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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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判定200060165 | 審決 | 特許 |
判定200260110 | 審決 | 特許 |
判定200560030 | 審決 | 特許 |
判定200160010 | 審決 | 特許 |
判定200260108 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) D01H |
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管理番号 | 1093251 |
判定請求番号 | 判定2003-60077 |
総通号数 | 52 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1994-12-20 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2003-10-09 |
確定日 | 2004-03-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3379716号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「紡機のリングレール昇降装置」は、特許第3379716号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
理 由 1.請求の趣旨 本件判定請求は、イ号図面およびその説明書に記載する「紡績のリングレール昇降装置」(以下「イ号物件」という)が、特許第3379716号の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 2.本件特許発明 本件特許発明は、明細書または図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものと認める(符号を付し分説して示す)。 (A)リングレールに多数のリングを装着し、該リングのほぼ中心にそれぞれスピンドルで回転するようにボビンを装着し、前記スピンドルをスピンドル駆動用メインモータにより回転し、前記リングレールを昇降して前記ボビンで紡出糸を巻取るようにした紡機において、 (B)前記リングレールをリフティングテープの一端に接続し、他端をほぼ平行に横方向に移動するリフティングバーに接続し、 (C)該リフティングバーの一端をほぼ平行に横方向に移動する移動プーリーに接続し、該移動プーリーにかけられた巻き上げテープの一端を移動プーリーの上方に固定し、 (D)前記巻き上げテープの他端を巻き上げドラムで巻取り、該巻き上げドラムを減速機を介して巻き上げ用モータで間欠的に正逆回転することにより、 前記移動プーリーを平行に横方向に前後に移動することによって、前記リフティングバーをほぼ平行に横方向に前後に移動して、 (E)前記リングレールを所定位置に上昇して下降するようにした (F)ことを特徴とする紡績のリングレール昇降装置。 3.イ号 判定請求書に添付された「イ号図面並びにその説明書」には、つぎのとおり記載されている。 「2.構成の説明 イ号図面において、長手方向のスピンドルレール51に多数のスピンドル52が回転可能に装着され、スピンドル2下部及びスピンドルレール51の下回りにスピンドル52を駆動するための前記構成要素が設けられている(図示省略)。 リングレール54に多数のリング55を装着し、リング55のほぼ中心にそれぞれスピンドル52で回転するようにボビン53を装着し、スピンドル52をスピンドル駆動用メインモータにより回転し、リングレール54を上下方向に昇降してボビン53で紡出糸を巻取るようにした紡機において、 垂直方向に間隔をおいて設けられた複数のポーカーピラー57上端に跨がってリングレール54を水平方向に固着し、ポーカーピラ-57はスピンドルレール51に固着されたポーカーブッシュ56の軸孔に貫通されて上下に揺動可能に保持され、 スピンドルレール51下方の各ポーカーピラー57下端にピラー昇降テープ62の一端62aを接続し垂直方向に立上げ、軸芯回りに回動可能なガイドプーリー63でほぼ水平方向に曲げられたピラー昇降テープ62の他端62bをほぼ水平横方向に移動するリフティングバー61にそれぞれ接続し、 一端64aをリフティングバー61の一端に接続したバー移動テープ64をほぼ水平方向に引出し、軸芯回りに回動可能なガイドプーリー65で上方向に曲げたバー移動テープ64の他端を軸芯回りに回動可能且軸芯が移動しない大径の第1リフチングドラム70に接続し、 第1リフチングドラム70と同軸の小径の第2リフチングドラム71に巻上げテープ72の一端を接続し、 巻き上げテープ72を軸芯回りに回動可能なガイドプーリー73を介して下方向に曲げた他端を巻き上げドラム74に接続し、 巻き上げテープ72の他端を巻き上げドラム74で巻取り、巻き上げドラム74を減速機75を介して巻き上げ用モータ76で間欠的に正逆回転することにより、 バー移動テープ64を介してリフティングバー61をほぼ水平横方向に移動するとともに、ピラー昇降テープ62の他端62bをほぼ水平横方向へ移動し、ピラー昇降テープ62の一端62aの垂直方向への移動によってポーカーピラー57を上下に移動し、 リングレール54を所定位置に上昇して下降するようにした紡機のリングレール昇降装置である。」 