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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1097787
審判番号 不服2002-21546  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-11-07 
確定日 2004-06-10 
事件の表示 平成 7年特許願第150411号「光ヘッド装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 1月10日出願公開、特開平 9- 7201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯の概要

本願は、平成7年6月16日の出願であって、平成14年4月19日付け拒絶理由通知に対して、平成14年6月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成14年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年11月7日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、平成14年11月28日に明細書について手続補正書が提出されたものである。

2.平成14年11月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成14年11月28日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
(1)本件手続補正の概要
本件手続補正は、明細書全文にわたってするものであるが、特に、以下の内容を含むものである。
1)特許請求の範囲について
「【請求項1】 レーザ光源から出射されるレーザビームを少なくとも3つのレーザビームに分割させる分割素子と該3つのレーザビームを対物レンズまで導き、上記3つのレーザビームを該対物レンズにより3つの集光スポットとして情報記録媒体上に集光照射させ、該情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームを光検知器にて検出することによって光学的に情報の記録もしくは再生を行い、上記情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームのうちの少なくとも2つのレーザビームから上記情報記録媒体の情報トラックを追従するためのトラッキングエラー信号を検出する光ヘッド装置において、
上記情報記録媒体は、基板厚みの異なる情報記録媒体を含み、
上記基板厚みの異なる情報記録媒体に応じた収差特性を有する複数の対物レンズを備え、記録もしくは再生を行おうとする情報記録媒体の種類に応じて前記複数の対物レンズのうちの1つが選択されて前記光路系に配置されるとともに、
上記3つの集光スポットは、上記3つのレーザビームのうち中央のレーザビームを上記情報記録媒体の情報ピットの中央部に中央の集光スポットとして形成し、両端のレーザビームを当該中央の集光スポットに対して互いに反対方向に変位するように両端の集光スポットとして形成するものであり、上記情報記録媒体へ記録もしくは再生するために選択された対物レンズによって形成される上記3つの集光スポットのスポット間隔と、上記両端の集光スポットの変位量とが比例関係にあり、
上記基板厚みの異なる情報記録媒体のうち、第1の基板厚みを有する情報記録媒体に対しては3ビーム法によるトラッキングエラー検出方式が用いられ、当該第1の基板厚みを有する情報記録媒体以外のものに対しては差動プッシュプル法によるトラッキングエラー検出方式が用いられることを特徴とする光ヘッド装置。」
2)発明の詳細な説明について
「【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る光ヘッド装置は、レーザ光源から出射されるレーザビームを少なくとも3つのレーザビームに分割させる分割素子と該3つのレーザビームを対物レンズまで導き、上記3つのレーザビームを該対物レンズにより3つの集光スポットとして情報記録媒体上に集光照射させ、該情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームを光検知器にて検出することによって光学的に情報の記録もしくは再生を行い、上記情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームのうちの少なくとも2つのレーザビームから上記情報記録媒体の情報トラックを追従するためのトラッキングエラー信号を検出する光ヘッド装置において、上記情報記録