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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01J
管理番号 1089797
異議申立番号 異議2003-70821  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-31 
確定日 2003-10-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3330591号「ショートアーク型水銀ランプおよびランプユニット」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3330591号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3330591号の請求項1ないし5に係る発明についての出願は、平成13年5月18日(優先権主張平成12年5月31日)に特許出願され、平成14年7月19日にその発明について特許の設定登録がなされた後、平成15年3月31日付けで特許異議申立人芳松由江より請求項1,2,3,4,5に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、平成15年6月18日付けで請求項1,2,3,4,5に係る特許に対する取消理由通知がなされ、その指定期間である平成15年8月26日に訂正請求がなされたものである。


2.訂正の適否についての判断

2-1 訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。

【訂正事項a】
特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されている
「最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きい」を
「最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である」に訂正する。

【訂正事項b】
段落番号【0016】、【0017】、【0018】及び【0022】に記載されている
「最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きい」を
「最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である」に訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記の【訂正事項a】及び【訂正事項b】に関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)には「W電極112が冷えていき、水銀蒸気の凝縮が進むと、図14(a)に示すように、W電極112の先端111から対向するW電極の先端に向かってHg玉118が同心円状に成長していく。Hg玉118には表面張力が加わるため、Hg玉118の成長方向は、電極中心軸119方向と同じ方向となる。W電極112のHg玉118aの成長が進み、W電極112’から成長してきたHg玉118bと接触すると、表面張力によって2つのHg玉は一体化して、図14(b)に示すように、水銀ブリッジ140が形成されることになる。水銀ブリッジ140が一旦形成されてしまうと、W電極112および112’間がショートし、ランプ1000に正常に始動電圧が印加されなくなってしまうので、ランプ1000は動作しなくなる。」(【0013】)と記載されており、本件発明の前提条件である「水銀ブリッジ140が形成される」ことと「配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である」こととは等価であるから、「配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である」は特許明細書に記載されているものと認める。そうすると、上記の訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内において、配置間隔D(mm)とHg玉の直径との関係を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加にも該当しない。
そして、上記訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
2-3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて

3-1 本件発明
上述のとおり、本件訂正請求は認められるので、本件発明は、訂正請求書に添付された全文訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)
【請求項1】 発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と、他方の電極の電極中心軸とは互いにずれており、かつ、
前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、
前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である、ショートアーク型水銀ランプ。
【請求項2】 発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と他方の電極の電極中心軸とは、共通の同一軸上に位置しておらず、且つ、前記一方の電極の電極中心軸方向に沿って前記一方の電極の先端面を投影した投影面は、前記他方の電極の先端面と接した状態または少なくとも一部が重なった状態であって、
前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、
前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である、ショートアーク型水銀ランプ。
【請求項3】 発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dよりも、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離dの方が長く、
前記配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、
前記最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である、ショートアーク型水銀ランプ。
【請求項4】 点灯形式が交流点灯型である、請求項1から3の何れか一つに記載のショートアーク型水銀ランプ。
【請求項5】 請求項1から4の何れか一つに記載のショートアーク型水銀ランプと、前記水銀ランプから発する光を反射する反射鏡とを備えたランプユニット。

3-2 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、下記の甲第1ないし6号証を提出して、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、甲第1ないし6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張する。

甲第1号証:特開平11-329362号公報(以下の「刊行物1」と同一。)
甲第2号証:特開平 2-148561号公報(以下、「刊行物4」という。)
甲第3号証:特開平 6- 52830号公報(以下、「刊行物5」という。)
甲第4号証:特開平11-297274号公報(以下、「刊行物6」という。)
甲第5号証:特開平 3-210747号公報(以下、「刊行物7」という。)
甲第6号証:特開平10-312771号公報(以下の「刊行物3」と同一。)

3-3 取消理由の概要
取消理由の概要は、訂正前の請求項1〜5に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有するものが、容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである、というものである。

刊行物1:特開平11-329362号公報(申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭59-201359号公報
刊行物3:特開平10-312771号公報(申立人が提出した甲第6号証)

3-4 各刊行物に記載された発明
刊行物1(甲第1号証):
(1-1)「【0013】
【発明の実施の形態】図1に本発明にかかる高圧水銀ランプを示す。放電ランプ1は石英ガラスよりなり、中央の放電容器2とその両端につながる細長の封止部3より構成される。放電容器2の中(以下、これを「発光空間」ともいう)には、陰極4と陽極5が、1.0〜2.0mm程度の間隙をもって配置される。陰極4は上方であって後端は封止部3の中に埋設されて金属箔6に接合され、陽極5は下方であって後端は封止部3の中で同様に金属箔6に接合される。それぞれの金属箔6の他端は外部リード7が接合される。
【0014】発光空間には、発光物質として水銀が封入され、また、点灯始動ガスとしてアルゴン、キセノン等の希ガスが封入される。希ガスは例えば、5.3×104Pa封入される。ここで、水銀の封入量は0.155mg/mm3以上であって、これは安定点灯時の蒸気圧が百数十気圧以上になるものである。
【0015】このような高圧水銀ランプの一例を紹介すると、放電容器の最大外径11.6mm、最大内径4.6mm、発光空間長(ランプの軸方向の長さ)16.0mm、封入水銀量20.0mg、発光空間の内容積120mm3、発光空間の内表面積128mm2、管壁負荷1.56W/mm2、定格電力200Wである。(段落番号【0013】〜【0015】)」
と記載されている。

刊行物2:
(2-1)「第2図に示す石英ガラス製球形発光管1内には電極21,21が互に対向して設けられている。電極21,21は電極軸22に電極コイル23を巻装して構成されている。そして本実施例の電極軸22は上方に向けて屈折されており、電極先端部21a,21aが角度θ=5°から30°の範囲に位置するようになっている。角度θは、両電極21,21の封止部側基端を互に結んだ線O1-O1に対して封止部基端を頂角として上向きになす角度である。なお線O1-O1は、電極軸22,22が正しく球形発光管1の管軸に設けられる場合にはこの管軸と一致する。また図中3,3は発光管封止部、4,4はモリブデンなどの高融点金属箔、5,5はリード線を示す。
発光管1内にはスカンジウム・ナトリウムの沃化物(SCI2・NaI)および水銀、始動用希ガスが封入されている。」(第2頁左下欄13行〜同右下欄10行)
(2-2)「またアークの上方への曲がり具合が一番多い例を調べると、距離Lが5mm、電極間距離lが2mmに設定された20ワット級のランプにおいて、第4図に示すように一方の電極2の基端部と他方の電極2の先端部とにアークスポットが形成される場合であった。」(第3頁右上欄4行〜9行)
(2-3)「なお、直流点灯されるランプの場合は、第5図に示した陰極51を、必らずその先端がθ=5°〜30°の範囲に設け、陽極52は上記範囲内に設けるかまたは設けなくてもよい。」(第3頁左下欄4行〜7行)
と記載されている。

