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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06T
管理番号 1096342
異議申立番号 異議2003-70385  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-08-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-12 
確定日 2004-04-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第3312975号「放射線画像ネットワークにおける階調一貫性保証方法及びシステム」の請求項1ないし2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3312975号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3312975号の請求項1ないし2に係る発明は、平成5年11月24日(パリ条約による優先権主張日1992年11月24日 米国)に出願されたものであって、平成14年5月31日に特許権の設定登録がなされたところ、特許異議申立人金子和弘より請求項1ないし2に係る特許について特許異議の申立がなされ、当審よりその特許異議申立の理由と同旨の取消理由が通知されたところ、その指定期間内に特許権者からは何ら応答する書類は提出されなかったものである。

2.本件請求項1ないし2に係る発明
本件請求項1ないし2に係る発明は、特許権設定登録時の明細書の請求項1ないし2に記載の次のとおりのものと認められる(以下、請求項1に係る発明及び請求項2に係る発明をそれぞれ「本件発明1」及び「本件発明2」という。)。
「 【請求項1】 一貫性のある階調整合性を保証しつつ、ネットワークに対して入力デジタル放射線画像信号を転送する方法であって、
ソース画像装置(10)によって、入力デジタル放射線画像を生成する工程と、
前記ソース画像装置に対する階調応答性の配分(distribution)を定めた濃度対ソースルックアップテーブル(LUT)を形成する工程と、
前記入力デジタル放射線画像を、前記濃度対ソースLUTと共に、ネットワーク(212)を介して出力放射線画像可視化装置(204)へ転送する工程と、
を含んでいることを特徴とする放射線画像ネットワークにおける階調一貫性保証方法。
【請求項2】 ソース対濃度ルックアップテーブル(SDL)を伴った出力放射線画像信号を生成するデジタル放射線画像入力ソース手段(10)と、
ローカルな濃度対表示ルックアップテーブル(LDDL)を有し、前記放射線画像信号から可視的な放射線画像を形成する出力放射線画像可視化手段(204)と、
前記デジタル放射線画像入力ソース手段(10)と前記出力放射線画像可視化手段(204)とを接続するためのネットワーク手段と、を備え、
前記ソース手段(10)は、前記ネットワーク手段を介して、前記生成されたデジタル放射線画像信号を前記SDLとともに前記可視化手段(204)へ転送し、
前記可視化手段(204)は、転送されたSDLを前記LDDLにカスケード接続させることで、ローカルな表示補正テーブルを生成するとともに、
前記ローカルな表示補正テーブルとともに転送された出力放射線画像信号を処理することにより、可視放射線画像を生成することを特徴とするデジタル放射線画像システム。」

3.当審が通知した取消理由に引用した刊行物に記載された発明
一方、当審が通知した取消理由に引用した刊行物である米国特許第5164993号明細書(1992年11月17日発行。以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(なお、上記刊行物1は英語で記載されたものであるので、引用箇所の原文の摘記は省略して、その箇所の翻訳文を摘記する。ちなみに、この特許に係る出願を優先権主張した日本出願が、特開平6-14193号として公開されている。)
(a)第5欄第24行〜第60行
「本発明は、デジタル画像に対して最適な出力階調を生成するようにするための方法及び装置であって、上記デジタル画像のソースと、上記デジタル画像を表示するための出力手段と、画像データを処理するための手段と、上記ソースから上記画像データを処理するための手段や上記出力手段に上記画像データを移動するための通信手段とを必要としている。このようなデジタル画像処理システムは、図12に示される。本発明で処理されるX線画像は、例えば、蓄積性蛍光体(コンビューテッド・ラジオグラフィー)システム、フィルム・デジタイザー・システム、イメージ・インテンシファイアー・システムなどから得られる。線形または対数のうちのいずれかの入力較正関数が適用される。さらに、計算機断層撮影システムで得られた画像を使用することもできる。出力装置としては、フィルムライタ(レーザプリンタやCRTプリンタ)と、CRTソフトディスプレイとが、典型的なものとして挙げられる。上記処理手段は、本発明を実現するための方法及び装置を含むことができる。
図12は、本発明の一実施形態を含む蓄積性蛍光体デジタル放射線画像イメージング・システムを示している。図において、蓄積性蛍光体10は、走査・放出領域20を通るように、ロール対手段12、14及び16、18によって実質的に水平方向11に搬送される。レーザ22は、回転ポリゴンミラー26、走査光学素子28、30、及びミラー32の手段によって、蓄積性蛍光体10の幅にわたって走査線方向に走査されるレーザービーム24を生成する。走査光学素子28、30は、レーザービーム24が蛍光体10に走査される際に、レーザービーム24を所望の大きさと形状に整形し、Fθディストーションを補正する。レーザ22は、例えば、赤色光領域の刺激ビームを生成するガスレーザ又はダイオードレーザである。
蓄積性感光体10により放出された光(例えば青色光領域の光)は、光検出器34によって検出され、A/D変換器36によってデジタル画像に変換される。」
(b)第6欄第3行〜第6行
「(画像処理)装置38による階調処理は、オリジナルデジタル(画像)とともに、ディスプレイ装置40又はフィルム・ライタ42へ渡されるルックアップテーブルとして具現化され得る。」
(c)第6欄第8行〜第22行
「あるいは、本発明の装置は、システム上の他の様々な所に在ってもよい。例えば、それは取得装置の一部であってもよい。この場合、開示される方法では、処理対象の画像とともに、または別々に、コミュニケーションチャンネルを介して出力装置に渡される階調変換を生成する。また、その方法は、出力装置の一部であってもよい。階調生成方法が、出力装置のための既知で固定の出力較正関数(すなわち、装置に送られるグレーレベル(gray level)と、出力媒体で生成される信号との間の既知の関係)を前提とするから、デジタル画像が最終的に表示されるときに、所望の視覚的結果を実現するために、階調の変換をもう一度行うことが必要となる。」
(d)図面の図1として、実施例におけるディジタル画像処理システムの部分斜視図と部分構成ブロック図が示されている。

