• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1089824
異議申立番号 異議2003-70674  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-14 
確定日 2003-10-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3324902号「加熱処理装置及び加熱処理方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3324902号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3324902号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成7年3月29日に特許出願され、平成14年7月5日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人安井哲也から特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年7月18日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項a
特許明細書の請求項2を削除し、特許明細書の請求項3を請求項2に繰り上げる。
訂正事項b
特許明細書の【0021】及び【0022】段落を削除し、以降の段落番号を繰り上げる。
訂正事項c1
特許明細書の【0002】〜【0004】、【0011】、【0020】段落及び【図面の簡単な説明】の「図4」を「図2」に訂正する。
訂正事項c2
特許明細書の【0009】段落の「また別の態様としては、装置本体内のホットプレート上方に、加熱ガス噴出手段を兼ねる熱反射板を設け、この熱反射板を中空状とするとともに下面にホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する穴を形成する構成が考えられる。更にまた」を削除する。
訂正事項c3
図2を削除し、図3を図2に繰り上げる。
訂正事項c4
繰り上げた【0023】段落の内容を「特に加熱ガス噴出手段としての多孔体をホットプレート上方に配置することにより、雰囲気を乱すことなく掃気を行える。」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて
上記訂正事項aは、特許明細書の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に相当し、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
訂正事項b〜c4について
訂正事項b〜c4は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図ったものであり、明りようでない記載の釈明に相当するものである。また、これらの訂正事項b〜c4は、特許明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件第1発明」という。)及び本件の請求項2に係る発明(以下、「本件第2発明」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2.(1)訂正事項a参照)
(2)引用刊行物に記載された発明
当審が平成15年5月12日に通知した取消しの理由において引用した刊行物1〜4にはそれぞれ次のとおりの発明が記載されている。
刊行物1(甲第1号証):特開平6-267840号公報
記載1
【0002】段落には、「【0002】
【従来の技術】例えば、液晶基板製造におけるフォトリソグラフィー工程においては、基板をホットプレートなどの発熱体上に載置して加熱し、高温で熱処理する工程が含まれる。」と記載されている。
記載1の2
【0004】段落には、「【0004】…基板表面に塗布されたレジストから」と記載されている。
記載2
【0017】〜【0018】段落には、「【0017】内側カバー6は二重構造となって内部に中空部が形成され、上面部61のほぼ中央にガス導入口61aが形成されるとともに、下面部62には複数のガス噴出孔62aが形成される。複数のガス噴出孔62aは、その内径が同一で下面部62に均等な間隔をおいて穿設されるが、場合によっては、基板W表面での熱分布がより一層均一になるようにガス噴出孔62aの内径の大きさを中央部と周辺部で変化させたり、または、ガス噴出孔62aの配置を変化させるようにしてもよい。
【0018】ガス導入口61aは、流量制御弁63を介してガスボンベ64に接続されており、流量制御弁63を調整することにより微少量ずつガス導入口61aに窒素ガスなどの不活性ガスGが供給され、下面部62のガス噴出孔62aから下方に向けて層流状態で吹き出される。」と記載されている。
記載3
