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審決分類 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) H04N
審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) H04N
管理番号 1089636
審判番号 無効2003-35030  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-06-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-01-30 
確定日 2004-01-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第3025781号発明「カラオケ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3025781号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許無効審判被請求人株式会社リコスは、下記ア記載の特許の特許権者であり、その手続経緯概要は下記イのとおりである。
ア 特許第3025781号 「カラオケ装置」
特許出願 平成1年11月1日
出願番号 特願平1-287071号
設定登録 平成12年1月28日
イ 平成15年 1月30日 本件無効審判請求
請求人:株式会社第一興商
同 年 4月21日 答弁書
同 年 7月18日 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 年 7月24日 口頭審理
同 年 7月24日 口頭審理説明資料(被請求人)
同 年 8月 1日 上申書(請求人)
同 年 9月 8日 上申書(被請求人)

第2 本件発明
本件特許3025781号に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次に掲げるとおりのものである。
「【請求項1】
楽曲情報と歌詞情報に加えて複数の動画番号が付された二進符号のカラオケ情報を順次並列処理し、楽曲情報はシンセサイザを介して再生すると共に歌詞情報はディスプレイに表示する端末装置と、
この端末装置から出力される動画番号に対応する動画信号を出力する光ディスクプレイヤとからなり、
上記端末装置ではカラオケ情報中に混在する動画番号を、またはカラオケ情報の終了の有無を判断してカラオケ情報の処理が終了したときには動画終了番号をそれぞれ上記光ディスクプレイヤに出力すると共に該光ディスクプレイヤから入力された動画信号を上記歌詞情報の表示にスーパーインポーズでディスプレイ側へ合成出力するようにし、
一方光ディスクプレイヤでは上記端末装置から入力された動画番号を予め番号順に記録された動画情報に対応するトラック番号に変換して該当する動画信号を最初から上記端末装置に出力すると共に、端末装置側から新たな動画番号又は動画終了番号が入力されるまでこの処理を継続し、動画終了番号が入力された時点で動画出力を中断するようにした
ことを特徴とするカラオケ装置。」

第3 審判請求人の主張
1 無効とすべき理由の概要
請求人は、本件発明の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、以下のとおり主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出している。
(1)本件発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明と、甲第6号証ないし甲8号証に一例を示す周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条2項に該当し、同法123条1項2号により本件特許は無効とすべきものである。
(2)本件特許の明細書の発明の詳細な説明の項の欄には、当業者が容易に実施することができる程度に本件発明が記載されておらず、特許法36条3項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法123条1項の規定により本件特許は無効とすべきである。
(3)証拠方法
甲第1号証 特開昭60-214178号公報(昭和60年10月26日発行)
甲第2号証 特開昭60-244169号公報(昭和60年12月4日発行)
甲第3号証 株式会社日光堂発行「レーザービジョンBGVプレーヤー VPD-1004 取扱説明書」
甲第4号証 特開昭62-259278号公報(昭和62年11月11日発行)
甲第5号証 実願昭62-191690号(実開平1-97453号、平成1年6月28日発行)のマイクロフィルムに記録された内容
甲第6号証 特開昭60-83090号公報(昭和60年5月11日発行)
甲第7号証 特開昭60-24591号公報(昭和60年2月7日発行)
甲第8号証 実願昭63-58823号(実開平1-72782号、平成1年5月16日発行)のマイクロフィルムに記録された内容
甲第9号証 株式会社日光堂の証明書
甲第10号証 株式会社コインジャーナル発行「月刊カラオケfan」1989年11月号抜粋(平成元年10月15日発行)
甲第11号証 「電波新聞」1989年9月2日号抜粋
甲第12号証 「電波新聞」1989年10月31日号抜粋
甲第13号証 特公平7-108025号公報

2 具体的理由の要点
(1)甲第3号証の公知性について
甲第3号証は、カラオケ装置の背景映像を再生する製品「レーザービジョンBGVプレーヤーVDP-1004」の取扱説明書であり、当該製品に添付されているものであり、この取扱説明書が、本件特許発明の出願日(平成1年(1989年)11月1日)前に公知となっていたことは、甲第9ないし12号証から明らかである。
甲第9号証は、甲第3号証の作成者である株式会社日光堂の証明書であり、甲第3号証がその製品の販売時に製品と一緒に購入者に頒布されていたことが示されている。
甲第10号証は、「月刊カラオケfan」1989年11月号(平成1年10月15日発行)に掲載された記事であり、当該製品「VDP-1004」を含むCDカラオケ装置(「ニューAVZ」)の発表展示会が同年8月24日から9月14日まで全国各地で開催された旨が紹介され、「発売は、10月下旬頃の予定」と記載されている。
甲第11号証は、平成1年9月2日付「電波新聞」に掲載された広告であって、当該製品「VDP-1004」がこれと組み合わせて用いられるCDカラオケ装置とともに紹介されており、「年末の需要期に向けて発売、需要に一層の拍車をかける。」と記載されている。また、「従来のソフトは、作品のジャンルと映像がマッチしないという欠点があったが、十月に発売する二枚のソフトには特殊な信号を入れたことによって、作品のジャンルにマッチした映像が自動的に可能になる。」との記載もある。
甲第12号証は、平成1年10月31日付「電波新聞」北海道版に掲載された記事であり、当該製品「VDP-1004」を含むCDカラオケ装置を紹介するとともに、札幌営業所長の「札幌営業所のショールームを活用し、アピールしたい」という談話が記載され、併せて営業所のショールームに設置された同カラオケ装置の写真が掲載されている。また、同号証には、同カラオケ装置の広告も掲載されている。
これらから、当該製品「VDP-1004」はこれに組み合わされるCDカラオケ装置とともに、本件特許発明の出願日である平成1年11月1日より前の、平成1年10月下旬までに発売されていた。遅くとも、同年10月31日前に発売されていたことは、甲第12号証から明らかである。蓋し、発売していない商品を営業所のショールームに設置して販売活動を行うことなど、凡そ考えられないからである。
そして、甲第3号証の取扱説明書は販売時に頒布されていたものであるから、遅くとも平成1年10月31日前にはこれが頒布されていた。また、一般に、発売と同時またはこれに先駆けて、取扱説明書が製品とともに各営業所に配布され、各営業所ではこれを見込み顧客に示しながら製品の説明を行ったり、或いは見込み顧客からの求めに応じて取扱説明書を閲覧させたりすることが、通常の営業活動である。このような営業活動はカラオケ装置の業界でも何ら異なるところはないから、甲第3号証の取扱説明書が遅くとも平成1年10月31日前に、不特定多数の者によって閲覧されていたことは明らかである。少なくとも、同日より前に不特定多数の者が甲第3号証の記載内容を知得できる状態となっていたことに疑問の余地はない。
従って、甲第3号証は本件特許発明の出願日より前に公知となっていたものである。

(2)特許法29条2項違反の理由
甲第1号証には、本件発明と同様に、カラオケの楽曲情報と歌詞情報が記録された記録媒体を再生する第1装置と、背景映像が記録された記録媒体を再生する第2装置とを用い、第1装置で再生された歌詞映像と第2装置で再生された背景映像とを合成してディスプレイに表示するカラオケ装置についての発明が記載されており、両者はまったく同一の技術分野に属する発明である。
本件発明と甲第1号証の発明との相違点については、甲第2ないし8号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項により特許を受けることができない。

