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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない H01L
管理番号 1097404
審判番号 無効2001-35456  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-02-08 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-18 
確定日 2002-08-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第2667712号発明「半導体素子の複合処理装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第2667712号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)についての出願は、平成1年6月27日に出願され、平成9年6月27日にその発明について特許の設定登録がされたものである。
これに対して、請求人は、本件特許発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである旨主張し、証拠方法として甲第1〜9号証を提出している。
一方、被請求人は、平成14年1月25日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。この訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。

[2]訂正の適否に対する判断
(1)訂正の内容
本件特許の特許請求の範囲を、
「【請求項1】 ペレットマウント、ワイヤボンディング及び樹脂封止作業を終了したリードフレームを供給するリードフレーム供給ユニットと、
複数のターンテーブルを連続的に配置し、各ターンテーブルの周縁部円周等配位置に各作業工程に応じて半導体素子を吸着保持するようになしたハンドリング機構を複数個設け、隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニットと、
上記複数のターンテーブルにより搬送されて切断・リード成形・特性測定及び捺印工程等を経た半導体素子をテーピング梱包するテーピングユニットとからなることを特徴とする半導体素子の複合処理装置。」に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
上記訂正は、訂正前の特許請求の範囲の「半導体素子を保持するように」の記載を、「半導体素子を吸着保持するように」に減縮するものである。
この訂正は、本件特許に係る願書に添付した明細書の発明の詳細な説明にある【実施例】の項に記載された「吸着ヘッド(7)、(8)、(10)」、「吸着チャックヘッド(9)」に基づくものであって、特許請求の範囲の減縮に該当し、願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、平成14年1月25日付けの訂正は、特許法第134条第2項ただし書、及び第5項の規定により準用する同法第126条第2、3項の規定に適合するから、当該訂正を認める。

[3]請求人の主張
請求人は、「本件特許発明についての特許を無効とする、審判の費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、下記の甲第1〜9号証を提出して、本件出願前に頒布された甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は無効とされるべきである旨主張している。

甲第1号証:特開昭62-296525号公報
甲第2号証:特開昭63-258716号公報
甲第3号証:特開昭62-150732号公報
甲第4号証:特開昭57-1240号公報
甲第5号証:特開昭63-119505号公報
甲第6号証:特開昭59-184599号公報
甲第7号証:特開昭62-97395号公報
甲第8号証:特開昭63-77192号公報
甲第9号証:特開昭63-12418号公報

[4]被請求人の主張
一方、被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由として、下記の乙第1号証を提出して、本件特許発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものには該当しない旨主張している。

乙第1号証:特開2002-37211号公報

[5]本件特許発明
本件特許発明は、訂正明細書の請求項1に記載された以下のとおりのものである(構成要件を(a)〜(d)に分節して記載する。)。

「(a)ペレットマウント、ワイヤボンディング及び樹脂封止作業を終了したリードフレームを供給するリードフレーム供給ユニットと、
(b)複数のターンテーブルを連続的に配置し、各ターンテーブルの周縁部円周等配位置に各作業工程に応じて半導体素子を吸着保持するようになしたハンドリング機構を複数個設け、隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニットと、
(c)上記複数のターンテーブルにより搬送されて切断・リード成形・特性測定及び捺印工程等を経た半導体素子をテーピング梱包するテーピングユニットと
(d)からなることを特徴とする半導体素子の複合処理装置。」

[6]証拠の説明
(1)甲第1号証
甲第1号証の特開昭62-296525号公報には、チップボンディング工程、ワイヤボンディング工程、樹脂モールド工程を経たリードフレームを搬送ユニットに担持し、このリードフレームに担持した電子装置の樹脂モールド後の樹脂パッケージを、リードフレーム上に把持した各電子装置の樹脂パッケージに標印する標印工程から、リードカット、ダムバーカット工程を経て、各単体となった電子装置の測定工程までをライン化し、これら工程間のトラブルを低減するとともに製造効率を飛躍的に高めた、ICやLSIなどの電子装置の製造装置に関する発明が第1〜8図とともに開示され、さらに、以下の事項が記載されている。