【0019】段落には、「【0019】一方、排気管5の上面にはスリット状の排気穴5aが形成されるとともに、排気管5の排気口5bは、排気ポンプ51を介してガス処理装置52に接続される。これにより、熱処理空間7内の気体は排気ポンプ51によって吸引され、ガス処理装置52において人体に有害な成分を除去された後、大気中に放出される。」と記載されている。
記載4
【0025】段落には、「【0025】…また、不活性ガスGは輻射壁66のガス噴出孔66aを通過して暖められた状態で熱処理空間7内に噴出されるので、不活性ガスGの温度が基板の温度分布に及ぼす影響を低減させることができる。」と記載されている。
刊行物2(甲第2号証):特開平4-158512号公報
第2頁右上欄第13行〜第19行には、ウェハ1はヒータ3と温度度センサ4の組み込まれているホットプレート2上に設置され、ホットプレート2は温度制御回路5の動作により、プロセス上設定された温度に保つ様に温度制御され、これによりホットプレート2上に設定されたウェハ1に対しべ一ク処理を行う旨記載されている。
第2頁右上欄第20行〜左下欄第12行には、べ一ク処理カバー11内にパージガスノズル6が備えられており、外部より導入されたパージガスはヒータ8の組み込まれたパージガス加熱ユニット7を通過する際に、加熱されてパージガスノズル6から吹き出すことになり、この時の温度はパージガス加熱ユニット7の出口部に取り付けられた温度センサ9により、温度制御回路10がホットプレート表面温度と同一になる様に制御を行い、これにより実施例のべ一ク処理装置では、流入時のパージガスの温度変化、流量変化に関係なく常に安定したウェハのべ一ク処理を行うことができるという効果がある旨記載されている。
刊行物3(甲第3号証):特開平4-99310号公報
第2頁左下欄第7行〜第9行には、漏戸板3と接続される配管5bとヒータ8で加熱されるN2ガスを供給する配管5aとを接続する旨記載されている。
刊行物4(甲第4号証):実願昭62-85298号(実開昭63-19383号)のマイクロフィルム
第2頁第13行〜第15行には、スペーサとしては、放熱板の上面に棒状体を立設したもの、網を設けた物、あるいは基板支持爪を設けたものである旨記載されている。
第7頁第8行〜9行には、基板1をスペーサ6へ移載するように構成されている旨記載されている。
(3)対比・判断
(3).1 本件第1発明と刊行物1〜3に記載された発明の対比・判断
刊行物1の記載1を参照すると、刊行物1記載の熱処理装置は、液晶基板をホットプレートなどの発熱体に載置して加熱するものであり、加熱処理する際には、当然に基板を装置内に搬入するものである。
したがって、刊行物1には、本件第1発明の、装置本体内に板状被処理物を搬入し、ホットプレートにて板状被処理物を加熱処理するようにした加熱処理装置が記載されている。
また、刊行物1の記載2及び4を参照すると、刊行物1記載の熱処理装置は、輻射壁66で暖められたガスを噴出する複数のガス噴出口66aを備えている。
この輻射壁66及び輻射壁66に形成された複数のガス噴出口66aからなるガス噴出手段は、本件第1発明の多孔体に相当するものであるから、刊行物1には、加熱されたガスを噴出する多孔体からなる加熱ガス噴出手段が記載されている。
なお、被請求人は、平成15年7月18日(平成13年7月18日は誤記である。)付け意見書第2頁第7行〜同頁第25行において、「ここで、多孔体とは添付した資料1にも記載されるように、全体に亘って細孔が形成され、気孔率などが問題となる物質を指し、例えばスポンジなどにセラミックスラリーを含浸せしめ、これを焼成してスポンジ成分をガスにして除去することで一般的に製造されています。
開口が形成されているものが全て多孔体というわけではなく、上記の如く気孔率が問題となるような極めて微細な連続細孔が形成されているものを多孔体と考えるべきです。このような多孔体をガス噴出手段として用いることで、加熱されたガスはパンチングメタルのような開口を形成したプレートを介して噴出される場合と比較して、多孔体全体から浸み出るように均一に供給され、処理空間の気流を乱すことを防止できます。因みに本発明にあっては特に有利な点ではありませんが、加熱されたガスは多孔体の下面からだけでなく上面からも噴出します。
一方、異議申立人は甲第1号証の輻射壁66或いは甲第3号証の漏戸板3が本件発明の多孔体7に相当すると主張しています。しかしながら、輻射壁66については、公報第4頁左欄12〜13行に「…アルミニウムなどの熱輻射率の高い部材によって所定の厚みを有する輻射壁…」と記載されるように、比較的厚い金属プレートに貫通孔を形成したものであり、多孔体とは異なるものです。
また、漏戸板3についても金属プレートに開口を形成したもので、輻射壁66と同様に異なるものです。また、甲第1号証〜甲第4号証の何れにも多孔体をガス噴出手段として用いることについては何ら示唆されていません。」と主張するが、本件第1発明の「多孔体」は、特許権者が主張する、「多孔体とは添付した資料1にも記載されるように、全体に亘って細孔が形成され、気孔率などが問題となる物質を指し、例えばスポンジなどにセラミックスラリーを含浸せしめ、これを焼成してスポンジ成分をガスにして除去することで一般的に製造」されると解すべき根拠が本件明細書及び図面において記載または示唆されておらず(特許明細書の【0023】段落に、「特に加熱ガス噴出手段としての多孔体をホットプレート上方に配置することにより、雰囲気を乱すことなく掃気を行え」と記載されているが、この記載をもってしても、被請求人が主張するような「多孔体」を意味するとはいえない。)、さらに、半導体の処理装置の技術分野において、多孔体として複数のガス流路を形成したものも周知(要すれば、特開平5-335281号公報参照)であるから、刊行物1記載の輻射壁66及び輻射壁66aに形成された複数のガス噴出口からなるガス噴出手段は、本件請求項1記載の多孔体に相当するものと解される。
