• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1095597
審判番号 不服2001-12727  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-07-19 
確定日 2004-04-12 
事件の表示 平成 6年特許願第128959号「半導体シリコンウェハおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 3月31日出願公開、特開平 7- 86289〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権を伴う平成6年6月10日(優先日、平成5年7月22日)の出願であって、平成13年6月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年7月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月30日付けで手続補正がなされたものである。
2.平成13年7月30日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成13年7月30日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正の内容は、特許請求の範囲を次のとおりに補正するとともに、発明の詳細な説明を補正するものである。
「【請求項1】
半導体シリコンウェハの一方の面のみに多結晶シリコン堆積層を設け他方の面を外方へ露出する工程と、その後前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理して多結晶シリコン堆積層が設けられていない他方の面から酸素を放出する工程と、を備えたことを特徴とする半導体シリコンウェハの製造方法。」(以下、「補正発明1」という。)
「【請求項2】
半導体シリコンウェハの一方の面に厚さ約2nmの酸化膜を形成する工程と、この酸化膜形成後に前記半導体シリコンウェハの一方の面に多結晶シリコン堆積層を設ける工程と、前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはそれらの混合ガス中で熱処理する工程と、を備えたことを特徴とする半導体シリコンウェハの製造方法。」(以下、「補正発明2」という。)
「【請求項3】
半導体シリコンウェハの一方の面に厚さ約2nmの酸化膜を形成する工程と、この酸化膜形成後に前記半導体シリコンウェハの一方の面に多結晶シリコン堆積層を設ける工程と、前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはそれらの混合ガス中で熱処理して、前記半導体シリコンウェハの他方の面を前記ガス中に露出させ、前記半導体シリコンウェハの他方の面から酸素が放出されて他方の面に酸素除去領域を形成する工程と、を備えたことを特徴とする半導体シリコンウェハの製造方法。」(以下、「補正発明3」という。)
「【請求項4】
酸化膜はH2 O2 /H2 SO4 、HF:H2 O、H2 O2 /HCl/H2 O、またはコリン/H2 O2 /H2 Oからなる薬液を用い、約70℃の温度で約20分間薬液処理して形成されることを特徴とする請求項2または3のいずれか記載の半導体シリコンウェハの製造方法。」(以下、「補正発明4」という。)
「【請求項5】
熱処理温度は1100℃以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の半導体シリコンウェハの製造方法。」(以下、「補正発明5」という。)
「【請求項6】
多結晶シリコン堆積層は、気相成長法により形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の半導体ウェハの製造方法。」(以下、「補正発明6」という。)
「【請求項7】
半導体シリコンウェハの一方の面に形成された厚さ約2nmの酸化膜と、上記酸化膜の表面に形成された多結晶シリコン堆積層とを備えたことを特徴とする半導体シリコンウェハ。」(以下、「補正発明7」という。)

(2)本件補正についての検討
(2-1)補正事項の整理
本件補正は、特許請求の範囲について、請求項1ないし請求項8を補正し、発明の詳細な説明の段落【0011】【0012】を補正するものである。
補正事項を整理すると、次のとおりである。
(補正事項1)
旧請求項1を次のように補正する。
「半導体シリコンウェハの一方の面のみに多結晶シリコン堆積層を設け他方の面を外方へ露出する工程と、その後前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理して多結晶シリコン堆積層が設けられていない他方の面から酸素を放出する工程と、を備えたことを特徴とする半導体シリコンウェハの製造方法。」
(補正事項2)
旧請求項2を削除する。
(補正事項3)
旧請求項3,4,5,6,7,8を、それぞれ請求項2,3,4,5,6,7として、項番号を繰り上げる。
(補正事項4)
旧請求項5を次のように補正する。
「酸化膜はH2 O2 /H2 SO4 、HF:H2 O、H2 O2 /HCl/H2 O、またはコリン/H2 O2 /H2 Oからなる薬液を用い、約70℃の温度で約20分間薬液処理して形成されることを特徴とする請求項2または3のいずれか記載の半導体シリコンウェハの製造方法。」
(補正事項5)
旧請求項6を次のように補正する。
「熱処理温度は1100℃以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の半導体シリコンウェハの製造方法。」
(補正事項6)
旧請求項7を次のように補正する。
「多結晶シリコン堆積層は、気相成長法により形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載の半導体ウェハの製造方法。」
(補正事項7)
発明の詳細な説明の欄の段落【0011】を変更し、段落【0012】を削除する。