媒体は、基板厚みの異なる情報記録媒体を含み、上記基板厚みの異なる情報記録媒体に応じた収差特性を有する複数の対物レンズを備え、記録もしくは再生を行おうとする情報記録媒体の種類に応じて前記複数の対物レンズのうちの1つが選択されて前記光路系に配置されるとともに、上記3つの集光スポットは、上記3つのレーザビームのうち中央のレーザビームを上記情報記録媒体の情報ピットの中央部に中央の集光スポットとして形成し、両端のレーザビームを当該中央の集光スポットに対して互いに反対方向に変位するように両端の集光スポットとして形成するものであり、上記情報記録媒体へ記録もしくは再生するために選択された対物レンズによって形成される上記3つの集光スポットのスポット間隔と、上記両端の集光スポットの変位量とが比例関係にあり、上記基板厚みの異なる情報記録媒体のうち、第1の基板厚みを有する情報記録媒体に対しては3ビーム法によるトラッキングエラー検出方式が用いられ、当該第1の基板厚みを有する情報記録媒体以外のものに対しては差動プッシュプル法によるトラッキングエラー検出方式が用いられることを特徴とする。」
「【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明の請求項1記載の光ヘッド装置によれば、レーザ光源から出射されるレーザビームを少なくとも3つのレーザビームに分割させる分割素子と該3つのレーザビームを対物レンズまで導き、該対物レンズにより上記3つのレーザビームを3つの集光スポットとして情報記録媒体上に集光照射させ、該情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームを光検知器にて検出することによって光学的に情報の記録もしくは再生を行い、上記情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームのうちの少なくとも2つのレーザビームから上記情報記録媒体の情報トラックを追従するためのトラッキングエラー信号を検出する光ヘッド装置において、基板厚みの異なる情報記録媒体に応じた収差特性を有する複数の対物レンズを備え、記録もしくは再生を行おうとする情報記録媒体の種類に応じて前記複数の対物レンズのうちの1つが選択されて前記光路系に配置されるとともに、上記情報記録媒体へ記録もしくは再生するために選択された対物レンズによって形成される上記3つの集光スポットのスポット間隔と、上記両端の集光スポットの変位量とが比例関係にあり、上記基板厚みの異なる情報記録媒体のうち、第1の基板厚みを有する情報記録媒体に対しては3ビーム法によるトラッキングエラー検出方式が用いられ、当該第1の基板厚みを有する情報記録媒体以外のものに対しては差動プッシュプル法によるトラッキングエラー検出方式が用いられるようにしたので、光源からのレーザビームを有効に情報記録媒体に照射することができる。また、各対物レンズから出射された3つのビームの集光スポットの間隔が適用される情報記録媒体の基板厚みに対して好適な条件となるので、トラック追従の信頼性が向上するという効果がある。
また、本発明の請求項1記載の光ヘッド装置によれば、複数の対物レンズにおいて、適用される情報記録媒体の基板厚みを異ならすようにしたので、基板厚みが異なる異種の情報記録媒体への記録または再生が行えるという効果がある。」

(2)補正内容の検討
上記〔理由〕(1)の1)及び2)に摘記した補正箇所には、共通して、概略「上記基板厚みの異なる情報記録媒体のうち、第1の基板厚みを有する情報記録媒体に対しては3ビーム法によるトラッキングエラー検出方式が用いられ、当該第1の基板厚みを有する情報記録媒体以外のものに対しては差動プッシュプル法によるトラッキングエラー検出方式が用いられる」とする点が加入されたものである。
上記の点は、本願出願当初の明細書にはない記載である。
これについて、審判請求人は、請求の理由(平成14年11月28日補正)の「補正の根拠」の欄において、
「本手続補正書(方式)と同日付で提出いたしました手続補正書における補正は、出願当初の明細書における下記の記載に基くものであり、新規事項を追加するものではありません。
1)請求項1の補正事項については、出願当初の明細書の段落[0025]の「各対物レンズから出射された3つのビームの集光スポットの間隔が適用される情報記録媒体のトラックピッチに対して好適な条件となるので、トラック追従の信頼性が向上する。」との記載、段落[0042]の「トラックピッチのみならず基板の厚みが異なる情報記録媒体に対して記録や再生を行うことが可能となる。」との記載、段落[0023]及び段落[0024]の記載から、「3ビーム法及び差動プッシュプル法のいずれのトラッキングエラー検出方式を用いたとしても、集光スポットの間隔が適用される情報記録媒体の基板厚みに対して好適な条件となる」ことが記載されていることが明らかです。更に、段落[0022]の「複数の対物レンズに対応するトラッキング検出光学系を共通であるようにしたものである。」との記載、及び出願当初の明細書の段落[0038][0039][0046][0047]から、3ビーム法と差動プッシュプル法とは、光学系については共通であるが、電気的検出法が異なることが記載されているといえます。従って、上記段落[0025]及び[0042]の「情報記録媒体の基板厚みに対して好適な条件となる」ように、トラッキングエラー検出方式を使いわけることは記載されているに等しいものです。