したがって、刊行物1には、本件第1発明の「ガスを噴出する加熱ガス噴出手段」、「加熱ガス噴出手段としては前記ホットプレートの上方に多孔体が配置され」が記載されている。
刊行物1の記載3を参照すると、刊行物1記載の熱処理装置は、熱処理空間内の気体を排気ポンプで吸引し、大気に放出するものであるから、本件第1発明の装置本体内の気体を排出する掃気手段に相当するものである。
したがって、刊行物1には、本件第1発明の「装置本体内の気体を排出する掃気手段」が記載されている。
刊行物1の記載2を参照すると、刊行物1記載の熱処理装置には、中空部の上面に外部のガスボンベ64に接続されたガス導入口61aが形成されるとともに、下面部62には複数のガス噴出孔62aか形成されているので、多孔体の内部に中空部が形成され、中空部の外部からガス供給管が接続されている。
したがって、刊行物1には、本件第1発明の「多孔体は、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されていること」が記載されている。
そうすると、本件第1発明と刊行物1記載の熱処理装置は、「装置本体内に板状被処理物を搬入し、ホットプレートにて板状被処理物を加熱処理するようにした加熱処理装置において、加熱処理装置は、加熱されたガスを噴出する加熱ガス噴出手段と、装置本体内の気体を排出する掃気手段とを備え、前記加熱ガス噴出手段としては前記ホットプレートの上方に多孔体が配置されてなり、前記多孔体は、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されている加熱処理装置。」において一致し、本件第1発明が、「ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する」ものであるのに対し、刊行物1には、この記載がない点で相違(以下、「相違点1」という。)し、また、本件第1発明が、「多孔体は、円盤状を有し」ているのに対し、刊行物1には、この記載がない点で相違(以下、「相違点2」という。)する。
相違点1について検討する。
加熱ガス温度について、刊行物1には、基板W表面での熱分布がより一層均一になるようにする(刊行物1の記載2参照)から、加熱ガス温度を決定する当たり、ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出することが、温度低下を招かず、その効果を最も効率良く達成できることは明白である。このことは、加熱ガスを噴出する刊行物2記載のべ一ク処理装置においても、吹き出すパージガスの温度をホットプレート表面温度と同一になるように制御するとの記載からも明らかである。
したがって、「ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する」構成は、刊行物1の記載、あるいは刊行物2の記載から当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
相違点2について検討する。
円盤状の多孔体については、通常、円形の半導体ウエハを熱処理するチャンバーは円柱状に形成されており、それにともなって天板や載置台、整流板等も円形のものが選択されるのは当業者であれば当然周知慣用の技術であり設計事項の範囲内である。このことは、例えば、刊行物3の、窒素ガスを基板に吹き付ける円盤状の漏戸板3からも明らかである。
したがって、刊行物1記載の熱処理装置に関しても円盤状の半導体ウエハを処理する場合は多孔体を円盤状に形成するのは単に設計事項にすぎない。
上記相違点に基づく効果も、当業者が予測し得た程度のものにすぎない。
してみると、本件第1発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本件第1発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(3).2 本件第2発明と刊行物1〜4に記載された発明の対比・判断
刊行物1の記載1及び記載1の2を参照すると、刊行物1記載の方法は、液晶基板をホットプレートなどの発熱体に載置して加熱するものであり、加熱処理する際には、当然に基板を装置内に搬入するものである。
したがって、刊行物1には、本件第2発明の、表面に塗布液が塗布された板状被処理物をホットプレートを備えた加熱処理装置内に搬入し、前記板状被処理物を前記ホットプレート上面に載置して加熱処理する方法が記載されている。
また、刊行物1の記載2及び4を参照すると、刊行物1記載の熱処理方法では、ホットプレートの上方に、幅射壁66で暖められたガスを噴出する複数のガス噴出口66aを備えている。
