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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1094704 |
異議申立番号 | 異議2003-70669 |
総通号数 | 53 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1999-04-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-03-12 |
確定日 | 2004-03-22 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3324471号「両面配線TAB用テープ」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3324471号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】本件特許発明 特許第3324471号(平成9年10月20日出願、平成14年7月5日設定登録)の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1〜4」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりの、 「【請求項1】絶縁材によるベースフィルム、このベースフィルムの一方の面に形成された信号用の第1の配線層、前記ベースフィルムの他方の面に形成されたグランド用又は電源用の第2の配線層、前記ベースフィルムを貫通させて設けられ、内部に形成した導電層の一端が前記第1の配線層の所定の位置に接続され、前記導電層の他端が前記ベースフィルムの他方の面まで伸びた所定数のブラインドビアホールを備えた両面配線TAB用テープにおいて、前記ベースフィルムの他方の面の前記ブラインドビアホール上に形成され、前記導電層の他端に接続されたはんだボールパッドを有し、前記はんだボールパッドは、下地がCuめっきで、その表面にNi、Au、Sn、又は、はんだによるめっきが施されていることを特徴とする両面配線TAB用テープ。 【請求項2】絶縁材によるベースフィルム、このベースフィルムの一方の面に形成された信号用の第1の配線層、前記ベースフィルムの他方の面に形成されたグランド用又は電源用の第2の配線層、前記ベースフィルムを貫通させて設けられ、内部に形成した導電層の一端が前記第1の配線層の所定の位置に接続され、前記導電層の他端が前記ベースフィルムの他方の面まで伸びた所定数のブラインドビアホールを備えた両面配線TAB用テープにおいて、前記ベースフィルムの他方の面の前記ブラインドビアホールの設置位置より離れた部位に形成され、前記導電層の他端に接続されたはんだボールパッドを有することを特徴とする両面配線TAB用テープ。 【請求項3】前記はんだボールパッドは、前記ブラインドビアホールに接続された配線パターンの途中に絶縁被覆層が設けられていることを特徴とする請求項2記載の両面配線TAB用テープ。 【請求項4】前記はんだボールパッドは、下地がCuめっきで、その表面にNi、Au、Sn、又は、はんだによるめっきが施されていることを特徴とする請求項2記載の両面配線TAB用テープ。」である。 【2】特許異議申立て理由の概要 特許異議申立人 高野 登志雄は、甲第1〜4号証(以下、「刊行物1〜4」という)を提示し、「本件発明1〜4は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、上記各発明に係る特許は何れも特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである」としている。 【2-1】証拠方法 刊行物1;特開平7-235569号公報 刊行物2;特開平8-139228号公報 刊行物3;特開平8-31979号公報 刊行物4;特開平8-88243号公報 【3】刊行物1〜4の記載内容 [1]刊行物1には、 第1欄第13〜30行に、 (刊1a)「【請求項3】配線パターンが形成された銅とポリイミドとの間に接着剤を持たない2層TABテープキャリアの製造方法であって、 銅箔の片面にベースフィルムとなる感光性ポリイミドを塗布してプリベークを行い、この感光性ポリイミドに露光・焼付、現像を行い、ポストベークを行って、デバイスホール、OLBホールおよびバイアホールのうちの少なくとも1つを開口した後、前記銅箔にホトエッチングプロセスを用いて配線パターンを形成することを特徴とする2層TABテープキャリアの製造方法。 【請求項4】請求項3に記載の2層TABテープキャリアの製造方法であって、前記感光性ポリイミドに前記バイアホールを開口後、かつ前記銅箔の配線パターン形成前に、さらに前記バイアホールの底部と側壁および前記感光性ポリイミド面に蒸着法またはめっき法により、同時に銅薄膜を形成する工程を有することを特徴とする2層TABテープキャリアの製造方法」と記載され、 段落【0005】に、 (刊1b)「次に、裏面銅薄膜44と表面銅薄膜42とをバイアホール24で連結する両面配線TABテープキャリアの製造方法を図6を用いて説明する。上述のバイアホール24のない場合の2層TABテープキャリアの製造方法と比較して、工程Cにおいて、裏面(片面)の銅薄膜44のバイアホール24部分も除去し、工程Dにおいて、バイアホール24部分のポリイミド露出部46も溶解し、完全に除去して開口させ、工程Eにおいて、両面およびバイアホール24内壁にアジチブ銅めっきを施した後、同様に表面(反対面)の銅薄膜42に微細銅配線パターンを形成させる。