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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G06F |
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管理番号 | 1097957 |
異議申立番号 | 異議2000-71510 |
総通号数 | 55 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-08-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-04-12 |
確定日 | 2004-03-15 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2962458号「戸籍情報・住民記録連携システム及びその情報処理方法」の請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2962458号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許出願 平成 6年 2月 2日 特許権設定登録 平成11年 8月 6日 (特許第2962458号) 特許掲載公報発行 平成11年10月12日 特許異議の申立て 平成12年 4月12日 審尋(異議申立人に対して) 平成12年 7月12日 回答書 平成12年 9月26日 上申書 平成12年10月 4日 上申書 平成12年12月26日 取消理由通知 平成14年12月13日 (発送日:平成15年 1月 7日) 意見書 平成15年 3月10日 訂正請求書 平成15年 3月10日 訂正拒絶理由通知 平成15年 5月14日 (発送日:平成15年 5月23日) 意見書 平成15年 7月22日 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 特許権者は、上記取消理由通知に対して、平成15年3月10日付けで、意見書及び訂正請求書を提出し、その訂正請求書の請求の趣旨は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正することを求める、というものであり、訂正の内容は次の(1)〜(10)のとおりである。 (1)訂正事項A 請求項1の1行ないし8行(行数は特許公報による)に、「個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、」とあるのを、「個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、」と訂正する。 (2)訂正事項B 請求項1の9行ないし10行に、「個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を対応させ、」とあるのを、「個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、」と訂正する。 (3)訂正事項C 請求項4の1行ないし8行に、「個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、」とあるのを、「個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、」と訂正する。 (4)訂正事項D 請求項4の9行ないし10行に、「個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を対応させ、」とあるのを、「個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、」と訂正する。 (5)訂正事項E 請求項6の1行ないし8行に、「個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応づけて保持する戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、」とあるのを、「個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応づけて保持する戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、」と訂正する。 (6)訂正事項F 請求項6の9行ないし10行に、「個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を対応させ」とあるのを、「個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、」と訂正する。 (7)訂正事項G 請求項8〜請求項11を削除する。 (8)訂正事項H 明細書の【0008】の1行〜7行に、「本発明は、戸籍情報システムに出生届又は本籍地の変更届が入力されたとき、これらの情報に関して戸籍データベースを追加・更新するとともにこれら追加・更新情報を出力し、該追加・更新情報を入力する住民記録システムはこれらの情報に関して住民記録データベースを追加・更新する戸籍情報と住民記録との連動システムを特徴とする。」とあるのを、「本発明は、個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、戸籍情報システムに出生届又は本籍地の変更届が入力されたとき、これらの情報に関して戸籍データベースを追加・更新するとともにこれら追加・更新情報を出力し、該追加・更新情報を入力する住民記録システムはこれらの情報に関して住民記録データベースを追加・更新する戸籍情報と住民記録との運動システムにおける情報処理方法を特徴とする。」と訂正する。 (9)訂正事項I 明細書の【0009】の1行〜6行に、「また本発明は、住民記録システムに転居届が入力されたとき、この転居届(住所変更)に関して住民記録データベースを更新するとともにこの更新情報を出力し、該更新情報を入力する戸籍情報システムはこの情報に関して戸籍附票データベースを更新する戸籍情報と住民記録との連動システムを特徴とする。」とあるのを、「また本発明は、個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応づけて保持する戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 住民記録システムに転居届が入力されたとき、この転居届(住所変更)に関して住民記録データベースを更新するとともにこの更新情報を出力し、該更新情報を入力する戸籍情報システムはこの情報に関して戸籍附票データベースを更新する戸籍情報と住民記録との運動システムにおける情報処理方法を特徴とする。」と訂正する。 (10)訂正事項J 明細書の【発明の名称】の欄に「戸籍情報・住民記録連携システム及びその情報処理方法」とあるのを、「戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法」と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項Aについて 当該訂正は、請求項1に係る発明を特定する事項である「戸籍情報システム」が、データベースとして「戸籍情報データベース」及び「戸籍附票データベース」を備えていること、又、戸籍情報システムと住民記録システムとの連携の内容を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落【0012】、【0013】及び図1等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (2)訂正事項Bについて 当該訂正は、請求項1に係る発明を特定する事項である「第1の識別子」と「第2の識別子」との対応に関して、訂正前の、2つの識別子が単に対応させられていることを特定していたものを、「戸籍情報システムにおいて対応させ」ること、且つ、「第2の識別子を用いて連携を行う」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】及び図2等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (3)訂正事項Cについて 