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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01K
管理番号 1096307
異議申立番号 異議2002-71489  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-08-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-14 
確定日 2004-02-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3239355号「餌料培養礁を備えた人工魚礁」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3239355号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第3239355号の請求項1に係る発明は、平成10年2月19日の出願であって、平成13年10月12日にその特許権の設定登録がなされ、その後、海洋建設株式会社より特許異議の申立がなされ、当審から取消しの理由が通知され、その指定期間内である、平成15年6月24日に訂正請求がなされたものである。

第二.訂正の適否
[1].訂正の内容
(A).訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1を以下のように訂正する。(下線部分は、訂正個所を示す。他の訂正事項も同様)
「内部に空間部を有する人工魚礁と、貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層とを具備し、前記人工魚礁は、中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成するとともに、前記魚礁枠体の上面側に前記餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、前記魚礁枠体の上面側に前記網籠の位置決めをする複数の収容枠を設け、これら収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周縁四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け、かつ、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したことを特徴とする餌料培養礁を備えた人工魚礁。」と訂正する。
(B).訂正事項b
明細書の段落【0005】を以下のように訂正する。
「請求項1記載の飼料培養礁を備えた人工魚礁は、内部に空間部を有する人工魚礁と、貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の飼料培養層とを具備し、前記人工魚礁は、中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成するとともに、前記魚礁枠体の上面側に前記餌料培養層を収納する網体からなる複数の網篭を配列し、前記魚礁枠体の上面側に前記網篭の位置決めをする複数の収容枠を設け、これら収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周緑四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け、かつ、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したものである。」
(C).訂正事項c
明細書の段落【0015】を以下のように訂正する。
「【発明の効果】 請求項1記載の飼料培養礁を備えた人工魚礁は、内部に空間部を有する人工魚礁と、貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の飼料培養層とを具備し、前記人工魚礁は、中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成するとともに、前記魚礁枠体の上面側に前記餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、前記魚礁枠体の上面側に前記網篭の位置決めをする複数の収容枠を設け、これら収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周縁四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け、かつ、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したものであるから、複数の網篭を集合させることにより、飼料培養層で増殖した多毛類,小型甲殻類等を飼料とする小魚類が飼料培養層の周囲に蝟集し、さらに、飼料培養層に蝟集する小魚類を飼料とする底棲型魚類が人工魚礁に蝟集し、魚類を蝟集,増殖させることができる。また、コンクリート製の魚礁ブロックと鋼材から成る魚礁枠といった異種材料を組み合わせることによって、波浪エネルギーに対抗できる重量を確保でき、人工魚礁の転倒を防いで長期に渡って飼料培養層の機能を維持できる。特に、前記魚礁枠体の上面側に前記網篭の位置決めする複数の収容枠を設け、これら収容枠を放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部に前記空間部と連通する開口部を設けているので、多数の網篭の組み付けが容易である。また、餌料培養礁に蛸集する魚類は、収容枠の開口部を通って人工魚礁の空間部内外を回遊することができ、人工魚礁の魚巣機能も高まる。しかも、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したものであるから、人工魚礁の重量を沈設する海域における潮流の早さや波浪の大きさに応じて簡単に調整することができる。」

[2].訂正要件の検討
(1).訂正事項aについて、
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、(i)「コンクリート製の魚礁ブロック」を、より下位概念である「中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロック」に限定し、(ii)「魚礁枠体」を、より下位概念である「中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体」に限定し、(iii)「空間部」の構成について、より下位概念である「魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成する」ことを限定し、(iv)「収容枠」 の取付位置について、より下位概念である「収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して」いることを限定し、(v)「開口部」の構成について、より下位概念である「少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周縁四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け」ていることを限定しようとするもので、これらは、各々(i)段落番号【0007】第8〜9行の「支持脚32を矩形枠状に形成された天板ブロック33により一体化している。」との記載、(ii)段落番号【0007】第11〜第12行の「魚礁枠体40は鋼材からなる四本の支持脚41と、これら支持脚41を相互に一体化する矩形枠状の天端部42とを備え」との記載、(iii)段落番号【0008】第16〜第17行の「魚礁ブロック30及び魚礁枠体40の内側に形成される空間部60と」との記載、(iv)段落番号【0008】第4〜5行の「前記収容枠46は、前記天端部42の一辺中央部にそれぞれ固定され、」との記載、(v)段落番号【0008】第14〜16行の「各収容枠46の中央部が抜かれた開ロ部51が形成され、さらに、前記天端部42の周縁四隅に位置して天端部42と各収容枠46で囲まれた正方形の開口部52が形成される。」との記載などに基づいている。
したがって、上記訂正事項(a)は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の滅縮を目的とするものであり、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(2).訂正事項(b),(c)について、
明細書の「課題を解決するための手段」、「発明の効果」の各項において、いずれも特許請求の範囲との整合を図るために、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明りようでない記載の釈明を目的として訂正するものであり、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)まとめ、
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので当該訂正を認める。


第三.特許異議申立についての判断
[1].本件の請求項1に係る発明
前記「第二」で示したように前記訂正が認められるものであるから、本件の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という)は、前記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである(「第二、[1]、(A)訂正事項a」参照)