2)発明の詳細な説明における補正事項は、上記補正後の特許請求の範囲の記載に対応するように、明瞭でない記載の釈明を目的として補正するものであります。」
と、主張しているので、この点について検討を加える。
まず、段落[0025]の記載は、「3つのビームの集光スポットの間隔」について述べられているが、検出方式については特に言及がない。段落[0042]の記載についても、請求人が引用した箇所の直前に「適用される情報記録媒体の厚みに対して収差特性が満足された対物レンズを搭載し対物レンズを切替えることによって、」と記載されており、トラッキングエラー検出方式との関係は示されていない。
段落[0023]は請求項10に係る光ヘッド装置がトラッキング制御方式を3ビーム法とすることが記載されており、段落[0024]は請求項11に係る光ヘッド装置がトラッキング制御方式を差動プッシュプル法とすることが記載されているものである。すなわち、異なるトラッキング制御方式を備える光ヘッド装置が請求項10と請求項11のそれぞれにおいて、別々に記載されているだけであって、「第1の基板厚みを有する情報記録媒体に対しては3ビーム法によるトラッキングエラー検出方式が用いられ、当該第1の基板厚みを有する情報記録媒体以外のものに対しては差動プッシュプル法によるトラッキングエラー検出方式が用いられる」
ことが導き出されるものではない。
また、段落[0038][0039][0046][0047]を指摘して、「3ビーム法と差動プッシュプル法とは、光学系については共通であるが、電気的検出法が異なることが記載されている」としているが、3ビーム法では、メインビームの両側のサブビームはトラックピッチの4分の1変位するのに対して、差動プッシュプルでは2分の1の変位とすべきことがこの分野の常識であり、本願明細書にもそのように記載されており、トラックピッチとの関係でいえば光学系を必ずしも共通であるとすることができない。
段落[0038][0039]と、段落[0046][0047]とはいずれもトラックピッチがp1の媒体を想定しており、明らかに別々の光ヘッド装置の実施例を記載したものと解される。むしろ、段落[0038][0039]に直後の段落〔0040〕を併せて読むと、トラックピッチがp1の記録媒体と、p1より大きなトラックピッチp2の記録媒体とを、共通して3ビーム法によりトラッキング制御することが記載されており、同様に段落[0046][0047]に直後の段落〔0048〕を併せて読むと、トラックピッチがp1の記録媒体と、p1より大きなトラックピッチp2の記録媒体とを、共通して差動プッシュプル法によりトラッキング制御することが記載されていると解するのが相当である。それゆえ、段落〔0022〕に記載されるように、複数の対物レンズに対して検出光学系が共通に使えるものであると解すべきである。請求人が主張するように、「3ビーム法及び差動プッシュプル法のいずれのトラッキングエラー検出方式を用いたとしても、集光スポットの間隔が適用される情報記録媒体の基板厚みに対して好適な条件となる」ことが記載されているに等しいとしても、それは、あくまで、用いられるそれぞれの検出方式において、基板厚みに対して好適な条件とすることが記載されているにとどまり、情報記録媒体の基板厚みに対して検出方式を切り換えることまでが明細書又は図面に記載されているとすることも、明細書および図面の記載から自明な事項であるとすることもできない。
なお、「第1の基板厚みを有する情報記録媒体に対しては3ビーム法によるトラッキングエラー検出方式が用いられ、当該第1の基板厚みを有する情報記録媒体以外のものに対しては差動プッシュプル法によるトラッキングエラー検出方式が用いられる」ためには、トラッキング制御方式の切換を示唆する記載があるべきところ、本願明細書および図面にはそのような記載も存在しない。

以上の検討を総合すると、結局、本件手続補正は、本願の当初明細書または図面に記載した事項の範囲内においてしたものとすることができない。

(3)本件手続補正についての結び