(2-2)補正の適否についての検討
以下、補正事項1ないし7について順次検討する。
(2-2-1)補正事項1
補正事項1は、旧請求項1の「半導体シリコンウェハの一方の面に多結晶シリコン堆積層を設ける工程」を「半導体シリコンウェハの一方の面のみに多結晶シリコン堆積層を設け他方の面を外方へ露出する工程」と、旧請求項1の「その後前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理する工程」を「その後前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理して多結晶シリコン堆積層が設けられていない他方の面から酸素を放出する工程」とそれぞれ補正するものであって、特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内におけるものであって、かつ、同法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2-2-2)補正事項2
旧請求項2を削除する補正は、請求項の削除を目的とする補正に当たる。
(2-2-3)補正事項3
旧請求項2の削除に伴い請求項の項番号を繰り上げることは、請求項の削除に伴い他の請求項を形式的に補正することであり、請求項の削除を目的とする補正に当たる。
(2-2-4)補正事項4
補正事項4は、旧請求項5が引用する請求項「請求項1乃至4のいずれか」を「請求項2または3のいずれか」と補正するものであり、引用する請求項として請求項1及び請求項2を削除するとともに、上記請求項の項番号の変更に伴い、引用する請求項の項番号を変更するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び請求項の削除を目的とする補正に当たる。
(2-2-5)補正事項5
補正事項5は、旧請求項6が引用する請求項「請求項1乃至4のいずれか」を「請求項1乃至4のいずれか」と補正するものであり、上記請求項の項番号の変更に伴い、引用する請求項の項番号を変更するとともに、引用する請求項として、請求項2または3のいずれかを引用する請求項4を新たに追加したものであるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に当たる。
(2-2-6)補正事項6
補正事項6は、旧請求項7が引用する請求項「請求項1乃至4のいずれか」を「請求項1乃至5のいずれか」と補正するものであり、上記請求項の項番号の変更に伴い、引用する請求項の項番号を変更するとともに、引用する請求項として、請求項2または3のいずれかを引用する請求項4,及び請求項1乃至4のいずれかを引用する請求項5を新たに追加したものであるから、請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に当たる。
(2-2-7)補正事項7
発明の詳細な説明の上記段落の補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から自明の事項の範囲内におけるものであるから、特許法第17条の2第2項で準用する同法第17条第2項の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内におけるものである。

(2-3)独立特許要件について
(2-3-1)本件補正後の発明
本件補正後のその請求項1ないし7に係る発明は、本件補正後における特許請求の範囲に記載されているとおりの上記補正発明1ないし補正発明7である。
(2-3-2)刊行物に記載された発明
刊行物1:特開平4-163920号公報
刊行物1は、「Si基板の製造方法(発明の名称)」に関するものであって、第1図及び第2図とともに以下の点が記載されている。
「Si基板のゲッタリング手法としては、EG以外に、Si基板中に含有される格子間酸素(Oi)の析出による結晶欠陥を利用するイントリンシック・ゲッタリング(Intrinsic Gettering、以下IGと略す)が知られている。…Oi析出起因の結晶欠陥が素子形成領域(Si基板表面)にまで発生しやすくなる。このようなOi析出起因の表面欠陥の発生を抑えるため、Si基板中に含有されるOi濃度は、低く抑えられている」(第2頁左上欄第9行〜同頁右上欄第6行)
「本発明の目的は、Oi析出起因の結晶欠陥発生を抑制するSi基板の製造方法を提供することにある。」(第2頁左下欄第15〜17行)
「第1図は本発明の実施例1の製造工程を示す概略図である。」(第3頁左上欄第4,5行)
「この粗研磨Si基板2に、化学気相成長法により…多結晶Si4を厚さ1.2μmに堆積する。…続いて、片面を機械的・化学的研磨法により鏡面状態に仕上げ、素子形成面6を形成した後、1180℃4時間の高温熱処理を施すことにより、基板内のOi析出核5は、縮小したOi析出核7に変化すると共に、基板表面にはOiの外方拡散領域8が形成され、Oi濃度はOi析出を生じない濃度まで低下する。」(第3頁左上欄第12行〜同頁右上欄第4行)
上記記載を参照すると、高温熱処理して、Si基板中の格子間酸素(Oi)析出核を縮小・消滅させると共に、鏡面状態に仕上げたSi基板表面からOiをSi基板外へ拡散させ、基板表面にOiの外方拡散領域を形成しているから、刊行物1には、「高温熱処理して鏡面状態に仕上げたSi基板表面から酸素を放出する工程」を備える点が記載されている。
刊行物1に記載の発明を、第1図、第2図及びその説明の欄の記載を参照してまとめると、刊行物1には、
「粗研磨Si基板の全面に多結晶Siを堆積し、一方の面に多結晶Siを残し、片面を機械的・化学的研磨法により鏡面状態に仕上げ、素子形成面を形成する工程と、その後前記Si基板を1180℃で高温熱処理して鏡面状態に仕上げたSi基板表面から酸素を放出する工程と、を備えたSi基板の製造方法。」が記載されている。

