
確定日 2003-09-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3306272号「弾性表面波装置」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3306272号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続きの経緯
本件特許第3306272号の発明は、平成7年10月20日に特許出願(特願平7-273141号)されたものであって、平成14年5月10日にその特許(請求項の数4)について設定登録がなされ、平成14年7月24日に特許公報が発行され、その後、その特許(全請求項)について平成15年1月24日に雨山範子より特許異議の申立てがなされ、その特許(全請求項)について平成15年4月2日付けで取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成15年6月10日付けで訂正請求書及び意見書が提出されたものである。

【2】訂正の適否について
(1)本件訂正の内容
訂正請求書による訂正内容は、以下のとおりである。
(a)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1及び請求項4の記載を下記の通りに訂正する。
「【請求項1】 弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続すると共に、
前記ダイアタッチ部を、前記入力側端子を構成するグランド端子、及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に電気的に接続した構成としたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項4】 弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子の内いずれか一方に高インピーダンス接続すると共に、他方のグランド端子と低インピーダンス接続する構成とし、
かつ、前記ダイアタッチ部を前記入力側端子を構成するグランド端子及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に低インピーダンス接続する構成としたことを特徴とする弾性表面波装置。」
(b)訂正事項b
特許請求の範囲の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるため、明細書(平成14年1月9日付け手続補正書)の段落【0021】(特許第3306272号公報【0021】)記載の「開口部を封止する金属キャップ」を明瞭でない記載の釈明を目的として「開口部を封止する平板状の金属キャップ」と訂正する。
(c)訂正事項c
同様に、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合をとるため、明細書(平成14年1月9日付け手続補正書)の段落【0024】(特許第3306272号公報【0024】)記載の「開口部を封止する金属キャップ」を明瞭でない記載の釈明を目的として「開口部を封止する平板状の金属キャップ」と訂正する。
(2)本件訂正の適否についての判断
<訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての判断>
(2-1)訂正の目的等
本件訂正の要旨は、上記訂正事項a乃至cのとおりであって、その訂正事項aに係る訂正内容は、「金属キャップ」を「平板状の金属キャップ」と訂正するものであって特許請求の範囲の減縮を目的とし、また訂正事項b、cに係る訂正内容は、前記特許請求の範囲の訂正に伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
(2-2)検討
以下、各訂正事項について検討する。
前記訂正事項aについては、「金属キャップ」について、本件明細書全般及び図面の記載からみてその記載の範囲内のものであり、その構成を「平板状の金属キャップ」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、また訂正事項b、cについては、特許請求の範囲の記載と整合性を保つために訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明にあたるものである。
以上のとおりであって、前記訂正事項a乃至cに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、また請求項を追加するなど実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとも認められない。
(2-3)まとめ
以上のとおり、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件特許発明
訂正された特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】 弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続すると共に、
前記ダイアタッチ部を、前記入力側端子を構成するグランド端子、及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に電気的に接続した構成としたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】 請求項1記載の弾性表面波装置において、
前記入力側端子及び出力端子が、前記弾性表面波素子が接続されるパッドと外部出力端子として機能するフットパターン部とを具備する構成とし、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子のパッド、または前記出力側端子を構成するグランド端子のパッドのいずれか一方にのみ電気的に接続したことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】 請求項1記載の弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記ダイアタッチ部の前記入力側端子または前記出力側端子のグランド端子が接続された部位に電気的に接続したことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項4】 弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子の内いずれか一方に高インピーダンス接続すると共に、他方のグランド端子と低インピーダンス接続する構成とし、
かつ、前記ダイアタッチ部を前記入力側端子を構成するグランド端子及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に低インピーダンス接続する構成としたことを特徴とする弾性表面波装置。」

【4】取消理由通知
取消理由の概要
本件特許発明における全請求項[請求項1乃至4]に係る発明について、特許法第29条第2項違反として、特許異議申立人雨山範子が提出した甲第1号証乃至甲第2号証に係る刊行物を引用し、概要、以下のような取消理由を通知した。
『<引用刊行物>
刊行物1 実願昭61-139839号(実開昭63-47620号)のマイクロフィルム(異議申立人雨山範子の甲第1号証)
刊行物2 特開平4-263509号公報(異議申立人雨山範子の甲第2号証)
……(中略)……
以上のとおりであって、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明は、上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1乃至4に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。』