(3)特許法36条3項違反
明細書の記載から「動画番号」が具体的にどのようなものであるのかを理解することは不可能である。従って、また、動画番号を指定することによって、何故に「プレイヤ2側より曲の雰囲気に合った動画が送られることとなる」のかも不明である。さらに、「動画番号」をトラック番号に「変換」するというステップがどのようにして実行されるのかを理解することもできない。
発明の詳細な説明の欄を精査しても当業者が容易に実施できる程度に記載されているとは到底言えない。それ故、本件発明は特許法第36条第3項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第3号の規定により、無効とすべきである。

第4 被請求人の主張
1 特許法29条2項違反について
(1) 甲第3号証について
甲第9号証ないし12号証には、いずれも、甲第3号証に係る製品が、本件特許の出願日である平成1年11月1日以前に発売されたとの明確な記載はなく、甲第3号証が、本件出願以前に発売され、公然実施された製品に添付された取扱説明書であることを明確に証するものではない。従って、甲第3号証が、本件出願前に公知になった刊行物である、という審判請求人の主張は否認する。

(2) 甲第1、2、4ないし8号証について
甲第1号証に記載のカラオケ装置は、静止画を背景画とするものであり、動画を背景画として再生する本件特許発明のカラオケ装置とは、背景画の再生に際しての技術的課題を異にするものである。
また、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証は、動画再生を行うカラオケ装置を開示し、甲第4号証はビデオディスク画面の自動検索方法を開示し、甲第6号証〜甲第8号証は、MIDI情報を用いた装置を開示するが、いずれも本件特許発明の要素技術を個別に開示するにすぎない。
各甲号証は、本件特許発明を構成する各要素技術をそれぞれ個別に開示するにとどまり、以下ア、イについて記載も示唆もない。
ア 「楽曲及び歌詞情報」と「動画情報」とを分離し、両者を「動画番号」によって対応づけるという構成を採用し、前記「楽曲情報」をいわゆる「MIDI情報」に代表される「シンセサイザを介して再生する」情報(以下、「MIDI情報」という)とするという構成を採用し、複数の要素技術を組み合わせるという特徴的な構成を採用することにより、カラオケ装置における楽曲及び歌詞情報の記録格納及び動画情報の記録格納に関する省スペース化、効率化を実現すること(「背景動画カラオケ装置の省スペース化、効率化」)。
イ 「動画制御における時間管理」という、「楽曲再生及び動画再生の2つの時間管理を行いながら、両再生を同時に制御し、以て再生の継続及び終了をタイミング良く実現するための特段の処理を必要とする」(答弁書7頁)という、「新たな技術的課題」についての認識、及びこの「新たな技術的課題」を解決するための手段、すなわち、「光ディスクプレイヤでは、上記端末装置から入力された動画番号を予め番号順に記録された動画情報に対応するトラック番号に変換して該当する動画信号を最初から上記端末装置に出力すると共に、端末装置側から新たな動画番号又は動画終了番号が入力されるまでこの処理を継続し、動画終了番号が入力された時点で動画出力を中断するようにした」という構成を採用することにより解決すること。
従って、これら各甲号証に、本件特許発明の要素技術が個々に開示されているとしても、これら要素技術を本件特許発明のように組み合わせることについての記載も示唆もない以上、これら各甲号証の記載から当業者が本件特許発明を容易に想到することはできない。

(3) 被請求人は、口頭審理及び上申書において、具体的に以下のように主張している。
ア 甲第1号証に開示された静止画の制御技術では、静止画は表示され続ける。
イ 特許請求の範囲において新たな「動画番号」の入力に言及している点、実施例において動画パターンの長さに言及している点等からすれば、曲と背景動画に関する時間管理について、当業者であれば十分理解できるものである。(口頭審理における調書参照)
ウ 曲と動画の長さのミスマッチを解消させるための動画の継ぎ足しについては、動画の長さが足りないときには動画番号を指定することにより行われ、これは、本件特許請求の範囲の「端末装置側からの新たな動画番号又は動画終了番号が入力されるまでこの処理を継続し」の記載から読める。(口頭審理における調書参照)
エ 動画について記載された甲第2号証、甲第5号証を、甲第1号証に記載の静止画カラオケの発明に組み合わせても、本件発明に到達することはできない。

2 特許法36条3項違反について
当業者であれば、出願時の技術常識と、本件特許公報の記載から以下に述べるように本件発明の用語の意味を明確に理解し、その実施を容易にできることは明らかである。
本件特許発明において、「動画番号」とは、端末装置からみると、光ディスクに記憶された動画情報を指定する情報であり、「トラック番号」とは、動画情報(動画信号)の光ディスク上の読み出し位置を示す情報であり、光ディスク内における動画情報(動画信号)の格納の位置を示す位置情報がそれにあたり、「動画情報」とは、光ディスクに記憶された動画の情報を意味し、「動画信号」とは、光ディスクに記憶された動画情報から読み出される動画の信号を意味する。光ディスクに記憶されている動画の情報そのものが動画情報であり、この光ディスクに記憶された動画情報を光ディスクプレイヤが読み出して出力する信号が、動画信号である。
上記のように「動画番号」とは、端末装置からみると、光ディスクに記憶された動画情報を指定する情報である以上、「プレイヤ2側より曲の雰囲気に合った動画が送られることとなるのか」についていささかも不明な点はない。
このように、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において、「動画番号」、「トラック番号」、「動画情報」、「動画信号」の技術的意味は明らかであり、しかもこれら相互の関係も明確である。
そして、端末装置から動画番号が光ディスクプレイヤに入力されると、光ディスクプレイヤは動画番号を、動画信号の光ディスク上の読み出し位置を示す位置情報であるトラック番号に変換し、当該動画情報の動画信号を最初から読み出し出力するのである。
特許請求の範囲において、「一方光ディスクプレイヤでは上記端末装置から入力された動画番号を予め番号順に記憶された動画情報に対応するトラック番号に変換して該当する動画信号を最初から上記端末装置に出力する」という構成は、まさに前述した構成を意味するものであり、いささかも不明瞭な点はない。
従って、本件発明は、特許法第36条に規定する要件を満たしている。

3 乙号証
被請求人は、本件発明の進歩性と商業的成功を説明するため、次に掲げる乙第1ないし7号証を提出している。
乙第1号証 東京地裁平成14年行(ワ)第16530号事件における審判請求人第2準備書面
乙第2号証 「カラオケ装置の発展と発明の位置付け」の説明資料
乙第3号証 特許公報(特許第2797606号)
乙第4号証 特許公報(特許第3194884号)
乙第5号証 公開特許公報(特開平10-282972号)
乙第6号証 特許公報(特許第3206619号)
乙第7号証 特許公報(特許第3241372号)