刊行物2:特開昭60-247935号公報
刊行物2は、「半導体ウエハの製造方法(発明の名称)」に関するものであって、第1図ないし第4図とともに以下の点が記載されている。
「本発明は半導体ウェハの製造方法に関し、特にイントリンシック・ゲッタリングの改良に係る。」(第1頁左下欄第10,11行)
「このイントリンシック・ゲッタリングは…高温熱処理(1000〜1250℃)でウェハ内部の酸素析出核が微小欠陥に成長するとともにウェハ表面の酸素及び析出核が外方拡散することを利用し、ウェハ表面を無欠陥層とし、ウェハ内部に微小欠陥を形成するものである。
・・・
…なお、上記高温熱処理は酸化性又は不活性雰囲気中で行われている。」(第1頁右下欄第4〜19行)
「本発明者らは研究を重ねた結果、イントリンシック・ゲッタリングの高温熱処理の雰囲気を選択することによりウェハ表面の無欠陥層とウェハ内部の微小欠陥層とを制御性よく形成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の半導体ウェハの製造方法は、半導体ウェハを500〜900℃で0.5〜18時間熱処理した後、水素ガス又は水素含有不活性ガス中において1000℃以上の高温で熱処理することを特徴とするものである。
・・・
更に、本発明において高温熱処理の温度を1000℃以上としたのは、1000℃未満では表面の酸素及び析出核の外方拡散が困難となるためである。」(第2頁左上欄第20行〜同頁左下欄第4行)
「シリコンウェハ11を、水素含有不活性ガスを 2〜230 l/min の流量で流している還元雰囲気中において1100℃以上の温度で熱処理した。この結果、上述した2種のシリコンインゴットから得られたウェハのいずれにもウエハ11表面に無欠陥層13、13が、ウェア11内部に微小欠陥14、…が形成された(同図(b)図示)。」(第2頁左下欄第20行〜同頁右下欄第7行)
上記記載を参照すると、高温熱処理でシリコンウェハ表面の酸素及び析出核が外方拡散されてウェハ表面が無欠陥層とされており、還元性ガス、又は還元性ガスと不活性ガスの混合ガス中で高温熱処理が行われているから、刊行物2には、シリコンウェハの製造方法において、「シリコンウェハを還元性ガス中で1000℃以上で、または不活性ガスと還元性ガスの混合ガス中で1100℃以上で熱処理して前記シリコンウェハの面から酸素を放出する工程」を備えたものが記載されている。