この輻射壁66及び輻射壁66に形成された複数のガス噴出口からなるガス噴出手段は、本件第2発明の多孔体に相当するものであるから、刊行物1には、加熱されたガスを噴出する加熱ガス噴出手段と、加熱ガス噴出手段としての多孔体が記載されている。
なお、被請求人の、平成15年7月18日(平成13年7月18日は誤記である。)付け意見書第2頁第7行〜同頁第25行における主張については、上記(3).1で説示したように、採用することはできない。
したがって、刊行物1には、前記(3).1で述べたように、刊行物1の記載2及び記載4を参照すると、本件第2発明の、ホットプレートの上方に配置され、その 内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されている多孔体によって、ガスを加熱室処理装置内に強制的に供給する構成が記載されている。
刊行物1の記載3、記載4及び記載1の2を参照すると、刊行物1記載の熱処理装置は、熱処理空間内の気体を排気ポンプで吸引し、大気に放出するものであるから、本件第2発明の、板状被処理物の表面に塗布した塗布液から揮発する溶剤による溶剤リッチな雰囲気を掃気しつつ加熱する構成が記載されている。
そうすると、本件第2発明と刊行物1記載の熱処理装置は、「表面に塗布液が塗布された板状被処理物をホットプレートを備えた加熱処理装置内に搬入し、前記板状被処理物を前記ホットプレート上面に載置し加熱処理する方法において、ガスを、前記ホットプレートの上方に配置されており、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されている多孔体によって前記加熱処理装置内に強制的に供給することで、前記板状被処理物の表面に塗布した塗布液から揮発する溶剤による溶剤リッチな雰囲気を掃気しつつ加熱するようにした加熱処理方法。」において一致し、本件第2発明が、「ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する」ものであるのに対し、刊行物1には、この記載がない点で相違し(以下、「相違点1」という。)、本件第2発明が、「多孔体は、円盤状を有し」ているのに対し、刊行物1には、この記載がない点で相違(以下、「相違点2」という。)する。
相違点1について検討する。
加熱ガス温度について、刊行物1には、基板W表面での熱分布がより一層均一になるようにする(刊行物1の記載2参照)から、加熱ガス温度を決定する当たり、ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出することが、温度低下を招かず、その効果を最も効率良く達成できることは明白である。このことは、加熱ガスを噴出する刊行物2記載のべ一ク処理装置においても、吹き出すパージガスの温度をホットプレート表面温度と同一になるように制御するとの記載からも明らかである。
したがって、「ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する」構成は、刊行物1の記載、あるいは刊行物2の記載から当業者が容易に想到できた事項にすぎない。
相違点2について検討する。
円盤状の多孔体については、通常、円形の半導体ウエハを熱処理するチャンバーは円柱状に形成されており、それにともなって天板や載置台、整流板等も円形のものが選択されるのは当業者であれば当然周知慣用の技術であり設計事項の範囲内である。このことは、例えば、刊行物3の、窒素ガスを基板に吹き付ける円盤状の漏戸板3からも明らかである。
したがって、刊行物1記載の熱処理装置に関しても円盤状の半導体ウエハを処理する場合は多孔体を円盤状に形成することは単に設計事項にすぎない。
上記相違点に基づく効果も、当業者が予測し得た程度のものにすぎない
してみると、本件第2発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本件第2発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1及び2に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成六年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
加熱処理装置及び加熱処理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 装置本体内に板状被処理物を搬入し、ホットプレートにて板状被処理物を加熱処理するようにした加熱処理装置において、この加熱処理装置は、前記ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する加熱ガス噴出手段と、装置本体内の気体を排出する掃気手段とを備え、前記加熱ガス噴出手段としては前記ホットプレートの上方に多孔体が配置されてなり、前記多孔体は、円盤状を有し、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されていることを特徴とする加熱処理装置。
