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審決分類 |
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正 A61K 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61K 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61K 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61K 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61K |
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管理番号 | 1096205 |
異議申立番号 | 異議2003-71617 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-05-19 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-06-23 |
確定日 | 2004-02-12 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3359827号「脂質代謝改善剤及びそれを含有する食品」の請求項1,2に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3359827号の請求項1,2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3359827号に係る発明についての出願は,平成8年10月29日に特許出願され,平成14年10月11日にその特許の設定登録がなされ,その後,原水直子から請求項1及び2に係る特許について特許異議の申立てがなされ,取消理由が通知され,その指定期間内である平成15年11月25日に明細書の訂正が請求されたものである。 2.訂正の適否についての判断 ア.訂正事項 a.発明の名称を「低比重リポタンパク質抗酸化剤」と訂正する。 b1.請求項2における「,ビフィドバクテリウム・アンギュラータム,ビフィドバクテリウム・カテヌラータム」を削除する。 b2.段落0005及び0010中の「,ビフィドバクテリウム・アンギュラータム,ビフィドバクテリウム・カテヌラータム」を削除する。 c.段落0001中の「脂質代謝改善剤及び食品」を,「低比重リポタンパク質抗酸化剤」と訂正する。 d.段落0004,0012及び0014中の「脂質代謝改善剤」を,「LDL抗酸化剤」と訂正する。 e.段落0005中の「優れた血中コレステロール上昇抑制作用,LDLに対して優れた抗酸化活性および脂質の腸管からの吸収抑制作用を有し,脂質代謝改善剤として」を,「優れた抗酸化活性を有し,LDL抗酸化剤として」と訂正する。 f.段落0006中の「脂質代謝改善剤,LDL抗酸化剤,コレステロールの腸管からの吸収抑制剤,これを含有する脂質代謝改善食品」を,「LDL抗酸化剤」と訂正する。 g.段落0013中の「脂質代謝改善剤及び」を削除する。 h.段落0014中の「脂質代謝改善食品」を,「LDL抗酸化食品」と訂正する。 i.段落0016中の「実施例1」を,「参考例1」に訂正する。 j.段落0029中の「実施例2」を,「実施例1」と訂正する。 k.段落0035中の「実施例3」を,「参考例2」と訂正する。 l.段落0039を「本発明のLDL抗酸化剤は,LDLに対する優れた抗酸化活性を有するので,動脈硬化の発端とされるLDLの酸化変性を効果的に防止することができる。更に,本発明のLDL抗酸化剤は,豆乳にビフィドバクテリウム属微生物を作用させて得られた発酵豆乳からなるので,安全性にも全く問題のない官能的にも優れたLDL抗酸化剤であり,動脈硬化の予防及び治療に有用である。」と訂正する。 イ.訂正の目的の適否,新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項b1は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,その他の訂正事項は明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 また,これらの訂正は,願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり,かつ,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 ウ.むすび 以上のとおりであるから,上記訂正は,特許法第120条の4第2項ただし書並びに第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので,当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 ア.本件特許の請求項に係る発明 上記したとおり,特許権者の請求した明細書の訂正は認められるものであるから,本件特許の請求項1及び2に係る発明は次のとおりのものである。 【請求項1】ビフィドバクテリウム属微生物を豆乳に作用させて得られる発酵豆乳を主成分とする低比重リポタンパク質抗酸化剤。 