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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C23C 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 C23C 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 C23C 審判 全部申し立て 2項進歩性 C23C |
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管理番号 | 1093107 |
異議申立番号 | 異議2002-70136 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-05-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-01-17 |
確定日 | 2003-12-06 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3190188号「高速プレス成形性に優れた亜鉛含有金属めっき鋼板複合体」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3190188号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯の概要 本件特許第3190188号(以下、「本件特許」という。)は、平成5年11月11日に特許出願がなされ、平成13年5月18日に請求項1〜3に係る発明につき特許権の設定の登録がなされ、その後、平成14年1月17日に日本ペイント株式会社より、同年1月23日に川崎製鉄株式会社より、それぞれその請求項1〜3に係る特許について特許異議の申立がなされ、平成14年10月11日付けで特許取消理由の通知がなされ、平成14年12月24日付けで訂正請求書が提出されたものである。 II.訂正の適否について 上記訂正請求書による訂正は、以下のとおりである。 (II-1)訂正の内容 訂正事項a(特許請求の範囲の訂正) 特許請求の範囲を、次のとおりに訂正する。 「【請求項1】亜鉛含有金属めっき鋼板からなる基体と、その表面に形成され、亜鉛とりんとを重量比(亜鉛/りん)2.504:1〜3.166:1で含み、且つ、ニッケル、及びマンガンの両方を3.8〜5.9重量%の含有率で含有するりん酸亜鉛複合皮膜とを有し、前記りん酸亜鉛複合皮膜の付着量が0.3〜3.0g/m2であり、前記りん酸塩複合皮膜上に潤滑油層が形成されていて、 前記潤滑油層が、鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれた1種以上を含み、その塗布量が0.2〜2g/m2である、 ことを特徴とする高速プレス性に優れた亜鉛含有めっき鋼板複合体。」 訂正事項b(特許請求の範囲外の訂正) (b-1)段落【0011】の「本発明は亜鉛系めっき鋼板の表面に・・・・特徴とするものである。」を、「本発明の高速プレス性に優れた亜鉛含有めっき鋼板複合体は、亜鉛含有金属めっき鋼板からなる基体と、その表面に形成され、亜鉛とりんとを重量比(亜鉛/りん)2.504:1〜3.166:1で含み、且つ、ニッケル、及びマンガンの両方を3.8〜5.9重量%の含有率で含有するりん酸亜鉛複合皮膜とを有し、前記りん酸亜鉛複合皮膜の付着量が0.3〜3.0g/m2であり、前記りん酸塩複合皮膜上に潤滑油層が形成されていて、 前記潤滑油層が、鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれた1種以上を含み、その塗布量が0.2〜2g/m2である、 ことを特徴とするものである。」と訂正する。 (b-2)段落【0014】を削除する。 (b-3)段落【0015】を削除する。 (b-4)段落【0017】中の「1.0〜9.0重量%」を、「3.8〜5.9重量%」と訂正する。 (b-5)段落【0019】中の「1.0〜9.0重量%」を、「3.8〜5.9重量%」と訂正する。 (b-6)段落【0021】中の「塗布形成することが好ましい。・・・・選ばれることが好ましい。」を、「塗布形成する。塗布される潤滑油は、比較的低融点の鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれる。」と訂正する。 (b-7)段落【0064】中の「実施例5」を「実施例2」と訂正する。 (b-8)段落【0070】中の「実施例11」を「実施例4」と訂正する。 (II-2)訂正の目的、範囲、及び実質上の拡張又は変更について 訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、および、訂正事項bは明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、そしてそれらの訂正は、願書に添付した明細書の記載からみて、当該明細書に記載した事項の範囲内の訂正と認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものとは認められない。 以上のとおりであるから、本訂正は、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、その施行前にした特許出願の明細書の訂正についてはなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び同条第2項の規定に適合するので、本訂正を認める。 