[2].特許法第29条第2項の検討
(1).当審で通知した取消理由に引用した、(A)特開平8-154527号公報、(B)特開昭63-241号公報、(C)特開昭56-99736号公報、(D)実公昭57-22528号公報、及び周知事項を示す刊行物である、(E)特開平7-274765号公報、(F)特公平5-48092号公報、(G)特開平7-236385号公報、(H)実願平5-47010号(実開平7-14860号)のCD-ROM、(J)登録実用新案公報第3031263号、(K)実願昭60-72801号(実開昭61-188459号)のマイクロフィルムには、各々以下の発明が記載されている。
(A).特開平8-154527号公報(異議申立人 海洋建設(株)提出の甲第3号証:以下「刊行物A」という)記載事項
(A-1).「【従来の技術】人工魚礁として、コンクリート製のブロックや合成樹脂あるいは古タイヤを使用したもの等、種々の形状、構造のものが知られている。特に鋼製構造物をコンクリート製の基礎の上に載置した構造の人工魚礁は、海底での安定性と魚礁沈設時の作業の容易性に優れている。」(第1欄第25〜30行)
(A-2).「【実施例】以下、この発明の人工魚礁について図面に基づき説明する。図1に示すように、コンクリート製基礎1は、鉄筋により補強された4本の梁部2と、梁部の先端から下方に延びる脚部3とを有している。梁部2と脚部3の大きさは、集合体としての人工魚礁の大きさや水深により決定される。鋼製構造物4は、複数の鋼製の柱材5とこれに溶接された複数の横桁6から構成されている。」(第2欄第41〜48行)
(A-3).「図12はテーブル型基礎1を有するものである。これらには、図1と同一機能を有する部分は同一の符号を付してある。」(第3欄第43〜45行)
(A-4).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
すなわち、
「中央部を開口したテーブル型基礎であって、その開口部に、テーブル枠の4辺を結合する十字形状体を配設したコンクリート製の基礎と、、当該十字形状体の上に、複数の鋼製の柱材5とこれに溶接された複数の横桁6から構成された鋼製構造物を固定した人工魚礁」

(B).特開昭63-241号公報(異議申立人 海洋建設(株)提出の甲第1号証:以下「刊行物B」という)記載事項
(B-1).「2.特許請求の範囲
1 通水性のケース(1)内にカキ殻(2)を充填し、該通水性ケース(1)を複数個集合して枠体(3)、板体又はブロック体と結合してなる人工魚礁。 2 通水性ケース(1)は鋼製、樹脂製、コンクリート製の人工魚礁に収納してなる特許請求の範囲第1項記載の人工魚礁」(第1頁左欄第3〜9行)
(B-2).「また、沿岸漁業の盛んな海域に沈設する人工魚礁が必要としている、移動防止、強度等が不十分で、しかも、海流による流出防止対策が講じられていない等の難点を有していた。」(第2頁左上欄第10〜13行)
(B-3).「第1図及び第2図に示した人工魚礁は、矩形に形成された鋼製の枠体(3)内へカキ殻を詰めた通水性のケース(1)を複数個収納したもので、両者はケース(1)の配置を異にしている。前者は中央部及び両側から広い間隙を設けて比較的大きいタコやカニ等に生活の場を提供する構造である。その底部には、コンクリート台座(4)が取付けられており、潮流等による移動が無い構造となっている。 また、上部はコンクリート製の天蓋(5)が設けられて強度と重量を増し、かつ後述するように棲息環境を良好にする。」(第2頁左下欄第3〜13行)
(B-4).「第5図に示した構造は円錐形のもので、枠体(3)を構成している多数本のフレームの2本置きにカキ殻が入った通水性のケース(1)を取付けている。」(第2頁右下欄第10〜第12行)
(B-5).「本発明の人工魚礁は以上のような構造であるから、魚礁を利用することによって繁殖と育成が可能な魚介類の産卵等の繁殖に適し、多量に発生した稚魚等を如何に多く成長させるかといった問題点を解決して快適な生活環境を提供することができる。」(第3頁左欄第17行〜同頁右欄第2行)
(B-6).第4図には、海底に接地する脚の上部に枠体が配設され、当該枠体は、カキ殻を充填した複数のケースを一体化すると共に、当該枠体の中央部には枠体の上下空間に連通する開口部が図示されている。

(C).特開昭56-99736号公報(異議申立人 海洋建設(株)提出の甲第2号証:以下「刊行物C」という)記載事項
(C-1).「自然石、割石、コンクリート屑、煉瓦屑、鉱滓、貝殻などの1種、若しくは2種以上からなる魚礁材料を、セメントでまぶしつけたのち、型枠に挿入固化せしめ定型集塊状魚礁とすることを特徴とする魚礁の製造方法」(特許請求の範囲(1))
(C-2).「ところで本発明にかかる集塊状岩即ち魚礁は第9図に示すように魚礁材料をセメント層17で包囲し、それらを互いに接着させ一体のブロックとしたものであるため塊状体1の間には空間18、19、20が残されており、通常それらの空間18〜20は互いに連通しており、矢印21から矢印22への通水は極めて容易である。換言すると、極めてポーラスであり、表面はセメント層17を有する魚礁材料がそのまま露出して凸凹である。」(第4頁右上欄第1〜9行)
(C-3).「たとえば、第10図は単位塊状体1をより小径(5〜20mm径)のものとして製造した魚礁の部分断面図で矢印23から24への通水率は低いが、引張りに対する強度は増加する。」(第4頁左下欄第4〜8行)
(C-4).「第25図は型枠の代りに型網を用いてセメントをまぶした魚礁材料を装入し、型網もろともに固化せしめてなる魚礁の外観斜視図である。」(第7頁左上欄第16〜末行)
(C-5).「本発明の魚礁は非常に空間が多いので海草等の根が深く入りこんで生育することが可能となる。」(第7頁右下欄第7〜9行)

(D).実公昭57-22528号公報(以下「刊行物D」という)記載事項
(D-1).「しかし、これらの人工魚礁は構造が複雑で肝腎の魚礁空間も比較的小さく且つ製作に長時間を要し、また、軽量化したもののその反面海底に設置した際に潮流により移動、転倒等を起し、定着性が悪いと言った欠点を有しているため、必ずしも優れた人工魚礁とは言えない」(第2欄第16〜21行)
(D-2).「(6)魚礁本体の中空部にコンクリート、石、砂鉱滓等の重錘または合成樹脂発泡体等の浮材を充填あるいは併用することが出来るので、本考案の組立式人工魚礁は魚の種類に応じて海底または海中の任意の水深に簡単且つ容易に設置できる。」(第4欄第21〜25行)

