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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1097918 |
異議申立番号 | 異議2003-71787 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-06-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-09 |
確定日 | 2004-02-27 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3372046号「メタライジング製品用ポリカーボネート成形材料」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3372046号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
(1)手続の経緯 本件特許第3372046号は、平成3年12月6日に出願され、平成14年11月22日にその特許の設定登録がなされ、その後、三菱瓦斯化学株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、それに対し特許異議意見書とともに、その指定期間内である平成15年12月19日に訂正請求書が提出されたものである。 (2)訂正の適否についての判断 ア、訂正の内容 訂正事項a:明細書の特許請求の範囲の訂正 請求項1を、 「【請求項1】ポリカーボネートの有機溶媒溶液から非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて得られるポリカーボネートであって、該ポリカーボネート中に非溶媒及び/又は貧溶媒が残留し、その残留量は10ppm を越えない量であることを特徴とするメタライジング製品用ポリカーボネート成形材料。」と訂正する。 訂正事項b:明細書の発明の詳細な説明の訂正 b-1:特許明細書の段落【0006】中の 「該ポリカーボネート中に残留する非溶媒及び/又は貧溶媒量が50ppm 以下である」を、 「該ポリカーボネート中に非溶媒及び/又は貧溶媒が残留し、その残留量は10ppm を越えない量である」と訂正する。 b-2:特許明細書の段落【0011】及び【0012】中の 「非溶媒及び/又は貧溶媒量の含有量が50ppm 以下の」を、 「非溶媒及び/又は貧溶媒の残留量が10ppm を越えない量の」と訂正する。 イ、訂正の適否 訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1において、非溶媒及び/又は貧溶媒の含有量を「50ppm以下」から「10ppmを越えない量」に限定するものであり、その根拠は、明細書の実施例の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内において特許請求の範囲を減縮するものと認められる。 訂正事項b(b-1及びb-2)は、発明の詳細な説明の訂正であり、特許請求の範囲の訂正である訂正事項aに伴い、発明の詳細な説明において整合性を保つための訂正であり、不明瞭な記載の釈明と認められ、訂正事項aと同様に、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものと認められる。 また、上記訂正事項a及びbは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 (3)特許異議の申立てについての判断 ア、訂正明細書の請求項1に係る発明 訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】ポリカーボネートの有機溶媒溶液から非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて得られるポリカーボネートであって、該ポリカーボネート中に非溶媒及び/又は貧溶媒が残留し、その残留量は10ppm を越えない量であることを特徴とするメタライジング製品用ポリカーボネート成形材料。」 イ、引用刊行物 当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開平1-149827号公報:特許異議申立人提出甲第1号証)には、 次のとおりの記載が認められる。 「1 水分0.5〜10.0重量%、有機溶媒0.1〜5.0重量%を含み、かつ乾燥した場合の粒子中の80メッシュ以下の粒子が、5重量%以下、10メッシュ以上の粒子が5重量%以下であるポリカーボネート樹脂の湿潤粉末をそのままベント付押出機に供給してガス抜きをしながら押出し、残存有機溶媒50ppm以下とすることを特徴とする低ダストポリカーボネート樹脂成形材料の製造法.」(特許請求の範囲請求項1) 「一方、光学用材料としてのポリカーボネート樹脂は、ダストは極力少ないものがよく、また、溶媒の残存は、記録膜の密着強度劣化や腐食の原因となるものであるので通常50ppm以下にすることが必要である。」