III.取消理由通知について (III-1)取消理由通知 上記通知した取消理由の概要は、特許権設定登録時の請求項1〜3について、日本ペイント株式会社及び川崎製鉄株式会社による特許異議申立に基き、「Proceedings of the 6th Automotive Corrosion and Prevention Conference P-268」1993年10月、Society of Automotive Engineers,Inc.、p.297〜303(日本ペイント株式会社による特許異議申立の甲第1号証、川崎製鉄株式会社による特許異議申立の甲第1号証:刊行物1-1)、「プレス成形難易ハンドブック」昭和62年3月20日、日刊工業新聞社、p.236〜237(日本ペイント株式会社による特許異議申立の甲第2号証、川崎製鉄株式会社による特許異議申立の甲第2号証:刊行物1-2)、「新しい工業材料の科学 B-14 潤滑と潤滑剤」昭和45年4月20日、金原出版株式会社、p.32〜33、38〜41(日本ペイント株式会社による特許異議申立の甲第3号証:刊行物1-3、2-3)、「新版鉄鋼技術講座第4巻鋼材加工法」昭和53年2月10日、(株)地人書館、p.55〜59(川崎製鉄株式会社による特許異議申立の甲第4号証:刊行物1-4、2-2)、及び、特開平3-53079号公報(川崎製鉄株式会社による特許異議申立の甲第3号証:刊行物2-1)を引用して、刊行物1-2、1-4、2-2〜2-3の記載を参酌すれば、本件の請求項1〜3に係る発明は、刊行物1-1又は2-1に記載された発明又はそれら刊行物により公知となった発明であるか、または刊行物1-1及び1-3に記載された発明又はそれら刊行物により公知となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるとするものである。 (III-2)対比・判断 訂正後の請求項1に係る発明(以下「訂正発明」という。)と、刊行物1-1〜2-3に記載された発明とを対比すると、当該刊行物1-1〜2-3のいずれにも、亜鉛含有めっき鋼板複合体において、りん酸亜鉛複合皮膜が、「ニッケル、及びマンガンの両方を3.8〜5.9重量%の含有率で含有する」とするとともに、前記「りん酸塩複合皮膜上に潤滑油層が形成されていて、前記潤滑油層が、鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれた1種以上を含み、その塗布量が0.2〜2g/m2である」とした訂正発明の構成要件を開示する記載はなく、そして訂正発明は、当該構成要件を含む前記認定の構成を具備することにより、塗膜密着性、塗膜鮮映性、塗装後耐食性等の塗膜品質を損なうことなく、高速プレス成形に対応しうる成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板が得られる(段落【0009】、【0010】及び【0091】参照。)との、明細書に記載された効果を奏したものと認めることができる。 したがって、訂正発明は、刊行物1-1〜2-3に記載された発明又はそれら刊行物により公知となった発明とも、また、それら発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明とも、いうことはできない。 IV.川崎製鉄株式会社による特許異議申立てについて 特許異議申立人:川崎製鉄株式会社が、特許異議申立理由として、特許法第17条の2第3項、及び同法第36条4項若しくは第5項及び第6項(特許異議申立書の「4項または6項」は誤記と認める。)の規定に関して主張する点につき、以下のとおり判断する。 1.特許法第17条の2第3項の規定に係る主張について 特許異議申立人は、本件に係る審査手続き中の手続補正につき、特許法17条の2第3項の規定に基いて本件特許を取り消すべきとの主張をしている。 しかし、当該主張の理由は、平成7年政令第205号第4条第1項に規定する拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して特許されたとする理由には該当せず、したがって、特許異議申立人の上記主張には理由がない。 2.特許法第36条4項若しくは第5項及び第6項に係る主張について 特許異議申立人は、本件出願に係る審査手続き中の意見書における特許権者(出願人)の主張に基いて、本件特許明細書の記載不備を主張している。 しかし、本件明細書の記載を、上記意見書における主張に基くべきものとする特段の理由はなく、したがって、当該意見書における特許権者(出願人)の主張の故に本件明細書の記載が不備であるとすることはできない。 V.むすび 以上のとおり、訂正後の請求項1に係る特許は、上記通知した取消理由によっては、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとすることはできない。 また、他に、日本ペイント株式会社、及び川崎製鉄株式会社の各特許異議申立人の提示した証拠及び主張を検討しても、訂正後の請求項1に係る特許について、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとすることはできない。 