「ICやLSIなどの半導体装置は、リードフレーム上に半導体チップをボンディングするチップボンディング工程、チップ上の各パッドとリードとを結線するワイヤボンディング工程、チップおよびワイヤ部を樹脂パッケージ内に封止する樹脂モールド工程、樹脂パッケージの表面に形式番号、メーカ名などを印刷する標印工程、リードフレームからリード足部分を分離し、かつダムバーなどの不要部分を切除するリードカット工程、パッケージ部分からのびるリード足を所定方向に曲げるリードベンド工程を経、ついでオープン・ショート測定、最終測定、ランク分け測定などの測定検査を経て、これらの検査に合格したものだけがランク毎にコンテナチューブに入れられて出荷される。」(第2頁左上欄第4行〜第18行)

「この発明は、上記の事情のもとで考え出されたもので、リードフレーム毎に処理される工程と、装置を各単体としてからの工程とを一連につなげ、全体としての生産効率を飛躍的に向上させることができる電子装置の製造装置を提供することをその課題とする。」(第2頁右上欄第19行〜第2頁左下欄第4行)

「樹脂モールド工程後、リードベンド・リードカット工程までにおいては、樹脂パッケージのクリーニング、標印、外観検査、乾燥などの工程があるが、本発明装置では、これらの工程を、搬送ユニットにリードフレームを坦持させ、これをそのまま移動させる間に各工程処理を行なうようにしている。
したがって、リードフレームのつかみ替えが少なくなり、各工程間の搬送トラブル、あるいは、各工程でのリードフレームのつかみ替えによるトラブルが一切なくなる。また、リードベンド・リードカット工程までの工程処理が一連に行なわれるので、仕掛品の滞留が解消され、生産効率が一律に高まる。」(第3頁左上欄第1行〜第14行)

「本発明装置は、大略、搬送ユニット上のリードフレームに各工程処理を施す第一の部分Aと、リードカット・リードベンド後の単体を整列移載する中間部分Bと、ソケットパレット上に移載された電子装置をソケットパレットに装着したまま各異なる検査を行う第二の部分Cとに分かれる。」(第3頁左下欄第15行〜第3頁第1行)

「このように各チャック56,57によってソケットパレットから取り出された電子装置は、たとえば、コンテナチューブに装填されて、出荷される。」(第8頁左下欄第9行〜第12行)

「本発明による電子装置の製造装置は、・・・リードカット・リードベンド工程までの工程を行う第一の部分、・・・電子装置を所定数ごと所定間隔で整列させる中間部分・・・、・・・測定を行うようにした第三の部分を一連につなげて構成されているので、一連の工程における搬送トラブル、あるいはハンドリングミスが激減し、・・・電子装置の製造効率が飛躍的に向上する。また、各工程装置を分離して配置する場合にくらべ、工場(「向上」は誤記。)内における装置配置スペースも飛躍的に削減される。」(第8頁左下欄第20行〜右下欄第18行)

(2)甲第2号証
甲第2号証の特開昭63-258716号公報には、電解コンデンサ等の電子部品に所要の処理を施した後、その電子部品のリード線を一対の台紙テープと貼着テープとの間に挿入して狭着させるようにした、電子部品のテーピング装置に関する発明が第1〜6図とともに開示され、さらに、以下の事項が記載されている。

「従来、電子部品に所要の処理を施した後、その電子部品のリード線を一対の台紙テープと貼着テープとの間に挿入しで挟着させるようにしたテーピング装置は公知である。従来のこの種のテーピング装置は、電子部品に所要の処理を施す複数の処理部を一直線上に配設し、トランスファ装置で電子部品を間欠的に順次各処理部に供給するようにしたり、所定角度毎に間欠的に回転されるインデックステーブルを水平に配設するとともに、該インデックステーブルの外周部に上記複数の処理部を配設し、このインデックステーブルの所定角度毎の間欠的な回転により電子部品を各処理部に順次供給するようにしている。
・・・
しかるに、インデックステーブルを用いた後者の装置は、前者の装置に比較して小型に製造することができるが、それでもインデックステーブルを水平に配設していたので、小型化に一定の限界があった。」(第1頁右欄第11行〜第2頁左上欄第9行)

「上記物品整列装置3は、水平面内で回転される回転テーブル4を備えており、この回転テーブル4はその外周部に、上記電子部品1の円筒状本体部laを収容するスリット5を放射方向に多数備えている。そして、上記パーツフィーダ2から上記回転テーブル4の外周部に供給された電子部品1のうち、・・・一部のものがある程度偶然的に上記スリット5内に収容され、スリット5内に収容されなかった他の電子部品1は全て上記パーツフィーダ2内に戻される。」(第2頁左下欄第12行〜右下欄第2行)

