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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
管理番号 1094645
異議申立番号 異議2003-70741  
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-12-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-03-19 
確定日 2004-02-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3327950号「超音波内視鏡」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3327950号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

特許第3327950号の請求項1に係る発明は、平成4年6月17日に特許出願され、平成14年7月12日にその特許権の設定登録がなされ、その後、ペンタックス株式会社より特許異議申立がなされ、取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年12月24日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断

2-(1)訂正の内容
(訂正事項a)
特許請求の範囲の請求項1の「生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設けると共に、上記鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けたことを特徴とする超音波内視鏡。」を、「生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プロープを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設け、前記超音波用処置具類が最大起上時に前記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有すると共に、上記鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けたことを特徴とする超音波内視鏡。」と訂正する。

(訂正事項b)
段落0007欄の「【発明が解決しようとする課題】上記目的を達成する本発明に係る超音波内視鏡は、生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設けると共に、上記鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けたことを特徴とするものである。」を、「【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明に係る超音波内視鏡は、生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設け、前記超音波用処置具類が最大起上時に前記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有すると共に、上記鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けたことを特徴とするものである。」と訂正する。

(訂正事項c)
段落0033欄の「【発明の効果】本発明によれば、超音波プローブは挿入部の先端側に、挿入部の断面よりも小さな断面を有して、挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、鉗子口は超音波プローブよりも手元側の挿入部に、挿入部の中心軸とほぼ平行な超音波送受波面を通る直線上に設け、観察光学系及び照明光学系は鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して設けたので、挿入部外径を細径化できると共に、挿入先端部の硬質部の長さを短くすることができる。したがって、挿入性を向上することができ、被検者の苦痛低減、検査時間の短縮化、術者の負担軽減を図ることができる。」の記載を、「【発明の効果】本発明によれば、超音波プロープは挿入部の先端側に、挿入部の断面よりも小さな断面を有して、挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、鉗子口は超音波プロープよりも手元側の挿入部に、挿入部の中心軸とほぼ平行な超音波送受波面を通る直線上に設け、前記超音波用処置具類が最大起上時に前記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有すと共に、観察光学系及び照明光学系は鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して設けたので、穿刺針を超音波プローブ走査範囲の良好画像範囲内に留めつつ挿入部外径を細径化できると共に、挿入先端部の硬質部の長さを短くすることができる。したがって、挿入性を向上することができ、被検者の苦痛低減、検査時間の短縮化、術者の負担軽減を図ることができる。」と訂正する。

2-(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否

訂正事項aは、請求項1に記載された超音波内視鏡が、「超音波用処置具類が最大起上時に超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有する」構成に限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

訂正事項bは、訂正事項aにより、特許請求の範囲の請求項1が訂正されたのに伴って、発明の詳細な説明において段落0007欄の【発明が解決しようとする課題】として記載された事項が請求項1の記載との整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落0007欄の記載を請求項1の記載に合わせて訂正しようとするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項cは、訂正事項aにより、特許請求の範囲の請求項1が訂正されたのに伴って、発明の詳細な説明の段落0033欄の【発明の効果】として記載された事項が請求項1に係る発明の効果との整合性を失って不明りょうになるのを避けるために、段落0033欄の記載を請求項1の記載に整合させて訂正しようとするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、これら訂正事項a乃至cは、段落0017、0019欄の記載に基づくものであり、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でされたものである。

さらに、これら訂正事項a乃至cは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-(3)むすび

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断

3-(1)特許異議申立の概要

特許異議申立人ペンタックス株式会社は、甲第1-3号証として以下の刊行物1-3を提出し、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨主張している。

刊行物1:特開平1-280446号公報
刊行物2:特開平1-175826号公報
刊行物3:特公平3-63375号公報

3-(2)本件発明

上記のとおり訂正は認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。(訂正事項aを参照。)