したがって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基く、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 高速プレス成形性に優れた亜鉛含有金属めっき鋼板複合体 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 亜鉛含有金属めっき鋼板からなる基体と、その表面に形成され、亜鉛とりんとを重量比(亜鉛/りん)2.504:1〜3.166:1で含み、且つ、ニッケル、及びマンガンの両方を3.8〜5.9重量%の含有率で含有するりん酸亜鉛複合皮膜とを有し、前記りん酸亜鉛複合皮膜の付着量が0.3〜3.0g/m2であり、前記りん酸塩複合皮膜上に潤滑油層が形成されていて、 前記潤滑油層が、鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれた1種以上を含み、その塗布量が0.2〜2g/m2である、 ことを特徴とする高速プレス性に優れた亜鉛含有めっき鋼板複合体。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、自動車車体製造時における高速プレス成形性に優れたりん酸亜鉛複合皮膜を有する亜鉛含有金属めっき鋼板複合体に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来より鋼板をプレス成形する際にはプレス油、またはワックス等を含有した比較的粘度の高い潤滑油が広く一般的に使用されている。又、防錆性を高めるために鋼板表面に亜鉛含有金属でめっきを施した鋼板(以下、亜鉛系めっき鋼板と称する)をプレス等により成形したのち使用される場合も増加しつつある。 【0003】 ところが亜鉛系めっき鋼板はめっき材である亜鉛が比較的軟らかく、且つ融点も低いため、プレス成形の際に金型に亜鉛が凝着し易い性質を有しており、通常のプレス油等による潤滑では鋼板上のめっきと金型のカジリを防止することが困難である。 【0004】 又、鋼材の伸線、伸管、鍛造等の塑性加工用の下地処理としては、単価が安く且つ安定した性能を有するりん酸亜鉛系の皮膜が使用されているが、処理時間が5〜10分もかかるため、インライン等に用いる場合に生産性は悪くなり、工業的でないといった欠点を有している。 【0005】 近年、自動車車体製造工程においては、生産性を向上し製造コストを低減するため、従来になく高速でプレス成形加工が行なわれている。又、複雑な形状を一体プレスで成形することにより、組み立て工程を簡略化し製造コストの低減を計るといったニーズが強まり、ますますプレス油、潤滑油等の従来の技術による潤滑では対応が困難となっている。 【0006】 一方、自動車車体の防錆力の向上を目的として、亜鉛系めっき鋼板の自動車車体に対する使用比率はますます増加する傾向にあり、高速プレス成形性の改良が重要となっている。そこで、その改善方法として、特開昭62-192597号公報には電気めっき法により亜鉛と鉄の合金めっきを亜鉛系めっき鋼板表面に形成する方法が開示されているが、この方法では電解のための設備費、製造時の電気コスト等が高くなる等の欠点がある。 【0007】 特開昭63-162886号公報には亜鉛系めっき鋼板の表面を無機皮膜と潤滑性を付与した有機皮膜との複合皮膜で被覆し、めっき表面と金型との直接接触の機会を減少することにより亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を向上させることが開示されている。又、特開平1-201488号公報には有機複合シリケート皮膜で被覆しプレス成形性を向上する方法が開示されている。 【0008】 しかし、この両者はプレス成形の程度により有機複合皮膜の膜厚に差異が生ずるため、電着塗装時の塗膜厚がバラツキ易くなり自動車車体に要求される塗膜鮮映性が損なわれるので実用化は困難である。従って、現状では、塗膜密着性、塗膜鮮映性、塗装後耐食性、高速プレス成形性が優れ且つ低コストの亜鉛含有金属めっき鋼板を提供する技術はないのである。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、特に自動車車体に使用される亜鉛系めっき鋼板に要求される塗膜密着性、塗膜鮮映性、塗装後耐食性等の塗膜品質を損なうことなく、特に高速プレス成形に対応しうる成形性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することを目的とするものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明者らはこれらの諸問題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた結果、亜鉛含有金属めっき鋼板の表面に、亜鉛とりんとが特定の重量比で含まれ、他の2価以上の金属としてニッケル、及びマンガンの両方を特定比率で含有されているりん酸亜鉛複合皮膜を特定付着量で形成し、且つ該皮膜上に潤滑油の層を塗布することにより、亜鉛含有金属めっき鋼板に優れた高速プレス成形性能が付与されることを見いだし本発明を完成するに至った。 【0011】 すなわち、本発明の高速プレス性に優れた亜鉛含有めっき鋼板複合体は、亜鉛含有金属めっき鋼板からなる基体と、その表面に形成され、亜鉛とりんとを重量比(亜鉛/りん)2.504:1〜3.166:1で含み、且つ、ニッケル、及びマンガンの両方を3.8〜5.9重量%の含有率で含有するりん酸亜鉛複合皮膜とを有し、前記りん酸亜鉛複合皮膜の付着量が0.3〜3.0g/m2であり、前記りん酸塩複合皮膜上に潤滑油層が形成されていて、 前記潤滑油層が、鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれた1種以上を含み、その塗布量が0.2〜2g/m2である、 ことを特徴とするものである。 