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年11月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至6に係る発明は、平成14年6月20日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明は以下のとおりである(以下、「本願発明」という)。
「 【請求項1】 レーザ光源から出射されるレーザビームを少なくとも3つのレーザビームに分割させる分割素子と該3つのレーザビームを対物レンズまで導き、上記3つのレーザビームを該対物レンズにより3つの集光スポットとして情報記録媒体上に集光照射させ、該情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームを光検知器にて検出することによって光学的に情報の記録もしくは再生を行い、上記情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームのうちの少なくとも2つのレーザビームから上記情報記録媒体の情報トラックを追従するためのトラッキングエラー信号を検出する光ヘッド装置において、
上記情報記録媒体は、基板厚みの異なる情報記録媒体を含み、
上記基板厚みの異なる情報記録媒体に応じた収差特性を有する複数の対物レンズを備え、記録もしくは再生を行おうとする情報記録媒体の種類に応じて前記複数の対物レンズのうちの1つが選択されて前記光路系に配置されるとともに、
上記3つの集光スポットは、上記3つのレーザビームのうち中央のレーザビームを上記情報記録媒体の情報ピットの中央部に中央の集光スポットとして形成し、両端のレーザビームを当該中央の集光スポットに対して互いに反対方向に変位するように両端の集光スポットとして形成するものであり、上記情報記録媒体へ記録もしくは再生するために選択された対物レンズによって形成される上記3つの集光スポットのスポット間隔と、上記両端の集光スポットの変位量とが比例関係あることを特徴とする光ヘッド装置。」

(2)引用例
原査定で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-242833号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(a)
「[実施例]
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明の一実施例である光スポット位置決め制御装置を含む光ディスク装置部分の具体的構成が、第1図に概略構成図により示されている。
同図において、レーザ光源1は、レーザ光を発生する。
ハーフミラー7は、光源1からのレーザ光光路に配置されており、光源1側からの光を透過し、光ディスク50側からの光を反射する。
コリメータレンズ3は、ハーフミラー7とディスク50との間に配置されており、ハーフミラー7を透透した光を平行光線とする。
対物レンズ4は、レンズ3とディスク50との間に配置されており、レンズ3からの平行光線をディスク50上に結像する。
ディスク50のトラック上には、情報記録再生用の第1光スポットAがディスク50のトラック上に形成される。
情報検出用の光検出器8は、光スポットAで反射し再びレンズ4、3を通過してハーフミラー7で反射した光を検出する。光検出器8からの出力はアンプ11を経て図示しない信号再生回路へと導かれ、ディスク50のトラックに記録された情報が再生される。
ここで、本発明の一実施例である光スポット位置決め制御装置は、分光手段の一例としての回折格子2と、結像手段の一例としての対物レンズ4及び5と、調整手段の一部及び移動手段を構成するアクチュエーク14とを備えている。
回折格子2は、光源1とハーフミラー7との間に配置されている。回折格子2は、分光された光がハーフミラー7及びレンズ3を介して、レンズ4により結像された際に、光スポットAのディスク50のトラックに沿った前後において光スポットAの中心を通りディスク50のトラックに平行な線分から両側に等距離だけずれた第2光スポットの対B1、B2を光ディスク50上に形成するように光源1からの光を分光する。
レンズ4は、コリメータレンズ3とディスク50との間の光路に配置されている。焦点距離f1のレンズ4及び焦点距離f2のレンズ5は、アクチュエータ14により移動されて交換可能とされており、第1図においてレンズ4のある位置にレンズ5を移動するこ丈ができる。このように、レンズ4及び5は光路に移動された際には、レンズ3からの平行光線を光スポットA、B1、B2として結像する。」
(4頁右上欄第12行〜同頁右下欄第18行)
(b)
「本実施例は更に、アクチュエータ14と共に調整手段を構成する位置ずれ検出用の光検出器9及び10、差動アンプ12、並びにサーボ回路13を備えている。
