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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E02D |
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管理番号 | 1093897 |
審判番号 | 無効2001-35402 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-12-10 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-09-14 |
確定日 | 2004-01-08 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3168500号発明「鋼管杭及びその製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3168500号の請求項1〜4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3168500号は、平成7年6月5日に出願(特願平7-138148号)され、平成13年3月16日に特許権の設定登録がなされ、その後、平成13年9月14日に新日本製鐵株式会社より無効審判(本件審判)の請求がなされ、平成13年12月10日付けで被請求人より答弁書及び訂正請求書が提出され、平成14年2月18日付けで請求人より弁駁書が提出された。 2.請求人の主張及び提出した証拠方法 請求人は、「『特許第3168500号の明細書の請求項1の発明に係る特許、同請求項2の発明に係る特許、同請求項3の発明に係る特許、及び、同請求項4の発明に係る特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。』との審決を求める。」という趣旨で無効審判を請求し、審判請求書において甲第1〜9号証を提示し、無効理由として、 (1)特許第3168500号の請求項1〜4に係る発明の特許は、願書に添付した明細書の記載が、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願の発明に対してなされたものであるから、特許法第123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものである。 (2)特許第3168500号の請求項2に係る発明の特許は、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正により補正された発明に対して特許がなされたものであるから、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。 (3)特許第3168500号の請求項1〜4に係る特許発明は、いずれも、甲第2〜7号証に記載された発明及び技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。 と、主張している。 甲第1号証:東京地方裁判所平成12年(ワ)第13799号の特許権侵害差止等請求事件の判決(平成13年6月19日判決言渡) 甲第2号証:特開昭61-98818号公報 甲第3号証:特開平2-194212号公報 甲第4号証:特公平2-62648号公報 甲第5号証:特開平7-11637号公報 甲第6号証:実願昭59-68314号(実開昭60-181434号)のマイクロフィルム 甲第7号証:特開昭62-25612号公報 甲第8号証:特願平7-138148号に係る意見書 甲第9号証:特開平8-326053号公報(本件特許公開公報) 3.被請求人の主張 一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、答弁書において、本件特許明細書には記載不備はなく、また、請求人提出にかかる甲号証は、いずれも本件特許の請求項1〜4に係る発明を開示ないし示唆するものではなく、本件特許の請求項1〜4に係る発明は新規性および進歩性のいずれをも備えるものであるから、本件特許には請求人主張の無効理由はないと主張している。 4 訂正の適否についての判断 平成13年12月10日付け訂正請求書による訂正について検討する。 (1)訂正の内容 訂正事項a 特許請求の範囲の第2項の記載を下記のとおり訂正する。 「【請求項2】螺旋状底板の中央部に、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けたことを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。」 訂正事項b 段落【0007】の記載を下記のとおり訂正する。 「また、螺旋状底板の中央部に、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けたものである。」 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、発明の構成に欠くことができない事項である「螺旋状底板に」を、これに含まれる事項である「螺旋状底板の中央部に」に限定するものであり、これに関連する記載として、段落【0015】に「螺旋状底板11には、・・・中央部に・・・土砂進入孔(当審注、「口」の誤記と認められる。)