• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63B
管理番号 1098022
異議申立番号 異議2003-71939  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-10-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-07-30 
確定日 2004-03-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3372344号「ゴルフボール表面研削方法」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3372344号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3372344号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成6年3月18日の出願であって、平成14年11月22日にその特許権の設定の登録がなされ、その特許について、荒井純子より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年12月9日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否

(1)訂正の内容
特許権者の求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a.訂正事項a
特許請求の範囲の
「【請求項1】金型により成形したゴルフボールの金型割面バリを前もって研削し、その後、先端に向って拡開してゴルフボール1の表面1aに当接する円環状研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rより大きい研削部材2を、その軸心廻りに回転させつつ、上記研削面5にて上記ゴルフボール1の薄肉表皮7を研削除去することを特徴とするゴルフボール表面研削方法。
【請求項2】上記研削部材2を、一定点Oから相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線A,B,C上に配置し、次に、各研削部材2,2,2を上記一定点Oから等距離に保持しつつ、各軸線A,B,C廻りに同一方向に同一回転数にて回転させ、各円環状研削面5,5,5にて上記ゴルフボール1の薄肉表皮7を研削除去する請求項1記載のゴルフボール表面研削方法。」という記載を、
「【請求項1】金型により成形したゴルフボールの金型割面バリを前もって研削し、その後、先端に向って拡開してゴルフボール1の表面laに当接する円環状研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rより大きく、かつ、該円環状研削面5に開口するスリット6が複数形成された研削部材2を、その軸心廻りに回転させ、該スリット6から削りカスを追い出しながら上記研削面5にて上記ゴルフボール1の薄肉表皮7を研削除去することを特徴とするゴルフボール表面研削方法。
【請求項2】上記研削部材2を、一定点Oから相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線A,B,C上に配置し、次に、各研削部材2,2,2を上記一定点Oから等距離に保持しつつ、各軸線A,B,C廻りに同一方向に同一回転数にて回転させ、各円環状研削面5,5,5にて上記ゴルフボール1の薄肉表皮7を研削除去する請求項1記載のゴルフボール表面研削方法。」という記載に訂正する。
b.訂正事項b
明細書の段落【0014】における「先端に向って拡開してゴルフボールの表面に当接する円環状研削面の曲率半径が該ゴルフボールの半径より大きい研削部材」の記載を、「先端に向って拡開してゴルフボールの表面に当接する円環状研削面の曲率半径が該ゴルフボールの半径より大きく、かつ、該円環状研削面に開□するスリットが複数形成された研削部材」と訂正する。
c.訂正事項c
明細書の段落【0014】における「その軸心廻りに回転させつつ、上記研削面にて上記ゴルフボールの薄肉表皮を研削除去するものである。」の記載を、「その軸心廻りに回転させ、該スリットから削りカスを追い出しながら上記研削面にて上記ゴルフボールの薄肉表皮を研削除去するものである。」と訂正する。
d.訂正事項d
明細書の段落【0027】における「が、このスリット6…を省略することも可能である」の記載を削除する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aに関して、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)において、「本体部3の先端部には、円環状研削面5に開口する複数のスリット6(軸心Lに平行)が図3に示すように、周方向に沿って所定ピッチ(この場合、30°ピッチ)に配設されることが望ましい。」(段落【0026】)、「このスリット6…は、削りカスを研削面5とボール1との間から追い出すため等に設けられ、その数、長さ寸法及び幅寸法等も自由に変更することができる」(段落【0027】)と記載されている。