第5 甲各号証
1 甲第1号証(特開昭60-214178号公報)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「この発明は、例えばカラオケとともに、映像を表示するようにした映像つき音響再生装置に関する。」(1頁左下欄15行〜17行)
(イ) 「一般にカラオケの対象となる音楽(演歌が多い)は、その内容が似かよっているものが多く、従って、必要とされる背景映像も曲が異なっても共用できるものがかなりあると考えられる。従って、54000枚の静止画の内から重複利用を許して各々の曲の内容にマッチした静止画を必要な枚数、例えば36枚だけ抜き出して背景映像として利用することができる。そして、そのようにすれば、1枚のビデオディスク上に形成した静止画像ファイルにより、例えば数万曲のカラオケ音楽用の背景映像が供給できるようになる。」(2頁左上欄13行〜右上欄3行)
(ウ) 「CDには、ビデオディスク上の静止画フレームのうちのどれを、どのような順番で、また、どのようなタイミングでアクセスして表示するかについてのデータを、各曲の曲間、あるいは曲の記録されている部分内に書き込んでおくこともできる。」(2頁右上欄16行〜左下欄1行)
(エ) 「この発明においては、ビデオディスクにカラオケの背景映像となる静止画を多数記録しておくと共に、その静止画にはランダムアクセスをするためのページ番号(トラック番号)をつけておく。また、CDには、カラオケの音楽信号を記録しておくと共に、そのカラオケの歌詞として表示される信号と、ビデオディスク上の背景映像のページを指定するページ信号とをユーザーズビットに記録しておく。そして、再生時には、CDからカラオケの音楽信号を再生すると共に、歌詞の表示信号と、背景映像のページを指定するページ信号とを再生し、かつ、そのページ信号によりビデオディスクから背景映像となる映像信号を再生すると共に、これにCDからの歌詞の表示信号を重畳して背景映像及び歌詞を表示する。」(2頁左下欄5行〜20行)
(オ) 「第2図において、(3)はCDプレーヤを示し、このプレーヤ(3)には上述のCD、すなわち、例えば20曲のカラオケ音楽信号Smが記録されていると共に、その各曲の音楽信号に対応するユーザーズビットに、そのカラオケの歌詞のコード信号Scと、ビデオディスク上の背景映像となる映像信号のページ(トラック)を指定するページ信号Spとが記録されているCDがセットされている。なお、信号Scは曲の進行につれて歌詞が順次表示されるように記録され、信号Spは例えば5秒ごとに背景映像を更新するように記録されている。また、(6)はビデオディスクプレーヤを示し、このプレーヤ(6)には上述のようにカラオケの背景映像として適当な静止画が例えば54000枚にわたって、かつ、ランダムアクセスができるように記録されているビデオディスクがセットされている。」(2頁右下欄2行〜17行)
(カ) 「CDプレーヤ(3)において任意のカラオケの曲を指定すると、そのカラオケの音楽信号Smが再生されると共に、そのカラオケの歌詞のコード信号Scと、そのカラオケの背景映像を指定するページ信号Spとが再生される。そして、音楽信号Smが、アンプ(4)に供給されると共に、マイクロホン(5)からの歌声の音声信号Saがアンプ(4)に供給されて信号Smに混合され、かつ、パワー増幅されてからスピーカ(1)に供給される。また、プレーヤ(3)からページ信号Spがプレーヤ(6)に供給されて信号Spにより指定されるページからそのカラオケの背景映像となる静止画の映像信号Svが再生され、この信号Svがアンプ(7)に供給される。さらに、プレーヤ(3)からのコード信号Scがプロセッサ(8)に供給されて信号Scは歌詞を表示する表示信号(映像信号)Sdにデコードされ、この信号Sdがアンプ(7)に供給されて信号Svに例えばスーパーインポーズされる。そして、この信号Sdを有する信号Svがモニタ受像機(2)に供給される。従って、スピーカ(1)からはカラオケにのった歌声が再生されると共に、受像機(2)には、そのカラオケの曲に対応した背景映像の静止画(22)に歌詞(21)がスーパーインポーズされて表示される。そして、その背景映像の静止画は例えば5秒ごとに変化していくと共に、歌詞は曲の進行につれて変化していく。」(3頁左上欄1行〜右上欄7行)

2 甲第2号証(特開昭60-244169号公報)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「近年、ビデオテープレコーダあるいはビデオディスクプレーヤ等の再生装置を用いて、リクエストした曲の伴奏メロディーに合わせて歌詞の入った映像が再生される、いわゆるビデオカラオケ装置が普及してきたが、リクエストした曲に対して一種類の映像を再生するだけの装置であった。」(1頁右下欄5行〜10行)
(イ) 「本発明になるビデオ再生装置は、同じ曲をリクエストするたびに一連の映像の種類がかわるビデオカラオケ装置である。第1図は本発明の一実施例になるビデオ再生装置の構成を示すブロック図である。本発明になるビデオ再生装置は、第1および第2のビデオ再生装置1,2、制御装置3、映像合成装置4、テレビジョン装置5、オーディオアンプ6、スピーカ7からなる。再生装置1、2はビデオテープレコーダあるいはビデオディスクプレーヤが用いられる。」(2頁左上欄8行〜18行)
(ウ) 「再生装置1は制御装置3での選曲操作により、ビデオディスク(図示せず)に収録してある曲を再生する。再生装置1の出力信号は2つあり、オーディオ出力信号はアンプ6に供給されて増幅された後スピーカ7から出力される。ビデオ出力信号(第1の映像信号)は映像合成装置4に供給される。」(2頁右上欄1行〜7行)
(エ) 「再生装置1で用いるビデオディスクに収録してあるのは曲ごとに、オーディオ信号としては伴奏メロディー、ビデオ信号としてはテロップだけの映像(例えば、単色(青)をバックにした歌詞の文字あるいは譜面)である。」(2頁右上欄20行〜左下欄4行)
(オ) 「再生装置2で用いるビデオディスクに収録してあるのは、再生装置1で用いるビデオディスクの曲とは無関係である映像であり、テロップのない一連の映像(例えば、ストーリーのない風景だけの映像)である。」(2頁左下欄4行〜8行)
(カ) 「リクエスト時、ボタン10でリクエスト曲のチャプタ番号の指定(例えば「2」と押す)を行うと、この入力情報はCPU13に送出され、この入力情報がCPU13で検出されると、(中略) CPU13から再生装置1にコマンドコードが送出される。再生装置1はこのコマンドコードを受け、(中略) リクエスト曲の再生を開始する。この再生開始に応じて再生装置1からアドレス情報、ステイタス情報がCPU13に送出される。CPU13はこれを受けて再生装置2に、再生装置1が再生開始した旨のコマンドコードを送出する。再生装置2はこのコマンドコードを受けた後、スタンバイ状態から再生状態となされ、ビデオディスクの任意の位置から再生を開始する。」(2頁右下欄19行〜3頁左上欄18行)
(キ) 「図示するように、再生装置1からのビデオ信号はテロップだけの映像(文字だけの映像)、再生装置2からのビデオ信号はテロップのない映像(マンガの映像)であるから、これらの映像を合成すると、テロップの入った映像(文字が挿入されたマンガの映像)が新しくできる。」(3頁左下欄7行〜12行)
(ク) 「映像合成装置4で合成された映像はテレビジョン装置5に送出され、ここから再生される。そして、映像の再生に合わせて伴奏メロディーがスピーカ7から再生される。」(3頁左下欄18行〜右下欄1行)
(ケ) 「こうして、リクエスト曲の再生が終了すると、再生装置1はディスクをトレースしているピックアップをピックアップの終了位置に移送すると共に、CPU13にリクエスト曲の再生が終了した旨のアドレス情報、ステイタス情報を送出する。CPU13はこれを受けて、(中略) チャプタ番号(「2」)の表示を解除(消灯)する。これと同時に、CPU13から再生装置1に対し、再生を停止する旨のコマンドコードが送出される。再生装置2はこのコマンドコードを受けた後、再生を停止してスタンバイ状態になる。」(3頁右下欄17行〜4頁左上欄10行)(なお上記の引用部分において、下線を付した「再生装置1」との記載は明らかな誤記であって、正しくは「再生装置2」である。)
(コ) 「再生装置1,2にビデオテープレコーダを用いる際には次のようなビデオテープが使用される。再生装置1で用いるビデオテープに収録してあるのは曲ごとに、オーディオ信号としては伴奏メロディー、ビデオ信号としてはテロップだけの映像(例えば、単色(青)をバックにした歌詞の文字あるいは譜面)であり、そして収録されている各曲の間にあるコード(曲の見出し番号、各曲の開始あるいは終了を識別するためのコード)が設けられている。」(4頁右上欄4行〜13行)

