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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 G02B |
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管理番号 | 1097932 |
異議申立番号 | 異議2003-72221 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-02-14 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-09-04 |
確定日 | 2004-03-13 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3384502号「回転多面鏡光偏向装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3384502号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成5年7月30日に出願され、平成14年12月27日にその特許権の設定登録がなされ、その後、平成15年9月4日に、請求項1に係る発明の特許に対して特許異議申立人キヤノン株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成15年11月20日付けで請求項1に係る発明の特許権の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年2月2日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権設定登録時の明細書中の特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2及び請求項3の項番をそれぞれ繰り上げ請求項1及び請求項2とする。また、前記訂正にともない、前記明細書段落0020の記載の削除、同段落0021の記載の訂正、及び同段落0021以降の段落番号表示を訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で規定する訂正について、平成6年法律第116号附則第6条第1項の規定により、なお従前の例によるとされる、同法律改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び同第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 請求項1に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、結果として、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。 したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 回転多面鏡光偏向装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 所定圧の気体によって軸支された回転軸に円盤形状の回転多面鏡を固定してなる回転多面鏡光偏向装置において、 上記回転多面鏡のスラスト端面に対して、上記回転軸の長手方向から上記回転軸の長手方向の中心位置に向かつて所定圧の気体を供給し、上記回転多面鏡をスラスト方向に支えるようにした ことを特徴とする回転多面鏡光偏向装置。 【請求項2】 所定圧の気体によって軸支された回転軸に円盤形状の回転多面鏡を固定してなる回転多面鏡光偏向装置において、 上記回転多面鏡のスラスト端面に対して、所定圧の気体を供給し、上記回転多面鏡をスラスト方向に支えるようにした ことを特徴とする回転多面鏡光偏向装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【目次】 以下の順序で本発明を説明する。 産業上の利用分野 従来の技術(図4) 発明が解決しようとする課題(図4) 課題を解決するための手段(図1) 作用(図1) 実施例(図1〜図3) 発明の効果 【0002】 【産業上の利用分野】 本発明は回転多面鏡光偏向装置に関し、空気軸受を用いた回転多面鏡光偏向装置に適用して好適なものである。 【0003】 【従来の技術】 従来、回転多面鏡(以下これをポリゴンミラーと呼ぶ)を用いて光ビームを所定方向に反射及び走査する回転多面鏡光偏向装置として図4に示すような構成のものが考えられている。 