してみると、上記訂正事項aは、特許明細書又は図面に記載されていた範囲内で、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「研削部材2」を、「円環状研削面5に開口するスリット6が複数形成された」と限定し、同じく請求項1に記載されていた「薄肉表皮7を研削除去する」を、「スリット6から削りカスを追い出しながら」と限定したものである。
ゆえに、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項bないしdは、上記訂正事項aに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、発明の詳細な説明の記載を訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項aないしdは、いずれも、実質的に特許請求の範囲を拡張変更するものでない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申し立てについての判断

(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件請求項1及び2に係る発明は、前記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2(上記訂正事項a参照)に記載されたとおりのものである。(以下、「本件発明1及び2」という。)

(2)特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人荒井純子は、以下の主張をしている。
主張A
異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開昭63-109880号)、甲第2号証(特開平5-228226号)、甲第3号証(米国特許第3,133、383号)、甲第4号証(榊 毅史、柴田順二「カップ型研磨法による真球度特性」,砥粒加工学会誌,1993年5月,Vol.37,No.3,p.151〜154)及び甲第5号証(特公平5-39742号公報)を提出して、本件発明1及び2は、上記甲第1号証に記載されたものと同一または、甲第1号証ないし5号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するかまたは特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張している。
主張B
異議申立人は、本件出願が明細書に記載不備があり、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない旨主張している。

(3)甲第1号証乃至5号証に記載された発明
ア.甲第1号証(特開昭63-109880号公報)
甲第1号証には、本件発明1及び2に関連する事項として、
a.「1.モールド成形後のゴルフボールの表面を研削してゴルフボールを製造するに際し、同一平面上に互に120°位相をずらしてかつ中心軸線が互にゴルフボール配置位置に配置されるゴルフボールの中心点で交わるように配置され、それぞれ軸方向移動可能かつ回転可能に配設された3個の軸体を有し、これら軸体の先端面をそれぞれゴルフボール表面の曲率と同じ曲率を有するゴルフボール表面と係合する凹状球面に形成すると共に、前記軸体をそれぞれ軸方向に移動させかつ回転させる機構を具備した研削装置を使用し、ゴルフボール表面を前記軸体の凹状球面を有する先端面に係合当接させ、ゴルフボールをこれら軸体で支持しつつこれら軸体を互に同一方向に回転させて、前記軸体の先端面でゴルフボール表面を研削するようにしたことを特徴とするゴルフボールの製造方法。
2.各軸体の先端面が研削砥石にて形成された特許請求の範囲第1項記載の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1,2)
b.「従来の技術 ゴルフボールをモールド成形した場合...金型割面バリが生じ...従来、このようなゴルフボールのバリは、金型割面バリの場合は研削ホイールや研削ベルト等を用いて研削除去することが行われており...また、射出成形されたゴルフボールに対してはセンターレス研削機を使用してゴルフボール全表面を研削し、金型割面バリと保持ピンバリとを同時に除去する方法も採用されている。更に、砥石粒とゴルフボールとを振動しているバレルに入れ、砥石粒にてゴルフボールの全表面を同時に研削する振動バレル法等の研削方法もある。」(第2頁左上欄2〜17行)