(2-2-3)対比・判断
補正発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「粗研磨Si基板」、「多結晶Si」は、それぞれ補正発明1の「半導体シリコンウェハ」、「多結晶シリコン堆積層」に相当する。
刊行物1に記載された「粗研磨Si基板の全面に多結晶Siを堆積し、一方の面に多結晶Siを残し、片面を機械的・化学的研磨法により鏡面状態に仕上げ、素子形成面を形成する工程」では、「一方の面のみに多結晶Siを残し」ており、「他方の面を外方に露出して」素子形成面を形成していることが明らかであることから、刊行物1に記載された上記工程は、補正発明1の「半導体シリコンウェハの一方の面のみに多結晶シリコン堆積層を設け他方の面を外方へ露出する工程」に相当する。
したがって、両者は
「半導体シリコンウェハの一方の面のみに多結晶シリコン堆積層を設け他方の面を外方へ露出する工程と、その後前記半導体シリコンウェハを熱処理して多結晶シリコン堆積層が設けられていない他方の面から酸素を放出する工程と、を備えた半導体シリコンウェハの製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。
「前記半導体シリコンウェハを熱処理して多結晶シリコン堆積層が設けられていない他方の面から酸素を放出する工程」で、前者は「不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理」しているのに対して、後者は「1180℃で高温熱処理して鏡面状態に仕上げたSi基板表面から酸素を放出する工程」の雰囲気が不明である点。

上記相違点について検討する。
刊行物2には、シリコンウェハの製造方法において、「シリコンウェハを還元性ガス中で1000℃以上で、または不活性ガスと還元性ガスの混合ガス中で1100℃以上で熱処理して前記シリコンウェハの面から酸素を放出する工程」を備える点が記載されており、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載の発明とは、共にイントリンシック・ゲッタリングの改良に係る半導体シリコンウェハの製造方法に関する発明で、共に1000℃以上の高温熱処理でウェハ表面の酸素を外方拡散させるものである。したがって、刊行物1に記載の発明において、高温熱処理の雰囲気を、刊行物2に記載されるように「還元性ガス、または不活性ガスと還元性ガスの混合ガス中」とすることは当業者にとって格別困難なものではない。
よって、補正発明1は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(3)むすび
したがって、補正発明2ないし補正発明7について検討するまでもなく、適法でない補正を含む本件補正は特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に適合しないものであり、本件補正は特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成13年7月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至7に係る発明は、平成12年8月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、その請求項1に記載された、以下のとおりのものである。
「半導体シリコンウェハの一方の面に多結晶シリコン堆積層を設ける工程と、その後前記半導体シリコンウェハを不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理する工程と、を備えたことを特徴とする半導体シリコンウェハの製造方法。」

4.引用例
刊行物1:特開平4-163920号公報 (上記「2.平成13年7月30日付けの手続補正について」の「(2-3-2)刊行物に記載された発明」で提示した「刊行物1」)
刊行物1は、「Si基板の製造方法(発明の名称)」に関するものであって、第1図及び第2図とともに以下の点が記載されている。
「Si基板のゲッタリング手法としては、EG以外に、Si基板中に含有される格子間酸素(Oi)の析出による結晶欠陥を利用するイントリンシック・ゲッタリング(Intrinsic Gettering、以下IGと略す)が知られている。…Oi析出起因の結晶欠陥が素子形成領域(Si基板表面)にまで発生しやすくなる。このようなOi析出起因の表面欠陥の発生を抑えるため、Si基板中に含有されるOi濃度は、低く抑えられている」(第2頁左上欄第9行〜右上欄第6行)
「本発明の目的は、Oi析出起因の結晶欠陥発生を抑制するSi基板の製造方法を提供することにある。」(第2頁左下欄第15〜17行)
「第1図は本発明の実施例1の製造工程を示す概略図である。」(第3頁左上欄第4,5行)
「この粗研磨Si基板2に、化学気相成長法により…多結晶Si4を厚さ1.2μmに堆積する。…続いて、片面を機械的・化学的研磨法により鏡面状態に仕上げ、素子形成面6を形成した後、1180℃4時間の高温熱処理を施す」(第3頁左上欄第12〜20行)
刊行物1に記載の発明を、第1図、第2図及びその説明の欄の記載を参照してまとめると、刊行物1には、
「粗研磨Si基板の全面に多結晶Siを堆積し、一方の面に多結晶Siを残し、片面を機械的・化学的研磨法により鏡面状態に仕上げ、素子形成面を形成する工程と、その後前記Si基板を1180℃で高温熱処理する工程と、を備えたSi基板の製造方法。」が記載されている。