【請求項2】ビフィドバクテリウム属微生物が,ビフィドバクテリウム・ブレーベ,ビフィドバクテリウム・ロンガム,ビフィドバクテリウム・インファンティス,ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス,ビフィドバクテリウム・ビフィダム及びビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムから選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の低比重リポタンパク質抗酸化剤。 イ.申立ての理由の概要 特許異議申立人は,次の理由を申し立てている。 (1) 平成12年6月12日付け手続補正書による補正は,願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされていないので,本件特許は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第1号に該当する。 (2) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は明確に記載されておらず,また発明の詳細な説明には当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないため,本件特許は特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから,同法第113条第4号に該当する。 (3) 本件特許の請求項1及び2に係る発明は,甲第1号証刊行物に記載された発明であるか,又は甲第1〜4号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反してされたものであるから,同法第113条第2号に該当する。 ウ.申立ての理由(1)について 特許異議申立人の主張は,平成12年6月12日付け手続補正書にて請求項2並びに段落0005及び0010に追加された「ビフィドバクテリウム・アンギュラータム及びビフィドバクテリウム・カテヌラータム」は低比重リポタンパク質抗酸化剤の主成分である発酵豆乳の種菌として願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものではない,というものである。 しかし,上記したとおり,特許権者の請求した明細書の訂正は認められるものであり,その訂正中の訂正事項b1及びb2により,本件明細書から低比重リポタンパク質抗酸化剤の主成分である発酵豆乳を得るために用いられるビフィドバクテリウム属微生物としてのビフィドバクテリウム・アンギュラータム及びビフィドバクテリウム・カテヌラータムの明示はなくなった。 したがって,本申立ての理由(1)については,適法に解消されている。 エ.申立ての理由(2)について 特許異議申立人の主張する理由は,具体的には次のとおりであり,以下これらについて検討する。 (a)「発酵豆乳を主成分とする」との意味が不明である。すなわち,発明の詳細な説明にその意味は記載されておらず,また,種々の食品中に10〜80%程度含有させることが記載されているが,例えば「10%」では主成分とはいえないし,さらに,実施例では発酵豆乳のメタノール抽出物の上清が検証されているのみで,発酵豆乳(全体)を主成分とする場合の実施例がない。 (b)「低比重リポタンパク質抗酸化剤」という用途は,「脂質代謝改善剤」「コレステロールの腸管からの吸収抑制剤」などの用途と,結局のところ「動脈硬化の予防及び治療」に用いる点において同じであり,これらの用途はどのように相違するのか不明である。 (c) 特許請求の範囲から「脂質代謝改善剤」や「脂質代謝改善食品」に係る発明は除外されたにもかかわらず,発明の詳細な説明には「脂質代謝改善剤」や「脂質代謝改善食品」に係る事項が残っており,「低比重リポタンパク質抗酸化剤」という用途をあいまいにしている。 (d) 実施例2(訂正後の実施例1)に記載の「比LDL脂質酸化抑制率」は,相対値で示されているだけで測定値も算出方法も不明であり,これに関連した平成14年6月5日付意見書に記載された表1の不備とも相俟って,妥当性を欠くものである。 a.「発酵豆乳を主成分とする」について 「主成分」とは,「低比重リポタンパク質抗酸化剤」の主成分であることを意味するものであって,「低比重リポタンパク質抗酸化剤が配合された組成物または食品」の主成分を意味するものではないことは,特許請求の範囲を含めた本件明細書の記載全体及び技術常識から明らかである。 また,発酵豆乳の抽出物に低比重リポタンパク質の抗酸化性が確認されたのであれば,発酵豆乳自体にも同じ作用が存在することは,ある程度の確実性をもって推認できるのであるから,実施例1(訂正前の実施例2)の結果から,発酵豆乳が「低比重リポタンパク質抗酸化剤」の主成分であるとすることに何ら不明確な点はない。 b.「低比重リポタンパク質抗酸化剤」について 「低比重リポタンパク質抗酸化剤」とは,低比重リポタンパク質に対して抗酸化作用を有するもののことであり,「コレステロールの腸管からの吸収抑制剤」とは,コレステロールが小腸粘膜から吸収されないようにするものであり,そして,「脂質代謝改善剤」とは,血漿コレステロールを低下させるとともにそのHDL-コレステロールと(VLDL+LDL)-コレステロールの比率を改善するものであることが本件明細書の記載から明らかである。 