3 甲第3号証(株式会社日光堂発行「レーザービジョンBGVプレーヤー VPD-1004 取扱説明書」)については、記載内容は略す。

4 甲第4号証(特開昭62-259278号公報)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「この発明は、各種の音声記録媒体にビデオディスクの画面を検索する信号を挿入することによってビデオディスクの画面を自動的に検索する音声記録媒体によるビデオディスク画面の自動検索方法に関する。」(1頁右下欄15行〜19行)
(イ) 「従来、光学方式又は静電容量方式で動画及び音声を記録したビデオディスクが知られている。これらのビデオディスクには30cm標準ビデオディスクのように、片面30分の動画及び音声もしくは片面54000枚の静止画が記録できるようになっているものがある。」(2頁左上欄1行〜6行)
(ウ) 「この方法では、音響機器3に挿入された音声記録媒体よりビデオディスク画面の解説用の音声及びこのビデオディスク画面を検索する検索用制御信号を再生すると共に、ビデオディスク制御装置10により、検索用制御信号のみを分離してビデオディスクプレイヤ1に送信し、ビデオディスク画面を自動的に検索している。」(2頁左下欄6行〜12行)
(エ) 「磁気記録テープ100には、c方向に記録された2チャンネルのトラック200A及び200Bが設けられており、トラック200Aには、後述するビデオディスク画面の解説用の音楽や音声等の音声信号101〜10nが磁気記録されており、トラック200Bには、上述のビデオディスク画面の検索用の検索用制御信号111〜11nが磁気記録されている。」(2頁左下欄18行〜右下欄5行)
(オ) 「検索用制御信号111〜11nを(中略) 音声信号101〜10nの間に記録して音声信号101〜10nを再生しながらビデオディスク画面を選択されるようにしてもよい。」(2頁右下欄8行〜14行)
(カ) 「ここでは、ビデオディスクに百科事典の画像情報(静止画及び動画)が記録され、磁気記録テープ100のトラック200Aには、画像情報に応じた内容の解説用の音声信号101〜10nが磁気記録され、トラック200Bには、画像情報が記録された画面の検索用制御信号111〜11nが磁気記録されているものを例に説明するが、この画像情報は、百科事典ばかりでなく、美術全集、文学全集、写真集、カタログ集、コミック全集、音楽全集、カラオケ全集等であってもよく、この場合、磁気記録テープ100に磁気記録される内容もこれら画像情報に対応するものを用意する。」(3頁右上欄12行〜左下欄4行)
(キ) 「カセットテープデッキ、オープンリールテープデッキは自動的にトラック200Aより内容を選択して内容に対応した解説の音声信号10l〜10nを再生しスピーカ5より音声が発せられる。又、カセットテープデッキ、オープンリールテープデッキは、トラック200Bに記録された検索用制御信号11l〜11nもその時に再生するので、混合信号OSがビデオディスク制御装置10に入力され、制御信号分離部11で検索用制御信号CS2のみが分離され、この検索用制御信号CS2が制御信号デコード部12で検索コードデータKDにデコードされる。そしてこの検索コードデータKDは検索信号発生部でビデオディスクプレイヤ1に応じた検索信号CS3に変換され、送信器14により赤外線、超音波、電気信号等KSに変換され、ビデオディスクプレイヤ1のリモートコントロール受信部に送信される。これにより、ビデオディスクプレイヤ1はセットされたビデオディスクから上述の解説に対応した画面を検索し、モニタTVに画像(百科事典の頁の静止画及び動画)が表示される。」(3頁左下欄8行〜右下欄9行)
(ク) 「第3図に示すように、検索用制御信号に周波数変調等を行ない(図示400の部分)、音声信号300が記録されているトラック(例えば200A)に重畳させて1本のトラック内に同時に磁気記録し再生するときに復調して分離させるようにしてもよい。又、検索用制御信号を、音声信号の合間に例えば、次の項目の音声信号の前後に重ならないように挿入してもよい。又、この磁気記録テープにビデオテープを使用し、VTR装置で再生するようにしてもよい。又、磁気記録テープの代わりにコンパクトディスクに記録し、CDプレーヤで再生するようにしてもよい。」(3頁右下欄17行〜4頁左上欄9行)

5 甲第5号証(実願昭62-191690号(実開平1-97453号)のマイクロフィルム)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「前記バーコード印刷欄2に印刷されるバーコードのデータ形式は、インターリブド2of5に係るコード体系とし、一つの曲名データには、1桁のジャンル番号(1,〜,3)、3桁のディスク番号(001,〜,150)、2桁の局番号(01,〜,18)、スタートコード、及びストップコードから構成されている。」(明細書6頁10行〜16行)
(イ) 「前記ジャンル番号は、曲毎に演歌、ポップス、ニューミュージックのジャンル区分による番号、(中略)。前記ジャンル番号に応じて、適当な映像を選択して表示する。」(明細書6頁17行〜7頁3行)
(ウ) 「その曲名に対応する位置の前記バーコード印刷欄2を前記バーコードリーダー3にてスキャンすると、該バーコードリーダー3の先端のセンサー9にて曲名データが読み取られる。このとき、該曲名データは、ジャンル番号としてはポップスを表す[2]、ディスク番号としては18番目のディスクを表す[18]、曲番号としては12番目を表す[12]、及び所定のスタートコードとストップコードから構成されている。」(明細書7頁18行〜8頁6行)
(エ) 「前記カラオケ装置本体4においては、受信された曲名データにもとづき前記コンパクトディスクプレーヤ8と出力部18を制御し、スタンバイする。」(明細書8頁11行〜14行)
(オ) 「スピーカ14から所定の伴奏の演奏が開始される。なお、このとき、前記曲名データから得られたジャンル番号[2]に対応する背景映像を映像ディスク12から得て大型ディスプレイ装置13にて表示する。」(明細書8頁18行〜9頁3行)