当該訂正は、請求項4に係る発明を特定する事項である「戸籍情報システム」が、データベースとして「戸籍情報データベース」及び「戸籍附票データベース」を備えていること、又、戸籍情報システムと住民記録システムとの連携の内容を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落【0012】、【0013】及び図1等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (4)訂正事項Dについて 当該訂正は、請求項4に係る発明を特定する事項である「第1の識別子」と「第2の識別子」との対応に関して、それらが戸籍情報システムにおいて対応付けられていることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】及び図2等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (5)訂正事項Eについて 当該訂正は、請求項6に係る発明を特定する事項である「戸籍情報システム」が、データベースとして「戸籍情報データベース」及び「戸籍附票データベース」を備えていること、又、戸籍情報システムと住民記録システムとの連携の内容を具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落【0012】、【0013】及び図1等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (6)訂正事項Fについて 当該訂正は、請求項6に係る発明を特定する事項である「第1の識別子」と「第2の識別子」との対応に関して、それらが戸籍情報システムにおいて対応付けられていることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たり、又、この点は、発明の詳細な説明の段落【0016】及び図2等に記載されている事項であるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 (7)訂正事項Gについて 当該訂正は、特許請求の範囲の請求項8乃至11を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。 (8)訂正事項Hについて 当該訂正は、特許請求の範囲の記載の訂正に伴い、記載内容の整合性をとるために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。 (9)訂正事項Iについて 当該訂正は、特許請求の範囲の記載の訂正に伴い、記載内容の整合性をとるために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。 (10)訂正事項Jについて 当該訂正は、発明の名称について、請求項1乃至7に係る発明は何れも「情報処理方法」に関するものであるため、発明の技術内容との整合性をとるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。 (11)さらに、上記訂正事項A乃至Jは、何れも、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 3.まとめ 以上のとおりであるから、上記各訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについての判断 1.本件発明 上記のとおり、本件明細書に関して訂正請求が認められるので、特許第2962458号に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された次のとおりのものである(以下、「本件発明1乃至7」という。)。 【請求項1】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 前記戸籍情報データベース内の戸籍データの変更があると、変更のあった戸籍データに対応づけられた第1の識別子に対応する第2の識別子と、前記変更のあった戸籍データとを前記住民記録システムに出力し、 前記住民記録システムは、前記住民記録データベース内の該第2の識別子に対応した住民記録データを該出力された戸籍データに基づいて変更する戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項2】 前記第1の識別子と前記第2の識別子とは前記戸籍情報データベースにおいて対応付けられている請求項1に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項3】 前記変更のあった戸籍データに対応づけられた第1の識別子に対応する第2の識別子と、前記変更のあった戸籍データとは前記戸籍情報システムから異動ファイルを介して前記住民記録システムに出力されることを特徴とする請求項1に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項4】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 前記戸籍情報データベース内の新たな個人の戸籍データの追加が行われたとき、該戸籍データに新規の第1の識別子を付与し、該第1の識別子及び追加する戸籍データである追加戸籍データを前記住民記録システムに出力し、 該住民記録システムは該追加戸籍データに基づいて前記住民記録データベースに住民記録データを追加するとともに該住民記録データに新規の第2の識別子を付与し、 該第2の識別子及び対応する第1の識別子を前記戸籍情報システムに出力し、 該戸籍情報システムは前記戸籍情報データベースの第1の識別子に対応する戸籍データに、出力された第2の識別子を付与して記憶する戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項5】 前記新規の第1の識別子及び前記追加戸籍データは前記戸籍システムから異動ファイルを介して前記住民記録システムに出力されることを特徴とする請求項4に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項6】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応づけて保持する戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、 個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 前記住民記録データベース内の住民記録データの変更があると、該住民記録データ及び該住民記録データに付与されている第2の識別子を前記戸籍情報システムに出力し、 該戸籍情報システムは、出力された住民記録データに基づいて前記戸籍附票データベース内の該第2の識別子に対応した個人の住所履歴情報を追加する戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項7】 前記変更のある住民データ及び該住民データに付与されている第2の識別子は、前記住民記録システムから異動ファイルを介して前記戸籍情報システムに出力されることを特徴とする請求項6に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 2.刊行物1に記載された事項 当審が、平成14年12月12日付けで通知した取消しの理由において引用した刊行物1は次のものであり、(a)乃至(l)の事項が、図面と共に記載されている。 「戸籍事務を電子情報処理組織により処理することとした場合におけるシステムの設計・製造及び運用についての調査研究報告書 (平成元年度)」 財団法人 民事法務協会 刊行物1には発行日等について明確な記載はないが、当審の審尋に対する異議申立人の回答によれば、刊行物1に関して、その記載内容を3分割したものが、それぞれ、「戸籍」平成2年8月号(第566号)、同年9月号(第567号)、同年10月号(第568号)として出版され、当該3冊の刊行物が、それぞれ、平成2年8月27日、同年9月25日、同年11月13日に、国立国会図書館に受け入れられていると認められる。 したがって、上記刊行物1自体も、少なくとも、平成2年11月13日の時点で実質的に公知になったものと認められる。 (a)ア 住民情報システムと戸籍情報システムの調和 現在、各市区町村では、住民記録をはじめとして税、年金等の多くの分野で所掌事務のコンピュータ化が図られているところであり、このシステム化に当たっては、その安全性、信頼性、正確性を確実なものとするため、住民記録のデータベースを核とするオンラインシステムが一般的に行われているところである。