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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23K
管理番号 1096404
異議申立番号 異議2003-70529  
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-07-05 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-26 
確定日 2004-04-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3318718号「食用牛の体質改善方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3318718号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件発明
本件特許第3318718号の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりものもと認める。
「【請求項1】魚粉、綿実、ビール粕、乾燥酵母及び加熱大豆からなる高蛋白質含有飼料から選ばれた少なくとも1種と脂肪酸カルシウム塩とを、各々20〜60:80〜40の重量比からなる飼料添加剤を食用牛1頭当たり、1日100〜500g給与することを特徴とする食用牛の体質改善方法。」

2.引用刊行物記載の発明
先の取消理由通知において引用した刊行物1(特開平4ー71451号公報(甲第1号証))には、
「(1)酵母、イーストカルチャー、蛋白質の酵素分解生成物及びバイパス油脂を含有する飼料配合物100重量部に対し、胆汁末を0.5〜5重量部配合してなる牛用飼料配合物。」(請求項1)、
「(2)酵母1重量部に対し、イーストカルチャーが0.05〜1.5重量部、バイパス油脂が0.2〜15重量部配合されている請求項第1項記載の牛用飼料配合物。」(請求項2)、
「(6)バイパス油脂が脂肪酸カルシウムである請求項第1項ないし第5項のいずれかに記載の牛用飼料配合物。」(請求項6)、
「本発明は肉用牛を効率よく肥育し、・・・牛用飼料配合物に関する。」(1頁右欄9〜12行)、
「本発明の牛肥育用配合物を・・・。肉用牛の場合は出荷3〜6月前から牛1頭あたり80〜300g/日を給餌する。」(3頁右上欄7〜13行)、
と記載されている。

また、同刊行物2(特開昭64ー5582号公報(甲第3号証))には、
「(1)蛋白質飼料25〜75重量%、脂肪酸カルシウム25〜75重量%、粘結剤0.1〜10重量%および飼料添加物0〜20重量%の混合物の成型品からなる反芻動物用蛋白質飼料。」(特許請求の範囲第1項)、
「従来より、エネルギー補給や体調の維持、増体速度の加速化、肉質改善、産乳の促進などを目的として、家畜に蛋白質を給餌することがよく行われている。」(1頁左欄15〜18行)、
「本発明において、主原料として使用する蛋白質飼料は、経口投与によりエネルギー補給、体調維持、体重増加、肉質改善、産乳促進などの生物学的活性を示すものであればいずれでもよく、たとえば血粉、フエザーミール、ミートミール、ミートボーンミール、魚粉、鳥肉骨粉、全脂大豆、脱脂大豆、コーングルテンミール、カゼインなどが挙げられる。」(2頁右上欄6〜13行)、
「実施例2 魚粉(粗蛋白質含量:66%)480g、脂肪酸カルシウム480g、カルボキシメチルセルロース20g、カルボキシメチルセルロース20g、ニコチン酸10g、炭酸マグネシウム10g(蛋白質飼料/脂肪酸カルシウム/粘結剤/飼料添加物の配合比率:48/48/2/2)を用い、実施例1と同様にして、ペレット状飼料を得た。」(3頁左下欄2〜9行)、
「(2)評価試験 <嗜好性試験> 実施例および比較例で得られた蛋白質飼料の嗜好性を調べるために、得られた蛋白質飼料250gと市販の配合飼料3.750gを混合して合計4.000gの試験飼料を調整し、比較飼料として配合飼料のみ4.000gとともに搾乳牛5頭に対して同時に給与し、10分間採食させ、試験飼料と比較飼料の採食量を調査比較した。」(4頁右上欄13行〜左下欄1行)、
と記載されている。
上記記載からみれば、反芻動物用蛋白質飼料を給与することによって、体重増加や肉質改善の効果を奏するものであり、実施例2では、魚粉が480g、脂肪酸カルシウムが480gであるから、刊行物2には、「魚粉と脂肪酸カルシウム塩とを各々50:50の重量比からなる反芻動物用蛋白質飼料を給与する反芻動物の肉質改善方法。」が記載されているものと認める。

3.対比・判断
本件発明と刊行物2に記載の発明を対比すると、刊行物2に記載の発明の反芻動物用蛋白質飼料は、「(2)評価試験」の項の記載からみれば、市販の配合飼料に混合して用いているから、飼料添加剤であり、肉質改善の効果を有するものであるから、反芻動物の体質改善を図るものであり、本件発明の食用牛も反芻動物であるから、
両者は、「魚粉と脂肪酸カルシウム塩とを、各々50:50の重量比からなる飼料添加剤を給与する反芻動物の体質改善方法。」である点で一致し、下記の点で相違する。
(1)反芻動物が、本件発明では、食用牛であるのに対し、刊行物2に記載の発明では、「(2)評価試験」の項に搾乳牛の記載はあるが、食用牛か否かは不明な点。
(2)飼料添加剤の給与量が、本件発明では、食用牛1頭当たり、1日100〜500g給与するのに対し、刊行物2に記載の発明では、不明な点。

上記相違点について検討すると、
(1)について、
刊行物2に記載の発明は、肉質改善を図るものであるから、飼料添加剤を給与する反芻動物として食肉牛とすることは当業者が容易に想到し得るものである。
(2)について、
刊行物2に記載の発明は、本件発明と目的は相違するとしても、同一の飼料添加剤を給与して肉質改善(体質改善)を図るものであって、飼料添加剤の有効量は当業者が実験して定めることは通常行われていることであり、刊行物1には、脂肪酸カルシウムと蛋白質含有飼料との添加物(配合物)を食肉牛1頭当たり80〜300g/日給与することが記載されているから、刊行物2に記載の発明における肉質改善のための有効量として、本件発明で規定している食肉牛1頭当たり100〜500g/日を見出すことは、上記刊行物1に記載の給与量を参照して、当業者が種々実験することにより容易になし得るものである。
そして、食用牛の肉質は、脂肪交雑、光沢、締まり及びきめ、脂肪の質で表されるものである(甲第6号証)から、本件発明の効果も、刊行物2に記載の肉質改善の効果から当業者が容易に予想し得るものであって、格別顕著なものとも認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-02-26 
出願番号 特願平4-355674
審決分類 P 1 651・ 121- Z (A23K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 渡部 葉子
鈴木 寛治
登録日 2002-06-21 
登録番号 特許第3318718号(P3318718)
権利者 ミヨシ油脂株式会社
発明の名称 食用牛の体質改善方法  

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