(E).特開平7-274765(以下「刊行物E」という)
(E-1).「【目的】 培養礁体を組み付けた大型人工魚礁を提供する。」(第1頁下段第3〜4行)
(E-2).「【0009】 【作用】外礁体自体は、大型人工魚礁として魚類の安息可能な棲息域を形成して多くの魚類の寄りつきをよくする。培養礁体は外礁体内を上下に区分する形で外礁体内に組付けられ、短管群を形成する多数の管体面に硅藻類、珊瑚類および小型貝類の付着餌生物が生育するとともに、管体内外に形成される空間(隙間)を住処として甲殻類および小型魚類などの移動生物が生育する。」(第2欄第10〜17行)
(E-3).「【0014】 培養礁体2は外礁体1に合わせてアングルなどによって枠体5を組み、該枠体5に多数の短管6を横向きで僅かに上下方向に傾斜を付けて適宜の高さに積み上げて外礁体内幅員に相当する長さの短管群7を形成し、該短管群7を間隔を採って水平に並設している。」(第2欄第33〜37行)

(F).特公平5-48092号公報(以下「刊行物F」という)
(F-1).「第6図では、ケース32の中に小石33を詰めているが、小石33の代りにカキ殻を充填してもよい。カキ殻特有の形状が幼生等の隠れ場所となる隙間を形成し、また、海藻類等の海中生物の付着が良好で、更に、有害物質発生の心配もないのである。
カキ殻を使用する場合には、これの損傷を無くするために、ケース32の中断にグレーティングやネット等、あるいは、穴の開いたプレートを張架し、また、この上段に入れられたカキ殻が潮流で流出しないように、ケース32の上面を同じくグレーティング等で覆っておく必要がある。
ケース32の設置場所は、第6図で示すように角錐台枠体1の上面部と中間部とすることもできるが、上面部のみ、中間部のみ、底面部のみ、あいは上面、中間、底面部の全部等、種々の設置場所を選択することができる。
また、角錐台枠体1の構造をケース32の設置し易いように、前述した構造から変更してもよい。更に、ケース32の材料は、グレーテイングの他に、ネットや他の穴の開いたプレート等で海中において有害物質を発生しないものから適するものを選ぶとよい。」(第5欄第31行〜第6欄第8行)
(F-2).「そして、この魚礁に幼生等生息ケースを取り付けると、魚礁自体が安定に設置されていることでケース内の小石やカキ殻等が魚礁と同じように半永久的に保存されて安定した幼生等の生息場所となる。」(第8欄第8〜12行)

(G).特開平7-236385号公報(以下「刊行物G」という)
(G-1).「【0002】 【従来の技術】 人工魚礁に用いる集魚ケース又は集魚パネルは、人工魚礁の目的である集魚、繁殖効果を左右するものである。そこで、本出願人は特願平4-319307号において網体で形成した通水性網体にかき殻等を充填した集魚ケースを提案した。この集魚ケースは、充填したかき殻に飼料生物又は水質浄化に役立つ微生物の繁殖を可能にすることによって、集魚及び繁殖効果を高めたものである。この集魚ケースを単体又はパネル化して既設又は新設のコンクリート製人工魚礁等に取付けて使用する。」(第1欄第48行〜第2欄第8行)
(G-2).「【0005】 【課題を解決するための手段】 その結果、完成を見たものは、内部にかき殻等を充填した通水性の網体1であり、ストッパ2を貫通させたこの網体端を鋼製チャンネル3へ嵌入し、前記ストッパ端21、21をこのチャンネル3に結合、かつストッパ2周囲のチャンネル3内へセメントモルタル4を充填して成る人工魚礁用集魚ケースである。本発明では便宜上、この型の集魚ケースをチャンネル型と呼ぶことにする。このチャンネル型は、複数本の通水性網体1を長尺の鋼製チャンネル31へ嵌入し、結合することでパネルとすることができる。」(第2欄第29〜39行)
(G-3).「【0021】 この第4実施例は、本発明の集魚ケースを直接、又はパネル化して直接人工魚礁へ取付けるのではなく、ケースからなるパネル8を組合せ、底面のない箱型構造物9とすることで、図5に見られるように新設又は既設の人工魚礁91へ被せるようにして覆設することができる。」(第5欄第26〜31行)

(H).実願平5-47010号(実開平7-14860号)のCD-ROM(以下「刊行物H」という)
(H-1).「【0002】【従来の技術】 従来より設置されている人工礁は、集魚を目的とする魚礁と、有用魚種の幼稚魚の保護育成と餌場としての機能を有した増殖礁とに分けられて設置されていた。すなわち、魚礁設置事業は魚種、漁法等に応じて魚礁の構造、基質が選定され、設置されているが、いずれも単機能タイプが多く、集魚と餌場を兼ね備えたものは少なく、それぞれの目的に応じて成魚、幼魚、稚魚用とに分けられて設置されている。」(第4頁第6〜13行)
(H-2).「餌料培養カゴの中に前記着定基質を詰め込み、餌料培養カゴを、その底部に備えた取付部を鋼製魚礁の固定機構に装入定着して、鋼製魚礁中に適宜に着脱可能に組込むことにより、集魚効果と幼稚魚の保護育成の増養殖、餌場を兼ね備えた複合型魚礁を構成したものである。」(第5頁第3〜6行)

(J).登録実用新案公報 第3031263号(以下「刊行物J」という)
(J-1).「更にベースに移動防止杭を取り付けて、この杭を海底に突き立てるようにする。杭は、容器に対して海底へ突き立つスパイクのような働きを有する。」(第8頁第2〜4行)
(J-2).「図10に見られるように、略直方体状の外枠3にプラスチックネット4を張り、垂直方向の通水経路8を設けたものを四方に組み合わせ、一体にした容器1、図11に見られるように、円錐台形状の外枠3へ断続的にプラスチックネット4を張り、みかんの房状に収納空間5を形成した容器1、等である。各容器1のコンクリートベース7は、開口部10を形成している。」(第10頁第2〜6行)
(J-3).「【考案の効果】本考案の容器は、山積みの形態で海洋投棄していた貝殻(これ自体は無害)による弊害をなくし、逆に浄化装置や魚礁としても利用できる形態で、貝殻を有効活用できるようにする。構造の複雑さにより、簡単なものは比較的安価に製造でき、貝殻の処理に掛かるコストを抑えることができるし、また複雑なものは浄化装置や魚礁としてより積極的な環境整備に寄与するので、極めて費用対効果の高い貝殻処理を実現できる。」(第10頁第19〜25行)

