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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1094564
異議申立番号 異議2003-70342  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-07-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-05 
確定日 2004-01-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3311407号「基板端縁洗浄装置及び方法」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3311407号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3311407号は、平成5年1月5日に特許出願され、平成14年5月24日にその特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人永田大樹から特許異議の申立てがされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年6月17日に訂正請求(後日取り下げ)がなされ、再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年11月28日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
(1) 訂正の内容
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載である、
「【請求項1】一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、
該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、
前記ノズルに、第1のリンス液または第1のリンス液とは異なる第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、
前記リンス液供給手段と前記ノズルとを接続する配管と、
前記配管内から前記ノズルに向けて気体を導入する気体導入手段と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。」を、
「【請求項1】一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、
該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、
前記ノズルに、前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、
前記リンス液供給手段と前記ノズルとを接続する配管と、
前記配管内から前記ノズルに向けて気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。」
と訂正する。
訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2の記載である、「【請求項2】一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、
該基板保持手段によって保持された基板の端縁に第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、
前記基板の端縁に第1のリンス液とは異なる第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、
前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、
前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。」を、
「【請求項2】一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、
該基板保持手段によって保持された基板の端縁に前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、
前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、
前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。」
と訂正する。
正事項c
特許請求の範囲の請求項8の記載である、「【請求項8】一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、
前記基板の端縁に第1のノズルから第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、第2のノズルから前記第1のリンス液とは異なる第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄方法。」を、
「【請求項8】一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、
前記基板の端縁に第1のノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、第2のノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄方法。」
と訂正する。
訂正事項d
特許請求の範囲の請求項9の記載である、「【請求項9】一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、
前記基板の端縁にノズルから第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記ノズルおよび当該ノズルへの配管に気体を導入する工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、気体導入後の前記ノズルから前記第1のリンス液とは異なる第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄方法。」を、
「【請求項9】一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、
前記基板の端縁にノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記ノズルおよび当該ノズルへの配管に気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、気体導入後の前記ノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄方法。」
と訂正する。
訂正事項e
明細書の段落【0007】〜【0008】の記載を、
「【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、前記ノズルに、前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、前記リンス液供給手段と前記ノズルとを接続する配管と、前記配管内から前記ノズルに向けて気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、を備えている。
また、請求項2の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、を備えている。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第1のノズルと前記第2のノズルとを、前記基板の端縁に沿う方向に配置している。
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第1のノズルに、複数のノズルからなるノズル群を含ませている。
また、請求項5の発明は、請求項2から請求項4のいずれかの発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第2のノズルに、複数のノズルからなるノズル群を含ませている。
また、請求項6の発明は、請求項1の発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記ノズルを前記基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段をさらに備えている。
また、請求項7の発明は、請求項2から請求項5のいずれかの発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを前記基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段をさらに備えている。
また、請求項8の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、前記基板の端縁に第1のノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、第2のノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、を備えている。