【0012】 【0013】 【0014】 【0015】 【0016】 【作用】 本発明において、基体として用いられる亜鉛含有金属めっき鋼板は、亜鉛、又は亜鉛と他の金属、例えば、ニッケル、鉄、アルミニウム、マンガン、クロム、鉛、アンチモン等の少なくとも1種との合金、および不可避不純物によりめっきされた鋼板から選ばれる。めっき方法にも格別の制限はなく、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっき等のいづれの方法でもよい。 【0017】 本発明におけるりん酸亜鉛複合皮膜について詳細に説明すると、亜鉛とりんとは皮膜の主構成成分であって、その重量比(亜鉛/りん)が2.504:1〜3.166:1であり、且つこの皮膜中にニッケル、及びマンガンの両方が3.8〜5.9重量%の含有率で含有されており、その付着量は0.3〜3.0g/m2である。また、この皮膜上に潤滑油の層が形成されていてもよい。 【0018】 上記複合皮膜中において、亜鉛の一部が他の二価以上の金属と置換した形で存在していると考えられる。亜鉛とりんの重量比が3.166:1を超える場合、およびニッケル、及びマンガンの合計含有率が1.0重量%未満の場合には、高速プレス成形を施した際、複合皮膜が破壊し易くなり好ましくない。一方、亜鉛とりんとの重量比が2.504:1未満の場合、およびニッケル、及びマンガンの合計含有率が9.0重量%を超える場合には、高速プレス成形性は良好であるがその向上効果は飽和し、却って製造コストが高くなり経済的に不利である。 【0019】 りん酸亜鉛複合皮膜中の、亜鉛以外の金属は、ニッケル、及びマンガンの両方であって、その合計含有量が3.8〜5.9重量%の範囲にコントロールすると、得られる皮膜の高速プレス性が良好である。 【0020】 前記複合皮膜は0.3〜3.0g/m2の付着量で、前記めっき鋼板上に形成させることが好ましい。その付着量(皮膜重量)が0.3g/m2未満では高速プレス成形性能が不十分になることがあり、またそれが3.0g/m2を超えると、プレス成形時にプレス型内に破壊されたりん酸亜鉛複合皮膜が堆積し、異物として亜鉛含有金属めっき鋼板表面に押し込まれるため、プレス傷が発生し易くなることがある。 【0021】 更に亜鉛含有金属めっき鋼板表面に前記複合皮膜を形成した後、その上に潤滑油の層を、0.2〜2g/m2の塗布量で塗布形成する。塗布される潤滑油は、比較的低融点の鉱油、天然油脂、合成エステル油及びワックスから選ばれる。尚、これらの油には防錆添加剤、極圧添加剤等の各種添加剤を含んだものも使用できる。潤滑油の塗布量が0.2g/m2未満では高速プレス成形性能が不十分になることがあり、2g/m2を超えると高速プレス成形性能が飽和に達し経済的に不利になることがある。 【0022】 本発明における複合皮膜をできるだけ短時間で形成させることが本発明の目的の一つであり製造コストの低減には重要である。具体的には1〜20秒間の短時間で効率的に、基体である亜鉛系めっき鋼板表面に形成させることが好ましい。 【0023】 この様な短時間内に上記複合皮膜を形成する方法には、特に制限はなく、清浄な亜鉛含有金属めっき鋼板を基体として、その表面にりん酸亜鉛、りん酸ニッケル、りん酸マンガン、りん酸カルシウム、りん酸鉄、りん酸マグネシウム、りん酸コバルト等のオルトりん酸塩をプラズマ溶射法、真空蒸着法、スパッタリング法等の被覆方法も利用できるが、設備装置に多大な費用を要するために経済的に不利である。 【0024】 本発明における複合皮膜を簡便な装置で経済的に形成する好ましい方法として、少なくともりん酸イオンを5〜30g/リットル、硝酸イオンを1.0〜15g/リットル、亜鉛イオンを0.1〜8.0g/リットル含有し、他の金属イオンとして、ニッケルイオン、及びマンガンイオンの両方を合計量で0.1〜8g/リットル含有し、且つ、亜鉛と他の全金属イオンの重量比(亜鉛イオン/他の金属イオン)が1:10〜10:1である水溶液を用いた化成処理、または電解処理により形成することができる。 【0025】 前記水溶液に使用できる金属イオンの供給源としては、特に制限するものではないが、具体的に例をあげると、酸化亜鉛、酸化ニッケル、水酸化亜鉛、水酸化ニッケル、水酸化マンガン、炭酸亜鉛、炭酸ニッケル、炭酸マンガン等の酸化物、水酸化物、炭酸塩をりん酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸、珪フッ酸等の無機酸類、ギ酸、酢酸、クエン酸等の有機酸類に溶解して供給する事もできる。又、当該金属の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、フッ化物、珪フッ化物、酢酸塩、ギ酸塩、クエン酸塩等の可溶性塩類を供給源としてもよい。 【0026】 前記水溶液を用いて本発明における亜鉛含有金属めっき鋼板を基体として、その表面にりん酸亜鉛複合皮膜を1秒〜20秒の短時間で形成する方法としては、特に制限するものではないが、具体的に例をあげると、前記水溶液を電解液として亜鉛含有金属めっき鋼板を陰極とし電解反応により処理することも可能であり、また反応促進剤を添加し、電解に因らず、化成反応により処理することも可能である。 