(K).実願昭60-72801号(実開昭61-188459号)のマイクロフィルム(以下「刊行物K」という)
(K-1).「(ハ)考案が解決しようとする問題点 そこで本考案は在来石詰礁を餌料培養に適する構造に如何に構成するかに問題点を見出し解決した。」(第2頁第1〜3行)
(K-2).「(ホ).実施例及び作用 図中1は四角形に構成した底版でその下面及び四側面には空間2をそれぞれ設け、恰も底版1は四隅の脚で支へられている如く構成し、」(第2頁第13〜16行)

(2).対比:本件発明と引用発明との対比。
(ア).本件発明における「魚礁ブロック」、「魚礁枠体」、「餌料培養層」、「餌料培養礁」、「円筒型ブロック」の形状、構造を明らかにしておく。
(i).本件発明における「魚礁ブロック」の形状は、「中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロック」との記載、及び【図1】を参照すると、矩形状に配置された4本の脚の上端部を、順次架け渡して固定された、要するに中央部が開口したテーブル形状であると認められる。
(ii).本件発明における「魚礁枠体」の形状は、「中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造」との記載、及び、【図1】を参照すると、矩形状に配置された4本の脚の上端部を、順次架け渡して固定された、要するに中央部が開口したテーブル形状であると認められる。
(iii).本件発明における「餌料培養層」、「餌料培養礁」に関しては、以下の記載が本件明細書に認められる。
(a).「【0002】 【従来の技術】 一般に、内湾浅海の砂浜海底では光合成により顕花植物のアマモ,コアマモなどが生長し、これが繁茂してアマモ場を形成する。このようなアマモ類が密生した藻場には、ウニ,サザエ,アワビ等の海洋生物が付着し、また、海藻類が作り出す複雑な空間に多毛類,小型甲殻類等の微小動物が棲息し、さらには、これらの微小動物を餌料とする種々の魚が蝟集する。・・・・。このような深い水深帯において有用魚類の稚魚の育成を人工的に造成するには、まず、餌料となる多毛類,小型甲殻類等の微小動物が繁殖可能な環境を作り出す必要があり、近年、餌料となる多毛類,小型甲殻類等を繁殖させるための人工魚礁が種々開発されている。例えば、特開平6-141727号、特公平6-77493号、特開平7-236385号公報等には、網体にカキ等の貝殻を充填し、貝殻の隙間に多毛類,小型甲殻類等を繁殖させる人工魚礁用集魚ケースが提案されている。・・・小型甲殻類等の繁殖機能を維持できないという問題がある。」
(b).「【0003】また、特公平5-48092号公報等では、カキ殻等を充填した集魚ケースをスチール製枠組からなる魚礁枠体の上面側に取り付け、餌料増殖させる集魚ケースとこの集魚ケースに蝟集する魚類の魚巣機能を兼ね備えた人工魚礁も提案されているが、前述したように潮流が速い海域や波浪の大きな海域においては、スチール製枠組からなる鉄骨構造の魚礁枠体では、重量的に軽いことから、波浪エネルギーによって転倒する危険があり、このような人工魚礁の転倒によって強度的に弱い網体が破壊され、早期に餌料の繁殖機能を失うことになる。」
(c).「【0008】 また、前記魚礁枠体40の天端部42の上面側には前記餌料培養礁1を取り付けるための収容枠46が固定されており、この収容枠46の内部に網体5で構成した網籠47を収納する。この網籠47の内部には、モルタルによって一体化した多数のカキの貝殻からなる餌料培養層を(図示せず)収納する。」
してみると、「餌料培養層」は、集魚用物体として、貝殻がモルタルによって相互に一体化され、多数の空洞部を備えた多孔質状の貝殻群と認められ、また、「餌料培養礁」は、当該「餌料培養層」が多数収納された網籠が収容枠に収納されたものと認められる。
(iv).本件発明における、重量調整用のコンクリートが充填された「円筒型ブロック」は、魚礁ブロックの中央部に設けると記載されているが、魚礁ブロックの中央部は開口とされておりその設置構成は記載されていない。
したがって、人工魚礁を安定化するための重量調整用の錘が適宜手段にて付設されているものと解釈する。

(イ).本件発明と引用発明との構成の対応関係
引用発明における「鋼製構造物」、及び、「コンクリート製の基礎」は、「人工魚礁」の構成体である点において、本件発明における「人工魚礁」の構成体である「魚礁枠体」、「魚礁ブロック」に夫々対応する。

(ウ).一致点
内部に空間部を有する人工魚礁は開口部を備えたテーブル形状のコンクリート製の魚礁ブロックと、魚礁ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成する人工魚礁。」

(エ).相違点
(a).本件発明は、餌料培養礁を備えているのに対し、引用発明は餌料培養礁を備えていない点、
(a-1).餌料培養礁は、
(i).貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層から構成され、それらは網籠に収容されていること。
(ii).前記網籠を収納する複数の収納枠は、魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置されて放射状に配列され、その各収容枠を相互に連結して一体化され、しかも、各収容枠の中央部、魚礁枠体上面側の4隅を介して人工魚礁の空洞部に連通する開口部が設けられていること。

(b).本件発明は、魚礁ブロック中央に、人工魚礁の全重量を調整するためのコンクリート充填用円筒型ブロックを設けているに対し、引用発明は、重量調整用の円筒ブロックを設けていない点
(c).魚礁ブロックの形状に関して、本件発明は、中央部が開口したテーブル形状であるのに対し、引用発明は、中央部が開口したテーブル形状の当該開口部上面に、その四辺を結合する十字形をその上面に具備した形状である点。
(d).魚礁枠体の形状に関して、本件発明は中央部が開口したテーブル形状であるのに対し、引用発明は、矩形状に配設された複数の柱材5とこれに溶接された複数の横桁6から成る形状である点
(e).魚礁枠体と魚礁ブロックとの固定箇所に関して、本件発明は魚礁ブロックの矩形辺部であるのに対し、引用発明は、開口部に設けた十字形部である点