これらは,いずれも結果として「動脈硬化の予防及び治療」に関係するものであるとしても,それぞれの用途自体は明確に区別し得るものであるから,「低比重リポタンパク質抗酸化剤」との用途特定に不明確な点はない。 c.「脂質代謝改善剤」等について 上記したとおり,特許権者の請求した明細書の訂正は認められるものである。そして,その訂正中の訂正事項a及びc〜lにより,本件明細書から「脂質代謝改善剤」や「脂質代謝改善食品」等の記載は削除された。 したがって,異議申立人の指摘する理由はもはや存在しない。 d.「比LDL脂質酸化抑制率」について 特許異議意見書10頁の表2を参酌すれば,実施例1(訂正前の実施例2)の表7に記載された「比LDL脂質酸化抑制率」の数字に,特に不明確な点はない。 なお,特許異議申立人が本理由の根拠の一つとしている,特許出願人(特許権者)が審査中に提出した平成14年6月5日付け意見書の表1の不備が,直ちに本件明細書の記載不備に結びつくものではない。また,当該表1の不備自体も特許異議意見書6頁の表1により解消されている。 オ.申立ての理由(3)について a.甲号証記載の発明 甲第1号証:松山惇ほか“ビフィズス菌による豆乳の発酵性と糖資化性”「日本食品工業学会誌,39巻10号」(1992年10月)887(49)〜893(55)頁 ・「豆乳は,牛乳と異なる独特の風味を有し,特徴のある栄養食品として知られている。しかし,この豆乳の特有の青豆臭(Beany flavor)には,大豆成分から直接由来するものと豆乳製造時にあらたに形成されるオフ・フレーバーが含まれ,その除去については種々な観点から多くの研究が行われている。豆乳の醗酵も,オフ・フレーバーの改善に効果があり,最近,発酵乳用の種々の乳酸菌を用いた研究が行われている。……。 一方,ビフィズス菌は,近年,ヒトの腸管内で重要な役割を果たしていることが次第に明らかとなり,発酵乳の製造に広く利用されている。……。また,豆乳にはラフィノース,スタキオースなどのα-ガラクトオリゴ糖が豊富に含まれているので,ビフィズス菌は,これらのオリゴ糖を資化して良好な発育性を示すことが報告されている。従って,豆乳の発酵にビフィズス菌を使用すれば,乳酸菌の場合のように豆乳に糖添加の必要はない。その上,発酵豆乳の摂取によって,ビフィズス菌を腸管内に充分に供給し,ビフィズス菌優位の菌叢が形成されることも考えられる。……。このような点から,ビフィズス菌を用いて風味の良い発酵豆乳が調製できれば,きわめて有意義であると考えられる。さらに,植物性食品の豆乳は,発酵によって動物性食品の牛乳発酵とは異なった新たな生理的効果も期待できる。」(887(49)頁左欄1行〜888(50)頁左欄5行) ・「豆乳の発酵に使用した微生物は次のとおりである。 …… Bifidobacterium breve 1192 Bifidobacterium infantis 1222 Bifidobacterium bifidum 1255 Bifidobacterium longum 1217 Bifidobacterium adolescentis 1275」(888(50)頁左欄15〜25行) ・「供試豆乳の醗酵には,各スターター1%を接種して,37℃,24時間培養し,4時間あるいは8時間ごとに,pH,酸度および生菌数を測定した。」(888(50)頁右欄7〜9行) ・「ビフィズス菌の単独培養,または乳酸菌との混合培養による発育性ならびに大豆オリゴ糖の資化性について観察した。 (1) 豆乳中におけるビフィズス菌の発育性について,24時間培養後のpHは,いずれの菌も4.53〜4.76まで低下し,酸度は,0.67〜0.90%まで上昇した。また,培養20時間後の菌数は,いずれの菌種も103個のオーダーで増加し,豆乳中におけるビフィズス菌の増殖性はきわめて良好であった。」(892(54)頁右欄4〜12行) 甲第2号証:金澤武道ほか“大豆蛋白質の抗動脈硬化作用”「The Lipid, Vol.6, No.3」(1995-4)22(182)〜31(191)頁 ・「大豆中には多くの蛋白質が含有されているが,その蛋白質にはヒトにおいてもラットならびに家兎においても抗動脈硬化作用がある。 (1)大豆蛋白質には血漿コレステロール降下作用がある。大豆蛋白質の糞中へのステロールの排泄増加ならびに胆汁酸排泄促進作用は血漿コレステロールの降下機序の1つと考えられる。 …… (4)大豆蛋白質には血漿リポ蛋白の被過酸化性を抑制する作用がある。 以上のことから大豆は抗動脈硬化作用を有する優れた植物蛋白源である。」(22(182)頁左欄[Summary]) ・「豆腐の製造方法とほぼ同じ行程で作った豆腐様物質からニガリやundesirable taste物質を排除するために,食塩,エタノールならびにイーストを作用させ,水分61.9%,蛋白質10.6%,炭水化物16.8%,脂質8.2%,灰分2.5%のソイクリーム,ならびにソイクリームにさらに水分を加えたソイミルクを作製した。」(23(183)頁左欄末行〜右欄末行) ・「動脈粥状硬化巣には多量の脂質を取り込んだマクロファージや平滑筋細胞が認められることから,動脈硬化の成因としてマクロファージならびに平滑筋細胞の泡沫化が重要視されている。これら細胞の泡沫化と種々modified LDLとの関係が報告されているが,なかでもヒトの生体内に存在している過酸化LDLが注目されている。したがって,動脈硬化発症においてLDLの被酸化性はきわめて重要であり,その抑制は動脈硬化性疾患の発症を予防することにもなる。 われわれは大豆蛋白質により,LDLの被過酸化性の抑制が可能であるか否かについて検討した。」