3-(3)刊行物1-3に記載された事項

刊行物1には、「穿刺針の角度を調節するガイド機構等を設けると更に大型化する上、剛性のある穿刺針を屈曲させて角度調整をすることは実際上極めて難しく、例え曲げ得たとしても抵抗が大きく挿通不可能になるのが実情である。」(第2頁左下欄5-9行)、「この開口面14には、照明光学系の対物レンズ15と照明レンズ16・・・が設けてある」(第4頁左上欄1-5行)、「そしてさらにこの開口面14の超音波探触子により走査ライン19の延長線上には穿刺針20を突出させるための穿刺針挿通路21の導出口22が設けてある。この穿刺針挿通路21は先端ブロック12内において超音波探触子13による超音波走査面35と同一な平面に沿ってあけられておりその他端は先端ブロック12の後端面に開口している。そして、その長さは使用する穿刺針の先端硬質部23以上の長さを有し真っ直ぐにあけられている」(第4頁左上欄5-14行)、「なお、この吸引チャンネル30及び吸引口18は穿刺針挿通路を吸引管路として共用することで省略しても良い。」(第4頁右上欄10-12行)、「上記実施例では穿刺針を使用するものとしたが、・・・・例えば生検鉗子等の処置具を使用する・・・同様の効果が得られる。」(第4頁左下欄19行-右下欄2行)、「したがって、先端部を大形化することなく、穿刺針をスムーズに突き出すことができ、さらには穿刺針を超音波断層像内に良好にとらえることが可能な超音波ガイド穿刺ができる超音波内視鏡を提供することができることとなる。」(第5頁左上欄17行-右上欄第1行)、本発明の実施例の先端部の詳細な側面断面図(第1図)、平面図(第2図)が記載・図示されている。

刊行物2には、「本発明は、挿入部を体腔内に挿入し体腔内壁の観察と合わせて補助診断や処置もできる構造をもついわゆる前方側視型、前方斜視型の内視鏡に関するものである。」(第1頁左下欄14-17行)、「また、処置具先端を吸引口外へ突出させるための起上機構を設けるという手段もあるが、これにより先端硬質部の外径が太くなって被検者へ苦痛を与えることになる。」(第1頁右下欄16-20行)、「挿入部先端に超音波診断用の超音波探触子を設けた超音波内視鏡は既知である。・・・そして前記吸引口およびこれに連続する吸引管路は各種の内視鏡用処置具を操作部などから挿通して補助診断、処置を行う際に利用される。」(公報第1頁左下欄19行-右下欄5行)、「第2図A,B,Cは先端硬質部1の内部構成を示すものである。超音波探触子15は超音波伝達媒体16が充満された先端キャップ17内に設けられ、回転子12を介して駆動軸25に連続している。先端キャップの後方には照明窓18、これに連続するライトガイドファイバー19と観察窓20、これに連続する光学系14、固体撮像素子21、信号ケーブル22、送気送水ノズル23・・・を設けている。」(第2頁右上欄第10-20行)、「更に吸引口27とこれに連続する吸引管路26がプローブ(処置具)の挿入口11にまで延在している。この吸引管路26内に超音波ドップラープローブ29などの処置具が挿通される。」(第2頁左下欄1-4行)、「第4図は、本発明の第3実施例を示すもので、先端硬質部41にほぼ90°の超音波スキャン範囲36をもつ縦断層タイプの電子セクタ型(フエイズドアレイ式)プローブ37とこれに連続する信号ケーブル束38を設け、更に内側に反射面28を有する吸引口27とこれに連続する吸引管路26を設けるとともに前方斜視型の観察窓40、これに連続する光学系41a、光ファイバハンドル39を設けている。吸引管路26には超音波ドップラープローブ29を挿通し、視野範囲30aにドップラービームを入出射する。」(第3頁左上欄18行-右上欄8行)、本発明に係る内視鏡の先端硬質部の断面図(第2図A-C。特にAにおいて、超音波探触子(15)を挿入部の中心軸に対して、一方側に偏奇して設けている点。挿入部の中心軸に対して、「照明窓(18)・観察窓(20)」と「吸引口(27)」とが反対側に設けられている点。)、本発明の第3実施例図(第4図B。特に、プローブ(37)として、電子セクタ(フエイズドアレイ式)を用いている点。)が記載・図示されている。

刊行物3には、「第5の実施例を第13図に示す。この実施例は体腔内超音波診断装置として第1の内視鏡1における超音波プローブ18を片側に寄せて設置し、・・・・なお、図示はしないが超音波穿刺針ガイド口42も超音波プローブ18に伴って片側に寄せて設ける。」(6頁12欄11-20行)、「ところで、第2図に示すように超音波プローブ18の診断幅11は30mmである。」(2頁4欄21-22行)、第2図、第13図が記載・図示されている。

3-(4)対比・判断

本件発明と刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された超音波内視鏡における、「先端ブロック12」、「超音波探触子13」、「穿刺針挿通路21の導出口22」は、本件発明における「挿入部」、「超音波プローブ」、「鉗子口」にそれぞれ相当するから、両者は、
「生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向けて設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記挿入部の中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設けると共に、上記鉗子口の近傍に観察光学系及び照明光学系を設けた超音波内視鏡」である点で一致し、以下の2点で相違している。