(3)相違点の検討
(ア).相違点(a)について、
餌料培養礁を人工魚礁に配設することは、例えば、刊行物B、刊行物E、F、G、Hに示されるように周知の事項であるから、人工魚礁に餌料培養礁を配設することは、単なる設計的事項である。

(イ).相違点(a-1)の(i)について、
集魚用物体として、貝殻群をセメントにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質とした餌料培養層は、刊行物Cに示され、しかも、餌料培養層等の集魚用物体を通水性のあるケースに収納することは、例えば、刊行物B、刊行物E,F、G、Hに示されるように周知の事項であるから、引用発明において集魚用物体としての餌料培養層を配設する際に、その餌料培養層として刊行物Cに示されるような餌料培養層を採用して当該餌料培養層を網籠に収納することは、当業者ならば適宜為し得る程度のことである。
したがって、当該相違点は格別のものではない。

(ウ)相違点(a-1)の(ii)について、
複数の網籠を収容した収容枠体について、その収容枠体を連結して一体化して配置することは、例えば、刊行物B,E、G(【従来技術】参照)に、更にその配置形状としての放射状配置、角形状配置とすることは、例えば、刊行物B(第5図、第4図参照)、刊行物J(第11図、及び、第10図参照)に、しかも、その配置箇所として人工魚礁の上面部に配置することも刊行物F、Gに見られるように、当業者が必要に応じて適宜採用している配置の態様であり、かつ上面の配置として、天端部の一辺中央部に配置することは、収容枠体の形状、大きさ、及び魚礁枠体自体の上面形状と大きさ等の大小関係等に基づいて適宜設計変更なし得る事項であり、収容枠体の形状・構造、及び配置個所を本件発明のように限定したことによる格別の効果は認められない。
また、
餌料培養礁に通路を配設することも前記刊行物B、Jに示されるように周知の事項であり、しかも、その通路を人工魚礁の空間部と連通するようにすることもまた、前記(E-2)、(H-2)に示されるように適宜行なっている周知の事項である。
そして、当該連通通路を収容枠の中央部、及び魚礁枠体の四隅と限定したことによる格別の効果は、本件明細書には記載されていない。
してみると、引用発明において、人工魚礁の構造体である鋼製構造物の上面の一辺中央部に、一体化された収容枠に収容された餌料培養礁を配設すること、その際に、当該餌料培養層の配置として放射状配置を採用すること、及び人工魚礁内部空間と連通する空間を餌料培養礁を収容した収容枠の中央部、及び魚礁枠体の4隅と限定すること等は、当業者が適宜為し得る程度の事項である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。

(エ).相違点(b)について
人工魚礁が潮流により転倒、移動しないように魚礁本体の重量を考慮することは、前記(B-3)、(D-1)、(D-2)に記載されるように周知の事項であり、中空部にコンクリート、石などの重錘を充填する魚礁の重量調整手段は前記刊行物Dに示されているから、前記のように引用発明に餌料培養層を設置した人工魚礁おいて、設置場所の潮流等による転倒、移動の可能性を考慮して、必要に応じて重量調整手段を設置けること、及びその設置個所として、構造体の重心を下げる箇所であるコンクリート製の基礎の中央とするすることは、当業者が容易に想到できることである。
魚礁本体に重量調整用の中空部を設ける際、潮流による転倒防止、移動防止の観点を考慮すれば、その設置個所は構造体の重心を下げる箇所とすれば良いことは周知の技術的事項であるから、、設置場所の潮流等による転倒、移動の可能性を考慮して重量調整手段を設置けること、及びその設置個所として、コンクリート製基礎の中央に当該重量調整手段を設ければよいことは、当業者が容易に想到できることである。
したがって、当該相違点も格別のものではない。

(オ).相違点(d)について、
餌料培養礁が載置される支持体の形状として、中央部が開口したテーブル形状は、例えば、刊行物J、Kに示されるように周知の形状であるから、餌料培養層が載置される支持体である魚礁枠体の形状として中央部が開口したテーブル形状を採用することは当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。

(カ).相違点(c)、(e)について、
引用発明における魚礁ブロックの形状は、中央部が開口したテーブル形状で、その開口部には魚礁枠体が載置されている十字形状が配設されているが、ここで魚礁枠体として魚礁ブロックと同程度の底面を持つ場合は、魚礁枠体の載置箇所が魚礁ブロック上面の矩形辺部となることは当業者にとっては明らかな事項であり、さらに、人工魚礁の形状として中央部が開口したテーブル形状は前記のように周知の形状であることを勘案すると、魚礁ブロックとその上に載置される魚礁枠体の大きさに応じて、魚礁枠体と魚礁ブロックとの固定箇所を魚礁ブロックの矩形辺部とすること、及び、その際に魚礁枠体の固定機能が不必要になった十字形状体を除去した周知の中央部が開口したテーブル形状とすることは、当業者が当該両者の大きさ等を勘案して適宜為し得る程度の事項である。


