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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B41F
審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1091571
異議申立番号 異議1997-73139  
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 1997-07-07 
確定日 2004-01-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2569213号「平版印刷機」の請求項1ないし16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2569213号の請求項1ないし14、16に係る特許を取り消す。 同請求項15に係る特許を維持する。 
理由 [手続の経緯]
本件特許第2569213号の請求項1〜16に係る発明の出願は、平成2年10月5日の出願(特願平2-266584号、優先権主張番号:417587、優先日:1989年10月5日、優先権主張国:米国(US))であって、平成8年10月3日にその特許の設定登録がなされ、その後、その特許について高島雄二及び東芝機械株式会社より特許異議の申立がなされ、当審において取消理由の通知がなされたところ、その指定期間内である平成10年7月13日付けで訂正請求がなされ、さらに、当審において訂正拒絶理由の通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年4月6日付けで上申書が提出されると共に平成10年7月13日付けの訂正請求が取り下げられたものである。


[異議申立について]
【1】特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明
特許請求の範囲の請求項1〜16に係る発明(以下、それぞれ本件発明1〜16という)は特許明細書及び図面の記載からみて、その請求項1〜16に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】シートまたはウェブ材料(12)を印刷するためのオフセット印刷機であって、インキ装置と湿し装置とを備えており、かつ版胴(22,24)およびブランケット胴(14,16)を支持するためのサイドフレーム(96)と、版胴(22,24)に巻付けられた、始端部と終端部とを有する版板とを備えた形式のものにおいて、ブランケット胴(14,16)の1端が軸受装置(98)を備えており、サイドフレーム(96)内に旋回可能に支承されたサイドフレーム部分(94)がその閉鎖状態で軸受装置と係合しており、このサイドフレーム部分(94)が軸受装置(8)から離れた、したがってブランケット胴(14,16)から距離を置いた開放状態へ移動し、かつ再び軸受装置(98)内に係合した閉鎖状態へ戻ることができるようになっており、ブランケット胴(14,16)のブランケット(18,20)がギャップ部のない連続的な外表面と、ギャップ部のない連続的な内表面とを有する管として構成されており、かつ軸方向に取外し可能にブランケット胴(14,16)の外表面上に支承されていて、サイドフレーム部分(94)によって開放される開口部(102)から交換可能であり、かつ管状のブランケット(18,20)が弾性的に撓む、容積非圧縮性の材料から成る円筒形の外層(66)と、固い、非膨張性の材料から成る内層上に取付けられた、容積圧縮性の材料から成る中間層少なくとも1つとを有するように、ブランケット(18,20)が少くとも部分的に容積圧縮性の材料から形成されていることを特徴とする平版印刷機。
【請求項2】版胴(22,24)に巻付けられた、始端部と終端部とを有する版板およびブランケット胴(14,16)上に取付けられたブランケット(18,20)とを用いてシートまたはウェブ材料(12)を印刷するためのオフセット印刷機であって、インキ装置と湿し装置とを備えた形式のものにおいて、ブランケット(18,20)が、ギャップ部のない連続的な外表面と、ギャップ部のない連続的な内表面とを有する管の形状を有しており、かつ取外し可能にブランケット胴(14,16)の外表面上に支承されており、かつ管状のブランケット(18,20)が弾性的に撓む、容積非圧縮性の材料から成る円筒形の外層(66)と、固い、非膨張性の材料から成る内層上に取付けられた、容積圧縮性の材料から成る中間層(68)少なくとも1つとを有するように、ブランケット(18,20)が少くとも部分的に容積圧縮性の材料から形成されており、かつ少なくとも外層(66)とこれに続いた容積圧縮性の中間層(68)との間に1つの非膨張性の材料から成る層が設けられていることを特徴とする印刷機。
【請求項3】版胴(22,24)に巻付けられた、始端部と終端部とを有する版板およびブランケット胴(14,16)上に取付けられたブランケット(18,20)とを用いてシートまたはウェブ材料(12)を印刷するためのオフセット印刷機であって、インキ装置と湿し装置とを備えた形式のものにおいて、ブランケット(18,20)が、ギャップ部のない連続的な外表面と、ギャップ部のない連続的な内表面とを有する管の形状を有しており、かつ取外し可能にブランケット胴(14,16)の外表面上に支承されており、かつ管状のブランケット(18,20)が弾性的に撓む、容積非圧縮性の材料から成る円筒形の外層(66)と、固い、非伸張性の材料から成る内層上に取付けられた、容積圧縮性の材料から成る中間層(68)少なくとも1つとを有するように、ブランケット(18,20)が少くとも部分的に容積圧縮性の材料から形成されており、かつブランケット(18,20)を軸方向に手動でブランケット胴(14,16)から取外すことができるように、ブランケット(18,20)の内表面(86)とブランケット胴(14,16)の外表面(100)との間の締り嵌めを解除するためにブランケット胴(14,16)上に存在する管状のブランケット(18,20)の半径方向の膨張を実施するための手段が設けられていることを特徴とする印刷機。
【請求項4】ブランケット(18,20)の外層が版胴(22,24)によって変形せしめられる前の変形していない状態にある時は、ブランケット(18,20)の外層は第1の容積を占めており、またブランケット(18,20)の外層が版胴(22,24)によって変形せしめられた時には、第1の容積に等しい第2の容積を占めており、ブランケット(18,20)の中間層の圧縮性の材料は、ブランケット(18,20)の外層が変形していない状態にある時は第3の容積を占めており、かつブランケット(18,20)の中間層は、ブランケット(18,20)の外層が版胴(22,24)によって変形せしめられた時には、第3の容積よりも小さな第4の容積を占めていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷機。
【請求項5】前記中間層(68)の圧縮性材料は空所を有しており、該空所は、ブランケット(18,20)の外層が変形していない状態にある間は第1のサイズであり、また該空所の少くとも幾つかは、ブランケット(18,20)の外層が版胴(22,24)上の版板によって変形せしめられた時には、第1のサイズよりも小さい第2のサイズになることを特徴とする、請求項4記載の印刷機。
【請求項6】印刷機は前記版胴(22,24)とブランケット胴(14,16)とを支持するためのサイドフレーム(96)を有しており、該サイドフレーム(96)は、ブランケット胴(14,16)と軸方向に整合している支持位置と、該サイドフレーム(96)内に開口部(102)を設けるためにブランケット胴から離れている開放位置との間で、運動可能なサイドフレーム部分(94)を有しており、ブランケット(18,20)は、サイドフレーム(96)の該サイドフレーム部分(94)が開放位置にある時、サイドフレーム(96)内での開口部(102)を通過し、かつブランケット胴(14,16)と接触することができるようになっていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷機。