光検出器9及び10は、光検出器8に隣接して配置されている。光検出器9及び10は夫々、光スポットB1及びB2からの反射光量をレンズ4及び3、並びにハーフミラー7を介して検出する。
差動アンプ12は、光検出器9及び10からの反射光量出力を差動出力Sdとする。サーボ回路13は、この出力Sdを0にするためのレンズ4の移動量を指示する信号Sをアクチュエータ14に出力する。
アクチュエータ14は、信号Sに応じてレンズ4をディスク50のトラックと直角な方向に位置調整する。」
(5頁左上欄第1行〜第15行)
(c)
「第1図において、レーザ光源1から出たレーザ光は、回折格子2、ハーフミラー7、レンズ3及びレンズ4を通り、ディスク50の表面に光スポットA及び光スポットの対B1、B2となって結像する。
本実施例において回折格子2、レンズ4及び5は特に、ディスク50上において、第2図に示すような光スポットA、B1、B2の相対位置関係が得られるように構成されている。
即ち、第2図(a)に示すように、レンズ4により回折格子2からの光が結像される場合には、光スポットB1、B2が幅H1、トラックピッチTの情報トラック51に対応するために、光スポットAのトラック51に沿った前後において、光スポットB1の中心及び光スポットB2の中心が、光スポットAの中心を通りトラック51に平行な線分から両側に等距離T-0.5*H1だけ夫々ずれるように回折格子2、レンズ4は投定されている。 ここでは、従って光スポットAが位置するトラック51に隣接するトラック52及び53の縁に、光スポットB2の中心及び光スポットB1の中心が夫々位置するように回折格子2及びレンズ4は設定されている。
また、第2図(b)に示すように、レンズ5により回折格子2からの光が結像される構合には、光スポットB1、B2が幅H1よりも広い幅H2の情報トラック61に対応するために、光スポットAのトラック61に沿った前後において、光スポットB1の中心及びB2の中心が、光スポットAの中心を通りトラック61に平行な線分から両側に等距離T-0.5*H2だけ夫々ずれるように回折格子2、レンズ5は設定されている。ここでは、従って光スポットAが位置するトラック61に隣接するトラック62及び63の縁に、光スポットB2の中心及び光スポットB1の中心が夫々位置するように回折格子2及びレンズ5は設定されている。」
(5頁左上欄第18行〜同頁左下欄第13行)
(d)
「因みに、焦点距離f1のレンズ4によるディスク50上での光スポットAとB1(B2)との距離L1及び焦点距離f2のレンズ5によるディスク50上での光スポットAとB1(B2)との距離L2は夫々、回折格子2の格子ピッチをP、コリメータレンズ3の焦点距離をfc、レーザ光源1と回折格子2との距離をd、レーザ光の波長をλとすると、
L1 = (f1/fc)・(λ・d/P)
L2 = (f2/fc)・(λ・d/P)
となる。
従って、本実施例では、トラックピッチをTとすると、L1とL2との比が、(T-0,5*H1)と(T-0.5*H2)との比に等しくなるようにレンズ4及び5の焦点距離f1及びf2を選定すれば良い。」
(6頁左上欄第9行〜同頁右上欄第9行)
(e)
「3・・・・・・コリメータレンズ、4、5・・・・・・対物レンズ」
(9頁右上欄第7行〜第8行)

上記記載事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例には、結局、次の発明が記載されている。
「レーザ光源1は、レーザ光を発生し、ハーフミラー7は、光源1からのレーザ光光路に配置されており、光源1側からの光を透過し、光ディスク50側からの光を反射し、コリメータレンズ3は、ハーフミラー7とディスク50との間に配置されており、ハーフミラー7を透透した光を平行光線とし、対物レンズ4は、コリメータレンズ3とディスク50との間に配置されており、コリメータレンズ3からの平行光線をディスク50上に結像し、ディスク50のトラック上には、情報記録再生用の第1光スポットAがディスク50のトラック上に形成され、情報検出用の光検出器8は、光スポットAで反射し再び対物レンズ4、コリメータレンズ3を通過してハーフミラー7で反射した光を検出し、光検出器8からの出力はアンプ11を経て図示しない信号再生回路へと導かれ、ディスク50のトラックに記録された情報が再生され、光スポット位置決め制御装置は、分光手段の一例としての回折格子2と、結像手段の一例としての対物レンズ4及び5と、調整手段の一部及び移動手段を構成するアクチュエーク14とを備え、回折格子2は、光源1とハーフミラー7との間に配置され、回折格子2は、分光された光がハーフミラー7及びコリメータレンズ3を介して、対物レンズ4により結像された際に、光スポットAのディスク50のトラックに沿った前後において光スポットAの中心を通りディスク50のトラックに平行な線分から両側に等距離だけずれた第2光スポットの対B1、B2を光ディスク50上に形成するように光源1からの光を分光し、対物レンズ4は、コリメータレンズ3とディスク50との間の光路に配置され、焦点距離f1の対物レンズ4及び焦点距離f2の対物レンズ5は、アクチュエータ14により移動されて交換可能とされており、第1図において対物レンズ4のある位置に対物レンズ5を移動することができ、対物レンズ4及び5は光路に移動された際には、コリメータレンズ3からの平行光線を光スポットA、B1、B2として結像し、