…(略)… 戸籍情報システムの開発は、基本的には、これら市区町村の既存システムと調和するシステムとするべきである。(刊行物1第42頁第25行〜第43頁第8行) (b)戸籍と住民票の両制度は戸籍の附票を通じて関連づけられており、氏名、生年月日、本籍、筆頭者等共通の記載内容も多く存在する上、市町村長は、戸籍に関する届出、申請書その他の書類を受理し、若しくは職権で戸籍の記載をしたときは、職権で住民票の記載、消除及び修正をしなければならない(…(略)…)とされており、法律上の根拠に基づき、その情報を送ることとしている。 そのため、戸籍事務をオンライン・システム化する場合には、戸籍情報システムと住民記録システムでの共通のデータ入力項目を法令の規定に基づく範囲に限って連動させ得ることとし、例えば、その項目をそれぞれのシステムが主要マスタの更新の後、「連絡用ファイル(仮称)」に記録し、互に参照可能な環境を確保すること等何らかの連絡方法を取ることが望ましいと思われる(処理概要図参照)。(同第43頁第18行〜第44頁第1行) (c)同第45頁の「処理概要図」には、戸籍情報システムと住民記録システムとの間に住民連絡ファイルを、住民記録システムと戸籍情報システムとの間に戸籍連絡ファイルを設けること、及び、住民連絡ファイルには「氏名、生年月日、本籍、筆頭者、男女の別、発生年月日、異動事由(出生、死亡、婚姻、離婚、氏名の変更、転籍等)」を、戸籍連絡ファイルには「住所、住所を定めた年月日」を記録することが記載されており、その「注」には、「戸籍情報システム内に、現行法の戸籍の附票に該当するデータを持つこととしているので、そのデータに対応するものを住民記録データ・ベースから戸籍情報システムに流すこととする。」と記載されている。 (d)住民基本台帳法による附票及び住民票の事務、人口動態調査令による人口動態の事務が戸籍届出事件に基づく一連の事務処理工程の中に完全に取り込まれている。…(略)… そのため戸籍に関して入力されている情報をそのまま利用できる部分も多い。 …(略)… 戸籍関連事務もシステムに反映されることによって、データ処理の迅速化やコストダウン等のコンピュータ導入の効果が一層促進されるものである。(同第52頁第11〜22行) (e)戸籍の届出により影響を受ける戸籍関連事務とデータ項目等は次のとおりである。 1.住民票 (1).住民票に記載すべき事項(住民基本台帳法第7条) ア 氏名 イ 出生の年月日 …(略)… オ 戸籍の表示 …(略)… ク 住所を定めた旨の届出の年月日及び従前の住所 …(略)… (2).住民票と戸籍との関係 …(略)… ウ 住民票の戸籍の表示は、戸籍筆頭者の氏名及び本籍をいう。 (同第52頁第25行〜第54頁1行) (f)2.戸籍の附票 (1).戸籍の附票(住民基本台帳法第16条)に記載すべき事項 ア 戸籍の表示 イ 氏名 ウ 住所 エ 住所を定めた年月日 (2).附票と住民票と戸籍との関係 ア 附票の戸籍の表示は、戸籍筆頭者の氏名及び本籍をいう。 …(略)… ウ 附票の住所は、住民票記載の住所と一致すること。 (同第54頁第14行〜第55頁第1行) (g)3 戸籍データの項目 (1)戸籍データ項目の決定 戸籍データの項目は、次の二要素からなっている。 I.現在の戸籍に記載されている戸籍事項等の各項目 II.戸籍をコンピュータで処理するために必要な項目 これらの各要素をどのように配分し、関連付けるかによってデータベースの構造が決定されることになるが、戸籍情報システムでは、戸籍の表示及び編製消除事由等を記載する本籍欄、筆頭者欄及び戸籍事項欄(図1のA)に対応する戸籍特定情報(図1の(1))及び戸籍事項情報(図1の(2))と、在籍者に関する身分事項を記載する身分事項欄等(図1のB)に対応する個人特定情報(図1の(3))及び身分事項情報(図1の(4))に大別することとした。 (同第74頁第1〜11行、審決注:刊行物1には、図1の説明について、()数字でなく丸数字で記載されている。) (h)同第74頁の「図1 現在戸籍の様式」参照。 (i)ウ 個人特定情報(図1の(3)) 個人特定情報は、個人番号、記載年月日、除籍年月日、構成員カナ氏名、構成員漢字氏名、…(略)…、生年月日、市区町村コード、住所、住所を定めた年月日、前戸籍番号、異動コード及び個人除区分の各項目から構成されている。このうち、個人番号、構成員カナ氏名、構成員漢字氏名及び生年月日の各項目を検索のためのキー項目としている。 なお、各々の項目に異動が生じた場合には、それらの事項を個人特定情報に履歴として残すこととしている。(同第76頁第9〜17行) (j)(3)『個人特定』への住所データの付加 我が国においては、国民の身分関係を登録公証するものとして戸籍制度が、住居関係を登録公証するものとして住民登録制度が設けられている。しかしながら、両制度が並立する独立の制度であるだけでは、人の身分関係及び住居関係が相互に関連付けられないため特定の者を統一的に把握することが困難である。そこで、戸籍と住民票との間の連絡媒介の機能を営む戸籍の附票制度が設けられているところである。 戸籍の附票は、戸籍をその編製単位とし(住民基本台帳法第16条)、これには戸籍の表示(本籍)、氏名、住所、住所を定めた年月日を記載することになっているが(同法第17条)、…(略)…、これらの記載等は、戸籍の新たな編製、入・除籍等の戸籍の事務処理に起因して処理することとされている(同法施行令第18〜20条)。(同第78頁第6〜18行) (k)附票制度の改廃については、戸籍情報システムの実施段階における法務省と自治省との協議に待つとしても、戸籍情報システム内に戸籍の附票とは別に在籍者の住所を記録することは、戸籍の記載の公平を維持することに資すると思われること、…(略)…、戸籍情報システム内に住所を有することにより、届書に記載されている住所の確認審査が容易になる等窓口における届書等の審査上にも利点があるため、戸籍情報システム内に住所を記録することとした。(同第78頁第27行〜第79頁第10行) (l)データや情報につけた符号のことをコードといい、これは、対象となる項目の値を人間や機械の処理に適した体系で数字や文字を用い表現したものである。 …(略)… 戸籍データをコード化することにより以下のような利点が発生する。 (1)データを1つ1つ区別することができる。 データを1つ1つ区別することにより個人番号や戸籍番号により個人や戸 籍を特定することができる。(同第79頁第12〜21行) 3.刊行物1に記載された発明 上記2.(c)に示した、刊行物1第45頁に記載される「処理概要図」によれば、戸籍情報システムと住民記録システムとは連携されており、具体的に、戸籍情報データベースに格納される戸籍データの「氏名、生年月日、本籍、筆頭者、男女の別、発生年月日、異動事由(出生、死亡、婚姻、離婚、氏名の変更、転籍等)」を、住民連絡ファイルを介して、住民記録データベースへ流し、又、住民記録データベースの住民記録データの「住所、住所を定めた年月日」を、戸籍連絡ファイルを介して、戸籍情報データベースに流すものである。又、このデータの流れ(両システムの連携)は、一方に変更があったときに他方に流されるものであることは言うまでもない。 そして、戸籍情報システムは、現行法の戸籍の附票に該当するデータを有しているものであり、上記住民記録データベースの住民記録データの「住所、住所を定めた年月日」を、戸籍情報データベースに流す際には、戸籍の附票に該当するデータに追加されるものであると認められる。 又、上記2.(g)〜(i)の記載からみて、個人番号は検索キーであるから、個人を区別(識別)できるものであると同時に、個人毎の戸籍データ(構成員カナ氏名、構成員漢字氏名及び生年月日等)に対応づけられているものであることは明らかであるから、戸籍情報データベースは、個人番号に対応して、個人の戸籍データが格納されているものであるのは明らかである。 他方、刊行物1に記載される住民記録データベースに関して、該データベースには、住民票に記載する事項に関するデータ、即ち、世帯主、住所、本籍、構成員氏名、生年月日等のデータが格納されていることは明らかであるが、これらデータが、どのようなデータ構造として格納されているか、刊行物1には明記されていない。 しかしながら、個人の住民記録に関するデータがデータベースとして構築されている以上、個人のデータは、データベース検索が可能なように、換言すれば、他の個人のデータと区別(識別)できるように格納されていることは言うまでもなく、上記戸籍情報データベースの例に倣えば、個人の住民記録データ(住所、構成員氏名、生年月日等)は、個人番号に対応して格納され、少なくとも、個人番号は検索のためのキー項目となっているものと認められる。 