上記イ号物品説明書の記載およびイ号図面の記載からみて、イ号物件の「紡績のリングレール昇降装置」は、次のとおりのものと認める(本件特許発明に即して、符号を付し分説して示す)。 (a)リングレール54に多数のリング55を装着し、リング55のほぼ中心にそれぞれスピンドル52で回転するようにボビン53を装着し、スピンドル52をスピンドル駆動用メインモータにより回転し、リングレール54を昇降してボビン53で紡出糸を巻取るようにした紡機において、 (b)垂直方向に間隔をおいて設けられた複数のポーカーピラー57上端に跨がってリングレール54を水平方向に固着し、ポーカーピラー57はスピンドルレール51に固着されたポーカーブッシュ56の軸孔に貫通されて上下に摺動可能に保持され、 スピンドルレール51下方の各ポーカーピラー57下端にピラー昇降テープ62の一端62aを接続し垂直方向に立上げ、ほぼ水平方向に曲げられたピラー昇降テープ62の他端62bをほぼ水平横方向に移動するリフティングバー61にそれぞれ接続し、 (c)一端64aをリフティングバー61の一端に接続したバー移動テープ64をほぼ水平方向に引出し、上方向に曲げたバー移動テープ64の他端を軸芯回りに回動可能且軸芯が移動しない大径の第1リフチングドラム70に接続し、 第1リフチングドラム70と同軸の小径の第2リフチングドラム71に巻上げテープ72の一端を接続し、 (d)巻き上げテープ72を下方向に曲げた他端を巻き上げドラム74に接続し、 巻き上げテープ72の他端を巻き上げドラム74で巻取り、巻き上げドラム74を減速機75を介して巻き上げ用モータ76で間欠的に正逆回転することにより、 バー移動テープ64を介してリフティングバー61をほぼ水平横方向に移動するとともに、ピラー昇降テープ62の他端62bをほぼ水平横方向へ移動し、ピラー昇降テープ62の一端62aの垂直方向への移動によってポーカーピラー57を上下に移動し、 (e)リングレール54を所定位置に上昇して下降するようにした (f)紡機のリングレール昇降装置。 4.対比 構成要件(A)について、 本件特許発明の構成要件(A)は、「リングレールに多数のリングを装着し、該リングのほぼ中心にそれぞれスピンドルで回転するようにボビンを装着し、前記スピンドルをスピンドル駆動用メインモータにより回転し、前記リングレールを昇降して前記ボビンで紡出糸を巻取るようにした紡機」である。 一方、イ号物件の構成(a)は、「リングレール54に多数のリング55を装着し、リング55のほぼ中心にそれぞれスピンドル52で回転するようにボビン53を装着し、スピンドル52をスピンドル駆動用メインモータにより回転し、リングレール54を昇降してボビン53で紡出糸を巻取るようにした紡機」であり、その、「リングレール54」、「リング55」、「スピンドル52」、「ボビン53」、「スピンドル駆動用メインモータ」及び「紡機」は、それぞれ本件特許発明の構成要件(A)の、「リングレール」、「リング」、「スピンドル」、「ボビン」、「スピンドル駆動用メインモータ」及び「紡機」に相当するので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)を充足する。 構成要件(B)について、 本件特許発明の構成要件(B)は、「前記リングレールをリフティングテープの一端に接続し、他端をほぼ平行に横方向に移動するリフティングバーに接続」した構成である。 一方、イ号物件の構成(b)では、リフティングテープに対応するピラー昇降テープ62の一端62aをリングレール54ではなく、ポーカーピラー57の下端に接続し、他端62bをほぼ水平横方向に移動するリフティングバー61に接続しており、リングレール54はポーカーピラー57の上端に固着されているので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(B)を充足しない。 構成要件(C)について、 本件特許発明の構成要件(C)は、「該リフティングバーの一端をほぼ平行に横方向に移動する移動プーリーに接続し、該移動プーリーにかけられた巻き上げテープの一端を移動プーリーの上方に固定し」た構成である。 一方、イ号物件は、リフティングバー61の一端をバー移動テープ64に接続しており(構成(c))、移動プーリーに相当する構成に欠け、バー移動テープ64の接続態様も異なるので、本件特許発明の構成要件(C)を充足しない。 構成要件(D)について、 本件特許発明の構成要件(D)は、「前記巻き上げテープの他端を巻き上げドラムで巻取り、該巻き上げドラムを減速機を介して巻き上げ用モータで間欠的に正逆回転することにより、 前記移動プーリーを平行に横方向に前後に移動することによって、前記リフティングバーをほぼ平行に横方向に前後に移動」する構成である。 一方、イ号物件では、バー移動テープ64の他端は第1リフチングドラム70に接続している。そして、巻き上げ用モータ76で減速機75を介して間欠的に正逆回転する巻き上げドラム74で、第2リフチングドラム71に接続した巻き上げテープ72を巻取ることにより、第1リフチングドラム70を間欠的に正逆回転させ、バー移動テープ64の一端に接続したリフティングバー61をほぼ水平横方向に前後に移動させている(構成(c,d))。 そこで、イ号物件は、第1リフチングドラム70を、本件発明の巻き上げドラムに相当するものと見なしたとしても、なお、移動プーリーに相当する構成に欠けるので、本件特許発明の構成要件(D)を充足しない。 構成要件(E)について、 本件特許発明の構成要件(E)は、「前記リングレールを所定位置に上昇して下降するようにした」構成である。 イ号物件も、「リングレール54を所定位置に上昇して下降するようにした」(構成(e))ものであるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(E)を充足する。 