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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
管理番号 1091512
異議申立番号 異議2003-70392  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-04-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-12 
確定日 2004-01-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3313354号「画像処理装置および複製防止機能の解除方法」の請求項1、14に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3313354号の請求項1、14に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3313354号に係る発明についての出願は、平成4年8月6日に出願した特願平4-209358号の一部を、平成12年8月11日に新たな特許出願としたものであって、平成14年5月31日にその発明の特許権の設定登録がなされた。その後、平成14年8月12日に特許公報が発行され、特許異議申立人秋山滋美より特許異議の申立がされ、平成15年5月13日(発送日:平成15年5月22日)に請求項1、14に係る発明について取消理由通知が通知され、その指定期間内である平成15年7月22日に訂正請求書および意見書が提出され、訂正拒絶理由通知が通知されたところ、特許権者からの応答がなかったものである。

2.訂正の適否についての判断
訂正請求の内容は、特許請求の範囲の減縮ではなく、特許請求の範囲を変更するものであって、上記訂正が、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としたものに該当しないとの、訂正拒絶理由通知の指摘は妥当なものであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書きの規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議申立についての判断
3.1.本件発明

上記2.で示したように上記訂正が認められないから、本件の請求項1、14に係る発明(以下、「本件発明1、14」という。)は、願書に添付した明細書又は図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、14に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】
画像信号から複製禁止原稿を特定する特定手段と、
複製機能を停止させる複製停止手段と、
前記特定手段により前記画像信号が複製禁止原稿であると特定されたときに、履歴情報を格納する格納手段と、
前記履歴情報が前記格納手段に格納された状態で、前記複製停止手段による複製停止機能を解除する解除手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
前記履歴情報は、前記画像信号から生成された保存用画像データ、または、使用者管理番号若しくは日付を少なくとも含む機器動作の実行に関する特定情報、の少なくとも一方を含む記述ファイルである、ことを特徴とする請求項1から請求項9、請求項11から請求項13のいずれかに記載の画像処理装置。」

3.2.特許異議申立の概要
特許異議申立秋山滋美は、
甲第1号証:特開平2-52384号公報(前記異議申立人が提出した甲第1号証の公開公報)(以下、「刊行物1」という。)
甲第2号証:特開平2-83571号公報(以下、「刊行物2」という。)
を提出して、本件請求項1、14に係る発明は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきであると主張している。

3.3.刊行物に記載された発明
[刊行物1記載の発明]
当審が取消の理由で引用した刊行物1には、以下の事項が図面とともに記載されている。
1a)「1)原稿の内容に基づいて、該原稿が複写不可原稿か否かを判別する手段と、複写不可原稿の画像データを選択的に格納する手段と、該格納された画像データを出力する手段とを具えたことを特徴とする複写装置。
2)原稿の内容に基づいて、該原稿が複写不可原稿か否かを判別する手段と、複写不可原稿の付加情報を選択的に格納する手段と、該格納された付加情報を出力する手段とを具えたことを特徴とする複写装置。」(特許請求の範囲第1項、第2項参照)
1b)「本発明によれば、あらかじめ定められた特定の原稿を判別する手段によって原稿の種別を判断し、さらに画像データおよび付加情報を記憶する手段により複写不可の入力原稿の複写を試みる際に、画像データおよび付加情報を記憶するので、複写不可の原稿の複写防止の効果を増大させることができる。」(第2頁右上欄第15行〜左下欄第3行参照)
1c)「第5図は画像機億装置110に書きこまれる画像データおよびその付加情報のフォーマット構成図である。502には、ユーザIDカード差し込み口402から差し込まれたユーザIDカードから読み取られるユーザID番号が格納される。503には、特定の原稿が判別された日、時刻がマイクロプロセッサ112に内蔵されるタイマーの値に従って設定される。504にはCCD101によって読み取られる原稿のサイズが格納され、505には、A4、等倍コピー等のコピーモードが格納され、506には、特定原稿と合致しているか否か、およびどの特定原稿と合致しているかの情報が書きこまれ、507には、CCD101によって読み取られた画像データが格納される。」(第3頁右上欄第2〜16行参照)
1d)「第8図は、原稿読み取りおよびコピー時のマイクロプロセッサ112の処理流れ図である。ステップS801で、入力原稿を読みとり、判定部106に画像データを送出する。ステップS802で、判定部106は、入力原稿が特定原稿に合致するか否かを判定し、判定信号をマイクロプロセッサ112に送出する。ステップS803で、マイクロプロセッサ112は、判定部106からの判定信号が特定原稿に合致する場合はステップS804へ進み、そうでない場合は、ステップS807の処理を行なう。ステップS804で、マイクロプロセッサ112は、第5図501で示した画像記憶データID部のデータを作成し、画像記憶装置110に書き込む。ステップS805で、再度原稿を読み取り、画像機億装置110に画像データ507を書き込む。ステップS806で、第6図(D)に示したメッセージを液晶ディスプレイ401に表示し、コピー動作を中止し終了する。」(第3頁左下欄第1〜19行参照)

以上の記載を対比のためにまとめると、刊行物1には、次のような発明が図面とともに記載されている。
「画像データから複写不可原稿を判別する手段と、前記判別する手段により前記画像データが複写不可原稿であると判定されたときに、画像記憶データID部のデータを書き込む画像記憶装置と、前記画像記憶データID部のデータが前記画像機億装置に書き込まれた状態で、コピー動作を中止する複写装置。」