【請求項7】前記ブランケット胴(14,16)が第1の直径を備えた円筒形の剛性外表面(88)を有しており、ブランケット(18,20)は第2の直径を備えた円筒形の剛性内表面(86)を有しており、該第2の直径は、第1の直径よりも小さくなっていて、ブランケット胴(14,16)とブランケット(18,20)との間には締り嵌め部が設けられており、ブランケット胴(14,16)は通路手段(106)を有し、通路手段を用いて、ブランケット(18,20)の内表面(86)に対して流体の流れを導いてブランケットを膨脹せしめかつ第2の直径を増加せしめ、ブランケット(18,20)はそのために、ブランケット胴(14,16)上へ軸方向に運動可能になっていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷機。
【請求項8】前記ブランケット(18,20)は、非圧縮性材料から成る円筒状の外層(66)と圧縮性材料から成る円筒形の中間層(68)と固い材料から成る層(74)とを有しており、更にブランケット(18,20)の該外層(66)は、ニップ部(26,28)において版胴(22,24)上のインキ転写面と転動係合状に配置されているギャップ部のない連続的な外表面を有しており、又ブランケット(18,20)の外層(66)は、少くともブランケットの中間層(68)の部分領域を、第1の状態から第2の状態に圧縮せしめるように変形することができ、またブランケット(18,20)の中間層(68)は多数の空所を包含しており、該空所は、ブランケット(18,20)の中間層(68)が第1の状態にある時は相対的に大きく、またブランケット(18,20)の外層(66)の変形によって第2の状態に圧縮されたブランケット(18,20)の中間層(68)の部分領域内では、相対的に小さくなっていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷機。
【請求項9】前記外層(66)が、堅固な弾発的に変形可能な、非圧縮性の高分子材料から形成されており、中間層(68)は、圧縮性でかつ空所を包含している、弾発的に変形可能な、高分子材料の発泡体から形成されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷機。
【請求項10】ブランケット(18,20)が管状の輪郭を有しており、剛性の内層は中空状のスリーブ(80)を包含しており、該スリーブの内径は、ブランケット胴(14,16)の外径よりも小さくなっていて、ブランケット胴(14,16)と締り嵌めを行っていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の印刷機。
【請求項11】管状のブランケット(18,20)が、各層が異なる材料から成っていてもよい層状構造を有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のの印刷機。
【請求項12】層状構造を有する管状のブランケット(18,20)の少なくとも1つの層が柔軟に変形可能な織物またはメッシュから形成されていることを特徴とする、請求項11記載の印刷機。
【請求項13】管状のブランケット(18,20)の少なくとも1つの層が非膨張性の材料から形成されていることを特徴とする、請求項11記載の印刷機。
【請求項14】管状のブランケット(18,20)が1つよりも多い数の圧縮性の層を有しており、かつ該圧縮性の層が異なる剛性を有していることを特徴とする、請求項11記載の印刷機。
【請求項15】管状のブランケット(18,20)が少なくとも1つの圧縮性の層を有しており、かつこの層が自体に異なる剛性を有していることを特徴とする、請求項11記載の印刷機。
【請求項16】圧縮性の中間層(68)が圧力の適用で縮小し得る空所を有していることを特徴とする、請求項11記載の印刷機。」

【2】取消理由の概要
当審が平成9年12月10日付け取消理由通知書で通知した取消理由は、刊行物1〔特開昭62-218130号公報〕、刊行物2〔米国特許第4823693号明細書〕、及び、刊行物3〔実願昭61-123966号(実開昭63-30165号)のマイクロフィルム〕を引用し、請求項1〜14、16に係る発明は、何れも上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、また、請求項15に係る発明は、その請求項の記載に不備があるから特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであるから、請求項1〜16に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるというものである。

【3】特許法第29条第2項違反
〔1〕各刊行物に記載された発明
(1)刊行物1〔特開昭62-218130号公報(異議申立人・高島雄二が提出した甲第1号証、異議申立人・東芝機械株式会社が提出した甲第1号証)〕
刊行物1には、オフセット印刷機に関する発明が記載され、詳細には、以下の事項が図面とともに記載されている。
〈従来技術に関して〉
(ア)「公知の方法では版板が印刷版として使用され、印刷装置に固設された支持円筒に緊締される。版板の緊締のために、支持円筒の全長に伸びる締付けセグメントが使用される。版板はこの締付けセグメントの区域で始まりかつ終わるから、この部位で印刷版の始め又は終わりがこの印刷版によって印刷される印刷担体の上に識別される。・・・しかも、この構造は比較的小さな印刷速度しか許さなかった。なぜならば、支持円筒に対して比較的小さな回転数しか許されないからである。支持円筒は対称構造でないから、運転の際に印刷装置に高い振動負荷が生じた。」(2頁右下欄18行〜3頁左上欄11行)
(イ)「従来はこの印刷法では、胴の表面に緊締した印刷版が使用された。胴の表面を貫いて胴の軸線と平行に伸びる締付け棒を用いて緊締したから、この締付け棒が印刷版の始め又は終わりを定めていた。・・・この版胴の表面にある締付け棒に関連して、この版胴は大きな不釣合が特徴であり、特に大きな回転速度の場合にこの不釣合が振動負荷となって、版胴を支承する機枠に伝達された。」(4頁右上欄7〜19行)
〈構成に関して〉
(ウ)「1)版胴、転写胴及び湿らし装置、着肉装置をそれぞれ備えた単数個又は複数個の印刷ユニットを有する複数個の印刷装置を設け、印刷版に吸水層とインキ吸収層を設け、オフセット印刷機で印刷担体に印刷する方法において、オフセット印刷版(1)と転写胴層(1a)をスリーブとして作製し、版胴及び転写胴(5)の上に交換可能に嵌装固定し、印刷フェイス(8)を変更するときは、印刷機にあるオフセット印刷版(1)のスリーブを新しいオフセット印刷版のスリーブ(1)と交換することを特徴とする印刷方法。 2)前記オフセット印刷版のスリーブを前記版胴(5)の上に圧接固定することを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の印刷方法。 3)前記オフセット印刷版のスリーブの内面(10)に媒質の圧力を加えて膨張させて前記胴(5)上に嵌装し、続いて圧力を緩和することを特徴とする特許請求の範囲第2項に記載の印刷方法。 ・・・ 6)印刷機の機枠(12,13)に配設された前記版胴及び転写胴の少くとも一方の端部(27,28;31,43)を露出させ、これら露出した端部(27,28;31,43)を経てオフセット印刷版(1)及び転写胴(1a)のスリーブを交換することを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし第5項のいずれかの1項に記載の印刷方法。 7)前記胴(5)の一方の端部(31)から軸受(32)を外側へ回転して、前記オフセット印刷版(1)のスリーブ(1)を該胴(5)の表面からこの端部(31)を経て引抜き、別のスリーブと交換し、この端部(31)を経て該別のスリーブを該胴(5)の上に差込むことを特徴とする特許請求の範囲第6項に記載の印刷方法。 ・・・ 11)版胴、転写胴及び湿らし装置、着肉装置をそれぞれ備えた単数個又は複数個の印刷ユニットを有する複数個の印刷装置を設けたオフセット印刷機で印刷担体に印刷するための印刷装置において、オフセット印刷版と転写胴層が、版胴(5)及びゴム胴(5)を含む胴上に交換可能に嵌着固定されるスリーブ(1,1a)であり、これらスリーブのうちの一方の印刷版スリーブ(1)がインキを他方の転写胴スリーブ(1a)に移す印刷パターン(8)を表面に形成されていることを特徴とする印刷装置。 12)前記版胴又は転写胴(5)が中空円筒形外殻(20)であることを特徴とする特許請求の範囲第11項に記載の印刷装置。 13)前記印刷版スリーブ(1)とこれと境界を成す前記胴の支持面との間に該印刷版スリーブ(1)を該支持面から離間させるエアクッションが設けられていることを特徴とする特許請求の範囲第11項に記載の印刷装置。 14)前記胴(5)のそれぞれ一方の端部(30)が印刷機に固定して支承され、他方の端部(31)が自在継手(32)の周りに該胴(5)に対して離接可能に旋回する軸受(32)を有すると共に通常は該軸受(32)を受けているが該軸受(32)が該胴(5)から離れる方向に旋回した時に前記印刷版スリーブ(1)が該胴(5)から引き出せる、該印刷版スリーブ(1)の大きさ以上の大きさを有する凹部(35)を具備することを特徴とする特許請求の範囲第11項ないし第13項のいずれかの1項に記載の印刷装置。・・・ 16)印刷機に固定して支承された前記胴(5)の端部(30)が片持支承されていることを特徴とする特許請求の範囲第14項又は第15項に記載の印刷装置。 17)前記印刷版スリーブ(1)の印刷担体に臨む表面が、弾性被覆で継目なしに取り囲まれることを特徴とする、特許請求の範囲第11項ないし第16項のいずれかの1項に記載の印刷装置。」(特許請求の範囲)(尚、第1,11項に関して、2頁右下欄11〜17行,3頁右上欄12〜18行,3頁右下欄20行〜4頁左上欄3行に、同様の記載がある。)
(エ)「これらの印刷版は重量が少いので、大きな版型でも手で取扱うことができる。」(3頁左下欄9〜10行)
(オ)「本方法において、オフセット印刷版のスリーブの内面に液体などの媒質の圧力を加えて膨張させて胴の上にはめこみ、続いて圧力を緩和したり、当該スリーブを胴の表面に嵌装し、続いて胴の直径を大きくし、胴の表面をスリーブの内面に押圧したりして胴に印刷版スリーブを嵌装させることができる。」(3頁右下欄8〜14行)
(カ)「本発明に基づきオフセット印刷版と転写胴層が、版胴及び転写胴に固着するが交換可能なスリーブであり、印刷版スリーブがインキをゴム胴スリーブに移す印刷パターンを着持することによって上記の目的が達成される。」(4頁左上欄18行〜右上欄2行)
(キ)「オフセット印刷機は実質的に1つの機枠から成り、その架台に単数個又は複数個の印刷ユニットを備えた少くとも1個の印刷装置が配設されている。各印刷ユニットは、通常、版胴、ゴム胴及び圧胴を有し、これらの胴はジャーナルに回転自在に支承される。ジャーナルに歯車装置が接続され、駆動装置が発生する回転運動を胴に伝達する。ゴム胴と圧胴の間に印刷すき間が設けられ、ここを貫通して印刷担体が移動する。印刷担体は移動しながら、ゴム胴とも圧胴とも直接接触する。その際、パターンが印刷担体に刷り込まれる。このパターンは印刷版の上に着肉装置を介してインキにより着肉される。印刷版はインキ着けの前に湿らし装置によって与湿される。この間接印刷法では柔軟な表面を持つゴム胴が版胴と圧胴の間で架台に回転自在に支承される。このゴム胴の表面も、柔軟な層、例えばゴムを備えた交換可能なスリーブである。このゴムの上にインキが転移され、それがゴム胴から、巻取紙として形成された印刷担体に移される。」(4頁左下欄16行〜右下欄15行)
(ク)「第1図にはオフセット印刷版などの印刷版用の多層金属スリーブ1の立体図が示されている。スリーブ1はベース金属スリーブ2の上に中間金属層3と表面金属層4を被着したものである。ベース金属スリーブ2は厚さ約0.3mmで、その名が表す通りベース機能を有する。・・・第2図では多層金属スリーブ1が版胴5の上に張ってある。極めて僅かな肉厚7を有するスリーブ1が版胴5の表面6の上に固着されている。パターン・・・又は印刷フェイス8はスリーブ1の胴5と反対側の表面に形成されている。第3図が示すように、表面6側のスリーブ1の内面10は表面6の上に圧接固着するから、印刷の際に表面6に対して変位しない。多層金属版として形成されたスリーブ1においては、胴5に臨むベース金属スリーブ2が設けられ、胴5と反対側の外面に中間金属層3が積層される。この中間金属層3の上に・・・表面金属層4が被着され、これにパターン8・・・が形成される。ベース金属スリーブ2の材料として、例えば、ニッケル又は鋼が考えられる。・・・スリーブ1は胴5の表面6の上に種々の仕方で固定することができる。」(4頁右下欄16行〜5頁右上欄6行)
(ケ)「ゴム層・・・11で例えば継目なしに被覆された転写胴laの横断面を第5図に示す。この場合もベース金属スリーブ2が使用される。ベース金属スリーブ2は厚さ約0.3mmの金属管である。ゴム層11は厚さ約1ないし5mmである。」(5頁右上欄16〜20行)
(コ)「第7図に示す実施態様では、胴5を架台12,13から取り外さずに、胴5上のスリーブ1を交換する。この目的のために、例えば、胴の一方の端部30を架台12に片持支承し、他端31を旋回可能な軸受32に導くことができる。この旋回可能な軸受32は架台13の自在継手33の周りに旋回し得るように支承され、胴5と反対方向に架台13から回して引き出すことができる。旋回可能な軸受32を回して引き出すと、架台13を貫通する凹部34があらわれる。その横断面はスリーブ1の横断面より大きい。この凹部34を通ってスリーブ1を胴5から引き抜き、別のスリーブと取替えることができる。スリーブ1の交換の後に旋回可能な軸受32を胴5の方向に回し戻し、5の端部31を旋回可能な軸受32の中に導く。」(5頁右下欄7行〜6頁左上欄1行)
(サ)「スリーブ1の交換過程を第6図ないし第8図では印刷版スリーブ1を用いる場合について取上げた。ゴム層11を有するゴム胴laにも同じ手順と同じ設計原理が当てはまる。」(6頁右上欄7〜10行)
(2)刊行物2〔米国特許第4823693号明細書(異議申立人・高島雄二が提出した甲第2号証)〕
刊行物2には、ロータリオフセット印刷機に関する発明が記載され、詳細には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「本発明は、印刷機にスリーブを取付けるための装置に関する。さらに詳しく述べると、印刷フォームあるいはゴム被覆スリーブであり得るスリーブを、ロータリオフセット印刷機の中で使用される印刷機シリンダに取付けるための装置に関するものである。」(明細書1欄8〜12行、翻訳文参照)
(イ)「簡潔に述べると、上記シリンダに取付けるために上記スリーブを送り込む補助的スリーブ装置が提供される。なお、上記シリンダへの作業は機械の側壁の開口を介して行われる。」(明細書1欄65〜68行、翻訳文参照)
(ウ)「印刷機は2つの側壁1,2を有し、両端壁の間にシリンダ3が位置する。図1は、ゴムブランケットを備えたオフセットシリンダである。上記オフセットシリンダは、適当な軸受8,9の中の棒軸状体4,5によって保持されている。オフセットシリンダは、他のシリンダ(例えば、プレートシリンダおよび/または押印シリンダまたは印刷シリンダ)と噛合させられなければならない。」(明細書2欄46〜52行、翻訳文参照)
(エ)「上記印刷機の側壁の少なくとも一方は、図1において側壁1で示すように、上記印刷シリンダ3の直径よりも大きい直径dwを有する開口7を備えている。ブッシュまたは偏心部材11、あるいは複数の偏心部材11は、シリンダ3の直径Dよりも小さい。」(明細書3欄7行〜12行、翻訳文参照)
(オ)「上記シリンダ3がゴムブランケットシリンダまたはロータリオフセット印刷機のオフセットシリンダである場合に、上記スリーブ15はゴム層を有するか、あるいはその上に取付けられているゴム層で被覆されている。このゴム層は、典型的には、スリーブ15の上のゴム層を加硫することにより取付けられる。本発明は、シリンダ3の上に取付けられるスリーブの型に限られるものではない。」(明細書3欄43〜49行、翻訳文参照)