即ち、住民記録データベースは、個人番号に対応して、世帯主、住所、本籍、構成員氏名、生年月日等の住民記録データが格納されており、個人番号が検索のためのキー項目となっているものと認められる。 なお、戸籍情報データベース及び住民記録データベースの個人番号について、特許権者は、「刊行物1における「戸籍連絡ファイル」や「住所連絡ファイル」は、住所や氏名などをキーとして相互の連絡を行うものである」(意見書第10頁第14〜16行参照)旨主張するが、上記のとおり、各データベースのキー項目には個人番号が含まれており、該個人番号をキー項目から排除する理由は見当たらないから、特許権者の主張は失当である。 以上の点からみて、刊行物1には、次のような発明が記載されているものと認められる(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)。 「個人を識別できる個人番号に対応付けられて、構成員カナ氏名、構成員漢字氏名及び生年月日等の戸籍データが格納される戸籍情報データベースと戸籍の附票データとを有する戸籍情報システムと、個人を識別できる個人番号に対応して、世帯主、住所、本籍、構成員氏名、生年月日等の住民記録データが格納される住民記録データベースを有する住民記録システムとを有し、変更のあった住所、住所を定めた年月日のデータを、戸籍連絡ファイルを介して、住民記録データ・ベースから戸籍情報システムの戸籍情報データベースへ流し、又、変更のあった戸籍データを、住民連絡ファイルを介して、戸籍情報データベースから住民記録システムの住民記録データベースに流すことにより、戸籍システムと住民記録システムとを連携させるようにした、情報処理方法。」 4.対比・判断 (1)本件発明1について 本件発明1(以下、「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比する。 まず、戸籍情報データベースにおいて付される個人番号と住民記録データベースにおいて付される個人番号とについて、検討する。 戸籍情報データベースと住民記録データベースとは、それぞれ別のシステムにおけるデータベースとして構築されているから、個人番号は、それぞれのシステムの番号体系に従って付されていることは明らかである。 即ち、ある個人Aに対して、戸籍情報データベースにおいて付される個人番号と住民記録データベースにおいて付される個人番号とは必ずしも同一のものとは限らず、むしろ、別の番号であると解するのが自然である。 したがって、刊行物1には、戸籍情報データベースと住民記録データベースとにおいて、(共通の個人Aに対して)別の個人番号が付されて、データベースが構築されていることが記載されていると認められ、その個人番号は、個人を区別(識別)するものであるから、識別子と言うことができ、又、それぞれのシステムにおいて異なる識別子となっているから、第1の識別子、第2の識別子と表現することに何ら支障はない。 してみると、後者の「戸籍情報データベースにおける個人番号」及び「住民記録データベースにおける個人番号」は、前者の「第1の識別子」及び「第2の識別子」に相当するものである。 なお、特許権者は、取消理由に対する、平成15年3月10日付意見書(以下、「意見書」という。)において、取消理由の「刊行物1に記載される住民記録データベースに格納される住民記録に関するデータには、そのデータに対応する個人番号が付されていることは明らかである。」及び「戸籍情報データベースと住民記録データベースとは、それぞれ別のシステムとして構築されているので、上記個人番号は、それぞれの番号体系に従って付与されるのが通例であり、ある個人Aに対して、戸籍情報データベースにおいて付与される個人番号と住民記録データベースにおいて付与される個人番号(識別子)とが同一のものとは限らないから、各データベースにおいて付与される個人番号は、戸籍情報データベースにおいては第1の識別子、住民記録データべースにおいては第2の識別子と言うことができる。」との認定に対して、「刊行物1には、それを裏付ける具体的な記載は無い。」(同意見書第8頁第26行〜第9頁第8行)と反論するが、上記のとおり、刊行物1の記載事項(特に、上記2.(c)、(g)〜(i)参照)及びデータベース構築に関する技術常識を以て勘案すれば、刊行物1には、各データベースに各個人番号(識別子)が付されたデータが格納されていることが記載されていると言えるから、具体的な記載がない、とのみ主張する、特許権者の反論は首肯できない。 又、前者の戸籍附票データベースには、戸籍の附票データが格納されていることは言うまでもないから、前者の戸籍情報システムは「戸籍の附票データ」を有するものである。 以上のとおりであるから、両者は次の一致点、相違点を有するものと認められる。 【一致点】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベースを備えるとともに戸籍の附票データを有する戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍の附票データに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【相違点1】 前者の戸籍情報システムは、戸籍の附票データを、戸籍データベースとは別のデータベースとして備えているのに対して、後者の戸籍情報システムは、戸籍の附票データを、戸籍データベースとは別のデータベースとして有しているか明確でない点。 【相違点2】 前者では、第1の識別子と第2の識別子とを戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて、戸籍情報システムと住民記録システムとの連携を行ない、戸籍データの変更があると、変更のあった戸籍データに対応づけられた第1の識別子に対応する第2の識別子と、変更のあった戸籍データとを住民記録システムに出力し、住民記録システムは、住民記録データベース内の該第2の識別子に対応した住民記録データを出力された戸籍データに基づいて変更するものであるのに対して、後者では、連携は行うものの、第1の識別子と第2の識別子とを戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行うこと、及び、戸籍データの変更に関する処理等は記載されていない点。 上記相違点について検討する。 【相違点1について】 本来、戸籍と戸籍の附票とは別の台帳として調整されているものであり、戸籍に関するデータと戸籍の附票に関するデータとを、一体に格納するか、別々に格納するかは、データ容量やメンテナンスの利便性等を勘案して、決定すべき設計事項であるから、後者の戸籍情報システムが、戸籍の附票データを、戸籍情報データベースとは別のデータベースとして備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 【相違点2について】 上記刊行物1第45頁に記載の、戸籍情報システムと住民記録システムとは、住民連絡ファイル或いは戸籍連絡ファイルを介して、データを流して連携を行っているものである。 ところで、2つのシステム間での共通データ、例えば、甲第1号証第45頁の「注」に記載される「戸籍の附票に該当するデータ」即ち「住所データ」について、ある個人の住所が一方のシステムで変更された時に、他方のシステムに当該変更データを流して(出力して)2つのシステムを連携させる場合、その変更されたデータがどのレコードに対応するものか、一意に識別できるデータと共に出力する必要があることは、当該技術分野において自明な技術的事項である。 そして、上記のとおり、後者において、戸籍情報システムは、個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応付けて保持し、住民記録システムは、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応付けて保持しており、当該第1の識別子及び第2の識別子は、どの個人の戸籍データあるいは住民記録データが変更になったかを一意に識別可能なものであることも明らかである。 