【0027】 本発明におけるりん酸亜鉛複合皮膜を上記水溶液を処理液として、陰極電解反応により形成する際に、必要とする電流密度は特に制限するものではなく、電解に使用する処理液中の各成分濃度、成分比率、電解処理温度等により適宜選択できるが、目標とする短時間処理を達成するには0.2〜30A/dm2の範囲が好ましい。電流密度が0.2A/dm2未満では目標とする短時間での複合皮膜形成が困難であり、30A/dm2超では電流効率が低下し経済的に不利である。 【0028】 上記処理液が他に含有することができる成分として特に制限を加えるものではないが、複合皮膜形成反応の経済性を高める方法として、複合皮膜形成反応効率をよくする方法がある。反応効率を高める方法として特に制限するものではないが、具体的に例をあげると、処理液の全酸度/遊離酸度の比率を調節し、処理液のエッチング力をコントロールする方法がある。全酸度/遊離酸度の調節は通常のりん酸、硝酸等の酸、あるいは炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリで調節することにより行なうことができる。 【0029】 電解によらず、上記処理液による化成処理反応で複合皮膜を形成する場合、目標とする短時間処理を達成するための一つの方法として反応促進剤を利用する方法がある。反応促進剤としては通常知られる酸化剤、および/または、エッチング剤が使用できる。特に好ましい反応促進剤として具体的に例をあげると亜硝酸、無機過酸化物、過酸化水素等の酸化剤、フッ化物、錯フッ化物等のエッチング剤を含有することができる。これらの反応促進剤の添加量は特に制限するものではなく、目標とする処理時間に応じて一義的に定めることができる。 【0030】 上記陰極電解処理反応、化成処理反応等の何れの方法においても、上記処理液中のりん酸イオンが5g/リットル未満では、一つの目的である短時間処理が困難となり、30g/リットルを超えると短時間処理には好ましいが無駄な薬剤を消費するので経済的に不利になる。又、硝酸イオンが1.0g/リットル未満では、短時間処理が困難となり、15g/リットルを超えると短時間処理の効果が飽和に達し、薬剤の消費も増大するので経済的ではない。 【0031】 次に処理液中の金属イオンとしては、2価以上のものが用いられ、亜鉛イオンを必須成分とする。他の金属イオンとして、ニッケルイオン、及びマンガンイオンの両方を合計で0.1〜8g/リットル含有し、且つ、亜鉛と他の金属イオンの重量比が1:10〜10:1であることが好ましい。該金属イオンの合計が0.1g/リットル未満では短時間処理が困難となり、8g/リットルを超えると短時間処理には好ましいが無駄な薬剤を消費するので経済的でない。 【0032】 亜鉛と他の金属イオンの重量比が1:10未満では高速プレス成形性能が飽和に達し、製造コストが増加するので経済的に不利である。又、亜鉛と他の金属イオンの重量比が10:1を超えると形成した複合皮膜中に含まれるニッケル、及びマンガンの両方の金属の含有量が1.0重量%未満となり、高速プレス成形により皮膜が破壊し易くなり好ましくない。 【0033】 尚、本発明における目的の一つである短時間処理を達成するため処理方法として特に好ましい方法としては、清浄な亜鉛含有金属めっき鋼板表面を予め活性化処理を施した後、上記処理液を温度30〜70℃に保ち該亜鉛含有金属めっき鋼板表面を処理することが好ましい。水溶液の温度が30℃未満では皮膜形成速度が緩慢になり短時間処理が困難となる。一方、70℃を超える温度としても本発明以上の効果は得られず経済的に無駄である。 【0034】 活性化処理方法については特に制限するものではないが、具体的に例をあげると、(イ)ニッケルイオンまたはコバルトイオンあるいはその両者を含有する処理液で処理して、ニッケルまたはコバルトあるいはその両者を金属換算で0.2〜50mg/m2を付着させる処理、(ロ)チタンコロイド水溶液に接触させる処理、もしくは、(ハ)亜鉛含有金属めっき鋼板表面に形成している金属酸化物の上層をエッチングする処理、などがある。 【0035】 上記活性化処理(イ)について説明すると、この処理(イ)は亜鉛含有金属めっき鋼板からなる基体の表面にニッケルイオンまたはコバルトイオンあるいはその両者を含有する処理液で処理して、ニッケルまたはコバルトあるいはその両者を金属換算で0.2〜50mg/m2を付着させるものである。付着量が金属換算で0.2mg/m2未満では鋼板表面の活性化が不十分であり、短時間処理が困難となる。又、その付着量が50mg/m2を超えても得られる効果は飽和に達し経済的でない。 【0036】 前記(イ)の活性化処理液に使用できるニッケルイオンまたはコバルトイオンの供給源には特に制限はないが、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、珪フッ化ニッケル等の水溶性ニッケル塩類、硫酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、珪フッ化コバルト等の水溶性コバルト塩類を各々単独ないし任意に組み合わせて使用することができる。 【0037】 前記活性化処理(ロ)に使用できるチタンコロイド中のチタンイオンの供給源には特に制限はないが、硫酸チタン、硫酸チタニル、酸化チタン、りん酸チタン等を各々単独ないし任意に組み合わせて使用することが好ましい。 