(相違点1)
本件発明においては、超音波プローブを、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、「挿入部の中心軸とほぼ平行な、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設けられた超音波プローブの超音波送受波面を通る」直線上に鉗子口を設けているとともに、鉗子口の近傍に観察光学系及び照明光学系を設けるに際し、「挿入部の中心軸とほぼ平行な、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設けられた超音波プローブの超音波送受波面を通る」直線に対して「超音波プローブの走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む」平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けているのに対して、
刊行物1に記載された発明においては、超音波プローブは、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面近傍に設け、挿入部の中心軸とほぼ平行なその平面近傍に設けられた超音波プローブの超音波送受波面を通る直線上に鉗子口を設けているとともに、鉗子口の近傍に観察光学系及び照明光学系を設けるに際し、「挿入部の中心軸とほぼ平行な、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面近傍に設けられた超音波送受波面を通る」直線に対して、両側に観察光学系及び照明光学系を設けている点。

(相違点2)
本件発明は、超音波用処置具類が最大起上時に超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有しているのに対して、
刊行物1に記載された発明は、穿刺針等の超音波用処置具類を、真っ直ぐに設けられた鉗子口を挿通させて、超音波プローブの走査範囲の中心位置に沿って真っ直ぐに突出させるだけであって、超音波用処置具類が最大起上時に超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有していない点。

まず、上記(相違点2)について検討する。

刊行物1には従来技術として「鉗子起上台」に相当する「穿刺針の角度を調節するガイド機構」について記載があるが、そもそも刊行物1に記載された発明は、従来技術の穿刺針の角度を調節するガイド機構を設けると、先端部が大型化する・穿刺針に対する抵抗が大きくなるという問題に着目して、先端部を小型化し、かつ、スムーズに穿刺針を突出させることができるように、穿刺針等の超音波用処置具類を、真っ直ぐに設けられた鉗子口を挿通させて、コンベックス型の超音波プローブの走査範囲の中心位置に沿って真っ直ぐに突出させるようにした発明であって、刊行物1に記載された発明において、従来技術の鉗子起上台を有する構成を採用することは、刊行物1に記載された発明の課題・目的に反することであるから、刊行物1に記載された発明において、超音波用処置具類が最大起上時に超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有する上記(相違点2)に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることではない。

なお、刊行物1に記載された発明において、刊行物2,3に記載された技術を採用したとしても、上記(相違点2)に係る構成を得ることはできない。なぜならば、刊行物2には、超音波内視鏡において、超音波処置具とは異なる内視鏡用処置具が、吸引口から突没自在ではなく、吸引口内部に留まった状態で使用されるものが記載されているだけであり、超音波用処置具類が最大起上時に超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を設けることについては、記載も示唆もされておらず、刊行物3には、体腔内超音波診断装置の先端部において、超音波プローブ及び超音波穿刺針ガイド口が片側に寄せられて設置されたものが記載されているだけであり、超音波用処置具類が最大起上時に超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を設けることについては、記載も示唆もされていないからである。

よって、上記(相違点1)について検討するまでもなく、本件発明は、刊行物1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3-(5)まとめ

以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
超音波内視鏡
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設け、前記超音波用処置具類が最大起上時に前記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有すると共に、上記鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けたことを特徴とする超音波内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は超音波内視鏡、特に超音波プローブの走査面に穿刺針等を突没自在に導出する鉗子口を有して生体内に挿入し使用する超音波内視鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波内視鏡において、先端から超音波プローブ、鉗子口、観察光学系をこの順で一列にレイアウトすることが特開平1-124444号公報(文献1)に開示されている。また、特開平1-131243号公報(文献2)に示されるものは、先端より超音波プローブ、観察光学系、鉗子口の順で同じく先端硬質部分に一列に配置してある。
【0003】
いずれのものも、超音波プローブを支持する構成部分と鉗子口を支持する構成部分の外径(横幅)は同じであり、また、挿入部の中心軸と超音波プローブの走査軸とは一致している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、文献1及び2の超音波内視鏡は、上述のように、超音波プローブ、鉗子口、観察光学系の3者が先端より一列に並んでいるため先端硬質長が長くなりがちであると共に、先端から連続して同じ太さであるために、体腔内への挿入時に被検者の苦痛を伴う。挿入性の向上は、そのような被検者の苦痛を抑制し、結果検査時間の短縮化にも役立つが、上記文献に開示の構成を踏襲したままで小型化を進めたとしても限界がある。
【0005】
本出願人はまた、特開平1-171533号公報により別の超音波内視鏡について提案している。しかし、この超音波内視鏡は、挿入部の中心軸に対して超音波振動子を保持する回転子の回転中心を偏心させ、回転中心と超音波入出射窓の曲率中心とを一致させることで全周方向に均一な良好画像を得ようとするものにとどまり、超音波プローブの走査断面内に穿刺針を突没自在に導出する鉗子口を備えていない。
【0006】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、挿入性を向上でき、被検者の苦痛低減、検査時間の短縮化、術者の負担軽減を図ることができる超音波内視鏡を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明に係る超音波内視鏡は、生体内に挿入する細長の挿入部の先端側に、上記挿入部の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、上記挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、上記超音波プローブよりも手元側の上記挿入部には、上記中心軸とほぼ平行な上記超音波送受波面を通る直線上に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設け、前記超音波用処置具類が最大起上時に前記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有すると共に、上記鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】
本発明の超音波内視鏡によれば、超音波プローブは挿入部の断面よりも小さな断面を有して、挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で上記挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設けられ、鉗子口は超音波プローブよりも手元側の挿入部に、挿入部の中心軸とほぼ平行な超音波送受波面を通る直線上に設けられ、観察光学系及び照明光学系は鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して設けられているので、挿入部外径の細径化が可能になると共に、挿入先端部の硬質部の長さを短くすることが可能となる。
【0009】
したがって、挿入性を向上できるので、被検者の苦痛低減、検査時間の短縮化、術者の負担軽減を図ることが可能となる。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の超音波内視鏡の一実施例を示すもので、これは、細長状の挿入部1、手元側の操作部2、ユニバーサルコード3、内視鏡コネクタ4、超音波コード5、及び超音波コネクタ6を有する。挿入部1は、生体内に挿入されるもので、先端構成部11と湾曲部12と軟性部13が順に連続して該挿入部1を構成する。
【0011】