アクチュエータ14と共に調整手段を構成する位置ずれ検出用の光検出器9及び10、差動アンプ12、並びにサーボ回路13を備え、光検出器9及び10は、光検出器8に隣接して配置され、光検出器9及び10は夫々、光スポットB1及びB2からの反射光量を対物レンズ4及びコリメータレンズ3、並びにハーフミラー7を介して検出し、
差動アンプ12は、光検出器9及び10からの反射光量出力を差動出力Sdとし、サーボ回路13は、この出力Sdを0にするための対物レンズ4の移動量を指示する信号Sをアクチュエータ14に出力し、アクチュエータ14は、信号Sに応じて対物レンズ4をディスク50のトラックと直角な方向に位置調整し、
レーザ光源1から出たレーザ光は、回折格子2、ハーフミラー7、コリメータレンズ3及び対物レンズ4を通り、ディスク50の表面に光スポットA及び光スポットの対B1、B2となって結像し、回折格子2、対物レンズ4及び5は特に、ディスク50上において、第2図に示すような光スポットA、B1、B2の相対位置関係が得られるように構成され、
第2図(a)に示すように、対物レンズ4により回折格子2からの光が結像される場合には、光スポットB1、B2が幅H1、トラックピッチTの情報トラック51に対応するために、光スポットAのトラック51に沿った前後において、光スポットB1の中心及び光スポットB2の中心が、光スポットAの中心を通りトラック51に平行な線分から両側に等距離T-0.5*H1だけ夫々ずれるように回折格子2、対物レンズ4は投定され、従って光スポットAが位置するトラック51に隣接するトラック52及び53の縁に、光スポットB2の中心及び光スポットB1の中心が夫々位置するように回折格子2及び対物レンズ4は設定され、
第2図(b)に示すように、対物レンズ5により回折格子2からの光が結像される構合には、光スポットB1、B2が幅H1よりも広い幅H2の情報トラック61に対応するために、光スポットAのトラック61に沿った前後において、光スポットB1の中心及びB2の中心が、光スポットAの中心を通りトラック61に平行な線分から両側に等距離T-0.5*H2だけ夫々ずれるように回折格子2、対物レンズ5は設定され、従って光スポットAが位置するトラック61に隣接するトラック62及び63の縁に、光スポットB2の中心及び光スポットB1の中心が夫々位置するように回折格子2及び対物レンズ5は設定され、
焦点距離f1の対物レンズ4によるディスク50上での光スポットAとB1(B2)との距離L1及び焦点距離f2の対物レンズ5によるディスク50上での光スポットAとB1(B2)との距離L2は夫々、回折格子2の格子ピッチをP、コリメータレンズ3の焦点距離をfc、レーザ光源1と回折格子2との距離をd、レーザ光の波長をλとすると、
L1 = (f1/fc)・(λ・d/P)
L2 = (f2/fc)・(λ・d/P)
従って、トラックピッチをTとすると、L1とL2との比が、(T-0,5*H1)と(T-0.5*H2)との比に等しくなるように対物レンズ4及び5の焦点距離f1及びf2を選定された
光スポット位置決め制御装置を含む光ディスク装置」

(3)対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比する。
引用例に記載された発明における「レーザ光源1」および「レーザ光」は、それぞれ本願発明における「レーザ光源」および「レーザビーム」に相当する。
引用例に記載された発明における「回折格子2」は、分光手段として用いられ、分光された光が光ディスク上でスポットA、B1、B2となるようにレーザ光を分光するものであるから、本願発明における「分割素子」に相当する。
引用例に記載された発明において、「対物レンズ4は、コリメータレンズ3とディスク50との間に配置されており、コリメータレンズ3からの平行光線をディスク50上に結像」すること、及び「分光された光がハーフミラー7及びコリメータレンズ3を介して、対物レンズ4により結像された際に、光スポットAのディスク50のトラックに沿った前後において光スポットAの中心を通りディスク50のトラックに平行な線分から両側に等距離だけずれた第2光スポットの対B1、B2を光ディスク50上に形成する」こと は、本願発明において「該3つのレーザビームを対物レンズまで導き、上記3つのレーザビームを該対物レンズにより3つの集光スポットとして情報記録媒体上に集光照射させ」ることに相当する。