これらの記載によれば、刊行物1には、方法の発明として、
「デジタル画像に対して最適の出力階調を生成するために、上記ソースから上記画像データを処理するための手段や上記出力手段に上記画像データを移動するための通信手段であるコミュニケーションチャンネルに対して入力デジタルX線画像信号を転送する方法であって、
光検出器34によって検出され、A/D変換器36によってデジタル画像に変換し、
(画像処理)装置38による階調処理をルックアップテーブルとして具現化し、
ルックアップテーブルとして具現化した階調変換を、処理対象の画像とともに、コミュニケーションチャンネルを介して出力装置に渡す
ことを含むX線画像をコミュニケーションチャンネルを介して出力装置に渡すものにおける階調一貫性保証方法。」の発明が記載されていると認められる(この発明を「刊行物1方法発明」という。)。

また、刊行物1には、システムの発明として、
「デジタル画像に対して最適な出力階調を生成するために、上記デジタル画像のソースを得る光検出器およびA/D変換器等の装置と、上記デジタル画像を表示するための出力手段と、画像データを処理するための手段と、上記ソースから上記画像データを処理するための手段や上記出力手段に上記画像データを移動するための通信手段とを有する放射線といえるX線デジタル画像処理システムであって、
(画像処理)装置38による階調処理は、オリジナルデジタル(画像)とともに、ディスプレイ装置又はフィルム・ライタへ渡されるルックアップテーブルとして具現化され、
デジタル画像が最終的に表示されるときに、所望の視覚的結果を実現するために、階調の変換をもう一度行うX線デジタル画像処理システム。」の発明が記載されていると認められる(この発明を「刊行物1システム発明」という。)

4.本件発明1及び本件発明2と刊行物1に記載された発明との対比・判断
まず、刊行物1に記載の各発明における「X線画像」は、「放射線画像」といえることは明らかである。
そこで、本件発明1と刊行物1方法発明とを対比すると、本件発明1の「ネットワーク」は、画像データを処理するための手段や上記出力手段に画像データを移動するための通信手段であることは明らかであるから、刊行物1方法発明の「デジタル画像に対して最適の出力階調を生成するために、画像データを移動するための通信手段であるコミュニケーションチャンネルに対して入力デジタルX線画像信号を転送する方法」は、通信手段が「コミュニケーションチャンネル」か「ネットワーク」かの違いを除いて本件発明1の「一貫性のある階調整合性を保証しつつ、ネットワークに対して入力デジタル放射線画像信号を転送する方法」に対応するということができる。
刊行物1方法発明のそれぞれ「光検出器34によって検出され、A/D変換器36によってデジタル画像に変換し、」および「(画像処理)装置38による階調処理をルックアップテーブルとして具現化し、」が、本件発明1のそれぞれ「ソース画像装置(10)によって、入力デジタル放射線画像を生成する工程」および「前記ソース画像装置に対する階調応答性の配分(distribution)を定めた濃度対ソースルックアップテーブル(LUT)を形成する工程」に相当することは明らかである。
また、刊行物1方法発明の「ルックアップテーブルとして具現化した階調変換を、処理対象の画像とともに、コミュニケーションチャンネルを介して出力装置に渡す」が、介在させる通信手段が「コミュニケーションチャンネル」か「ネットワーク」かの違いを除いて本件発明1の「前記入力デジタル放射線画像を、前記濃度対ソースLUTと共に、ネットワークを介して出力放射線画像可視化装置へ転送する」に対応するということができる。
そうすると、本件発明1と刊行物1方法発明とは、画像データを移動させるために介在させる通信手段が「ネットワーク」か「コミュニケーションチャンネル」かの違いを除いて格別異ならないものということができる。
しかるに、刊行物1方法発明における「コミュニケーションチャンネル」は、A/D変換器から出力装置(ディスプレイ装置又はフィルム・ライタ)までの信号伝送路という程度の意味で使っているだけで、伝送路をその信号(情報)を多数の出力装置で適宜得ることができるようにネットワークとすることは示されていないが、放射線画像をネットワークを介して多くの出力装置から任意に取り出すことができるようにしたシステムは、周知技術化しており(例えば、特開平4-266164号公報、特開平4-318675号公報、特開平4-314177号公報等)、刊行物発明1のものにおいて、A/D変換器の出力を画像ファイルとして記憶するようにし、これをネットワークを介して多くの出力装置で利用できるようにすることは、周知技術を参酌すれば当業者ならば容易に推考することができる程度のものと認められる。
従って、本件発明1は、刊行物1方法発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