また、請求項9の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、前記基板の端縁にノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、前記ノズルおよび当該ノズルへの配管に気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする工程と、前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、気体導入後の前記ノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、を備えている。
【0008】
【作用】
請求項1の発明では、基板の端縁に液を吐出するノズルに、薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、リンス液供給手段とノズルとを接続する配管と、配管内からノズルに向けて気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項2の発明では、基板の端縁に薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、第1のリンス液が吐出された基板の端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、を備えるため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項3の発明では、第1のノズルと第2のノズルとを基板の端縁に沿う方向に配置しているため、洗浄処理時間を短縮することができる。
また、請求項4の発明では、第1のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項5の発明では、第2のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項6の発明では、ノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項7の発明では、第1のノズルおよび第2のノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項8の発明では、基板の端縁に第1のノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄し、第1のリンス液が吐出された端縁に、第2のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄するため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項9の発明では、基板の端縁にノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄し、そのノズルおよびノズルへの配管に気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージし、第1のリンス液が吐出された端縁に、気体導入後のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄するため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。」
と訂正する。
訂正事項f
明細書の段落【0042】の記載を、「【0042】
【発明の効果】
請求項1の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、該ノズルに、薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、リンス液供給手段とノズルとを接続する配管と、該配管内からノズルに向けて気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項2の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、第1のリンス液が吐出された基板の端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項3の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第1のノズルと第2のノズルとを、基板の端縁に沿う方向に配置するため、洗浄処理時間を短縮することができる。
また、請求項4の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第1のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項5の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第2のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項6の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、ノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項7の発明にかかる基板端緑洗浄装置によれば、第1のノズルおよび第2のノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項8の発明にかかる基板端縁洗浄方法によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、基板の端縁に第1のノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄する工程と、第1のリンス液が吐出された端縁に、第2のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄する工程と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項9の発明にかかる基板端縁洗浄方法によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、基板の端縁にノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄する工程と、当該ノズルおよびノズルへの配管に気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージする工程と、第1のリンス液が吐出された端縁に、気体導入後のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄する工程と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。」
と訂正する。

(2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aについて
上記訂正事項aについては、請求項1に記載された「第1のリンス液」及び「第2のリンス液」をそれぞれ下位概念である「薄膜を溶解させるための第1のリンス液」及び「第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液」と訂正するとともに、「気体導入手段」を下位概念である「前記配管内から前記ノズルに向けて気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
第1および第2のリンス液の訂正については、明細書の【0032】段落の、「ポリイミド薄膜を溶解させるための溶剤(NMP)と、揮発性の高い溶剤(MIBK)とを用意し、第1のリンス液(NMP)でポリイミド薄膜を溶解した後、第2のリンス液(MIBK)をその溶解除去した領域に供給して短時間で乾燥する」との記載、明細書の【0027】段落の、「NMPは揮発性が比較的低い」との記載及び【0030】段落の、「MIBKは揮発性が比較的高く」との記載に基づいている。
さらに、残存リンス液のパージについては、明細書の【0018】段落の、「窒素ガスが第1のリンス液吐出ユニット24aに向けて導入され、残存溶剤等のリンス液をパージすることができるようになっている」との記載に基づいている。
従って、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項bについて
上記訂正事項bについては、請求項2に記載された「第1のリンス液」及び「第2のリンス液」をそれぞれ下位概念である「薄膜を溶解させるための第1のリンス液」及び「第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液」と訂正するとともに、第2のリンス液の吐出位置を「第1のリンス液が吐出された端縁」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