6 甲第6号証(特開昭60-83090号公報)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「第3図は演奏ステーションのカラオケ装置の詳細なブロック図である。電話回線2を通じて伝送されてきた演奏データBDはカラオケ装置のボックスに設けられた音響カプラ10から装置内に取り込まれ、モデム11によりシリアルなデジタルデータに変換される。」(2頁右下欄9行〜14行)
(イ) 「一曲分の演奏データがすべて外部メモリ14に転送され書込まれた後キーボード15から演奏指令を入力すると、中央演算処理装置13は外部メモリ14に書込まれた演奏データをプログラムに従い読み出し、楽音信号発生回路16およびリズム発生器17に演奏パラメータを与える。(中略) 増幅器18はマイクロホン19からの音声信号と楽音信号発生回路16からの楽音信号とリズム発生器17からのリズム楽音信号とを適度に混合しエコー効果などの効果を付与してスピーカ20から演奏音と歌声とを発生する。この楽音発生動作はシンセサイザの動作と同じであるので説明は省略する。」(3頁左上欄6行〜右上欄5行)

7 甲第7号証(特開昭60-24591号公報)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「マイクロプロセッサ20が指示する楽音再生指示にしたがい、RAM35の中の演奏情報を読み出し、楽音合成器40に供給する。」(3頁右下欄4行〜6行)
(イ) 「楽音合成器40は、複数のチャンネルを持ち、複音が発生でき、かつ、それぞれ、別々の音色が発生できるものを用いる。これらの合成器については、公知のものがあるので説明を省く」(4頁左上欄15行〜18行)

8 甲第8号証(実願昭63-58823号(実開平1-72782号)のマイクロフィルム)には、本件発明に関連した事項について、以下のように記載されている。
(ア) 「この考案の構成によれば楽譜情報に付加した歌詞読出制御信号によって歌詞情報が読出され、この歌詞情報が表示器に送られ、表示器に歌詞に対応した文字が表示され、曲の進行と共に歌詞に着色等の変化を与える。」(4頁2行〜6行)
(イ) 「楽音再生手段100は楽譜情報を解読して楽器音を生成する装置である。この楽音再生手段100は例えばMIDI規格に準拠して作られたものとする。MIDI規格に準拠して作られた楽音再生手段100は既によく知られた装置である。」(5頁19行〜6頁3行)

第6 当審の判断
1 特許法第36条3項違反について
発明の詳細な説明の項の記載が、当業者が容易に実施できる程度か否かの判断は、出願時点における技術常識や公知及び周知な技術を参考に判断されるべき事項であって、明細書の記載は、これらの事項を参酌して理解できれば、容易に実施できる程度に記載されているということができる。
本件発明の場合、明細書における、「動画番号」、「動画番号を指定することによって、プレイヤ側より曲に合った動画が送られること」及び「動画番号をトラック番号に変換すること」については、審判請求人の提示した甲第1、2、4及び5号証を含め当業者に知られた従来技術に鑑みれば、明細書記載の内容で十分当業者が容易に実施できる程度に記載されている。
したがって、本件発明は,特許法36条3項の規定に違反して特許されたものであるから、特許法123条1項の規定により本件特許は無効とすべきであるとの、審判請求人の主張は採用できない。

2 甲第3号証の公知性について
甲第3号証の取扱説明書が本件出願日(平成1年11月1日)より前に公知となっていたことを示す甲第9号証ないし甲第12号証について検討する。
甲第9号証の証明書は、甲第3号証がその製品の販売時に製品と一緒に購入者に頒布されていたことを示すにとどまり、製品の販売時期について明確に示すものでない。
甲第3号証の取扱説明書の製品が本件出願以前に発売されたことを示す証拠の1つとして提出された甲第10号証には、発表展示会が開催されたことは記載があるものの、「発売は、10月下旬頃の予定」と予定の記載のみであり、予定のとおりに実際に発売されたか否かは確認できない。
同じく甲第11号証は、平成1年9月2日付「電波新聞」の記事であって、「年末の需要期に向けて発売」「十月に発売する二枚のソフトには特殊な信号を入れたことによって、作品のジャンルにマッチした映像が自動的に可能になる」との記載はあるが、予定の記載のみであり、実際に発売されたことを確認できない。
同じく甲第12号証は、平成1年10月31日付「電波新聞」北海道版の記事であって、札幌営業所長の「札幌営業所のショールームを活用し、アピールしたい」という談話が記載され、同ショールームに設置された当該製品「VDP-1004」を含むCDカラオケ装置の写真が掲載され、同カラオケ装置の広告の記載はあるが、実際に発売されたことを確認できない。
請求人の主張する営業活動が当該製品の取扱説明書に基づいて行われたことは請求人の推測に基づくものであって、当該製品の取扱説明書が平成1年10月31日前に閲覧された事実を確認することはできない。
したがって、甲第9号証ないし甲第12号証のいずれにも、甲第3号証に係る製品が、本件特許の出願日である平成1年11月1日より前に発売されたとの明確な記載はなく、甲第3号証の取扱説明書が、平成1年11月1日より前に製品と一緒に頒布され公知になったことを明確に証するものはない。よって、甲第3号証が、本件出願前に公知になった刊行物であるとすることはできないから、証拠として採用しない。

3 甲第1号証の発明
本件発明との関連において、甲第1号証には、上記第5の1で摘記したように、次に掲げること(以下「甲第1号証の発明」という。)が記載されている。
「カラオケとともに、映像を表示するようにした映像つき音響再生装置であって、
ビデオディスクにカラオケの背景映像となる静止画を多数記録しておくと共に、その静止画にはランダムアクセスをするためのページ番号(トラック番号)をつけておくこと、
CDには、カラオケ音楽信号が記録されていると共に、その各曲の音楽信号に対応するユーザーズビットに、そのカラオケの歌詞のコード信号と、ビデオディスク上の背景映像となる映像信号のページ(トラック)を指定するページ信号とが、記録され、歌詞のコード信号は曲の進行につれて歌詞が順次表示されるように記録され、ページ信号は例えば5秒ごとに背景映像を更新するように記録されていること、
ビデオディスクプレーヤには、ランダムアクセスができるようにビデオディスクがセットされていること、
CDプレーヤにおいて任意のカラオケの曲を指定すると、そのカラオケの音楽信号が再生されると共に、そのカラオケの歌詞のコード信号と、そのカラオケの背景映像を指定するページ信号とが再生され、音楽信号が、アンプに供給されること、
CDプレーヤからページ信号がビデオディスクプレーヤに供給されてページ信号により指定されるページからそのカラオケの背景映像となる静止画の映像信号が再生され、この映像信号がアンプに供給され、CDプレーヤからの歌詞のコード信号がプロセッサに供給されて歌詞を表示する映像信号にデコードされ、この歌詞の映像信号がアンプに供給されて静止画の映像信号にスーパーインポーズされ、受像機に表示されること。」