【5】当審の判断
(1)刊行物記載の発明
(1-1)取消理由で引用した刊行物1(実願昭61-139839号(実開昭63-47620号)のマイクロフィルム)は、本件発明と同一技術分野である「弾性表面波装置」に関するものであって、その従来技術、実施例及び図面第1図(a)〜(c)に係わる記載を参酌すると、概要、以下のような技術的事項が記載されている。
(1-1-1)「実施例による弾性表面波装置は矩形状圧電素片より成る弾性表面波素子6と絶縁性材料より成る容器1より構成されている。」(公開明細書第5頁20行〜第6頁2行)
(1-1-2)「容器1は弾性表面波素子6を載置する基台5と容器1を気密する蓋体3とからなる。基台5の長手方向寸法は蓋体3の長手方向寸法よりやや大きく形成されている。上記基台5の片面には弾性表面波素子6の電極パターン8とワイヤーボンディングによって電気的接続させ、外部との電気信号の出入を行う為の引出電極51、52、53が形成されている。この引出電極51、52、53は基台5の長手方向の一方の端まで延在しており、このうち引出電極51は、弾性表面波素子6を載置する部分を含む広い範囲にわたって形成されている。」(同第6頁9〜19行)
(1-1-3)「基台の引出電極51、52、53と電極パターン8のボンディング部84、85、86、87とがワイヤーボンディングにより接続される。この際、上記引出電極51は接地用電極として用いられ、シールド部83及び励振部81、受信部82の接地側電極812、822とボンディング部85、87を介して電気的に接続される。又、引出電極52は励振部81の入力側電極811と、引出電極53は受信部82の出力側電極821とそれぞれボンディング部84、86を介して電気的接続される。」(同第7頁8〜17行、第1図(b))
(1-1-4)「引出電極51の外部露出部分512と蓋体3の底部31に形成した金属膜311の外部導出部321とを導電性接着剤9により電気的接続を施す。」(同第8頁2〜4行、第1図(b))
(1-1-5)したがって、この刊行物1には、次のような発明が開示されている。
「弾性表面波素子(6)と、絶縁性材料からなる基台(5)と蓋体(3)とで形成された容器(1)とを有し、
一層構造の絶縁性材料に設けられた引出電極(51)に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続され入力側端子及び出力側端子となる引出電極(52)(53)を設けてなる基台(5)と、
前記基台(5)を封止する、底部(31)に金属膜(311)を蒸着した蓋体(3)とを具備する弾性表面波装置において、
前記蓋体(3)の金属膜(311)の外部導出部(321)を、前記出力側端子を構成するグランド端子である外部露出部分(512)に導電性接着剤(9)により電気的に接続すると共に、
接地用電極として用いられる前記引出電極(51)を、前記入力側端子を構成するグランド端子のボンディング部(85)、及び前記出力側端子を構成するグランド端子のボンディング部(87)の両方に電気的に接続した構成とする弾性表面波装置。」
(1-2)取消理由で引用した刊行物2(特開平4-263509号公報)には、「弾性表面波装置」に係る発明が開示されており、段落番号【0004】、及び第3の実施例と図3に係わる段落番号【0034】〜【0038】には、以下のような技術的事項が記載されている。
(1-2-1)「【0004】図11において、パッケージング部材は、多層基板1および金属キャップ2から構成される。多層基板1は、たとえば複数のセラミックシートの積層体から構成されるもので、そこには、たとえば銅を厚膜印刷することにより形成された導電パターンが形成されている。」
「【0034】この弾性表面波装置22cのパッケージング部材は、多層基板23cおよび金属板24cから構成される。多層基板23cには、第1のアースパターン25cおよび第2のアースパターン26cが形成される。
【0035】第1のアースパターン25cは、第1の上面パターン部47、第2の上面パターン部48、第1の周縁パターン部49、第2の周緑パターン部50および側面パターン部51を備え、第1の上面パターン部47と第2の上面パターン部48とはバイアホール52によって互いに電気的に接続されている。
【0036】他方、第2のアースパターン26cは、上面パターン部53、内部パターン部54および側面パターン部55を備え、上面パターン部53と内部パターン54とは、バイアホール56によって互いに電気的に接続されている。
【0037】金属板24cは、半田34cによって第1の周縁パターン部49に気密的に接合されている。
【0038】多層基板23cには、凹部57が形成され、この凹部57の底面に、さらに小凹部58が形成される。弾性表面波素子35cは、小凹部58内において第2の上面パターン部48上に固定される。この弾性表面波素子35cの入力信号側のアース端子および出力信号側のアース端子のいずれか一方は、ボンディングワイヤ36cを介して第1の上面パターン部47に電気的に接続され、いずれか他方は、ボンディングワイヤ37cを介して上面パターン部53に電気的に接続される。」
(1-2-2)したがって、この刊行物2には、次のような技術的事項が開示されている。
・「弾性表面波素子(35c)と、多層構造のセラミック基板(多層基板23c)に設けられたダイアタッチ部(第2の上面パターン部48)に弾性表面波素子(35c)が取り付けられると共に、弾性表面波素子(35c)と接続される入力側端子及び出力側端子(第1のアースパターン25c及び第2のアースパターン26c)とを設けてなるセラミックパッケージ(パッケージング部材)と、これを封止する平板状の金属キャップ(金属板24c)とを具備し、金属キャップ(金属板24c)を入力側及び出力側のうち一方のグランド端子(第1のアースパターン25c)のみに電気的に接続し、ダイアタッチ部(第2の上面パターン部48)を入力側及び出力側のうち一方のグランド端子(第1のアースパターン25c)のみに電気的に接続した弾性表面波装置(22c)」
・「入力側端子及び出力側端子(第1のアースパターン25c及び第2のアースパターン26c)が、弾性表面波素子が接続されるパッド(第1の上面パターン部47及び上面パターン部53)と外部出力端子として機能するフットパターン部とを具備し、平板状の金属キャップ(金属板24c)を、入力側端子を構成するグランド端子のパッド、または前記出力側端子を構成するグランド端子のパッドのいずれか一方(第1の上面パターン部47)にのみ電気的に接続する」構成、
・「平板状の金属キャップ(金属板24c)を、ダイアタッチ部の入力側端子または出力側端子のグランド端子(第2の上面パターン部48)が接続された部位(第1のアースパターン25c)に電気的に接続する」構成、
(2)対比・判断
(2-1)請求項1に係る発明について
(対比)
本件請求項1に係る発明と上記刊行物1(実願昭61-139839号(実開昭63-47620号)のマイクロフィルム)に記載された発明とを対比すると、刊行物1における「絶縁性材料」「基台(5)」「蓋体(3)」及び「引出電極(51)」は、それぞれ本件請求項1に係る発明における「セラミック基板」「セラミックパッケージ」「金属キャップ」及び「ダイアタッチ部」に対応させることができ、それぞれ、弾性表面波素子を収納して「容器」と「蓋体」を封止する構成として共通するものと認められるので、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点(i)を有するものと認められる。
(一致点)
「弾性表面波素子と、
電極部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなる容器と、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する蓋体と
を具備する弾性表面波装置において、
前記蓋体を、前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続すると共に、