13が設けられる。」との記載があるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 上記訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、平成13年12月10日付け訂正請求書による訂正は、平成6年法律第116号(以下、「平成6年法」という。)による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、並びに特許法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 5.本件発明 本件特許の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という。)は、平成13年12月10日付け訂正請求書により訂正された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものと認める。 【請求項1】 管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿って螺旋状に切欠し、この螺旋状に切り欠いた杭本体の先端面に沿うようにして杭本体の2倍前後の直径を有し、螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなることを特徴とする鋼管杭。 【請求項2】 螺旋状底板の中央部に、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けたことを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。 【請求項3】 管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠き、前記杭本体の2倍前後の直径を有する環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して形成した掘削刃兼用の螺旋状底板を、前記杭本体の先端面に溶接して形成されることを特徴とする鋼管杭。 【請求項4】 管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠く工程と、環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して掘削刃兼用の螺旋状底板を形成する工程と、前記杭本体の先端面に、前記螺旋状底板を溶接する工程とを有することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 6.無効理由(3)についての検討 (A)証拠に記載された事項 (1)請求人が、本件特許出願前に頒布された刊行物として提出した甲第2号証(特開昭61-98818号公報)には、 (a)「第1図ないし第4図はこの発明の一実施例を示すものであって、・・・鋼製円筒体1の下部周囲に、上下方向に延長する平面V字状の押込用傾斜前面2が設けられると共に、その傾斜前面2の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する鋼製傾斜ブレード4が固定されて、環状のドリルヘッド5が構成され、かつそのドリルヘッド5の上端面には、鋼管杭6における開放された下端部が溶接により固着され、さらに前記傾斜ブレード4は鋼製円筒体1の内側および外側に突出し、・・・このように構成された回転圧入式鋼管杭を回転しながら地盤に圧入していくと、刃3における押込用傾斜前面2により、鋼製円筒体1の肉厚分の土が鋼製円筒体1の外側および内側に押込移動され、鋼製円筒体1内の土はあまり乱されることなく鋼管杭6内に侵入して残される。また傾斜ブレード4は、あたかも木ねじのねじ山が木材に切込侵入するように地盤に切込侵入していくので、鋼管杭の回転力が推力に変換される。」(第2頁左上欄第16行〜右上欄第18行)、 (b)「この発明によれば、・・・鋼製円筒体1の下部に設けられた狭巾円弧状の傾斜ブレード4を地盤に切込侵入させると共に、鋼製円筒体1の横断面積に相当する小量の土を刃3の押込用傾斜前面2により横方向に押込むだけでよく」(第2頁左下欄第11行〜右下欄第2行) と記載されており、これらの記載及び第1〜4図の記載からみて、甲第2号証には、「鋼製円筒体の下部周囲に、上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードが固定されて、環状のドリルヘッドが構成され、かつそのドリルヘッドの上端面には、鋼管杭における開放された下端部が溶接により固着され、さらに前記傾斜ブレードは鋼製円筒体の内側および外側に突出した回転圧入式鋼管杭。」の発明(以下、「甲第2号証記載の発明1」という。)、及び、「鋼製円筒体の下部周囲に、上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードを固定して環状のドリルヘッドを構成する工程と、鋼管杭の下端部に、ドリルヘッドを溶接する工程とを有する回転圧入式鋼管杭の製造方法。」の発明(以下、「甲第2号証記載の発明2」という。)が記載されていると認められる。 (2)同じく、甲第3号証(特開平2-194212号公報)には、 (a)「鋼管を柱体にして、鋼管に螺旋状の鋼板の羽根を取り付けることを特徴とするスクリュー杭。」