c.「モールド成形後のゴルフボールの直径に多少のバラツキがあってもディンプルの深さ、形状にほとんど差のないゴルフボールが得られると共に、ゴルフボールの表面をムラなく研削することができ、従ってボールの飛行性能等の性能を安定して保持し得、しかも良好な研削表面を有し、優れた外観を呈するゴルフボールが得られるゴルフボールの製造方法を提供する」(第2頁左下欄8〜16行)
d.「本発明によれば、モールド成形後のゴルフボール表面のバリを研削除去するための研削装置が」(第3頁左上欄17〜18行)
e.「この研削装置を使用してゴルフボール表面を研削する場合、ゴルフボール表面を前記軸体の凹状球面を有する先端面に係合当接させ、ゴルフボールをこれら軸体で支持しつつこれら軸体を互に同一方向に回転させて、前記軸体の先端面でゴルフボール表面を研削するようにしたので、デインプル形状を損なうことなくゴルフボールの表面をムラなく研削することができ、モールド成形後のゴルフボールの直径に多少のバラツキがあってもディンプルの深さ、形状にほとんど差のないゴルフボールが製造される。」(第3頁右上欄7〜18行)
f.「前記軸体1(なお、他の軸体1′,1″はこの一の軸体1と同一構成であるため、一の軸体1の構成のみを説明し、他の軸体1′,1″の説明は省略する)は円柱状に形成され、その先端面laはゴルフボール2の表面の曲率と同じ曲率(通常曲率誤差+0.1〜0mm程度)を有し、ゴルフボール2表面と係合する凹状球面に形成されており、この凹状球面状の先端面laは研削砥石にて形成されている。」(第3頁左下欄15行〜右下欄3行)
g.「研削装置を用い、圧縮成形、射出成形等によりモールド成形されたバリ未除去のゴルフボールの表面を研削するもので、研削操作に際しては、まず前記研削装置の軸体移動機構を操作して3個の軸体1,1′,1″を軸方向に後退させ、これら3個の軸体1,1′,1″先端面1a,1′a,1″a間にゴルフボール2が入る空間を形成し、...これら軸体1,1′,1″の先端面1a,1′a,1″aをゴルフボール2の表面と係合当接させてゴルフボール2を支持する。そして、この状態で研削装置の軸体回転機構を操作し、各軸体1,1′,1″を互に同一方向に回転させる。...ゴルフボール2の表面が研削され、バリ(金属割面バリや保持ピンバリ)が除去される。...また軸体1,1′,1″の回転速度は10〜800m/sとすることが好ましい。ここで、軸体1,1′,1″のボールに対する加圧力及び回転数は互に相違させることができ...このため一定時間経過後にはゴルフボールの表面が確実に万辺なく研削される。また、上記研削装置を用いてゴルフボールを研削する場合、ゴルフボールの直径に多少のバラツキがあってもゴルフボールは回転開始から回転停止までの一定の研削時間で研削されるため、ディンプルの深さ、形状にほとんど差がなく研削され、全表面にムラのない品質及び外観が共に優れたゴルフボールが製造され」(第4頁左上欄2行〜左下欄1行)
h.「軸体を円柱状に形成したが、軸体の形状はこれに限られず、例えば円筒状等に形成し得る。軸体の先端面には、第3図に示したように、径方向に沿って研削くずを逃がすための溝4を放射状に形成するなど、種々変更可能である。」(第4頁左下欄4〜9行)
i.「(実験例)射出成形して得られた...アイオノマーカバーのツーピースボールに対し、第1図に示す如き研削装置を用いて表面研削を行った。この場合、各軸体の先端面はJIS#230の粒度を有するダイヤモンド砥粒にて形成されており、3個の軸体にそれぞれゴルフボールに6.0Kg,6.0Kg,6.0Kgの力が加わるよう加圧力を調整してゴルフボールを支持すると共に、それぞれの軸体の回転数を90m/s,90m/s,90m/sとなるよう調整して25秒間研削を行い」(第4頁左下欄下2行〜右下欄10行)
j.「以上説明したように、本発明方法によれば、モールド成形後のゴルフボールの直径に多少のバラツキがあっても性能をほとんど変化させることなくゴルフボールを研削し得て良好な研削表面を与え、性能及び外観がともに優れたゴルフボールを得ることができ、ワンピースボール、ツーピースボール、糸巻きボール等のゴルフボールを高品質に製造することができる。」(第5頁13〜20行)
が図面とともに記載され、第1表には、本発明例の研削量が30μmであることが示されている。
これらの記載事項a〜j及び図面によれば、甲第1号証には、以下のとおりの発明が記載されている。
「金型により成形した、金型割面バリ等をもつゴルフボール2の表面を、先端に向かって拡開してゴルフボール2の表面に当接する研削面(la,1′a,1″ a)の曲率がゴルフボールの曲率と同じ(通常曲率誤差+0.1〜0mm程度)であり、かつ、該研削面(la,1′a,1″ a)に開口する溝4が複数形成された3個の円筒状等の形状の軸体(1,1′ ,1″ )を、上記ゴルフボールの中心点Oから相互に120°ずらされて放射状に延びる3本の軸線上に配置し、加圧力を加えながらその各軸心廻りに同一方向に同一回転数にて回転させ、該溝4から研削くずを逃しながら、上記研削面(la,1′a,1″a)にて研削量30μmの研削を行うことにより、上記ゴルフボール2の表面のディンプル形状を損なうことなくゴルフボールの表面をムラなく研削し、モールド成形後のゴルフボールの直径に多少のバラツキがあってもデインプルの深さ形状にほとんど差のないようにするゴルフボールの表面研削方法。」(以下、「甲第1号証記載の発明」という。)