挿入部1に連続して操作部2を備え、該操作部2は、処置具、脱気水等のための挿入口14、送気送水ボタン15、吸引ボタン16、上記湾曲部12を上下、左右4方向に屈曲させるアングルノブ17を有すると共に、図示例では更に、起上操作ノブ18を有する。起上操作ノブ18は、後述するように、その起上角度がストッパ機構によって規制される起上台の操作の用に供される。操作部2にはまた、図示例では、内視鏡視野を確認する接眼部19を有するものとし、図示しないライトガイド、吸引チューブ、送気チューブ、送水チューブ等が内部に通っているユニバーサルコード3を介して図示しない光源装置に接続する内視鏡コネクタ4が上記操作部2に接続してある。また、ユニバーサルコード3の途中から超音波コード5が分岐し、これは超音波コネクタ6を介して図示しない超音波診断装置に接続し、図示しないモニタ上で超音波断層像を表示するようになっている。なお、図中、20は後記の使用時の説明で触れるシース、21はそのシース端に装着の注入または吸引用シリンジを夫々示す。
【0012】
体腔内への挿入部1の先端硬質部分である前記先端構成部11には、その先端側に挿入部1の断面よりも小さな断面を有する超音波プローブを、挿入部1の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で挿入部1の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設ける。また、超音波プローブよりも手元側の先端構成部には、中心軸1とほぼ平行な超音波送受波面を通る直線上に超音波プローブの走査断面内に穿刺針等の超音波用処置具類を突没自在に導出するための鉗子口を設けると共に、この鉗子口の近傍で上記直線に対して上記走査断面と平行で挿入部中心軸を含む平面側に偏奇して観察光学系及び照明光学系を設ける。具体的には、先端構成部11は、黒系統のプラスチック等の絶縁部材で形成することができ、ここでは、図2〜図6に示すように、先端支持部25に凸状(コンベックス状)の超音波プローブ26が前方側(先端側)にわずかに(例えば5〜15°の角度)傾けて装着してある。
【0013】
ここに、図2は先端構成部部分の平面図、図3は同先端構成部部分を先端側(図2中の左方側)から見た図、図4はバルーン部分を含めて示す先端構成部の側断面図である(なお、図2,3はバルーン部分を除去して示してある)。また、図5,6は、夫々動作説明に供する図(前者は起上台倒置時、後者は起上台起上時の場合を示す)である。上記超音波プローブ26は、図2〜4の如くに、その超音波送受波面27を側面方向に向けて先端側支持部25に設ける。該支持部は、図4に示すように前蓋25aと本体25bとに分かれており、それらは固定ビス25cと内部に充填する接着剤25dにより連結してある。先端側支持部25はまた、超音波プローブ26に引き続く後方位置で、挿入部1の中心軸とほぼ平行な超音波送受波面27を通る直線上に、超音波プローブ26による超音波走査面28(以下、超音波プローブ26の走査断面28と言う)内に穿刺針等の内視鏡用処置具類29(図5,6)が突没自在に導出するように配置する鉗子口30、及び図示例では更に後述の手元操作部2の起上操作ノブ18(図1)の操作により内視鏡用処置具類29の導出角度を調整する起上台31を備える。該起上台31については、これを側方から着脱できるようにするため、図2,3に示す如く、先端構成部11は一方の側面部分に横蓋32を設け、これを着脱自在に取り付ける。なお、起上台31部分に関連する構成の一例は後記に示される。
【0014】
上記脱着自在に取り付いている横蓋32と対向する他方の側方側部分、即ち鉗子口の近傍で、挿入部1の中心軸とほぼ平行な超音波プローブ26の超音波送受波面27を通る直線に対して、超音波プローブ26の走査断面28と平行で挿入部1の中心軸を含む平面側に偏奇した部分には、観察光学系及び照明光学系を設ける。本実施例では、前述の如く超音波プローブ26の走査断面28内に穿刺針等を突没自在に導出する鉗子口30の横蓋32の反対側の先端部本体33(図2,3)に、対物レンズ34、照明レンズ35から成る観察・照明光学系36、その対物レンズ34を洗滌する送気送水ノズル37が図示の配置で装着されている。ここに、図2,3の対物レンズ34の視野範囲38は、上記超音波プローブ26の走査断面28の死角を補いつつ走査断面28にも重なるように向けられている(図4参照)。鉗子口30、観察・照明光学系36は、上述のように、それらを前後方向(挿入部の軸方向)に配置されるのではなく、観察・照明光学系36、送気送水ノズル37は、鉗子口30の側方に配される。
【0015】
更に、本超音波内視鏡は、上述したように超音波プローブをその走査断面と平行で挿入部1の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設けると共に、超音波プローブを支持する先端構成部の外径を鉗子口を支持する先端構成部の外径よりも細くする。具体的には、図2に、また図3に示すように、超音波プローブ26の走査断面28と平行な挿入部1の中心軸39を含む平面に対して、上記超音波プローブ26の走査断面28は、上記横蓋32側に約10mmのずれ量xがあるように設定されている。また、先端側支持部25の外径は、同各図にみるように、その後端側の鉗子口支持部33の外径内にほぼおさまるようにひと回り小さな外径(幅)のもとなっている。
【0016】
鉗子口30は、図2,3に示される如く、上記挿入部中心軸39を含む超音波プローブ26の走査断面28と平行な平面に対してずれ量xをもって偏奇して配され、超音波プローブ26の走査断面28と当該鉗子口30とが一直線上に位置し、従って穿刺針(29)使用時も超音波ガイド下穿刺が可能であり、しかも、先端硬質長を長くするのを避けつつ、同時に挿入部1の外径は必要部分以外は細くせんとするにあたり、先に触れたように、当該鉗子口30の側方、即ち鉗子口の近傍で、挿入部1の中心軸とほぼ平行な超音波プローブ26の超音波送受波面27を通る直線に対して、超音波プローブ26の走査断面28と平行で挿入部1の中心軸を含む平面側に偏奇して観察・照明光学系36、送気送水ノズル37を配し、かつ、挿入部内において、挿入部中心軸39を含む超音波プローブ26の走査断面28と平行な面を境とする一方の側に鉗子チャンネルと超音波プローブ26の信号ケーブルを、他方の側に観察光学系用挿通部材と送気送水用チューブを挿入する。図4の断面構成は、超音波プローブ26の走査断面28での断面を表すが、超音波プローブ26からの複数本の信号ケーブル40については先端構成部11内の鉗子口30及びそれに臨む起上台31の下を通り、操作部2から超音波コード5を経由して超音波コネクタ6に連結してある。
【0017】
先端構成部11に超音波プローブ26の走査面内に穿刺針を突没自在に導出する鉗子口30の他、起上台31を設ける場合は、本実施例では、起上台31の起上角度を規制するストッパ機構を設け、最大起上(起上台をストッパまで完全に起上させた状態)時に穿刺針が超音波プローブ走査範囲の良好画像範囲内に入るように設定する。具体的には、ここでは、最大起上時に穿刺針が超音波プローブ26の走査範囲の中心位置で超音波送受波面27の表面からの距離が例えば25mm±15mmの範囲に入るように設定してある(図6)。
【0018】
図7,8には、上述のような機能を具備せしめた起上台31部の詳細の一例が示されている。起上台操作機能は、起上台31を起上(図6)、倒置(図5)する操作ワイヤ45を有し、これは、先端部本体33に連結するガイドパイプ46、及びそれに続くガイドチューブ47(図8)内に挿通され、図1の起上操作ノブ18に連結してある。また、ガイドチューブ47の周囲にはチューブの座屈防止用のコイルパイプ48を被せる(図8)。起上台31は回動軸49を中心に先端部本体33に回動可能に装着してあるが、図示例では、該起上台31にストッパピン50が固定してあり、他方、起上台31の起上角を規制するストッパ面51が鉗子口支持部33に設けられている。これらストッパピン50及びストッパ面51によりストッパ機構が構成される。
【0019】
本例では、このようなストッパ機構で起上角の規制を行う。しかしてストッパピン50がストッパ面51に当接する状態(図8)、即ち起上台31をストッパ機構で規制される位置まで完全に起上させた状態が最大起上時で、この時の角度につき、図6に示すように、穿刺針(29)が走査範囲の中心位置で超音波送受波面27の表面から前記の25mm±15mm(従って、最小10mm、最大45mm)の良好画像範囲に入るよう設定してあり、従って、これにより、超音波ガイド下穿刺時、穿刺針の突出方向が超音波プローブ26の良好画像範囲に入るように設定することができる。
【0020】
なお、前記図4では先に触れたようにバルーン部分を含めて示してあり、図示の如く、超音波プローブ26の周囲はそれを覆うように袋状のバルーン55を着脱可能に固定する構成のものとし、その先端側は手術用のひも56等でバルーン55が先端側へ膨らまないように固定する。また、バルーン55内には、図示はしていないが、図1の挿入部1内は1本で、かつ操作部2内の送気送水ボタン15、吸引ボタン16の手前で2本に分岐するチューブを通り、これらボタン15,16の操作により脱気水57の注入・排出が行われるものとする。また、図4〜6において、61は体腔内壁、62は被検対象体を夫々示す。
【0021】
上記構成の超音波内視鏡による超音波診断、超音波ガイド下穿刺、即ち体腔内への挿入部1に超音波プローブ26を設け、またその超音波プローブ26の走査断面28内に穿刺針を突没自在に導出する鉗子口30を設けての、被検対象体62の超音波診断または超音波ガイド穿刺は、以下のようにして行うことができる。診断、または診断及び処置にあたって、被検者の体腔内に経口的または経肛門的に挿入部1を挿入する。
【0022】
この場合、本超音波内視鏡では、超音波プローブ26を挿入部1の中心軸39に対してずれ量x偏奇して設け、超音波プローブ26の支持部としての先端側支持部25の外径を、該超音波プローブ26の走査断面28内に穿刺針を突没自在に導出する鉗子口30の支持部としての先端部本体33の外径より細くしてあるので、被検者の苦痛は緩和される。超音波プローブ、鉗子口、観察・照明光学系を有する場合においてそれらが先端から一列に挿入方向に並んでいるものに比し、かつまた、その場合の対物窓と照明窓とが、超音波プローブの走査断面内に穿刺針を突没自在に導出する鉗子口をはさんで左右に配置する場合のものと比較しても、本構成では、挿入部1の先端硬質長は短かくでき、かつ先端側支持部25の太さも、超音波プローブ26の走査断面28と鉗子口30とを挿入部1の中心軸39と平行な直線上に一致させての超音波ガイド下穿刺可能な穿刺機能をも確保しつつできるだけ細くし得て、先端部は太くなることがない。鉗子口30の側方で、超音波プローブ26の走査断面28と平行で挿入部1の中心軸を含む平面側に観察・照明光学系36、送気送水ノズル37等を図2,3の如くに配し、かつ、挿入部1内において図4の如く、一方に鉗子チャンネルと超音波プローブ26の信号ケーブル40等を、他方に観察・照明光学系36用のファイバ等と送気送水チューブ等を挿入したので、先端硬質長を長くすることなく挿入部1の外径を不要な部分は細くして挿入性を向上でき、その分被検者の苦痛を低減することができる。挿入性の向上は、検査時間が短くなる上でも有利であり、また、術者の負担も軽減できる。