「上記物品整列装置3の下流側には第1物品搬送手段7を設けてあり、この第1物品搬送手段7は直立状態で回転テーブル4の回転に伴なって搬送される電子部品1を受取る左右一対の水平方向のガイド8と、このガイド8を振動させて電子部品1に常時前進力を付与する図示しない振動機構とを備えている。」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第5行)

「然して、上記ガイド8の先端部には、このガイド8に沿って搬送されてきた電子部品1を把持して上方の第2物品搬送手段10を構成するインデックステーブル11に設けたチャック12に受渡す物品受渡し装置13を設けている。」(第3頁左上欄第19行〜右上欄第3行)

「上記第2物品搬送手段10のインデックステーブル11は鉛直面内で回転自在に軸支してあり、図示しないパルスモータによって円周方向に8等分の間隔で間欠的に回転駆動できるようにしている。このインデックステーブル11には円周方向に8等分の間隔で前述したチャック12を取付けてあり、上記物品受渡し装置13からの電子部品1を最下端に位置したチャック12で把持することができるようにしている。」(第4頁右下欄第4行〜第12行)

「さらに第1図において、上記インデックステーブル11の周囲には、インデックステーブル11の間欠停止位置に、上記チャック12によって保持され、かつリード線lb、lcを放射方向外方に突出させた電子部品1について各種の処理を施す処理部45〜47,50〜52を設けている。
上記物品受渡し装置13から電子部品1が受渡される受渡し部の次の処理部45はプレス部であって、このプレス部45では一対の平板状のプレス板によって上記リード線1b、1cを押圧することにより、・・・伸長させる・・・。
次のフオーミング部46では、一対のプレス板によって上記リード線lb、lcを押圧することにより・・・所定の形状に成形する・・・。
次の反転部47は、電子部品1の方向が逆の場合にそれを180度回転させて全ての電子部品1の方向を一定に揃える・・・。
次の切断部50は、リード線lb、lcの長さを所定長さで切断するものであり、さらに次の検査部51は電子部品1の良否を判定し、不良品を排出するものである。
さらに、上記検査部51の次にテーピング部52を設けている。第3図に示すように、このテーピング部52には台紙テープ57および貼着テープ58を鉛直上方から下方に向けて供給するようにしており、上記インデックステーブル11の回転によりその2枚のテープ57、58間に上記リード線lb、lcを挿入した後に台紙テープ57と貼着テープ58とを相互に貼着することにより、その2枚のテープ57、58で電子部品1のリード線lb、lcを所定間隔毎に保持することができるようにしている。」(第5頁右上欄第15行〜右下欄第20行)

「以上のように、本発明においては、インデックステーブルを鉛直面内において回転させるようにしてその周囲に複数の処理部を配設し、さらに物品搬送手段からの電子部品を物品受渡し装置で上方に搬送してそのインデックステーブルのチャックに受渡すようにしているので、従来装置に比較して、特に設置面積の小型化を図ることができるという効果が得られる。」(第7頁左下欄第18行〜右下欄第6行)

(3)甲第3号証
甲第3号証の特開昭62-150732号公報には、電子部品の特性検査を行なうオートハンドラーに関する発明が第1〜3図とともに開示され、さらに、以下の事項が記載されている。

「この実施例のオートハンドラは、第1図および第2図に示されるように、間欠的に回転する回転軸1に支持された回転テーブル2を有している。この回転テーブル2はその下面に8本のコレット3が取り付けられている。これらコレット3は、前記回転軸1と同心円となる円周上に定間隔に配設されている。また、これらコレット3は真空吸着によって被測定物である小型フラットパッケージIC4を保持するようになっている。前記回転テーブル2が間欠的に回転することから、前記コレット3の移動域に沿って、Aステーション〜Hステーションに及ぶ8つの作業ステーションが生じる。これら作業ステーションにあって、Aステーションはコレット3に小型フラットパッケージIC4を供給するローダステーションとなる。Cステーションは前記小型フラットパッケージIC4の電気特性を測定する測定ステーションとなり、・・・EステーションからHステーションは、前記測定情報に基づいて分類された小型フラットパッケージIC4をそれぞれ分類毎に選別収容するステーションであって、」(第2頁右下欄第3行〜第3頁左上欄第5行)

