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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1097244 |
審判番号 | 不服2003-13230 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-04-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-10 |
確定日 | 2004-05-20 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第259867号「情報サービスシステム及びその共通データベース」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 4月22日出願公開、特開平 6-110761〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成4年9月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年8月6日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「複数の発注側業者および受注側業者が加入するシステムであって、 当該システムの加入発注側業者および受注側業者双方に共通するデータを格納し、前記加入発注側業者および加入受注側業者双方がアクセス可能な共通データベースと、 前記受注側業者の公開可能なデータを格納し、前記受注側業者はアクセスできるが、前記発注側業者は直接アクセスできない1以上のローカルデータベースとを備え、 前記公開可能なデータの変更があった前記ローカルデータベースの公開可能な内容で前記共通データベースの内容がアップデートされるように構成したことを特徴とする情報サービスシステム。」 2.引用例 これに対し、原審において拒絶の理由に引用した 疋田定幸, "図解 分散型データベースシステム入門", 日本, オーム社, 平成元年5月25日, p.25 - 28, 115 - 118(以下、引用例1という。)には、以下の事項が図面と共に記載されている。 (ア) 「3・3 分散型データベースシステムの論理的形態 分散型データベースシステムの分散形態は、システムが適用される業務に応じて、すべてのデータベースサイト(分散型データベースシステムにおいて通信網で接続された一つのデータベースシステムをいう)が対等な機能をもつ水平分散形態、分散型データベース管理システム機能に主従関係がある垂直分散形態、およびデータベース利用サイトは基本的に遠隔データベース利用機能のみをもつ遠隔データベース利用形態に分けられる。 (中略) [2] 垂直分散形態 分散型データベースシステムを構成するデータベースサイトが機能的に対等でなく、データベースをもつサイト間に主従関係がある場合、これを垂直分散形態と呼ぶ。通常この形態では、一つの主側データベースサイトと、これに従属する一つ以上の従属側データベースサイトからシステムが構成される。従属側データベースサイトは、主側データベースサイトから1部をコピーしデータベースを保持するか、または、従属側データベースサイトで独自にデータベースを生成・保持することができる。このデータベースは主側データベースサイトから認識されない。したがって、従属側データベースサイトは、その配下の利用者にサイト内のデータベースを提供するとともに、サイト内に目的とするデータベースがない場合は、主側データベースサイトへ要求を出す遠隔利用サービスを提供する。一方、主側データベースサイトは、遠隔データベースのサーバ機能を除けば、基本的には集中型データベース管理システムとして動作する。したがって、従属側データベースサイトは、単に一般のデータベース利用サイトとして認識されない。また、主側データベースサイトは、従属側データベースサイトのデータベースを利用することはできない。なお、垂直分散形態では、システム内に複数の従属側データベースサイトが存在しうるが、これら従属側データベースサイトは互いのデータベースの存在を認識せず、利用し合うことはない(図3・3)。」(25頁〜28頁) (イ)「7・4 重複データにからむ問題 分散データベースでは、複数のサイトが同一データを重複してもつことが可能である。読出し専用のデータベースであれば、重複は問題とならない。しかし、書込みがある場合は、各トランザクションは任意のコピーに対して操作を行うことになるため、同時実行制御などトランザクション管理が重複をもたない場合に比べて複雑になる。以下では、重複データでの技法について簡単に説明する。 重複データにおける同時実行制御としては以下のような方法がある。 (1)書込みには全コピーをロックし、読出時にはコピーの一つをロックする方式 (略)」(115頁〜118頁) (イ)の記載より、分散データベースではコピーの一つに書込みを行った場合、同時実行制御を考慮して、その内容を他のデータベースに反映する必要があることが読み取れる。 また、引用例1のP22-P24には分散データベースシステムのシステム形態について以下の記載があり、このことは分散ベースシステムでは周知の事項である。 (ウ)「3・2 分散型データベースシステムの物理的構成要素 分散型データベースシステムといっても、その形態はさまざまなものが想定される。