前記電極部を、前記入力側端子を構成するグランド端子、及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に電気的に接続した特徴とする弾性表面波装置。」
(相違点)
(i)弾性表面波素子を収納する容器と蓋体及び電極部に関し、本件請求項1に係る発明にあっては、多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部を設けたセラミックパッケージと、平板状の金属キャップとからなるものであるのに対して、刊行物1にあっては、一層構造の絶縁性材料に設けられた引出電極(51)を設けた基台(5)と、底部(31)に金属膜(311)を蒸着した蓋体(3)とからなるものである点、
(検討)
前記相違点(i)について検討すると、上記刊行物2には、多層構造のセラミック基板(23c)と平板状の金属キャップ(24c)とを組み合わせたパッケージング部材が開示されており、またこの刊行物2においても平板状の金属キャップ(24c)は入力側端子を構成するグランド端子及び出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続されて上記刊行物1における蓋体の金属膜と同様のシールド用金属として機能するものであるから、刊行物2に記載された技術的事項を参酌して本件請求項1に係る発明のように構成することは当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本件請求項1に係る発明のように構成することによる作用効果も格別のものとは認められない。
(特許権者の主張について)
特許権者は、異議意見書(平成15年6月10日付)を提出し、刊行物1における蓋体と刊行物2の金属キャップ(24c)について、概要、以下のとおり主張している。
(i)『刊行物1の蓋体の部分は、金属では構成されず、セラミック等の絶縁体で構成されることが明記されています。この理由は、金属で蓋体を構成した場合、「弾性体であるが為に歪みが生じ」蓋体と弾性表面波素子とが接触してしまうと説明されています。』(異議意見書第3頁第18〜21行)、『上述のように刊行物1では蓋体に金属薄板を用いることを明確に否定しているので、刊行物1の蓋体を刊行物2に示される金属キャップと置き換えることはできません。これは置換容易性といった問題ではなく、置換すること自体ができないのです。』(異議意見書第4頁第14〜17行)とし、『刊行物1では金属の蓋体を用いることを否定しているので刊行物2との組み合わせに技術的合理性がなく、また刊行物1の蓋体に平板状の金属キャップを用いる動機はさらに小さいので、刊行物1と2の組み合わせから本発明の請求項1が容易になし得るとは言えません。』(異議意見書第5頁第2〜5行)旨、主張している。
しかしながら、刊行物1において、蓋体を「金属薄板」から「セラミック」に置換する理由は、特許権者も引用するように「弾性体であるが為に歪みが生じ」る、すなわち金属の「薄板」であることから「歪む」ために、これを回避するよう「剛性で、加工性の良いセラミック等」(公開明細書第4頁第13行)の機械的強度がある材質を選択するとしているものであること、また刊行物1におけるものも封止と電気的接続とを達成していること、さらに本件発明は、明細書及び請求項1の記載からも明らかなように、「セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップ」と規定し、「電気的に接続する」ものであればよいのであるから、刊行物1におけるものと同様に封止と電気的接続とを達成している点で共通であって、その不具合であるとして回避する要件の「機械的強度」までをも要するものではなく、かつ「金属薄板」でなく「金属キャップ」であればよいのであるから、刊行物1において、本願発明のように「蓋体」に「金属キャップ」を採用することができないとする、所謂、阻害要因となるものではない。したがって、特許権者の当該主張は採用することができない。
(ii)また、『取消理由では、刊行物1の足りない点を刊行物2で補っていますが、ダイアタッチ部は入力側または出力側のどちらか一方にしか接続されないことが刊行物2の特徴になっていることは無視しています。つまり、刊行物1の足りない点を刊行物2で補う際、都合のいい点のみを拾い上げて組み合わせ、刊行物2本来の特徴を無視しています。このような組み合わせに合理性はなく、ダイアタッチ部が入力側または出力側のいずれか一方にしか接続しないことを前提とした刊行物2に、両方が接続される刊行物1を組み合わせるのは無理があります。』(異議意見書第5頁第14〜21行)旨主張している。
しかしながら、「前記金属キャップ(蓋体)を、前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続すると共に、前記ダイアタッチ部(電極部)を、前記入力側端子を構成するグランド端子、及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に電気的に接続した」ことは、刊行物1において一致点とするものであり、さらに刊行物2について引用する趣旨は、前記のとおり多層構造のセラミック基板(23c)と平板状の金属キャップ(24c)とを組み合わせたパッケージング部材に係わる点であるから、平板状の金属キャップ(24c)を採用することで当然に達成されている構成であって、この点における特許権者の主張も採用することができない。
(2-2)請求項2、3について
本件請求項2、3に係る発明は、いずれも請求項1を引用するものであって、それぞれ当該請求項に記載の構成を付加するものであるが、これによっても、前記請求項1と同様に、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得ることと認められる。
すなわち、請求項2に係る発明について、付加された構成である入力側端子及び出力端子が、弾性表面波素子が接続されるパッドと外部出力端子として機能するフットパターン部とを具備する点、及び金属キャップを前記入力側端子を構成するグランド端子のパッド、または前記出力側端子を構成するグランド端子のパッドのいずれか一方にのみ電気的に接続する点も、上記刊行物2に記載されており、当業者が容易になし得るものと認められる。
また、請求項3に係る発明について、付加された構成である金属キャップをダイアタッチ部の入力側端子または出力側端子のグランド端子が接続された部位に電気的に接続する点も、上記刊行物2に記載されており、当業者が容易になし得るものと認められる。
(2-3)請求項4について
本件請求項4に係る発明は前記【3】に記載のとおりであって、前記請求項1に係る発明における金属キャップとグランド端子との接続構成、及びダイアタッチ部とグランド端子との接続構成を、低インピーダンス接続あるいは高インピーダンス接続等とするものであるが、このグランド端子のいずれか一方のみに金属キャップを接続することは、即ち一方を高インピーダンス接続し、他方を低インピーダンス接続することに他ならず、またグランド端子の両方にダイアタッチ部を接続することは、即ち両方を低インピーダンス接続することに他ならないから、前記請求項1に係る発明と同様に、本件請求項4に係る発明についても、上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得ることと認められる。
また、本件請求項4に係る発明のように構成することによる作用効果も格別のものとは認められない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件請求項1乃至4に係る発明は、取消理由で引用した前記刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

【6】まとめ
以上のとおりであって、本件特許請求の範囲の請求項1乃至4に係る発明は、何れも前記刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができない。
したがって、本件請求項1乃至4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