イ.甲第2号証(特開平5-228226号公報)
甲第2号証には、
a.「【請求項1】割金型でゴルフボールを成形した後、該金型接合部に対応するゴルフボール表面に発生したバリを、ノズルより高速噴射する流体で切削除去することを特徴とするゴルフボールの製造方法。」
b.「上記シーム部分Sにはバリ6が発生している。…ゴルフボールGを回転させながら、砥石7やサンドペーパーを用いて研磨し、…シーム部分Sのバリ6を切削除去している。…バリ6を砥石7等の研磨材で切削除去する方法を用いた場合…バリと砥石等の研磨材との摩擦熱により、ゴルフボール表面の材料が溶融し、この溶融材が砥石等に付着し、砥石等に目詰まりを起こさせて、切削能力を低下させる。この問題は、特に、プラスチックカバーを有するゴルフボールにおいては頻繁に発生している。」(【0002】〜【0004】)
が図面とともに記載されている。
ウ.甲第3号証(米国特許第3,133,383号明細書)
甲第3号証には、その図1,2に、カップ状の研削部材を、一定点から相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線上に配置し、各研削部材を上記一定点から等距離に保持しつつ、3本の各軸線廻りに回転させ、各カップ状の研削部材にて球体の表面を研削除去する装置が図示されると共に、「図面を参照すると、球状又は切頭球状ボール10は、3つのカップメンバー12,14,16と接触する。カップメンバー12,14,16は、各々環状表面でボール10と接触する。即ち、図2における符号18にそれらの内の一つを示すように、線又は帯状表面が接触する。」(第1欄59〜63行、訳は、異議申立人のものを採用、ただし「直線」は「線」とした。)と記載されている。
エ.甲第4号証(榊 毅史、柴田 順二「カップ型研磨法による真球度特性」,砥粒加工学会誌,1993年5月,Vol.37,NO.3,頁151〜153)
甲第4号証には、
a.「… 3カップ方式の結果…研磨前の球が真球度約0.2μmということを考えると、研磨後の真球度はほとんど向上していない… この原因としては、カップと球の面あたりの微妙な不均一性が考えられる。」(第153頁左欄第8行目〜第18行目)
b.「図7-bに示す改良型のカップを製作した。…カップを円管形状にした。これは球と接触するカップの面積を少なくすることにより、球面にすぐなじむようにという考えである。明らかに全体の真球度が向上し」(第153頁右欄第1行目〜第12行目)
が図面とともに記載されている。
オ.甲第5号証(特公平5-39742号公報)
甲第5号証には、
a.「(a)ゴルフボールのマトリックスを所定の平面に整列させて各ゴルフボールを方向づける工程、(b)前記マトリックスの方向を維持しながら各ゴルフボールを前記マトリックスから押し出す工程、(c)ゴルフボールの方向を維持しながらリング状鋳ばりの一部を除くステーションにゴルフボールを運搬する工程、
および(d)ゴルフボールのリング状鋳ばりを自動的に除くステーションにゴルフボールを自動的に移動させ、そこで前記ゴルフボールからリング状鋳ばりの一部を研磨手段により除く工程、からなることを特徴とするゴルフボールのリング状鋳ばりをバフ研磨する方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
b.「リング状鋳ばりの除去は研削作業や切断作業や研磨作業によって行う。なるべくは、先ず初めにカッターを使用してリング状鋳ばりの1部分を除去し、つぎに荒仕上げベルトを精密仕上げベルトからなる2本の連続したベルト研磨機を使用して残留中の余分のカバー材料を取り除く。最も好適な実施例において、ブラシを使用して残りの粒子を除去する。研磨作業の前に先ずカッターを使用し、研磨作業を受けねばならないリング状鋳ばりの残部それぞれが、ボールから突出している高さについてかなり均一であるかどうかを確かめる。」(第5頁第9欄21〜31行)
c.「リング状鋳ばりを除くためカッターと荒研磨機と精密研磨機とブラシの組合せを使用するのが好まれる。」(第7頁第14欄24〜26行)
が図面とともに記載されている。

(4)判断
A.主張Aについて、
本件発明1と上記甲第1号証乃至甲第5号証記載の発明とを対比すると、
上記甲第1号証乃至甲第5号証には、本件発明1の構成要件である、「先端に向って拡開してゴルフボール1の表面1aに当接する円環状研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボールの半径rより大きい」点について記載も示唆もなく、また、この点が当該技術分野において周知であるともいえない。。