(27(187)頁左欄末行〜右欄10行) ・「大豆から得られたソイミルクの飲用は血漿中のLDL被過酸化性を明らかに抑制する。」(30(190)頁左欄4〜5行) ・「ソイクリームの投与によっても明らかにLPOの上昇は抑制された。」(30(190)頁左欄20〜21行) ・「大豆蛋白質は,血漿リポ蛋白の被過酸化性を抑制する作用を有している。」(30(190)頁左欄22〜23行) 甲第3号証:特開平8-99888号公報(平成8年4月16日公開) ・「乳酸菌のビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)……の培養上清を有効成分とするグルタチオンペルオキシダーゼ活性化剤。」(請求項1) ・「本発明のグルタチオンペルオキシダーゼ活性化剤は,生体内で過酸化水素を効果的に消去するので,生体内における過酸化脂質の生成と蓄積による……,循環器系疾患,……の予防効果が期待される。」(段落0001) ・「近年,生体内における過酸化脂質の生成と蓄積が,……動脈硬化症,……などの循環器系疾患,……の発症に影響を及ぼしていることが報告されており,これらの治療や予防を目的として,生体内過酸化脂質の生成を抑制する方法が検討されている。」(段落0002) ・「従来,生体内の過酸化脂質抑制剤としては,……,グルタチオンペルオキシダーゼ,……の酵素剤が知られている……」(段落0003) ・「生体内で脂質の過酸化に関与する物質として,過酸化水素が知られている。この過酸化水素には,直接脂質を酸化する作用は無いが,ペルオキシダーゼの基質となって有機物を酸化するか,あるいは1電子還元を受けてヒドロキシラジカルとなって強力な酸化作用を発揮する。この過酸化水素を分解する酵素として,グルタチオンペルオキシダーゼとカタラーゼが知られている。そして,このグルタチオンペルオキシダーゼやカタラーゼの活性が生体内で高まっていればいる程,生体内で過酸化脂質が生成し難いと考えられている。特に,グルタチオンペルオキシダーゼは,カタラーゼに比べて過酸化水素に対するKm値が非常に小さいことから,生体内の過酸化水素を効果的に消去することができる酵素であるといえる。」(段落0005) ・「ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)……について,培養基として乳培地または乳成分を含む培地を用い,通常の乳酸菌を培養する方法に従って培養した後,遠心分離などの操作によって培養上清を回収する。そして,本発明では,この培養上清をグルタチオンペルオキシダーゼ活性化剤の有効成分として用いる。」(段落0020) ・「血漿リポタンパク質画分の調製 ラットから採取した血液を分離して回収した血漿に……,血漿リポタンパク質画分とした。なお,この血漿リポタンパク質画分には,超低比重リポタンパク質及び低比重リポタンパク質が含まれている。」(段落0030) ・「これらの試験結果から,ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)の培養上清……は,共に赤血球のグルタチオンペルオキシダーゼ活性,……を活性化することが判った。また,血漿リポタンパク質画分の過酸化脂質量も有意に低下したことから,ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)の培養上清……は,生体内の過酸化脂質抑制作用を有することが判った。」(段落0051) 甲第4号証:国際公開第89/00425号パンフレット(1989年1月26日発行) ・「……,ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium),……に属する微生物から得られる生菌体,死菌体及びそれらの不溶性成分からなる群から選んだ少なくとも1種を有効成分として含有する過酸化脂質減少剤。」(請求の範囲第1項) ・「前記微生物が,……,ビフィドバクテリウム・アドレッセンテス(Bifidobacterium adolescentes),同ロンガム(B. longum),同ブレベ(B. brave),同ビフィダム(B. bifidum)……よりなる群から選択される1種以上である請求の範囲第1項に記載の過酸化脂質減少剤。」(請求の範囲第2項) ・「本発明は,……,ビフィドバクテリウム属……に属する微生物の菌体を有効成分として含有する過酸化脂質減少剤に関する。本明細書において「過酸化脂質」とは一般的に脂質の過酸化物を意味し,例えばリノール酸,オレイン酸,アラキドン酸の過酸化物を挙げることができる。」(1頁6〜13行) ・「食品中に含まれる過酸化脂質は,……,その一部は生体内に取り込まれ,さまざまな影響を与えることが知られている。例えば生体内で不飽和脂肪酸を多く含んでいる細胞膜に過酸化脂質が生成されると種々の酵素の活性低下をきたすこと,膜の性状が劣化し,例えば……,血管壁が硬化し,種々の組織に形態的変性が生じることが報告されている。これらの諸現象が重複して,現実には動脈硬化,……といった老化性の機能退行が現われると考えられている。」(1頁16行〜末行) ・「本発明による各菌体は以下のようにして調製する。 菌体を,乳酸菌(……,ビフィドバクテリウム属……の微生物)はロゴサ液体培地(……)に,……接種し,前者は37℃で16〜24時間,……浸盪培養する。遠心分離(……)により集菌し,……洗菌する。この洗菌体を生菌体のままで使用することができる。或いは121℃で10分間の加熱殺菌処理後に乾燥(……)して調製した死菌体を使用することができる。