弾性表面波装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続すると共に、
前記ダイアタッチ部を、前記入力側端子を構成するグランド端子、及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に電気的に接続した構成としたことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項2】 請求項1記載の弾性表面波装置において、
前記入力側端子及び出力端子が、前記弾性表面波素子が接続されるパッドと外部出力端子として機能するフットパターン部とを具備する構成とし、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子のパッド、または前記出力側端子を構成するグランド端子のパッドのいずれか一方にのみ電気的に接続したことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項3】 請求項1記載の弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記ダイアタッチ部の前記入力側端子または前記出力側端子のグランド端子が接続された部位に電気的に接続したことを特徴とする弾性表面波装置。
【請求項4】 弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子の内いずれか一方に高インピーダンス接続すると共に、他方のグランド端子と低インピーダンス接続する構成とし、
かつ、前記ダイアタッチ部を前記入力側端子を構成するグランド端子及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に低インピーダンス接続する構成としたことを特徴とする弾性表面波装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は弾性表面波装置に係り、特に高周波回路に用いて好適な弾性表面波装置に関する。
【0002】
近年、自動車電話や携帯電話の小型化,軽量化に伴い、自動車電話や携帯電話に内蔵されるフィルタとして小型,軽量,高性能を実現できる弾性表面波を用いたフィルタ(弾性表面波装置)が開発されている。
【0003】
特に、自動車電話や携帯電話に搭載される回路は高周波回路であるため、弾性表面波装置も高周波に対応した構造とする必要がある。
【0004】
【従来の技術】
図19及び図20は従来の弾性表面波装置100の一例を示している。この弾性表面波装置100は、例えば自動車電話や携帯電話に内蔵される高周波回路にフィルタとして設けられるものである。図19は弾性表面波装置100の分解斜視図、図20(A)は弾性表面波装置100の斜視図、図20(B)は弾性表面波装置100を倒立させた状態の斜視図である。
【0005】
弾性表面波装置100は、大略するとパッケージ102,弾性表面波素子103,及び金属キャップ104等により構成されている。パッケージ102は、第1乃至第3のセラミック基板105〜107を積層した構造を有しており、入力側端子108及び出力側端子109(各端子を梨地で示す)を有している。
【0006】
入力側端子108は、入力側信号端子110と、この入力側信号端子110を挟んで配設された一対の入力側グランド端子111,112とにより構成されている。また、出力側端子109は、出力側信号端子113と、この出力側信号端子113を挟んで配設された一対の出力側グランド端子114,115とにより構成されている。
【0007】
最下層に配設される第1のセラミック基板105は、基板本体105aの上面に導電性金属膜よりなるダイアタッチ部116(梨地で示す)が形成されている。このダイアタッチ部116は弾性表面波素子103が搭載される部位であり、入力側において基板本体105a上に形成された入力側グランド接続部118,119により入力側グランド端子111,112と電気的に接続されると共に、出力側においても出力側グランド接続部120,121により出力側グランド端子114,115と電気的に接続されている。尚、入力側グランド接続部118,119及び出力側グランド接続部120,121は、ダイアタッチ部116と一体的に形成されている。
【0008】
更に、入力側信号端子110、入力側グランド端子111,112、出力側信号端子113、及び出力側グランド端子114,115は、夫々基板本体105aの底面に引き出されて外部接続端子として機能するフットパターン110a〜115aを形成している。
【0009】
パッケージ102の中間に配設される第2のセラミック基板106は、基板本体106aの上面に導電性金属膜よりなるパッド127〜132が形成されており、このパッド127〜132は対向配設された所定の端子110〜115に夫々接続されている。このパッド127〜132は、弾性表面波素子103とワイヤ(図示せず)により電気的に接続される。また、基板本体106aの中央部には、弾性表面波素子103を収納する開口部133が形成されている。更に、第2のセラミック基板106においても基板本体106aの四隅に切欠部134a〜134dが形成されている。
【0010】
パッケージ102の最上層に配設される第3のセラミック基板107は、その中央部に第2のセラミック基板106に形成された開口部133より大きな面積を有する開口部136を有すると共に、上面全面には後述する金属キャップ104と電気的に接続される上面配線膜137(梨地で示す)が形成されている。また、基板本体107aの四隅には切欠部138a〜138dが形成されており、各切欠部138a〜138dにはキャップ接続配線139a〜139d(梨地で示す)が夫々形成されている。このキャップ接続配線139a〜139dは、上面配線膜137と電気的に接続された構成とされている。
【0011】
上記した第1乃至第3のセラミック基板105〜107は、接合されることにより図20に示されるようにパッケージ102が形成される。パッケージ102が形成された状態において、第1及び第2のセラミック基板105,106の側壁部に形成された入力側信号端子110、入力側グランド端子111,112、出力側信号端子113、及び出力側グランド端子114,115は電気的に接続され入力側端子108及び出力側端子109を形成する。また、第2のセラミック基板106の四隅位置に形成されているキャップ接続部140a〜140dは、第3のセラミック基板107の切欠部138a〜138dに形成されたキャップ接続配線139a〜139dと電気的に接続される。
【0012】
一方、前記した弾性表面波素子103は、第1のセラミック基板105に形成されたダイアタッチ部116上に搭載されると共に、その上面に形成された電極部は第2のセラミック基板106に形成されたパッド127〜132とワイヤボンディングされる。これにより、弾性表面波素子103は入力側端子108及び出力側端子109に電気的に接続された構成となる。
【0013】
また、金属キャップ104は、第3のセラミック基板107に形成された開口部136を覆うように上面配線膜137に金(Au)-錫(Sn)や錫(Sn)-鉛Pb)等の半田により電気的導通を図った状態で溶接される。従って、この金属キャップ104は入力側及び出力側グランド端子111,112,114,115と電気的に接続される。
【0014】
具体的には、金属キャップ104は、上面配線膜137、キャップ接続配線139a〜139d、キャップ接続部140a〜140d、グランドパッド128,129,131,132を介して入力側及び出力側グランド端子111,112,114,115の夫々と電気的に接続される。よって、金属キャップ104はグランド電位となり、弾性表面波素子103に対してシールド機能を奏することとなる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