刊行物3(甲第6号証):
(3-1)「【0016】本実施の形態のランプは、交流点灯方式で点灯され、ランプ電圧は約60Vでランプ消費電力は250Wである。
【0017】また、発光管の一方の封止部3に、放物面である反射面を備えたガラスからなる凹面反射鏡12がセメント13によって固着されている。」(段落番号【0016】〜【0017】)
と記載されている。

刊行物4(甲第2号証):
高圧水銀蒸気放電ランプに関し、
(4-1)「水銀の量は、0.2mg/mm3より多く、」と記載され、
(4-2)実施例の例1、例2及び例3において、それぞれ「封入水銀Hg6mg(0.261mg/mm3)、放電ギャップ1.2mm」、「封入水銀Hg4mg(0.243mg/mm3)、放電ギャップ1.0mm」、 及び「封入水銀Hg2.5mg(0.357mg/mm3)、放電ギャップ1.0mm」であることが記載されている。

刊行物5(甲第3号証):
高圧水銀放電ランプに関し、
(5-1)「放電スペース内に、少なくとも2mgHg/mm3、及び希ガスの封入物とを有する高圧水銀放電ランプにおいて、」
(5-2)「放電路の長さDpは1.0〜2.0mmの範囲内で、」
と記載されている。

刊行物6(甲第4号証):
両端に一対の電極を封着した高圧水銀蒸気放電灯に関し、
(6-1)「電極間のアーク長を0.5〜1.5mmと規定し、」
(6-2)「内容積が約0.05ccの略楕円球状であり、」
(6-3)「アーク長(両電極の先端間の距離)が1.2mmとなるように配置されている。このように構成された発光管内にはバッファガスとしての水銀を10mg、・・・封入している。」
と記載されている。

刊行物7(甲第5号証):
片封止型金属蒸気放電灯に関し、
(7-1)「本発明においては、封止部の大きさを変えることなしに、電極先端部間の距離を大きくすることのできる片封止型金属蒸気放電灯を提供しようとするものである。」
(7-2)「第2図に示すように電極3の先端部5は一対の電極軸部4を含む平面に対し、例えば20°程度の角度分互いに異なる方向に曲折されており、電極の先端間最短距離は6.4mmとなっている。」
と記載されている。

3-5 対比・判断

3-5-1 本件発明1について
本件明細書の記載からみて、本件発明1において、「配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である」と特定しているのは、本件発明1が、水銀ブリッジが発生する虞のある電極の配置間隔Dを持つショートアーク型水銀ランプであることを意味するものであることは明らかであって、本件発明1では、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下であるショートアーク型水銀ランプにおいて、一方の電極の電極中心軸と、他方の電極の電極中心軸とを互いにずらすとともに、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることにより、水銀ブリッジの発生を抑制できるという効果を奏するものである。
これに対して、上記刊行物1ないし7のいずれにも、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の電極中心軸と、他方の電極の電極中心軸とを互いにずらすとともに、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることを示唆する記載はない。
すなわち、刊行物1には、一対の封止部を有する高圧水銀ランプにおいて、陰極と陽極とが1.0〜2.0mm程度の間隙をもって配置されること、及び水銀の封入量が0.155mg/mm3以上であることが記載されており、刊行物1記載の発明における「陰極と陽極との間隙」は、本件発明1における「一方の電極の先端と他方の電極との配置間隔D」に相当するから、配置間隔Dが2mm以下である点、及び水銀の総封入量が150mg/cm3以上である点では、本件発明1と一致している。また、刊行物1には、(6M/13.6π)1/3 の値については、直接の記載はないが、実施例の「水銀20mg」、すなわちM=0.02gを用いて計算すると、刊行物1記載の発明の実施例における(6M/13.6π)1/3 は、約0.14(cm)、すなわち約1.4mmとなり、刊行物1記載の発明における陰極と陽極との間隙(配置間隔)1.0〜2.0mmのうち、1.0mm以上で1.4mm未満の場合には、本件発明1と一致することとなる。しかしながら、刊行物1には、陰極と陽極との間隙(配置間隔)を1.0mm以上で1.4mm未満に限定する旨の記載はない。また、刊行物1記載の発明では、両電極軸がずれてはいないので、本件発明1における「最短距離d(cm)」は、刊行物1記載の発明における陰極と陽極との間隙(配置間隔)となり、刊行物1記載の発明において、電極間隙が「1.0mm以上で1.4mm未満」の場合には、「最短距離d(cm)を水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きく」するという本件発明の構成を満足しないことは自明である。
同様に、刊行物3、4、5及び6に記載された発明も、両電極軸がずれてはいないので、本件発明1における「最短距離d(cm)」は、同時に本件発明1における「配置間隔D(mm)」となり、これ等の刊行物記載の発明においては、「最短距離d(cm)を水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きく」するという本件発明の構成と、と、「一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下である」という構成の両方を同時にを満足しないことは自明である。
また、刊行物2には、摘記事項から明らかなように、一方の電極の電極中心軸と他方の電極の電極中心軸とが互いにずれている小形高圧金属蒸気放電灯が記載されているものの、その目的は、アークスポットが電極基端部に発生しても電極先端部へ速やかに移行させることができるようにすることであって、水銀ブリッジの発生を防止することについては、何ら開示もない。また、刊行物2に記載された「電極間距離l」は、本件発明1における「配置間隔D」に相当するものであって、それが「2mm」である場合が記載されているものの(摘記事項(2-2)参照)、水銀量については何ら記載がないから、該電極間距離「2mm」が、水銀ブリッジを発生する虞のある距離、すなわち、本件発明で特定する「10×(6M/13.6π)1/3以下」であるか否かは不明である。
さらに、刊行物7には、摘記事項から明らかなように、片封止形金属蒸気放電灯に関し、「電極の先端部は、一対の前記軸部を含む平面に対し互いに異なる方向に配設されている」と記載されており、一方の電極の電極中心軸と他方の電極の電極中心軸とが互いにずれていることは明らかであるが、その目的は、電極先端部間の距離を大きくすることであって、水銀ブリッジの発生を防止することについては、何ら開示もない。また、刊行物7には、「例えば、20°程度の角度分互いに異なる方向に曲折されており、電極の先端部間最短距離は6.4mmとなっている。」と記載されており、該「先端部間最短距離」は、本件発明1の「最短距離d(cm)」に相当するものであるが、刊行物7には、水銀量については何ら記載がない以上、刊行物7における「6.4mm」が、(6M/13.6π)1/3以下の数値よりも大きいか否かは不明であるばかりでなく、刊行物7記載の発明においては、本件発明1における「配置間隔D」に相当する距離が2mm以下であることは到底あり得ないことは明らかである。
以上のとおり、上記刊行物1ないし7のいずれにも、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることを示唆する記載はない。そして、本館発明1は、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることにより、水銀ブリッジの発生を抑制できるという、これらの刊行物の記載からでは予期し得ない効果を奏するものである。
よって、本件発明1が刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-5-2 本件発明2について
本件発明2は、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下であるショートアーク型水銀ランプにおいて、一方の電極の電極中心軸と他方の電極中軸とは共通する同一軸上に位置しておらず、且つ、前記一方の電極の電極中心軸方向に沿って前記一方の電極の先端面を投影した投影面は、前記他方の電極の先端面と接したまたは少なくとも一部が重なった状態であるとするとともに、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることにより、水銀ブリッジの発生を抑制できるという効果を奏するものである。
これに対し、前項に詳述したとおり、上記刊行物1ないし7のいずれにも、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることを示唆する記載はない。そして、本件発明2は、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることにより、水銀ブリッジの発生を抑制できるという、これらの刊行物の記載からでは予期し得ない効果を奏するものである。
よって、本件発明2が刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-5-3 本件発明3について
本件発明3は、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下であるショートアーク型水銀ランプにおいて、一方の電極と他方の電極との配置間隔Dより、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端とも最短距離dの方が長くするとともに、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることにより、水銀ブリッジの発生を抑制できるという効果を奏するものである。
これに対し、前項に詳述したとおり、上記刊行物1ないし7のいずれにも、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることを示唆する記載はない。そして、本件発明3は、一対の電極の配置間隔D(mm)が10×(6M/13.6π)1/3以下の水銀ランプにおいて、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離d(cm)を、水銀の封入総質量がM(g)の時に(6M/13.6π)1/3の数値より大きくすることにより、水銀ブリッジの発生を抑制できるという、これらの刊行物の記載からでは予期し得ない効果を奏するものである。
よって、本件発明3が刊行物1ないし7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