あるいはさらに,前記の死菌体を遠心分離して調製した不溶性成分を使用することもできる。」(11頁1〜14行) ・19頁第5表には,in vitroでの過酸化脂質測定法(TBA法)により算出された,上記ビフィズス菌死菌体のリノール酸過酸化物を用いた過酸化脂質減少率が記載されており,その値は「ビフィドバクテリウム・アドレッセンテス:22%,ビフィドバクテリウム・ブレベ:25%,ビフィドバクテリウム・ロンガム:12%」と記載されている。 b.対比・判断 甲第1号証は,栄養食品としての豆乳の風味改善のためにビフィドバクテリウム属微生物であるビフィズス菌を用いて豆乳を発酵させること,及びそのようにして得られた発酵豆乳(食品)が記載されている。 本件特許の請求項1に係る発明(以下,本件特許発明という)と,甲第1号証に記載された発明とを対比すると,ビフィドバクテリウム属微生物の菌を豆乳に作用させて得られる発酵豆乳である点において両者は一致するが,甲第1号証には得られた発酵豆乳にいかなる薬理作用があるかについては何ら具体的には記載されていないのに対し,本件特許発明においてはこの発酵豆乳に低比重リポタンパク質抗酸化剤(以下,LDL抗酸化剤ということがある)としての用途を見出したものである点において相違する。 したがって,本件特許発明は甲第1号証に記載された発明ではない。 甲第2号証は,大豆蛋白質(これは豆乳の主成分である)自体に血漿リポ蛋白の被過酸化性を抑制する作用があることを示すにとどまるものであり,発酵豆乳については何ら記載されていない。本件明細書の実施例1(訂正前の実施例2)においては豆乳と発酵豆乳のLDL脂質酸化抑制率を求めているが,豆乳に比べて発酵豆乳の方が当該抑制率が上昇している。この実験はメタノール抽出物を用いて測定していることからすると,この効果はビフィドバクテリウム属微生物の菌自体に基づくものではなく,その発酵産物が関係しているものと認められるが,甲第2号証の記載は発酵豆乳にLDL酸化抑制作用を有する成分が豆乳(大豆蛋白質)以上に存在することを示唆するものではないから,当業者は発酵豆乳のLDL抗酸化作用に優れ,LDL抗酸化剤として特に適していることを容易に想起することはない。 甲第3号証は,乳培地を用いてビフィドバクテリウム・ロンガムを培養した培養上清に血漿リポタンパク質画分の過酸化を抑制する作用があることを示すものである。しかし,乳培地と豆乳とでは成分が大きく異なるものであり,乳培地での培養上清に含有される成分と醗酵豆乳に含有される成分も当然相違すると考えられることから,甲第3号証に記載された乳培地での培養上清において得られた効果を発酵豆乳でも得られるとする根拠はまったく見当たらない。 甲第4号証は,ビフィドバクテリウム属微生物の菌自体に過酸化脂質の減少作用があることを示すものである。しかし,甲第4号証は,脂質といってもリノール酸等の不飽和脂肪酸を意図するものであり,その過酸化物を減少させる効果が記載されているにとどまるものであって,LDLの抗過酸化作用を具体的に示唆するものとはいえない。そして,本件特許発明においては,実施例1(訂正前の実施例2)の記載からみて,ビフィドバクテリウム属の菌自体から得られる作用以外の作用に基づくものであることは明らかであり,そうすると,本件特許発明のLDL抗酸化作用は甲第4号証から示唆されるものではない。 そして,甲第1号証に記載された発明に対し,甲第2〜甲第4号証に記載された発明を総合して考慮しても,本件特許発明に到達することはできず,本件特許発明は,甲第1号証〜甲第4号証の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできない。 なお,特許異議申立人は,「抗酸化作用を元来有する「豆乳」と抗酸化作用を元来有する「ビフィズス菌」をいずれも含有している甲第1号証に記載の発酵豆乳に,LDL抗酸化作用があることは極めて自明のことであり,かかる発酵豆乳の効果は本件出願前において公知の生理作用に過ぎない。」と主張しているが,甲第2号証に基づき「豆乳」に抗酸化作用があることが知られていたとしても,その発酵産物である発酵豆乳に同じ効果があることは直ちには認識し得ず,また,本件明細書の実施例1(訂正前の実施例2)の試験結果から発酵豆乳の方が豆乳そのものよりLDL脂質酸化抑制作用が高いことを鑑みると豆乳に含有される成分のみによる作用とも認められない。また,甲第3号証は,前記したように,乳培地の培養上清に関するものであるが,乳培地における培養上清と発酵豆乳とでは含まれる成分が異なることは明白であり,同じビフィドバクテリウム属の微生物を使用しているとしても,直ちに同様の効果を奏すると言えるものではない。さらに,甲第4号証は,ビフィドバクテリウム属微生物の菌自体の効果を示すものであるが,本件明細書の実施例1(訂正前の実施例2)は,抽出物を用いてその作用を確認していることからすれば,本件特許発明のLDL抗酸化作用はビフィドバクテリウム属微生物の菌自体に基づくものということもできない。そうすると,特許異議申立人の主張はその前提において認めることができない。 また,特許異議申立人は本件特許発明のLDL抗酸化作用をイソフラボンの抗酸化作用とも結びつけているが,イソフラボンは豆乳を発酵することによって生じるものではなく,豆乳自体にも含まれるものであって,そうすると発酵豆乳が豆乳に比べてLDL脂質酸化抑制率が有意に上昇すること(実施例1)を説明できないことから,これを採用することもできない。 