【0038】 前記活性化処理(ハ)に用いられるエッチング剤については特に制限はないが、硫酸、硝酸、りん酸、フッ酸、珪フッ酸、ピロりん酸等の無機酸類、クエン酸、酒石酸、酢酸、蓚酸、グルコン酸等の有機酸類、EDTA、NTA等のキレート性の化合物を使用し、亜鉛めっき鋼板表面に形成している金属酸化物の上層をエッチングすることができる。 【0039】 清浄な亜鉛系めっき鋼板表面に活性化処理(イ)、(ロ)、又は(ハ)を施した後、前記複合皮膜形成用の処理液で亜鉛系めっき鋼板表面を処理することにより、0.3〜3.0g/m2の付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を、より短時間内に効率的に形成することが可能となる。 【0040】 鋼材の表面処理において、りん酸亜鉛化成処理は長い歴史を有する技術であり、塗装のための下地処理、伸線、伸管等の冷間加工用の潤滑処理として、現在も広く使用されている。塗装下地としてのりん酸亜鉛化成皮膜の効果は、皮膜の物理的な形状に由来する、塗膜に対する投錨効果により、塗膜に対する密着力を向上させるものと考えられている。又、冷間加工の潤滑処理前の下地処理としての作用効果は、固体潤滑剤であるカルシウム石鹸の保持力が増加すること、及びりん酸亜鉛化成皮膜自身にも固体潤滑剤としての機能があるためと考えられている。 【0041】 本発明による亜鉛含有金属めっき鋼板に対する作用効果も、基本的には上記冷間加工における作用と同一であると考えられる。現実にりん酸と亜鉛とからなる単純なりん酸亜鉛化成皮膜においても、通常のプレス成形速度を決定する主因であるポンチ速度が数m/分以下の低速度の場合には十分実用に耐え得るものである。 【0042】 一般に生産性を高め製造コストを低減するためにはプレス成形速度を高めることが有効である。ポンチ速度が10m/分を超えるような高速におけるプレス成形を、単純なりん酸亜鉛化成皮膜を施した亜鉛含有金属めっき鋼板に適用した場合には、得られる皮膜が高速プレス成形に追随できず化成皮膜の破壊、めっき剥離等により素材表面のカジリ、押し込み傷の発生、更には材料の破断等が発生するようになる。 【0043】 一般にりん酸亜鉛化成皮膜はZn2(PO4)2・4H2O(ホバイト)の結晶をなし、2個の結晶水の脱水による吸熱反応のピーク温度は120℃付近にあることが知られている。一方、鋼板表面にりん酸亜鉛化成処理を施した場合には、一部にZn2Fe(PO4)24H2O(ホスフォフィライト)の結晶が生成することが知られており、この皮膜結晶中の2個の結晶水の脱水による吸熱反応のピーク温度はホバイトの脱水温度より約40℃高温側にシフトし、160℃付近にあることが知られている。単純なホバイトの結晶からの脱水による吸熱反応のピーク温度よりも、高温側に脱水温度をシフトさせる金属として、上記鉄以外に、カルシウム、ニッケル、マンガン等が知られている。又、この結晶水の脱水により、結晶は体積収縮をおこし結晶自身の物理的な強度が低下する。すなわち、この高温側への脱水温度のシフトにより耐熱性が向上するものと考えられる。 【0044】 本発明の亜鉛含有金属めっき鋼板複合体におけるりん酸亜鉛複合皮膜の作用効果は、上記で説明した様に、皮膜の耐熱性の向上にあると推察できる。つまり、比較的低速なプレス成形においては、プレス時に発生する熱が少ないため材料表面温度は比較的低温であり、このため通常のりん酸亜鉛皮膜でも十分成形可能である。しかし高速プレス時には、発生する多量の熱により材料表面温度は高温に達するため、鉄、コバルト、ニッケル、カルシウム、マグネシウム及びマンガンを含有し、耐熱性に優れた本発明のりん酸亜鉛複合皮膜が有効になるものと推察できる。 【実施例】 下記実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により特に限定されるものではない。 【0045】 1.亜鉛含有金属めっき基体 市販の板厚0.8mmの両面合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA材:目付け量60g/m2)、両面電気亜鉛めっき鋼板(EG材:目付け量20g/m2)を基体として使用した。 【0046】 2.複合皮膜形成処理 2.1.基体表面の清浄化 前記基体を用い、予めりん酸ナトリウム系のアルカリ脱脂剤のファインクリーナーL4480(日本パーカライジング株式会社製)を薬剤濃度18g/リットル、処理温度:45℃、処理時間:120秒、スプレーにて脱脂し、ついで基体表面に残存するアルカリ分を水道水により洗浄し基体表面を清浄化した。 【0047】 2.2.活性化処理 活性化処理I 基体を市販のチタンコロイドであるブレパレンZ(日本パーカライジング株式会社製)を1.5g/リットルの濃度で水に希釈し、処理温度は室温、処理時間、2秒、スプレー処理した。 【0048】 活性化処理II 基体を硫酸ニッケル、20g/リットルの水溶液を用いて、処理温度60℃、処理時間2秒、スプレー処理することにより、表面にニッケルを付着させたのちに水洗した。 【0049】 活性化処理III 基体を硝酸(67.5%)を29.6g/リットルの濃度希釈した水溶液に浸漬して、表面の金属酸化物の上層をエッチングし、水洗した。 【0050】 活性化処理IV 基体を硫酸コバルト、30g/リットルの水溶液を用いて、処理温度60℃、処理時間2秒、スプレー処理することにより、表面にコバルトを付着させたのちに水洗した。 【0051】 2.3.