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審決分類 |
審判 訂正 2項進歩性 訂正しない G01B 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない G01B |
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管理番号 | 1095790 |
審判番号 | 訂正2003-39211 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-07-21 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2003-09-30 |
確定日 | 2004-04-12 |
事件の表示 | 特許第3432733号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許出願 平成 9年12月29日 特許権設定登録 平成15年 5月23日 訂正審判の請求 平成15年 9月30日 訂正拒絶理由通知 平成15年11月27日 (発送日平成15年12月2日) 手続補正書 平成16年 1月30日 2.訂正審判の請求に対する補正の適否について 特許権者は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1の「・・・と共に、該制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシューと、・・・」を「・・・と共に、回転ドラムから所望の間隔を開けて弾発的に支持され且つ該制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシューと、・・・」とする補正事項を含む補正を求めるものである。 しかしながら、上記補正は、回転ドラムから所望の間隔を開けて弾発的に支持される点を追加限定し、特許請求の範囲をより減縮する目的で訂正事項を変更しようとするものであるから、請求書の要旨を変更するものと認められ、特許法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用しない。 3.請求の趣旨 本件審判の請求の趣旨は、特許第3432733号発明の明細書及び図面を、審判請求書に添付した明細書及び図面のとおりに訂正しようとするものである。 そして、該訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の記載を次のとおり訂正するものである。 「ケース内にテープを周囲に巻回する回転ドラムを軸支し、この回転ドラムにテープを巻き込み方向に付勢する付勢手段を内装した巻尺に於いて、ケース前壁にケース内方に押し込み可能であり且つ上下動可能な制動操作部を、単一の部品で構成して設けると共に、該制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシューと、該制動操作部を下げることによりテープの出入口の背後でテープに接触する第二のブレーキシューとを同制動操作部と一体の部品として形成したことを特徴とする巻尺」 4.訂正拒絶の理由 平成15年11月27日付けで通知した訂正拒絶理由の概要は、次のとおりである。 「訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件訂正発明」という)は、上記特許出願の出願前に頒布された刊行物である欧州特許出願公開第531570号明細書(1993年3月17日公開、以下、「刊行物1」という)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができたものではない。したがって、本件審判の請求は、同法126条第4項の規定に適合しない。」 5.刊行物1記載の発明 上記刊行物1には、略ね次の事項が図面とともに記載されている。 「回転式巻き尺は、図1によれば、筐体5の中の軸に固定されているドラム3よりなる。ドラム3には、テープ4が巻き込まれる。テープの一端は、図1の右下の筐体のスリットより出る。停止レバー1は、高い位置(a)と点線で表示されたテープの停止位置(b)の間で移動できる。この停止レバーは、明確に定められた位置でテープを固定するのに役立つ。停止レバーによって制動することは、逆に悪い結果となる。レバーの末端が、テープの上面、すなわちラッカー塗料を塗ったり印刷してある面を攻撃するからである。したがって、テープの表面層の一部を消したり、擦り傷を付けたりする危険がある。この理由で、制動装置2は、図2を見れば明瞭に分かるように、そのブレーキパッドでテープそのものでなく、ドラムの横のフランジを攻撃する。