第1および第2のリンス液の訂正については、明細書の【0032】段落の、「ポリイミド薄膜を溶解させるための溶剤(NMP)と、揮発性の高い溶剤(MIBK)とを用意し、第1のリンス液(NMP)でポリイミド薄膜を溶解した後、第2のリンス液(MIBK)をその溶解除去した領域に供給して短時間で乾燥する」との記載、明細書の【0027】段落の、「NMPは揮発性が比較的低い」との記載及び【0030】段落の、「MIBKは揮発性が比較的高く」との記載に基づいている。
また、第2のリンス液の吐出位置の限定については、明細書の段落【0032】に「第1のリンス液(NMP)でボリイミド薄膜を溶解した後、第2のリンス液(MIBK)をその溶解除去した領域に供給して」との記載に基づいている。
従って、上記訂正事項bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項cについて
上記訂正事項cについては、請求項8に記載された「第1のリンス液」及び「第2のリンス液」をそれぞれ下位概念である「薄膜を溶解させるための第1のりンス液」及び「第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液」と訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
第1および第2のリンス液の訂正については、明細書の【0032】段落の、「ポリイミド薄膜を溶解させるための溶剤(NMP)と、揮発性の高い溶剤(MIBK)とを用意し、第1のリンス液(NMP)でポリイミド薄膜を溶解した後、第2のリンス液(MIBK)をその溶解除去した領域に供給して短時間で乾燥する」との記載、明細書の【0027】段落の、「NMPは揮発性が比較的低い」との記載及び【0030】段落の、「MIBKは揮発性が比較的高く」との記載に基づいている。
従って、上記訂正事項cは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項dについて
上記訂正事項dについては、請求項9に記載された「第1のリンス液」及び「第2のリンス液」をそれぞれ下位概念である「薄膜を溶解させるための第1のリンス液」及び「第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液」とするとともに、ノズルおよび配管への気体導入に関し、「ノズルおよび当該ノズルへの配管に気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする」という限定を加えてた訂正であるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。。
第1および第2のリンス液の訂正については、明細書の【0032】段落の、「ポリイミド薄膜を溶解させるための溶剤(NMP)と、揮発性の高い溶剤(MIBK)とを用意し、第1のリンス液(NMP)でポリイミド薄膜を溶解した後、第2のリンス液(MIBK)をその溶解除去した領域に供給して短時間で乾燥する」との記載、明細書の【0027】段落の、「NMPは揮発性が比較的低い」との記載及び【0030】段落の、「MIBKは揮発性が比較的高く」との記載に基づいている。
さらに、残存リンス液のパージについては、明細書の【0018】段落の、「窒素ガスが第1のリンス液吐出ユニット24aに向けて導入され、残存溶剤等のリンス液をパージすることができるようになっている」との記載に基づいている。
従って、上記訂正事項dは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項eについて
上記訂正事項eについては、特許請求の範囲の請求項の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、願書に添付した明細書の【0007】及び【0008】段落の対応する記載を訂正したものである。
従って、訂正事項eは、明りょうでない記載の釈明にあたり、また、訂正事項eは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。
訂正事項fについて
上記訂正事項fについては、特許請求の範囲の請求項の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るために、願書に添付した明細書の【0042】段落の対応する記載を訂正したものである。
従って、訂正事項fは、明りょうでない記載の釈明にあたり、また、訂正事項fは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張または変更するものではない。

(3) むすび
上記訂正事項a〜fは、上記(2)のとおりであるから、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合する。
従って、当該請求を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1) 申立て理由の概要
異議申立人永田大樹は、請求項1〜9に係る発明は、特許異議申立書記載の理由により、甲第1〜7記載の発明に基いて当業者が容易に発明できたものである。
よって、本件請求項1〜9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1〜9に係る特許を取り消すべきであると主張している。
また、本件請求項2及び8に係る発明は、特許異議申立書に記載された理由により、その出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された甲第8号証に係る出願(以下「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書(以下「先願明細書」という。)又は図面(以下「先願図面」という。)に記載された発明と同一であるから、本件請求項2及び8に係る特許を取り消すべきであると主張している。

(2)本件の請求項1〜9に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜9に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜9に記載されたとおりのものである。

(3)刊行物等
異議申立人永田大樹が証拠として提示した刊行物には、それぞれ、以下のような発明が記載されている。
刊行物1:特開昭63-226928号公報(甲第1号証)
甲第1号証の第2頁右上欄第17行〜左下欄第11行には、第1図参照を参照すると、ウエハ3に薬液を吐出する薬液吐出用のノズル1が配され、異なる薬液A、B、C、Dを供給する配管にそれぞれバルブ2a、2b、2c、2dが設けられ、その出側で1本にまとめられて前記ノズル1に接続される旨記載されている。
刊行物2:特開平4-183999号公報(甲第2号証)
甲第2号証の第2頁右上欄第4〜7行には、液体の入った容器内に配管を介してガス圧力を与えることにより液体を吐出させる旨記載されている。
また、甲第2号証の第2頁右上欄第10〜14行には、第1図を参照すると、制御部1と液体3が入った容器2を接続する配管チューブ6との間に圧力センサー4を設ける旨記載されている。
刊行物3;実願昭58-185945号(実開昭60-94661号公報)のマイクロフィルム(甲第3号証)
甲第3号証の第4頁第12〜16行には、第3図を参照すると、ドレインカップ1の中央部に回転軸2が設けられてその先端が基板固定板4となっており、その基板固定板4の中央部上方にはしジスト溶液を滴下するノズル5が設けられる旨記載されている。
また、甲第3号証の明細書第5頁第1〜4行には、第3図を参照すると、基板3のエッジ部の上方には露光されたエッジ部のレジスト塗膜を現像する現像液用のノズル12と、現像後にそのエッジ部を水洗するための洗浄水用ノズル13とが設けられる旨記載されている。
刊行物4:特開平3-256321号公報(甲第4号証)
甲第4号証の第2頁右上欄第第5〜10行には、第1図を参照すると、レジスト膜形成装置は、周辺のレジストを露光するための光源3と、その光源で露光されたレジスト膜をエッチング除去する現像液を滴下するノズル4を設ける旨記載されている。
また、甲第4号証の第2頁左下欄第5〜15行には、第1図を参照すると、レジスト液をウェーハ2上に滴下して、塗布した後に、周辺露光用の光源3でウェーハ2の真上から光を照射してウェーハ2を回転させながら露光し、さらに、現像液用ノズルである第2のノズル4から現像液を滴下させ、これによってレジスト膜の端部が盛り上がらずにレジスト膜11が除去され、さらに、ウェーハ2の側壁部のレジストは残るため、ウェーハ2の裏面から溶剤用ノズル7で、ケトンを噴出して除去する旨記載されている。
第1図においては、基板を誠置保持するための基板保持手段としてのスピンチャック10と、第2のノズル4および溶剤用ノズル7に対して洗浄液用ノズル5、5をそれぞれ設けた構成とが示されている。
刊行物5:特開平1-253923号公報(甲第5号証)
甲第5号証の第2頁左上欄第4〜8行には、ウエハ塗布膜のエッジ部分を除去する液体を噴射する第1のノズルと、このノズルの近傍に設けられるウエハ塗布膜の周辺部に対して流体を噴射する第1のノズルとを備えたものである旨記載されている。
また、甲第5号証の第2頁左上欄第19行〜右上欄第9行には、第1図を参照すると、半導体ウエハ3上の塗布膜4のエッジ部分を除去するように、薬液2を噴射する第1のノズル11と、前記塗布膜4の周緑一部に対して、例えばN2ガス等の流体13を噴射する第2のノズル12とを設ける旨記載されている。