(カ)「スリーブ15をシリンダ3の上に取付けるには、スリーブ15を僅かに拡張させることにより容易になる。例えば、周上の選択された部分(図示しない)に穴を有するシリンダ3を形成し、その穴から圧縮空気を吹き出し、シリンダ3の上にスリーブ15の取付用クッションを設けている。」(明細書4欄58〜63行、翻訳文参照)
(キ)FIG.1,2には、シリンダ3の棒軸状体5の軸上に軸受装置9が備えられ、側壁1側に設けられた移動可能な部材(bearing shell structure)13が、その閉鎖状態では軸受装置9と係合し、開放状態では側壁1に開口7が形成され、この開口7を通してシリンダ3のスリーブ15を交換することが記載されている。(明細書3欄22〜49行、FIG.1,2参照)
(3)刊行物3〔実願昭61-123966号(実開昭63-30165号)のマイクロフィルム(異議申立人・高島雄二が提出した甲第4号証)〕
刊行物3には、オフセット印刷機に関する発明が記載され、詳細には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「印刷面となる表面層と圧縮性層と補強層とからなる印刷用ブランケットにおいて、2層以上の織布または不織布を積層してなる補強層の上面に表面ゴム層を設け、下面に圧縮性層を設けたことを特徴とする圧縮性印刷用ブランケット。」(実用新案登録請求の範囲)
(イ)「圧縮性層を設けるのは運転中の圧力下でもバルジ現象によりブランケットの周長が変化しないようにするためである。即ち、オフセット印刷は刷版から一度ブランケットに転写してそれから紙面に印刷するので、刷版の版胴とブランケットのゴム胴、及びゴム胴と印刷用紙を通す圧胴とはそれぞれ周速が一致していなければならない。周速が一致していないと画像にズレが生じこのズレは高速印刷機ほど大きくなる。圧縮性層を設けることによっていわゆるバルジ現象による周速の不一致を防止し、印刷像の「ぼけ」を防止するのである。」(1頁19行〜2頁10行)
(ウ)「第4図は従来の圧縮性印刷用ブランケットの構造を示す説明用断面図である。圧縮性印刷用ブランケットは通常、圧縮性層2を非伸長性繊維の織布で形成した補強層3で裏打ちし、さらに上面には非伸長性の補強層4を介して最上層に印刷面となる表面ゴム層5を積層して構成されている。織布は綿布、レーヨン布、ポリエステル布等であって、ブランケット用として織られた非伸長性の特殊な織布が用いられる。・・・さらに、圧縮性層2は表面ゴム層5のバルジ現象が生じないように表面ゴム層の圧縮挙動を吸収し易いように構成されている。」(2頁15行〜3頁9行)
(エ)「第1図はこの考案に係る圧縮性印刷用ブランケットの断面図であって、圧縮性印刷用ブランケット10は非伸長性繊維で形成した織布11を2層積層して補強層12を形成し、この補強層12に圧縮性層13を設け、さらにこの圧縮性層13の上面に織布11aを2層積層して補強層14となし、最後に印刷面となる表面ゴム層15を順次積層して構成されている。補強層12を構成する織布11は従来と同様に綿布、レーヨン布、ポリエステル布等を使用することができ、不織布であってもよい。」(5頁12〜6頁2行)
(オ)「圧縮性層13は、公知の方法により製造することができる。即ち、ゴム組成物中に発泡剤を配合しておき、ゴム加硫時に加熱発泡させる発泡法、あるいはゴム組成物中に溶出液に溶解する粉体(例えば、塩)を添加し、ゴム加硫後に粉体を溶出せしめて気泡を形成する、いわゆるソルト浸出法、また、ゴム組成物中に中空微小球を混入させて独立した気泡を形成する中空微小球混入法等のいずれでもよい。表面ゴム層15は耐油性ゴム、例えばクロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリウレタン、アクリルゴム等によって形成される。」(6頁7〜18行)
(カ)「第3図は圧胴6とこの考案に係る印刷用ブランケットを取り付けてなるゴム胴7との関係を示す。圧縮性層13は表面ゴム層15の動きを補強層14を介して捉えることになるので・・・広いニップ面積で圧縮されることになる。」(7頁4〜9行)
(キ)「以上説明したように、この考案の構成によれば圧縮性層と表面ゴム層との間に2以上の織布または不織布を積層した補強層を設けたから見掛け上の圧縮モジュラスが向上し高い印圧が得られ、網点の再現性、インク潰れ等の印刷特性に優れた圧縮性印刷用ブランケットを得ることができる。」(8頁8〜14行)
(ク)昭和61年10月27日付手続補正書において、7.(7)に「版胴6によって圧縮されると、表面ゴム層15と補強層14は非圧縮性層であるとともに、下層には圧縮性層13が設けられているから、補強層14は版胴6の円周に添って変形することになる。」と記載されていると共に、第3図には、「ブランケットの表面ゴム層15が圧胴6によって変形せしめられることにより、圧縮性層13のみが、変形前より容積が小さくなる」点が示されている。

〔2〕本件発明1について
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1の上記(ケ)(サ)の記載によれば、「印刷版スリーブ1」と「転写胴スリーブ1a」とは、両者ともベース機能を有する「ベース金属スリーブ2」を備え、スリーブとして作製された構成であり、また、「印刷版スリーブ1」と「版胴5」との寸法関係に基づく圧接固定のための構成や交換のための構成等の関連構成及び「転写胴スリーブ1a」と「転写胴5」との該関連構成は共通するものであるから、上記(ウ)〜(サ)の記載からみて、刊行物1には次の発明が開示されているものと認められる。
「巻取紙として形成された印刷担体を印刷するためのオフセット印刷機であって、着肉装置と湿らし装置とを備えており、かつ版胴5および転写胴5を支持するための機枠12,13と、版胴5に設けられた印刷版スリーブ1を備えた形式のものにおいて、転写胴5の他端31が、機枠13内に旋回可能に支承された軸受32にその閉鎖状態で係合しており、この軸受32が、転写胴5の他端31から離れた、したがって転写胴5から距離を置いた開放状態へ移動し、かつ再び転写胴5の他端31に係合した閉鎖状態へ戻ることができるようになっており、転写胴5の転写胴スリーブ1aが、その内面に媒質の圧力を加えて膨張させることでこれと境界を成す転写胴5の支持面との間にエアクッションが設けられ圧力を緩和することでこれを転写胴5上に圧接固定することができるものであって、金属管であるベース金属スリーブ2と、ベース金属スリーブ2の表面に継目なしに被覆されたゴム層11から管状の輪郭に構成されており、かつ転写胴5の表面から他端31を経て引抜きこの他端31を経て転写胴5の上に差込み可能に転写胴5の外表面上に支承されていて、軸受32によって開放される凹部34から交換可能であり、かつ管状の転写胴スリーブ1aが、ゴム層11と、ニッケル又は鋼から成る金属管であるベース金属スリーブ2とから形成されていることを特徴とする平版印刷機。」(以下、引用発明1という)
(2)本件発明1と引用発明1との対比
引用発明1の「巻取紙として形成された印刷担体」,「着肉装置」,「湿らし装置」,「版胴5」,「転写胴5」,「他端31」,「機枠12,13」,「軸受32」,「凹部34」が、本件発明1の「シートまたはウェブ材料(12)」,「インキ装置」,「湿し装置」,「版胴(22,24)」,「ブランケット胴(14,16)」,「1端」,「サイドフレーム(96)」,「サイドフレーム部分(94)」,「開口部(102)」に、それぞれ、相当し、
そして、引用発明1の「版胴5に設けられた印刷版スリーブ1」については、始端部と終端部とを有するものではなく、従って、版胴5に巻付けられていないものであるが、本件発明1の「版板」に対応し、
また、引用発明1の「軸受32」については、機枠13内に旋回可能に支承されたものであって上記したようにそれ自体が本件発明1のサイドフレーム部分(94)に相当するものであり、軸受装置の設置位置の点で相違するものであるが、本件発明1の「軸受装置(98)」に対応し、