(特許請求の範囲請求項1)、 (b)「前記鋼管柱体は、中空体よりなることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の鋼管スクリュー杭。」(特許請求の範囲請求項3) と記載されている。 (3)同じく、甲第4号証(特公平2-62648号公報)には、「第1図は本発明において使用する鋼管杭の一実施例を示した側面図、第2図は同底面図で、これらの図において1は鋼管製の杭本体で、その下端には底板2が固設されており、底板2には下方に向けて掘削刃4,4が突設されている。また、杭本体1の下端部にはその外周面に沿って翼巾の大きい杭ネジ込み用の螺旋翼3が突設されている。この螺旋翼3は、図面に示すように、杭本体1の外径のほぼ2倍〜2倍強の外径を有しており、そしてほぼ一巻き強にわたり連続して形成されている。」(第2頁第3欄第19〜29行)と記載されている。 (4)同じく、甲第5号証(特開平7-11637号公報)には、 (a)「鋼管杭の下端部外周面にラセン翼が一巻き以上固設された杭であって、該鋼管杭の下端に掘削刃を有さず、掘削兼推進刃が該ラセン翼に重ねられて取付けられていることを特徴とする鋼管杭。」(【請求項1】)、 (b)「ラセン翼2は鋼製であり、その外径は鋼巻の1.5倍〜3倍程度が好ましく、さらに好ましくはほぼ2倍程度である。・・・ラセン翼2は通常熔接によって鋼管1に取付けられる。」(段落【0007】)、 (c)「鋼管1の先端は底板4を取付けて閉塞してもよいし、開放のままでもよい。・・・この掘削兼推進刃3はラセン翼2の上側または下側に熔接等によって取付けられる。この際、掘削兼推進刃は鋼管杭本体にも熔接される方が強度の面で好ましい。」(段落【0008】) と記載されている。 (5)同じく、甲第6号証(実願昭59-68314号(実開昭60-181434号)のマイクロフィルム)には、 (a)「鋼管・・・よりなる杭本体の下端に、この杭本体と同径の鋼管の下端に掘削刃を突設すると共に、その下部・・・の外周面に、・・・一巻きまたは数巻きにわたり螺旋翼を突設した先端杭を固着したことを特徴とする、基礎杭。」(実用新案登録請求の範囲)、 (b)「第1図、第2図において、Aは鋼管製または中空コンクリート製の杭本体、Bはこの杭本体Aの下端に熔接等の手段で固着7した先導杭である。」(第3頁第4〜7行)、 (c)「第3図は、本考案基礎杭における下端部分の他の実施例を示したもので、前記実施例においては鋼管1の下端は底板2により全面を塞いだものとなっているが、第3図の実施例は、底板2を環状に形成し、鋼管1内への通孔6を形成している。」(第4頁第19行〜第5頁第4行) と記載されている。 (6)同じく、甲第7号証(特開昭62-25612号公報)には、 (a)「先端を尖端に形成した杭体の先端部に螺旋状の掘鑿羽根又は掘鑿螺子を設け、後端に先端部に設けられた螺旋状の掘鑿羽根又は掘鑿螺子のねじピッチよりも間隔の狭いねじピッチに形成した填圧羽根又は填圧螺子を設けた事を特徴とする杭。」(特許請求の範囲)、 (b)「而して螺旋羽根は第4図に示す如くドーナツ状の鋼鈑9の一側を切断10して引張り状態で杭体2に固設せしめれば極めて簡単に形成できる。」(第2頁左上欄第8〜11行) と記載されている。 (B)本件発明1に関して 本件発明1と甲第2号証記載の発明1を対比すると、甲第2号証記載の発明1の「鋼管杭」は、本件発明1の「管状の杭」に相当し、甲第2号証記載の発明1の鋼製円筒体の先端部は、「鋼製円筒体の下部周囲に、上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードが固定されて」いることから、「螺旋状に切欠」されているものであり、甲第2号証記載の発明1の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」は「鋼製円筒体の内側および外側に突出し」ているから、その円弧の直径は鋼製円筒体及び鋼管杭より大きいといえる。 また、本件発明1の「螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板」の「螺旋翼及び掘削刃として働く」は、明細書の記載を参酌すると、(環状)円板を杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように折り曲げ加工して形成して、杭本体の先端面に溶接することで「螺旋翼及び掘削刃として働く」ものと解され(段落【0014】及び図1、2等参照)、また、「螺旋」は、「旋回した筋」を意味するから、「螺旋状底板」は、(円筒体の杭本体の)底部に設けられた旋回した筋状のものであって上記機能を有するものを意味すると解される。ここで、この「底板」は、「その中央部に杭本体10内部への土砂の進入を許容する土砂進入孔13が設けられる」態様を含むものであるから、杭本体の底部を完全に閉塞するもののみを意味するものではなく、杭本体の底部に孔を有するものも含まれると解される。一方、甲第2号証記載の発明1の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」も、板材を鋼製円筒体の螺旋状に切欠された先端部に沿うように固定されたものであるから、「螺旋翼及び掘削刃として働く」ものであり、また、鋼製円筒体の底部に存する板材である。よって、甲第2号証記載の発明1の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」は、本件発明1の「螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板」に相当するものといえる。 