「前記小型フラットパッケージIC4を供給するローダステーションにはローディング装置11が配設されている。このローディング装置11は、回転制御されるターンテーブル12を有している。このターンテーブル12の上面には、スティックマガジン8を取り付ける円筒状の保持体13が設けられている。」(第3頁左下欄第18行〜右下欄第4行)

「ターンテーブル12の下方のローダ位置には突き上げ棒17が設けられている。この突き上げ棒17は、ローダ位置にあるスティックマガジン8内に上昇して侵入し、・・・小型フラットパッケージIC4を1ピッチ宛上昇させ、前記コレット3による小型フラットパッケージIC4の真空吸着が確実に行えるようになっている。」(4頁左上欄3〜11行)

「前記小型フラットパッケージIC4を収容するアンローダステーションとなるEステーション、Fステーション、Gステーション、Hステーションには、前記ローダステーションと同様な構造のアンローディング装置20が配設されている。・・・すなわち、アンローディング装置20は、ローディング装置11と同様に回転制御されるターンテーブル21を有している。このターンテーブル21上には、前記ローディング装置11と同様に・・・「保持体22が設けられている。・・・したがって、スティックマガジン8は、・・・垂直状態で保持体22に保持される。」(第4頁右上欄第10行〜右下欄第12行)

「小型フラットパッケージIC4を真空吸着保持したコレット3が測定ステーションに至ると(「至と」)は誤記。)、前記コレット3の下降によって小型フラットパッケージIC4のリード7を測定部5の図示しないソケットの測定端子に接触させる。これによって小型フラットパッケージIC4のAC,DC特性等が測定される。・・・
また、前記測定ステーションで特性測定が行われた小型フラットパッケージIC4を保持したコレット3は、前記制御部からの指示の基に、小型フラットパッケージIC4が不良品であると判断された場合には、不良品排除ステーションで真空保持状態を解除して、不良の小型フラットパッケージIC4をスティックマガジン8内に落下投入する。」(第5頁左上欄第7行〜右上欄第2行)

(4)甲第4号証
甲第4号証の特開昭57-1240号公報には、リード線を有しないチップ状電子部品を1個毎にプリント基板に装着するためのチップ状電子部品装着機に関する発明が第1〜7図とともに開示され、さらに、このチップ状電子部品装着機は、吸着ピン60を備えた移変えヘッド18によりチップ状電子部品20を保持した状態から、同じく吸着ピン44を備えた装着ヘッド15にこのチップ状電子部品20を移変えるものであって、装着ヘッド15は、間欠回転するターンテーブルであるインデックス円板40に設けられることが記載されている。

(5)甲第5号証
甲第5号証の特開昭63-119505号公報には、角板形電子部品の特性を検査し、良品のみを、一定間隔に穴を設けた出荷用テープに挿入する角板形電子部品テーピング装置に関する発明が第1〜8図とともに開示され、さらに、角板形電子部品13を円加速供給部17の真空吸着リング32に吸着して、角板形電子部品13に真空加速リング32の回転方向へ大きな搬送力を付与して検査ディスク18まで搬送し、、検査ディスク18の真空吸着ピン19に吸着されるものであることが記載されている。

(6)甲第6号証
甲第6号証の特開平59-184599号公報には、複数種類の電子部品を装着できる部品装着装置であって、所定位置に供給された電子部品をピックアップ用吸着ノズルユニットで拾い上げて保持爪ユニットで保持し、装着位置に搬送する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
この部品装着装置は、第1図に示すように、チップ状のICなどの電子部品を保持する保持爪ユニット211〜218を、同心円上に等間隔で配置した第1のインデックステーブル31と、吸着ノズルユニット411〜415を同心円上に等間隔で配置した第2のインデックステーブル51とが設けられ、また、部品供給装置11〜15から供給された電子部品E1〜E5を拾い上げ、インデックステーブル31の保持爪ユニット211〜218に保持させるピックアップ用吸着ノズルユニット121〜125が設けられ、さらに、上記保持爪ユニットは、吸着ノズルユニット121〜125で拾い上げた電子部品の前後左右の位置決めをして保持するものであること。