4 本件発明と甲第1号証の発明との対比
本件発明と甲第1号証の発明とを対比する。
(1) 甲第1号証の発明における「ビデオディスクプレーヤ」は、本件発明における「光ディスクプレイヤ」に対応している。
(2) 甲第1号証の発明における「受像機」は、本件発明における「ディスプレイ」に対応している。
(3) 甲第1号証の発明における「CDプレーヤ」「アンプ」「プロセッサ」(以下、「CDプレーヤ等」という。)は、カラオケの音楽信号を再生するとともに、背景映像を指定する信号を再生し、歌詞の表示信号を再生するので、これらは、本件発明における「端末装置」に対応している。
(4) 甲第1号証の発明における「カラオケの音楽信号」は、本件発明における「楽曲情報」に対応している。
(5) 甲第1号証の発明における「カラオケの歌詞のコード信号」は、本件発明における「歌詞情報」に対応している。
(6) 甲第1号証の発明において、CDには、カラオケ音楽信号と、その各曲の音楽信号に対応するユーザーズビットに、そのカラオケの歌詞のコード信号と、ビデオディスク上の背景映像となる映像信号のページ(トラック)を指定するページ信号とが記録され、CDプレーヤにおいて任意のカラオケの曲を指定すると、そのカラオケの音楽信号が再生されると共に、そのカラオケの歌詞のコード信号と、そのカラオケの背景映像を指定するページ信号とが再生されるので、「CDプレーヤ等」(本件発明の「端末装置」に相当するもの)が、楽曲情報と歌詞情報に加えて複数の背景映像を指定する信号が付された二進符号のカラオケ情報を順次並列処理し、楽曲情報を再生すると共に歌詞情報はディスプレイに表示しているということができる。
(7) 甲第1号証の発明において、CDプレーヤにおいて任意のカラオケの曲を指定すると、そのカラオケの歌詞のコード信号と、そのカラオケの背景映像を指定するページ信号とが再生され、CDプレーヤからページ信号がビデオディスクプレーヤに供給されてページ信号により指定されるページからそのカラオケの背景映像となる静止画の映像信号が再生され、一方CDプレーヤからの歌詞のコード信号をデコードした歌詞の映像信号が、上記静止画の映像信号にスーパーインポーズされるので、「CDプレーヤ等」(本件発明の「端末装置」に相当するもの)では、カラオケ情報中に混在する背景映像を指定する信号を、光ディスクプレイヤに出力すると共に該光ディスクプレイヤから入力された背景映像の映像信号を歌詞情報の表示にスーパーインポーズでディスプレイ側へ合成出力すること、及び光ディスクプレイヤでは、「CDプレーヤ等」から入力された背景映像を指定する信号に該当する背景映像を「CDプレーヤ等」に出力することが、行われているといえる。
(8) 甲第1号証の発明において背景映像を指定するページ信号は例えば5秒ごとに背景映像を更新するように記録されていて、ページ信号がビデオディスクプレーヤに供給されて、光ディスクプレイヤ側では、ページ信号により指定されるページからカラオケの背景映像となる静止画の映像信号が再生され、次の新たなページ信号が入力されると新たに指定された背景映像信号が再生されるのであるから、端末装置側から新たな背景映像を指定する信号が入力されるまで直前の背景映像信号の再生のための処理が継続されているということができる。
(9) 甲第1号証の発明における「ビデオディスク上の背景映像となる映像信号のページ(トラック)を指定するページ信号」は、背景映像を指定する信号であり、本件発明における「動画番号」は、動画の背景映像を指定する信号である。

5 本件発明と甲第1号証の発明との一致点・相違点
上記対比から、本件発明と甲第1号証の発明とは、次に掲げる一致点、相違点を有する。

一致点
「楽曲情報と歌詞情報に加えて複数の背景映像を指定する信号が付された二進符号のカラオケ情報を順次並列処理し、楽曲情報を再生すると共に歌詞情報はディスプレイに表示する端末装置と、
この端末装置から出力される背景映像を指定する信号に対応する背景映像信号を出力する光ディスクプレイヤとからなり、
上記端末装置ではカラオケ情報中に混在する背景映像を指定する信号を、上記光ディスクプレイヤに出力すると共に該光ディスクプレイヤから入力された背景映像信号を上記歌詞情報の表示にスーパーインポーズでディスプレイ側へ合成出力するようにし、
一方光ディスクプレイヤでは上記端末装置から入力された背景映像を指定する信号により指定される背景映像信号を上記端末装置に出力すると共に、端末装置側から新たな背景映像を指定する信号が入力されるまでこの処理を継続するようにしたカラオケ装置。」

相違点
(1)相違点1
背景映像について、本件発明では、
(1-1)背景映像が動画であり、
(1-2)背景映像を指定する信号が、動画番号であり、端末装置では、カラオケ情報中に混在する動画番号を上記光ディスクプレイヤに出力し、光ディスクプレイヤでは、上記端末装置から入力された動画番号を予め番号順に記録された動画情報に対応するトラック番号に変換して該当する動画信号を最初から上記端末装置に出力すると共に、端末装置側から新たな動画番号が入力されるまでこの処理を継続し、
(1-3)端末装置では、カラオケ情報の終了の有無を判断してカラオケ情報の処理が終了したときには動画終了番号を上記光ディスクプレイヤに出力し、光ディスクプレイヤでは、動画終了番号が入力された時点で動画出力を中断するのに対し、
甲第1号証の発明では、
(1-1)背景映像が静止画であり、
(1-2)背景映像を指定する信号はページ(トラック)信号であり、
(1-3)カラオケ情報の終了については特に記載がない点。

(2)相違点2
楽曲情報の再生が、本件発明では、シンセサイザを介して再生するのに対し、甲第1号証の発明では、CDからの音楽信号が再生される点。

6 相違点についての検討
(1) 相違点1についての検討
(1-1) カラオケと共に映像を表示するようにした映像つきカラオケ装置において、背景映像として、静止画を用いたものも動画を用いたものも従来より周知である。
また、ビデオディスクプレーヤにおいて再生される映像として、静止画も動画も周知である(例えば、甲第2、4、5号証、参考資料7として請求人が提出したレーザービデオディスクの規格を解説した「Laser Vision Disk Software Production Guide Book 1987 2nd EDITION」参照)。
してみれば、甲第1号証には、背景映像として動画を採用することの明記はないものの、甲第1号証の記載に接すれば、背景映像として、静止画に換えて動画を採用することは当業者が適宜なしうるところである。
(1-2) 甲第1号証の発明は、カラオケの背景映像は曲が異なっても共用できるので重複利用を許して各々の曲の内容にマッチした背景映像を再生するために、カラオケ情報中の信号により、楽曲及び歌詞と分離して記憶されている背景映像を指定するものである。カラオケの背景映像は曲が異なっても共用でき、重複利用を許して各々の曲の内容にマッチした背景映像を再生するということは、動画であれ静止画であれ共通の課題であるので、甲第1号証の発明において、背景映像として動画を採用した際に、再生する動画を指定する信号を光ディスクプレイヤに対して出力して、動画を再生させるようにすることは、当業者であれば容易になし得るところである。
ビデオディスクプレイヤにおいては、一般に、ビデオディスクプレイヤに記録されている動画のトラック番号等(チャプター番号など画像情報の格納位置を示す番号を含む)が指定されることにより該当する動画信号が最初から再生される(例えば上記参考資料7参照)ものであり、外部装置から入力される動画情報を指定する信号を、ビデオディスクプレイヤ側における検索信号(トラック番号等に相当する)に変換して動画再生することは、甲第4号証にも記載されている。
また、甲第5号証には、ジャンル番号に応じて、適当な映像が選択され表示されることが記載されていて、ビデオディスクプレイヤでは映像再生のために、ジャンル番号が画像情報の格納位置を示す番号に変換され映像の再生が行われているものと理解できるので、動画背景映像を指定する信号を、ビデオディスクプレーヤ側における画像情報の格納位置を示す番号(トラック番号等)に変換して動画再生することが、甲第5号証にも示唆されているとみることができる。
してみれば、甲第1号証の発明において、背景映像として動画を採用した際に、動画を指定する信号をビデオディスクプレイヤに対して出力して、ビデオディスクプレイヤ側では、動画を指定する信号を予め番号順に記録された対応するトラック番号に変換して該当する動画信号を最初から上記端末装置に出力すると共に、端末装置側から新たな動画番号が入力されるまでこの処理を継続することは、当業者が適宜なしうる設計的事項である。
(1-3) 甲第1号証の発明は、カラオケ情報の終了のときについては特に記載がないが、上記第5の1(ア)に摘記したように、カラオケとともに映像を表示するものであり、カラオケが終了すれば映像の表示も終了するとみるのが自然である。カラオケの終了に合わせて背景映像の再生を終了するかどうかは当業者の好みに属する事項であり、技術的観点からみれば当業者が適宜実施しうる程度の事項にすぎない。
甲第2号証に、カラオケの背景映像として動画を用い、曲が終了したときに再生停止の命令がビデオディスクプレイーヤに送られ、背景映像の再生が楽曲の終了に同期して終了する構成が示されている。
してみれば、甲第1号証の発明において、背景映像として動画を採用した際に、曲の終了のときについて甲第2号証に開示された公知の構成を適用することは当業者が適宜なし得ることにすぎないので、本件発明のように、「端末装置では、カラオケ情報の終了の有無を判断してカラオケ情報の処理が終了したときには動画終了番号を上記光ディスクプレイヤに出力し、光ディスクプレイヤでは、動画終了番号が入力された時点で動画出力を中断する」ことは、当業者が適宜なしうることである。