そして、甲第2号証記載の発明1の「回転圧入式鋼管杭」は、本件発明1の「鋼管杭」に相当するから、両者は、管状の杭の先端部分を、その先端外周に沿って螺旋状に切欠し、この螺旋状に切り欠いた先端面に沿うようにして杭本体より大きな直径を有し、螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなる鋼管杭の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点1:本件発明1では、全体が一本の管状の杭から構成されるのに対し、甲第2号証記載の発明1では、鋼管杭と、鋼管杭の下端部に溶接された鋼製円筒体とから杭が構成されている点。 相違点2:螺旋状底板が、本件発明1では、杭本体の2倍前後の直径を有するとしているのに対し、甲第2号証記載の発明1では、杭本体より大径ではあるが、具体的にどの程度の直径であるか明記されていない点。 上記相違点について検討する。 相違点1に関して 甲第3〜5号証には、本件発明1と同様に、全体が一本の管状の杭から構成され、その下端部に螺旋翼(甲第3号証の「螺旋状の羽根」、甲第4号証の「螺旋翼」、甲第5号証の「ラセン翼」)を有する杭が記載されており、一方、甲第6号証には、甲第2号証記載の発明1と同様に、鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されている。したがって、下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において、鋼管杭を、一本の鋼管で構成することも、溶接等で接続した鋼管で構成することも、本件特許出願前から周知慣用されている手段であり、甲第2号証記載の発明1において、どちらの構成を適用するかは、当業者が必要に応じて適宜選択しうる程度の設計的事項である。 相違点2に関して 甲第4号証及び甲第5号証には、下端部外周面に杭本体の外径のほぼ2倍の外径を有する螺旋翼を設けた鋼管杭が記載されており、甲第2号証記載の発明1の傾斜ブレードを、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように、杭本体の2倍前後の直径を有するものとして、本件発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得た事項にすぎない。 (C)本件発明2に関して 本件発明2は、本件発明1を「螺旋状底板の中央部に、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けた」と技術的に限定したものであるが、甲第2号証記載の発明1のものも、鋼製円筒体の下端に沿って狭巾円弧状の傾斜ブレードを設けたものであり、「鋼製円筒体1の肉厚分の土が鋼製円筒体1の外側および内側に押込移動され」(第2頁右上欄第12〜14行)ることから、傾斜ブレードの内周側は、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口に相当するものと認められる。 その余の部分に関する一致点・相違点については、上記「(B)本件発明1に関して」で述べた通りである。 (D)本件発明3に関して 本件発明3と甲第2号証記載の発明1を対比すると、甲第2号証記載の発明1の「鋼管杭」は、本件発明1の「管状の杭」に相当し、甲2号証記載の発明1の鋼製円筒体の先端部は、「鋼製円筒体の下部周囲に、上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードが固定されて」いることから、「ほぼ1周にわたり螺旋状に切欠」されているものであり、甲第2号証記載の発明1の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」は「鋼製円筒体の内側および外側に突出し」ているから、その円弧の直径は鋼製円筒体及び鋼管杭より大きいといえる。 また、本件発明3の「掘削刃兼用の螺旋状底板」の「掘削刃兼用」は、明細書の記載を参酌すると、環状円板を杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように折り曲げ加工して形成して、杭本体の先端面に溶接することで「掘削刃兼用」とされるものと解され(段落【0014】及び図1、2等参照)、また、「螺旋」は、「旋回した筋」を意味するから、「螺旋状底板」は、(円筒体の杭本体の)底部に設けられた旋回した筋状のものであって上記機能を有するものを意味すると解される。ここで、この「底板」は、環状円板から形成されることから、杭本体の底部を完全に閉塞するもののみを意味するものではなく、杭本体の底部に孔を有するものも含まれると解される。一方、甲第2号証記載の発明1の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」も、板材を鋼製円筒体の螺旋状に切欠された先端部に沿うように固定されたものであるから、「掘削刃兼用」とされるものであり、また、鋼製円筒体の底部に存する板材である。よって、甲第2号証記載の発明1の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」は、本件発明3の「掘削刃兼用の螺旋状底板」に相当するものといえる。 