してみると、変更されたデータがどの個人に属するデータであるかを識別するデータとして、第1の識別子と第2の識別子に着目し、第1の識別子と第2の識別子を対応させ、2つのシステムの連携を行うことは、当業者が容易に想到し得ることと認められ、その際、第1の識別子と第2の識別子とをどちらのシステムにおいて対応させるかは、両識別子を2つのシステムの連携に利用することを前提とすると、いわば二者択一的な選択事項であるから、両識別子を戸籍情報システムにおいて、対応させるようにした点は、当業者が適宜決定し得ることと認められ(なお、戸籍情報システムにおいて対応させるようにすれば、第2の識別子を用いることは必然の事項である。)、さらに、データ変更の処理についても、2つのシステムの連携を、第2の識別子を用いて戸籍情報システムにおいて対応させるようにすれば、データの変更に関する処理を、上記相違点2後段に記載のようにすることは、当該技術分野の技術常識からみて、当業者が容易になし得ることと認められる。 したがって、上記相違点2を格別のものと認めることはできない。 なお、第1の識別子である戸籍情報システムの個人番号と第2の識別子である住民記録システムの個人番号の対応をとるためには、 膨大な量のデータの突き合わせという困難な作業が発生し得ることは認められるものの、 作業の困難性と、そのような作業を必要とする発明の想到困難性とは別義であるから、膨大な量のデータの突き合わせ作業が発生するということを以てしても、上記認定判断を左右するものではない。 【作用効果について】 前者の奏する作用効果も、後者及び技術常識の奏する効果の総和以上の格別なものとは認められない。 【まとめ】 以上のとおり、本件発明1は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)本件発明2について 本件発明1が上記「第3 1.」の【請求項1】のように訂正されたため、本件発明2を特定する事項である「第1の識別子と第2の識別子とは戸籍情報データベースにおいて対応付けられている」点は、本件発明1を特定する事項である「個人毎の第1の識別子と第2の識別子を戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて連携を行なうようになし、」と、実質的に同一のものであると認められるから、本件発明2についての判断は、上記(1)のとおりである。 したがって、本件発明2は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1に「戸籍情報システムから異動ファイルを介して住民記録システムに出力されること」を付加するものであるところ、刊行物1に記載された発明の「住民連絡ファイル」は、本件発明3の「異動ファイル」に相当することは明らかである。 結局、「異動ファイル」に関する技術的事項は、本件発明3と刊行物1に記載された発明との一致点に含まれる事項であるから、本件発明3と刊行物1に記載された発明との相違点は、実質的に、本件発明1との相違点と変わらず、本件発明3についての判断は、上記(1)のとおりである。 したがって、本件発明3は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (4)本件発明4について 本件発明4について、訂正請求書に添付された訂正明細書第2頁【請求項4】第4行目の「個人毎の住民データ」は「個人毎の住民記録データ」の誤りであるのは明らかであるから、該記載は「個人毎の住民記録データ」と認定する。 刊行物1に記載された発明の検討については、上記(1)のとおりである。 ところで、戸籍法では、新たに出生した個人は、戸籍事務の掌握者である市区町村長に届け出ることが義務づけられており、この届出(出生届)に基づいて新たな個人が戸籍に記載されることは、戸籍法に規定されている。 したがって、戸籍情報を電子化し、データベースとして構築した戸籍情報システムにおいては、出生届が提出された新たな個人に関するデータは新規のデータとして入力されるものであり、その入力に際し、新たな個人に関するデータには、他のデータと区別するための個人番号(識別子)が付されることは、データベース構築に関する技術常識である。そして、該個人番号は、新規のデータに付されるものであるから、新規の個人番号(識別子)であることは明らかであり、又、戸籍情報データベースにおいて付される識別子であるから、第1の識別子と言える。 以上の点からみて、本件発明4(以下、「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とは、次の一致点、相違点を有するものと認められる。 【一致点】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベースを備えるとともに戸籍の附票データを有する戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍の附票データに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 戸籍情報データベース内の新たな個人の戸籍データの追加が行われたとき、戸籍データに新規の第1の識別子を付与する情報処理方法。 【相違点1】 前者の戸籍情報システムは、戸籍の附票データを、戸籍データベースとは別のデータベースとして備えているのに対して、後者の戸籍情報システムは、戸籍の附票データを、戸籍データベースとは別のデータベースとして有しているか明確でない点。 【相違点2】 前者では、第1の識別子と第2の識別子を戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行い、第1の識別子及び追加する戸籍データである追加戸籍データを住民記録システムに出力し、住民記録システムは追加戸籍データに基づいて住民記録データベースに住民記録データを追加するとともに住民記録データに新規の第2の識別子を付与し、該第2の識別子及び対応する第1の識別子を前記戸籍情報システムに出力し、戸籍情報システムは戸籍情報データベースの第1の識別子に対応する戸籍データに、出力された第2の識別子を付与して記憶するのに対して、後者では、連携は行うものの、第1の識別子と第2の識別子とを戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行うこと、及び、新規な戸籍データの追加に関する処理等は記載されていない点。 上記相違点について検討する。 【相違点1について】 上記(1)における【相違点1について】に同じである。 【相違点2について】 相違点2の前段の構成である「第1の識別子と第2の識別子を戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行」う点については、上記(1)における【相違点2について】に同じである。 そこで、データ追加の処理について検討すると、 後者も、戸籍情報データベースと住民記録データベースとを連携させるものであるから、戸籍データベースにおける新規データの追加は、住民記録データベースに反映されることは言うまでもなく、戸籍データベースにおける(出生による)新規なデータの追加は、住民記録データベースにおいても、新規なデータの追加となることは明らかであるから、住民記録データベースにおいて追加される新規なデータに付与される第2の識別子も新規なものであると認められる。 そして、第1の識別子と第2の識別子を戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行うことは、上記(1)の【相違点2について】に記載したとおりであり、データ変更の処理についても、2つのシステムの連携を、第2の識別子を用いて戸籍情報システムにおいて対応させるようにすれば、新規なデータの追加に関する処理を、上記相違点2後段に記載のようにすることは、当該技術分野の技術常識からみて、当業者が容易になし得ることと認められる。 したがって、相違点2を格別のものとすることはできない。 【作用効果について】 前者の奏する作用効果も、後者及び技術常識の奏する効果の総和以上の格別なものとは認められない。 【まとめ】 以上のとおり、本件発明4は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (5)本件発明5について 本件発明5について、訂正請求書に添付された訂正明細書第2頁【請求項5】第1行目の「戸籍システムから」は「戸籍情報システムから」の誤りであるのは明らかであるから、該記載は「戸籍情報システムから」と認定する。 本件発明5は、本件発明4に「戸籍情報システムから異動ファイルを介して住民記録システムに出力されること」を付加するものであるところ、刊行物1に記載された発明の「住民連絡ファイル」は、本件発明5の「異動ファイル」に相当することは明らかである。 