(第2頁左上欄7〜11行) 「上記した本発明のポリカーボネート樹脂の湿潤粉末は、好適には精製されたポリカーボネート樹脂の良溶媒溶液にポリカーボネート樹脂の非或いは貧溶媒を沈澱が生じない程度添加してなる液を温水中に滴下し、適宜湿式粉砕をしながら溶媒を留去する所謂『温水滴下法』、又は通常の沈澱法で得た良溶媒及び非或いは貧溶媒を含む湿潤粉末を温水中で処理し、溶媒を留去しつつ適宜湿式粉砕をする『沈澱温水処理法』で製造されるものである。」(第3頁左上欄12行〜同右上欄1行) 「光ディスクの製造および信頼性評価. 上記のペレットを使用し、射出成形して片面に螺旋状のグルーブをもつ厚み1.2mm、直径130mmのデータファイル用光ディスク基板を得た。 この基板上にTe-Fe-Co系記録膜を300〜500Å蒸着し、記録膜上には光硬化型のアクリル系樹脂をコートし、紫外線で硬化させた。」(第5頁左上欄8〜14行) 「以上、本発明の乾燥工程を省いたポリカーボネート樹脂成形材料は、ダストの増加も乾燥機を使用する場合には原料湿潤粉末のダスト数に対して得されたペレット中のダスト数が5〜10倍以上増加しているにも関わらず殆どないものであり、かつ、残存有機溶媒が50ppm以下を十分に満足するものであることから、成形ディスク中の欠点数が少ない等の特性が改良され、光学用の材料として極めて好適に使用できるものである。」(第6頁右下欄下から3行〜第7頁左上欄6行) ウ、対比・判断 本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。 刊行物1のポリカーボネート成形材料は、データファイル用光ディスク基板とし、さらに、Te-Fe-Co系記録膜を蒸着するものであるから、本件発明のメタライジング製品用ポリカーボネート成形材料に相当し、製造方法も本件発明と同じ方法が記載されているから、両者は、ポリカーボネートの有機溶媒溶液から非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて得られるポリカーボネートであって、該ポリカーボネート中に非溶媒及び/又は貧溶媒が残留し、その残留量が少ないメタライジング製品用ポリカーボネート成形材料である点で一致し、本件発明では、その残留量を10ppmを超えない量とするのに対し、刊行物1では、50ppm以下としている点で相違するものと認められる。 そこで、上記相違点について検討する。 刊行物1には、残存溶媒が記録膜の密着強度の劣化や腐食の原因となることが記載されており、残存溶媒が少ないほうが良いことが示されており、その目的・効果において、本件発明と刊行物1では同じであると認められる。そして、その残留溶媒の低減方法も本件発明と同じ方法が記載されており、刊行物1においても、本件発明の10ppmを超えない量とすることは可能と認められる。 そうであるならば、単に残留量の上限値をどこにするかの相違に過ぎず、そういった上限値を設定する程度のことは当業者が適宜なし得ることに過ぎないものと言わざるを得ない。 特許権者は、意見書の中で、刊行物1からはn-ヘプタンの残留量を10ppm以下に低減しても欠点数を少なくするという効果は発現されないと主張している。 しかしながら、特許権者も認めるように、刊行物1では最小欠陥に着目しているのに対し、本件発明ではより大きなエラーを測定している結果からそうなったというのであって、測定方法自体に本件発明の本質があるとは言えないし、また、刊行物1のほうがさらに厳しい要件で測定されていることから見ても、本件発明のほうが予想される程度を大幅に越えた作用効果であるとも言えない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、上記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14号の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 メタライジング製品用ポリカーボネート成形材料 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリカーボネートの有機溶媒溶液から非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて得られるポリカーボネートであって、該ポリカーボネート中に非溶媒及び/又は貧溶媒が残留し、その残留量は10ppmを超えない量であることを特徴とするメタライジング製品用ポリカーボネート成形材料。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の所謂乾式メタライジング用製品を製造するに適したポリカーボネート成形材料に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、界面縮合反応で得られたポリカーボネートの有機溶媒溶液からポリカーボネートパウダーを得る方法として、攪拌下の温水中又はポリカーボネートパウダーの温水スラリー中にポリカーボネートの有機溶媒溶液を投入して有機溶媒を除去してパウダー化する方法が知られている。