【0023】
上記のように挿入部1を挿入したなら、体腔内の目的部位で内視鏡観察後、即ち超音波プローブ26の走査断面方向に向けた観察・照明光学系36をもって観察後、鉗子口30より脱気水57を注入するか、バルーン55内に脱気水57を注入するか、または両者を併用して(図4参照)、超音波走査を行い体腔内よりの超音波診断を行う。
【0024】
かかる超音波診断により装置のモニタ上に表示の超音波断層像に基づき治療すべき部位が見い出されたとき処置を行うが、その場合において穿刺処置を施すときでも、本超音波内視鏡は、安全に良好な超音波ガイド穿刺が実施できる。本実施例では、超音波プローブ26とは前記の如くの関係で位置する鉗子口30に臨む起上台31の起上角度を規制するストッパ50及びストッパ面51のストッパ機構が設けられて、その最大起上時に針が超音波プローブ26走査範囲内の良好画像範囲内に入るように設定してあり、よって起上台31のストッパピン50がストッパ面51に突き当たるまで起上させるだけで針の突出方向の予測が容易につき、針の突出角度も変化しにくいので、安全に超音波ガイド下穿刺ができ、また、良好画像の領域内に針が出ていくので、この領域内に穿刺対象部位が来るように先端部を湾曲機構等を使って移動させた後、穿刺すれば死角もなく安全に行える。
【0025】
具体的な手順は、次のようである。まず、先端構成部11の必要な移動を行う。即ち、穿刺により組織を採取したりエタノールを局注して治療すべき被検対象体62を走査断面28内の良好画像範囲(ここでは、超音波送受波面27の表面から10mm以上)に入るように、先端構成部11を湾曲部12等の操作により移動する。ここに、図6に示すように、5mm以下の場合、あるいは45mm以上の場合は、良好な超音波画像を得にくいので、通常、良好な超音波画像が得られる範囲である上記の範囲のものとするのがよい。
【0026】
次に、穿刺針等の内視鏡用処置具類29を、手元側操作部2の挿入口14(図1)から挿入する。この場合においては、まず、図5の如くに起上台31はこれを倒した状態で同図のように挿入する。起上台31倒置時のかかる状態にあっては、鉗子口30から無理なくほぼ前方に出ていくため、硬質部の長い処置具類29が体腔内に挿入できる。しかして、処置具類29の軟性部まで出たところで、起上台31を図5の状態から図6の状態へと手元側の起上操作ノブ9の操作により起上する。このとき、起上台31は、図8に示すように、その一体に回動するストッパピン50がストッパ面51に当たるため、そこで起上は止まる。即ち、起上台31は図6の位置をとることになる。
【0027】
この場合の角度については、既に述べたように、本実施例では、処置具類29が超音波プローブ26の走査範囲(18)の中心位置で超音波送受波面27の表面から25mm±15mmの良好画像範囲Fに入るように設定してあるので、起上台31の起上に際しては、術者はそのストッパ機構で規制される最大起上状態まで起上させる操作を行えば済むことになる。かくして、上記起上後は、処置具類29を手元側のシース20をして押し進めることで、体腔内壁61へ向い、図6に示す如くに、体腔内壁61を突き破って被検対象体62に達するに至る。上記のような様子は、体腔内壁61までは前記対物レンズ視野範囲38による内視鏡視野でも確認できる上、それ以後は超音波モニタ上に映出され、良好画像の領域内でその進入を監視できる。しかして、被検対象体62に先端が達した後、図1の如くシース20端に注入または吸引用シリンジ21を装着しエタノールの注入や組織生検を行えばよい。
【0028】
このように本超音波内視鏡によれば、ストッパ機構をもたない場合のようには突出角度が変化するなどすることが防げるし、死角が生ずるといったことも避けられ、起上台31をストッパ機構で完全に起上させるだけでよく、超音波ガイド下穿刺は安全にかつ良好に行える。なお、本実施例では、ストッパ機構はストッパピン50とストッパ面51とによって構成したが、そのようなストッパピンとストッパ面の組み合わせに限定されるものでないことはいうまでもなく、例えば、図8に示すような起上台31の側面60と鉗子口出口の底面61との面同士が当接することによって最大起上状態を規制するストッパ機構の構成としてもよく、また、ストッパ機構の設置位置は起上台31周辺に限らず、操作部2内に設けるようにしてもよく、いずれの場合も、ストッパピン50とストッパ面51の場合と同様に、穿刺性は向上し、簡単確実な方法で安全に良好に超音波ガイド下穿刺が実現できる。
【0029】
次に示すものは、本発明の他の実施例である。本実施例は、前記実施例で示した超音波内視鏡は勿論、細長状の挿入部の先端構成部に超音波プローブを設け、この超音波プローブの超音波送受波面と同じ側でかつ手元側の先端構成部に上記超音波プローブの走査断面内に穿刺針を突没自在に導出する鉗子口と手元側の起上操作ノブの操作により穿刺針の導出角度を調整する起上台を設ける場合において、上記起上台の起上角度を規制するストッパ機構を設け、最大起上時に穿刺針が上記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面からの距離が25mm±15mmの範囲に入るように設定する構成の超音波内視鏡のいずれのものにも適用できる。
【0030】