結局、「異動ファイル」に関する技術的事項は、本件発明5と刊行物1に記載された発明との一致点に含まれる事項であるから、本件発明5と刊行物1に記載された発明との相違点は、実質的に、本件発明4との相違点と変わらず、本件発明3についての判断は、上記(4)のとおりである。 したがって、本件発明5は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (6)本件発明6について 刊行物1に記載された発明の検討については、上記(1)のとおりである。 ところで、戸籍の附票とは、ある個人の出生から現在までの住所の履歴が記載されたものであり、又、各個人に対応して作成されているものであることは、社会常識であるから、後者の戸籍情報システムが有している戸籍の附票データは、各個人の住所の履歴情報のことであり、該履歴情報が前記個人に対応付けられて格納されていることは明らかである。 又、後者では、住民記録システムにおいて住所の変更があったときには、該住所と住所を定めた年月日を、戸籍情報システムに流し、戸籍の附票データに追加するものであることは、上記(1)に記載したとおりである。 なお、前者の戸籍附票データベースには、戸籍の附票データ(個人毎の住所履歴情報)が格納されていることは言うまでもないから、前者の戸籍情報システムは「戸籍の附票データ」を有するものである。 したがって、本件発明6(以下、「前者」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とは、次の一致点、相違点を有するものと認められる。 【一致点】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と、個人毎の住所履歴情報からなる戸籍の附票データを有する戸籍情報システムと、 個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍の附票データに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【相違点1】 前者の戸籍情報システムは、第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応付けて保持し、戸籍の附票データを戸籍データベースとは別のデータベースとして備えているのに対して、後者の戸籍情報システムは、個人と個人毎の住所履歴情報を対応付けて有し、戸籍の附票データを戸籍データベースとは別のデータベースとして有しているか明確でない点。 【相違点2】 前者では、第1の識別子と第2の識別子を戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行い、住民記録データベース内の住民記録データの変更があると、該住民記録データ及び該住民記録データに付与されている第2の識別子を戸籍情報システムに出力し、戸籍情報システムは、出力された住民記録データに基づいて戸籍附票データベース内の該第2の識別子に対応した個人の住所履歴情報を追加するのに対して、後者では、連携は行うものの、第1の識別子と第2の識別子とを戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行うこと、及び、住民記録データの変更に関する処理等は記載されていない点。 上記相違点について検討する。 【相違点1について】 後者の戸籍情報システムにおいて、戸籍データは第1の識別子に対応付けられていることは、上記(1)に記載したとおりである。 ところで、戸籍情報システムは、個人毎の住所履歴情報を、個人に対応付けて有していることは上記のとおりであるが、該個人には、戸籍情報システムでの個人番号(第1の識別子)が付されており、この個人番号は検索キーである。 他方、戸籍情報システムにおいて、住所の履歴情報は、当然に検索対象であり、且つ、住所履歴を検索するについては、該履歴情報にも検索キーが必要となることは自明であるところ、該住所履歴は個人に対応付けられており、この個人には検索キーである個人番号が付されているのであるから、住所履歴情報を各個人に対応付ける代わりに、個人番号(第1の識別子)に対応付けるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 又、戸籍附票データベースについては、上記(1)における【相違点1について】に同じである。 以上のとおりであるから、戸籍の附票データ(住所の履歴情報)を、第1の識別子に対応付け、戸籍情報データベースとは別のデータベースとすることは、当業者が容易に想到し得ることと認められる。 【相違点2について】 上記【一致点】のとおり、後者も「住民記録データベースに変更があったときは該変更を戸籍の附票データに追加するように互いに連携させた」ものである。 そして、第1の識別子と第2の識別子を戸籍情報システムにおいて対応させ、第2の識別子を用いて連携を行うことは、上記(1)の【相違点2について】に記載したとおりであり、住民記録データ変更の処理についても、2つのシステムの連携を、第2の識別子を用いて戸籍情報システムにおいて対応させるようにすれば、住民記録データの変更に関する処理を、上記相違点2後段に記載のようにすることは、当該技術分野の技術常識からみて、当業者が容易になし得ることと認められる。 したがって、相違点2を格別なものすることはできない。 【作用効果について】 前者の奏する作用効果も、後者及び技術常識の奏する効果の総和以上の格別なものとは認められない。 【まとめ】 以上のとおり、本件発明6は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (7)本件発明7について 本件発明7について、訂正請求書に添付された訂正明細書第3頁【請求項7】第1行目の「住民データ」(2箇所)は「住民記録データ」の誤りであるのは明らかであるから、該記載は「住民記録データ」と認定する。 本件発明7は、本件発明6に「戸籍情報システムから異動ファイルを介して住民記録システムに出力されること」を付加するものであるところ、刊行物1に記載された発明の「住民連絡ファイル」は、本件発明3の「異動ファイル」に相当することは明らかである。 結局、「異動ファイル」に関する技術的事項は、本件発明7と刊行物1に記載された発明との一致点に含まれる事項であるから、本件発明7と刊行物1に記載された発明との相違点は、実質的に、本件発明6との相違点と変わらず、本件発明6についての判断は、上記(6)のとおりである。 したがって、本件発明7は、上記刊行物1及び技術常識に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 5.むすび 以上のとおり、本件発明1乃至7は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項1乃至7に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、同法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 前記戸籍情報データベース内の戸籍データの変更があると、変更のあった戸籍データに対応づけられた第1の識別子に対応する第2の識別子と、前記変更のあった戸籍データとを前記住民記録システムに出力し、 前記住民記録システムは、前記住民記録データベース内の該第2の識別子に対応した住民記録データを該出力された戸籍データに基づいて変更する戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項2】 前記第1の識別子と前記第2の識別子とは前記戸籍情報データベースにおいて対応付けられている請求項1に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項3】 前記変更のあった戸籍データに対応づけられた第1の識別子に対応する第2の識別子と、前記変更のあった戸籍データとは前記戸籍情報システムから異動ファイルを介して前記住民記録システムに出力されることを特徴とする請求項1に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項4】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 