(2) 相違点2についての検討
甲第6、7、8号証に記載されているように、カラオケ装置において、楽曲情報をシンセサイザを介して再生することは周知技術である。
本件明細書にはシンセサイザを用いたことのみが記載され、具体的な実施態様もないことから、カラオケ装置において、CDからの音楽信号であるデジタルオーディオデータを再生するか、シンセサイザを介して再生するかは、当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎないので、甲第1号証の発明において、楽曲をシンセサイザを介して再生することは当業者が適宜なし得ることにすぎない。

(3) 上記相違点1ないし2を総合的に勘案しても、本件発明は、カラオケ装置における甲第1、2、4ないし8号証に記載された公知又は周知の技術を組み合わせたものであり、その効果も、当業者であれば当然に予測しうる範囲内であり、上記相違点により格別な効果を奏するものでない。

第7 被請求人の主張の検討
1 被請求人は、本件発明と甲第1号証の発明は、その技術分野及び技術課題が相違する、すなわち、甲第1号証の発明のカラオケ装置は静止画を背景画とするものであり、動画を背景画として再生する本件発明のカラオケ装置とは、背景画の再生に際しての技術課題を異にし、甲第1号証には再生終了の命令が光ディスクプレイヤに入力される旨の示唆もないと主張しているので、これについて検討する。
これについては、相違点1の検討でも示したように、カラオケ装置において、背景映像として、静止画を用いたものも動画を用いたものも周知であり、本件発明も甲第1号証も背景映像の再生という点で共通の技術課題を有している。
また、カラオケの終了するときに背景映像の再生を終了するかどうかは当業者が任意に選択できる事項にすぎない。甲第1号証に、楽曲の終了に伴う映像再生の終了が明記されていないのは、甲第1号証は、発明の特徴が特に終了に関するものでないから記載されていないというべきである。よって、被請求人の主張は採用できない。

2 被請求人は、甲第1号証及び他の甲号証には、「動画制御における時間管理」の新たな技術課題、すなわち、「「カラオケ情報」から「動画情報」を分離してLDに記憶し、その動画情報を使い回す構成を採用すると、必然的に楽曲の再生時間と動画の再生時間とのミスマッチを生じるため、楽曲の再生終了に合わせて動画の再生を終了するためには、楽曲の再生時間と動画の再生時間との調整を行うことが必須となる」という新たな技術課題についての認識、及びこの新たな技術課題を解決するための手段、すなわち「光ディスクプレイヤでは、上記端末装置から入力された動画番号を予め番号順に記録された動画情報に対応するトラック番号に変換して該当する動画信号を最初から上記端末装置に出力すると共に、端末装置側から新たな動画番号又は動画終了番号が入力されるまでこの処理を継続し、動画終了番号が入力された時点で動画出力を中断するようにした」構成を採用することについての記載も示唆もないと主張しているので、これについて検討する。

(1) これについては、相違点1の検討の(1-2)(1-3)でも示したように、楽曲の終了に合わせて動画の再生を終了する課題及及び解決手段は甲第2号証に記載されているところであり、端末装置から新たな動画番号が入力されるまでは直前の動画番号の処理が継続される構成は、甲第1号証の発明で静止画に換え動画を採用すれば当然想到することである。

(2) 本件発明の効果は、明細書の記載によれば、「カラオケ装置に使用される光ディスク自体にはカラオケの楽曲情報と歌詞情報の他には動画番号を適宜混入させるだけで良く、一枚のディスクに記憶できるカラオケ曲数を大幅に増加させることができるという格別の効果を有する。従って、広い選曲に対応することが要求される業務用のカラオケ装置においても内蔵されるディスクの枚数を多くする必要がなく、装置自体の機械的、電気的な構造も簡略される。」([発明の効果]の項)であり、甲第1号証の発明も同様の効果を奏するものであって、本件発明と甲第1号証の発明は、背景映像を指定する信号をカラオケ情報に混在させる構成を採ることにより、背景映像に関する技術課題を解決して同様の効果を有している。

(3) 被請求人は、動画の長さと楽曲の長さのミスマッチを解消するために、特に楽曲の再生時間に対して動画の再生時間が短い場合には楽曲の内容に合わせた動画がタイミングよく順番に再生されるような構成を採用する(被請求人上申書6頁ニ))と主張しているが、動画番号が端末装置から光ディスクプレイヤに入力されるタイミングについて、動画の長さとの関係において特許請求の範囲及び明細書に特に記載しているわけではなく、本件発明の構成のみにより上記長さのミスマッチが必ずしも解決できるものではない。

(4) 被請求人は、「特許請求の範囲において新たな「動画番号」の入力に言及している点、実施例において動画パターンの長さに言及している点等からすれば、曲と背景動画に関する時間管理について、当業者であれば十分理解できるものである」及び「曲と動画の長さのミスマッチを解消させるための動画の継ぎ足しについては、動画の長さが足りないときには動画番号を指定することにより行われ、これは、本件特許請求の範囲の「端末装置側からの新たな動画番号又は動画終了番号が入力されるまでこの処理を継続し」の記載から読める」(口頭審理調書参照)と主張している。
しかし、上記(3)で示したように、動画の長さが楽曲の長さより短い場合には、動画の長さの最後に対応すべく、カラオケ情報中に動画番号が混在されていなければならないが、そのようなことまで、特許請求の範囲や明細書には記載されていない。「端末装置側からの新たな動画番号又は動画終了番号が入力されるまでこの処理を継続し」の記載から、次の動画番号が入力されると動画番号の切り換えに対応して次の動画信号の再生が行われること、動画終了番号が入力されると動画の再生処理が終了することが、読める程度であって、動画の長さが足りないときには動画の継ぎ足しが行われることまでは、読みとれない。