[3].むすび
以上のとおり、本件発明は、前記刊行物A〜Dに記載された発明及び刊行物E〜H、J、K等に示される周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
餌料培養礁を備えた人工魚礁
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 内部に空間部を有する人工魚礁と、貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層とを具備し、前記人工魚礁は、中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成するとともに、前記魚礁枠体の上面側に前記餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、前記魚礁枠体の上面側に前記網籠の位置決めをする複数の収容枠を設け、これら収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周縁四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け、かつ、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したこと特徴とする餌料培養礁を備えた人工魚礁。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多毛類,小型甲殻類等の微小動物を増殖させ、これらの微小動物を餌料とする魚を蝟集して継続的に滞留させることを目的とした餌料培養礁及び餌料培養礁を備えた人工魚礁に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、内湾浅海の砂浜海底では光合成により顕花植物のアマモ,コアマモなどが生長し、これが繁茂してアマモ場を形成する。このようなアマモ類が密生した藻場には、ウニ,サザエ,アワビ等の海洋生物が付着し、また、海藻類が作り出す複雑な空間に多毛類,小型甲殻類等の微小動物が棲息し、さらには、これらの微小動物を餌料とする種々の魚が蝟集する。特に、藻場には、前述した多毛類,小型甲殻類等を餌料とする例えばクロダイ,アイナメ,スズキ,メバル等の有用魚類の稚魚,未成魚等が蝟集することから、有用魚類の稚魚等の育成場として重要な機能を有している。ところで、前述したように、アマモなどは、光合成により生長することから、成育に適した水深には限度があり、比較的水深の浅い沿岸の浅海域でしかアマモが密生した藻場が発達しない。このため、深い水深帯では有用魚類等の稚魚等の育成場ができにくい環境にある。このような深い水深帯において有用魚類の稚魚の育成を人工的に造成するには、まず、餌料となる多毛類,小型甲殻類等の微小動物が繁殖可能な環境を作り出す必要があり、近年、餌料となる多毛類,小型甲殻類等を繁殖させるための人工魚礁が種々開発されている。例えば、特開平6-141727号、特公平6-77493号、特開平7-236385号公報等には、網体にカキ等の貝殻を充填し、貝殻の隙間に多毛類,小型甲殻類等を繁殖させる人工魚礁用集魚ケースが提案されている。しかし、これらの集魚ケースは、単に網体に多数の貝殻を充填するものであり、潮流が速い海域や波浪の大きな海域では、網体の内部に充填したカキ殻が相互にぶつかり合って壊れやすく、壊れたカキ殻の破片が網体から流失しまい、長期間に渡って多毛類,小型甲殻類等の繁殖機能を維持できないという問題がある。
【0003】
また、特公平5-48092号公報等では、カキ殻等を充填した集魚ケースをスチール製枠組からなる魚礁枠体の上面側に取り付け、餌料増殖させる集魚ケースとこの集魚ケースに蝟集する魚類の魚巣機能を兼ね備えた人工魚礁も提案されているが、前述したように潮流が速い海域や波浪の大きな海域においては、スチール製枠組からなる鉄骨構造の魚礁枠体では、重量的に軽いことから、波浪エネルギーによって転倒する危険があり、このような人工魚礁の転倒によって強度的に弱い網体が破壊され、早期に餌料の繁殖機能を失うことになる。
【0004】
本発明は上記課題に基いてなされたものであり、有用魚類の餌料を増殖させて効果的に魚を蝟集することができるとともに、貝殻の流失を防止して長期に渡って有用魚類の餌料となる多毛類,小型甲殻類等を増殖させることができる餌料培養礁を備えた人工魚礁を提供することを目的とする。また、本発明は、潮流,波浪に対して転倒することなく、魚礁ブロックを海底に安定的に設置することができる餌料培養礁を備えた人工魚礁を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の餌料培養礁を備えた人工魚礁は、内部に空間部を有する人工魚礁と、貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層とを具備し、前記人工魚礁は、中央部を開口した矩形枠状の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成するとともに、前記魚礁枠体の上面側に前記餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、前記魚礁枠体の上面側に前記網籠の位置決めをする複数の収容枠を設け、これら収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周縁四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け、かつ、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したものである。
【0006】
上記のように構成される餌料培養礁を備えた人工魚礁は、餌料培養層で増殖した餌料により餌料培養層の周囲に小魚類が蝟集し、さらに餌料培養層に蝟集する小魚類を餌料とする底棲型魚類が魚礁ブロックと魚礁枠体に形成される空間部に継続的に滞留し、人工魚礁の空間部が魚類の育成域として機能する。また、人工魚礁を藻が成育しにくい深い水深帯に沈設しても、餌料培養礁が魚礁ブロックと魚礁枠体によって嵩上げされ、餌料培養層を藻の成育に適した水深帯に保持することができるため、餌料培養層に藻が着生し、有用魚類の稚魚などが繁殖する藻場として機能する。さらに、コンクリート製の魚礁ブロックと鋼材から成る魚礁枠体といった異種材料を組み合わせることによって、波浪エネルギーに対抗できる重量を確保できるとともに、下部側に位置する魚礁ブロックにより人工魚礁の重心が安定し、潮流が速い海域あるいは波浪の大きな海域でも人工魚礁が転倒することなく長期に渡って安定状態で設置でき、人工魚礁の転倒による網籠の破壊も防止できる。また、網籠の内部に収納した貝殻をモルタルで一体化することにより、潮流,波浪による貝殻の流失を防ぐことができ、長期に渡って堅牢で、餌料培養層としての機構を維持できる。特に、前記魚礁枠体の上面側に前記網籠の位置決めする複数の収容枠を設け、これら収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の内側に前記空間部と連通する開口部を設けることにより、人工魚礁への網籠の組み付けが容易である。また、餌料培養礁に蝟集する魚類が開口部を通って人工魚礁の空間部内外を回遊することができ、人工魚礁の魚巣機能も高まる。さらに、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填しているので、円筒型ブロックに充填するコンクリートの量を調整することで人工魚礁を沈設する海域における潮流の速さや波浪の大きさに応じて人工魚礁全体の全重量が調整可能となる。