即ち、バイアホール24を開口させて、バイアホール24内壁に銅めっきを施す点が異なるのみで、バイアホール24のない場合の2層TABテープキャリアの製造方法とほぼ同様の工程で製造されている。なお、図5および図6においては、微細銅配線パターン26の厚銅めっきおよびバイアホール24のアジチブ銅めっき層は、省略されている」と記載され、 段落【0013】に、 (刊1c)「ここで、前記感光性ポリイミドに前記バイアホールを開口後、かつ前記銅箔の配線パターン形成前に、さらに前記バイアホールの底部と側壁および前記感光性ポリイミド面に蒸着法またはめっき法により、同時に銅薄膜を形成する工程を有するのが好ましい・・・」と記載され、 段落【0022】,【0023】に、 (刊1d)「次に、図3に示すように裏面にも銅薄膜を形成し、さらにバイアホール24により裏面銅薄膜18と表面銅箔配線パターン12とが連結されていても良い。この場合上述のAおよびBの各工程に続いて、まず工程Cにおいて、図2(C)に示す工程Cと同様に、感光性ポリイミド14の開口時に、バイアホール24も同時に開口させる。感光性ポリイミド14の開口後、工程Dにおいて、感光性ポリイミド14面(裏面)の全面に銅を蒸着した後、電気銅めっきを施す。デバイスホール20の側壁20aにも当然銅が蒸着され、銅めっきが施されるので、電気銅めっき完了後、他の部分をマスクしてデバイスホール20の側壁20aの銅を溶解除去する。ただし、蒸着マスクを用いる時は、この工程は省略することができる。蒸着銅と電気めっき銅は、図4に示すようにバイアホール24の側壁24aと、銅箔の裏面(バイアホールの底部)24bと、感光性ポリイミド14面全体にも同時に形成される。なお、工程Eに示すように、表面へのパターン形成は上述の図2に示す工程Dと同様に行う。 なお、図4に示すようにバイアホール24の形状は、すりばち状になっているのが好ましい。これは現像液の溶解作用が、開口部の中央が速く、外周部が遅いためである。また、バイアホール24の形状がすりばち状になっていることは、銅の蒸着流とめっき流が入り易いので、上述の銅蒸着膜とめっき膜の形成に都合が良い」と記載され、 段落【0034】に、 (刊1e)「(実施例2)実施例1において、図3に示すように、感光性ポリイミド14の裏面にも銅薄膜18を有し、さらにバイアホール24により裏面銅薄膜18が表面銅箔パターン26と連結されている品種を製造した。この例では、図3の工程Cに示すように、感光性ポリイミド14の開口時、0.05mmφのバイアホール24を同時に開口させた。バイアホール24は、1辺あたり14箇所(デバイスホール20側に7箇所、OBLホール22側に7箇所の計14箇所)あり、4辺で56箇所配置されている。バイアホール24の形状は、図4に示すように底面が40μmφ、上面が50μmφのすりばち状になっている。感光性ポリイミド14の開口後、裏面の全面に0.5μmの厚さに銅を蒸着後、電気銅めっき7μmを施した。蒸着銅とめっき銅は、バイアホール24の側壁24aと、銅箔12の裏面(バイアホール24の底面)24bと、感光性ポリイミド14面全体にも同時に形成された。即ち、デバイスホール20の側壁20aにも当然銅が蒸着され、銅めっきが施されるので、めっき完了後、他の部分をマスクしてデバイスホール20の側壁20aの銅を溶解除去した。最終的に表面銅箔配線パターン26の形成を実施例1と同様に行った」と記載されている。 [2]刊行物2には、 段落【0008】に、 (刊2a)「前記集積回路搭載用基板11は、表側の銅製の金属基板15と、この金属基板15の裏面側に貼着されているTAB基板16からなっている。前記TAB基板16は、絶縁シート17とその裏面に形成されている導電性材料からなるリードパターン18を有し、このTAB基板16は、予め、リードパターン18のワイヤボンディング部19を表側に露出させる配線孔20が形成された絶縁性樹脂シートの裏面に銅フィルムを貼着し、これにリードパターン18をエッチング加工し、更にその表面に銅めっき、ニッケルめっき及び金めっき処理を行って製造されている・・・」と記載されている。 [3]刊行物3には、 段落【0022】〜【0025】に、 (刊3a)「<実施例1>周知のプリント配線板と同様の構成であるが、導体パターン11の終端部12が下面において略マトリクス状に配置された配線基板10を用いる。(図1参照) 前記配線基板10の下面に、スパッタリングまたはメッキによりCu層(金属層13)を全面に形成する。(図2(a)参照) 前記金属層13を、フォトエッチング加工によって、前記終端部12に対応して略マトリクス状に配置されるようにパターニングし、電極端子とする。(図2(b)参照) 前記電極端子13に、電解メッキまたは無電解メッキにより、Au-Niメッキ14を施す。(図2(b')参照)・・・」と記載されている。 [4]刊行物4には、 段落【0003】〜【0006】に、 (刊4a)「その金属ボール3の形成部の表面を図10に示す。金属ボールが形成されるボール形成ランド11を除き、全面にソルダーレジスト10を塗布する。塗布の目的は配線パターン2の保護と円形のボール形成ランド11とを作り、ボール形成ランド11上に確実に独立した金属ボールを形成するためである。 上記の様に金属ボールを配線パターン2側に作るのではなく、それと反対側、即ち絶縁フィルム1側に金属ボールを作る場合がある。この場合のボール形成部の断面拡大図を図9に示した。