3-5-4 本件発明4及び本件発明5について
請求項4、5に係る発明は、請求項1、2,3に係る発明の技術的事項を限定したものであるから、上記本件発明1、2,3についての判断と同様の理由により、当業者が容易になし得たものではない。


4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ショートアーク型水銀ランプおよびランプユニット
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と、他方の電極の電極中心軸とは互いにずれており、かつ、
前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dが2mm以下であり、
前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、
前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である、ショートアーク型水銀ランプ。
【請求項2】 発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と他方の電極の電極中心軸とは、共通の同一軸上に位置しておらず、且つ、前記一方の電極の電極中心軸方向に沿って前記一方の電極の先端面を投影した投影面は、前記他方の電極の先端面と接した状態または少なくとも一部が重なった状態であって、
前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、
前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である、ショートアーク型水銀ランプ。
【請求項3】 発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、
前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dよりも、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離dの方が長く、
前記配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、前記最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(mm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である、ショートアーク型水銀ランプ。
【請求項4】 点灯形式が交流点灯型である、請求項1から3の何れか一つに記載のショートアーク型水銀ランプ。
【請求項5】 請求項1から4の何れか一つに記載のショートアーク型水銀ランプと、前記水銀ランプから発する光を反射する反射鏡とを備えたランプユニット。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ショートアーク型水銀ランプおよびランプユニットに関する。特に、液晶プロジェクタ用光源やデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)プロジェクタなどの画像投影装置用光源として使用されるショートアーク型水銀ランプおよびランプユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、大画面映像を実現するシステムとして液晶プロジェクタやDMDを用いたプロジェクタなどの画像投影装置が広く用いられており、このような画像投影装置には、高い輝度を示す高圧放電ランプが一般的に広く使用されている。画像投
影装置では、液晶パネルなどの極めて小さな領域に光を集光する必要があるため、高輝度に加えて点光源に近いことも要求されている。
【0003】
このような要求を満たす高圧放電ランプとして、当初、メタルハライドランプの研究・開発が先行していた。しかし、点光源に近づけ且つ高輝度にするためにアーク長を短くしていくと、メタルハライドランプの場合、アーク幅が広がるという現象が生じることがわかり、今日では、より点光源に近く高輝度の特長を有するショートアーク型の超高圧水銀ランプが有望な光源として注目されている。超高圧水銀ランプでは、全光束の90%が有効領域で発光するのに対し、アーク幅が広がるメタルハライドランプでは全光束の50%だけしか有効発光領域で発光しない。これは、メタルハライドランプの場合、封入される金属の平均励起ポテンシャルが4〜5eVと比較的低いためにアークの周辺領域で発光してアーク幅が広くなるに対し、超高圧水銀ランプの場合には、メタルハライドランプのときに封入する金属よりも水銀の方が平均励起ポテンシャルが高い(7.8eV)ので、アークの中心領域で発光してアーク幅が狭くなるからである。したがって、メタルハライドランプよりも超高圧水銀ランプの方がアークの平均輝度を高くすることができる。
【0004】
図12(a)および(b)を参照しながら、従来におけるショートアーク型の超高圧水銀ランプ1000の説明をする。
【0005】
図12(a)は、超高圧水銀ランプ1000を模式的に示している。ランプ1000は、石英ガラスから構成され略球状の発光管(バルブ)110と、同じく石英ガラスから構成され発光管110に連結された一対の封止部(シール部)120および120’とを有している。発光管110の内部には放電空間115があり、放電空間115には、発光物質として水銀118(水銀封入量:例えば、150〜250mg/cm3)と、希ガス(例えば、数十kPaのアルゴン)と少量のハロゲンとが封入されている。
【0006】
放電空間115には、一対のタングステン電極(W電極)112および112’が一定の間隔D(例えば、約1.5mm)をおいて互いに対向して配置されている。W電極112および112’は、それぞれ、電極軸(W棒)116と、電極軸116の先端領域に巻かれたコイル114とを有しており、コイル114は、電極先端温度を低下させる機能を有している。W電極112および112’のそれぞれの電極軸116は、光学的対称性を維持するために互いに同一軸となるように軸合わせされており、それゆえ、W電極112と112’との電極中心軸119は互いに一致している。
【0007】