引用例に記載された発明における「ディスク50のトラック上には、情報記録再生用の第1光スポットAがディスク50のトラック上に形成され、情報検出用の光検出器8は、光スポットAで反射し再び対物レンズ4、3を通過してハーフミラー7で反射した光を検出し、光検出器8からの出力はアンプ11を経て図示しない信号再生回路へと導かれ、ディスク50のトラックに記録された情報が再生され」ること、及び「光検出器9及び10は、光検出器8に隣接して配置され、光検出器9及び10は夫々、光スポットB1及びB2からの反射光量を対物レンズ4及び3、並びにハーフミラー7を介して検出し、差動アンプ12は、光検出器9及び10からの反射光量出力を差動出力Sdと」することは、本願発明において「該情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームを光検知器にて検出することによって光学的に情報の記録もしくは再生を行い、上記情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームのうちの少なくとも2つのレーザビームから上記情報記録媒体の情報トラックを追従するためのトラッキングエラー信号を検出する」ことに相当する。
引用例に記載された発明における「光ディスク装置」は、本願発明における「光ヘッド装置」に相当する。
引用例に記載された発明において、「幅H1、トラックピッチTの情報トラック51」及び「幅H1よりも広い幅H2の情報トラック61」は、本願発明において「異なる情報記録媒体」に当たる場合が含まれることは明らかであり、したがって、引用例に記載された発明において、「対物レンズ4により回折格子2からの光が結像される場合には、光スポットB1、B2が幅H1、トラックピッチTの情報トラック51に対応する」、「対物レンズ5により回折格子2からの光が結像される構合には、光スポットB1、B2が幅H1よりも広い幅H2の情報トラック61に対応する」及び「焦点距離f1の対物レンズ4及び焦点距離f2の対物レンズ5は、アクチュエータ14により移動されて交換可能」とされることは、本願発明において「異なる情報記録媒体に応じた複数の対物レンズを備え、記録もしくは再生を行おうとする情報記録媒体の種類に応じて前記複数の対物レンズのうちの1つが選択されて前記光路系に配置される」ことに相当する。
引用例に記載された発明において、「ディスク50のトラック上には、情報記録再生用の第1光スポットAがディスク50のトラック上に形成され」、「光スポットAのディスク50のトラックに沿った前後において光スポットAの中心を通りディスク50のトラックに平行な線分から両側に等距離だけずれた第2光スポットの対B1、B2を光ディスク50上に形成する」とされることは、本願発明において「上記3つの集光スポットは、上記3つのレーザビームのうち中央のレーザビームを上記情報記録媒体の情報ピットの中央部に中央の集光スポットとして形成し、両端のレーザビームを当該中央の集光スポットに対して互いに反対方向に変位するように両端の集光スポットとして形成するもので」あることに相当する。
引用例に記載された発明においては「対物レンズ4により回折格子2からの光が結像される場合には、光スポットB1、B2が幅H1、トラックピッチTの情報トラック51に対応するために、光スポットAのトラック51に沿った前後において、光スポットB1の中心及び光スポットB2の中心が、光スポットAの中心を通りトラック51に平行な線分から両側に等距離T-0.5*H1だけ夫々ずれるように回折格子2、対物レンズ4は設定され」ていること、及び「対物レンズ5により回折格子2からの光が結像される構合には、光スポットB1、B2が幅H1よりも広い幅H2の情報トラック61に対応するために、光スポットAのトラック61に沿った前後において、光スポットB1の中心及びB2の中心が、光スポットAの中心を通りトラック61に平行な線分から両側に等距離T-0.5*H2だけ夫々ずれるように回折格子2、対物レンズ5は設定され」ていることから、引用例に記載された発明における(T-0,5*H1)と(T-0.5*H2)とは、いずれも本願発明の「両端の集光スポットの変位量」に相当するから、引用例に記載された発明において、
「焦点距離f1の対物レンズ4によるディスク50上での光スポットAとB1(B2)との距離L1及び焦点距離f2の対物レンズ5によるディスク50上での光スポットAとB1(B2)との距離L2は夫々、回折格子2の格子ピッチをP、コリメータレンズ3の焦点距離をfc、レーザ光源1と回折格子2との距離をd、レーザ光の波長をλとすると、
L1 = (f1/fc)・(λ・d/P)
L2 = (f2/fc)・(λ・d/P)