さらに、甲第5号証の第2頁左下欄第8〜12行には、第2のノズル12から噴射する流体としては、N2ガスに限定されることなく、例えば薬液2の溶剤の飽和蒸気を使用しても何等差し支えない旨記載されている。
刊行物6;実開昭62-186931号(実開平1-92131号公報)のマイクロフィルム(甲第6号証)
甲第6号証の第1頁第19行〜第2頁第5行には、第5図を参照すると、従来のフォトレジスト除去機構は、フォトレジスト塗布後の半導体ウェハー2をスピンチャック1に保持しこれを回転させながら、ウェハー周辺部の溶剤ノズル3より溶剤を吐出し、ウェハー周辺部のフォトレジストを除去する構造のものである旨記載されている。
また、甲第6号証の第4頁第2〜12行には、第1図を参照すると、レジスト塗布後のウェハー周辺部にレジストの溶剤を吐出するための溶剤ノズル3と、同じくウェハー周辺部に気体を噴き付けるための気体ノズル5と、溶剤ノズル3及び気体ノズル5を支持して、ウェハー2の外周部に接触し回転するローラー7を備え、リニアスライダー8と一体構造の可動部を構成しているノズル支持具6とを有する旨が記載されている。
さらに、甲第6号証の第5頁第3〜5行には、第1図を参照すると、ローラー7は、処理時以外は、リニアスライダー支持具9を移動させることにより、ウェハー2の外周部より退去することができる旨記載されている。
刊行物7:特開平3-19216号公報(甲第7号証)
甲第7号証の第2頁右上欄第11〜16行には、スピンナー方式の枚葉型ウェット処理装置において、純水を被処理物に吹き付けるスプレーノズルと、希釈アルコールを含有する純水を彼処理物に吹き付けるスプレーノズルとを有する旨記載されている。
また、甲第7号証の第2頁左下欄第2〜11行には、第1図(a)を参照すると、純水9用のスプレーノズル6aとは別に、リンス液19用のスプレーノズル6bを設け、このリンス液19は、例えば101容量のタンク20に一定量の純水9を投入したのち、エタノール21を秤量ポンプ22にて、1.0%濃度となるようにタンク20に送り込み、タンク室内を窒素ガス23に置換して、リンス液19が劣化しないように設定される旨記載されている。
先願:特願平3-276506号(特開平6-124887号公報参照)(甲第8号証)
甲第8号証の第2頁第1棚第2〜7行の特許請求の範囲には、「半導体基板上にフォトレジストを形成し、基板周辺部のフォトレジストを洗浄除去する工程を有する半導体装置の製造方法において、フォトレジスト溶剤による第1の洗浄工程と、この第1の洗浄工程における残渣除去のための第2の洗浄工程とを少なくとも備える半導体装置の製造方法」と記載されている。
また、甲第8号証の第4頁第6欄第25〜43行には、図3を参照すると、洗浄液である溶剤3を吐出する吐出口4a、4bが複数設けられている基板洗浄装置であって、前記エッジリンスノズルである吐出口を2本(吐出口4a及び4b)を各々位置を変えて設け、最初に吐出口4aのノズルでレジスト膜2を除去し、次に吐出口4bのノズルで残渣を除去する旨記載されている。

(4) 対比・判断
[29条第2項について]
本件請求項1に係る発明が、「ノズルに、前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段」構成(以下、「本件請求項1に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明は、いずれも、本件請求項1に係る発明の特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項1に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、平成15年11月28日付け意見書第4頁第7行〜同頁第19行に記載された「訂正後の請求項1の発明によれば、基板主面に形成された薄膜を溶解させるための第1のリンス液とその第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液とを順次基板端縁に吐出することができるため、第1のリンス液を吐出して薄膜を溶解した後、揮発性の高い第2のリンス液を吐出して第1のリンス液を洗い流すことにより、基板端縁に付着していた第1のリンス液を第2のリンス液に置換することができます。第2のリンス液は第1のリンス液よりも揮発性が高いため、第1のリンス液をそのまま乾燥させるよりも、第1のリンス液を第2のリンス液に置換してその第2のリンス液を乾燥させる方がより短時間で乾燥させることができ、その結果基板端縁洗浄に要する時間を大幅に短縮することができるのであります。また、第1のリンス液を吐出した後に配管内からノズルに向けて気体を導入することで該配管およびノズルから残存第1リンス液をパージ(排出)し、しかる後に第2のリンス液を吐出することで配管内やノズル内でリンス液が混ざってしまうのを防止できます。」という効果を有する。
従って、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項2に係る発明が、「第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズル」構成(以下、「本件請求項2に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明は、いずれも、本件請求項2に係る発明の特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項2に係る発明は、本件請求項2に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、平成15年11月28日付け意見書第4頁第7行〜同頁第19行に記載された「請求項2の発明によれば、薄膜を溶解させるための第1のリンス液とその第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液とを順次基板端縁に吐出することができるため、上記請求項1の発明と同様に、第1のリンス液を吐出して薄膜を溶解した後、揮発性の高い第2のリンス液を吐出して第1のリンス液を洗い流して置換することにより、乾燥時間を短縮することができます。また、第1および第2のリンス液にそれぞれ専用のノズルを設けているため、ノズル内でリンス液が混ざってしまうのを防止できます。」という、甲第1号証〜甲第7号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項8に係る発明が、「基板の端縁に第1のノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、第2のノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程」構成(以下、「本件請求項8に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明は、いずれも、本件請求項8に係る発明の上記特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項8に係る発明は、本件請求項8に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、平成15年11月28日付け意見書第4頁第7行〜同頁第19行に記載された「請求項8の発明によれば、薄膜を溶解させるための第1のリンス液とその第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液とを順次基板端縁に吐出しているため、上記請求項1の発明と同様に、第1のリンス液を吐出して薄膜を溶解した後、揮発性の高い第2のリンス液を吐出して第1のリンス液を洗い流して置換することにより、乾燥時間を短縮することができます。また、第1および第2のリンス液にそれぞれ専用のノズルを設けているため、ノズル内でリンス液が混ざってしまうのを防止できます。」という、甲第1号証〜甲第7号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項8に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項9に係る発明が、「第1のリンス液が吐出された前記端縁に、気体導入後の前記ノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程」構成(以下、「本件請求項9に係る発明の特徴的構成」という。)を有するのに対し、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明は、いずれも、本件請求項9に係る発明の上記特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
また、本件請求項9に係る発明は、本件請求項9に係る発明の上記特徴的構成を有することにより、平成15年11月28日付け意見書第4頁第7行〜同頁第19行に記載された「請求項9の発明によれば、薄膜を溶解させるための第1のリンス液を基板端縁に吐出した後、その第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を該基板端緑に吐出しているため、上記請求項1の発明と同様に、第1のリンス液を吐出して薄膜を溶解した後、揮発性の高い第2のリンス液を吐出して第1のリンス液を洗い流して置換することにより、乾燥時間を短縮することができます。また、第1のリンス液を吐出した後に配管内からノズルに向けて気体を導入することで該配管およびノズルから残存第1リンス液をパージ(排出)し、しかる後に第2のリンス液を吐出することで配管内やノズル内でリンス液が混ざってしまうのを防止できます。」という、甲第1号証〜甲第7号証にはない効果を有する。