W電極112の電極軸116は、封止部120内のモリブデン箔(Mo箔)124に溶接されており、両者が溶接された溶接部117によって、W電極112とMo箔124とは電気的に接続されている。封止部120は、発光管110から延ばされたガラス部122とMo箔124とを有しており、ガラス部122とMo箔124とを圧着させることによって、発光管110内の放電空間115の気密を保持している。すなわち、Mo箔124とガラス部122との圧着による箔封止によって、封止部120のシールは行われている。封止部120の断面形状はいずれも円形であり、封止部120内部の中心に矩形のMo箔124が配置されている。封止部120内のMo箔124は、溶接部117側と反対の側に、モリブデンから構成された外部リード(Mo棒)130を有している。Mo箔124と外部リード130とは互いに溶接されており、溶接部132で両者は電気的に接続されている。なお、W電極112’および封止部120’の構成については、W電極112および封止部120と同様であるので説明を省略する。
【0008】
図12(b)に示すように、ランプ1000は、点灯の際には点灯回路1200に電気的に接続される。外部リード130を点灯回路1200に接続した状態で点灯回路1200を作動させると、ランプ1000の点灯が行われることになる。
【0009】
次に、ランプ1000の動作原理を簡単に説明する。点灯回路1200から外部リード130およびMo箔124を介してW電極112および112’に始動電圧が印加されると、アルゴン(Ar)の放電が起こり、この放電によって発光管110の放電空間115内の温度が上昇し、それによって水銀118が加熱・気化される。その後、W電極112および112’間のアーク中心部で水銀原子が励起されて発光する。ランプ1000の水銀蒸気圧が高いほど発光効率も増加するため、水銀蒸気圧が高いほど画像投影装置の光源として適しているが、発光管110の物理的耐圧強度の観点から、15〜25MPaの範囲の水銀蒸気圧でランプ1000は使用されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来のランプ1000には、正常な使用をしているにもかかわらず、ランプの消灯後に再び点灯する際に、ランプが点灯しないという問題が発生することがあった。ランプが点灯しない原因は従来不明であったが、本願発明者が鋭意研究した結果、図13に示すように、W電極112と112’との間に水銀118の橋かけ(水銀ブリッジ)140が起こって、W電極112と112’との間が短絡(ショート)してしまうことが原因であることがわかった。
【0011】
水銀ブリッジ140によるショートが起こっている状態でランプ1000に始動電圧を印加すると、ランプ1000に極めて大量の電流が流れるため、点灯回路1200は動作異常を感知してランプの点灯開始を自動的に停止する。ランプの点灯開始を停止した後も水銀ブリッジ140は形成されたままであるので、点灯回路1200が再び点灯の開始をしても、ランプ1000の点灯は行われないことになる。
【0012】
水銀ブリッジ140は次のようにして形成されると考えられる。ランプ1000の点灯時において、放電を行っているW電極112および112’は約3000℃の温度になり、W電極の周囲に位置する発光管110は約1000℃の温度になる。ランプ1000の点灯を停止すると、ガラスからなる発光管110よりも金属からなるW電極112の方が速く冷却されるので、放電空間115内の水銀蒸気は、発光管110の内壁よりもW電極112の方に凝縮して、W電極112に水銀玉(Hg玉)として析出する傾向が強い。
【0013】
W電極112が冷えていき、水銀蒸気の凝縮が進むと、図14(a)に示すように、W電極112の先端111から対向するW電極の先端に向かってHg玉118が同心円状に成長していく。Hg玉118には表面張力が加わるため、Hg玉118の成長方向は、電極中心軸119方向と同じ方向となる。W電極112のHg玉118aの成長が進み、W電極112’から成長してきたHg玉118bと接触すると、表面張力によって2つのHg玉は一体化して、図14(b)に示すように、水銀ブリッジ140が形成されることになる。水銀ブリッジ140が一旦形成されてしまうと、W電極112および112’間がショートし、ランプ1000に正常に始動電圧が印加されなくなってしまうので、ランプ1000は動作しなくなる。
【0014】W電極112と112’との間隔(電極配置間隔)Dが比較的長い(例えば1cm程度)ランプと比較して、間隔Dが2mm程度またはそれ未満のショートアーク型のランプ1000の場合、ショートアーク化に伴う電流増加を抑制するために放電空間115内に封入する水銀量を増加させる。従って、ショートアーク型ランプの場合、間隔Dが短くなっていることに加えて、W電極112に凝縮する水銀の量が多くなるので、間隔Dが比較的長いランプと比較して、水銀ブリッジ140がより形成されやすくなる。より高輝度でより点光源に近いランプの要求に伴って間隔Dはより短くなる傾向にあり、それゆえ、水銀ブリッジの問題はより顕在化していくと思われる。
【0015】
本発明はかかる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、水銀ブリッジの形成を防止・抑制して、ランプ動作の信頼性を向上させたショートアーク型水銀ランプを提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明によるショートアーク型水銀ランプは、発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と、他方の電極の電極中心軸とは互いにずれており、かつ、前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(cm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である。
【0017】
本発明による他のショートアーク型水銀ランプは、発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と他方の電極の電極中心軸とは、共通の同一軸上に位置しておらず、且つ、前記一方の電極の電極中心軸方向に沿って前記一方の電極の先端面を投影した投影面は、前記他方の電極の先端面と接した状態または少なくとも一部が重なった状態であって、前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(cm)は10×(6M/13.6π)1/3以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明による更に他のショートアーク型水銀ランプは、発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、前記一対の電極のうちの一方の電極と他方の電極との配置間隔Dよりも、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離dの方が長く、前記配置間隔Dが2mm以下であり、前記水銀の封入総質量が150mg/cm3以上であり、かつ、前記最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(cm)は10×(6M/13.6π)1/3以下であることを特徴とする。