さらに、引用発明1の「転写胴スリーブ1a」については、転写胴5の表面から他端31を経て引抜きこの他端31を経て転写胴5の上に差込み可能に転写胴5の外表面上に支承されているから、軸方向に取外し可能に転写胴5の外表面上に支承されているものと認めることができ、そして、該転写胴スリーブ1aを構成する「ベース金属スリーブ2」が、その内面に媒質の圧力を加えて膨張させることでこれと境界を成す転写胴5の支持面との間にエアクッションが設けられ圧力を緩和することでこれを転写胴5上に圧接固定する圧接固定構造である締り嵌めを形成するものであり、しかも、ニッケル又は鋼から成る金属管であり、これらのことを勘案すると、該ベース金属スリーブ2は、ギャップ部のない連続的な内表面を有し、かつ、固い、非膨張性の材料から成るものと認めることができるものであって、本件発明1の「内層」に相当するといえるものの、その表面に継目なしに被覆された「ゴム層11」が、ギャップ部のない連続的な外表面を有するものであり、かつ、弾性的に撓む材料から成るものであると認めることができても、該ゴム層11が本件発明1における「外層」と「中間層」との両者の構成・機能を併せ持っているのか否か定かでなく、本件発明1の「外層」及び「中間層」に相当するということができないから、該転写胴スリーブ1aの全体の層構成としては相違するものではあるが、本件発明1の「ブランケット(18,20)」に対応しているから、
両者は、「シートまたはウェブ材料(12)を印刷するためのオフセット印刷機であって、インキ装置と湿し装置とを備えており、かつ版胴(22,24)およびブランケット胴(14,16)を支持するためのサイドフレーム(96)と、版胴(22,24)に設けられた版板とを備えた形式のものにおいて、ブランケット胴(14,16)の1端が軸受装置(98)を介してサイドフレーム(96)内に旋回可能に支承されたサイドフレーム部分(94)にその閉鎖状態で係合して支持されており、このサイドフレーム部分(94)が、ブランケット胴(14,16)の1端から離れた、したがってブランケット胴(14,16)から距離を置いた開放状態へ移動し、かつ再びブランケット胴(14,16)の1端に係合した閉鎖状態へ戻ることができるようになっており、ブランケット胴(14,16)のブランケット(18,20)がギャップ部のない連続的な外表面と、ギャップ部のない連続的な内表面とを有する管として構成されており、かつ軸方向に取外し可能にブランケット胴(14,16)の外表面上に支承されていて、サイドフレーム部分(94)によって開放される開口部(102)から交換可能であり、かつ管状のブランケット(18,20)が弾性的に撓む材料から成る円筒形の層と、固い、非膨張性の材料から成る内層とから形成されていることを特徴とする平版印刷機。」の点で一致し、次の点で相違する。(尚、以下、相違点の摘記及び相違点についての検討に際しては、記載が煩雑になるため符号を省略し、また、( )内には各刊行物における部位・部材名を示す。)
(3)相違点
1.相違点1
ブランケット胴を軸受装置を介してサイドフレームで支持するための構造が、本件発明1では、ブランケット胴の1端に軸受装置を備えており、サイドフレーム内に旋回可能に支承されたサイドフレーム部分がその閉鎖状態で軸受装置と係合する構成であるのに対して、引用発明1では、ブランケット胴(転写胴)の1端が、サイドフレーム(機枠)内に旋回可能に支承されたサイドフレーム部分(軸受)にその閉鎖状態で係合する構成、即ち、ブランケット胴の1端を軸支する軸受装置がサイドフレーム側に備えられ、閉鎖状態でサイドフレーム部分の軸受装置とブランケット胴の1端とが係合するようになっており、軸受装置の設置位置が異なる点。
2.相違点2
管状のブランケットが、本件発明1では、弾性的に撓む、容積非圧縮性の材料から成る円筒形の外層と、固い、非膨張性の材料から成る内層上に取付けられた、容積圧縮性の材料から成る中間層少なくとも1つとを有するように、少くとも部分的に容積圧縮性の材料から形成されているのに対して、引用発明1では、既に述べたように、管状のブランケット(転写胴スリーブ)は、固い、非膨張性の材料から成る内層(ベース金属スリーブ)を有しているが、その外表面に設けたゴム層が弾性的に撓む材料から成るものの、該ゴム層が本件発明1における外層と中間層との両者の構成を併せ持っているのか否か定かでないため、ブランケット全体の層構成が不明である点。
3.相違点3
版板が、本件発明1では、始端部と終端部とを有する版板であるのに対して、引用発明1では、印刷版スリーブであり、版板がスリーブとして形成された点。
(4)相違点についての検討
1.相違点1について
刊行物2には、上記(ウ)(エ)(キ)の記載によれば、オフセット印刷機において、ブランケット胴(ゴムブランケットシリンダ)の1端に軸受装置を備えており、サイドフレーム(側壁)内に支承されたサイドフレーム部分(移動可能な部材)がその閉鎖状態で軸受装置と係合する構成が記載されており、該構成を、引用発明1のオフセット印刷機におけるブランケット胴(転写胴)の1端側の支持構造に適用する事に格別の困難性を認めることができないから、本件発明1の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到しえたものといわざるをえない。
2.相違点2について
刊行物3には、上記(ア)〜(ク)の記載によれば、弾性的に撓む容積非圧縮性の材料から成る外層(表面ゴム層)と補強層との間に、容積圧縮性の材料から成る中間層(圧縮性層)少なくとも1つとを有するように少なくとも部分的に容積圧縮性の材料から形成されているブランケットの構成が記載されており、このブランケットは、外層の動きを中間層により捉えてブランケットに対する圧力下における周長変化による版胴,ゴム胴,圧胴の周速の不一致を防止し画像にズレを生じさせないようにしたものであり、本件発明1におけるブランケットと同等の機能を有するものである。
ところで、刊行物3には、ブランケットの層構成のみが記載され、スリーブとして形成した構成のものであるのか否か定かでないが、ブランケットの構成をスリーブ状とすることや有端状とすることは従来周知(例えば、本件特許明細書中の従来例、刊行物1〜3に記載)であり、しかも、引用発明1において、上部ゴム層と内層(ベース金属スリーブ)との間には、上部ゴム層が通常のブランケット機能を担保し内層が固着機能を担保するとしか把握できないものであって、ブランケット胴(転写胴)の固着機能の点で両者が一体不可分でなければならないような特段の関係は認められないから、特に、有端状と限定されていない刊行物3に記載されたブランケットの層構成をスリーブ状のブランケットの層構成に採用することに格別の阻害要因は存在しないものと考えられ、引用発明1のオフセット印刷機において、ブランケットに対する圧力下における周長変化等を防止するために、刊行物3に記載されたブランケットの上部ゴム層の構成を採用して本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到しえたものといわざるをえない。
尚、特許権者は、平成12年4月6日付け上申書において、引用発明1のブランケット(転写胴スリーブ)の内層(ベース金属スリーブ)はブランケット胴(転写胴)への装着の際に他の層と一緒に伸長せしめられるから、刊行物3に記載されたブランケットの補強層とは構成及び作用において本質的に異なるものであり、刊行物3に記載されたブランケットの上部ゴム層の構成を引用発明1のブランケットの上部ゴム層の構成に適用することは不可能である旨主張しているが、引用発明1における上部ゴム層と内層とは固着機能上一体不可分のものでないことは上記したとおりであり、しかも、刊行物3に記載されたブランケットの層構成がスリーブ状のものを排除するとの格別の理由もないから、該適用不可能である旨の主張は根拠のないものであり採用できない。ところで、上記上申書において、上記主張と関連して本件発明1の特徴とする構成による機能として述べられている「ブランケットの外層、中間層及び内層が実際に一体となって、ブランケット胴と関連して密着固定性の向上に格別な機能を奏している」(3頁下から2行〜4頁1行)については、本件特許明細書の記載から何ら把握できないものである。
3.相違点3について
始端部と終端部とを有する版板は従来周知(例えば、刊行物1の上記(ア)(イ)に記載)であって普通に用いられているものである。