そして、甲第2号証記載の発明1の「回転圧入式鋼管杭」は、本件発明3の「鋼管杭」に相当するから、両者は、管状の杭の先端部分を、その先端外周に沿って螺旋状に切欠し、この螺旋状に切り欠いた先端面に沿うようにして杭本体より大きな直径を有し、掘削刃兼用の螺旋状底板を固定してなる鋼管杭の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点3:本件発明3では、全体が一本の管状の杭から構成されるのに対し、甲第2号証記載の発明1では、鋼管杭と、鋼管杭の下端部に溶接された鋼製円筒体とから杭が構成されている点。 相違点4:本件発明3では、環状円板に半径方向の切り込みを入れ、曲げ加工して螺旋状底板を形成しているのに対し、甲第2号証記載の発明1では、どのように傾斜ブレードを形成しているのか明確にされていない点。 相違点5:螺旋状底板が、本件発明3では、杭本体の2倍前後の直径を有するとしているのに対し、甲第2号証記載の発明1では、杭本体より大径ではあるが、具体的にどの程度の直径であるか明記されていない点。 上記相違点について検討する。 相違点3に関して 甲第3〜5号証には、本件発明3と同様に、全体が一本の管状の杭から構成され、その下端部に螺旋翼(甲第3号証の「螺旋状の羽根」、甲第4号証の「螺旋翼」、甲第5号証の「ラセン翼」)を有する杭が記載されており、一方、甲第6号証には、甲第2号証記載の発明1と同様に、鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されている。したがって、下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において、鋼管杭を、一本の鋼管で構成することも、溶接等で接続した鋼管で構成することも、本件特許出願前から周知慣用されている手段であり、甲第2号証記載の発明1において、どちらの構成を適用するかは、当業者が必要に応じて適宜選択しうる程度の設計的事項である。 相違点4に関して 甲第7号証には、ドーナツ状の鋼鈑9(本件発明3の「環状円板」に相当する。)の一側を切断10して(本件発明3の「半径方向に切り込みを入れ」に相当する。)引張り状態で杭体3に固設することで螺旋状の掘鑿羽根を形成することが記載されており、また、鋼鈑を曲げ加工により加工することは周知技術であるから、甲第2号証記載の発明1において、傾斜ブレードを甲第7号証に記載されているようにドーナツ状の鋼鈑の一側を切断して、曲げ加工して形成することで、本件発明3の相違点4に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。 相違点5に関して 甲第4号証及び甲第5号証には、下端部外周面に杭本体の外径のほぼ2倍の外径を有する螺旋翼を設けた鋼管杭が記載されており、甲第2号証記載の発明1の傾斜ブレードを、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように、杭本体の2倍前後の直径を有するとして、本件発明3の相違点5に係る構成とすることは、当業者が容易になし得た事項にすぎない。 (E)本件発明4に関して 本件発明4と甲第2号証記載の発明2を対比すると、甲第2号証記載の発明2の「鋼管杭」は、本件発明4の「管状の杭」に相当し、甲第2号証記載の発明2の鋼製円筒体の先端部は、「鋼製円筒体の下部周囲に、上下方向に延長する押込用傾斜前面の下端部から円筒体回転方向の後方に向かって斜めに上昇する狭巾円弧状の傾斜ブレードを固定して」いることから、予め、「先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠」いているものである。 また、本件発明4の「掘削刃兼用の螺旋状底板」の「掘削刃兼用」は、明細書の記載を参酌すると、環状円板を杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように折り曲げ加工して形成して、杭本体の先端面に溶接することで「掘削刃兼用」とされるものと解され(段落【0014】及び図1、2等参照)、また、「螺旋」は、「旋回した筋」を意味するから、「螺旋状底板」は、(円筒体の杭本体の)底部に設けられた旋回した筋状のものであって上記機能を有するものを意味すると解される。ここで、この「底板」は、環状円板から形成されることから、杭本体の底部を完全に閉塞するもののみを意味するものではなく、杭本体の底部に孔を有するものも含まれると解される。一方、甲第2号証記載の発明2の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」も、板材を鋼製円筒体の螺旋状に切欠された先端部に沿うように固定されたものであるから、「掘削刃兼用」とされるものであり、また、鋼製円筒体の底部に存する板材である。よって、甲第2号証記載の発明2の「狭巾円弧状の傾斜ブレード」は、本件発明4の「掘削刃兼用の螺旋状底板」に相当するものといえる。 そして、甲第2号証記載の発明2の「回転圧入式鋼管杭」は、本件発明4の「鋼管杭」に相当するものであるから、両者は、管状の杭の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠く工程と、杭の先端面に、掘削刃兼用の螺旋状底板を取り付ける工程とを有する鋼管杭の製造方法の点で一致し、以下の点で相違する。 