そこで、制動装置は、2個のパッドと1個のボタンを備え、これらはその操作ボタンの位置で停止装置を貫通して筐体の外部に導かれる。孔の断面とボタンの断面は長方形であり、これはブレーキパッドの移動の案内装置となり、制動装置の回転を防止する。したがって、制動装置のボタンは外部からアクセスすることができ、ユーザの親指のすぐ下にある。その結果、このかみ合い末端を強さを適当に調整して押すことにより、ブレーキ2をドラム3のフランジと接触させ、このようにしてテープの戻りの柔軟な制御を行い、またさらに押し続ければ、固定することができる。さらに、親指の位置を変えることなく、上から下に垂直に押すことにより、停止レバー1とブレーキ2の全体を、永久停止の位置に持ってくることができる。」(第1欄第50行〜第2欄第29行参照) 「特許請求の範囲 1.テープ(4)が自動収納される回転式巻き尺であって、好ましくは2個のシェルより形成され、測定用テープ(4)の出口スリットを備えた筐体(5)を有し、上記の測定用テープはテープ(4)の復帰用バネに連結された回転ドラム(3)上に巻き付けられている回転式巻き尺において、外部からアクセス可能なように筐体(5)の一部を貫通するボタンの役目をする部分を有する部品と、前記ボタンが操作されたときに摩擦によって回転ドラム(3)の回転にブレーキをかける少なくとも一つのブレーキシュー(2)とを備えたテープ(4)の制動装置(2)を備えていることを特徴とする回転式巻き尺。 2.停止レバー(1)を有する停止装置を備え、さらに、制動装置(2)の押しボタンが、筐体(5)の外部からアクセスできるように、停止レバー(1)を貫通していることを特徴とする請求項1による回転式巻き尺。 3.押しボタンと、このボタンによって貫通されている停止レバー(1)内の孔とが、押しボタンの動きの案内を確実にするために、お互いに対応する矩形断面を有することを特徴とする先行請求項のいずれか1項記載の回転式巻き尺。」(第2欄第36行〜第3欄第11行参照) 図面の図1には、筐体(5)の前壁に制動装置(2)と停止レバー(1)とが描かれている。 6.対比・判断 本件訂正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1記載の「回転ドラム(3)、テープ(4)、テープ(4)の復帰用バネ、回転式巻き尺」が、本件訂正発明の「回転ドラム、テープ、テープを巻き込み方向に付勢する付勢手段、巻尺」に相当する。そして、刊行物1記載の「制動装置(2)」及び「停止レバー(1)」は、いずれも、テープ(4)の出口スリットを備えたケース前壁に設けられており、「制動装置(2)」は、強さを適当に調整してボタンを押すことによりブレーキ2をドラムのフランジと接触させるものであり、また、「停止レバー(1)」は、高い位置(a)と停止位置(b)との間で移動でき、レバーの末端が、テープ出口スリットの背後でテープの上面を押圧するものであることも明らかである。そうすると、刊行物1記載の「制動装置(2)の操作部」、「制動装置(2)のフランジに接触する部分」が、それぞれ、本件訂正発明の「ケース内方に押し込み可能な制動操作部」、「制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシュー」に相当し、刊行物1記載の「停止レバー(1)の操作部」、「停止レバー(1)のテープを押圧する部分」が、それぞれ、本件訂正発明の「上下動可能な制動操作部」、「制動操作部を下げることによりテープの出入口の背後でテープに接触する第二のブレーキシュー」に相当する。したがって、両者は、「ケース内にテープを周囲に巻回する回転ドラムを軸支し、この回転ドラムにテープを巻き込み方向に付勢する付勢手段を内装した巻尺に於いて、ケース前壁にケース内方に押し込み可能な制動操作部と、上下動可能な制動操作部とを設け、押し込み可能な制動操作部を押し込むことにより回転ドラムに接触する第一のブレーキシューと、上下動可能な制動操作部を下げることによりテープの出入口の背後でテープに接触する第二のブレーキシューとを、各制動操作部である押し込み可能な制動操作部と上下動可能な制動操作部とにそれぞれ一体の部品として形成した巻尺」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点:押し込み可能な制動操作部と上下動可能な制動操作部とが、本件訂正発明は、単一の部品で構成して設けるのに対して、刊行物1記載のものは、別々の部品で構成して設けられている点。 上記相違点について検討するに、刊行物1記載の制動装置(2)の操作部は、停止レバー(1)の孔を貫通する押しボタンで構成されているから、停止レバー(1)の操作部が制動装置(2)の操作部を囲むように接近して配置されており、停止レバー(1)が高い位置(a)と停止位置(b)間を上下に移動する際には制動装置(2)も一緒に移動することが明らかである。