【0019】
前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きいことが好ましい。
【0020】
ある実施形態では、点灯形式は交流点灯型である。
【0021】
本発明によるランプユニットは、上記ショートアーク型水銀ランプと、前記水銀ランプから発する光を反射する反射鏡とを備えている。
【0022】
本発明による高圧水銀ランプは、発光物質として少なくとも水銀が封入される管内に一対の電極が対向して配置された発光管と、前記一対の電極のそれぞれに電気的に接続された一対の金属箔のそれぞれを封止する一対の封止部とを備え、前記一対の電極のうちの一方の電極の電極中心軸と、他方の電極の電極中心軸とは互いにずれており、かつ、前記一方の電極の先端と前記他方の電極の先端との最短距離d(cm)は、前記水銀の封入総質量がM(g)のときに、(6M/13.6π)1/3の数値よりも大きく、配置間隔D(cm)は10×(6M/13.6π)1/3以下である。
【0023】
【0024】
本発明のショートアーク型水銀ランプによると、一方の電極の電極中心軸と他方の電極の電極中心軸とが互いにずれているので、発光管内に封入される水銀が凝縮して一方の電極の先端から成長していっても、従来技術と比較して、他方の電極の電極中心軸に沿って他方の電極から成長してくる水銀と接触しないようにすることができる。その結果、一対の電極間に水銀ブリッジが生じることを防止・抑制することができる。また、電極中心軸が互いにずれているので、たとえ水銀ブリッジが形成されたとしても、形成された水銀ブリッジに対して表面張力が対称に加わらないため、水銀ブリッジは電極の先端間に安定して維持しつづけることができず、形成されたとしても水銀ブリッジが取れやすくなる。このため、ランプ動作の信頼性を向上させることができる。
【0025】
また、本発明の他のショートアーク型水銀ランプでは、共通の同一軸上に一対の電極のそれぞれの電極中心軸に位置していないことから、水銀ブリッジの形成を防止・抑制することができることに加えて、一方の電極の投影面と他方の電極の先端面とが接した状態または少なくとも一部が重なった状態にされているので、少なくとも放電の安定性に関しては電極が同一軸となるように軸合わせされた場合と実質的に差がない。
【0026】
さらに、本発明による更に他のショートアーク型水銀ランプによると、一方の電極と他方の電極との配置間隔Dよりも、一方の電極の先端と他方の電極の先端との最短距離dの方が長いので、従来技術の配置間隔Dと同じ場合でも、従来技術よりも、それぞれの電極の先端から成長してくる水銀同士が接触しないようにすることができる。その結果、水銀ブリッジの形成を防止・抑制することができるので、ランプ動作の信頼性を向上させることができる。また、配置間隔Dが同じなので、水銀ランプと反射鏡(ミラー)と組み合わせた構成の場合において、従来の構成と同じ集光効率が得られることになる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。以下の図面においては、説明を簡明にするために、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
(実施形態1)
まず、図1を参照する。図1は、本実施形態にかかる水銀ランプ100の構成を模式的に示している。
【0028】
実施形態1の水銀ランプ100は、発光管(バルブ)10と、発光管10に連結された一対の封止部20および20’とを有している。発光管10の管内には、発光物質18が封入される放電空間15があり、放電空間15には、一対の電極12および12’が対向して配置されている。発光管10は、石英ガラスから構成されており、略球形をしている。発光管10の外径は例えば5mm〜20mm程度であり、発光管10のガラス厚は例えば1mm〜5mm程度である。発光管10内の放電空間15の容積は、例えば0.01〜1.0cc程度である。本実施形態では、外径13mm程度、ガラス厚3mm程度、放電空間15の容量0.3cc程度の発光管10が用いられ、発光物質18として水銀を使用し、例えば150〜200mg/cm3程度の水銀と、5〜20kPaの希ガス(例えば、アルゴン)と、少量のハロゲンとが放電空間15に封入されている。なお、図1では、発光管10の内壁に付着している状態の水銀18を模式的に示している。
【0029】
放電空間15内の一対の電極12および12’は、ショートアーク型を構成するように、例えば2mm以下程度の電極配置間隔Dで配置されている。電極12および12’としては、例えば、タングステン電極(W電極)が使用される。本実施形態では、1.5mm程度の間隔DでW電極12および12’が配置されている。電極12および12’の先端には、それぞれコイル14が巻かれており、コイル14は、電極先端温度を低下させる機能を有している。電極12の電極軸(W棒)16は、封止部20内の金属箔24に電気的に接続されている。同様に、電極12’の電極軸16は、封止部20’内の金属箔24’に電気的に接続されている。
【0030】
封止部20は、電極12に電気的に接続された金属箔24と、発光管10から延ばされたガラス部22とを有しており、金属箔24とガラス部22との箔封止によって発光管10の放電空間15の気密を保持している。金属箔24は、例えばモリブデン箔(Mo箔)であり、例えば矩形の形状を有している。ガラス部22は、例えば石英ガラスから構成されている。封止部20内の金属箔24は、電極12と溶接によって接合されており、金属箔24は、電極12が接合された側の反対側に外部リード30を有している。外部リード30は、例えばモリブデンから構成されている。なお、これらの封止部20の構成は、封止部20’についても同様であるので説明を省略する。
【0031】
本実施形態におけるランプ100では、水銀ブリッジの形成を防止・抑制するために、電極12の電極中心軸19と、電極12’の電極中心軸19’とが互いにずれるように構成されている。すなわち、電極12の電極中心軸19と、電極12’の電極中心軸19’とが同一軸とならないように構成されている。電極中心軸19と19’とが同一軸とならないようにすると、図2に拡大して示すように、電極12の先端11aおよび電極12’の先端11bのそれぞれから電極中心軸19および19’に沿って水銀玉18aおよび18bが凝縮して成長していっても、電極中心軸19と19’とが同一軸にされている場合よりも、水銀玉18aおよび18bが互いに接触しにくくなる。換言すると、一対の電極12と12’とが同一軸でないため、電極12と12’の電極配置間隔Dよりも、電極12の先端11aと電極12’の先端11bとの最短距離dの方を長くすることができ、水銀ブリッジの形成を防止・抑制することができる。