処理液例 処理液例A りん酸をPO4として20g/リットル、硝酸をNO3として3g/リットル、フッ化水素酸をフッ素として1.5g/リットル含有する水溶液に、酸化亜鉛を亜鉛イオン供給源として亜鉛イオンで1.3g/リットル、塩基性炭酸ニッケルをニッケルイオン供給源としてニッケルイオンで0.5g/リットル、炭酸マンガンをマンガンイオン供給源としてマンガンイオンで0.5g/リットルの濃度で添加し、炭酸ナトリウムで全酸度/遊離酸度の比率を21:1に調整し、更に亜硝酸ナトリウムを供給源とし亜硝酸イオンで0.3g/リットル含有する化成処理液を調製した。 【0052】 【0053】 【0054】 【0055】 【0056】 比較液例F りん酸をPO4として20g/リットル、硝酸をNO3として3g/リットル、フッ化水素酸をフッ素として1.5g/リットル含有する水溶液に、酸化亜鉛を亜鉛イオン供給源として亜鉛イオンで1.3g/リットルの濃度で添加し、炭酸ナトリウムで全酸度/遊離酸度の比率を21:1に調整し、更に亜硝酸ナトリウムを供給源とし亜硝酸イオンで0.3g/リットル含有する化成処理液を調整した。 【0057】 比較液例G りん酸をPO4として5g/リットル、硝酸をNO3として2g/リットル含有する水溶液に、酸化亜鉛を亜鉛イオン供給源として亜鉛イオンで1.0g/リットルの濃度で添加し、陰極電解処理液を調整した。 【0058】 比較液例H りん酸をPO4として4g/リットル、硝酸をNO3として16g/リットル、フッ化水素酸をフッ素として1.5g/リットル含有する水溶液に、酸化亜鉛を亜鉛イオン供給源として亜鉛イオンで1.3g/リットル、硝酸ニッケルをニッケルイオン供給源としてニッケルイオンで0.04g/リットルの濃度で添加し、炭酸ナトリウムで全酸度/遊離酸度の比率を21:1に調整し、更に亜硝酸ナトリウムを供給源とし亜硝酸イオンで0.3g/リットル含有する化成処理液を調整した。 【0059】 実施例1 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたEG材を基体として用い、これに活性化処理Iを施し、次いでこれを温度45℃に加温した処理液例Aに1秒間浸漬し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0060】 【0061】 【0062】 【0063】 実施例2 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたGA材を基体として、これを陰極として用い、炭素板を陽極として用い、温度40℃に加温した処理液例A中で、電流密度9A/dm2で2秒間電解し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0064】 実施例3 実施例2のGA材に替えて、基体としてEG材を用いたことを除き、実施例2と同一の処理を行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0065】 【0066】 【0067】 【0068】 【0069】 実施例4 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたGA材を基体として用い、これを温度50℃に加温した処理液例Aに3秒間浸漬し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0070】 実施例5 実施例4のGA材に替えて、基体としてEG材を用いたことを除き、実施例4と同一の処理を行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0071】 【0072】 【0073】 【0074】 【0075】 実施例6 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたGA材を基体として用い、これに活性化処理IVを施し、次いでこれを温度45℃に加温した処理液例Aに1秒間浸漬し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0076】 実施例7 実施例6のGA材に替えて、EG材を用いたことを除き、実施例6と同一の処理を行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0077】 比較例1 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたGA材を基体として用い、これに活性化処理Iを施し、次いでこれを温度50℃に加温した比較液例Fに3秒間浸漬し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0078】 比較例2 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたGA材を基体とし、これを陰極として用い、炭素板を陽極として用いて、温度45℃に加温した比較液例G中で、電流密度15A/dm2で2秒間電解し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0079】 比較例3 予め上記(2.1.)項に記載した方法で清浄にしたGA材を基体として用い、これに活性化処理IIIを施し、次いでこれを温度45℃に加温した比較液例Hに6秒間浸漬し、水洗、乾燥を順次行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0080】 比較例4 比較例1のGA材に替えて、基体としてEG材を用いたことを除き、比較例2と同一の処理を行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0081】 比較例5 比較例2のGA材に替えて、基体としてEG材を用いたことを除き、比較例2と同一の処理を行い、表1に示した組成、付着量のりん酸亜鉛複合皮膜を形成して、亜鉛含有金属めっき鋼板複合体を作製した。 