[刊行物2記載の発明]
当審が取消の理由で引用した刊行物2には、以下の事項が図面とともに記載されている。
2a)「原稿画像の読み取りおよび記録を指示する操作手段と、該操作手段の前記指示に応じて原稿画像を読み取り、電気的な画像信号を出力する画像読取手段と、前記画像信号に基いて記録媒体上に原稿画像を再生記録する画像形成手段と、前記画像信号とあらかじめ登録したパターンデータとに基いて前記原稿が特定の複製禁止原稿であることを判定する判定手段と、該判定手段の前記判定に応じて前記画像形成手段の記録動作を中止または無効にし、同時に前記操作不能状態にする制御手段と、操作者からの特定の入力情報に応じて前記操作手段の操作不能状態を解除し、操作可能状態に回復させる回復手段とを具備したことを特徴とする画像記録装置。」(特許請求の範囲参照)
2b)「第1図は本発明実施例の基本構成を示し、特に信号の流れを主に示す。・・・また、112は画像読取手段101からのデジタルカラー画像信号の特徴抽出による出力パターンを基にパターンマッチング方式を用いて原稿が紙幣等の複写禁止物であることを判定する判定手段、113は画像の読取記録(複写)の各種指示を行うための操作手段である。判定手段112は原稿が複写禁止部であると判定したときには、信号を送って操作手段113を操作禁止状態にし、同時に画像形成手段103の画像形成を無効にする、または画像形成を中止する処理を行う。114は回復手段であり、特定の登録された作業者のID番号、暗証番号、指紋、声紋および筆跡の少くともいずれか1つの入力に応じて、操作不能状態となっている操作手段113を再び操作のできる状態に回復させる。」(第2頁右下欄第9行〜第3頁左上欄第18行参照)

3.4.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1を刊行物1記載の発明と対比すると、
・刊行物1記載の発明の「画像データ」、「複写不可原稿」、「判別する手段」、「コピー動作」、「中止」、「画像記憶データID部のデータ」、「書き込む」、「画像記憶装置」、「複写装置」は、それぞれ本件発明1の「画像信号」、「複写禁止原稿」、「特定する特定手段」、「複写機能」、「停止」、「履歴情報」、「格納する」、「格納手段」、「画像処理装置」に相当する。
・刊行物1の「コピー動作を中止する」プロセスに対応する手段は、本件発明1の「複写停止手段」に相当する。
以上のことから、両者間には、次のような一致点、相違点がある。
(一致点)
画像信号から複製禁止原稿を特定する特定手段と、複製機能を停止させる複製停止手段と、前記特定手段により前記画像信号が複製禁止原稿であると特定されたときに、履歴情報を格納する格納手段と、前記履歴情報が前記格納手段に格納された状態である画像処理装置。

(相違点)
本件発明1は、履歴情報が格納手段に格納された状態で、複製停止手段による複製停止機能を解除する解除手段を備えるのに対して、刊行物1記載の発明は、履歴情報が格納手段に格納されるとの記載はあるが、複製停止機能を解除する解除手段を備えることまでは記載されていない点(相違点1)で相違している。

以下に、上記相違1について検討する。
刊行物1には、複製しようとした原稿が複製禁止原稿であると特定されたときに、画像処理装置の複製機能を停止させることが記載されている。ここで、その機能が停止されたままとはせず、該装置を再び使用可能な状態となるように何らかの停止状態を解除するための構成を設けることは当業者が普通に考えつくことと言える。
一方、刊行物2には、複製禁止原稿であると特定されたときに、複製機能を停止させること、また、操作者からの特定入力情報に応じてその複製停止機能を解除することが記載されているから、刊行物1記載の画像処理装置の構成に、刊行物2記載の複製停止機能の解除を行う技術思想を適用し、本件発明1の構成とすることは当業者が容易に考えつく程度の構成の変更である。

(2)本件発明14について
本件発明14を刊行物1記載の発明と対比すると、
本件発明1との対比に上げた相違点1に加えて、「前記履歴情報は、前記画像信号から生成された保存用画像データ、または、使用者管理番号若しくは日付を少なくとも含む機器動作の実行に関する特定情報、の少なくとも一方を含む記述ファイルである」点(相違点2)で相違する。

以下、上記相違点2について検討する。
刊行物1の摘記事項1cには、本件発明14の履歴情報に相当する画像信号から生成された保存用画像データ、または、使用者管理番号若しくは日付を少なくとも含む機器動作の実行に関する特定情報をメモリに記憶させることが記載されているし、画像データの付加情報に相当する使用者管理番号若しくは日付を少なくとも含む機器動作の実行に関する特定情報を別途、記述ファイルに記憶させることは当業者が適宜なし得る設計的事項に過ぎない。
したがって、本件発明1、14は、刊行物1、2記載の発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、14は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1、14についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-11-20 
出願番号 特願2000-243500(P2000-243500)
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (G03G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 下村 輝秋  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 梅岡 信幸
伏見 隆夫
登録日 2002-05-31 
登録番号 特許第3313354号(P3313354)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 画像処理装置および複製防止機能の解除方法  
代理人 森本 義弘  

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