従って、トラックピッチをTとすると、L1とL2との比が、(T-0.5*H1)と(T-0.5*H2)との比に等しくなるように対物レンズ4及び5の焦点距離f1及びf2を選定され」ていることは、本願発明において、「上記情報記録媒体へ記録もしくは再生するために選択された対物レンズによって形成される上記3つの集光スポットのスポット間隔と、上記両端の集光スポットの変位量とが比例関係ある」ことに相当する。

そうすると、本願発明と引用例に記載された発明とは次の点で一致する。
<一致点>
「レーザ光源から出射されるレーザビームを少なくとも3つのレーザビームに分割させる分割素子と該3つのレーザビームを対物レンズまで導き、上記3つのレーザビームを該対物レンズにより3つの集光スポットとして情報記録媒体上に集光照射させ、該情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームを光検知器にて検出することによって光学的に情報の記録もしくは再生を行い、上記情報記録媒体で反射した上記3つのレーザビームのうちの少なくとも2つのレーザビームから上記情報記録媒体の情報トラックを追従するためのトラッキングエラー信号を検出する光ヘッド装置において、
上記情報記録媒体は、異なる情報記録媒体を含み、
上記異なる情報記録媒体に応じた複数の対物レンズを備え、記録もしくは再生を行おうとする情報記録媒体の種類に応じて前記複数の対物レンズのうちの1つが選択されて前記光路系に配置されるとともに、
上記3つの集光スポットは、上記3つのレーザビームのうち中央のレーザビームを上記情報記録媒体の情報ピットの中央部に中央の集光スポットとして形成し、両端のレーザビームを当該中央の集光スポットに対して互いに反対方向に変位するように両端の集光スポットとして形成するものであり、上記情報記録媒体へ記録もしくは再生するために選択された対物レンズによって形成される上記3つの集光スポットのスポット間隔と、上記両端の集光スポットの変位量とが比例関係あることを特徴とする光ヘッド装置。」

一方、次の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)
異なる情報記録媒体に関し、本願発明では「基板厚み」が異なるものであるのに対し、引用例に記載された発明では基板厚みについては言及がない点。
(相違点2)
本願発明では、異なる情報記録媒体に応じた複数の対物レンズが、情報記録媒体に応じた「収差特性を有する」のに対し、引用例に記載された発明では、対物レンズの収差特性については特に言及がない点。

(4)判断
(相違点1について)
光ヘッド装置において、基板厚みの異なる情報記録媒体を記録再生するものは、本願出願当時既に周知事項である。必要なら、例えば、以下の周知例を参照されたい。
周知例1.特開平6-333255号公報
周知例2.特開平7-37259号公報
(上記周知例1及び2は、原査定において示されたものである)
周知例3.特開平5-54406号公報
周知例4.特開平7-65409号公報
したがって、引用例に記載された発明の光ヘッド装置を基板厚みの異なる情報記録媒体に適用する程度のことは、当業者が容易に想到しうるものである。
(相違点2について)
光ヘッド装置において、基板厚みの異なる情報記録媒体を記録再生する場合に、基板に厚みに基づく収差特性を考慮して、対物レンズの収差を補正することも本願出願当時既に周知事項にすぎない。上記周知例3及び4にはいずれも収差特性を厚みの異なる基板に適合するものとしている。したがって、引用例に記載された発明において基板厚みの異なる情報記録媒体を使用する際に、対物レンズの収差特性を当該基板厚みの異なる情報記録媒体に応じたものとすることは当業者が容易に想到しうるものである。

以上の検討を総合すると、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本願発明についてのむすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-03-23 
結審通知日 2004-03-30 
審決日 2004-04-26 
出願番号 特願平7-150411
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 561- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 潤  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 相馬 多美子
片岡 栄一
発明の名称 光ヘッド装置  
代理人 高瀬 彌平  
代理人 宮田 金雄  
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