前記戸籍情報データベース内の新たな個人の戸籍データの追加が行われたとき、該戸籍データに新規の第1の識別子を付与し、該第1の識別子及び追加する戸籍データである追加戸籍データを前記住民記録システムに出力し、 該住民記録システムは該追加戸籍データに基づいて前記住民記録データベースに住民記録データを追加するとともに該住民記録データに新規の第2の識別子を付与し、 該第2の識別子及び対応する第1の識別子を前記戸籍情報システムに出力し、 該戸籍情報システムは前記戸籍情報データベースの第1の識別子に対応する戸籍データに、出力された第2の識別子を付与して記憶する戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項5】 前記新規の第1の識別子及び前記追加戸籍データは前記戸籍システムから異動ファイルを介して前記住民記録システムに出力されることを特徴とする請求項4に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項6】 個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応づけて保持する戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、 個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 前記住民記録データベース内の住民記録データの変更があると、該住民記録データ及び該住民記録データに付与されている第2の識別子を前記戸籍情報システムに出力し、 該戸籍情報システムは、出力された住民記録データに基づいて前記戸籍附票データベース内の該第2の識別子に対応した個人の住所履歴情報を追加する戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【請求項7】 前記変更のある住民データ及び該住民データに付与されている第2の識別子は、前記住民記録システムから異動ファイルを介して前記戸籍情報システムに出力されることを特徴とする請求項6に記載の戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、戸籍情報システムで追加・更新された情報を住民記録システムに反映し、また住民記録システムで更新された情報を戸籍情報システムに反映するような両システムを連動するシステムに関する。 【0002】 【従来の技術】 戸籍に関するデータベースを保持し、出生届、死亡届、婚姻届など届出を入力してこのデータベースを追加・更新し、また証明書の請求を入力してこのデータベースを参照し、戸籍抄本を発行する戸籍情報システムが知られている。 【0003】 また一方住民に関するデータベースを保持し、転入、転出、転居など届出を入力してこのデータベースを追加・更新し、また証明書の請求を入力してこのデータベースを参照し、住民票を発行する住民記録システムが知られている。 【0004】 なお戸籍情報システムとして関連するものには、例えば特開平2-27480号公報などがある。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 上記システムはそれぞれ独立して構築されたために、戸籍データベースと住民記録データベースとの間で一部情報が重複するにもかかわらず、一方のデータベースの追加・更新が他方のデータベースに直接反映されないという問題があった。 【0006】 本発明の目的は、戸籍データベースに対して行われた追加・更新を住民記録データベースにも反映させることにある。 【0007】 また本発明の他の目的は、住民記録データベースに対して行われた更新を戸籍データベースにも反映させることにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明は、個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子を個人毎の戸籍データと対応づけて保持する戸籍情報データベース及び戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 戸籍情報システムに出生届又は本籍地の変更届が入力されたとき、これらの情報に関して戸籍データベースを追加・更新するとともにこれら追加・更新情報を出力し、該追加・更新情報を入力する住民記録システムはこれらの情報に関して住民記録データベースを追加・更新する戸籍情報と住民記録との連動システムにおける情報処理方法を特徴とする。 【0009】 また本発明は、個人毎の戸籍データを識別するための第1の識別子と個人毎の住所履歴情報とを対応づけて保持する戸籍附票データベースを備えた戸籍情報システムと、 個人毎の住民記録データを識別するための第2の識別子を個人毎の住民記録データと対応づけて保持する住民記録データベースを備えた住民記録システムとを有し、前記戸籍データに変更があったときは該変更に基き前記住民記録データベースを変更し前記住民記録データベースに変更があったときは該変更を前記戸籍附票データベースに追加するように互いに連携させた戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法であって、 個人毎の前記第1の識別子と前記第2の識別子を前記戸籍情報システムにおいて対応させ、該第2の識別子を用いて前記連携を行なうようになし、 住民記録システムに転居届が入力されたとき、この転居届(住所変更)に関して住民記録データベースを更新するとともにこの更新情報を出力し、該更新情報を入力する戸籍情報システムはこの情報に関して戸籍附票データベースを更新する戸籍情報と住民記録との連動システムにおける情報処理方法を特徴とする。 【0010】 【作用】 戸籍情報システムと住民記録システムとの間で情報を転送し合い、両システムが連携するとき両システムに亘ってキーとなるデータは戸籍の各構成員及び各住民について設定された個人番号である。しかし両システムは独立して構築されたシステムであるから、それぞれの個人番号の体系は異なる。本発明では、戸籍データベースに住民記録データベースの個人番号をとり込むか又は住民記録データベースに戸籍データベースの個人番号をとり込むことによって互に相手のデータベースを容易にアクセスできる。ただし出生届の場合には戸籍データベースの個人情報の追加であり、相手システムの個人番号はとり込まれていないから、戸籍情報システムから住民記録システムへ戸籍筆頭者名を送り、この筆頭者に合致する住民記録データベース上の世帯主氏名を検索し、関連する住民情報に続いて新規の住民情報を追加する。 【0011】 【実施例】 以下本発明の一実施例について図面を用いて説明する。 【0012】 図1は戸籍情報システムと住民記録システムとを連動させるときのシステム構成を示す図である。1は戸籍情報システムであり、システムは、戸籍についての情報処理を行う戸籍情報処理部11、戸籍についての届出情報を入力し、謄抄本を出力する端末装置12、戸籍情報を格納する戸籍データベース13、戸籍附票についての情報を格納する戸籍附票データベース14及び戸籍データベース13に追加・変更があったとき、これを以下に述べる住民記録データベース23に反映するための情報が出力される住民記録異動ファイル15によって構成される。 【0013】 2は住民記録システムであり、システムは、住民記録についての情報処理を行う住民記録処理部21、住民記録についての届出情報を入力し、住民票を出力する端末装置22、住民記録についての情報を格納する住民記録格納データベース23及び住民記録データベース23に変更があったとき、これを戸籍附票データベース14に反映するための情報が出力される戸籍異動ファイル24によって構成される。 【0014】 戸籍情報システム1において、端末装置12を介する届出入力により戸籍データベース13に追加・変更があったとき、戸籍情報処理部11は戸籍データベース13及び戸籍附票データベース14に追加・変更を行った後、この追加・変更を住民記録データベース23に反映するために住民記録異動ファイル15を作成する。住民記録異動ファイル15は住民記録システム2の住民記録処理部21に入力される。住民記録処理部21は入力された情報を基にして住民記録データベース23に追加・変更を行う。 【0015】 一方住民記録システム2において、端末装置22を介する届出入力により住民記録データベース23に変更があったとき、住民記録処理部21は住民記録データベース23に変更を行った後、この変更を戸籍附票データベース14に反映するために戸籍異動ファイル24を作成する。