従って、本件請求項9に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項1に係る発明を引用する本件請求項3に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成を有するから、本件請求項1に係る発明と同様に、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項1または2に係る発明を引用する本件請求項4に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成または本件請求項2に係る発明の特徴的構成を有するから、本件請求項1に係る発明及び本件請求項2に係る発明と同様に、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項2ないし4のいずれか1項に係る発明を引用する本件請求項5に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成または本件請求項2に係る発明の特徴的構成を有するから、本件請求項1に係る発明及び本件請求項2に係る発明と同様に、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項1に係る発明を引用する本件請求項6に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成を有するから、本件請求項1に係る発明と同様に、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
本件請求項2ないし5のいずれか1項に係る発明を引用する本件請求項7に係る発明は、本件請求項1に係る発明の上記特徴的構成または本件請求項2に係る発明の上記特徴的構成を有するから、本件請求項1に係る発明及び本件請求項2に係る発明と同様に、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
[29条の2について]
本件請求項2に係る発明が、本件請求項2に係る発明の上記特徴的構成を有するのに対し、先願(甲第8号証)に記載された発明は、上記本件請求項2に係る発明の上記特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
従って、本件請求項2に係る発明は、上記先願に記載された発明ではない。
本件請求項8に係る発明が、本件請求項8に係る発明の上記特徴的構成を有するのに対し、上記先願に記載された発明は、本件請求項8に係る発明の上記特徴的構成について記載又は当該記載を示唆をするものではない。
従って、本件請求項8に係る発明は、上記先願に記載された発明ではない。

(5) むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜9に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜9に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
従って、本件請求項1〜9に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板端縁洗浄装置及び方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、
該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、
前記ノズルに、前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、
前記リンス液供給手段と前記ノズルとを接続する配管と、
前記配管内から前記ノズルに向けて気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項2】 一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、
該基板保持手段によって保持された基板の端縁に前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、
前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、
前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項3】 請求項2記載の基板端縁洗浄装置において、
前記第1のノズルと前記第2のノズルとを、前記基板の端縁に沿う方向に配置することを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項4】 請求項2または請求項3に記載の基板端縁洗浄装置において、
前記第1のノズルは、複数のノズルからなるノズル群を含むことを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項5】 請求項2から請求項4のいずれかに記載の基板端縁洗浄装置において、
前記第2のノズルは、複数のノズルからなるノズル群を含むことを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項6】 請求項1記載の基板端縁洗浄装置において、
前記ノズルを前記基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項7】 請求項2から請求項5のいずれかに記載の基板端縁洗浄装置において、
前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを前記基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段をさらに備えることを特徴とする基板端縁洗浄装置。
【請求項8】 一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、
前記基板の端縁に第1のノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、第2のノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄方法。
【請求項9】 一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、
前記基板の端縁にノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
前記ノズルおよび当該ノズルへの配管に気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする工程と、
前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、気体導入後の前記ノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、
を備えることを特徴とする基板端縁洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、フォトレジスト液,感光性ポリイミド樹脂,カラーフィルタ用の染色剤などからなる薄膜がその一方主面に塗布された液晶用ガラス基板,フォトマスク用ガラス基板などの基板に対し、上記薄膜塗布後に基板の端面(側面)に付着した不要薄膜を洗浄除去する基板端縁洗浄装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のような基板端縁洗浄装置としては、従来、例えば特公平3-78777号公報に開示されているものがあった。
【0003】
この公知例によれば、その一方主面に薄膜が形成された基板の周縁部の上方主面(表面)と下方主面(裏面)に対向して第1の管と第2の管がそれぞれ設けられるとともに、第1および第2の管の間の間隙部でかつ基板端部の延長上に第3の管が設けられている。そして、第1および第2の管から基板の周縁部の上方主面と下方主面にリンス液として溶剤を供給するとともに、その溶剤ならびに溶解除去された不要薄膜を第3の管から吸引排出できるように構成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、基板に形成された薄膜の種類によっては、複数種類のリンス液を用いて端縁洗浄する、例えば第1のリンス液による基板の端縁洗浄を行った後、続けて第1のリンス液と異なる第2のリンス液としての溶剤による端縁洗浄を行うのが好ましい場合がある。
【0005】
しかしながら、上記従来例では、1種類のリンス液を用いることしか考慮されていないため、複数種類のリンス液を用いた基板の端縁洗浄を行うことができなかった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、複数種類のリンス液を順次、基板端縁に吐出して洗浄することができる基板端縁洗浄装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、前記ノズルに、前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、前記リンス液供給手段と前記ノズルとを接続する配管と、前記配管内から前記ノズルに向けて気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、を備えている。