(7)甲第7号証
甲第7号証の特開昭62-97395号公報には、電子部品をプリント基板の所定位置の銅箔に取付ける電子部品の装着装置に関する発明が第1図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
この装着装置は、回転盤6に複数の吸着ノズル7〜10を設け、この吸着ノズルによって部品供給台5から電子部品を取り出し、回転盤6に近接して回転する基板テーブル11を配置し、この基板テーブル11上に載置したプリント基板23上に、前記吸着ノズルによって電子部品を搬送し、装着するものであること。

(8)甲第8号証
甲第8号証の特開昭63-77192号公報には、複数個の半導体装置を1組として回路基板に装着する方法に関する発明が第1〜7図とともに開示され、さらに、リードフレームに接着されたペレットを樹脂封止し、樹脂封止されたリードフレームを個々にカットして、カットされた各素子を測定し不良素子を除外して、素子のリード部分(第4、7図)、または素子全体(第6図)をテーピングする工程が記載されている。

(9)甲第9号証
甲第9号証の特開昭63-12418号公報には、選別捺印後の半導体装置の外部リード端子を一定の間隔にテーピングする方法に関する発明が開示されている。

[7]当審の判断
請求人は、本件特許発明の構成を、「(a)ペレットマウント、ワイヤボンディング及び樹脂封止作業を終了したリードフレームを供給するリードフレーム供給ユニット、(b)複数のターンテーブルを連続的に配置し、各ターンテーブルの周縁部等配位置に各作業工程に応じて半導体素子を吸着保持するようになしたハンドリング機構を複数設け、隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニット、及び(c)上記複数のターンテーブルにより搬送されて切断・リード成形・特性測定及び捺印工程等を経た半導体素子をテーピング梱包するテーピングユニット」に分けて、全体の構成である「(a)リードフレーム供給ユニット+(b)各種の処理を行う搬送ユニット+(c)テーピングユニット」の構成については、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであること、及び「(b)各種の処理を行う搬送ユニット」の構成については、甲第2、3号証に記載されているものである旨主張している。
そこで、本件特許発明の、上記[5]の構成要件(a)〜(d)について、甲第1〜3号証に記載されたものを対比して、以下検討する。

(1)本件特許発明の構成要件(a)について
本件特許発明の構成要件(a)は、「ペレットマウント、ワイヤボンディング及び樹脂封止作業を終了したリードフレームを供給するリードフレーム供給ユニット」である。

これに対し、甲第1号証に記載された電子装置の製造装置は、チップボンディング工程、ワイヤボンディング工程、樹脂モールド工程を経たリードフレームを搬送ユニットに担持させ、このリードフレームに担持された電子装置の樹脂モールド後の樹脂パッケージを、各種の処理を行なう工程へ供給するものである。
してみると、甲第1号証に記載された搬送ユニットは、本件特許発明の構成要件(a)の「ペレットマウント、ワイヤボンディング及び樹脂封止作業を終了したリードフレームを供給するリードフレーム供給ユニット」と一致し、相違はない。

(2)本件特許発明の構成要件(b)について
本件特許発明の構成要件(b)は、「複数のターンテーブルを連続的に配置し、各ターンテーブルの周縁部円周等配位置に各作業工程に応じて半導体素子を吸着保持するようになしたハンドリング機構を複数個設け、隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニット」である。

これに対し、甲第1号証に記載されたリードフレームを保持した搬送ユニット3は、搬送ベース7上を走行するものであり、またリードカット、リードベント後の各単位電子装置D(「半導体素子」に相当する。)を装着したソケットパレット50は、無端チェーン51上に保持されて移動するものであって、リードベント・リードカット工程とソケットパレットとの間で、チャック48(「ハンドリング機構」に相当する。)により単位電子装置を受渡しているものの、本件特許発明のように、複数のターンテーブルを連続的に配置し、隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡すものではないし、また、各ターンテーブルの周縁部円周等配位置に各作業工程に応じて設けたハンドリング機構により半導体素子を吸着保持するものでもない。
してみると、本件特許発明と甲第1号証に記載された発明とは、「ハンドリング機構により半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニット」の点で一致するものの、本件特許発明が、「複数のターンテーブルを連続的に配置し、各ターンテーブルの周縁部円周等配位置に各作業工程に応じて半導体素子を吸着保持するようになしたハンドリング機構を複数個設け、隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした」ものであるのに対し、甲第1号証に記載された搬送ユニットは、そのようなものではない点で相違する。