【請求項2】 表面に塗布液が塗布された板状被処理物をホットプレートを備えた加熱処理装置内に搬入し、前記板状被処理物を前記ホットプレート上面に載置するか、ピンにて前記ホットプレート上面から浮かせた状態で加熱処理する方法において、前記ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを前記ホットプレートの上方に配置されており、且つ円盤状を有し、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されている多孔体によって前記加熱処理装置内に強制的に供給することで、前記板状被処理物の表面に塗布した塗布液から揮発する溶剤による溶剤リッチな雰囲気を掃気しつつ加熱するようにしたことを特徴とする加熱処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は半導体ウェーハやガラス基板に加熱処理を施す装置と加熱処理の方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェーハ上に集積回路を形成する工程の1つに露光工程がある。露光工程は図2(a)に示すように、半導体ウェーハWの表面に形成したレジスト膜RにマスクMを介し光を当てる。そして、図2(b)に示すように、露光後にアルカリ水等の現像液を用いて現像することによって、レジスト膜Rがポジ型であれば、光が当らなかった部分を不溶性なパターンR’として残す。この後、例えばCVDなどによって半導体ウェーハW表面のパターンR’がない部分に金属薄膜を形成する。また、パターンR’は半導体ウェーハW表面をエッチングし、イオンドーピングする場合のマスクとして用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
半導体ウェーハWにCVDによって金属薄膜を形成したり、エッチングやイオンドーピングしたりする場合に用いるパターンR’は、図2(b)に示すように、その側壁が垂直に近いことが望ましい。しかしながら、しばしば図2(c)に示すような、中央部が突出する断面形状のパターンとなることがある。
【0004】
本発明者は図2(c)に示すような断面パターンとなる原因を追及したところ、露光後の加熱処理時にあるとの結論に達した。即ち、量産用の連続加熱装置にて露光後の加熱処理を行うと図2(c)に示すような断面パターンが生じることがあり、パターンR’が近接している時にはパターン同士がリークすることになるが、実験用の加熱装置にて露光後の加熱処理を行った場合には上記のパターンほどの形状には至らない。
【0005】
量産用の連続加熱装置と実験用の加熱装置の差は、加熱雰囲気が溶剤リッチか否かである。つまり、量産用の連続加熱装置にあっては、熱反射板をホットプレート上方に配置し、ピンによってホットプレートからウェーハを浮かせてウェーハを熱反射板に近づけ、熱反射板からの輻射熱にてウェーハを均一加熱する構造になっているか、加熱装置の蓋体とウェーハとの距離を小さくして加熱処理効果を大きくするようにしているが、実験用の加熱装置にあっては熱反射板や蓋体を設けていない。
【0006】
上記したようにウェーハを熱反射板に近づけると、ウェーハ表面に塗布した塗布液中から揮発した溶剤がウェーハと熱反射板との間の空間に残り、溶剤リッチな雰囲気となる。一方、熱反射板を設けない場合には揮発した溶剤が逃げやすく、溶剤リッチな雰囲気とならない。
【0007】
【課題を解決するための手段】
ウェーハ表面に塗布したレジスト膜を加熱処理するにあたり、溶剤リッチな加熱雰囲気を掃気することで、理想的な露光パターンが得られるとの知見に基づいて本発明を成したものである。
【0008】
即ち本発明に係る加熱装置は、装置本体内に板状被処理物を搬入し、ホットプレートにて板状被処理物を加熱処理する加熱処理装置であって、前記ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを噴出する加熱ガス噴出手段と、装置本体内の気体を排出する掃気手段とを設け、前記加熱ガス噴出手段としては前記ホットプレートの上方に多孔体が配置されてなり、前記多孔体は、円盤状を有し、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されている。
【0009】
別の態様としてホットプレート周縁に中心部に向いた細孔を多数穿った中空リングを配置し、この細孔から加熱ガスを噴出し、ホットプレート上方に形成される排気口を掃気手段とすること、また、この逆も考えられる。
【0010】
また、本発明に係る加熱処理方法は、表面に塗布液が塗布された板状被処理物をホットプレートを備えた加熱処理装置内に搬入し、前記板状被処理物を前記ホットプレート上面に載置するか、ピンにて前記ホットプレート上面から浮かせた状態で加熱処理する方法において、前記ホットプレートによる加熱温度と略等しい温度のガスを前記ホットプレートの上方に配置されており、且つ円盤状を有し、その内部に中空部が形成され、且つ前記中空部の外部上方からガス供給管が接続されている多孔体によって前記加熱処理装置内に強制的に供給することで、前記板状被処理物の表面に塗布した塗布液から揮発する溶剤による溶剤リッチな雰囲気を掃気しつつ加熱するようにした。