また、請求項2の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、を備えている。
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第1のノズルと前記第2のノズルとを、前記基板の端縁に沿う方向に配置している。
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第1のノズルに、複数のノズルからなるノズル群を含ませている。
また、請求項5の発明は、請求項2から請求項4のいずれかの発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第2のノズルに、複数のノズルからなるノズル群を含ませている。
また、請求項6の発明は、請求項1の発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記ノズルを前記基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段をさらに備えている。
また、請求項7の発明は、請求項2から請求項5のいずれかの発明に係る基板端縁洗浄装置において、前記第1のノズルおよび前記第2のノズルを前記基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段をさらに備えている。
また、請求項8の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、前記基板の端縁に第1のノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、第2のノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、を備えている。
また、請求項9の発明は、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、前記基板の端縁にノズルから前記薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、前記ノズルおよび当該ノズルへの配管に気体を導入して前記配管および前記ノズルから残存リンス液をパージする工程と、前記第1のリンス液が吐出された前記端縁に、気体導入後の前記ノズルから前記第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して前記端縁を洗浄する工程と、を備えている。
【0008】
【作用】
請求項1の発明では、基板の端縁に液を吐出するノズルに、薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、リンス液供給手段とノズルとを接続する配管と、配管内からノズルに向けて気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項2の発明では、基板の端縁に薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、第1のリンス液が吐出された基板の端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、を備えるため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項3の発明では、第1のノズルと第2のノズルとを基板の端縁に沿う方向に配置しているため、洗浄処理時間を短縮することができる。
また、請求項4の発明では、第1のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項5の発明では、第2のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項6の発明では、ノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項7の発明では、第1のノズルおよび第2のノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項8の発明では、基板の端縁に第1のノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄し、第1のリンス液が吐出された端縁に、第2のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄するため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項9の発明では、基板の端縁にノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄し、そのノズルおよびノズルへの配管に気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージし、第1のリンス液が吐出された端縁に、気体導入後のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄するため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
【0009】
【実施例】
次に、本発明の実施例を図面に用いて説明する。
【0010】
A.第1実施例
図1は、本発明にかかる基板端縁洗浄装置の第1実施例の全体概略平面図であり、図2は一部切欠全体概略側面図である。この基板端縁洗浄装置4では、回転塗布によって表面に薄膜が形成された角型基板1を載置保持する基板保持ユニット2が基台B上に設けられ、さらにその基板保持ユニット2の周囲4箇所に基板端縁洗浄具3が配置されている。
【0011】
基板保持ユニット2では、基台Bに、第1のエアーシリンダ5と一対の第1のガイド6,6を介してシリンダ支持台7が昇降可能に設けられている。また、そのシリンダ支持台7上に第2のエアーシリンダ8が設けられ、さらに第2のエアーシリンダ8に角型基板1を真空吸着によって載置保持する基板載置プレート9が一体的に設けられている。
【0012】
基板端縁洗浄具3は、洗浄具本体10(後述する図4を参照)と、その洗浄具本体10を角型基板1の端縁に沿わせて直線移動する移動機構11と、洗浄具本体10を角型基板1の端縁に対して遠近変位する位置調整機構12とで構成されている。
【0013】
図3は、基板端縁洗浄具3を示す図である。移動機構11は、同図に示すように、基台Bに取り付けられた支持台13を有している。そして、図1に示すように、この支持台13に一対の第2のガイド14,14を介して角型基板1の端縁に沿う方向に移動可能に移動台15が設けられるとともに、支持台13に主動プーリー16と従動プーリー17とが取り付けられ、さらに、これらのプーリー16,17にベルト18が巻回されている。また、そのベルト18には移動台15が一体的に取り付けられており、主動プーリー16に連動連結されている電動モータ19を駆動することによって、洗浄具本体10を角型基板1の端縁に沿わせて直線移動することができるように構成されている。
【0014】
位置調整機構12は、一対の第3のガイド20,20と、第3のエアーシリンダ21と、支持部材22(図4)とで構成されている。支持部材22は、一対の第3のガイド20,20と第3のエアーシリンダ21とを介して、移動台15に取り付けられており、第3のエアーシリンダ21を駆動することによって角型基板1に対して遠近する方向に駆動移動するようになっている。したがって、この支持部材22の移動により、支持部材22に取り付けられた洗浄具本体10を角型基板1の大きさに応じて、変位できるように構成されている。
【0015】
図4は、洗浄具本体10を角型基板1側から見た正面図である。同図に示すように、この支持部材22には、吸引部材23が取り付けられるとともに、その吸引部材23の吸引口23aを挟んだ上下方向の上側に第1のリンス液吐出ユニット24aと第1のガスノズル25a(図3)とが設けられる一方、その下側に第2のリンス液吐出ユニット24bと第2のガスノズル25b(図3)とが設けられている。なお、図示を省略するが、吸引部材23には排気管を介して真空源が接続されている。また、第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bは、次に説明するリンス液供給ユニットに接続されており、リンス液供給ユニットからのリンス液を基板保持ユニット2に保持された基板1の端縁部分に吐出するように構成されている。さらに、第1および第2のガスノズル25a,25bそれぞれには、ガスとして窒素ガスを供給するガス供給管が接続されている。
【0016】