【0004】 すなわち図4において1は全体として回転多面鏡光偏向装置を示し、下ブロツク2、中間ブロツク6、上ブロツク3と、下ブロツク2及び中間ブロツク6間に設けられた配管ブロツク4と、中間ブロツク6及び上ブロツク3間に設けられた配管ブロック5によって構成される。 【0005】 中間ブロック6の内周部にはマグネツトワイヤ28を巻回してなる鉄心21が設けられており、当該鉄心21の内周面にはセラミツク等でなるステータリング22が固定されている。 【0006】 また当該ステータリング22の内周面側には微小な間隙25を隔てて樹脂材料等でなるロータリング23が遊嵌されており、当該ロータリング23の内周面には周囲にマグネツト24を嵌合固定した回転軸26が嵌合されている。従つて回転軸26、マグネツト24、ロータリング23でなるロータ部がステータリング22の内周面に対して微小な間隙25を隔てて回転自在に枢支される。 【0007】 ここで回転軸26の上端部にはスラスト軸受部材37が螺子36A及び36Bによつて固定されており、当該スラスト軸受部材37は配管ブロツク5に固定された円盤部材31に対して微小な間隙を隔てて対向するように配置される。 【0008】 このスラスト軸受部材37には周側面に複数のミラー33Aを形成してなるポリゴンミラー33が嵌合され、固定円盤35を介して螺子34によつて回転軸26に締結されている。 【0009】 またこれに対して回転軸26の下端部にはスラスト軸受部材42が螺子46A及び46Bによって固定されており、当該スラスト軸受部材42は配管ブロツク4に固定された円盤部材41に対して微小な間隙を隔てて対向するように配置される。 【0010】 このスラスト軸受部材42にはポリゴンミラー33とほぼ同様の重量でなる円盤部材43が嵌合され、固定円盤45を介して螺子44によつて回転軸26に締結されている。従つて当該円盤部材43及びポリゴンミラー33によつてバランスがとられ、回転軸26を回転させた際の円滑な回転を実現し得るようになされている。 【0011】 ここで中間ブロツク6には圧縮空気を導入するための通路6Aが形成されており、継手15から給気された圧縮空気は当該通路6Aを介して、鉄心21に形成された通路21Aに導入される。さらに当該通路21Aに導入された圧縮空気は、ステータリング22に形成された絞り通路を介してステータリング22及びロータリング23間に形成された間隙25に供給される。 【0012】 かくして当該間隙25に圧縮空気が導入されることにより、当該空気層を介して回転軸26がラジアル方向に軸支される。また当該間隙25に導入された圧縮空気は配管ブロツク4及び5にそれぞれ形成された通路4B及び5Bを介して継手11及び13からそれぞれ排気される。 【0013】 これに対して配管ブロツク4には圧縮を導入するための通路4Aが形成されており、継手12から給気された圧縮空気は当該通路4Aを介して、円盤部材41及びスラスト軸受部材42間に形成された間隙に供給される。従つて当該間隙に圧縮空気が導入されることにより、当該空気層を介してスラスト軸受部材42及びこれに固定された回転軸26がスラスト方向に軸支される。 【0014】 また配管ブロツク5には圧縮を導入するための通路5Aが形成されており、継手14から給気された圧縮空気は当該通路5Aを介して、円盤部材31及びスラスト軸受部材37間に形成された間隙に供給される。従つて当該間隙に圧縮空気が導入されることにより、当該空気層を介してスラスト軸受部材37及びこれに固定された回転軸26がスラスト方向に軸支される。 【0015】 このように継手12、14及び15から給気された圧縮空気によつて回転軸26はラジアル方向及びスラスト方向に軸支され、この状態においてマグネツトワイヤ28に駆動電流を通電することにより、回転軸26を回転させることができる。 【0016】 このとき当該回転軸26に固定されたポリゴンミラー33のミラー面33Aに、上ブロツク3の開口3Aを介して光ビームを照射することにより、当該光ビームをポリゴンミラー33の回転に応じて所定方向に反射及び走査させることができる。 【0017】 【発明が解決しようとする課題】 ところでかかる構成の回転多面鏡光偏向装置1においては、回転軸26を6万〜8万[rpm]程度の回転数で回転させることにより、間隙25における空気の粘性抵抗によつて当該ラジアル軸受部分において発熱する。このときポリゴンミラー33はスラスト軸受部材37を介して回転軸26に固定されていることにより、発熱源からの導熱経路が複雑化してポリゴンミラー33の取り付け部に対する熱膨張量及び膨張方向が不均一となり、ポリゴンミラー33のミラー面33Aの回転精度が劣化する問題があつた。 