請求項2に係る発明は,請求項1に係る発明のうちビフィドバクテリウム属微生物を6種に限定するものであるが,上記したとおり,請求項1に係る発明に新規性及び進歩性が認められるのであるから,請求項2に係る発明にも当然新規性及び進歩性が認められる。 4.むすび 以上のとおりであるから,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 低比重リポタンパク質抗酸化剤 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ビフィドバクテリウム属微生物を豆乳に作用させて得られる発酵豆乳を主成分とする低比重リポタンパク質抗酸化剤。 【請求項2】 ビフィドバクテリウム属微生物が、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム及びビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムから選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の低比重リポタンパク質抗酸化剤。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ビフィドバクテリウム属微生物を用いた発酵豆乳を含有する低比重リポタンパク質抗酸化剤に関する。 【0002】 【従来の技術】 豆乳には、大豆蛋白質、リン脂質、インフラボンが含まれており、脂質代謝に有効であることが期待されている。しかしながら、豆乳には特有の不快臭や不快味があるため多くの消費者から敬遠されているのが現状である。 そこで、豆乳特有の不快臭を軽減するために、乳酸菌やビィフィズス菌で豆乳を発酵させることなども試みられているが、発酵豆乳に優れた脂質代謝改善効果があることは未だ報告されていない。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 動脈硬化症の予防・改善には、血中コレステロール量を低下させることが一般的であり、高コレステロール血症、特に高LDL(・低比重リポタンパク質)コレステロール血症の改善が効果的である(馬淵 宏ら(1987)Coronary vol4,281)。 また、動脈硬化の発生は、LDLの酸化変性が発端となって起こることが報告されており(Steinberg,D.ら(1989)New Engl J.Med.,321,1196-1197)、LDLに対し抗酸化活性を有する物質が注目されている。 【0004】 従って、本発明の目的は、動脈硬化症の予防・改善に効果的な優れたLDL抗酸化剤を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 かかる実情に鑑み、本発明者らは、豆乳の持つ有効成分に着目し鋭意研究を行った結果、豆乳にビフィドバクテリウム属微生物、特にビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータムを作用させて得られた発酵豆乳が、LDLに対して優れた抗酸化活性を有し、LDL抗酸化剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。 【0006】 すなわち、本発明は、ビフィドバクテリウム属微生物を豆乳に作用させて得られる発酵豆乳を主成分とするLDL抗酸化剤を提供することにある。 【0007】 【発明の実施の形態】 本発明において原料となる豆乳は、油脂を含有した丸大豆、脱皮大豆、又はフレーク大豆等を原料としたものが好ましいが、脱脂大豆を原料としたものであってもよい。 【0008】 豆乳は原料を水につけた後、熱水又は0.5〜1.0重量%(以下、単に%で示す)の炭酸ナトリウムを含む熱水を添加して磨砕後、おからを取り除き、更に加熱殺菌して製造することができるが、本発明で用いる豆乳はいかなる方法で製造されたものであってもよい。 【0009】 豆乳には、後の微生物処理のために、ショ糖、ブドウ糖、果糖、転化糖等の食品に用いられる糖;肉エキス、ペプトン、酵母エキス、ペプチド等の微生物の増殖に必要な栄養素を添加してもよい。また、微生物の至適pHに調整するために豆乳にクエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、乳酸、酢酸等の食品に用いられる酸を添加してもよい。 【0010】 本発明のLDL抗酸化剤は、豆乳にビフィドバクテリウム属微生物を作用させて得られた発酵豆乳を主成分とする。豆乳に作用させるビフィドバクテリウム属微生物は特に限定されるものではないが、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレスセンティス、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・シュードカテヌラータム等を挙げることができる。 【0011】 これらビフィドバクテリウム属微生物を豆乳に作用させる方法は特に限定されず、例えば、培養したビフィドバクテリウム属微生物の菌液を上記豆乳に接種した後、その微生物に適した温度、時間、嫌気性菌なら嫌気性等の条件を適宜決定して発酵を行えばよい。なお、発酵は、菌株を複数種組み合わせた混合発酵であってもよいし、菌株を複数種組み合わせた連続発酵であってもよい。 また、ビフィドバクテリウム属微生物及びそれ以外の微生物を用いた上記混合発酵あるいは連続発酵でもよい。 