そこで、上記相違点について、以下検討する。
甲第2号証に記載された「テーピング装置」は、パーツフィーダから供給された電解コンデンサー等の電子部品を、物品整列装置3の回転テーブル4に設けたスリット5内に収容し、第1物品搬送手段7であるガイド8と物品受渡し装置13とを介して、インデックステーブル11に設けたチャック12に受渡すものであって、本件特許発明と同様に、回転テーブル(「ターンテーブル」に相当する。)とインデックステーブル(「ターンテーブル」に相当する。)とを連続的に配置し、インデックステーブルの周辺部等配位置に各作業工程に応じて電子部品を保持するようになしたチャック(「ハンドリング機構」に相当する。)を複数設け、回転テーブルとインデックステーブルとの間で、電子部品を受渡し可能としたものである。
これに対し、請求人は、甲第2号証のテーピング装置によりテーピングされる「電解コンデンサー等の電子部品」について、電解コンデンサーは電子部品の一例にすぎず、半導体素子も電子部品に含まれる旨主張している。たしかに、甲第2号証の「産業上の利用分野」に記載されているように、甲第2号証のテーピング装置は、電子部品のリード線を一対の台紙テープと貼着テープとの間に挿入して狭着するものであって、電子部品は電解コンデンサーに限定されるものではなく、長い脚状のリード線を有する半導体素子を含むものである。しかも、請求人が提出した甲第8号証に記載されているように、本件特許発明の「リードフレームから製造された半導体素子」のリード線をテーピングすることは公知の技術である。
してみると、甲第2号証の「電解コンデンサー等の電子部品」には、「リードフレームから製造された半導体素子」が含まれることは容易に類推できることである。
しかしながら、甲第2号証に記載された「回転テーブル」については、その外周部に設けたスリットに、パーツフィーダから供給される電子部品が「ある程度偶然的に」収容されるものであるから、本件特許発明のように、ターンテーブルに設けた複数のハンドリング機構により、各作業工程に応じて半導体素子を吸着保持するようにしたものではない。
さらに、甲第2号証に記載された回転テーブルとインデックステーブル間の「電子部品の受渡し」については、電子部品は、回転テーブルの回転に伴って物品搬送手段7にあるガイド8へ搬送され、次に、ガイド8から物品搬送手段7にある物品受渡し装置13へ搬送され、さらに物品受渡し装置13からインデックステーブルに設けたチャックへ搬送されるものであるから、回転テーブルとインデックステーブルとの間に物品搬送手段が介在している以上、回転テーブルとインデックステーブルとは隣接しているとはいえない。
そうすると、甲第2号証に記載された「テーピング装置」は、請求人が主張するように、半導体素子のハンドリング機構として、半導体素子を吸着保持するものが、甲4〜7号証に記載されているとおり周知慣用技術にすぎないとしても、本件特許発明のように、「各ターンテーブルにハンドリング機構を設け」たものではないし、また「隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能と」するものでもない。

一方、甲第3号証に記載された「スティックマガジン」は、ターンテーブル12、21に配設され、小型フラットパッケージIC(「半導体素子」に相当する。)を積み重ねて収容するものであって、スティックマガジン8それ自体では、回転テーブル2(「ターンテーブル」に相当する。)に設けた吸着コレット3(「ハンドリング機構」に相当する。)に対して、小型フラットパッケージICを受渡す操作をするものではないが、ターンテーブルの下方に位置する突き上げ棒17により、スティックマガジン8に収容された小型フラットパッケージICを1ピッチ宛上昇させて、吸着コレット3に受渡しているから、スティックマガジン8と突き上げ棒17とを組み合わせたもの(「ハンドリング機構」に相当する。)は、吸着コレットと合わせて、本件特許発明の「隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能と」する構成に相当する。
しかしながら、上記のとおり、半導体素子を吸着保持するハンドリング機構が周知慣用手段にすぎないとしても、上記スティックマガジンと突き上げ棒との組み合わせたものは、ターンテーブルの下方に位置する突き上げ棒により、スティックマガジンに収容された小型フラットパッケージICを1ピッチ宛上昇させ、吸着コレットに受渡すものであって、甲第3号証には、このスティックマガジンと突き上げ棒との組み合わせたものに替えて、小型フラットパッケージICを吸着保持して吸着コレットに受渡すようなハンドリング機構を、「ターンテーブルに設ける」ことについて示唆となるような記載は何も認められない。