図21は、上記した従来構成の弾性表面波装置100におけるパッケージ2の簡易的な等価回路図を示している。高周波を使用する弾性表面波装置100では、パッケージ102の内部で信号端子110,113とグランド端子111,112,114,115との間で電気的な結合が生じる。また、グランド端子111,112,114,115も実際にはインピーダンスを有するため理想的なグランド電位とはならない。これは、シールド効果を奏する金属キャップ104及びダイアタッチ部116でも同様である。
【0016】
図21に示されるZ1〜Z14は、パッケージ102内の各所で発生するインピーダンスを示している。同図に示すインピーダンスZ1〜Z14の発生箇所をまとめて以下に示す。
【0017】
Z1 :入力側信号端子110が有するインピーダンス
Z2 :入力側の信号用パッド127とグランド用パッド128,129との間の静電容量により発生するインピーダンス
Z3 :入力側グランド端子111,112が有するインピーダンス
Z4 :入力側の信号用フットパターン110aとグランド用フットパターン111a,112aとの間の静電容量により発生するインピーダンス
Z5 :出力側信号端子113が有するインピーダンス
Z6 ;出力側の信号用フットパターン113aとグランド用フットパターン114a,115aとの間の静電容量により発生するインピーダンス
Z7 :出力側グランド端子114,115が有するインピーダンス
Z8 :出力側の信号用パッド130とグランド用パッド131,132との間の静電容量により発生するインピーダンス
Z9 :入力側のキャップ接続部139a,139b,及び上面配線膜137の総合インピーダンス
Z10:金属キャップ104が有するインピーダンス
Z11:出力側のキャップ接続部139c,139d,及び上面配線膜137の総合インピーダンス
Z12:入力側グランド接続部118,119が有するインピーダンス
Z13:ダイアタッチ部116が有するインピーダンス
Z14:出力側グランド接続部120,121が有するインピーダンス
ここで、入力側グランド端子111,112と出力側グランド端子114,115に注目すると、従来構成の弾性表面波装置100では、入力側グランド端子111,112と出力側グランド端子114,115がZ9〜Z14により電気的に結合した構成となっている。即ち、入力側グランド端子111,112と出力側グランド端子114,115は金属キャップ114及びダイアタッチ部116を介して電気的に結合された状態となっていた。
【0018】
このように、入力側グランド端子111,112と出力側グランド端子114,115とが電気的に結合された構成では、弾性表面波装置100の減衰特性がパッケージ102により大きく劣化する現象が発生するという問題点がある。特にこの現象は高周波を用いた場合に顕著となる。
【0019】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高い減衰特性を得ることができるパッケージ構造を有した弾性表面波装置を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記の課題は、下記の手段を講じることにより解決することができる。
【0021】
請求項1記載の発明では、
弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子のいずれか一方にのみ電気的に接続すると共に、
前記ダイアタッチ部を、前記入力側端子を構成するグランド端子、及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に電気的に接続した構成としたことを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項2記載の発明では、
請求項1記載の弾性表面波装置において、
前記入力側端子及び出力端子が、前記弾性表面波素子が接続されるパッドと外部出力端子として機能するフットパターン部とを具備する構成とし、
前記金属キャップを、前記入力側端子を構成するグランド端子のパッド、または前記出力側端子を構成するグランド端子のパッドのいずれか一方にのみ電気的に接続したことを特徴とするものである。
【0023】
また、請求項3記載の発明では、
前記請求項1記載の弾性表面波装置において、
前記金属キャップを、前記ダイアタッチ部の前記入力側端子または前記出力側端子のグランド端子が接続された部位に電気的に接続したことを特徴とするものである。
【0024】
更に、請求項4記載の発明では、
弾性表面波素子と、
多層構造のセラミック基板に内設されたダイアタッチ部に前記弾性表面波素子が取り付けられると共に、前記弾性表面波素子と接続される入力側端子及び出力側端子とを設けてなるセラミックパッケージと、
前記セラミックパッケージの開口部を封止する平板状の金属キャップと
を具備する弾性表面波装置において、
前記金属キャップを前記入力側端子を構成するグランド端子または前記出力側端子を構成するグランド端子の内いずれか一方に高インピーダンス接続すると共に、他方のグランド端子と低インピーダンス接続する構成とし、
かつ、前記ダイアタッチ部を前記入力側端子を構成するグランド端子及び前記出力側端子を構成するグランド端子の両方に低インピーダンス接続する構成とした
ことを特徴とするものである。
【0025】
上記の各手段は、次のように作用する。
【0026】
請求項1〜4記載の発明によれば、
入力側端子または出力側端子のいずれか一方にのみ金属キャップを電気的に接続するため、入力側端子と出力側端子との金属キャップを介した電気的連結を遮断することができるとともに、入力側端子および出力側端子をダイアタッチ部を介して電気的に接続するため、弾性表面波素子の減衰特性がパッケージに影響され劣化することを防止することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態について図面と共に説明する。
【0028】
図1乃至図3は本発明の第1実施例である弾性表面波装置1を示している。この弾性表面波装置1は、例えば自動車電話や携帯電話に内蔵される高周波回路にフィルタとして設けられるものである。図1は弾性表面波装置100の分解斜視図、図2(A)は弾性表面波装置1の斜視図、図2(B)は弾性表面波装置1を倒立させた状態の斜視図、図3は弾性表面波装置1の断面図である。
【0029】
弾性表面波装置1は、大略するとパッケージ2,弾性表面波素子3,及び金属キャップ4等により構成されている。パッケージ2は、第1乃至第3のセラミック基板5〜7を積層した構造を有しており、入力側端子8及び出力側端子9(各端子を梨地で示す)を有している。
【0030】
入力側端子8は、入力側信号端子10と、この入力側信号端子10を挟んで配設された一対の入力側グランド端子11,12とにより構成されている。また、出力側端子9は、出力側信号端子13と、この出力側信号端子13を挟んで配設された一対の出力側グランド端子14,15とにより構成されている。
【0031】
続いて、パッケージ2を構成する各セラミック基板5〜7の構成について説明する。
【0032】
第1のセラミック基板5はパッケージ2の最下層に配設されるものであり、基板本体5aの上面に導電性金属膜(例えば銅膜)よりなるダイアタッチ部16(梨地で示す)が形成されている。ダイアタッチ部16は弾性表面波素子3が搭載される部位であり、弾性表面波素子3をシールドする機能を奏する。
【0033】
本実施例においては、ダイアタッチ部16は入力側において基板本体5a上に形成された入力側グランド接続部18,19により入力側グランド端子11,12と電気的に接続されると共に、出力側においても出力側グランド接続部20,21により出力側グランド端子14,15と電気的に接続されている。この各グランド接続部18〜21は、ダイアタッチ部16と一体的に形成されている。
【0034】
また、入力側信号端子10、入力側グランド端子11,12、出力側信号端子13、及び出力側グランド端子14,15は、夫々基板本体5aの底面に引き出されており、外部接続端子として機能する入力側信号用フットパターン10a、入力側グランド用フットパターン11a,12a、出力側信号用フットパターン13a、及び出力側グランド用フットパターン14a,15aを形成している(図2(B)参照)。
