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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 A41B 審判 一部申し立て 特29条の2 A41B |
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管理番号 | 1096370 |
異議申立番号 | 異議2003-72267 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-01-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-09-10 |
確定日 | 2004-04-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3385236号「使い捨て吸収性製品用の処分手段を備えた機械的ファスナー手段」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3385236号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3385236号は、昭和63年12月17日に特許出願した特願昭63-319336号(優先権主張1987年12月17日、米国)の一部を平成8年10月11日に新たな特許出願とした特願平8-269837号の一部をさらに平成11年6月21日に新たな特許出願とし、平成14年12月27日に設定の登録がなされ、平成15年3月10日にその特許掲載公報が発行された後、永井美幸より特許異議の申立てがなされたものである。 2.本件発明 本件請求項1乃至4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。 「【請求項1】内側面、該内側面の反対側である外側面、縦縁、端縁、第1末端区域、該第1末端区域の反対側の第2末端区域を有する本体部分;該本体部分は透液性トップシート、該トップシートに組み合わされる不透液性バックシート、前記トップシートと前記バックシートの間に設けられた吸収性コアを含む、 前記第1末端区域において前記本体部分の各縦縁に近接して設けられる閉鎖部材;各閉鎖部材は吸収性製品の閉鎖体を形成するための第1機械的ファスナー手段を含み、該第1機械的ファスナー手段はフックファスナー材を含む、 前記第2末端区域において前記本体部分上に設けられるランド部材;該ランド部材は第1機械的ファスナー手段とともに吸収性製品の閉鎖体を形成するための第2機械的ファスナー手段を含み、前記第2機械的ファスナー手段は前記フックファスナー材と機械的に係合しうるループファスナー材を含む、 吸収性製品を簡便に廃棄する形状に固定させるため前記閉鎖部材の裏面に設けられた処分手段;該処分手段は前記第1機械的ファスナー手段を固定するための不織布を有し、この不織布は前記フックファスナー材と機械的に係合しうる、使い捨て吸収性製品。」 3.異議申立ての理由の概要 異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証乃至甲第8号証を提出し、本件請求項1に係る発明は、以下の理由により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1に係る特許は取り消されるべきであると主張している。 [理由1]本件請求項1に係る発明は、本件優先日前に出願され本件優先日後に出願公開された出願の願書に最初に添付された明細書に相当する甲第1号証に記載された発明と同一であり、しかも本件特許の発明者が甲第1号証に係る発明の発明者と同一ではなく、かつ、本件出願時において、本件の出願人が甲第1号証に係る出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 [理由2]本件請求項1に係る発明は、甲第7号証及び甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [異議申立人の提出した証拠] 甲第1号証:特開昭63-120102号公報 甲第2号証:特開昭54-29366号公報 甲第3号証:特開昭59-47471号公報 甲第4号証:特開昭61-255606号公報 甲第5号証:P&G社の製品(ニューパンパース)のパッケージ 及びニューパンパースの発売に関して記載されている粧業日報 甲第5号証の2:花王株式会社の製品(メリーズ)のパッケージ 及びメリーズについての花王販売レポート 甲第5号証の3:ユニ・チャーム株式会社の製品(ウルトラムーニー) のパッケージ及びウルトラムーニーの発売に関して 記載されている資料 甲第6号証:カーク・オスマー化学大辞典の不織布に関する抜粋記事 甲第7号証:特開昭57-191304号公報 甲第8号証:特開昭57-161101号公報 なお、異議申立人は、上記証拠のうち、甲第2号証乃至甲第6号証を「参考資料」としている。 4.