してみると、甲第1号証の「ハンドリング機構により半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニット」において、搬送ユニットとして、甲第2号証の「複数のターンテーブルを連続的に配置」する構成を採用し、さらに半導体素子を受渡し可能なハンドリング機構として、甲第3号証の「半導体素子を吸着保持するようにした吸着コレット」を採用しても、本件特許発明の構成要件(b)における、「半導体素子を吸着保持するようになし、隣接する各ターンテーブルに複数設けたハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした」構成を容易に想到することはできない。
また、甲第1号証の「ハンドリング機構により半導体素子を受渡し可能とした搬送ユニット」において、搬送ユニットとして、甲第3号証の「隣接するターンテーブルのハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能と」するものであって、一方のターンテーブルのハンドリング機構が「半導体素子を吸着保持するようにした吸着コレット」である構成を採用しても、本件特許発明の構成要件(b)における、「半導体素子を吸着保持するようになし、隣接する各ターンテーブルに複数設けたハンドリング機構間で、半導体素子を受渡し可能とした」構成を容易に想到することはできない。

(3)本件特許発明の構成要件(c)について
本件特許発明の構成要件(c)は、「複数のターンテーブルにより搬送されて切断・リード成形・特性測定及び捺印工程等を経た半導体素子をテーピング梱包するテーピングユニット」である。

これに対し、請求人は、甲第2号証に記載された「回転テーブルとターンテーブル」は、本件特許発明の「複数のターンテーブル」に相当し、甲第2号証に記載された「フォーミング部でリード線の成形を行い、切断部ではリード線の長さを所定長さで切断し、検査部は電子部品の良否を判定する処理工程を経た電子部品」は、本件特許発明の「切断・リード成形・特性測定及び捺印工程等を経た半導体素子」に相当し、さらに、甲第2号証に記載された「電子部品のテーピング処理に際し、ターンテーブル機構を用いる装置」は、本件特許発明の「半導体素子をテーピング梱包するテーピングユニット」に相当する旨主張している。
たしかに、甲第2号証に記載された「インデックステーブル」は、チャックにより保持した電子部品を搬送しつつ、プレス部、フォーミング部、反転部、切断部、検査部、テーピング部の各工程を経てテーピング梱包するものであるから、甲第2号証の回転テーブルと、チャックにより保持した電子部品を搬送しつつ、各種処理工程を経てテーピング梱包するインデックステーブルとの組み合わせは、本件特許発明の構成要件(c)である、「複数のターンテーブルにより搬送されて切断・リード成形・特性測定及び捺印工程等を経た半導体素子をテーピング梱包するテーピングユニット」と一致し、相違はない。

(4)本件特許発明の構成要件(d)について
本件特許発明の構成要件(d)は、「からなることを特徴とする半導体素子の複合処理装置。」である。

これに対し、甲第1号証には、「この発明は、・・・リードフレーム上に把持された各電子装置の樹脂パッケージに標印する標印工程から、リードカット、ダムバー、カット工程を経て、各単体となった電子装置の測定工程までをライン化し、これら工程間のトラブルを低減するとともに、製造効率を飛躍的に高めた装置に関する。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄2行)と記載されているように、供給されたリードフレームを搬送しながら各種の処理を行う電子装置の製造装置が記載されているから、甲第1号証に記載された電子装置の製造装置は、本件特許発明の構成要件である「半導体素子の複合処理装置」と一致し、相違はない。

(5)本件特許発明の効果について
そして、本件特許発明は、常に半導体素子を個々に吸着保持された状態で受け渡し及びハンドリングするから、従来のようなバラ収納やバラ供給を省略することができ、製品の品質の高信頼性を確保することができるという、明細書に記載された顕著な効果を奏するものである。

(6)まとめ
したがって、本件特許発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

[8]むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明に係る特許を無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり決定する。
 
審理終結日 2002-06-17 
結審通知日 2002-06-20 
審決日 2002-07-04 
出願番号 特願平1-166371
審決分類 P 1 112・ 121- Y (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川真田 秀男  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
市川 裕司
登録日 1997-06-27 
登録番号 特許第2667712号(P2667712)
発明の名称 半導体素子の複合処理装置  
代理人 大熊 考一  
代理人 杉浦 幸彦  
代理人 鈴木 秀彦  
代理人 木内 光春  
代理人 鈴木 秀雄  

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