構成要件(F)について、 本件特許発明の構成要件(F)は、「紡績のリングレール昇降装置」である。 イ号物件の構成(f)も「紡機のリングレール昇降装置」であるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(F)を充足する。 以上を整理すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(B)、(C)及び(D)を充足しない。 5.均等の判断 判定被請求人は、判定請求答弁書において、イ号物件では、リフティングバー61に接続された昇降テープ62がポーカーピラー57に接続されて、ポーカーピラー57の上下によってリングレールを上下するように構成しているのに対して、本件特許発明では、リフティングバー17に接続されたリフティングテープ15は、直接リングレール13に接続されている点、及び、イ号物件では、リフティングバー61に移動テープ64が接続されているのに対して、本件特許発明では、リフティングバー17を移動プーリー18に接続し、移動プーリに巻き上げテープを掛けている点が異なっているが、イ号物件と本件特許発明との構成の相違は、本件特許発明の本質部分ではなく、単なる設計上の問題であり、当分野技術者であれば、簡単に考えつくものであり、又、イ号物件の構成は本件特許発明の目的を達成するものであり、さらに同一の作用効果を奏するものである旨主張する。 ところで、最高裁平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日)判決は、均等の条件について、次のように述べている。 「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)右部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」 また、上記(5)の条件でいう、「特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情」について、同判決は、「(四)また、特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されない」と述べている。 そこで、イ号物件の構成(b)〜(d)に関して、上記条件のうち、(5)の条件を満たすか否かを検討する。 均等要件(5)(意識的除外等の特段の事情)について 被請求人は、本件特許発明に係る出願の、査定不服審判請求書の手続補正書において、拒絶査定の「リングレールと巻き上げ用モータの間の動力を伝達する手段を、本願のようにリフティングテープ、リフティングバー、移動プーリー、巻き上げテープ等で構成するか、他の構成とするかは、当業者が適宜設計できることである。」との認定に対して、「第1引用例には、ねじ軸であるポーカーピラー6でリングレール5を上下させる構成は記載されているが、本願発明のように、リングレールをテープの巻き上げ、巻き戻しで上下する構成は何ら記載されておらず、示唆すらされていない。」と述べるとともに、「本願発明は、『リフティングテープ、リフティングバー、移動プーリー、巻き上げテープ等で構成する』という構成を有するものであり、このような特徴のある構成は、第1引用例、第2引用例には全く記載されておらず、示唆すらされていないので、・・・第1引用例、第2引用例に記載された発明から容易に発明することはできるものではない」と主張している。 してみると、本件特許権者は、本件特許発明の、リングレールと巻き上げ用モータの間の動力を伝達する手段に係る、リフティングテープ、リフティングバー、移動プーリー、巻き上げテープ等を組み合わせた特定の構成によって、本件特許発明には特許性がある旨主張しているのであるから、この構成と異なるような動力伝達機構を備えるものは、本件特許発明には属さないものとして、意識的にこれを排除しているものと認められる。 そして、イ号物件は、その構成(b)にあるように、上記第1引用例と同様に、動力伝達機構の一部にポーカーピラーを有し、これによってリングレールを直接昇降させるものであるから、イ号物件は、本件特許発明から意識的に除外されたものにあたると認められるので、イ号物件は、均等の要件(5)を満たさないものである。 したがって、イ号物件は前記均等の要件(5)を充足しないので、前記他の均等の要件(1)乃至(4)を検討するまでもなく、均等論適用の要件を欠いている。 よって、イ号物件は、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、本件特許発明の技術的範囲に属するものと解することはできない。 6.むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 |
別掲 |
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判定日 | 2004-03-04 |
出願番号 | 特願平5-156223 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(D01H)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉澤 秀明 |
特許庁審判長 |
鈴木 公子 |
特許庁審判官 |
山崎 豊 松縄 正登 |
登録日 | 2002-12-13 |
登録番号 | 特許第3379716号(P3379716) |
発明の名称 | 紡機のリングレール昇降装置 |
代理人 | 鈴木 和夫 |
代理人 | 飯田 房雄 |