証拠の記載事項 甲第1号証には、脚開口部の各々とウエスト開口部の間にほぼ全長の開閉部(システム)を提供するため、全長の開閉部(システム)の脚開口部の各々とウエスト開口部の近くで互いに間隔をとって置かれた定位置の第1開閉手段と該第1開閉手段の間に延びる第2の負荷開閉手段とを含む使い捨ての吸収性衣類用の締付システム[特許請求の範囲(1)及び第6頁右上欄第13行〜同頁左下欄第4行の記載参照]について、第1の負荷衣類開閉部が、(使い捨ての吸収性衣類10の)前部24、26及び後部20、22の耳形部分の対を横切って結びつけられたウエストバンド部分14から脚開口部18まで延びている複数の締付け要素42、44、46及び48を有し、後方締付け要素の対42、44の各々が縦方向に相対する前部締付け要素の対46、48上に位置づけられた雌50B及び雄50Aのスナップ要素とかみ合うことのできる雄50A及び雌50Bのスナップ要素を含むこと[第7頁右下欄第13行〜第8頁右上欄第3行の記載参照]、第2負荷開閉手段として、テープ状面ファスナー材料のフック及びループ部分を、それぞれ、縦方向に相対する締付け要素42、46及び44、48上に固定することができること[第8頁右上欄第4行〜同頁左下欄第12行の記載参照]、締め付け要素は、矩形のストリップにカットされたスパンボンデッドの基材シートで作られていてもよいこと[第8頁左下欄第12〜15行の記載参照]、及び、横方向ならびに縦方向に相対する締付け要素上のスナップパターンが相応するように配置されうるので、例えば、前身頃28を内側方向へ折畳み巻いた後、互いに対して締付け要素42、44の後部対を締めつけ、汚れた衣類を閉鎖型のコンパクトな包装(パッケージ)にきちんと束ね処分できること[第8頁右下欄第8〜18行]等が図面とともに記載されている。 甲第2号証には、表面に多数のフック状係合片を設けた布製ファスナーからなる固定手段に固定する起毛製品として、ニードルパンチ機あるいはアラクネ加工機等によって形成される不織布製品を使用することができることが記載されている。 甲第3号証には、両末端部又は/及び両側端に面ファスナー要素を有する立毛繊維構造物が記載され、該繊維構造物に不織布が包含されることが記載されている。 甲第4号証には、布製ファスナーの雄面を構成する膨頭子状係合素子に対して、フォーム類と不織布との積層組織のものを被係合体として適用することができることが記載されている。 甲第5号証乃至甲第5号証の3には、使い捨ておむつの使用後に全体を小さく丸めた後に、おむつの使用時の結合手段として備えられている接着性のテープを用いて固定することが記載され、それぞれに記載された使い捨ておむつが、本件出願の優先日前に公知であったことを示す資料が付されている。 甲第6号証には、スパンボンド不織布について記載されている。 甲第7号証には、おむつの前側部と背側部との腰周り両端部を結合するための手段を備える使い捨ておむつの、裏面シートを繊維植設発泡体シートとし、腰周り両端部には非伸縮性部材を備えること[特許請求の範囲(1)の記載参照]、繊維植設発泡体シートは、軟質ポリウレタンフォームに繊維が高速液体噴射法により一体的に植設されたものが好適であり、軟質発泡体シートの表面に植設された繊維群が部分的に互いに交絡していること[第2頁左下欄第14行〜同頁右下欄第7行の記載参照]、非伸縮性部材として不織布が用いられること[第3頁右下欄第18〜19行の記載参照]、及び、結合手段として、係合突起群が植設された所謂テープファスナーが用いられ、その取り付け部位は非伸縮性部材が位置している部位であること[第4頁左上欄第17行〜同頁右上欄第3行の記載参照]等が図面とともに記載されている。 甲第8号証には、おむつの前側部と背側部の腰囲り両端部を結合するための結合部が、掛止突起を設けた掛止部材と該掛止突起を着脱可能に掛止させるための繊維を有するテープ状の伸縮性締付部材とからなる使い捨ておむつであって、前記前側部・背側部の一方の腰囲りの非肌当面に掛止部材をそれぞれ一個づつ固着し、前記前側部・背側部の他方の腰囲り両端部におむつの幅の半分程度の長さの締付部材をそれぞれ少なくとも一個づつ固着し、且つ該両締付部材の一方の自由端に掛止部材を固着してあるもの[特許請求の範囲(1)及び(3)の記載参照]が記載され、第8図乃至第13図には、一方の締付部材2bの自由端部に固着された掛止部材1bを着用時に他方の締付部材2aの自由端部に掛止させる態様が示されている。 5.対比・判断 5-1.特許法第29条の2について 本件請求項1に係る発明(以下、「本件第1発明」という。)と甲第1号証(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明とを対比する。 先願明細書に記載された「使い捨ての吸収性衣類」、並びに、その「後部」及び「前部」は、それぞれ、本件第1発明の「吸収性製品」、並びに、「第1末端区域」及び「第2末端区域」に相当し、先願明細書に記載された雄雌のスナップ要素を有する第1開閉手段及びフック及びループ部分を有する第2の負荷開閉手段を備えた、「後部締付け要素」及び「前部締付け要素」は、夫々、本件第1発明の「閉鎖部材」及び「ランド部材」に相当し、先願明細書に記載された横方向に相対する後部締付け要素は、スナップパターンの配置により処分時に相互にかみあい汚れた衣類を束ねることができ、本件第1発明の「処分手段」に相当する機能をも備えていることになるので、先願明細書には、「第1末端区域と、第1末端区域と反対側の第2末端区域とを有する吸収性製品において、吸収性製品の第1末端区域における各縦縁に近接して設けられた閉鎖部材と、吸収性製品の第2末端区域に設けられ、閉鎖部材と機械的に係合して吸収性製品の閉鎖体を形成するためのランド部材と、閉鎖部材と機械的に係合して吸収性製品を簡便に廃棄する形状に固定するための処分手段とを含む使い捨て吸収性製品。」が記載されているということができるが、「処分手段」についてみると、雌雄のスナップ要素のスナップパターンの配置により相対する後部締付け要素が相互にかみ合うものであり、閉鎖部材の裏面に設けられ、第1機械的ファスナー手段を固定するための不織布を有し、この不織布がフックファスナー材と機械的に係合するという本件第1発明の特徴点についてはなんら記載されていない。 したがって、本件第1発明は、先願明細書に記載された発明と同一ということはできない。 