ところで、刊行物3において、版胴に、始端部と終端部とを有する版板(刷版)を装着するのか否かは定かでないが、該ブランケットは、圧胴との間での圧力のみならず、版胴との間での圧力による周長変化と周速不一致とを防止するものであるから、版胴側に何らかの凹凸部や振動発生部が形成されるものとしての本件発明1のような上記従来周知の構成を有する版板を排除する格別の理由は存在しないものと認められる。
従って、本件発明1の上記相違点3に係る構成とすることは、周知技術から当業者であれば容易に想到しえたものといわざるをえない。
尚、本件特許についての出願当初の明細書又は図面には、始端部と終端部とを有する版板の構成は記載されておらず、該構成により本件発明1が各刊行物に記載された発明に比して格別のものであると主張することは妥当ではない。
(5)結論
以上のことから、本件発明1は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔3〕本件発明2について
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1の「印刷版スリーブ1」と「転写胴スリーブ1a」との構成、並びに、「印刷版スリーブ1」と「版胴5」と関連構成及び「転写胴スリーブ1a」と「転写胴5」との関連構成については、上記、〔2〕(1)「刊行物1に記載された発明」の項に記載されたとおりであるから、刊行物1には次の発明が開示されているものと認められる。
「版胴5に設けられた印刷版スリーブ1および転写胴5上に取付けられた転写胴スリーブ1aとを用いて巻取紙として形成された印刷担体を印刷するためのオフセット印刷機であって、着肉装置と湿らし装置とを備えた形式のものにおいて、転写胴スリーブ1aが、その内面に媒質の圧力を加えて膨張させることでこれと境界を成す転写胴5の支持面との間にエアクッションが設けられ圧力を緩和することでこれを転写胴5上に圧接固定することができるものであって、金属管であるベース金属スリーブ2と、ベース金属スリーブ2の表面に継目なしに被覆されたゴム層11から管状の輪郭に構成されており、かつ転写胴5の表面から他端31を経て引抜きこの他端31を経て転写胴5の上に差込み可能に転写胴5の外表面上に支承されていて、かつ管状の転写胴スリーブ1aが、ゴム層11と、ニッケル又は鋼から成る金属管であるベース金属スリーブ2とから形成されていることを特徴とする印刷機。」(以下、引用発明2という)
(2)本件発明2と引用発明2との対比
本件発明2は、本件発明1において、ブランケット胴をサイドフレームで支持するための構成を外すとともに管状のブランケットについてさらに限定を加えたものであるが、本件発明1とほぼ同様の構成を有するものである。
そして、本件発明2と引用発明2との部位・部材名の対応関係も本件発明1と引用発明1との対応関係と同様であるから、両者は、
「版胴(22,24)に設けられた版板およびブランケット胴(14,16)上に取付けられたブランケット(18,20)とを用いてシートまたはウェブ材料(12)を印刷するためのオフセット印刷機であって、インキ装置と湿し装置とを備えた形式のものにおいて、ブランケット(18,20)が、ギャップ部のない連続的な外表面と、ギャップ部のない連続的な内表面とを有する管の形状を有しており、かつ取外し可能にブランケット胴(14,16)の外表面上に支承されており、かつ管状のブランケット(18,20)が弾性的に撓む材料から成る円筒形の層と、固い、非膨張性の材料から成る内層とから形成されていることを特徴とする印刷機。」の点で一致し、次の点で相違する。(尚、相違点の摘記及び相違点についての検討に際しては記載が煩雑になるため符号を省略し、また、( )内には各刊行物における部位・部材名を示す。)
(3)相違点及び相違点についての検討
1.相違点1について
管状のブランケットが、本件発明2では、弾性的に撓む、容積非圧縮性の材料から成る円筒形の外層と、固い、非膨張性の材料から成る内層上に取付けられた、容積圧縮性の材料から成る中間層少なくとも1つとを有するように、少くとも部分的に容積圧縮性の材料から形成されており、かつ少なくとも外層とこれに続いた容積圧縮性の中間層との間に1つの非膨張性の材料から成る層が設けられているのに対して、引用発明2では、上記本件発明1と引用発明1との相違点2と同様、内層(ベース金属スリーブ)の外表面に設けたゴムから成る円筒形のゴム層が弾性的に撓む材料であるゴムから成るものの、該ゴム層が本件発明2における外層と中間層との両者の構成を併せ持っているのか否か定かでなく、さらに、外層と中間層との間に1つの非膨張性の材料から成る層が設けられているのか否かも定かでないから、ブランケット全体の層構成が不明である点で相違する。
該相違点について検討すると、上記本件発明1と引用発明1との相違点2についての項で既に大概のところは検討済みであるが、刊行物3のブランケットには、上記(ウ)(エ)(カ)〜(ク)の記載によれば、少なくとも弾性的に撓む容積非圧縮性の材料から成る外層(表面ゴム層)とこれに続いた容積圧縮性の材料から成る中間層(圧縮性層)との間に少なくとも1つの非膨張性(非伸長性繊維、尚、本件特許明細書中では「非伸縮性」と記載)の材料で形成した織布から成る補強層を更に設けているから、引用発明2のブランケットに刊行物3に記載されたブランケットの上部ゴム層の構成を適用して、本件発明2の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到しえたものといわざるをえない。
2.相違点2について
上記本件発明1と引用発明1との相違点3と同様であり、これについての検討も上記本件発明1と刊行物1に記載された発明との相違点3について検討したとおりである。
(4)結論
以上のことから、本件発明2は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔4〕本件発明3について
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1の「印刷版スリーブ1」と「転写胴スリーブ1a」との構成、並びに、「印刷版スリーブ1」と「版胴5」と関連構成及び「転写胴スリーブ1a」と「転写胴5」との関連構成については、上記、〔2〕(1)「刊行物1に記載された発明」の項に記載されたとおりであり、また、上記(エ))の記載によれば、「転写胴スリーブ1a」も手で取扱うことができるものと思料されるから、刊行物1には次の発明が開示されているものと認められる。
「版胴5に設けられた印刷版スリーブ1および転写胴5上に取付けられた転写胴スリーブ1aとを用いて巻取紙として形成された印刷担体を印刷するためのオフセット印刷機であって、着肉装置と湿らし装置とを備えた形式のものにおいて、転写胴スリーブ1aが、その内面に媒質の圧力を加えて膨張させることでこれと境界を成す転写胴5の支持面との間にエアクッションが設けられ圧力を緩和することでこれを転写胴5上に圧接固定することができるものであって、金属管であるベース金属スリーブ2と、ベース金属スリーブ2の表面に継目なしに被覆されたゴム層11から管状の輪郭に構成されており、かつ転写胴5の表面から他端31を経て引抜きこの他端31を経て転写胴5の上に差込み可能に転写胴5の外表面上に支承されていて、かつ管状の転写胴スリーブ1aが、ゴム層11と、ニッケル又は鋼から成る金属管であるベース金属スリーブ2とから形成されており、かつ転写胴スリーブ1aを他端31を経て手動で転写胴5の表面から取外すことができるように、転写胴スリーブ1aの内面と転写胴5の支持面との間における転写胴スリーブ1a内表面への圧力緩和による圧接固定を解除するために、転写胴5上に存在する転写胴スリーブ1aの内面に媒質の圧力を加えて膨張させてエアクッションが形成されるようにするための手段が設けられていることを特徴とする印刷機。」(以下、引用発明3という)
(2)本件発明3と引用発明3との対比
本件発明3は、本件発明1において、ブランケット胴をサイドフレームで支持するための構成を外すとともに管状のブランケットとブランケット胴との締り嵌め解除手段を加えてさらに限定したものであるが、本件発明1とほぼ同様の構成を有するものである。