【0032】
従来技術においては、一対の電極が同軸上に配置されていたために電極配置間隔Dと電極先端間距離dとは同じであったが、本実施形態のランプ100では、電極配置間隔Dを一定にしたまま電極先端間距離dだけを長くすることができる。このため、発光管10の寸法やランプ100全体の寸法を大きくして電極配置間隔Dを長くしなくとも、先端11aおよび先端11bのそれぞれから成長してくる水銀18aおよび18bを接触し難くすることができる。なお、電極配置間隔Dは、例えば発光管10の寸法やランプ100全体の寸法などにしたがって決定され、本実施形態においては電極配置間隔Dは、電極中心軸19’方向成分における一対の電極の先端間の長さのことを表している。
【0033】
本実施形態におけるランプ100の一対の電極12および12’の構成をより詳細に説明するために、一対の電極12および12’の周辺拡大図を図3に示す。なお、図3において、説明の簡略化のために、電極12および12’の先端に巻かれているコイル14は省略している。
【0034】
図3に示すように、一対の電極のうちの一方の電極12は、電極12と金属箔24との接合部(溶接点)17を中心にして、互いの電極中心軸が一致する場合の仮想的な位置13から、電極中心軸19と19’のなす角がθとなる位置までずらされている。なお、本実施形態のランプ100においては、一対の電極のうちの他方の電極12’の位置は移動させていないので、電極12’の電極中心軸19’は、互いの電極中心軸が一致する場合の仮想的な電極中心軸と一致している。
【0035】
本実施形態では、電極12および12’の両方とも、長さLが10mmで外径φが1.4mmの電極棒16を用いており、電極中心軸19’方向に投影した電極12’の先端11bの投影面11cの外縁と電極12の先端11aの外縁とが接する位置11pまで、電極12の電極中心軸19はずらされている。この場合、電極中心軸19’からのずれ量Z(すなわち、電極中心軸19上に位置する電極先端11aと電極中心軸19’との距離)は、電極棒16の外径φとほぼ等しくなるので、この場合のずれ量Zは、ほぼ1.4mmとなる。したがって、投影面11cの外縁と電極12の先端11aの外縁とが接する位置11pまで電極12の電極中心軸19をずらした場合の電極中心軸19と19’とがなす角θは、下式(I)から算出することができ、
tanθ=ずれ量Z/電極棒長L=1.4mm/10mm ・・・式(I)
この場合、角度θは約8度となる。
【0036】
ずれ量Zは、ゼロを越える値であり、例えば、電極配置間隔D(またはアーク長)の10%以上(電極配置間隔Dが1.5mmの場合、ずれ量Zは0.15mm以上)となるように構成される。具体的なずれ量Zの値はランプ100の特性に応じて適宜決定すればよい。ランプ100における一対の電極12および12’間の放電は電極先端面11aおよび11bの全体で生じるため、本実施形態のように、電極12’の投影面11cと電極12の先端面11aとの互いの外縁が少なくとも接するようにすることによって、すなわち、投影面11cの外縁と先端面11aの外縁とが外れないようにすることによって、電極が同一軸に軸合わせさせられた場合と差異がない放電安定性が得られ、その結果、放電特性に与える影響を少なくしながら、水銀ブリッジの形成を防止・抑制することができる。なお、図12で示した従来のランプ1000においては、一対の電極112および112’の電極中心軸119は同一軸となるように構成されているため、電極112の電極中心軸119と電極112’の電極中心軸119とは一致しており、仮に物理的な意味において完全に一致していないときでも、例えば電極配置間隔の10%未満の範囲における電極中心軸119の同一軸性は確保されるように構成されている。
【0037】
電極12の先端11aに同心円状に形成される水銀玉18aの形状が球形(水銀玉の半径r)となるので、水銀玉18aの体積が(4/3)πr3になることからわかるように、水銀玉の半径rの3乗が体積に比例するため、電極先端距離dが少しでも長くすることができれば、水銀ブリッジの形成を効果的に防止・抑制することが可能となる。また、水銀ブリッジの形成を防止しながら、より多くの水銀18を発光管10内に封入することができるので、発光効率の向上が得られる。
【0038】
本実施形態のランプ100の場合、電極配置間隔Dを1.5mmとし、ずれ量Zを1.4mm(電極棒の外径φと同じずれ量)としているので、電極先端距離dは、下式(II)より、2.05mmとなる。
【0039】
d=(D2+φ2)1/2=(1.52+1.42)1/2=2.05
・・・式(II)
図4および図5は、それぞれ、図2で示した構成(角度θ=約8°)のランプ100に水銀ブリッジ40が形成された状態と、図4の角度θがゼロの構成(同一軸)のランプに水銀ブリッジ40が形成された状態とを模式的に示している。水銀玉の半径rの3乗が体積に比例するので、図4に示した水銀玉40の体積(V1)と、図5に示した水銀玉40の体積(V0)との比は、下式(III)より、2.55:1となる。
【0040】
V1:V0=(d/2)3:(D/2)3
=d3:D3=8.62:3.38=2.55:1
・・・式(III)
すなわち、図5に示した構成よりも、図4に示した構成の方が、2.55倍も水銀を許容することができることが理解できる。また、仮に水銀ブリッジが形成された場合でも、図5の構成では水銀玉40に対して表面張力が対称に加わるため水銀玉40が一対の電極間に維持されやすいのに対して、図4の構成では、表面張力が対称に加わらない構成であるため、水銀玉40は一対の電極間に維持されずに落ちやすくなっている。このように表面張力の加わり方の差異によっても水銀ブリッジ40の形成が防止されている。
【0041】
なお、従来の水銀ランプにおいて単に電極配置間隔Dを長くすることによっても勿論水銀ブリッジの形成を抑制することも可能である。しかし、このようにした場合には、水銀ランプと反射鏡(ミラー)とを組み合わせると、集光効率(ミラーから出てくる光の利用効率)が著しく低下する。これに対して、本実施形態の水銀ランプの構成によれば、集光効率を低下させることなく、上述のように効果的に水銀ブリッジの形成を抑制することができる。
【0042】
なお、電極先端距離dは、発光管10内に封入される水銀18の封入量(g)からおおよそ計算することが可能であり、電極先端間に形成される水銀ブリッジの形状は球形(半径r)であるので、電極先端距離dが2rより長くするようにすればよい。具体的には、発光管10内に封入する水銀18の総質量がM(g)のとき、(4/3)πr3×13.6[g/cm3]=Mの関係が成り立つので、水銀ブリッジの2r[cm]は、(6M/13.6π)1/3となる。従って、(6M/13.6π)1/3の値よりも大きな電極先端距離dにすれば、水銀ブリッジ40の形成を効果的に防止することができる。