相違点6:本件発明4では、全体が一本の管状の杭から構成されるのに対し、甲第2号証記載の発明2では、鋼管杭と、鋼管杭の下端部に溶接された鋼製円筒体とから杭が構成されている点。 相違点7:本件発明4では、環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して螺旋状底板を形成する工程を有しているのに対し、甲第2号証記載の発明2では、傾斜ブレードを形成する工程が明確にされていない点。 相違点8:杭の先端面に、螺旋状底板を固定する際に、本件発明4では、溶接しているのに対し、甲第2号証記載の発明2では、どのように固定しているのか明確にされていない点。 上記相違点について検討する。 相違点6に関して 甲第3〜5号証には、本件発明4と同様に、全体が一本の管状の杭から構成され、その下端部に螺旋翼(甲第3号証の「螺旋状の羽根」、甲第4号証の「螺旋翼」、甲第5号証の「ラセン翼」)を有する杭が記載されており、一方、甲第6号証には、甲第2号証記載の発明2と同様に、鋼管からなる杭本体の下端部に螺旋翼を突設した先端杭を固着した基礎杭が記載されている。したがって、下端部に螺旋翼を備える鋼管杭において、鋼管杭を、一本の鋼管で構成することも、溶接等で接続した鋼管で構成することも、本件特許出願前から周知慣用されている手段であり、甲第2号証記載の発明2において、どちらの構成を適用するかは、当業者が必要に応じて適宜選択しうる程度の設計的事項である。 相違点7に関して 甲第7号証には、ドーナツ状の鋼鈑9(本件発明3の「環状円板」に相当する。)の一側を切断10して(本件発明3の「半径方向に切り込みを入れ」に相当する。)引張り状態で杭体3に固設することで螺旋状の掘鑿羽根を形成することが記載されており、また、鋼鈑を曲げ加工により加工することは周知技術であるから、甲第2号証記載の発明2において、傾斜ブレードを甲第7号証に記載されているようにドーナツ状の鋼鈑の一側を切断して、被取付面である、螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して形成することで、本件発明4の相違点7に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項にすぎない。 相違点8に関して 鋼材相互を溶接により接続することは、従来から普通に行われていることであり、甲第2号証記載の発明2において、傾斜ブレードを杭の先端に溶接により固定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得た事項にすぎない。 (F)むすび したがって、本件発明1〜4は、甲第2〜7号証記載の事項に基いて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7.結論 以上のとおりであるから、請求人の主張する他の無効理由を検討するまでもなく、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により、これを無効にすべきものである。 また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 鋼管杭及びその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿って螺旋状に切欠し、この螺旋状に切り欠いた杭本体の先端面に沿うようにして杭本体の2倍前後の直径を有し、螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなることを特徴とする鋼管杭。 【請求項2】 螺旋状底板の中央部に、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けたことを特徴とする請求項1記載の鋼管杭。 【請求項3】 管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠き、前記杭本体の2倍前後の直径を有する環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して形成した掘削刃兼用の螺旋状底板を、前記杭本体の先端面に溶接して形成されることを特徴とする鋼管杭。 【請求項4】 管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠く工程と、環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して掘削刃兼用の螺旋状底板を形成する工程と、前記杭本体の先端面に、前記螺旋状底板を溶接する工程とを有することを特徴とする鋼管杭の製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、市街地に建設する構造物の基礎杭として使用される、無排土、無振動で回転推進する螺旋底板付きの鋼管杭に関するものであ る。 【0002】 【従来の技術】 近年、先端外周面に螺旋翼を設けた鋼管杭を使用して無排土、無騒音、無振動で杭を地中に埋設する工法が採用されている。この鋼管杭は、その杭本体の先端底板に掘削刃を突設すると共に、先端付近の外周面に杭本体の半径の2倍強の半径を有する螺旋翼をほぼ1巻きにわたって突設することによって基礎杭とされ、軟弱地盤にねじり込むようにして回転させて、掘削刃によって杭本体先端の土砂を掘削軟化させる一方、螺旋翼を杭本体側面の未掘削土砂に食い込ませることにより、土の耐力を反力として地中に回転推進される。