因みに、甲第1号証記載の発明の研削面の曲率は、ゴルフボールの曲率と同じ(通常曲率誤差+0.1〜0mm)であるから、研削面の曲率の逆数である曲率半径Rは、ゴルフボールの曲率半径rと同じか小さいものであるから、甲第1号証には、上記先端に向って拡開してゴルフボール1の表面1aに当接する円環状研削面5の曲率半径Rがゴルフボールの半径rより大きい点についての記載も示唆もなく、また、甲第2号証と甲第5号証には、いずれも金型割面バリの除去についての記載があるのみで、ゴルフボールの薄肉表皮の研削除去についてはなにも記載されておらず、さらに、甲第3号証には、ボールと各カップメンバーとの接触面が線状またはそれより広い帯状であることが、甲第4号証には、球とカップを円管形状にすることにより球と接触するカップの面積を少なくすることが、それぞれ、記載されているが、甲第3号証と甲第4号証に、それぞれの接触面が平面であるか曲面であるかについて何ら記載されていない。
この点に関して、異議申立人は、甲第3号証のカップメンバーとの接触面が線状またはそれより広い帯状であることから、甲第4号証の図7-bの記載から、それぞれの接触面が平面であると主張しているが、これらだけから、それらの接触面が平面であるとすることができなく、異議申立人の主張は採用することができない。
そして、本件発明1は、この点により「ゴルフボールの表面に対する接触面積が小さく、研削時の発熱を少なくすることができる。これによって、研削量を極めて小さく設定することができ、高精度の研削を実現する。研削時において、ゴルフボール1の表面laの温度をあまり上昇させることなく美しく薄肉表皮7を研削することができる。」という明細書記載の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、上記甲第1号証に記載された発明と同一といえないばかりでなく、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証乃至甲第5号証に記載のものから当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2は、本件発明1を引用し、その構成要件を全て備えるものであるから、本件発明1の上記判断と同様な理由で、甲第1号証に記載された発明と同一といえないばかりでなく、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証乃至甲第5号証に記載のものから容易に発明をすることができたものとはいえない。
B.主張Bについて、
異議申立人は、請求項1の「円環上研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rよりも大きい研削部材」との記載から、本件発明1は、円環上研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rよりも僅かに大きい研削部材も含んでいるのに、本件明細書の発明の詳細な説明には、研削部材の研削面の曲率半径が∞である、表1記載の実施例のみの研削時間、研削圧力、研削部材の回転数、回転方向等の研削条件とそのボール外観等の効果が記載されているだけで、研削部材の研削面の曲率半径がゴルフボールの半径とほぼ同一であるものの研削時間、研削圧力、研削部材の回転数、回転方向等の研削条件とボール外観等の効果について、何ら教示していないから、本件明細書の発明の詳細な説明に、本件発明1を当業者が容易に実施できる程度に本件発明1の構成と効果が記載されていない旨の主張をしている。
この主張について検討するに、本件発明1の構成についてみるに、「円環上研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rよりも大きい研削部材」の製造については、例えば、上記甲第1号証の上記ア.f.の記載みられるように当業者が容易になし得ることであり、また、研削部材の円環上研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rよりも大きい程度がどの程度の場合に、研削時間、研削圧力、研削部材の回転数、回転方向等の研削条件をどのようにすべきかは、研削部材やゴルフボールの各形成材料、作業効率等に応じて、実験等により、当業者が適宜決定できることである。
また、本件発明1の効果についてみるに、「円環上研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rよりも大きい研削部材」による研削は、円環上研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rと同一またはそれよりも小さい研削部材による研削と比べて、接触面の面積が小さいことが明らかであり、したがって、本件発明1は、当該構成を備えることにより、研削時のゴルフボールの温度上昇を小さくすることができる効果を奏することは明らかである。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明に、研削部材の研削面の曲率半径が∞である、表1記載の実施例以外の他の実施例の研削時間、研削圧力、研削部材の回転数、回転方向等の研削条件と効果が記載されていないというだけでは、当業者が容易にその実施をすることができる程度に、本件発明1の目的、構成及び効果が記載されていないとすることができない。