システムを構成するコンピュータには、大型ホストコンピュータから、ミニコンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータまで存在し、これを接続する通信網にも、広域通信網、ローカル通信網や新しいネットワークとして衛星通信網、サービス統合ディジタル通信網(ISDN)などがあげられる。 分散型データベースシステムの構築にあたって、これらの物理的構成要素を適用業務にあわせて、いかに選択し組み合わせるかが重要である。ここでは、これら構成要素の分散型データベースシステムでの使われ方について概略を述べる(図3・1)。 〔1〕使用されるコンピュータ 分散型データベースシステムで使用されるコンピュータは、格納されるデータべースの容量、利用形態、コストの面から大型ホストコンピュータ、ミニコンピュータおよびワークステーション/パーソナルコンピュータに分類できる。大型ホストコンピュータは、大量のデータベースを格納し、会社や機関など組織全体のデータべースを管理でき、大規模な分散型データベースシステム構成要素として中核的役割を果たすことができる。ワークステーションやパーソナルコンピュータは、個人的なデータベースの格納や、より上位のコンピュータからのデータベースの検索や、取り出したデータベースの加工などの機能を果たす。またより能力のあるワークステーションでは、ローカルな共有データベースをもち、小規模な分散型データベースの中核的構成要素となることも可能である。ミニコピュータは大型ホストコンピュータとワークステーション/パーソナルコンピュータの中間的位置付けとして、会社や機関などの部門独自のデータベースを格納したり、上位にある大型ホストコンピュータで管理されているデータベースを切り出して格納したりすることができる(表3・1)。 」(22頁〜24頁) 特に、図3・1及び表3・1をみると、分散データベースシステムには、データベースサイトの利用者だけでなく、データベースサイト以外にデータベースを持たずパーソナルコンピュータ等を用いてデータベースを利用する利用者が存在することが見てとれる。 (ウ)に記載された分散データベースシステムに関する周知の事項によれば、データベースシステムにはデータベースサイト以外にデータベースを利用する利用者が存在するから、引用例1の(ア)(イ)の記載及び上述の分散データベースシステムの周知の事項を勘案すれば、引用例1には以下の発明が記載されている。 複数の利用者が加入するシステムであって、 データベース側で作成し利用者が利用するデータを格納し、前記利用者がアクセス可能な主側データベースサイトと、 主側データベースサイトの一部をコピーし保持するとともに主側データベースサイトから認識されない1以上の従属側データベースサイトからなり、 従属側データベースサイトで、従属側データベースサイトと主側データベースサイトで重複するデータに書込みがあったときには、主側データベースサイトに該書込みの内容を反映させるようにしたことを特徴とする分散型データベースシステム また、本願出願前に公開された特開平1-306964号公報(以下、周知例という。)には、以下の事項が記載されている。 (エ)「第1図に示すように、汎用コンピュータの中央処理装置1は、商品の在庫情報のデータベースを格納する外部記憶装置2と、商品の在庫引当て情報を出力する出力装置3とを接続している。 また、中央処理装置1は、通信回線4を通じて、端末装置5を始めとして複数台の同様な端末装置に接続することができる。 この端末装置5は、顧客商品ニーズ情報、商品在庫問合せ情報および商品注文情報を入力する入力部5-1と、顧客満足商品情報、商品在庫問合せ結果情報および商品注文結果情報を表示する表示部5-2と、入力部5-1からの入力情報および表示部5-2への表示情報を保持することができる内部記憶部5-3とを有している。」(公報2頁左下欄19行〜右下欄12行) (オ)「 次に、入力部5-1から商品在庫問合せ情報I-2を入力すれば、端末装置5は、問合せ編集処理T-2を行い、問合せ・注文情報格納処理T-3で、内部記憶部5-3に一時保持するとともに、問合せ・注文情報送信処理T-4で、通信回線4を通じて、中央処理装置1に送信する。 そこで、中央処理装置1は、問合せ・注文情報受信処理C-1で、商品在庫問合せ情報を受信し、問合せ情報処理C-2で、外部記憶装置2の商品在庫量データベースF-1を使用して商品在庫問合せ結果情報を求め、問合せ・注文結果情報送信処理C-3で、通信回線4を通じて、端末装置5に送信する。 この結果、端末装置5は、問合せ・注文結果情報受信処理T-5で、商品在庫問合せ結果情報を受信するとともに、問合せ・注文結果情報格納処理T-6で、内部記憶部5-3に一時保持し、問合わ結果情報出力処理T-7で、表示部5-2に商品在庫問合せ結果情報O-2を表示する。」(公報3頁左上欄1行〜19行) 3.対比・判断 本願の請求項1に係る発明(以下、前者という)と引用発明(以下、後者という)とを比較すると、 (1)後者のデータベースサイトはデータベースを有しているから、後者の「主側データベースサイト」「従属側データベースサイト」は、前者の「共通データベース」「ローカルデータベース」に相当する。 (2)後者において、利用者の利用するデータはデータベースサイト側から提供されるものであり、データの提供側もシステムの利用者ということができる。