そして、本件発明3と引用発明3との部位・部材名の対応関係も本件発明1と引用発明1との対応関係と同様であり、さらに、引用発明3の「転写胴スリーブ1aの内面と転写胴5の支持面との間における転写胴スリーブ1a内表面への圧力緩和による圧接固定」が本件発明3の「ブランケット(18,20)の内表面(86)とブランケット胴(14,16)の外表面(100)との間の締り嵌め」に相当し、また、引用発明3の「転写胴5上に存在する転写胴スリーブ1aの内面に媒質の圧力を加えて膨張させてエアクッションが形成されるようにするための手段」が本件発明3の「ブランケット胴(14,16)上に存在する管状のブランケット(18,20)の半径方向の膨張を実施するための手段」に相当することが明らかであるから、両者は、
「版胴(22,24)に設けられた版板およびブランケット胴(14,16)上に取付けられたブランケット(18,20)とを用いてシートまたはウェブ材料(12)を印刷するためのオフセット印刷機であって、インキ装置と湿し装置とを備えた形式のものにおいて、ブランケット(18,20)が、ギャップ部のない連続的な外表面と、ギャップ部のない連続的な内表面とを有する管の形状を有しており、かつ取外し可能にブランケット胴(14,16)の外表面上に支承されており、かつ管状のブランケット(18,20)が弾性的に撓む材料から成る円筒形の層と、固い、非伸長性の材料から成る内層とから形成されており、かつブランケット(18,20)を軸方向に手動でブランケット胴(14,16)から取外すことができるように、ブランケット(18,20)の内表面(86)とブランケット胴(14,16)の外表面(100)との間の締り嵌めを解除するためにブランケット胴(14,16)上に存在する管状のブランケット(18,20)の半径方向の膨張を実施するための手段が設けられていることを特徴とする印刷機。」の点で一致し、次の点で相違する。
(3)相違点及び相違点についての検討
1.相違点1について
上記本件発明1と引用発明1との相違点2と同様であり、これについての検討も上記本件発明1と引用発明1との相違点2について検討したとおりである。
2.相違点2について
上記本件発明1と引用発明1との相違点3と同様であり、これについての検討も上記本件発明1と引用発明1との相違点3について検討したとおりである。
(4)結論
以上のことから、本件発明3は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔5〕本件発明4について
本件発明4は本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、ブランケットの外層が版胴によって変形せしめられる前の第1の容積と変形せしめられた後の第2の容積とが等しく、同じく、変形せしめられる前の中間層の第3の容積と変形せしめられた後の中間層の第4の容積とでは第4の容積が第3の容積よりも小さい旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、上記(ウ)(エ)(カ)〜(ク)の記載によれば、外層(表面ゴム層)が弾性的に撓む容積非圧縮性の材料から成ると共に中間層(圧縮性層)が容積圧縮性の材料から成り、外層が版胴の円周に添うように変形して外層の動きを中間層により捉えてブランケットに対する圧力下における周長変化と周速不一致とを防止するように外層及び中間層の容積は上記限定事項と同様に変化するものであり、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明4は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔6〕本件発明5について
本件発明5は本件発明4を引用するものであり、本件発明4に、中間層の圧縮性材料に空所を有し、該空所は、ブランケットの外層が変形していない状態にある間は第1のサイズであり、変形せしめられた時には空所のうちの少なくとも幾つかは第1のサイズよりも小さい第2のサイズになる旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、上記(オ)の記載によれば、中間層(圧縮性層)の内部に気泡が形成されており、しかも、上記〔5〕「本件発明4について」の項で検討したように、中間層(圧縮性層)の容積がブランケットの外層(表面ゴム層)が変形せしめられる前に比べて変形せしめられた後の方が小さいものであり、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明5は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔7〕本件発明6について
本件発明6は本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、印刷機のサイドフレームには、ブランケット胴と軸方向に整合している支持位置と該サイドフレーム内に開口部を設けるためにブランケット胴から離れている開放位置との間で運動可能なサイドフレーム部分を有し、ブランケットが該サイドフレーム部分が開放位置にある時開口部を通過し、かつブランケット胴と接触することができるようになっている旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物1に記載された引用発明1〜3は、ブランケット(転写胴スリーブ)が軸方向に取外し可能にブランケット胴(転写胴)外表面上に支承され、サイドフレーム部分(軸受)によって開放される開口部(凹部)から交換可能であり、また、刊行物2に記載された発明は、サイドフレーム(側壁)に設けられたサイドフレーム部分(移動可能な部材)が開放状態で開口部(開口)が形成され該開口部を通してブランケット胴(シリンダ)外表面上のブランケット(スリーブ)を交換できるものであり、それぞれ、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明6は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔8〕本件発明7について
本件発明7は本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、ブランケット胴の円筒形剛性外表面の第1の直径よりも、ブランケットの円筒形剛性内表面の第2の直径を小さくしてブランケット胴とブランケットとの間に締り嵌めを形成し、ブランケット胴に設けた通路手段からブランケットの内表面に流体を導いてブランケットを膨脹せしめかつ第2の直径を増加せしめる旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物1に記載された引用発明1〜3は、例えば、〔4〕「本件発明3について」の項、(2)で述べたように、ブランケット(転写胴スリーブ)の内面に媒質の圧力を加えて膨張させて半径方向の膨張を実施して締り嵌めを解除する手段を設けたものであり、また、刊行物2に記載された発明は、ブランケット胴(シリンダ)の周上の選択された部分に形成した穴から圧縮空気を吹き出してブランケット(スリーブ)を拡張させ、ブランケット胴とブランケットとの間に取付用クッションを形成し、ブランケットを軸方向にブランケット胴から取外すことができるものであり、それぞれ、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明7は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔9〕本件発明8について
本件発明8は本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、ブランケットの外層が、ニップ部において版胴上のインキ転写面と転動係合状に配置されているギャップ部のない連続的な外表面を有して、少くとも中間層の部分領域を第1の状態から第2の状態に圧縮せしめるように変形することができ、また、中間層は多数の空所を包含し、該空所は中間層が第1の状態にある時は相対的に大きく外層の変形によって第2の状態に圧縮された中間層の部分領域内では相対的に小さくなっている旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、上記(ウ)〜(ク)の記載によれば、外層(表面ゴム層)が、ニップ部において版胴上のインキ転写面と転動係合状に配置されている外表面を有し、少くとも中間層(圧縮性層)の部分領域を第1の状態から第2の状態に圧縮せしめるように変形することができるものであり、また、中間層は多数の空所を包含し、該空所は中間層が第1の状態にある時は相対的に大きく外層の変形によって第2の状態に圧縮された中間層の部分領域内では相対的に小さくなるものであり、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明8は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔10〕本件発明9について