【0012】 豆乳にビフィドバクテリウム属微生物を作用させて得られた発酵豆乳は、そのまま本発明のLDL抗酸化剤とすることができるが、食品や経口医薬品に通常使用されている添加物を加えてもよい。ここで用いる添加物としては、糖類、蛋白質、脂質、ビタミン類、植物抽出物、動物抽出物、ゲル化剤、香料、着色剤等が挙げられる。なお、本発明において発酵豆乳は、殺菌してから用いることもできる。 【0013】 本発明のLDL抗酸化剤を医薬として使用する場合の投与量は、投与法、患者の年齢、体重、容態によって異なるが、経口投与の場合、成人患者に対して1日あたり100〜500mlとすることが好ましい。 【0014】 また、本発明のLDL抗酸化剤は、任意の範囲で食品に添加して用いることができ、LDL抗酸化食品とすることができる。食品としては、乳酸菌飲料、発酵乳、豆乳、牛乳、チーズ、プリン等に10〜80%、好ましくは40〜70%程度含有させればよく、その他ビスケット、パン等に含有させることもできる。 【0015】 【実施例】 以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。 【0016】 参考例1 素豆乳(四国化工機製、固形分12.0%、粗脂肪2.48%、粗タンパク4.71%)を100℃で90分蒸気滅菌後、Bifidobacterium breve YIT4065(FERM P-15488)(豆乳培地)を接種し、30時間培養した。培養終了後の菌液のpHは4.82、滴定酸度は8.25であった。これを凍結乾燥した発酵豆乳凍結乾燥物の組成は、素豆乳の組成とほぼ一致していた。また、対照として発酵豆乳のタンパクをカゼインに、脂質をコーン油に、残りをシュクロースで置換した対照混合物を調製した。これらの発酵豆乳、豆乳及び対照混合物を使用し、表1に示すコレステロール無添加食餌及び表2に示すコレステロール添加食餌をそれぞれ調製した。なお、表1及び表2において、ビタミン混合、塩類混合はAIN-76に準じたものである。 【0017】 【表1】 ![]() 【0018】 【表2】 ![]() 【0019】 5週齢のシリアンハムスター(SLC)雄36匹を使用し、3日間MF(オリエンタル酵母工業(株)製)固形食、4日間MF粉末食にて予備飼育後、平均体重に差がでないように6群に分けて(1群6匹)、室温24±1℃、湿度55±5%の環境下、個別ブラケットケージで上記食餌にて飼育した。なお、食餌及び水は自由摂取とした。 2〜3日おきに摂取量を測定し、試験開始7日後、4時間絶食後、ネンブタール麻酔下で解剖し、腹大動脈より採血し血漿を分離して脂質を分析した。 【0020】 分析は、血漿脂質は総コレステロール、HDL(高比重リポタンパク質)-コレステロール、トリグリセライドについて臨床検査キット(デタミナTC555/協和メディクス(株)製、HDL-コレステロールテストワコー/和光純薬(株)製、トリグリセライドGテストワコー/和光純薬(株)製)にて測定することにより行った。 統計処理は、分散分析(等分散性が認められなかった場合はlog変換後分散分析)の後Tukeyの検定にて多重比較した。結果を表3〜表6に示す。値は平均値と標準偏差で表した(n=6)。有意水準は0.05とした。 同じアルファベットが付されている値は有意差がないことを示す。表3及び表5において終体重は絶食前の体重を示す。動脈硬化指数は計算式(1)により算出した。 【0021】 【数1】 ![]() 【0022】 【表3】 ![]() 【0023】 【表4】 ![]() 【0024】 【表5】 ![]() 【0025】 【表6】 ![]() 【0026】 コレステロール無添加食において、終体重、体重増加量、飼料効率への豆乳及び発酵豆乳の影響は認められなかった。摂食量において豆乳と発酵豆乳で対照に比べて多い傾向にあるが多重比較すると差が検出されなかった。豆乳と発酵豆乳の血漿トリグリセライドの値は対照と比べて半減した。 総コレステロールに3群間の差はなかったが、HDL-コレステロールは発酵豆乳群で対照群に比べ増加し、(VLDL(超低比重リポタンパク質)+LDL)-コレステロール値は減少した。 動脈硬化指数も発酵豆乳群で対照群と比べて低下した。豆乳群ではHDL-コレステロール、(VLDL+LDL)-コレステロール、動脈硬化指数いずれも対照とも発酵豆乳とも差は認められなかった。 【0027】 コレステロール添加食においては、豆乳及び発酵豆乳群の体重増加量と接食量及び飼料効率は対照群と比較してそれぞれ増加した。血漿トリグリセライド値は豆乳と発酵豆乳群で対照群の約1/4に減少した。 また、総コレステロールについても豆乳群、発酵豆乳群は対照群と比べて、15%程度減少した。豆乳、発酵豆乳群はHDL-コレステロールの上昇、(VLDL+LDL)-コレステロールの減少が認められ、動脈硬化指数が約半分に減少し、コレステロール無添加の対照群の値に近くなった。 【0028】 以上の結果により、発酵豆乳は、コレステロール添加、無添加にかかわらず、対照に比べ明らかにHDL-コレステロールの上昇と(VLDL+LDL)-コレステロールの減少が認められ、脂質代謝改善効果が確認された。 更に発酵豆乳は、コレステロール無添加において、豆乳に比べ明らかに優れた脂質代謝改善効果を有することが確認された。 【0029】 実施例1 嫌気GAM培地にて前培養したヒト由来ビフィドバクテリウム属微生物(10株)を素豆乳(100℃90分滅菌)に1%接種し、37℃、48時間培養した。 