次に、本件発明2と刊行物1システム発明とを対比・判断する。
刊行物1システム発明においては、「デジタル画像が最終的に表示されるときに、所望の視覚的結果を実現するために、階調の変換をもう一度行う」ようにしており、これは上記3.(c)の記載によれば、先に階調変換をするルックアップテーブルの想定している出力媒体と異なる種類の出力媒体に出力する等の場合にもう一度その出力媒体の特性に合うように階調変換を行うということを意味しており、その階調変換手段を考えると、先に採用したものと同様にルックアップテーブルで実現できることは明らかである。
そうすると、刊行物1システム発明は、本願発明2の表現に倣っていえば、
「ソース対濃度ルックアップテーブル(SDL)を伴った出力放射線画像信号を生成するデジタル放射線画像入力ソース手段と、
ローカルな濃度対表示ルックアップテーブル(LDDL)を有し、前記放射線画像信号から可視的な放射線画像を形成する出力放射線画像可視化手段と、
前記デジタル放射線画像入力ソース手段と前記出力放射線画像可視化手段とを接続するための通信手段と、を備え、
前記ソース手段は、前記通信手段を介して、前記生成されたデジタル放射線画像信号を前記SDLとともに前記可視化手段へ転送し、
前記可視化手段は、転送されたSDLとともに転送された出力放射線画像信号を前記LDDLを参照して処理することにより、可視放射線画像を生成することを特徴とするデジタル放射線画像システム。」に係るものということができ、従って、本件発明2と刊行物1システム発明とは次の点で相違するほかは一致するということができる。
(a)通信手段が、本件発明2では「ネットワーク」であるのに対して、刊行物1システム発明では、「コミュニケーションチャンネル」である点。
(b)本件発明2では「前記可視化手段は、転送されたSDLを前記LDDLにカスケード接続させることで、ローカルな表示補正テーブルを生成するとともに、前記ローカルな表示補正テーブルとともに転送された出力放射線画像信号を処理することにより、可視放射線画像を生成する」ようにしているのに対して、刊行物1システム発明では、このようなことを明示していない点。
そこで、この相違点について検討するに、(a)については、上記本願発明1について判断したことと同様である。
(b)については、本件発明2のものは、要するに、信号を順次2つのルックアップテーブルで補正する必要があるときに、2つのルックアップテーブルで順次補正した結果と同じ結果となるような1つのルックアップテーブルを作成して、これを利用して補正するようにするというものであるが、ルックアップテーブル自体がその都度処理時間がかかる演算などにより求めることをしないで所望の値を入力すればそれに対応した演算値などが直ちに得られるようにする為に利用されることが普通であるから、2つのルックアップテーブルで順次補正する必要がある場合に、2つのルックアップテーブルで補正した結果と同じ結果となるような1つのルックアップテーブルを作成してこれで補正する、すなわち転送されて来た出力放射線画像信号を処理するようにすることは、当業者ならば容易に推考できるものと認められる。
従って、本件発明2は、刊行物1システム発明に基づいて当業者が容易になし得たものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上から明らかなとおり、本件発明1及び本件発明2についての特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、拒絶の査定をすべき特許出願に対してなされたものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-08 
出願番号 特願平5-293700
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G06T)
最終処分 取消  
前審関与審査官 真木 健彦  
特許庁審判長 東 次男
特許庁審判官 加藤 恵一
江頭 信彦
登録日 2002-05-31 
登録番号 特許第3312975号(P3312975)
権利者 イーストマン コダック カンパニー
発明の名称 放射線画像ネットワークにおける階調一貫性保証方法及びシステム  
代理人 石田 純  
代理人 吉田 研二  
代理人 金山 敏彦  

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