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記従来の鋼管杭によれば、杭本体が大径になると、掘削刃により掘削軟化されて杭本体の側面に押し出される土砂の量が多量となり、また杭本体が大径になるのに伴って螺旋翼の肉厚も厚くなって杭本体側面の未掘削土砂への食い込みが困難になり、結局、杭本体先端で土砂を圧縮する結果となってしまい、杭本体の回転推進が困難になることがあった。 【0004】 また、鋼管杭の埋設後は、杭本体に建物の支持荷重が作用する一方、螺旋翼にも杭本体と均等に荷重が作用するが、この荷重に対する地盤の反力によって螺旋翼には曲げモーメントが作用する。しかし、螺旋翼は杭本体の先端付近の外周面に接合されているため、この曲げモーメントは螺旋翼と杭本体との接合部分である溶接部付近にも作用し、そしてこの部分で最大となるため、これに耐えるように杭本体の肉厚を厚く設定しなければならない。この肉厚は杭本体に作用する鉛直方向の荷重(圧縮荷重)に耐える肉厚の倍近くとなり、長尺な鋼管杭の場合、材料費が高騰化する問題があった。 【0005】 したがって、本発明は、杭本体が大径になっても地中への回転推進が容易である上に、杭本体の肉厚を可及的に薄くして材料費の低廉化を図ることが可能な螺旋状底板付きの鋼管杭及びその製造方法を提供する ことを目的としている。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明に係る鋼管杭は、管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿って螺旋状に切欠し、この螺旋状に切り欠いた杭本体の先端面に沿うようにして杭本体の2倍前後の直径を有し、螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなる。 【0007】 また、螺旋状底板の中央部に、杭本体内に土砂の進入を許容する土砂進入口を設けたものである。 【0008】 また、管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠き、前記杭本体の2倍前後の直径を有する環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して形成した掘削刃兼用の螺旋状底板を、前記杭本体の先端面に溶接して形成されるものである。 【0009】 また、本発明に係る鋼管杭の製造方法は、管状の杭本体の先端部分を、その先端外周に沿ってほぼ1周にわたり螺旋状に切り欠く工程と、環状円板に半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を前記杭本体の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように曲げ加工して掘削刃兼用の螺旋状底板を形成する工程と、前記杭本体の先端面に、前記螺旋状底板を溶接する工程とを有するものである。 【0010】 【作用】 本発明の鋼管杭によれば、杭本体の上端に回動押し込み駆動装置を取り付け、その駆動により杭本体を地中側に押圧しつつ回転させると、杭本体先端の螺旋状底板が掘削刃として土砂を掘削軟化して鋼管杭が地中に回転推進され、埋め込まれる。そして、鋼管杭の埋設完了後は、建物の支持荷重が杭本体及び螺旋状底板にそれぞれ作用し、この荷重に対する地盤の反力(鉛直方向の反力)が螺旋状底板及び杭本体にそれぞれ作用する。そして、螺旋状底板にはこの反力によって曲げモーメントも作用する。しかし、螺旋状底板が杭本体の先端に固定されていることから、杭本体には螺旋状底板の曲げモーメントが作用しない。 【0011】 【実施例】 以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。 【0012】 図1及び図2は本発明の一実施例を示すものである。図1は本発明の鋼管杭の一部省略して示した斜視図、図2は図1に示す鋼管杭の螺旋状底板の斜視図である。 【0013】 本実施例の鋼管杭は、図1及び図2に示すように、管状の杭本体10の先端に杭本体10の2倍前後の直径を有する、掘削刃兼用の螺旋状底板11をほぼ1巻きにわたり固定して構成される。 【0014】 すなわち、管状の杭本体10の先端部分を、その先端外周に沿い、ほぼ1周にわたり、螺旋状に切欠する。一方、掘削刃兼用の螺旋状底板11は、図2に示すように、杭本体10の2倍前後の直径を有する環状円板に、その中心に達する半径方向の切り込みを入れ、該環状円板を杭本体10の螺旋状に切り欠いた先端面に沿うように折り曲げ加工して形成する。そして、螺旋状に切り欠いた杭本体10の先端面に、掘削刃兼用の螺旋状底板11を溶接することにより、図1に示す鋼管杭が構成される。 【0015】 螺旋状底板11の板厚は杭本体10の直径と鋼管杭が埋設される地盤の硬さにより設定される。螺旋状底板11には、その始端と終端との間の隙間を閉じる閉じ板12が設けられ、またその中央部に杭本体10内部への土砂の進入を許容する土砂進入孔13が設けられる。 【0016】 上記実施例の鋼管杭によれば、杭本体10を埋設しようとする地盤上に起立させて、その上端に図示しない回動押し込み駆動装置を取り付け、その駆動により杭本体10を地盤中に押圧しつつ回転させると、杭本体10先端の螺旋状底板11が掘削刃として杭本体10の先端の土砂を掘削軟化しつつ杭本体10の側面に押し出して、鋼管杭が地中に回転推進されて埋め込まれる。 