図9は本実施例に係る超音波内視鏡における先端構成部の平面図、図10はその断面A-Aでの要部説明用の図、図11は光学視野内の図を夫々示し、不図示の他の構成部分については、前記実施例に係るものと同様であってよい。本実施例は、前記実施例の図2,3に示した対物レンズ34と照明レンズ35について、これらを図9に示す如くに起上台31の側方において前後に並べると共に、少なくとも対物レンズ34の視野中心65方向を超音波プローブ26の走査断面28側に傾け(図10)、図11の如く穿刺針等の処置具類29の先端がベストピント付近で接眼部19(図1)の光学視野66の中心付近になるように配置したものである。
【0031】
本実施例でも、先端硬質長を長くすることなく、かつ先端部を太くすることのない穿刺機能付超音波内視鏡を実現できる上、穿刺針の導入にあたっても、これをより安全、確実に行うことができる。図12,図13は、図9〜11の場合と対比して示すものであるが、これとの比較でいえば次のようである。即ち、図12の如く走査断面28(穿刺針等の進路は、その破線を含む面上が進路となる)と平行に視野中心65が向いているとすると、その場合、図13の如く処置具類29は光学視野66の周辺に描出されるため、視認しにくいものとなる。これに対し、本構成では、図9のようなレイアウトの場合でも、超音波画像中に良好に穿刺針等が描出される上、図11のように光学視野66中でもその中心付近に良好に描出でき、従って安全性、確実性が高められ、簡単な構成で穿刺針等の内視鏡用処置具類を安全・確実に導入することができる。
【0032】
なお、本発明は、前記の各実施例、変形例に限定されるものではない。例えば、図1に係るものでは接眼部を有したが、これをなくし、先端に固体撮像素子を配し、超音波画像と同じく内視鏡像をモニタ観察するようにしてもよい。また、超音波プローブはコンベックス状でなくリニア素子・セクタ素子又はこれらの組み合わせでも、メカニカル走査するものでもよい。その他、本発明の狙いとする挿入性の向上、穿刺性の向上を逸脱しない範囲で種々の変形、変更実施が可能である。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、超音波プローブは挿入部の先端側に、挿入部の断面よりも小さな断面を有して、挿入部の側面方向に超音波送受波面を向け、その走査断面と平行で挿入部の中心軸を含む平面に対して一方の側に偏奇して設け、鉗子口は超音波プローブよりも手元側の挿入部に、挿入部の中心軸とほぼ平行な超音波送受波面を通る直線上に設け、前記超音波用処置具類が最大起上時に前記超音波プローブの走査範囲の中心位置で超音波送受波面の表面から10mmないし40mmの範囲に入るように設定された鉗子起上台を有すと共に、観察光学系及び照明光学系は鉗子口の近傍で上記直線に対して上記平面側に偏奇して設けたので、穿刺針を超音波プローブ走査範囲の良好画像範囲内に留めつつ挿入部外径を細径化できると共に、挿入先端部の硬質部の長さを短くすることができる。したがって、挿入性を向上することができ、被検者の苦痛低減、検査時間の短縮化、術者の負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例の超音波内視鏡の全体構成を示す図である。
【図2】
同例の先端構成部の説明に供する平面図である。
【図3】
先端構成部の先端側(図2中の左方側)から見た図である。
【図4】
バルーン部分をも含めて示す先端構成部の側断面図(超音波プローブの走査断面での断面図)にして走査範囲や視野範囲の様子等の説明にも供される図である。
【図5】
超音波ガイド下穿刺を行う場合の動作説明に供する図(起上台倒置時)である。
【図6】
同じく、動作説明に供する図(起上台起上時)である。
【図7】
起上台部分の詳細な構成の一例を示す図である。
【図8】
同じく、その起上台の起上角度の規制状態の説明に供する図である。
【図9】
本発明の他の実施例の要部を示す図である。
【図10】
同例における図10のA-A線でみた場合の超音波走査系と光学系との関係の要部説明図である。
【図11】
同じく、同例での光学視野内の一例を示す図である。
【図12】
図10と対比して示す比較例での説明図である。
【図13】
その場合の光学視野内の図である。
【符号の説明】
1 挿入部
2 操作部
11 先端構成部
12 湾曲部
13 軟性部
18 起上操作ノブ
19 接眼部
25 先端側支持部
26 超音波プローブ
27 超音波送受波面
28 走査断面
29 穿刺針等の内視鏡用処置具類
30 鉗子口
31 起上台
33 鉗子口支持部
34 対物レンズ
35 照明レンズ
36 観察・照明光学系
38 視野範囲
39 中心軸
45 操作ワイヤ
50 ストッパピン
51 ストッパ面
60 起上台の側面
61 鉗子口出口の底面
65 対物レンズの視野中心
66 光学視野
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-16 
出願番号 特願平4-158172
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 門田 宏  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 河原 正
菊井 広行
登録日 2002-07-12 
登録番号 特許第3327950号(P3327950)
権利者 オリンパス株式会社
発明の名称 超音波内視鏡  
代理人 杉村 興作  
代理人 三井 和彦  
代理人 杉村 興作  

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