【0007】
【発明の実施形態】
以下、本発明の第1実施例について詳細に説明する。図1から図3は本発明の第1実施例による餌料培養礁を備えた人工魚礁を示しており、本実施例ではコンクリート製の魚礁ブロック30と鉄骨構造の魚礁枠体40とからなる人工魚礁50に餌料培養礁1を取り付けるものである。本実施例における魚礁ブロック30は、図1に示すように、中央部に円筒型ブロック31を配し、その円筒型ブロック31の外周面に互いに直交するように倒コ字型に形成された四本の支持脚32を放射状に連設して円筒型ブロック31の周縁部に支持脚32を十字型に配し、これら支持脚32を矩形枠状に形成された天板ブロック33により一体化している。そして、天板ブロック33の上面側には前記魚礁枠体40をアンカーボルト40Aによって固定する。魚礁枠体40は鋼材からなる四本の支持脚41と、これら支持脚41を相互に一体化する矩形枠状の天端部42とを備え、魚礁枠体40の剛性を高めるために支持脚41と天端部42とを傾斜した補強用鉄骨43で連結した構造となっている。また、魚礁ブロック30の中央部に配置される前記円筒型ブロック31は空洞状に形成され、この円筒型ブロック31の内部にコンクリート45を充填することにより、人工魚礁50の全重量を調整するようにしている。
【0008】
また、前記魚礁枠体40の天端部42の上面側には前記餌料培養礁1を取り付けるための収容枠46が固定されており、この収容枠46の内部に網体5で構成した網籠47を収納する。この網籠47の内部には、モルタルによって一体化した多数のカキの貝殻からなる餌料培養層を(図示せず)収納する。なお、前記収容枠46は、前記天端部42の一辺中央部にそれぞれ固定され、その計四つの収容枠46が天端部42に固定され、さらに、その各収容枠46の内部に四つの網籠47が収容されている。すなわち、本実施例においては、一体化したカキの貝殻(図示せず)を収納した四つの網籠47を収容枠46に組み付けてユニット化し、その収容枠46を集合させて餌料を繁殖させる餌料培養礁1を構成している。また、前記天端部42に固定される四つの収容枠46は、その各収容枠46の内側両角部を互いに接合する形で十字型に連結され、このように一体化した各収容枠46は、さらに、天端部42に固定した収容枠46の隣接角部と前記支持脚41とを補強用鉄骨48によって一体的に連結している。そして、このように、各収容枠46を十字型に連結することにより、各収容枠46の中央部が抜かれた開口部51が形成され、さらに、前記天端部42の周縁四隅に位置して天端部42と各収容枠46で囲まれた正方形の開口部52が形成される。これら各開口部51,52が魚礁ブロック30及び魚礁枠体40の内側に形成される空間部60と連通する。なお、一体化したカキの貝殻(図示せず)を収納する網籠47は、深さが500mmで、幅と長さが750mmに設定され、上面が開口することなく網蓋53で塞ぐものである。また、各収容枠46に収容される四つの網籠47は、各収容枠46の四隅に固定され、各収容枠46の内側には各網籠47を位置決めする仕切り枠55が設けてある。なお、図中、符号61は魚礁ブロック30を沈設する際、ワイヤーロープ62を掛け止めするためのフックであり、前記各支持脚32の上面側に固定されている。
【0009】
以上のように構成される本実施例は、多数のカキの貝殻を網籠47に収納して網蓋52で塞いだ後、モルタルで一体化するか、あるいは予めモルタルで一体化したカキの貝殻を網籠47に収納した後、網籠47を網蓋52で塞ぐ。そして、魚礁枠体40に取り付けた収容枠46に網籠47をそれぞれ固定することにより、内部に多数の空洞部を有する多孔質状の餌料培養層が人工魚礁50の上方に形成される。図4に示すようにこの餌料培養層15の表面には複雑な隆起部20が形成され、さらに、各貝殻16間の隙間に多数に空洞部21が形成され、これらの空洞部21によって多孔質状の餌料培養層15が形成される。この場合、各貝殻16間の空洞部21は、配列、形状、大きさ等に規則性はないため、前記多孔質状の餌料培養層15の内部は、複雑に入り組んだ迷路状となっている。また、人工魚礁50を沈設する前に予め人工魚礁50を設置する海域の潮流の速さ、波浪の大きさに応じて円筒型ブロック31にコンクリート45を充填することによって、人工魚礁50の重量を調整する。そして、収容枠46間に形成する開口部51にワイヤーロープ61を通して支持脚32に取り付けたフック61にワイヤーロープ62を引っ掛けて人工魚礁50を吊り上げ、所定の海域に人工魚礁50を沈設する。こうして魚礁ブロック30,魚礁枠体40に餌料培養礁1を取り付けた人工魚礁50を海底に沈設することにより、多毛類,小型甲殻類等を餌料培養層15で増殖させ、これを餌料とする有用魚類の稚魚などが餌料培養礁1の周囲に蝟集する。また、本実施例では四つの網籠47を収容した収容枠46を十字型に連結して複数の網籠47を集合させて餌料培養礁1による餌料培養層を構成するものであるから、餌料培養礁1の周囲により多く魚類が蝟集し、さらに、これらの小魚を餌料とする主に海底付近に棲息する底棲大型魚類が蝟集する。こうした餌料培養礁1の周囲に蝟集する種々の魚類が人工魚礁50の内側に形成される空間部60に継続的に滞留し、空間部60が魚類の育成域として機能する。また、本実施例においては、餌料培養礁1を収納する収容枠46が、天端部42の開口部分を閉塞する形で配置するのではなく、十字型に連結することにより、収容枠46の内側及び天端部42の四隅に空間部60と連通する開口部51,52が形成され、この各開口部51,52を通って魚類が遊泳し、人工魚礁50の魚礁効果を高めることができる。
【0010】
また、餌料培養層たる餌料培養礁1は魚礁ブロック30の支持脚32及び魚礁枠体40の支持脚41によって嵩上げされ、魚礁ブロック30を藻類の成育しにくい深い水深帯に沈設したとしても、支持脚32及び支持脚41によって支持される餌料培養層を藻の成育に適した水深帯に保持することができる。このため、餌料培養層に藻が着生し、藻場を造成することができ、有用魚類の稚魚などの繁殖環境を広げることができる。
【0011】