したがって、本件出願の明細書の発明の詳細な説明の記載に異議申立人が主張するような不備があるとは認められないから、上記主張Bは採用することができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、
結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ゴルフボール表面研削方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 金型により成形したゴルフボールの金型割面バリを前もって研削し、その後、先端に向って拡開してゴルフボール1の表面1aに当接する円環状研削面5の曲率半径Rが該ゴルフボール1の半径rより大きく、かつ、該円環状研削面5に開口するスリット6が複数形成された研削部材2を、その軸心廻りに回転させ、該スリット6から削りカスを追い出しながら上記研削面5にて上記ゴルフボール1の薄肉表皮7を研削除去することを特徴とするゴルフボール表面研削方法。
【請求項2】 上記研削部材2を、一定点Oから相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線A,B,C上に配置し、次に、各研削部材2,2,2を上記一定点Oから等距離に保持しつつ、各軸線A,B,C廻りに同一方向に同一回転数にて回転させ、各円環状研削面5,5,5にて上記ゴルフボール1の薄肉表皮7を研削除去する請求項1記載のゴルフボール表面研削方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はゴルフボール表面研削方法及びゴルフボールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ゴルフボールには、プロゴルファーやトップアマチュアが使用するバラタカバー糸巻きボールと、一般アマチュアが好んで用いるノンカットカバーであるアイオノマーカバー糸巻きボール及びアイオノマーカバーツーピースソリッドボールと、主に練習場で用いられるワンピースソリッドボールと、がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、最近の主流となっているアイオノマーカバーを持つゴルフボールは、糸巻きボールであれ、ソリッドボールであれ、クラブのフェース溝による表面ささくれ傷がつきやすいという問題点をかかえている。
【0004】
即ち、バラタカバー、及び軟質ウレタンカバー等はその柔らかさゆえに、クラブのフェース溝によりよくスピンがかかる構造になっているが、ノンカットタイプの比較的剛性の高いアイオノマーをカバーに持つゴルフボールは、特にショートアイアン(例えば、9番アイアンやピッチングウェッジ、サンドウェッジ等)のフェース溝により、ボール表面にペイントが塗装してあっても、そのカバーの硬さのために、ペイント部と共にカバー部が削り取られる現象いわゆる「ささくれ」が発生する。
【0005】
これは、アイオノマー材料がゴルフボールに成形される際に、圧縮成形ならば約130〜170℃、射出成形ならば約180〜250℃に溶融させられ、金型に型沿いし、その後、冷却固化して成形されていることによる。具体的には、溶融したアイオノマー樹脂が金属表面に触れながら冷却固化する際、そのアイオノマー樹脂の成分であるオレフィン(例えば、エチレン等)と、不飽和カルボン酸と一部金属イオン化したものの共重合成分が均一に分布せず、表面部分がオレフィンで被覆されるためペイントとの密着力が比較的弱く、かつ、アイオノマーカバーの極表面部分の可撓性が損なわれて、ゴルフクラブ(アイアンクラブ)のフェース溝により、ペイントごと削り取られ易くなるものと推測される。
【0006】
従って、可熱溶融された樹脂を金型内にて冷却固化して形成されたゴルフボールの表面部分を薄皮1枚削り取ることにより、表面活性度を高めると共にペイントとの密着力を高めれば、ささくれ傷に強いゴルフボールを得ることができる。
【0007】
しかして、ゴルフボールの表面研削に関する技術は古くから公知であるが、これらの主たる目的は、成形後の金型割面のバリの除去、及び、高精度の真球度を得るものである。
【0008】
しかも、従来のゴルフボールの表面研削は、金型割面バリを前もって除去することなく、一度に全面を研削(研磨)するものである。
【0009】
ところが、金型割面バリを完全に除去すると共に表面を均一に研削するためには、研削量を約3/100mm以上(通常約5/100mm)とせねばならず、これだけ研削すれば、ゴルフボールごとにディンプルの大きさや深さが変化することになり、飛行性能上好ましくなかった。