本件発明9は本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、外層が堅固な弾発的に変形可能な非圧縮性の高分子材料から形成され、中間層が圧縮性でかつ空所を包含している弾発的に変形可能な高分子材料の発泡体から形成されている旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、上記(オ)の記載によれば、外層(表面ゴム層)が弾性的に撓む容積非圧縮性の材料であるクロロプレンゴム、ニトリルゴム、ポリウレタン、アクリルゴム等の耐油性ゴムから形成され、中間層(圧縮性層)が容積圧縮性の材料であり内部に気泡を有するゴム組成物から形成されており、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明9は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔11〕本件発明10について
本件発明10は、本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、管状の輪郭を有するブランケットの剛性の内層は中空状のスリーブを包含し、該スリーブの内径がブランケット胴の外径よりも小さくなっていてブランケット胴と締り嵌めを行う旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物1に記載された引用発明1〜3のブランケット(転写胴スリーブ)は〔8〕「本件発明7について」の項で述べたように、ブランケット胴(転写胴)との間で締り嵌めを行うものであり、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明10は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔12〕本件発明11について
本件発明11は、本件発明1〜3の何れかを引用するものであり、本件発明1〜3に、管状のブランケットが各層が異なる材料から成っていてもよい層状構造を有している旨の限定を加えたものである。
しかし、材料を目的にあわせて選択して適用することは産業界の常識であり、また、各刊行物には層の材料を種々のものにした例も示されているから、上記限定事項の如くすることは、当業者が必要に応じて適宜取捨選択して採用する程度の設計事項にすぎないものと認められるから、本件発明11は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔13〕本件発明12について
本件発明12は、本件発明11を引用するものであり、本件発明11に、管状のブランケットの少なくとも1つの層が柔軟に変形可能な織物またはメッシュから形成されている旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、上記(ア)(ウ)(エ)の記載によれば、非伸長性繊維で形成した織布や不織布等の柔軟に変形可能な織物またはメッシュから成る補強層を備えており、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明12は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔14〕本件発明13について
本件発明13は、本件発明11を引用するものであり、本件発明11に、管状のブランケットの少なくとも1つの層が非膨張性の材料から形成されている旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、少なくとも1つの層が非膨張性の材料から形成されており、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明13は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔15〕本件発明14について
本件発明14は、本件発明11を引用するものであり、本件発明11に、管状のブランケットが1つよりも多い数の圧縮性の層を有し、かつ該圧縮性の層が異なる剛性を有している旨の限定を加えたものである。
しかし、「1つよりも多い数」が「2つ」以上であるのか否か必ずしも定かでないが、刊行物3のブランケットは、中間層(圧縮性層)を少なくとも1つ有しているものであり、中間層の数を上記限定事項の如くすることは、当業者が必要に応じて適宜採用する程度の設計事項にすぎないものと認められるから、本件発明14は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

〔16〕本件発明16について
本件発明16は、本件発明11を引用するものであり、本件発明11に、圧縮性の中間層が圧力の適用で縮小し得る空所を有している旨の限定を加えたものである。
しかし、刊行物3のブランケットは、容積圧縮性の材料であるゴム組成物から成り内部に気泡を形成した中間層(圧縮性層)を備えており、上記限定事項と同様の構成を有しているものと認められるから、本件発明16は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといわざるをえない。

【4】特許法第36条要件違反
当審が平成9年12月10日付け取消理由通知書で通知した取消理由2.(異議申立人・高島雄二の異議理由も同様)の内容は、本件発明15はその請求項の記載に不備があるから特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものであるというものである。
しかし、請求項15の「少なくとも1つの圧縮性の層を有しており、かつこの層が自体に異なる剛性を有している」との記載によれば、特許明細書の7頁13欄41〜45行に記載されているように、「ブランケットの少なくとも1つの圧縮性の層」が、それ自体に「異なる剛性を有し」ている部分を有するものであると明確に把握できるから、この点において、明細書又は図面の記載に不備があるとはいえない。
従って、本件発明15は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないものとはいえない。


[むすび]
以上のとおりであるから、本件発明1〜14及び16は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜14及び16についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
また、本件発明15については、他に取消しの理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-11-08 
出願番号 特願平2-266584
審決分類 P 1 651・ 537- ZC (B41F)
P 1 651・ 121- ZC (B41F)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 森 竜介國田 正久  
特許庁審判長 石川 昇治
特許庁審判官 伊波 猛
砂川 克
登録日 1996-10-03 
登録番号 特許第2569213号(P2569213)
権利者 ハイデルベルガ―・ドルツクマシ―ネン・アクチエンゲゼルシヤフト
発明の名称 平版印刷機  
代理人 山崎 利臣  
代理人 矢野 敏雄  

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