【0035】
更に、基板本体5aの四隅には切欠部22a〜22dが形成されている。本実施例に係る弾性表面波装置1は、図19に示した従来構成の弾性表面波装置100と異なり、キャップ接続部123a〜123dは形成されておらず、よってダイアタッチ部16が切欠部22a〜22dまで引き出されていない構成となっている。
【0036】
第2のセラミック基板6はパッケージ2の中間に配設されるものであり、基板本体6aの上面に導電性金属膜よりなる複数のパッド27〜32が形成されている。この内、入力側信号用パッド27は入力側信号端子10と、入力側グランド用パッド28,29は入力側グランド端子11,12と、出力側信号用パッド30は出力側信号端子13と、出力側グランド用パッド31,32は出力側グランド端子14,15と夫々接続されている。
【0037】
この各パッド27〜32は、図3に示されるように、弾性表面波素子3とワイヤ17を用いて電気的に接続される。また、基板本体6aの中央部には弾性表面波素子3を収納するための開口部33が形成されると共に、四隅には切欠部34a〜34dが形成されている。
【0038】
また、本実施例に係る弾性表面波装置1では、出力側グランド用パッド31に一体的にキャップ接続パターン40を形成し、このキャップ接続パターン40を切欠部34cまで引き出したことを特徴とするものである。このキャップ接続パターン40は、出力側グランド用パッド31にのみ形成されている。
【0039】
第3のセラミック基板7はパッケージ2の最上層に配設されるものであり、その中央部には第2のセラミック基板6に形成された開口部33より大きな面積を有する開口部36を有すると共に、上面全面には金属キャップ4と電気的に接続される上面配線膜37(梨地で示す)が形成されている。また、基板本体7aの四隅には切欠部38a〜38dが形成されており、各切欠部38a〜38dにはキャップ接続配線39a〜139d(梨地で示す)が夫々形成されている。このキャップ接続配線39a〜39dは、上面配線膜37と電気的に接続された構成とされている。
【0040】
上記した第1乃至第3のセラミック基板5〜7は、接合されることにより図2に示されるパッケージ2が形成される。パッケージ2が形成された状態において、第1及び第2のセラミック基板5,6の側壁部に形成された入力側信号端子10及び入力側グランド端子11,12は電気的に接続されて入力側端子108を形成する。同様に、出力側信号端子13及び出力側グランド端子14,15は電気的に接続され入力側端子108及び出力側端子109を形成する。
【0041】
これにより、第1のセラミック基板5に形成された各フットパターン10a〜15aは、各端子10〜15により第2のセラミック基板6に形成された各パッド27〜31に電気的に接続された構成となる。また、第1のセラミック基板5に形成されているダイアタッチ部16は、各グランド接続部18〜21を介して入力側及び出力側の各グランド端子11,12,14,15に夫々接続された構成となる。
【0042】
また、前記したように第3のセラミック基板7の四隅位置には夫々キャップ接続配線39a〜39dが形成されているが、第2のセラミック基板6には出力側グランド用パッド31と接続されたキャップ接続パターン40のみが切欠部34cに引き出された構成とされている。従って、第2のセラミック基板6と第3のセラミック基板7とを積層した状態で、出力側グランド用パッド31のみがキャップ接続配線39cを介して第3のセラミック基板7に形成された上面配線膜37と電気的に接続される。
【0043】
一方、弾性表面波素子3は、前述したように第1のセラミック基板5に形成されたダイアタッチ部16上に搭載されると共に、その上面に形成された電極部は第2のセラミック基板6に形成されたパッド27〜32とワイヤ17により接続される。これにより、弾性表面波素子3は入力側端子8及び出力側端子9に電気的に接続された構成となる。
【0044】
また、金属キャップ4は、第3のセラミック基板7に形成された開口部36を覆うように上面配線膜37に接合される。金属キャップ4を上面配線膜37に接合する方法としては、金(Au)-錫(Sn)や錫(Sn)-鉛Pb)等の半田41(図3に示す)を用いて溶接する方法等の適用が考えられる。
【0045】
上記構成とすることにより、金属キャップ4は出力側グランド端子14とのみ電気的に接続される。具体的には、金属キャップ4は、上面配線膜37,キャップ接続配線39c,キャップ接続パターン40,出力側グランド用パッド31を介して出力側グランド端子14と電気的に接続される。よって、金属キャップ4はグランド電位となり、弾性表面波素子3に対してシールド機能を奏することとなる。
【0046】
また、図4及び図5は本実施例に用いる弾性表面波素子3を示している。図4は、弾性表面波素子3に用いる弾性表面波共振器42を示している。同図に示されるように、弾性表面波共振器42は圧電基板(図示せず)上に配設された1つの駆動電極43と、これを挟んで形成された一対の反射器44とにより構成されている。
【0047】
駆動電極43は第1の櫛形電極43aと第2の櫛形電極43bとにより構成されている。第1の櫛形電極43aは、信号を入力する入力電極43a-1と、得ようとするフィルタ特性に応じて予め設定されたピッチ及び櫛歯数に設定された櫛歯部43a-2とにより構成されている。また、第2の櫛形電極43bは、信号を出力する出力電極43b-1と、第1の櫛歯電極43aの櫛歯部43a-2と同じピッチ及び櫛歯数に設定された櫛歯部43b-2とにより構成されている。
【0048】
反射器44は縞状のパターンを有し、縞状のパターンが第1の櫛形電極43a及び第2の櫛形電極43bの櫛歯部43a-2及び櫛歯部43b-2と平行となるよう構成されている。この反射器44は短絡されており、圧電基板上に生じる弾性表面波を反射する機能をそうするものである。上記構成とされた反射器44は、所定の減衰特性が実現されるように、図5に示されるように複数個接続され、これにより弾性表面波素子3を構成している。
【0049】
続いて、上記構成とされた弾性表面波装置1の機能について説明する。
【0050】
前記したように、本実施例に係る弾性表面波装置1は、金属キャップ4が出力側グランド端子14とのみ電気的に接続される構成とされている。この構成は、図21で示した等価回路でみるとインピーダンスZ9の配設位置が遮断された構成である。これにより、入力側グランド端子11,12と出力側グランド端子14,15の金属キャップ4を介した電気的連結は遮断され、よって弾性表面波素子3の減衰特性がパッケージ4に影響されて劣化することを防止することができる。
【0051】
また、上記構成としても金属キャップ4は出力側グランド端子14,15と電気的に接続された状態を維持した構成となっているため、金属キャップ4はグランド電位となる。よって、上記構成としても金属キャップ4は依然としてシールド作用を奏するため、耐ノイズ特性を良好な状態に維持することができる。
【0052】
図6は本実施例に係る弾性表面波装置1の減衰特性(実線で示す)を示している。同図では、比較のために図19及び図20に示した従来構成の弾性表面波装置100の減衰特性(一点鎖線で示す)も合わせて示してる。
【0053】
同図に示されるように、本実施例に刈る弾性表面波装置1の減衰特性は、従来構成の弾性表面波装置100の減衰特性に対し、帯域外減衰が10〜20dB程度(図中、矢印で示す)改善されていることが判る。よって図6により、本実施例に係る弾性表面波装置1によれば、従来構成の弾性表面波装置100に比べて減衰特性を改善できることが実証された。
【0054】
図7は、上記した第1実施例に係る弾性表面波装置1の第1変形例である弾性表面波装置1Aを示している。尚、図7に示す弾性表面波装置1Aおいて、図1乃至図3を用いて説明した第1実施例に係る弾性表面波装置1と同一構成については同一符号を附してその説明を省略する。尚、以下説明する各実施例及び変形例においても同様とする。
【0055】
第1実施例に係る弾性表面波装置1は、キャップ接続パターン40を一方の出力側グランド用パッド31にのみ配設した構成とされていた。これに対し、本変形例に係る弾性表面波装置1Aは、第1実施例と同様に出力側グランド用パッド31にキャップ接続パターン40を形成すると共に、他方の出力側グランド用パッド32にもキャップ接続パターン45を形成したことを特徴とするものである。
【0056】
この構成とすることにより、金属キャップ4は、上面配線膜37,キャップ接続配線39c,キャップ接続パターン40,出力側グランド用パッド31を介して出力側グランド端子14と電気的に接続されると共に、上面配線膜37,キャップ接続配線39d,キャップ接続パターン45,出力側グランド用パッド31を介しても出力側グランド端子15と電気的に接続される構成となる。
【0057】
よって、本変形例に係る弾性表面波装置1Aでも金属キャップ4は出力側端子9(具体的には出力側グランド端子14,15)とのみ接続された構成となり、減衰特性の向上を図ることができる。更に、本変形例では、金属キャップ4が一対の出力側グランド端子14,15の双方に接続されるため、弾性表面波素子3に対するシールド特性を向上させることができる。
【0058】
図8及び図9は、第1実施例に係る弾性表面波装置1の第2変形例である弾性表面波装置1Bを示している。
【0059】
第1実施例に係る弾性表面波装置1は、キャップ接続パターン40を出力側グランド用パッド31に配設した構成とされていた。これに対し、本変形例に係る弾性表面波装置1Bは、入力側グランド用パッド28にキャップ接続パターン40を形成したことを特徴とするものである。
【0060】
このように、キャップ接続パターンの配設位置は出力側に限定されるものではなく、入力側端子8或いは出力側端子9の何れか一方にのみ接続される構成であればよい。よって、入力側端子8を構成する入力側グランド用パッド28にキャップ接続パターン40を形成した構成としても、第1実施例と同様の効果を実現することができる。また、第1変形例で説明した同様の理由により、入力側グランド用パッド28,29の双方にキャップ接続パターンを形成する構成としてもよい。
【0061】
図10及び図11は、本発明の第2実施例である弾性表面波装置50を示している。
【0062】
第1実施例に係る弾性表面波装置1は、キャップ接続パターン40を出力側グランド用パッド31に配設した構成とされていた。これに対し、本実施例に係る弾性表面波装置50は、第1のセラミック基板5にキャップ接続パターン51を形成したことを特徴とするものである。
【0063】
キャップ接続パターン51は、第1のセラミック基板5に形成されたダイアタッチ部16と一体的に形成されており、切欠部22cまで引き出された構成とされている。また、本実施例に係る弾性表面波装置50では、第2のセラミック基板6の四隅に形成された切欠部34a〜34cにキャップ接続配線52a〜52dが形成されている。尚、本実施例では、前記した各実施例に係る弾性表面波装置1,1A,1Bと異なり、第2のセラミック基板6にはキャップ接続パターンは形成されていない。
【0064】
上記構成とすることにより、金属キャップ4は、上面配線膜37,キャップ接続配線39c,キャップ接続配線52c,キャップ接続パターン51,ダイアタッチ部16,出力側グランド接続部20を介して出力側グランド端子14と電気的に接続される。即ち、本実施例によっても金属キャップ4は出力側グランド端子14とのみ電気的に接続されることとなり、シールド性を維持しつつ減衰特性の向上を図ることができる。
【0065】
尚、上記した実施例ではキャップ接続パターン51を出力側グランド端子14と接続される出力側グランド端子部20の近傍位置にのみ形成した構成としたが、キャップ接続パターン51に加えて出力側グランド端子部21の近傍位置に切欠部22dまで引き出されるようキャップ接続パターンを形成し、金属キャップ4が出力側グランド端子15とも接続される構成としてもよい。
【0066】
図12は、第2実施例に係る弾性表面波装置50の変形例である弾性表面波装置50Aを示している。
【0067】
前記した第2実施例に係る弾性表面波装置50は、キャップ接続パターン51をダイアタッチ部16の出力側に配設することにより出力側グランド端子14と接続されるよう構成していた。これに対し、本変形例に係る弾性表面波装置50Aは、ダイアタッチ部16の入力側にキャップ接続パターン53を形成したことを特徴とするものである。
【0068】
このように、第1のセラミック基板5にキャップ接続パターンを形成する構成においても、キャップ接続パターンの配設位置は出力側に限定されるものではなく、入力側端子8或いは出力側端子9の何れか一方にのみ接続される構成であればよい。
【0069】
よって、入力側端子8を構成する入力側グランド用パッド28に電気的に接続されるよう、ダイアタッチ部16の入力側にキャップ接続パターン53を形成した構成としても、シールド性を維持しつつ減衰特性の向上を図ることができる。また、前記したと同様の理由により、切欠部34a,34bの双方に引き出されるようキャップ接続パターンを形成する構成としてもよい。
【0070】
ここで、上記本発明の第1および第2実施例と比較するために、比較例を挙げて以下説明する。
【0071】
図13は、比較例である弾性表面波装置60を示している。
【0072】
前記した各実施例に係る弾性表面波装置1,1A,1B,50,50Aは、ダイアタッチ部16を入力側グランド端子11,12と出力側グランド端子14,15の双方に電気的に接続する構成とされていた。ダイアタッチ部16は、比較的高周波成分が低い場合にはダイアタッチ部16によりフィルタとしての減衰特性が劣化することはなく、上記した各実施例に係る弾性表面波装置1,1A,1B,50,50Aで従来構成の弾性表面波装置100に対し十分な減衰特性の向上を図ることができる。
【0073】
しかるに、非常に高い高周波を使用する高周波回路では、ダイアタッチ部16の影響が無視できなくなる。このため、比較例においては、ダイアタッチ部16が出力側端子9を構成する出力側グランド端子14,15とのみ電気的に接続される構成としたことを特徴とするものである。
【0074】
具体的には、比較例に係る弾性表面波装置60は、図7に示される弾性表面波装置1Aの構成において、入力側グランド接続部18,19を除去した構成とされている。この構成とすることにより、金属キャップ4は出力側グランド端子14とのみ電気的に接続される構成となり、かつダイアタッチ部16も出力側グランド端子14,15とのみ接続され構成となる。
【0075】
この構成は、図21で示した等価回路でみるとインピーダンスZ9,Z12の各配設位置が共に遮断された構成である。これにより、入力側グランド端子11,12と出力側グランド端子14,15の金属キャップ4を介した電気的連結及びダイアタッチ部16を介した電気的連結は共に遮断されることとなり、弾性表面波素子3の減衰特性がパッケージ4に影響され劣化することを確実に防止することができる。
【0076】
また、上記構成としても金属キャップ4及びダイアタッチ部16は少なくとも出力側グランド端子14,15の何れか一方と電気的に接続された状態を維持した構成となっているため、金属キャップ4及びダイアタッチ部16はグランド電位となる。よって、上記構成としても金属キャップ4及びダイアタッチ部16は依然としてシールド作用を奏するため、耐ノイズ特性を良好な状態に維持することができる。
【0077】
図14は比較例に係る弾性表面波装置60の減衰特性(実線で示す)を示している。同図では、比較のために図19及び図20に示した従来構成の弾性表面波装置100の減衰特性(一点鎖線で示す)も合わせて示してる。
【0078】
同図に示されるように、比較例に係る弾性表面波装置60の減衰特性は、従来構成の弾性表面波装置100の減衰特性に対し、帯域外減衰が改善されていることが判る。よって図14により、比較例に係る弾性表面波装置60によれば、従来構成の弾性表面波装置100に比べて減衰特性が改善できることが実証された。
【0079】
図15乃至図18は、比較例に係る弾性表面波装置60の変形例を示している。図15及び図16に示される第1変形例に係る弾性表面波装置60Aは、図10を用いて説明した第2実施例に係る弾性表面波装置50において、入力側グランド接続部18,19を除去した構成とされている。
【0080】
また、図17に示される第2変形例に係る弾性表面波装置60Bは、図8を用いて説明した第1実施例の第2変形例に係る弾性表面波装置1Bにおいて、出力側グランド接続部20,21を除去した構成とされている。前記した説明から明らかなように、ダイアタッチ部16は入力側グランド端子11,12或いは出力側グランド端子14,15の何れか一方とのみ接続する構成であれば上記の効果を実現できる。よって、本変形例に係る弾性表面波装置60Bのように出力側グランド接続部20,21を除去し、これによりダイアタッチ部16が入力側グランド端子11,12とのみ電気的に接続する構成とすることによっても、シールド性を維持しつつ減衰特性の向上を図ることができる。
【0081】
更に、図18に示される第2変形例に係る弾性表面波装置60Cは、図12を用いて説明した第2実施例の変形例に係る弾性表面波装置50Aにおいて、出力側グランド接続部20,21を除去した構成とされている。上記した各変形例に係る弾性表面波装置60A〜60Cの構成としても、入力側グランド端子11,12と出力側グランド端子14,15との金属キャップ4を介した電気的連結及びダイアタッチ部16を介した電気的連結は共に遮断されることとなり、減衰特性がパッケージ4に影響され劣化することを確実に防止することができる。
【0082】
一方、上記した各実施例または比較例に係る弾性表面波装置1,1A,1B,50,50A,60,60A〜60Cにおいては、入力側端子8と出力側端子9との金属キャップ4を介した電気的連結及びダイアタッチ部16を介した電気的連結を完全に遮断する構成とされていた。即ち、上記した各実施例または比較例では金属キャップ4及びダイアタッチ部16の入力側或いは出力側の何れか一方を、各端子8.9に対し断線させる構成とされていた。
【0083】
しかるに、金属キャップ4及びダイアタッチ部16を入力側端子8及び出力側端子9の双方に電気的に接続しつつ、上記した各実施例または比較例と同等の効果を実現させることも可能である。具体的には、金属キャップ4を入力側端子8を構成する入力側グランド端子11,12または出力側端子9を構成する出力側グランド端子14,15の内いずれか一方に高インピーダンス接続すると共に、他方のグランド端子と低インピーダンス接続する構成とすればよい。
【0084】
また、ダイアタッチ部16についても同様であり、ダイアタッチ部16を入力側端子8を構成する入力側グランド端子11,12または出力側端子9を構成する出力側グランド端子14,15の内いずれか一方に高インピーダンス接続すると共に、他方のグランド端子と低インピーダンス接続する構成とすればよい。更に、金属キャップ4及びダイアタッチ部16の双方において上記のように入力側と出力側で接続するインピーダンスに差を設ける構成としてもよい。
【0085】
上記構成とすることにより、高インピーダンス接続した方における金属キャップ4,ダイアタッチ部16と各端子との電気的連結を弱めることができる。よって、前記した各実施例または比較例に比べて精度は低くなるものの、従来構成の弾性表面波装置100に比べ減衰特性を向上させることができる。
【発明の効果】
上述の如く本発明によれば下記の効果を実現することができる。
【0086】
請求項1〜4記載の発明によれば、入力側端子と出力側端子との金属キャップを介した電気的連結を遮断することができるとともに、入力側端子および出力側端子をダイアタッチ部を介して電気的に接続するため、弾性表面波素子の減衰特性がパッケージに影響され劣化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図2】
本発明の第1実施例である弾性表面波装置の斜視図である。
【図3】
本発明の第1実施例である弾性表面波装置の断面図である。
【図4】
弾性表面波共振器を説明するための図である。
【図5】
弾性表面波素子の回路構成の一例を示す図である。
【図6】
本発明の第1実施例である弾性表面波装置の減衰特性を従来の弾性表面波装置の減衰特性と比較して示す図である。
【図7】
本発明の第1実施例の第1変形例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図8】
本発明の第1実施例の第2変形例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図9】
本発明の第1実施例の第2変形例である弾性表面波装置の斜視図である。
【図10】
本発明の第2実施例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図11】
本発明の第2実施例である弾性表面波装置の斜視図である。
【図12】
本発明の第2実施例の変形例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図13】
比較例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図14】
比較例である弾性表面波装置の減衰特性を従来の弾性表面波装置の減衰特性と比較して示す図である。
【図15】
比較例の第1変形例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図16】
比較例の第1変形例である弾性表面波装置の斜視図である。
【図17】
比較例の第2変形例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図18】
比較例の第3変形例である弾性表面波装置の分解斜視図である。
【図19】
従来の弾性表面波装置の一例を示す分解斜視図である。
【図20】
従来の弾性表面波装置の一例を示す斜視図である。
【図21】
従来の弾性表面波装置のパッケージの回路構成を示す等価回路図である。
【符号の説明】
1,1A,1B,50,50A,60,60A,60B,60C 弾性表面波装置
2 パッケージ
3 弾性表面波素子
4 金属キャップ
5 第1のセラミック基板
6 第2のセラミック基板
7 第3のセラミック基板
8 入力側端子
9 出力側端子
10 入力側信号端子
10a 入力信号用フットパターン
11,12 出力側グランド端子
11a,12a 入力側グランド用フットパターン
13 出力側信号端子
13a 出力信号用フットパターン
14,15 出力側グランド端子
14a,15a 出力側グランド用フットパターン
16 ダイアタッチ部
18,19 入力側グランド接続部
20,21 出力側グランド接続部
27 入力側信号用パッド
28,29 入力側グランド用パッド
30 出力側信号用パッド
31,32 出力側グランド用パッド
37 上面配線膜
39a〜39d,52a〜52d キャップ接続配線
40,45,46,51 キャップ接続パターン
42 弾性表面波共振器
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-08-06 
出願番号 特願平7-273141
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H03H)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 千葉 輝久
植松 伸二
登録日 2002-05-10 
登録番号 特許第3306272号(P3306272)
権利者 富士通株式会社
発明の名称 弾性表面波装置  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠彦  

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