そして、別々の部品として構成したものを、単一の部品で構成することは、部品点数の軽減、組立の容易性をはかるために広い技術分野で用いられている慣用手段(例えば、実願平5-2778号(実開平6-56937号)のCD-ROM(「ノブ27の操作部27aが湾曲可能な連結部27cを介して係合部27bに連結されているので、操作部27aのスライドにより、スライド片21もスライドされ、スライドスイッチ22のオン、オフが行われる。・・・また、この操作部27aが、タクトスイッチ24の全面側に設けられているので、操作部27aを押下することにより、タクトスイッチ24の押下片23の押下は押下られタクトスイッチ24のオン、オフが行われる。・・・ひとつの部品のノブ27によって、ノブ27の操作部27aを、スライドとタクトスイッチ24との格別に操作することができ、従来は格別に操作部材が必要であったスライドスイッチ2とタクトスイッチ4を、1つの操作部材で操作できる」旨の記載参照)、実願平5-46651号(実開平7-14733号)のCD-ROM(「本考案によれば単一のスイッチケース2内に、プッシュスイッチ7とスライドスイッチ8とを組み込み、同スイッチケース2に前記プッシュスイッチ7とスライドスイッチ8とに共用のスイッチノブ9を設けており、スイッチノブ9をプッシュスイッチ7とスライドスイッチ8とに共用しているので、構造を簡略化できかつスイッチの取り付けスペースが狭くて済み、したがってスイッチの小型化を図り得る効果があり、金型の制作費を節減できるので、コストダウンを図り得る効果がある」旨の記載参照)、特開平6-203702号公報(「押圧操作およびスライド操作可能な操作釦と、この操作釦への押圧操作で上下動する第1の操作軸と、前記操作釦へのスライド操作で上下動する第2の操作軸と、前記第1および第2の操作軸に対向して設けられ各操作軸の上下動によりそれぞれスイッチング動作するスイッチ接点とを備えていることを特徴とする押釦装置」である旨の記載参照))であるから、互いに接近して配置され且つ一緒に上下移動することが明らかな刊行物1記載の制動装置(2)の操作部と停止レバー(1)の操作部とに、上記慣用手段を適用することにより、二つの操作部を本件訂正発明のごとく単一の部品で構成することは当業者が容易になし得たものである。 この点に関し請求人は、平成16年1月30日付け意見書において、刊行物1記載の制動装置(2)の操作部と停止レバー(1)の操作部は、制動操作においては、前者(2)は、回転ドラム方向に進退移動するものであり、後者(1)は上下動するものであり、動作方向がほぼ90度異なるものであり、そのような動作方向が異なる部品を単一化するという発想は簡単にでるものではない旨主張している。しかしながら、慣用手段として例示した上記3つの文献にも記載されているように、別々の部品を単一化することは、動作方向が異なる部品に対しても普通に採用されているものであるから、請求人の上記主張は採用できない。 なお、請求人が上記採用しない補正により追加限定しようとした「回転ドラムから所望の間隔を開けて弾発的に支持される」点については、例えば、登録実用新案第3014697号公報(平成7年8月15日発行、ケース外側に突出する方向に付勢された合成樹脂製のストップボタン参照)、実願昭47-39769号(実開昭48-113953号)のマイクロフィルム(「押圧部35への押圧力を解除すると押圧部35は復元力により回転体1から離反してもとの位置に復元」する旨の記載参照))にみられるごとく周知の事項にすぎない。 そして、本件訂正発明の奏する効果は、刊行物1に記載された発明及び上記慣用手段から当業者が容易に想到し得る程度のことにすぎない。 したがって、本件訂正発明は、上記刊行物1に記載された発明及び上記慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではない。 7.むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-02-12 |
結審通知日 | 2004-02-17 |
審決日 | 2004-03-02 |
出願番号 | 特願平9-370400 |
審決分類 |
P
1
41・
121-
Z
(G01B)
P 1 41・ 856- Z (G01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡田 卓弥 |
特許庁審判長 |
江藤 保子 |
特許庁審判官 |
三輪 学 杉野 裕幸 |
登録日 | 2003-05-23 |
登録番号 | 特許第3432733号(P3432733) |
発明の名称 | 巻尺 |
代理人 | 加藤 恒久 |