しかしながら、この方法で得られるパウダーには、充分に乾燥してもなお有機溶媒が相当量残留する。有機溶媒としては低沸点のハロゲン系炭化水素特に塩化メチレンが広く使用されており、かかる塩化メチレンが相当量残留するポリカーボネートをメタライジング用製品の製造に用いると、ヒートサイクルテストにおいて蒸着膜に膨れ、剥離等の密着不良、割れ等が発生したり、湿熱処理による腐食テストにおいては膜の腐食、ピンホール、膨れ、剥離等が発生し易い。更にメタライジングの際、所定真空度到達時間が長くなり、生産効率が悪くなる欠点もある。 【0003】 有機溶媒残留量の少ないポリカーボネートパウダーの製造法として、攪拌下の温水中又は温水スラリー中にポリカーボネートの有機溶媒溶液と共に非溶媒又は貧溶媒を投入し、有機溶媒を除去してパウダー化し、得られたパウダーを乾燥する方法が知られている。この方法によれば、有機溶媒残留量を著しく減少させることができる。しかしながら、この方法で得られたポリカーボネートを用いてもなおメタライジング製品の密着性は不充分である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は密着性、耐久性、作業性に優れたメタライジング用製品を製造するに適したポリカーボネート成形材料を提供することを目的とする。 【0005】 本発明者は、非溶媒又は貧溶媒添加法で得られる低沸点ハロゲン系有機溶媒含量の低減されたポリカーボネートを用いて上記目的を達成せんとして鋭意検討した結果、非溶媒又は貧溶媒は沸点が比較的高いため樹脂中に残留し易いこと、及びこの残留した非溶媒又は貧溶媒がメタライズポリカーボネート製品の密着性、耐久性等の性能を低下させることを見出し、更に検討を重ねて本発明に到達したものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は、ポリカーボネートの有機溶媒溶液から非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて得られるポリカーボネートであって、該ポリカーボネート中に非溶媒及び/又は貧溶媒が残留し、その残留量は10ppmを超えない量であることを特徴とするメタライジング製品用ポリカーボネート成形材料に係るものである。 【0007】 本発明でいうポリカーボネートは、二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒の存在下反応させて製造されるものであり、これにジカルボン酸成分を共重合させたポリエステルカーボネートであってもよい。ポリカーボネートの重合度は特に限定する必要はなく、粘度平均分子量で通常12000〜50000であり、特に14000〜35000が好ましい。更に、二種以上の分子量水準のポリカーボネートの混合物、例えば粘度平均分子量が80000以上の超高重合度のポリカーボネートと通常の分子量のポリカーボネートとの混合物であってもよい。 【0008】 ここで用いる二価フェノールとしては2,2-ビス(4-ヒドロキシフエニル)プロパン[通称ビスフェノールA]が主として用いられるが、その一部又は全部を他の二価フェノールで置換えてもよい。他の二価フェノールとしては、例えばビス(4-ヒドロキシフエニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4′-ジヒドロキシジフェニル、ハイドロキノン、2,6-ジヒドロキシナフタレン等があげられる。またフェニル基に低級アルキル基又はハロゲン原子が置換された二価フェノールであってもよい。また例えば三官能以上の多官能性芳香族化合物を二価フェノール及びホスゲンと反応させた分岐ポリカーボネートであってもよい。 【0009】 二価フェノールのアルカリ水溶液に用いるアルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基性水酸化物が好ましい。これらの塩基性水酸化物は通常水溶液として用いられ、その濃度は通常5〜10重量%である。また塩基性水酸化物の使用量は、二価フェノールに対する理論量である2倍モルよりやや過剰になる量が好ましく、二価フェノールに対して2.2〜3.0倍モルが好ましい。 【0010】 有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素があげられるが、工業的には塩化メチレンが好ましく使用される。また末端停止剤として、例えばフェノール、p-tert-ブチルフェノール、2,4,6-トリブロモフェノールの如き一価フェノール等を用いてもよい。 【0011】 本発明の成形材料は、二価フェノールのアルカリ水溶液とホスゲンを有機溶媒の存在下反応させて得られるポリカーボネートの有機溶媒溶液から、有機溶媒を除去してポリカーボネートパウダーを得る際に、非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて有機溶媒含有量を著しく減少させたポリカーボネートであって且つ非溶媒及び/又は貧溶媒の含有量が10ppmを超えない量のものである。 