【0011】
【作用】
N2等のガスを加熱処理装置内に強制的に供給することで、板状被処理物の表面に塗布した塗布液から揮発する溶剤による溶剤リッチな雰囲気を掃気でき、しかもN2等のガスの温度をホットプレートによる加熱温度と略等しくすることで、温度低下を招かず、後工程でパターンニングを行う場合に、図2(b)に示すような理想的な断面パターンが得られる。
【0012】
【実施例】
以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る加熱処理装置の全体図であり、加熱処理装置はベース1上にボックス上をなす加熱処理装置本体2を設け、この加熱処理装置本体2内にホットプレート3を配置している。
【0013】
ホットプレート3の下方にはシリンダユニット4を軸を上下方向にして固設し、このシリンダユニット4のピストンロッド上端に昇降プレート5を取り付け、この昇降プレート5に前記ホットプレート3を貫通するピン6の下端を取り付けている。
【0014】
また、加熱処理装置本体2内のホットプレート3の上方には加熱ガス噴出手段としての多孔体7を配置している。多孔体7は半導体ウェーハWよりも若干大きい円盤状をなし、内部には中空部8が形成され、この中空部8に外部上方からガス供給管9が接続されている。
【0015】
更に、加熱処理装置本体2の一側には半導体ウェーハWの搬入・搬出口10が形成され、加熱処理装置本体2の他側には開口11が形成されている。そして、本発明にあっては搬入・搬出口10及び開口11が掃気用の開口として作用するようにしてもよい。
【0016】
また、前記搬入・搬出口10の外側には搬入・搬出ロボット12を設けている。この搬入・搬出ロボット12は支柱13上にレール14を設け、このレール14にアーム15を係合し、モータ16の駆動でスクリューシャフトを回転することでアーム15を加熱処理装置本体2内に対して進退せしめる。
【0017】
以上において、表面にレジスト液が塗布された半導体ウェーハWをアーム15上に載置し、アーム15を移動して半導体ウェーハWを加熱処理装置本体2内に搬入する。
【0018】
次いで、ピン6を上昇させてアーム15上の半導体ウェーハWをピン6にて取り上げ、アーム15を後退させ、ピン6を下降させてホットプレート3にて半導体ウェーハW表面のレジスト膜に露光後の加熱処理を施す。
【0019】
上記のプリベーク処理を行うにあたり、本発明にあっては、ガス供給管9から多孔体7の中空部8内にホットプレートの加熱温度と略等しい温度まで加熱されたN2等のガスを供給し、多孔体7から下方に向けて加熱されたガスを噴出し、このガスにて加熱処理装置2内の溶剤リッチな雰囲気ガスを搬入・搬出口10及び開口11から排気して掃気しつつ半導体ウェーハWを加熱処理する。
【0020】
このように、掃気しつつプリベークすることで、図2(b)に示すような理想パターンに近い断面形状が得られる。
【0021】
尚、実施例では板状被処理物として半導体ウェーハを説明したが、ガラス基板であってもよい。また加熱処理としては露光後の加熱処理に限らず、プリベーク、現像後の加熱処理等でもよい。更に、加熱処理装置としては、ピンを設けずにホットプレート上に直接板状被処理物を載置する構成のものでもよい。
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように本発明によれば、加熱ガス噴出手段によってホットプレートと同程度まで昇温せしめられたガスを加熱処理装置内に強制的に供給し、これと同時に掃気手段によって装置本体内の溶剤リッチな気体を排出するようにしたので、温度低下を招かず、後工程で露光を行う場合に、理想的な断面パターンが得られる。
【0023】
特に加熱ガス噴出手段としての多孔体をホットプレート上方に配置することにより、雰囲気を乱すことなく掃気を行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る加熱処理装置の全体図
【図2】(a)は半導体ウェーハ上のレジスト膜の露光工程を示す図、(b)は理想的なレジストパターンを示す図、(c)は好ましくないレジストパターンを示す図
【符号の説明】
2…加熱処理装置本体、 3…ホットプレート、 6…ピン、 7…多孔体、10…搬入・搬出口、 11…開口、W…半導体ウェーハ。
【図面】


 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-09-02 
出願番号 特願平7-94197
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 辻 徹二
柏崎 正男
登録日 2002-07-05 
登録番号 特許第3324902号(P3324902)
権利者 東京応化工業株式会社
発明の名称 加熱処理装置及び加熱処理方法  
代理人 小山 有  
代理人 小山 有  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