図5は、リンス液供給ユニットの構成を示す概略ブロック図である。この実施例では、リンス液として互いに種類の異なる溶剤を第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bに供給するため、第1及び第2のリンス液供給ユニット27a,27bが設けられている。なお、第1のリンス液供給ユニット27aから供給する第1のリンス液と、第2のリンス液供給ユニット27bから供給する第2のリンス液との組み合わせてとしては、例えばN-メチル,2-ピロリドン(以下「NMP」という)とメチルイソブチルケトン(以下「MIBK」という)との組み合わせがある。これ以外の、組み合わせとしては、例えばジメチルホルムアミド(以下「DMF」という)と上記MIBKとの組み合わせ、ジメチルアセトアミド(以下「DMAc」という)と上記MIBKとの組み合わせ、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下「ECA」という)と上記MIBKとの組み合わせ等がある。
【0017】
第1のリンス液供給ユニット27aでは、第1のリンス液を貯留するボトル28aが加圧タンク29aに収納されている。この加圧タンク29aには、開閉バルブ30aが取り付けられており、この開閉バルブ30aを介して窒素ガスやエアーを加圧タンク29aに導入すると、内圧が上昇し、ボトル28a内の第1のリンス液がチューブ31aを通ってトラップタンク32aに供給される。なお、このトラップタンク32aには、エアー抜き用のバルブ33aが取り付けられている。
【0018】
トラップタンク32aはチューブ34aによってマニホールド35aと接続されており、トラップタンク32aに一時的に貯留された第1のリンス液がマニホールド35aに与えられる。そして、マニホールド35aから伸びる4本の分岐端36a〜39aのうちの分岐端36aには、流量計40aおよびエアーオペレート弁41aを介して所定の第1のリンス液吐出ユニット24aと接続されており、エアーオペレート弁41aを開成することによって、第1のリンス液を第1のリンス液吐出ユニット24aに供給し、第1のリンス液吐出ユニット24aから基板1の上面へ第1のリンス液が吐出される。また、第1のリンス液吐出ユニット24aには、エアーオペレート弁42aが接続されており、このエアーオペレート弁42aを開成することによって窒素ガスが第1のリンス液吐出ユニット24aに向けて導入され、残存溶剤等のリンス液をパージすることができるようになっている。
【0019】
なお、図5では吸引口23aの上側に配置された第1のリンス液吐出ユニット24aにのみ第1のリンス液が供給されるように図示されているが、その下側に配置された第2のリンス液吐出ユニット24bにも同時に供給されるように構成されている。また、エアーオペレート弁42aを介して窒素ガスを第2のリンス液吐出ユニット24bに供給して、残存溶剤をパージすることができるようになっている。さらに、上記では、分岐端36aに関連する要素(流量計40a,エアーオペレート弁41a,42a)のみを図示しているが、その他の分岐端37a〜39aにも同一要素が設けられており、上記と同様にして第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bへの第1のリンス液の供給および残存溶剤等のリンス液のパージ処理を行うことができるように構成されている。
【0020】
以上のように、第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bと、第1のリンス液供給ユニット27aとで角型基板1の端縁に第1のリンス液を吐出する手段、つまり第1のリンス液吐出手段が構成されている。
【0021】
一方、第2のリンス液供給ユニット27bでは、ボトル28b内に第1のリンス液とは異なる種類の第2のリンス液としての溶剤が貯留されている。なお、その他の構成は上記第1のリンス液供給ユニット27aと同一構成であるため、相当符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
次に、基板端縁洗浄装置の動作について具体例(ポリイミド薄膜を除去する場合)を示しながら説明する。
【0023】
図6は、基板端縁洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【0024】
角型基板1へのポリイミド薄膜の形成が完了すると、以下の処理が実行されて、基板端縁の洗浄処理が行われる。なお、予め基板端縁洗浄装置には、ボトル28aに第1のリンス液として溶剤NMPを、またボトル28bに第2のリンス液として溶剤MIBKを貯留しておく。また、薄膜形成完了時点では、エアーオペレート弁41a,41b,42a,42bはともに閉成されている。
【0025】
まず、ステップS1で、エアーオペレート弁41aが開成され、これによってボトル28aに貯留されている第1のリンス液(NMP)が第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bから角型基板1の両主面(表面,裏面)の端縁部に向けて吐出される。
【0026】
そして、この状態のままで、4つの洗浄具本体10を同期させながら角型基板1の各辺に沿って移動させて(ステップS2)、第1のリンス液(NMP)によるポリイミド薄膜の溶解除去処理を行う。
【0027】
上記のようにして薄膜の溶解除去処理が完了すると、エアーオペレート弁41aを閉成して(ステップS3)、第1のリンス液(NMP)の供給を停止する。なお、この処理をもって端縁洗浄処理を完了することも可能であるが、NMPは揮発性が比較的低いので、角型基板1を充分に乾燥させるためには、上記処理(ステップS3)の後、角型基板1をその状態(基板保持ユニット2に載置された状態)で長時間放置しておく必要がある。その結果、全体の処理時間が長くなってしまう。また、NMPは乾燥しにくいため、その吐出領域(基板端縁部)で「シミ」,「ムラ」などの不具合が生じることがある。
【0028】
そこで、この実施例では、長時間放置する代わりに、次の処理(ステップS4〜S8)を行って、基板端縁洗浄処理に要する処理時間の短縮化を図るとともに、上記不具合の発生を防止している。
【0029】
すなわち、ステップS4で、エアーオペレート弁42aを一定時間開成する。このようにエアーオペレート弁42aを開成することによって、窒素ガスが第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24b側に導入され、第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bに残存している第1のリンス液(NMP)がパージされる。
【0030】
そして、ステップS5で、エアーオペレート弁41bが開成され、ボトル28bに貯留されている第2のリンス液としての溶剤(MIBK)が第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bから角型基板1の両主面(表面,裏面)の端縁部に向けて吐出される。そして、第2のリンス液としての溶剤(MIBK)を角型基板1に吐出しながら、4つの洗浄具本体10を角型基板1の各辺に沿って移動させる(ステップS6)。ここで、第2のリンス液としての溶剤であるMIBKは揮発性が比較的高く、その溶剤を上記のようにして溶解除去された領域(つまり、基板両主面の端縁部)に供給することによって、その領域は短時間で乾燥する。
【0031】
上記のように第2のリンス液(MIBK)による乾燥処理が完了すると、エアーオペレート弁41bを閉成し(ステップS7)、第2のリンス液(MIBK)の角型基板1への吐出を停止する。その後、上記ステップS4と同様に、エアーオペレート弁42bを一定時間開成して(ステップS8)、第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bに残存している第2のリンス液(MIBK)をパージする。
【0032】
このように、この具体例によれば、ポリイミド薄膜を溶解させるための溶剤(NMP)と、揮発性の高い溶剤(MIBK)とを用意し、第1のリンス液(NMP)でポリイミド薄膜を溶解した後、第2のリンス液(MIBK)をその溶解除去した領域に供給して短時間で乾燥するようにしているので、基板端縁洗浄に要する時間を大幅に短縮することができる。また、溶解処理により基板端縁に残り「シミ」,「ムラ」の原因となる第1のリンス液(NMP)を第2のリンス液(MIBK)で洗い流すため、上記不具合の発生を効果的に防止することができる。
【0033】
なお、上記具体例では、第1および第2のリンス液の組み合わせを(NMP,MIBK)としたが、その組み合わせばこれに限定されるものではなく、上記したような各種の組み合わせによって基板端縁洗浄処理を行うことができ、同様の効果が得られる。
【0034】
また、上記具体例では、第1のリンス液(NMP)による溶解処理が完了した後、窒素ガスによるパージ処理(ステップS4)を行っているが、この処理を行わず、溶解処理完了に続いて、第2のリンス液(MIBK)による乾燥処理を行うようにしてもよい。
【0035】
また、上記説明では、角型基板1の端縁部に形成されたポリイミド薄膜を溶解除去する具体例について詳述しているが、この実施例にかかる基板端縁洗浄装置はこれ以外の目的にも適用できる。例えば、カラーレジストが形成された基板の端縁を洗浄する場合、カラーレジストを溶解するためには互いに種類の異なる第1および第2のリンス液を用いる必要があり、従来の基板端縁洗浄装置では対応することができなかった。しかし、上記のように構成された基板端縁洗浄装置によれば、第1および第2のリンス液をそれぞれボトル28a,28bに貯留し、上記のように順次基板端縁に吐出することによってカラーレジストの溶解除去が可能となる。