【0043】
また、図6(a)および(b)に示すように、一対の電極12および12’を段違いの平行となるように配置して、電極中心軸19および19’が同一軸にならないようにしてもよい。図6(a)は、一対の電極12および12’の配置を模式的に示しており、図6(b)は、電極中心軸19’に沿ってみた電極先端11aおよび11bの断面を模式的に示している。このような構成にしても、電極配置間隔Dよりも電極先端距離dを長くすることが可能であるため、水銀ブリッジの形成を防止・抑制することができる。この例では、ずれ量Zを電極12の外径φと同じにして、電極中心軸19’方向に沿って電極12’の先端面11bを投影した投影面の外縁と、電極12の先端面11aの外縁が接するように構成されている。
【0044】
勿論、図7(a)および(b)に示すように、ずれ量Zを例えば電極12の外径φの半分にして、電極12’の先端面11bを投影した投影面と、電極12の先端面11aとが少なくとも一部重なるように構成してもよい。さらに、図8に示すように、電極12の先端部分を曲げて、電極配置間隔Dよりも電極先端距離dを長くするような構成にすることも可能である。図8に示した構成の場合、電極12の先端における電極中心軸19を基準にして、その電極中心軸19と電極中心軸19’とが同一軸でないように構成すればよい。
【0045】
なお、上記実施形態では、一対の電極のうちの一方の電極12の電極中心軸19だけをずらした構成を示しているが、一方の電極12の電極中心軸19と共に、電極12’の電極中心軸19’をずらした構成にすることも可能である。その場合、両方の電極中心軸を移動させることによって仮想的な同一軸を設定することが困難となるときには、仮想的な同一軸に代えてランプの長さ方向を基準にしてもよい。また、上記実施形態では、一対の電極12および12’のそれぞれに同一長さLで同一外径φの電極棒16を用いているが、これに限定されず、異なる長さのものや異なる外径のものを用いることも可能である。さらに、一対の電極間でコイル14の巻き数やコイル14の直径を異なるように構成していもよい。
【0046】
次に、水銀ランプ100の製造方法を例示的に説明する。まず、発光管10となる部分と封止部のガラス部22となる部分とを有する放電ランプ用ガラスパイプ内に、電極12と外部リード30とを有する金属箔(Mo箔)24を挿入した後、ガラスパイプ内を減圧状態(例えば、1気圧未満)にした上で、ガラス管を例えばバーナーで加熱し軟化させると、ガラス管22と金属箔24との両者が密着して封止部20が形成される。同様にして、他方の封止部20’も形成されると、水銀ランプが製造されることになる。この封止部の形成の際に、一方の電極12の電極中心軸19が仮想的な同一軸19’(電極中心軸19’)からずれるようにして封止部20の形成を行うと、一対の電極12および12’が同一軸でないランプ100を作製することができる。
【0047】
以下、図9を参照しながら、さらに具体的な例を挙げて説明する。図9は、水銀ランプ100の製造工程断面図を示している。
【0048】
まず、発光管10となる部分と封止部のガラス部22となる部分とを有する放電ランプ用ガラスパイプ45を鉛直方向に配置した後、矢印41および42の方向に回転可能にするためにチャック43を用いてガラスパイプ45を支持する。次に、電極12と外部リード30とを有する金属箔24(電極組立体)をガラスパイプ45内に挿入した後、ガラスパイプ45内を密閉して減圧可能な状態にする。なお、同図ではガラスパイプ45の両端を封止してガラスパイプ45内を密閉しているが、この構成に限らず、ガラスパイプ45内を減圧できる構成にすればよい。
【0049】
次に、ガラスパイプ内を減圧状態(例えば、20kPa)にすると共にガラスパイプ45を矢印41および42の方向に回転させた後、例えばバーナー50によってガラス管22の一部を加熱し軟化させる。この際、ガラスパイプ45の下部をチャック43で支持せずにガラスパイプ45の上部だけを支持して、ガラスパイプの下端をフリーにした状態でガラスパイプ45を回転させると、慣性によってガラスパイプ45の下端が周回運動をするようになる。そのような状態でガラス管22と金属箔24との両者を密着させると、電極12の電極中心軸19が仮想的な同一軸19’から所定角度θずれた構成の封止部20を形成することができる。より強制的にガラスパイプ45の下端の周回運動を制御したい場合には、ガラスパイプ45の下部に例えば円錐状の部材を配置して、円錐状の部材の側面を沿わせるようにガラスパイプ45を回転させるようにすればよい。
【0050】
なお、ガラスパイプ45の下端に周回運動をさせる手法ではなく、一方の金属箔24(電極組立体)と他方の金属箔24’(電極組立体)とを予め所定量ずらしてガラスパイプ45内に挿入して封止する手法によって、それぞれが同一軸とならない一対の電極12および12’を形成することも可能である。さらに、ガラスパイプ45の回転速度を制御しながら、ガラス管(ガラス部)22の一部の箇所だけをバーナ50で加熱することによって、電極12の電極中心軸19を仮想的な同一軸19’からずらすことも可能である。すなわち、ガラス管22を均一に加熱せずに、局所的に加熱して所定箇所だけのガラス部を溶かすことによって金属箔24(電極組立体)を中心位置からずらし、それによって電極12の電極中心軸19をずらすことができる。
【0051】
また、図10に示すように、例えば他方の電極中心軸19’(または仮想的な同一軸19’)に対して所定の角度αだけ傾けて金属箔24に接続した電極12と金属箔24とをガラス部22で封止することによって、一対の電極が同一軸上にないランプを作製することもできる。電極12を予め傾けたものだけでなく、平行にずらしたものや電極の先端部分が曲がったものを封止することによって、一対の電極12および12’が同一軸上に位置しないようにすることができる。
(実施形態2)
上記実施形態1の水銀ランプは、反射鏡と組み合わせてランプユニットにすることができる。図11は、上記実施形態1の水銀ランプ100を備えたランプユニット500の断面を模式的に示している。
【0052】
ランプユニット500は、略球形の発光部10と一対の封止部20とを有する水銀ランプ100と、水銀ランプ100から発せられた光を反射する反射鏡60とを備えている。なお、水銀ランプ100は例示であり、上記実施形態の水銀ランプのいずれであってもよい。
【0053】