戸籍異動ファイル24は戸籍情報システム1の戸籍情報処理部11に入力される。戸籍情報処理部11は入力された情報を基にして戸籍附票データベース14に追加・変更を行う。 【0016】 図2は戸籍データベース13のデータ構成例を示す図である。 【0017】 戸籍データベース13は、戸籍筆頭者のみを集めた見出しの部分、筆頭者を含む戸籍構成員の部分及び各構成員の履歴部分とから構成される。見出しの部分は、戸籍番号31、筆頭者32及び本籍地33から構成される。見出し部分の各戸籍番号31からリンクされる構成員の部分は各個人に付された個人番号34、戸籍番号31、個人氏名35、生年月日36、父の氏名37、母の氏名38及び対応する住民記録データベース23上の各個人の番号54などから構成される。個人番号54は、住民記録システム連携をとるために設けられたものである。構成員の部分の個人番号34からリンクされる履歴部分は、個人番号34、履歴番号39及び履歴40から構成される。 【0018】 図3は、戸籍附票データベース14のデータ構成例を示す図である。戸籍附票データベース14は、戸籍構成員の住所履歴情報を格納するものであり、見出しの部分、戸籍構成員の部分及び住所履歴情報から構成される。見出しの部分は、戸籍データベース13の見出しの部分と同様に戸籍番号31、筆頭者32及び本籍地33から構成される。見出し部分の各戸籍番号31からリンクされる戸籍構成員の部分は、個人番号34、戸籍番号31及び個人氏名35から構成される。構成員の部分の個人番号34からリンクされる履歴部分は、個人番号34、履歴番号41及び住所履歴42から構成される。 【0019】 図4は、住民記録データベース23のデータ構成例を示す図である。住民記録データベース23は生計をともにする住民の住所地についての情報を格納するものであり、世帯主のみを集めた見出しの部分及び世帯主を含み生計をともにする住民の部分から構成される。見出しの部分は世帯番号51、世帯主氏名52及び住所53から構成される。見出しの部分の各世帯番号51からリンクされる住民の部分は、各個人に付された個人番号54、世帯番号51、個人氏名55、生年月日56、続柄57、戸籍筆頭者58及び本籍地59から構成される。 【0020】 以下具体的なケースに基づいて戸籍情報処理部11及び住民記録処理部21の処理の流れを説明する。 【0021】 (1)戸籍データベース13の変更を住民記録データベース23に反映する場合戸籍情報処理部11は、戸籍データベース13中の本籍地33に変更があった場合に、例えば戸籍番号31が101で筆頭者32が日立二郎の本籍地33が転籍により台東区北上野2丁目5番から同区南上野1丁目1番に変更になったとき、この戸籍番号31にリンクする個人番号34が201と202の個人番号54を参照して402及び403を得る。戸籍情報処理部11は住民記録異動ファイル15に変更になる個人番号54と本籍地33を出力する。この住民記録異動ファイル15を入力する住民記録処理部21は、住民記録データベース23中の個人番号54が402及び403についてその本籍地59を変更する。戸籍データベース13中の筆頭者32に変更があった場合も同様にして住民記録異動ファイル15には変更になる個人番号54と筆頭者32が出力され、住民記録データベース23中の対応する個人番号54についてその筆頭者58を変更する。 【0022】 (2)戸籍データベース13の追加を住民記録データベース23に反映する場合戸籍情報処理部11は、端末装置12から出生の届出が入力されたとき、該当する筆頭者32からリンクする戸籍構成員の記録レコード、すなわち新規の個人番号34、個人氏名35、生年月日36、父の氏名37、母の氏名38などを設定して戸籍データベース13に記憶し、この個人番号34からリンクする履歴情報として個人番号34、履歴番号39及び出生を示す履歴40を作成して戸籍データベース13に記憶する。戸籍情報処理部11は住民記録異動ファイル15に個人番号34及び追加になる個人氏名35、生年月日36、筆頭者32、本籍地33などの情報を出力する。この住民記録異動ファイル15を入力する住民記録処理部21は、住民記録データベース23上で入力された筆頭者32に合致する世帯主番号52を検索し、該当する世帯主番号52からリンクする住民の記録レコード、すなわち新規の個人番号54、個人氏名55、生年月日56、続柄57、筆頭者58及び本籍地59を設定して住民記録データベース23に記憶する。住民記録処理部21は出生した個人番号34の個人について、その個人番号34及び個人番号54を戸籍異動ファイル24に出力する。この戸籍異動ファイル24を入力する戸籍情報処理部11は、戸籍データベース13上にこの個人番号34に対応する個人番号54を作成する。 【0023】 (3)住民記録データベース23の変更を戸籍データベース13、戸籍附票データベース14に反映する場合住民記録処理部21は、端末装置22から転居(住所53の変更)の届が入力されたとき、該当する世帯主氏名52の住所53を更新し、該世帯主氏名52からリンクする住民についてその個人番号54、住所53などの情報を戸籍異動ファイル24に出力する。この戸籍異動ファイル24を入力する戸籍情報処理部11は、戸籍データベース13を参照して入力された個人番号54に対応する個人番号34を求め、戸籍附票データベース14を参照してこの個人番号34に対応する住所履歴42を追加し、履歴番号41を追加する。 【0024】 なお上記実施例では、住民記録システムと連携をとるための個人番号54を戸籍データベース13上に設けたが、その代りに個人番号34を住民記録データベース23上に各個人番号54に対応して設けてもよい。この場合上記(1)のケースでは、住民記録異動ファイル15には個人番号34及び本籍地33が出力される。住民記録処理部21は住民記録データベース23を参照して個人番号34に対応する個人番号54の本籍地59を更新する。また上記(2)のケースでは個人番号54を戸籍異動ファイル24に出力する処理と、この個人番号54を戸籍データベース13上に反映する処理がなくなる。また上記(3)のケースでは、住民記録処理部21は住民記録データベース23を参照して個人番号54に対応する個人番号34を求め、個人番号34及び住所53を戸籍異動ファイル24に出力する。戸籍情報処理部11は戸籍附票データベース14を参照してこの個人番号34に対応する住所履歴42を追加する。 【0025】 なお上記実施例では戸籍情報システム1と住民記録システム2との間の情報の転送を住民記録異動ファイル15及び戸籍異動ファイル24を介して行っているが、その代りに両システムをオンラインで結合し、通信回線を経由して情報の転送を行ってもよい。 【0026】 【発明の効果】 本発明によれば、戸籍データベース上の戸籍構成員に関する情報と住民記録データベース上の各住民に関する情報とは個人番号を介して対応づけられるので、戸籍データベースに対して行われた追加・更新を住民記録データベースにも反映させることができ、また住民記録データベースに対して行われた更新を戸籍データベースにも反映させることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 システム全体の構成を示す図である。 【図2】 戸籍データベースのデータ構成例を示す図である。 【図3】 戸籍附票データベースのデータ構成例を示す図である。 【図4】 住民記録データベースのデータ構成例を示す図である。 【符号の説明】 13…戸籍データベース、 14…戸籍附票データベース、 15…住民記録異動ファイル、 24…戸籍異動ファイル、 32…筆頭者、 34…個人番号、 52…世帯主氏名、 54…個人番号。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-01-23 |
出願番号 | 特願平6-10825 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(G06F)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 相田 義明 |
特許庁審判長 |
徳永 民雄 |
特許庁審判官 |
山本 穂積 岡 千代子 |
登録日 | 1999-08-06 |
登録番号 | 特許第2962458号(P2962458) |
権利者 | 株式会社日立製作所 |
発明の名称 | 戸籍情報・住民記録連携システムにおける情報処理方法 |
代理人 | 小川 勝男 |
代理人 | 澤田 俊夫 |
代理人 | 小川 勝男 |