【0012】 ポリカーボネートの有機溶媒溶液から、非溶媒及び/又は貧溶媒を用いて非溶媒及び/又は貧溶媒の含有量が10ppmを超えない量のポリカーボネートを製造する方法としては、例えば(1)ポリカーボネートの有機溶媒溶液を高温の熱水中に投入して急激に溶媒を除去し、大部分の有機溶媒を除去したポリカーボネートパウダーと熱水の混合スラリー中に非溶媒及び/又は貧溶媒を添加攪拌した後分離し、乾燥する方法、(2)予めポリカーボネートの有機溶媒溶液に非溶媒及び/又は貧溶媒を投入し、この溶液を高温の熱水中に投入して急激に溶媒を除去した後分離し、乾燥する方法、(3)ポリカーボネートの有機溶媒溶液と非溶媒及び/又は貧溶媒を別々に高温の熱水中に投入して急激に溶媒を除去した後分離し、乾燥する方法等によって得られる。ここでいう高温とは50℃以上、好ましくは60〜100℃であり、かかる高温の熱水中にポリカーボネートの有機溶媒溶液を投入して急激に溶媒を除去する方法は、得られるポリカーボネートパウダーは多孔性であって、見掛けの比重が小さく、取扱性がよくないために顧みられなかったものである。 【0013】 ここで用いる非溶媒及び貧溶媒は、ポリカーボネート溶液に用いた有機溶媒に可溶で且つポリカーボネートを溶解しないか、僅かに溶解するものである。例えばn-ヘプタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類があげられる。これらは単独でも、また二種以上の混合溶液であってもよい。 【0014】 かくして得られるパウダーは有機溶媒を殆ど含まず、非溶媒及び貧溶媒の残留量も大幅に低減されており、そのまま又はペレットにして成形に供することができ、得られた製品にメタライジングしたものは極めて優れた密着性、耐久性を示し、更に生産性も良好である。 【0015】 上記ポリカーボネートを用いてメタライジング用製品を成形するに際して、ポリカーボネートに、必要に応じて添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、離型剤、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤等を添加してもよく、また例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ナイロン等の如き他の熱可塑性樹脂を混合してもよい。 【0016】 【実施例】 以下実施例をあげて更に説明する。なお、実施例中の部は重量部を示し、%は重量%を示す。また残留溶媒の定量分析、蒸着、ヒートサイクルテストは下記の方法で行った。 【0017】 (a)ポリカーボネート中の残留塩化メチレン、非溶媒又は貧溶媒の定量分析はガスクロマトグラフ[(株)日立製作所製263型]を用いた。なお、カラム充填剤はジオクチルセバケート(略称DOS)である。 【0018】 (b)蒸着は成形品を容積量約100リットルの真空蒸着装置で実施した。アルミニュームターゲットの加熱は抵抗加熱方式であり、装置内の真空度が1×10-5トールに到達後20秒間蒸着し、膜厚が約600オングストロームのアルミニュームを蒸着した。 【0019】 (c)ヒートサイクルテストは、ヒートサイクルを40回繰り返した後膨れ、剥離等の欠点を光学顕微鏡にて調べた。なおヒートサイクルの1サイクルは、高温(85℃)で2時間保持した後室温(20〜27℃)に1時間放置し、更に低温(-10℃)で2時間保持した後室温(20〜27℃)に1時間放置した。 【0020】 【実施例1】 ホスゲン吹込管、温度計及び攪拌機を備えたステンレス製反応器に、48.5%の水酸化ナトリウム水溶液9.32部、水46.65部、ハイドロサルファイト0.03部、ビスフェノールA11.83部及び塩化メチレン39.3部を投入し、攪拌溶解した。溶解後攪拌下液温を22±2℃に保持しつつホスゲン5.90部を60分間かけて吹込み反応させた。吹込み終了後攪拌下p-tert-ブチルフェノール0.51部、48.5%の水酸化ナトリウム水溶液1.32部及びトリエチルアミン0.02部を加え、液温を30〜33℃に保持しながら60分間攪拌して重合を終了した。反応終了後、更に塩化メチレン40.0部を加えて攪拌した後静置して塩化メチレン層と水層を分離した。分離した塩化メチレン溶液に、35.5%の塩酸0.07部及び水20.0部を加え、攪拌後静置して塩化メチレン層を分離し、更に、分離した塩化メチレン溶液を充分に水洗した。 【0021】 この溶液にn-ヘプタン5.0部を加え、ニーダーの内温を75℃に維持しつつ投入攪拌してポリカーボネートパウダーを得た。このパウダーを防爆型熱風乾燥機により140℃で8時間乾燥した後、ベント付溶融押出機によりペレット化した。このペレットの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は1ppm以下、n-ヘプタン含有量は10ppmであった。