培養液1mlに3mlのメタノールを加えて攪拌、4℃で一晩放置したのち、遠心分離(3000rpm、10分間)して上清(4倍希釈液)を得た。これを更にメタノールで希釈し、40倍希釈サンプルを調製した。 【0030】 シリアンハムスター(雄、6週齢)をMF飼料で1週間予備飼育したのち、0.5%コレステロール、及び5%ラードを添加したMF飼料で2週間飼育した。解剖前日に24時間絶食させ、腹部大動脈から採血を行い、EDTA法により血漿を調製した。この血漿から超遠心法によりLDL画分を採取し、生理的リン酸緩衝液で24時間透析したのち、適当な濃度に希釈して酸化反応用LDLとした。 【0031】 LDL(終濃度250μg/ml protein)はサンプル添加後、5μM CuSO4存在下で37℃、4時間インキュベートして酸化させ、EDTA添加ののち冷却して反応を止め、反応液中のThiobarbituric acid reactive substance(以下、TBARSで示す)を比色法による吸光度測定から求めた。サンプルのかわりにメタノールを添加したものをコントロールとし、計算式(2)にてLDL脂質酸化抑制率(%)を求めた。結果を表7に示す。なお、抗酸化性は、滅菌済素豆乳の値を100としたときの比抑制率として表した。 【0032】 【数2】 ![]() 【0033】 【表7】 ![]() 【0034】 以上の結果により、ビフィドバクテリウム属微生物による発酵豆乳は、LDL抗酸化活性を有し、豆乳と比較しても優れたLDL抗酸化活性が認められた。 【0035】 参考例2 嫌気GAM培地にて前培養したビフィドバクテリウム属微生物(34株)を素豆乳(四国加工機製、100℃90分滅菌)に1%接種し、所定時間37℃で好気培養した後、測定まで-20℃で保存した。 上記のとおり調製した発酵豆乳200mgに、後述する方法で調製した人工脂質ミセルを200μlを加えて、37℃で1時間放置後、遠心分離(1000rpm,15分)し、上清のコレステロール濃度をデタミナTC555(協和メディックス)を用いて測定した。コントロールとしては素豆乳を用い、各発酵豆乳の沈殿に移行したコレステロール量をコレステロール不溶化率とした。結果を表8に示す。 【0036】 〔人工脂質ミセルの調製〕 リン酸バッファー(150mM,pH7.0)75mlに、oxgall(DIFCO)2g、コレステロール(和光純薬工業(株)製)921mg、リゾフォスファチジルコリン(SIGMA)135mgの順で加えて溶解し、次いでモノオレイン酸(東京化成工業(株)製)90.2mg、オイレン酸(和光純薬工業(株)製)702.2mgを加え混合し、リン酸バッファーを加えて全量を100mlとした。 溶液を攪拌しながら、室温での超音波処理(SONIFR,スモールチップ)を行った。このエマルジョン及びミセル溶液をしばらく攪拌後100,000×g(RP50-2,40,000rpm)、25℃にて超遠心分離を16〜18時間行った。超遠心分離後、透明なミセル層のみを回収し、人工脂質ミセルを調製した。 【0037】 【表8】 ![]() 【0038】 以上の結果により、ビフィドバクテリウム属微生物による発酵豆乳はいずれも豆乳に比べミセル不溶化作用が強かった。コレステロールが小腸粘膜から吸収されるにはミセルに溶解していることが必須である。よって発酵豆乳は豆乳よりもコレステロールの吸収を抑制することが示唆された。 【0039】 【発明の効果】 本発明のLDL抗酸化剤は、LDLに対する優れた抗酸化活性を有するので、動脈硬化の発端とされるLDLの酸化変性を効果的に防止することができる。更に、本発明のLDL抗酸化剤は、豆乳にビフィドバクテリウム属微生物を作用させて得られた発酵豆乳からなるので、安全性にも全く問題のない官能的にも優れたLDL抗酸化剤であり、動脈硬化の予防及び治療に有用である。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-01-23 |
出願番号 | 特願平8-286682 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(A61K)
P 1 651・ 561- YA (A61K) P 1 651・ 113- YA (A61K) P 1 651・ 537- YA (A61K) P 1 651・ 121- YA (A61K) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鶴見 秀紀 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
渕野 留香 松浦 新司 |
登録日 | 2002-10-11 |
登録番号 | 特許第3359827号(P3359827) |
権利者 | 株式会社ヤクルト本社 |
発明の名称 | 低比重リポタンパク質抗酸化剤 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 浅野 康隆 |
代理人 | 村田 正樹 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |
代理人 | 浅野 康隆 |
代理人 | 中嶋 俊夫 |
代理人 | 有賀 三幸 |
代理人 | 的場 ひろみ |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 山本 博人 |
代理人 | 高野 登志雄 |
代理人 | 特許業務法人アルガ特許事務所 |