この場合には絶縁フィルム1にバイアホール4をパンチングまたはドリル等により開口させ、その後バイアホール4の一方の開口を塞ぐテンティングパッド20を作る配線パターン2を形成させる。 即ちバイアホール4などの穴開け後に、銅箔を貼り付け(接着剤付きの絶縁フィルムを用いるので接着剤にも穴は開いている)ホトケミカルエッチング法にて配線パターン2を形成させるものである。 配線パターン形成後、絶縁フィルム1の表面に導体を引き出すために銅めっきを行い、そのめっき層9(黒く塗りつぶした部分)をバイアホール4内全面、及び絶縁フィルム1表面の一部に形成する。めっき層9のうち、ボールを形成する部分を除き、全面にソルダレジスト10を塗布し、塗布後、ボール形成部上に金属ボール3を作る。このときの表面を図10に示す。バイアホール4の周囲には、バイアホールめっきランド12を作り、そこから配線パターン22をこれもめっき層で作り、ボール形成ランド11に導く」と記載されている。 【4】特許異議申立てに対する当審の判断 [1]本件発明1について、 その発明特定事項である、ベースフィルムの一方の面に信号用配線層、その他方の面にグランド用又は電源用配線層、前記両配線層を接続する導電層を有してベースフィルムを貫通して設けられたブラインドビアホールを備えた両面配線TAB用テープにおいて、「前記ベースフィルムの他方の面の前記ブラインドビアホール上に形成され、前記導電層の他端に接続されたはんだボールパッドを有する」点については、刊行物1〜4にまったく記載も示唆もされていない。 この点に関して、いま少し考察すると、刊行物1には、両面配線TABテープキャリアにおいて表裏の配線を接続したバイアホールを備えたものが開示されてはいる。 しかし、このバイアホール上に外部端子用パッドとしての、例えばはんだボールパッドを設けるという発想はまったくない。 すなわち、上記(刊1e)で摘記した如く、刊行物1におけるバイアホールはベースフィルムを貫通して単に表裏配線を接続することだけを目的としており、当該バイアホール上に外部端子用パッドを設けることはまったく意図していない。この刊行物1においては、外部接続に関してはOLBホール位置にあるアウターリードによって達成することを前提としている。 したがって、本件発明1は、前記各刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 [2]本件発明2〜4について、 本件発明2は、ベースフィルムの一方の面に信号用配線層、その他方の面にグランド用又は電源用配線層、前記両配線層を接続する導電層を有してベースフィルムを貫通して設けられたブラインドビアホールを備えた両面配線TAB用テープにおいて、「前記ベースフィルムの他方の面の前記ブラインドビアホールの設置位置より離れた部位に形成され、前記導電層の他端に接続されたはんだボールパッドを有する」点を、その発明特定事項として有している。 一方、刊行物1においては、本件発明1について前記[1]段落で述べた如く、バイアホールがベースフィルムを貫通して単に表裏配線を接続することだけを目的としており、当該バイアホールに接続して外部端子用パッドを設けることはまったく意図されていない。さらに、当該刊行物1においては、外部接続に関してはOLBホール位置にあるアウターリードによって達成することが前提となっている。 そして、刊行物4の上記(刊4a)に、「金属ボールを配線パターン2側に作るのではなく、それと反対側、即ち絶縁フィルム1側に作る場合には、絶縁フィルム1にバイアホール4を開口させ、その後バイアホール4の一方の開口を塞ぐテンティングパッド20を作る配線パターン2を形成する。 配線パターン形成後、絶縁フィルム1の表面に導体を引き出すために銅めっきを行い、そのめっき層9をバイアホール4内全面、及び絶縁フィルム1表面の一部に形成する。配線パターン22をこれもめっき層で作り、めっき層9のうち、ボールを形成する部分を除き、全面にソルダレジスト10を塗布し、ボール形成ランド11を確保する」ことは開示されている。 しかしながら、刊行物1において、バイアホールがベースフィルムを貫通して単に表裏配線を接続することだけを目的としており、当該バイアホールに接続して外部端子用パッドを設けることはまったく意図されていないから、刊行物1の両面配線TABテープキャリアに刊行物4の前記開示内容を適用すべき合理的必然性はまったく認められない。 したがって、本件発明2が、刊行物1および4の記載から、または刊行物1〜4の記載から、当業者が容易に想到できたものであるとすることはできない。 本件発明3,4は、本件発明2を引用するものであって、さらなる限定事項を有している。 してみれば、本件発明2が上記各刊行物に記載された発明から容易でない以上、本件発明3,4も必然の結果として当該各刊行物に記載された発明から容易に想到できたものとすることはできない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-03-02 |
出願番号 | 特願平9-286552 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01L)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
影山 秀一 |
特許庁審判官 |
中西 一友 川真田 秀男 |
登録日 | 2002-07-05 |
登録番号 | 特許第3324471号(P3324471) |
権利者 | 日立電線株式会社 |
発明の名称 | 両面配線TAB用テープ |