(5) 被請求人は、甲第2号証は、動画の内容が、楽曲と無関係の映像であるので、甲第1号証の発明と組み合わせ採用できないと主張している。しかし、楽曲の終了は、楽曲の内容や背景映像の内容とは無関係であり、背景映像の内容が、静止画であるか動画であるか、又は楽曲と関係のない動画であるか関係する動画であるか、にかかわらず、楽曲の終了に際して、背景映像を終了させることは適宜行われることである。よって、楽曲の終了の観点から、甲第2号証の発明を甲第1号証の発明と組合わせることは適宜なしうる。

3 被請求人は、甲第1号証及び他の甲号証には、「背景動画カラオケ装置の省スペース化、効率化」の課題の実現のために、複数の要素技術を組み合わせるという特徴的な構成を採用することにより、カラオケ装置における楽曲及び歌詞情報の記憶格納及び動画情報の記録格納に関する「省スペース化、効率化」を実現する旨の記載及びこれを示唆する記載もないと主張しているので、これについて検討する。
これについては、相違点1及び2の検討でも示したように、カラオケ装置において公知又は周知の技術を組み合わせることは、当業者にとって適宜なし得るところであり、背景映像として動画と静止画の違いがあっても、動画に関する技術やビデオディスクプレイヤに関する公知又は周知の技術を組み合わせることは当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎない。
カラオケ装置の省スペース化及び効率化が課題であることは当然のことであるから、カラオケ装置として周知技術である、楽曲情報をシンセサイザで再生することは、当業者が適宜行うことであり、他の情報量が膨大だからといって当業者の発想を超えるものではない。
また、背景映像の情報量が多いことから、これを指定する信号をカラオケ情報に混在させることにより、背景情報の選択の自由度を増しまた同じ背景情報を使い回すという発想は、甲第1号証において開示されている技術であり、当業者であれば甲第1号証の発明において背景映像を静止画ではなく動画を採用する際には、当然動画を指定する動画番号を用いるといえる。

4 被請求人は、動画について記載された甲第2号証、甲第5号証を、甲第1号証に記載の静止画カラオケの発明に組み合わせても、本件発明に到達することはできない旨を以下(1)ないし(5)のとおり主張している(上申書10頁〜19頁)ので、これについて検討する。
(1)甲第1号証に開示された静止画の制御技術では、CDプレイヤが停止後も、最後に出力されたページ信号Spに対応する静止画が表示され続けるものと解さざるを得ない。
(2)本件発明は、動画制御における時間管理という新たな技術課題を解決するものである。
(3)静止画に比べ動画は、当該背景が漫然と表示され続けると、その不自然さが際だったものとなる。
(4)甲第2号証の発明と甲第1号証の発明とを組み合わせても、本件発明を得ることはできない。
(5)甲第5号証の発明と甲第1号証の発明とを組み合わせても、さらには甲第5号証の発明を甲第2号証の発明、甲第1号証の発明と組み合わせても、本件発明を得ることはできない。

被請求人の主張(1)について
相違点(1-3)で検討したように、甲第1号証には、CDプレイヤが停止したときについては特に記載がないが、ページ信号Spは楽曲に合わせた静止画を再生するためのものであって、楽曲終了後に背景映像を終了させるかさせないかは適宜選択される設計的事項にすぎないから、被請求人の主張は採用できない。

被請求人の主張(2)について
上記2の検討で示したとおりである。被請求人の「曲と動画の長さのミスマッチを解消させるための動画の継ぎ足しについては、動画の長さが足りないときに新たな動画番号を出力することにより行われる」という主張は、請求の範囲や明細書に、動画の長さが足りないときにというタイミングについてまでは、記載がないので、被請求人の主張は採用できない。また、被請求人は、静止画には再生時間のミスマッチという問題は発生する余地がないと主張しているが、甲第1号証には1つの楽曲の中で複数の静止画を順番に再生することが開示されているのであるから、静止画においても曲の長さに合わせて静止画を指定する信号を複数混在させて曲の長さに合わせている。甲第1号証の発明を動画の再生に適用した際には、1つの楽曲の中で複数の動画を順番に再生することは当業者が容易になし得ることといえる。

被請求人の主張(3)について
静止画と動画とを比べ、動画が表示され続けるとその不自然さが際だつとは断言できない。
楽曲の再生終了時に背景映像を表示するか終了させるかは、静止画か動画を問わず適宜選択すべき設計的事項であり、楽曲の再生終了に合わせて動画の再生を終了させることは、甲第2号証に開示されており、被請求人の主張は採用できない。

被請求人の主張(4)について
被請求人は、甲第2号証は、カラオケ情報と動画情報を動画番号によって対応づける発想がないので「動画制御における時間管理」における新たな技術課題及び解決手段の示唆がないと主張し、甲第2号証は、動画の内容が、楽曲と無関係の一連の映像であるので、甲第2号証の装置では、曲の再生が終了するとスタンバイ状態となりその映像再生の終了ではなく、次の再生に備えるものであると主張している。
しかし、甲第2号証には、楽曲の終了時に動画の再生が停止し、曲間では再生装置2(これは背景映像に相当する)がスタンバイ状態となり動画が再生されないことが示されているのであるから、楽曲の終了に対応して動画の再生を終了するという、楽曲の終了に係わる動画制御の時間管理の課題の認識及び解決手段が開示されているといえる。

被請求人の主張(5)について
被請求人は、甲第5号証の発明は、所定のジャンルに対応された複数の映像の中から、適当な映像を選択して表示されるということであり、複数の映像のそれぞれが異なる再生時間を有しているにもかかわらず、この再生時間と楽曲の再生時間との相違が全く考慮されていないことを意味すると主張し、したがって「動画制御における時間管理」における新たな技術課題及び解決手段の示唆がないと主張している(上申書18頁22行〜28行)。被請求人は、本件発明は動画の長さが異なることが前提であるように主張しているが、本件明細書によれば、「1パターン3分程度として20パターン用意すれば十分である」(特許明細書公報2頁右欄33乃至34行)と例示されていて、本件発明では特に各動画の長さが異なるものを前提としておらず、明細書全体を検討してもこの点について記載されていないので、被請求人の主張は採用できない。

5 被請求人は、答弁書で乙第2ないし7号証を提出し、本件発明の進歩性と商業的成功は、出願当時の当業者の技術水準に関する事実によって裏付けられると主張しているが、これらの証拠は、被請求人の作成した説明資料及び本件出願日より後の出願に係る公報であって、出願当時の当業者の技術水準を裏付けるものではなく、本件発明の進歩性を裏付けるものではないので、これらの証拠から、本件発明をすることが困難であるとはいえないし、本件発明に格別顕著な効果があるともいえない。

第8 むすび
以上、本件発明は、甲第1、2、4ないし8号証の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-11-05 
結審通知日 2003-11-10 
審決日 2003-11-26 
出願番号 特願平1-287071
審決分類 P 1 112・ 121- Z (H04N)
P 1 112・ 531- Z (H04N)
最終処分 成立  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 小林 秀美
小松 正
登録日 2000-01-28 
登録番号 特許第3025781号(P3025781)
発明の名称 カラオケ装置  
代理人 一色 健輔  
代理人 龍村 全  
代理人 黒川 恵  
代理人 原島 典孝  
代理人 布施 行夫  
代理人 櫻林 正己  

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