【0018】 さらにポリゴンミラー33はスラスト軸受部材37を介して回転軸26に固定されていることにより、回転体の軸長が長くなり固有振動数を十分に高くし得ず、安定した回転を実現し得ない問題があつた。 【0019】 本発明は以上の点を考慮してなされたもので、一段と高精度で回転多面鏡を回転し得る回転多面鏡光偏向装置を提案しようとするものである。 【0020】 【課題を解決するための手段】 かかる課題を解決するため本発明においては、所定圧の気体によつて軸支された回転軸66に円盤形状の回転多面鏡71を固定してなる回転多面鏡光偏向装置50において、回転多面鏡71のスラスト端面71Bに対して、回転軸66の長手方向から回転軸66の長手方向の中心位置に向かつて所定圧の気体を供給し、回転多面鏡71をスラスト方向に支えるようにする。 【0021】 また本発明においては、所定圧の気体によつて軸支された回転軸66に円盤形状の回転多面鏡71を固定してなる回転多面鏡光偏向装置50において、回転多面鏡71のスラスト端面71Bに対して、所定圧の気体を供給し、回転多面鏡71をスラスト方向に支えるようにする。 【0022】 【作用】 回転多面鏡71のスラスト端面71Bを直接スラスト軸受として用いることにより、回転多面鏡71を一段と高精度で回転させることができる。 【0023】 【実施例】 以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。 【0024】 図4との対応部分に同一符号を付して示す図1において、回転多面鏡光偏向装置50は下ブロツク52、中間ブロツク56、上ブロツク54及びポリゴンミラー33を囲む筐体53によつて構成されている。 【0025】 回転軸66はその周側面に固定されたロータリング23及びステータリング22間に形成された間隙25に供給される圧縮空気をラジアル軸受として回転自在に枢支されている。 【0026】 回転軸66の上端部に形成された周側面66Aにはポリゴンミラー71が直接嵌合され、固定円盤67によつて回転軸66に固定されている。このポリゴンミラー71のスラスト面は上ブロツク54に対して微小な間隙74を隔てて対向するように配置されている。 【0027】 また回転軸66の下端部に形成された周側面66Bにはポリゴンミラー71とほぼ同様の重量でなる円盤部材72が直接嵌合され、固定円盤68によつて回転軸66に固定されている。この円盤部材72のスラスト面は下ブロツク52に対して微小な間隙73を隔てて対向するように配置されている。 【0028】 ここで上ブロツク54には圧縮空気を導入するための通路54Aが形成されており、当該通路54Aに導入された圧縮空気はポリゴンミラー71のスラスト面及び上ブロツク54間の間隙74に絞り通路を介して供給される。 【0029】 従つてポリゴンミラー71は間隙74に供給された圧縮空気によつてスラスト方向に軸支される。 【0030】 これに対して下ブロツク52には圧縮空気を導入するための通路52Aが形成されており、当該通路52Aに導入された圧縮空気は円盤部材72のスラスト面及び下ブロツク52間の間隙73に絞り通路を介して供給される。 【0031】 従つて円盤部材72は間隙73に供給された圧縮空気によつてスラスト方向に軸支される。 【0032】 かくして回転軸66は間隙25に供給された圧縮空気によつてラジアル方向に軸支されると共に、間隙73及び74に供給された圧縮空気によつてスラスト方向に軸支され、全体として回転自在に枢支されることにより、鉄心21に巻回されたマグネツトワイヤに駆動電流を通電してこれを回転駆動することができる。 【0033】 従つてこの状態においてポリゴンミラー71のミラー面71Aに対して筐体53の開口53Aを介して光ビームを照射することにより、当該ミラー面71Aにおいて光ビームを所定方向に反射及び走査することができる。 【0034】 以上の構成において、回転多面鏡光偏向装置50は回転軸66の周側面66Aに対してポリゴンミラー71を直接嵌合固定することにより、従来のようにスラスト軸受部材37(図4)を介してポリゴンミラーを回転軸に固定する場合に比して、回転軸66の軸長が短くなる。 【0035】 また圧縮空気を供給する方向を回転軸66の長手方向の端部から当該回転軸66の軸線の中心部に向かうようにしたことにより、従来のように回転軸26の長手方向の中心側から長手方向の端部側に向かうようにした場合に比して鉄心21及びポリゴンミラー間に配管ブロツク5(図4)を介挿することを回避し得、この分回転軸66の軸長が短くなる。 【0036】 以上の構成によれば、回転軸66の軸長を短くすることができることにより、固有振動数が高くなり、この分安定した回転を高剛性によつて実現することができる。 