このペレットを120℃で6時間乾燥した後射出成形機[住友重機(株)製DISK5M3]によりシリンダ温度330〜350℃、金型温度80〜120℃に設定し直径86mm、厚さ1.2mmのディスク板を成形した。このディスク板に前記条件で真空蒸着し、ヒートサイクルテストしたところ欠点数は0個であった。 【0022】 【比較例1】 ニーダーの内温を45℃に維持する以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートパウダーを得、以下実施例1と同様にペレット化し、射出成形し、真空蒸着した。ペレットの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は1ppm以下、n-ヘプタン含有量は80ppmであった。また真空蒸着ディスク板のヒートサイクルテスト後の膜の欠点数は28個であった。 【0023】 【実施例2】 実施例1と同様にして得た精製したポリカーボネートの塩化メチレン溶液にアセトン5.0部を加え、ニーダーの内温を75℃に維持しつつ投入してポリカーボネートパウダーを得た。このパウダーを防爆型熱風乾燥機により140℃で6時間乾燥した後、ベント付溶融押出機によりペレット化した。このペレットの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は1ppm以下、アセトン含有量は5ppmであった。実施例1と同様にしてディスク板を成形し、真空蒸着し、ヒートサイクルテストした。ヒートサイクルの後の欠点数は0個であった。 【0024】 【比較例2】 ニーダーの内温を45℃に維持する以外は実施例2と同様にしてポリカーボネートパウダーを得た。このパウダーを熱風乾燥機により140℃で6時間乾燥した後、ベント付溶融押出機によりペレット化した。このペレットの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は1ppm以下、アセトン含有量は100ppmであった。実施例1と同様にしてディスク板を成形し、真空蒸着し、ヒートサイクルテストした。ヒートサイクルの後の欠点数は29個であった。 【0025】 【実施例3】 実施例1と同様にして得た精製したポリカーボネートの塩化メチレン溶液にクロルベンゼン10部を加え、ニーダーの内温を80℃に維持しつつ投入してポリカーボネートパウダーを得た。このパウダーを防爆型熱風乾燥機により140℃で10時間乾燥した後、ベント付溶融押出機によりペレット化した。このペレットの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は1ppm以下、クロルベンゼン含有量は40ppmであった。実施例1と同様にしてディスク板を成形し、真空蒸着し、ヒートサイクルテストした。ヒートサイクルの後の欠点数は1個であった。 【0026】 【比較例3】 ニーダーの内温を45℃に維持する以外は実施例3と同様にしてポリカーボネートパウダーを得た。このパウダーを熱風乾燥機により140℃で10時間乾燥した後、ベント付溶融押出機によりペレット化した。このものの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は1ppm以下、クロルベンゼン含有量は300ppmであった。実施例1と同様の条件でディスク板を成形し、真空蒸着し、ヒートサイクルテストした。ヒートサイクルの後の欠点数は53個であった。 【0027】 【比較例4】 精製したポリカーボネートの塩化メチレン溶液にn-ヘプタンを加えず、ニーダーの内温を45℃に維持する以外は実施例1と同様にしてポリカーボネートパウダーを得、以下実施例1と同様にペレット化し、射出成形し、真空蒸着した。ペレットの粘度平均分子量は15500、塩化メチレン含有量は100ppmであった。また真空蒸着ディスク板のヒートサイクルスト後の膜の欠点数は100個以上であった。 【0028】 以上の結果をまとめて表1に示す。なお表1中のペレット残留溶媒量の欄のMCは塩化メチレンを意味する。 【0029】 【表1】 【0030】 【発明の効果】 本発明のポリカーボネート成形材料を用いて得られる製品に真空蒸着等のドライメタライジングしたものは密着性、耐久性に極めて優れており、その奏する工業的効果は格別なものである。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-01-07 |
出願番号 | 特願平3-348577 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(C08G)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 森川 聡 |
特許庁審判長 |
柿崎 良男 |
特許庁審判官 |
佐藤 健史 佐野 整博 |
登録日 | 2002-11-22 |
登録番号 | 特許第3372046号(P3372046) |
権利者 | 帝人化成株式会社 |
発明の名称 | メタライジング製品用ポリカーボネート成形材料 |
代理人 | 三原 秀子 |
代理人 | 三原 秀子 |