反射鏡60は、例えば、平行光束、所定の微小領域に収束する集光光束、または、所定の微小領域から発散したのと同等の発散光束になるように水銀ランプ100からの放射光を反射するように構成されている。反射鏡60としては、例えば、放物面鏡や楕円面鏡を用いることができる。
【0054】
本実施形態では、水銀ランプ100の一方の封止部20に口金55が取り付けられており、封止部20から延びた外部リード30と口金55とは電気的に接続されている。口金55が取り付けられた側の封止部20と反射鏡60とは、例えば無機系接着剤(例えばセメントなど)で固着されて一体化されている。反射鏡60の前面開口部60a側に位置する封止部20の外部リード30には、リード線65が電気的に接続されており、リード線65は、外部リード30から、反射鏡60のリード線用開口部62を通して反射鏡60の外にまで延ばされている。反射鏡60の前面開口部60aには、例えば前面ガラスを取り付けることができる。
【0055】
このようなランプユニットは、例えば、液晶やDMDを用いたプロジェクタ等のような画像投影装置に取り付けることができ、画像投影装置用光源として使用される。上記実施形態の水銀ランプおよびランプユニットは、画像投影装置用光源の他に、紫外線ステッパ用光源、または競技スタジアム用光源や自動車のヘッドライト用光源などとしても使用することができる。また、道路標識を照らす投光器としても使用することができる。
【0056】
なお、上記実施形態の水銀ランプでは、交流点灯型の点灯形式のものを使用しているが、交流点灯型および直流点灯型のいずれの点灯方式でも使用可能である。また、上記実施形態では、ショートアーク型の水銀ランプについて説明したが、本発明は、ショートアーク型に限らず、比較的アーク長が長い水銀ランプでも、水銀封入量が多い水銀ランプには好適に適用することができる。高出力・高電力の高圧水銀ランプの場合、電流の増大に伴って電極の蒸発が早くなることを抑制するために、通常よりも封入水銀量が増加されるが、近年、より高出力・高電力の高圧水銀ランプが開発されつつあるため、ショートアーク型の水銀ランプでなくても、水銀ブリッジの問題が顕在化する可能性があるからである。上記実施形態では、封入水銀量150〜250mg/cm3の水銀ランプを例示したが、封入水銀量は、250mg/cm3以上であってもよい。
【0057】さらに、上記実施形態では、水銀蒸気圧が20MPa程度の場合(いわゆる超高圧水銀ランプの場合)について説明したが、水銀蒸気圧が1MPa程度の高圧水銀ランプにも適応可能である。本明細書では、水銀蒸気圧が1MPa程度以上のものを高圧水銀ランプと呼び、高圧水銀ランプは、超高圧水銀ランプを含むものとする。なお、水銀蒸気圧が高いほど発光スペクトルが画像投影装置用の光源として好ましいものとなるので、発光管の物理的耐圧強度を確保できる場合には、20MPa程度以上の水銀蒸気圧にしてもよい。
【0058】
【発明の効果】
本発明の水銀ランプによれば、水銀ブリッジの形成を防止・抑制することができるため、ランプ動作の信頼性を向上させることができる。また、水銀ブリッジの形成が防止・抑制される結果、水銀封入量を増加させることが可能となるため、水銀ランプの性能を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
実施形態1にかかる水銀ランプ100の構成を模式的に示す図である。
【図2】
水銀玉18が成長している状態における一対の電極12および12’の拡大図である。
【図3】
一対の電極12および12’の構成を模式的に示す拡大図である。
【図4】
水銀ブリッジ40が形成された状態の一対の電極12および12’の拡大図である。
【図5】
水銀ブリッジ40が形成された状態の一対の電極12および12’の拡大図である。
【図6】
(a)は、一対の電極12および12’の構成を模式的に示す図であり、(b)は、電極中心軸19’に沿ってみた電極先端11aおよび11bを模式的に示す断面図である。
【図7】
(a)は、一対の電極12および12’の構成を模式的に示す図であり、(b)は、電極中心軸19’に沿ってみた電極先端11aおよび11bを模式的に示す断面図である。
【図8】
本実施形態における改変例の構成を示す図である。
【図9】
本実施形態における水銀ランプ100の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図10】
本実施形態における改変例を説明するための図である。
【図11】
実施形態2にかかるランプユニット500の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】
(a)は、従来の水銀ランプ1000の構成を模式的に示す図であり、(b)は、点灯回路1200に接続された水銀ランプ1000の構成を模式的に示す図である。
【図13】
従来の水銀ランプ1000の課題を説明するための図である。
【図14】
(a)および(b)は、従来の水銀ランプ1000の課題を説明するための図である。
【符号の説明】
10 発光管
11 電極の先端
12、12’ 電極(W電極)
14 コイル
15 放電空間(管内)
16 電極棒
17 溶接部
18 水銀(水銀玉)
19 電極中心軸
20、20’ 封止部
22 ガラス部
24 金属箔(Mo箔)
30 外部リード
32 溶接部
40 水銀ブリッジ
43 チャック
45 放電ランプ用ガラスパイプ
50 バーナー
55 口金
60 反射鏡
62 リード線用開口部
65 リード線
100、200、300 水銀ランプ
500 ランプユニット
110 発光管
111 電極の先端
112、112’ W電極
114 コイル
115 放電空間(管内)
116 電極棒
118 水銀(水銀玉)
119 電極中心軸
120、120’ 封止部
122 ガラス部
124 Mo箔
130 外部リード
140 水銀ブリッジ
1000 超高圧水銀ランプ
1200 点灯回路
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-10-03 
出願番号 特願2001-149500(P2001-149500)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 村田 尚英  
特許庁審判長 江藤 保子
特許庁審判官 山川 雅也
三輪 学
登録日 2002-07-19 
登録番号 特許第3330591号(P3330591)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 ショートアーク型水銀ランプおよびランプユニット  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 内藤 浩樹  

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