【0017】 この埋設作業では、螺旋状底板11が螺旋翼及び掘削刃として働き、地盤への食い込みが良く、従来のように、杭本体10の直径が大きくなったとしても杭本体10の下端側の土砂を圧縮してしまうようなおそれはなく、スムーズに鋼管杭の回転推進が行われる。したがって、従来困難であった硬質地盤にも施工出来、大きな支持力が得られる。 【0018】 そして、鋼管杭の埋設完了後は、建物の支持荷重が杭本体10及び螺旋状底板11にそれぞれ作用する一方、この荷重に対する地盤の鉛直方向の反力が杭本体10及び螺旋状底板11にそれぞれ作用する。杭本体10には支持荷重とこれと反対方向の鉛直反力により圧縮力が作用する。また、螺旋状底板11には鉛直方向の反力によって曲げモーメントが作用する。しかし、この螺旋状底板11の曲げモーメントは、従来の螺旋翼の場合と異なり、螺旋状底板11が杭本体10の先端面に固定されていることから、杭本体10には作用しない。換言すれば、螺旋状底板11には鉛直方向の反力によって曲げモーメントが作用するものの、杭本体10には圧縮力のみしか作用しない。このため、杭本体10は、圧縮力に耐える肉厚があればよく、従来のように曲げモーメントに耐えるようにするために杭本体10の肉厚を倍近く厚く設定する必要はない。したがって、従来の鋼管杭に比較して肉厚をほぼ50%減らすことができる。 【0019】 図3及び図4は本発明の鋼管杭の他の実施例を示している。図3は本発明の他の鋼管杭の一部省略して示した正面図、図2は同鋼管杭の側面図である。なお、図中、図1、図2に示す部分と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。 【0020】 この他の実施例では、螺旋状底板11に、階段状の刃を有する掘削刃14、14を、螺旋状底板11の中心から直径方向に延び且つ螺旋状底板11の底面に対して40°乃至45°傾斜するように固定してある。ここで、螺旋状底板11の底面に対する傾斜角度をこのように設定したのは次の理由による。すなわち、掘削刃14の螺旋状底板11の底面に対する傾斜角度が40°よりも小さいと、十分な掘削能力が得られず、また45°よりも大きいと、掘削能力が高くなるものの、掘削に対する抵抗力が大きくなり過ぎて、好ましくなく、40°乃至45°の範囲で、掘削に対する抵抗力が大きくならず、所望の掘削能力が得られるからである。 【0021】 この他の実施例によれば、鋼管杭の埋設作業時に、螺旋状底板11と掘削刃14、14とが杭本体10先端の土砂を掘削軟化させるので、多量の土砂の掘削軟化を短時間で行うことができ、施工時間の短縮を図ることが出来る。また、掘削刃14、14は螺旋状底板11を補強するリブとして働き、螺旋状底板11の肉厚を薄く設定することが可能となる。 【0022】 なお、上記両実施例において、杭本体10の先端にグラウト噴出孔を設けて掘削時にこのグラウト噴出孔からセメントミルクを噴出するようにしてもよい。また、エアー噴出孔を設けるようにしてもよい。 【0023】 【発明の効果】 以上説明したように本発明の鋼管杭によれば、螺旋状に切り欠いた杭本体の先端面に、これに沿うようにして杭本体の2倍前後の直径を有し、螺旋翼及び掘削刃として働く螺旋状底板を固定してなるので、杭本体の先端の土砂の掘削軟化を促進でき、杭本体が大径になっても地中へ回転推進が容易であり、また杭本体と螺旋状底板との接合部分に曲げモーメントが作用しないことから、杭本体の肉厚を可及的に薄くして材料費の低廉化を図ることが可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の鋼管杭の一部省略して示した斜視図である。 【図2】 図1に示す鋼管杭の螺旋状底板の斜視図である。 【図3】 本発明の他の鋼管杭の一部省略して示した正面図である。 【図4】 図3の鋼管杭の側面図である。 【符号の説明】 10 杭本体 11 螺旋状底板 14 掘削刃 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2002-04-15 |
結審通知日 | 2002-04-18 |
審決日 | 2002-05-01 |
出願番号 | 特願平7-138148 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
ZA
(E02D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
鈴木 憲子 蔵野 いづみ |
登録日 | 2001-03-16 |
登録番号 | 特許第3168500号(P3168500) |
発明の名称 | 鋼管杭及びその製造方法 |
代理人 | 佐々木 宗治 |
代理人 | 石川 壽彦 |
代理人 | 小林 久夫 |
代理人 | 木村 三朗 |
代理人 | 佐々木 宗治 |
代理人 | 佐々木 宗治 |
代理人 | 木村 三朗 |
代理人 | 石川 壽彦 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 亀松 宏 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 石川 壽彦 |
代理人 | 小林 久夫 |
代理人 | 木村 三朗 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 小林 久夫 |