そして、データベースシステムに一定の条件のもとで加入した利用者はデータベースをアクセス可能であるから、前者の「加入発注側業者および加入受注側業者」と後者の「利用者」は、システムの利用者である点で対応している。また、データベースのデータは利用者全員がアクセス可能であるから、「共通データ」ということができる。 (3)後者の「従属側データベースサイトで、従属側データベースサイトと主側データベースサイトで重複するデータに書込みがあったときには、主側データベースサイトに該書込みの内容を反映させる」ことと、前者の「データの変更があった前記ローカルデータベースの内容で前記共通データベースの内容がアップデートされる」ことは同等のことである。 (4)データベースは情報提供のためのものであるから、後者の「分散型データベースシステム」は前者の「情報サービスシステム」に相当するものである。 してみると、両者は次の点で一致している。 複数の利用者が加入するシステムであって、 利用者に共通のデータを格納し、前記利用者がアクセス可能な共通データベースと、 1以上のローカルデータベースとを備え、 前記ローカルデータベースのデータの変更があった前記ローカルデータベースの内容で前記共通データベースの内容がアップデートされるように構成したことを特徴とする情報サービスシステム 一方、両者は以下の点で相違している。 相違点1 情報サービスシステムの利用者が、前者では「発注側業者および受注側業者」であるのに対し、後者では「利用者」についての限定がない点 相違点2 ローカルデータベースが、前者では「受注側業者の公開可能なデータを格納し、前記受注側業者はアクセスできるが、前記発注側業者は直接アクセスできない」ものであるのに対し、後者のものではローカルデータベースについての記述がない点 4.相違点についての検討 相違点1について データベースを利用して、商品の在庫を調べて受注するシステムは周知のものであり(2.引用例の項の周知例参照)、このようなシステムの利用者は発注側と受注側であるから、利用者を発注側業者と受注側業者とすることは格別のことではない。 相違点2について 後者のような分散データベースシステムでは共通データベースの一部をコピーとしてローカルデータベースが保持する形態をとるから、このローカルデータベースに保持されたデータも公開可能なデータということになる。また、従属側データベースサイトのデータを従属側サイトの利用者がアクセスできることはローカルにコピーをもつ目的からして当然である。従属側データベースサイトのデータは共通データベースにも有しているから、自サイト以外の利用者がアクセスできる必要はなく、また、上記の(ア)には「主側データベースサイトは、従属側データベースサイトのデータベースを利用することはできない。なお、垂直分散形態では、システム内に複数の従属側データベースサイトが存在しうるが、これら従属側データベースサイトは互いのデータベースの存在を認識せず、利用し合うことはない」との記述もあるから、従属側データベースサイトを自サイト以外の利用者にアクセスできないようにすることは通常のことであり、発注側業者が直接アクセスできないようにすることは格別のことではない。 なお、請求人は、平成15年8月6日付手続補正書(審判請求書の請求の理由の補正)において、公開可能データを扱うローカルデータベースと非公開データを扱うローカルデータベースをもつシステムを前提として、請求項1と請求項6に係る発明の特徴と効果を述べ、引用発明との相違を主張している。しかしながら、請求項1に係る発明は、ローカルデータベースには公開可能なデータを格納されている点は規定されているが、非公開データを扱うローカルデータベースについては何ら規定されていないから、前述の請求人の主張は、請求項1に係る発明に基づくものと認めることはできず、請求人の主張を採用することはできない。 特許出願に係る発明の要旨認定は、特段の事情がない限り、請求項の記載に基づいてされるべきであり、請求項1に係る発明が非公開データを扱うローカルデータベースを含まないことは請求項1の記載から明らかであるが、本件の場合、請求項2に「前記ローカルデータベースが、・・・・・非公開データを格納する付加ローカルデータベースをさらに含む」と明記されていることからすれば、本願明細書では、この点を意識して書き分けられており、請求項1に係る発明が非公開データを扱うローカルデータベースを含まないことは一層明確になる。 更に言えば、データベースのデータには機密保護のための必要に応じてアクセス制限を設定することは周知のことであり、利用者全員がアクセス可能な共通データベースに非公開データをアップデートしないようにすることは当然の処置であり、この点を格別のことということはできない。 5.むすび したがって、請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-03-09 |
結審通知日 | 2004-03-16 |
審決日 | 2004-04-07 |
出願番号 | 特願平4-259867 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩間 直純 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
新井 則和 橋本 正弘 |
発明の名称 | 情報サービスシステム及びその共通データベース |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |