ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04B |
---|---|
管理番号 | 1089615 |
審判番号 | 不服2001-12660 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-07-19 |
確定日 | 2004-01-07 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第296636号「データ・トランシーバ」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 7月31日出願公開、特開平 9-200152]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.出願の経緯 本願は、平成8年11月8日(パリ条約による優先権主張1995年12月28日、カナダ)に出願したものであって、平成13年4月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成13年7月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 請求人は、平成13年7月19日付けで手続補正書(以下、本件手続補正書という。)を提出し、(平成12年12月21日付けの手続補正書の)特許請求の範囲の記載のうち、請求項4を削除すると共に、請求項1及び請求項8(補正後の請求項7)を次のように補正している。 「【請求項1】光放射によって相互にデータの送受信を行う複数のデータ・トランシーバを含み、CSMA?CA伝送制御方式を使用する光データ通信システムで使用するためのデータ・トランシーバであって、 第1のスペクトル応答および第1の送信出力を有し、第1の光データを送信する第1の発光器と、 前記第1のスペクトル応答と重ならない第2のスペクトル応答および前記第1の送信出力と異なる第2の送信出力を有し、前記第1の光データと異なる第2の光データを送信する第2の発光器と、 前記第1および第2のスペクトル応答の両方を含むスペクトル応答を有する第1の光検出器と、 前記第1および第2の発光器の少なくとも一方を選択する選択手段と、 前記選択手段によって選択された少なくとも一方の発光器と共に動作して光データを送信するための送信機アセンブリと、 前記第1の光検出器で受信した光データを電気信号に変換する受信機アセンブリとを備え、 前記受信機アセンブリが前記第1の光検出器で受信した搬送波を検出するように動作可能である、 データ・トランシーバ。 【請求項7】前記受信機アセンブリが前記第1の光検出器および前記第2の光検出器のどちらかで受信した搬送波を検出するように動作可能である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のデータ・トランシーバ。」 そこで、補正の適否について検討すると、補正前の請求項1に係る発明と補正後の請求項1に係る発明とは、ともに、選択手段により第1の発光器および第2の発光器の少なくとも一方が選択され、送信機アセンブリはその選択された発光器とともに動作するものであり、前記発光器の選択は、干渉などの問題により正確な光データ通信が行えない場合に、異なるスペクトルの発光器を用いて送信するというものであるところ、干渉などの問題により、第1の発光器では正確な光データ通信が行えない場合であって、異なるスペクトルの第2の発光器を用いて送信するときに、第2の発光器により送信するデータが第1の発光器で送信するデータと異なるとすることは考えにくい。 そして、明細書の発明の詳細な説明の欄の記載(例えば【0024】、【0025】)をみると、2種のデータセットをほぼ同時に送信できると記載されているが、これは、干渉などの問題を回避するために発光器のいずれかを選択した場合についてのものではない。 してみると、選択手段による発光器の選択をする場合において、補正後の請求項1に係る発明のように、第2の発光器が「第1の光データと異なる第2の光データを送信する」との点は、出願当初の明細書に記載された範囲のものということはできない。 したがって、その余を検討するまでもなく、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものである。 よって、本件手続補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。 3.本件発明 (本件発明の内容) 本件手続補正書による補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至8に係る各発明は、平成12年12月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は次のとおりのものである。 「光放射によって相互にデータの送受信を行う複数のデータ・トランシーバを含む光データ通信システムで使用するためのデータ・トランシーバにおいて、 第1のスペクトル応答を有する第1の発光器と、 前記第1のスペクトル応答と重ならない第2のスペクトル応答を有する第2の発光器と、 前記第1および第2のスペクトル応答の両方を含むスペクトル応答を有する第1の光検出器と、 前記第1および第2の発光器の少なくとも一方を選択する選択手段と、 前記選択手段によって選択された少なくとも一方の発光器と共に動作して光データを送信するための送信機アセンブリと、 前記第1の光検出器で受信した光データを電気信号に変換する受信機アセンブリと を備えるデータ・トランシーバ。」 (引用刊行物記載の発明) 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6?333678号公報(以下、刊行物1という。)には、送信部1と、制御回路7と、切換手段8と、相互に異なる分光特性を有する第1の発光素子L1 および第2の発光素子L2 とを有し、制御回路7により切換手段8を切換動作させ、送信部1の動作により第1の発光素子L1 または第2の発光素子L2 を発光させるようにすることが記載されている。 (検討) そこで、検討するに、本件発明の構成要件のうち、発光器、光検出器、送信機アセンブリ、受信機アセンブリを備えた、光放射によって相互にデータの送受信を行う複数のデータ・トランシーバを含む光データ通信システムで使用するためのデータ・トランシーバといったものは、本件出願前普通に知られている周知技術(必要であれば、例えば、特開昭63?86937号公報、特開平6?177895号公報を参照されたい。)である。 ただ、本件発明においては、上記周知技術に加え、第1のスペクトル応答を有する第1の発光器と、前記第1のスペクトル応答と重ならない第2のスペクトル応答を有する第2の発光器と、前記第1および第2のスペクトル応答の両方を含むスペクトル応答を有する第1の光検出器と、前記第1および第2の発光器の少なくとも一方を選択する選択手段とを備え、干渉などの問題により正確な光データ通信が行えない場合に、いずれかの発光器を選択するようにし、また、いずれかの発光器が選択された場合にも、光検出器がいずれのスペクトルも受信できるとしている点に特徴を有している。 しかるに、干渉等の問題を避けるために、複数の発光器のいずれかを選択するといったことは、上記刊行物1に記載されている(公知技術として刊行物1を示したが、干渉等の問題を避けるために、複数の発光器のいずれかを選択するといったことは、本件出願前普通に知られた技術である(必要であれば、例えば、特開昭62?221232号公報を参照されたい。))から、上記周知技術において、干渉等の問題を避けるために、上記刊行物1記載の技術を適用し、第1の発光器、第1の発光器とは異なるスペクトルを有する第2の発光器、及び、その選択手段を設けるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。そして、複数の発光器を設けた場合に、そのスペクトルを検出するようにした検出器を設けるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 (まとめ) 以上のとおりであって、本件発明は、周知技術及び上記刊行物1の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.その他 上記2.に示したように、本件手続補正書による補正は認められないが、仮に、本件手続補正書により補正が特許法第17条の2第2項の規定、さらには、同法第4項の規定を満たすものであるとしても、補正後の請求項1に係る発明において採用する伝送制御方式といったものは、上記2.において示した周知文献に示されているように、本件出願前普通に用いられているものにすぎず、また、第1の送信出力と第2の送信出力とを異なるものとする点は、本件明細書の【0020】に示されているように、当業者が適宜なす調節事項にすぎず、さらに、第1の光データと第2の光データとが異なるとする点は、干渉等を回避する場合に、同じデータを送らないということは考えにくいが、干渉等の回避ということではなくて、回線として2回線の構成になっているということであるとすると、回線をいくつ設けるかといったことは当業者が適宜なし得ることであり、さらにまた、第1の発光器、第2の発光器を設けるということであれば、通常の場合として2回線として用いるようにするということは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。 したがって、上記3.の理由と合わせて考えれば、補正後の請求項1に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、本件手続補正書による補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-07-23 |
結審通知日 | 2003-07-30 |
審決日 | 2003-08-29 |
出願番号 | 特願平8-296636 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H04B)
P 1 8・ 121- Z (H04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 深津 始 |
特許庁審判長 |
川名 幹夫 |
特許庁審判官 |
前田 典之 橋本 正弘 |
発明の名称 | データ・トランシーバ |
代理人 | 市位 嘉宏 |
代理人 | 坂口 博 |
代理人 | 渡部 弘道 |