【0037】 またポリゴンミラー71を直接回転軸66に嵌合固定することにより、当該固定部における部品点数を削減することができ、この分ラジアル軸受として設けられた間隙25において発生した熱の導熱経路を簡素化することができ、全体として熱膨張量及び膨張方向を均一化し得、回転体内部での複雑な歪みの発生を防止することができる。従つて高温下においてもポリゴンミラー71のミラー面71Aの回転精度の劣化を防止することができる。 【0038】 またこの場合、スラスト軸受部材37(図4)を削減し得ることにより、部品誤差の累積を低減し得、この分ポリゴンミラー71の回転精度を向上することができる。 【0039】 さらにポリゴンミラー71のスラスト面に直接圧縮空気を供給して、当該スラスト面をスラスト軸受として用いることにより、当該ポリゴンミラー71のミラー面71Aの回転精度を向上することができる。 【0040】 なお上述の実施例においては、ポリゴンミラー71に対する圧縮空気の供給方向を回転軸66の長手方向の端部から当該回転軸66の軸線の中心部に向かうようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば図2に示すように筐体ブロツク81からポリゴンミラー83に対して、回転軸82の軸線の長手方向に対する中心側から、当該回転軸82の長手方向の端部側に向かつて筐体ブロツク81の通路(図示せず)から圧縮空気を供給し、筐体ブロツク81及びポリゴンミラー83のスラスト面間に形成された間隙85に供給された圧縮空気をスラスト軸受として用いるようにしても、ポリゴンミラー83のスラスト面に直接圧縮空気を供給する点、及びポリゴンミラー83を直接回転軸82に固定してスラスト軸受部材37(図4)を削減する点において上述の場合と同様の効果を得ることができる。 【0041】 またこれに対して図3に示すように、筐体ブロツク91の中心部分にポリゴンミラー93を配置し、当該ポリゴンミラー93の上下2つのスラスト面及び筐体ブロツク91間に形成された間隙94及び95に圧縮空気を供給するようにしても上述の実施例と同様の効果を得ることができる。 【0042】 また上述の実施例においては、外部から圧縮空気を供給するようになされたいわゆる静圧型の軸受を用いた回転多面鏡光偏向装置について述べたが、本発明はこれに限らず、回転によつて所定圧の空気層を形成するいわゆる動圧型の軸受を用いた回転多面鏡光偏向装置においても本発明を適用して好適である。 【0045】 さらに上述の実施例においては、気体軸受の媒体として圧縮空気を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、空気以外の種々の気体を用いても良い。 【0044】 【発明の効果】 上述のように本発明によれば、回転多面鏡を回転軸の周側面に直接嵌合固定すると共に、当該回転多面鏡のスラスト端面に圧縮空気を供給して、当該スラスト端面をスラスト軸受として用いるようにしたことにより、回転多面鏡を一段と高精度で回転させることができる回転多面鏡光偏向装置を実現し得る。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明による回転多面鏡光偏向装置の一実施例を示す断面図である。 【図2】 他の実施例を示す略線図である。 【図3】 他の実施例を示す略線図である。 【図4】 従来の回転多面鏡光偏向装置を示す断面図である。 【符号の説明】 50……回転多面鏡光偏向装置、52……下ブロツク、54……上ブロツク、66……回転軸、71……ポリゴンミラー、72……円盤部材。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-02-23 |
出願番号 | 特願平5-208919 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
XA
(G02B)
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最終処分 | 決定却下 |
前審関与審査官 | 田部 元史 |
特許庁審判長 |
瀧本 十良三 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 平井 良憲 |
登録日 | 2002-12-27 |
登録番号 | 特許第3384502号(P3384502) |
権利者 | ソニー株式会社 |
発明の名称 | 回転多面鏡光偏向装置 |
代理人 | 田辺 恵基 |
代理人 | 田辺 恵基 |
代理人 | 高梨 幸雄 |