異議申立人は、先願明細書には、使い捨ての吸収性衣類の締付け要素上に第2の負荷開閉手段としてテープ状面ファスナーのフックを有し、締付け要素がスパンボンデッドの基材シートで作られることが記載されており、参考文献としての甲第2号証乃至甲第4号証及び甲第6号証を参照すれば、スパンボンデッドの基材シートは不織布であり、後部締付け要素の面ファスナーのフック部分が他方の締付け要素のスパンボンデッドの基材シート、すなわち不織布と機械的に係合しうるので、上記後部締付け要素を構成するスパンボンデッドの基材シート(不織布)が本件第1発明の「閉鎖部材の裏面に設けられる処分手段」に相当することは明らかである旨を主張しているが、先願明細書に記載されたスパンボンデッドの基材シートなる不織布が面ファスナーのフックと係合しうるものであったとしても、第2の負荷開閉手段は、第1開閉手段と共に用いられるものであるから、第1開閉手段の裏面と係合することを意図するものではなく、該不織布と第2の負荷開閉手段の係合は開示も示唆もされていないので、相対する締付け要素の第2の負荷開閉手段のフックと係合し得るように配設されている事を示すものは何もない。さらに、甲第5号証乃至甲第5号証の3に示されるように、閉鎖部材を処分手段に利用することが周知であったことを勘案しても、上記先願明細書に、「スナップパターンの配置により処分時に相互にかみあい汚れた衣類を束ねる」とされている機能を、上記「基材シート」と第2の負荷開閉手段のフックを係合することによって、生ぜしめることまで記載されているとする根拠は何もない。 したがって、上記異議申立人の主張は採用できない。 5-2.特許法第29条第2項について 異議申立人の提出した甲第7号証及び甲第8号証のいずれにも、吸収性製品の閉鎖部材としてフック及びループのような機械的手段を用いることが記載されているが、本件第1発明の特徴点である「吸収性製品を簡便に廃棄する形状に固定させるため閉鎖部材の裏面に設けられた処分手段」、及び、「処分手段は第1機械的ファスナー手段を固定するための不織布を有し、この不織布はフックファスナー材と機械的に係合しうる」点について記載も示唆もされていない。 すなわち、甲第7号証に記載されたおむつの結合手段としての係合突起群が植設されたテープファスナーは本件第1発明でいう「フックファスナー材を含む第1機械的ファスナー要素」に相当し、そのフックファスナー材が係合しうるおむつの裏面シートを構成する繊維植設発泡体シートは、ループファスナー材ということはできるが、甲第7号証には、「処分手段」についてはなにも記載されていない。 また、甲第8号証にも「処分手段」については何も記載されておらず、甲第8号証に記載されたおむつの結合部を構成する、掛止部材の掛止突起(フックファスナー材)と掛止可能なテープ状締付部材2b(ループファスナー材)の自由端部に固着された掛止部材1bは、着用時に、他方の締付部材2aと掛止するものであり、機械的閉鎖手段としての機能を具備するものであるが、全体として(全面が)ループファスナー材を構成する締付部材の先端の一面に設けられたフックファスナー材である点で、本件第1発明のフックファスナー材を含む閉鎖部材の裏面に設けられた不織布を有する処分手段とは構成も異なっている。 そして、異議申立人が、参考資料として甲第5号証乃至甲第5号証の3を挙げて主張するように、使用済みの吸収性製品を小さく丸めて粘着テープを用いた閉鎖部材で固定して廃棄することは、本件優先日前から周知の技術的事項ではあるが、ループ及びフックのような機械的ファスナー材は、相対するランド部材のように、係合する相補的な部材を必要とする点で、粘着テープを用いた閉鎖手段とは相違しており、上記周知事項を勘案しても、上記各証拠に記載された、フックとループのような機械的ファスナー材と機械的に係合する処分手段についても、また、該処分手段を、フックファスナー材と機械的に係合するように、閉鎖部材の裏面に設けられた不織布で構成することも、上記甲第7号証及び甲第8号証の記載から当業者が容易に想到しうる事項ということはできない。 そして、本件第1発明は上記の特徴点を具備することにより、明細書に記載された効果を奏するものと認められる。 したがって、本件第1発明は、異議申立人の提出した証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものではない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-03-30 |
出願番号 | 特願平11-174492 |
審決分類 |
P
1
652・
16-
Y
(A41B)
P 1 652・ 121- Y (A41B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 梅田 幸秀、小野寺 務、門前 浩一、植前 津子 |
特許庁審判長 |
鈴木 美知子 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 粟津 憲一 |
登録日 | 2002-12-27 |
登録番号 | 特許第3385236号(P3385236) |
権利者 | ザ、プロクター、エンド、ギャンブル、カンパニー |
発明の名称 | 使い捨て吸収性製品用の処分手段を備えた機械的ファスナー手段 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 森 秀行 |
代理人 | 名塚 聡 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 和泉 久志 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 永井 浩之 |