【0082】 3.評価試験方法 複合皮膜の評価試験を下記により行った。 【0083】 3.1.皮膜特性 3.1.1.りん酸亜鉛複合皮膜重量 りん酸亜鉛複合化成皮膜の重量は、下記に示す方法で求めた。 (1)予め、試験片を精密天秤にて重量(W1:q)を測定しておき、これを重クロム酸アンモニウム20g/リットル、25%アンモニア水490g/リットルを含む脱イオン水溶液に常温で15分間浸漬をした。 (2)これに水洗を施して試験片に残存している重クロム酸アンモニウム水溶液を除去し、乾燥した。 (3)再度、精密天秤にて試験片の重量(W2:q)を測定し、その重量差(W1-W2)より単位面積当りの皮膜重量を算出した。 (4)更に皮膜重量測定に使用した重クロム酸アンモニウム水溶液中に溶解した亜鉛イオン及び鉄イオンを原子吸光分析法により定量し、単位面積当りの皮膜中に含まれる亜鉛量を算出した。 【0084】 3.1.2.複合皮膜組成比 複合皮膜中の亜鉛、鉄以外の成分を蛍光X線法により各々を測定し(mq/m2)、その時の皮膜重量中の含有率を算出した。 【0085】 3.2.加工性能試験 3.2.1.高速深絞り試験 115mmφの試験片に、鉱油を主成分とする防錆油を1.5g/m2塗布し、ポンチ径=50mmφ、深絞り速度:30m/分、絞り比=2.3の条件で高速深絞り試験を実施した。 上記条件下においてしわ押え荷重(t)を段階的に変え、ぎりぎり絞り抜けた時の限界しわ押え荷重(t)を測定した。 【0086】 3.2.2.平板引き抜き試験 30mm×300mmの試験片に、鉱油を主成分とする防錆油を1.5g/m2塗布し、圧着荷重=100kgf、引き抜き速度=260mm/分で引き抜いた時の引き抜き荷重(kg)を測定した。 【0087】 3.2.3.高速深絞り試験後のテープ剥離試験 115mmφの試験片に、鉱油を主成分とする防錆油を1.5g/m2塗布し、ポンチ径=50mmφ、深絞り速度:30m/分、絞り比=2.3、しわ押え荷重=1tの条件で高速深絞りを施し、これをトリクレン脱脂して供試試料を調製した。 (1)塗油前の試料の重量W1(q)を精密天秤にて重量測定した。 (2)供試試料の加工部にセロハンテープ圧着を2回繰り返して施した。 (3)供試試料の重量W2(q)の精密天秤にて測定し、その重量差(W1-W2)より試料1ヶ当りの剥離量を算出した。 【0088】 上記試験の結果を表1に示す。 【表1】 【0089】 【0090】 表1の結果から明らかなように本発明の実施例1〜7は、高速深絞り試験、平板引き抜き試験、高速深絞り試験後のテープ剥離試験ともに良好な結果を示しているが、比較例1〜5においては全ての試験が良好なものは、一つもなく、高速深絞り試験の結果は実施例よりかなり劣っていた。 【0091】 【発明の効果】 本発明の製造方法より亜鉛含有金属めっき鋼板上に形成されるりん酸亜鉛複合皮膜は、従来のプレス油、潤滑油のみの技術では対応しきれない部分への応用が可能となり、近年のプレス事情、例えばプレスの高速化、複雑な形状の一体成形化に対しての低コスト化により、高品質のものが得られ、生産性の向上も図ることが可能となった。更にりん酸亜鉛複合皮膜は、プレス後の化成処理も可能であり、汎用性も高く自動車分野のみならず、家電、建材等の広範囲の分野にも適応が可能である。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-11-07 |
出願番号 | 特願平5-282574 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(C23C)
P 1 651・ 531- YA (C23C) P 1 651・ 534- YA (C23C) P 1 651・ 121- YA (C23C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 廣野 知子 |
特許庁審判長 |
影山 秀一 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 池田 正人 |
登録日 | 2001-05-18 |
登録番号 | 特許第3190188号(P3190188) |
権利者 | 日本パーカライジング株式会社 |
発明の名称 | 高速プレス成形性に優れた亜鉛含有金属めっき鋼板複合体 |
代理人 | 佐藤 明子 |
代理人 | 渡辺 みのり |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 安富 康男 |
代理人 | 樋口 外治 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 野田 慎二 |
代理人 | 梅井 美佐 |
代理人 | 西舘 和之 |
代理人 | 西舘 和之 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 渡辺 望稔 |
代理人 | 八木 敏安 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 玉井 敬憲 |
代理人 | 工藤 愛子 |
代理人 | 諸田 勝保 |