【0036】
B.第2実施例
上記第1実施例では第1および第2のリンス液吐出ユニット24a,24bから第1および第2のリンス液が交互に吐出するようにしているが、図7に示すように、各リンス液吐出ユニット24a,24bに第1のリンス液のみを吐出するノズル50a,50bと第2のリンス液のみを吐出するノズル51a,51bとを設け、しかもノズル50a,50bを第1のリンス液供給ユニット27aに、またノズル51a,51bを第2のリンス液供給ユニット27bに接続してもよい。
【0037】
C.第3実施例
また、図8に示すように、各リンス液吐出ユニット24a,24bを、第1のリンス液のみを吐出するノズル61a群からなるノズルブロック60aと第2のリンス液のみを吐出するノズル61b群からなるノズルブロック60bとで構成し、しかもノズルブロック60a,60bをそれぞれ第1および第2のリンス液供給ユニット27a,27bに接続するようにしてもよい。この場合、上記のように洗浄具本体10を基板1の各辺に沿って移動させると、ノズルブロック60a,60bが同時に同図の矢印X方向に移動する。したがって、この第3実施例では、第1および第2のリンス液を基板1に向けて吐出しながら、洗浄具本体10をX方向に移動させることによって、基板1の端縁を洗浄することができる。このように、第3実施例によれば、1回の洗浄具本体移動により洗浄処理を行うことができるので、基板端縁洗浄処理時間を短縮することができる。
【0038】
D.その他の実施例
なお、上記実施例では、図1に示す4つの基板端縁洗浄具3でそれぞれ第1および第2のリンス液による基板端縁洗浄処理を行うことができるように構成しているが、例えば上記基板端縁洗浄具3のうち2つを第1のリンス液による洗浄処理ステーション(第1の処理ステーション)とする一方、残りを第2のリンス液による洗浄処理ステーション(第2の処理ステーション)とすることも可能である。この場合、まず第1の処理ステーションでの第1のリンス液による洗浄処理が完了すると、角型基板1を回転させ、第1のリンス液による処理が完了した基板端縁を第2の処理ステーションに位置させる。そして、その第2の処理ステーションで第2のリンス液による洗浄処理を行うことによって、上記実施例と同様の効果が得られる。
【0039】
また、上記説明では、2種類のリンス液を用いて基板の端縁洗浄を行う場合について説明したが、リンス液の種類は2種類に限定されるものではなく、3種類以上のリンス液を用いる場合にも、本発明を適用することができることはいうまでもない。
【0040】
なお、上記実施例では、第1、第2のリンス液吐出ノズルからリンス液として互いに種類の異なる溶剤を吐出させて基板端縁を洗浄するように構成されていたが、水溶性の材料からなる薄膜が基板上に形成されている場合には、水もしくは湯などによって洗浄することができるので、第1のリンス液吐出ノズルからは、薄膜材料の種類に応じて、溶剤の代わりに水、湯、アルカリ現像液等、他の種類のリンス液を吐出するよう構成してもよい。
【0041】
さらに、上記実施例では、基板1の両主面における端縁を洗浄するようにしているが、どちらか一方主面の端縁のみを洗浄する場合にも本発明を適用することができ、上記と同様の効果が得られる。
【0042】
【発明の効果】
請求項1の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に液を吐出するノズルと、該ノズルに、薄膜を溶解させるための第1のリンス液および第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を選択して供給するリンス液供給手段と、リンス液供給手段とノズルとを接続する配管と、該配管内からノズルに向けて気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージする気体導入手段と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項2の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を載置保持する基板保持手段と、該基板保持手段によって保持された基板の端縁に薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出する第1のノズルと、第1のリンス液が吐出された基板の端縁に第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出する第2のノズルと、前記第1のノズルに第1のリンス液を供給する第1のリンス液供給手段と、前記第2のノズルに第2のリンス液を供給する第2のリンス液供給手段と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項3の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第1のノズルと第2のノズルとを、基板の端縁に沿う方向に配置するため、洗浄処理時間を短縮することができる。
また、請求項4の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第1のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項5の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第2のノズルが複数のノズルからなるノズル群を含むため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項6の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、ノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項7の発明にかかる基板端縁洗浄装置によれば、第1のノズルおよび第2のノズルを基板の端縁に沿わせて相対移動させる移動手段を備えているため、簡単な装置構成にて複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項8の発明にかかる基板端縁洗浄方法によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、基板の端縁に第1のノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄する工程と、第1のリンス液が吐出された端縁に、第2のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄する工程と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
また、請求項9の発明にかかる基板端縁洗浄方法によれば、一方主面に薄膜が形成された基板を用意する工程と、基板の端縁にノズルから薄膜を溶解させるための第1のリンス液を吐出して端縁を洗浄する工程と、当該ノズルおよびノズルへの配管に気体を導入して該配管およびノズルから残存リンス液をパージする工程と、第1のリンス液が吐出された端縁に、気体導入後のノズルから第1のリンス液よりも揮発性の高い第2のリンス液を吐出して当該端縁を洗浄する工程と、を備えているため、複数種類のリンス液を用いて基板の端縁を洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明にかかる基板端縁洗浄装置の第1実施例の全体概略平面図である。
【図2】
図1の一部切欠拡大概略側面図である。
【図3】
図1の要部の一部切欠拡大側面図である。
【図4】
洗浄具本体を角型基板側から見た正面図である。
【図5】
リンス液供給ユニットの構成を示す概略ブロック図である。
【図6】
第1実施例にかかる基板端縁洗浄装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】
本発明にかかる基板端縁洗浄装置の第2実施例の部分拡大図である。
【図8】
本発明にかかる基板端縁洗浄装置の第3実施例の部分拡大図である。
【符号の説明】
24a 第1のリンス液吐出ユニット
24b 第2のリンス液吐出ユニット
27a 第1のリンス液供給ユニット
27b 第2のリンス液供給ユニット
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-18 
出願番号 特願平5-16695
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 534- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 浩一  
特許庁審判長 鹿股 俊雄
特許庁審判官 辻 徹二
柏崎 正男
登録日 2002-05-24 
登録番号 特許第3311407号(P3311407)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 基板端縁洗浄装置及び方法  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉田 茂明  
代理人 吉田 茂明  

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