また、人工魚礁50はコンクリート製の魚礁ブロック30と鋼材から成る魚礁枠体40といった異種材料を組み合わせて構成され、波浪エネルギーに対抗できる重量を確保できるとともに、下部側に位置するコンクリート製の魚礁ブロック30により人工魚礁50の重心が安定し、潮流が速い海域あるいは波浪の大きな海域に魚礁ブロック30を沈設しても魚礁ブロック30が移動したり、あるいは転倒することなく長期に渡って安定状態で設置できる。また、網籠47の内部に収納した貝殻をモルタルで一体化することにより、潮流,波浪による貝殻の流失を防ぐことができるとともに、前述したように魚礁ブロック30の転倒によって網籠47が破損することもないため、長期に渡って堅牢な構造であり、餌料培養層15としての機構を維持できる。さらに、円筒型ブロック31に充填するコンクリート45の量によって魚礁ブロック30を設置する海域、地域の潮流,波浪に応じて人工魚礁40全体の重量を簡単に調整することができる。
【0012】
図5及び図6は、本発明の第2実施例を示し、前記第1実施例を同一機能を有する部分には同一符号を付し、重複する部分の説明を省略して異なる部分についてのみ説明する。
【0013】
本実施例では十字型に連結した収容枠46の上方側にさらに収容枠65を配置して人工魚礁40に上下二段の餌料培養層15を積層状態で配置させている。なお、上部に位置する収容枠65は、各収容枠46の交点部となる開口部51の周縁角部から立設した支持枠66に固定されている。すなわち、上部の収容枠65は、下段の各収容枠46と間隔をおいて各収容枠46の内側に形成する開口部51を閉塞するように固定され、十字型に連結された各収容枠46と、この各収容枠46の上方側に位置する収容枠65とが重なり合うことなく、段差状に配置される。したがって、本実施例において、収容枠65を増やすことによって、より効率的に餌料を増殖させて魚類の蝟集効果を高めることができる。しかも、十字型に連結された各収容枠46と上方側に位置する収容枠65との間には支持枠66による空間部67が形成され、人工魚礁40の空間部60のみならず上下の支持枠46,66との間にも魚類の育成域として空間部67を形成することができる。
【0014】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は前記各実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、各実施例においる収納籠や網籠の材質、形状、外形寸法等などの基本的構造は適宜選定すればよい。また、収納籠に充填する貝殻としてカキを例示したが、カキに限らず、サザエやホタテなどの各種の貝殻を用いてもよい。さらに必ずしも単一の貝の殻を充填するのではなく、複数種の貝殻を収納籠に充填し、これを一体化してもよい。また、第1実施例において人工魚礁に取り付ける四つ収容枠を十字型に連結した例を示したが、三つの収容枠を放射状に連結したあるいは六つの収容枠を放射状に連結し、これら収容枠の内側に三角形あるいは六角形の開口部を形成してもよく、収容枠の個数及び配置あるいは、この収容枠に収納する網籠の個数及び配置なども前記実施例に限定されるものではない。
【0015】
【発明の効果】
請求項1記載の餌料培養礁を備えた人工魚礁は、内部に空間部を有する人工魚礁と、貝殻群をモルタルにより相互に一体化して内部に多数の空洞部を備えた多孔質状の餌料培養層とを具備し、前記人工魚礁は、中央部を開口した矩形枠上の天板ブロックにより一体化された複数の支持脚を備えたコンクリート製の魚礁ブロックと、中央部を開口した矩形枠状の天端部により一体化された前記天板ブロックの上面側に固定される複数の支持脚を備えた鉄骨構造の魚礁枠体とで構成され、この魚礁ブロックと魚礁枠体の支持脚の内側に前記空間部を形成するとともに、前記魚礁枠体の上面側に前記餌料培養層を収納する網体からなる複数の網籠を配列し、前記魚礁枠体の上面側に前記網籠の位置決めをする複数の収容枠を設け、これら収容枠を前記魚礁枠体の天端部の一辺中央部に配置して放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部と前記天端部の周縁四隅と各収容枠との間に前記空間部と連通する開口部を設け、かつ、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したものであるから、複数の網籠を集合させることにより、餌料培養層で増殖した多毛類,小型甲殻類等を餌料とする小魚類が餌料培養層の周囲に蝟集し、さらに、餌料培養層に蝟集する小魚類を餌料とする底棲型魚類が人工魚礁に蝟集し、魚類を蝟集,増殖させることができる。また、コンクリート製の魚礁ブロックと鋼材から成る魚礁枠といった異種材料を組み合わせることによって、波浪エネルギーに対抗できる重量を確保でき、人工魚礁の転倒を防いで長期に渡って餌料培養層の機能を維持できる。特に、前記魚礁枠体の上面側に前記網籠の位置決めする複数の収容枠を設け、これら収容枠を放射状に配列し、その各収容枠を相互に連結して一体化するとともに、少なくとも各収容枠の中央部に前記空間部と連通する開口部を設けているので、多数の網籠の組み付けが容易である。また、餌料培養礁に蝟集する魚類は、収容枠の開口部を通って人工魚礁の空間部内外を回遊することができ、人工魚礁の魚巣機能も高まる。しかも、前記魚礁ブロックの中央部に円筒型ブロックを設け、この円筒型ブロックの内部に人工魚礁の全重量を調整するコンクリートを充填したものであるから、人工魚礁の重量を沈設する海域における潮流の早さや波浪の大きさに応じて簡単に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施例を示す餌料培養礁を備えた人工魚礁の斜視図である。
【図2】
同上餌料培養礁を備えた人工魚礁の一部を切り欠いた正面図である。
【図3】
同上餌料培養礁を備えた人工魚礁の平面図である。
【図4】
餌料培養層の一部を拡大した正面図である。
【図5】
本発明の第2実施例を示す餌料培養礁を備えた人工魚礁の斜視図である。
【図6】
同上餌料培養礁を備えた人工魚礁の一部を切り欠いた正面図である。
【符号の説明】
1 餌料培養礁
30 魚礁ブロック
31 円筒型ブロック
40 魚礁枠体
46,65 収容枠
47 網籠
50 人工魚礁
51,52 開口部
60,67 空間部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2003-12-26 
出願番号 特願平10-37799
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 松本 隆彦小野 忠悦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
川島 陵司
登録日 2001-10-12 
登録番号 特許第3239355号(P3239355)
権利者 北栄建設株式会社 日鐵建材工業株式会社
発明の名称 餌料培養礁を備えた人工魚礁  
代理人 牛木 護  
代理人 牛木 護  
代理人 中務 茂樹  
代理人 牛木 護  
代理人 森 廣三郎  
代理人 森 寿夫  

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