刊行物2:特開昭60-247935号公報(上記「2.平成14年3月14日付けの手続補正について」の「(2-3-2)刊行物に記載された発明」で提示した「刊行物2」)
刊行物2は、「半導体ウエハの製造方法(発明の名称)」に関するものであって、第1図ないし第4図とともに以下の点が記載されている。
「本発明は半導体ウェハの製造方法に関し、特にイントリンシック・ゲッタリングの改良に係る。」(第1頁左下欄第10,11行)
「このイントリンシック・ゲッタリングは…高温熱処理(1000〜1250℃)でウェハ内部の酸素析出核が微小欠陥に成長するとともにウェハ表面の酸素及び析出核が外方拡散することを利用し、ウェハ表面を無欠陥層とし、ウェハ内部に微小欠陥を形成するものである。
・・・
…なお、上記高温熱処理は酸化性又は不活性雰囲気中で行われている。」(第1頁右下欄第4〜19行)
「本発明者らは研究を重ねた結果、イントリンシック・ゲッタリングの高温熱処理の雰囲気を選択することによりウェハ表面の無欠陥層とウェハ内部の微小欠陥層とを制御性よく形成し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明の半導体ウェハの製造方法は、半導体ウェハを500〜900℃で0.5〜18時間熱処理した後、水素ガス又は水素含有不活性ガス中において1000℃以上の高温で熱処理することを特徴とするものである。」(第2頁左上欄第20行〜同頁右上欄第9行)
「シリコンウェハ11を、水素含有不活性ガスを 2〜230 l/min の流量で流している還元雰囲気中において1100℃以上の温度で熱処理した。」(第2頁左下欄第20行〜同頁右下欄第3行)

5.対比・判断
本願発明1と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「粗研磨Si基板」、「多結晶Si」は、それぞれ本願発明1の「半導体シリコンウェハ」、「多結晶シリコン堆積層」に相当する。
刊行物1に記載された「粗研磨Si基板の全面に多結晶Siを堆積し、一方の面に多結晶Siを残し、片面を機械的・化学的研磨法により鏡面状態に仕上げ、素子形成面を形成する工程」では、「一方の面に多結晶Siを残し」て素子形成面を形成していることが明らかであることから、刊行物1に記載された上記工程は、本願発明1の「半導体シリコンウェハの一方の面に多結晶シリコン堆積層を設ける工程」に相当する。
したがって、両者は
「半導体シリコンウェハの一方の面に多結晶シリコン堆積層を設ける工程と、その後前記半導体シリコンウェハを熱処理する工程と、を備えた半導体シリコンウェハの製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。
「前記半導体シリコンウェハを熱処理する工程」で、前者は「不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス中で熱処理」しているのに対して、後者は「1180℃で高温熱処理する工程」の雰囲気が不明である点。

上記相違点について検討する。
イントリンシック・ゲッタリング効果を得る等のような目的で半導体シリコンウェハを熱処理する工程を備えた半導体シリコンウェハの製造方法において、該熱処理する工程における雰囲気を、「不活性ガスまたは還元性ガスまたはこれらの混合ガス」とすることは慣用手段に過ぎず、例えば、刊行物2には、シリコンウェハの製造方法において、「シリコンウェハを還元性ガス中で1000℃以上で、または不活性ガスと還元性ガスの混合ガス中で1100℃以上で熱処理する工程」を備える点が記載されている。そして、刊行物1に記載の発明と刊行物2に記載の発明とは、共にイントリンシック・ゲッタリングの改良に係る半導体シリコンウェハの製造方法に関する発明で、共に1000℃以上の高温熱処理をするものである。
したがって、刊行物1に記載の発明において、高温熱処理の雰囲気を、刊行物2に記載されるように「還元性ガス、または不活性ガスと還元性ガスの混合ガス中」とすることは当業者にとって格別困難なものではない。
よって、本願発明1は、上記刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求項2ないし請求項8に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-02-18 
結審通知日 2004-02-20 
審決日 2004-03-02 
出願番号 特願平6-128959
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 知久棚田 一也萩原 周治  
特許庁審判長 松本 邦夫
特許庁審判官 河合 章
恩田 春香
発明の名称 半導体シリコンウェハおよびその製造方法  
代理人 勝沼 宏仁  
代理人 岡田 淳平  
代理人 森 秀行  
代理人 名塚 聡  
代理人 永井 浩之  
代理人 吉武 賢次  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