【0010】
また、研削面としては、ゴルフボールの半径と同一の曲率半径を有する凹曲面とされ、接触面積が比較的大きく、研削時においてボール表面が比較的高温となり、樹脂が溶融し、美しく研削できないという欠点もあった。
【0011】
そこで、本発明の一の目的は、研削時のボール表面の温度をあまり上昇させることなく、ゴルフボールの薄肉表皮を研削除去してささくれ傷に強いゴルフボールを得ることができるゴルフボール表面研削方法の提供にある。
【0012】
また、他の目的は、ペイント密着強度が大であって、かつディンプル形状及び寸法精度が高いゴルフボールの提供にある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するために、本発明に係る一のゴルフボール表面研削方法は、まず、金型により成形したゴルフボールの金型割面バリを前もって研削する。
【0014】
そして、その後、先端に向って拡開してゴルフボールの表面に当接する円環状研削面の曲率半径が該ゴルフボールの半径より大きく、かつ、該円環状研削面に開口するスリットが複数形成された研削部材を、その軸心廻りに回転させ、該スリットから削りカスを追い出しながら上記研削面にて上記ゴルフボールの薄肉表皮を研削除去するものである。
【0015】
また、上記研削部材を、一定点から相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線上に配置し、次に、各研削部材を上記一定点から等距離に保持しつつ、各軸線廻りに同一方向に同一回転数にて回転させ、各円環状研削面にて上記ゴルフボールの薄肉表皮を研削除去するものである。
【0016】
【作用】
円環状研削面は、その曲率半径がゴルフボールの半径より大きく設定されているので、ゴルフボールの表面に対する接触面積が小さく、研削時の発熱を少なくすることができる。これによって、研削量を極めて小さく設定することができ、高精度の研削を実現する。
【0017】
薄肉表皮を研削除去することにより、ペイントとの密着力が比較的弱い部分を除去することができ、表面活性度を高めることと共に、ペイントとの密着力を高めることができる。
【0018】
略均一厚さに薄肉表皮が研削除去されるので、安定した形状寸法を有するディンプルを形成することができる。
【0019】
【実施例】
以下、実施例を示す図面に基づいて本発明を詳説する。
【0020】
図5は本発明に係るゴルフボール表面研削方法に使用するゴルフボール表面研削装置を示し、ゴルフボール1の表面1aを研削している状態を示している。
【0021】
この装置は、一定点Oから相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線A,B,C上にその軸心が配置される研削部材2,2,2を備える。ところで、本発明に於て、3本の軸線A,B,Cの成す角度120°については、実質的に120°であればよいものとする。
【0022】
研削部材2は、図2に示すように、有底円筒体からなる本体部3と、該本体部3に連設される筒状の軸部4と、からなる。
【0023】
また、本体部3の先端面には、断面直角三角形の円環状切欠き部が設けられ、先端に向って順次拡開する円環状研削面5が形成される。
【0024】
この場合、円環状研削面5の傾斜角度θを、約45°(具体的には、39〜51°程度)としている。
【0025】
従って、円環状研削面5の曲率半径R(図1参照)(研削部材2をその軸心Lを含む平面に沿って切断した際に、その断面における研削面5の曲率半径)は、研削面5が平面であるので無限大(∞)となり、この装置にて研削しようとするゴルフボール1(モールド成型後、金型割面のバリを前もって研削したもの)の半径rより大きく設定される。
【0026】
また、本体部3の先端部には、円環状研削面5に開口する複数のスリット6(軸心Lに平行)が図3に示すように、周方向に沿って所定ピッチ(この場合、30°ピッチ)に配設されることが望ましい。
【0027】
このスリット6…は、削りカスを研削面5とボール1との間から追い出すため等に設けられ、その数、長さ寸法及び幅寸法等も自由に変更することができる。
【0028】
ところで、円環状研削面5の粒度はJIS粒度♯80〜800、特に♯200〜300とするのが好ましい。特に、ダイヤモンド砥粒が好ましい。即ち、あまり荒ければ、美しく研削できず、逆に細かければ、研削時間が大となると共に研削時に高温となるからである。
【0029】
また、本体部3の外径寸法Dとしては、29〜35mm程度とし、本体部3の内径寸法dとしては、22〜28mm程度とするのが好ましいが、肉厚Tを2〜7mm程度となるように、外径寸法D及び内径寸法dを設定するのが好ましい。即ち、肉厚Tが2mmより小さければ、強度的に劣り、逆に7mmより大きければ、円環状研削面5に無駄な部分が多くなるからである。
【0030】
しかして、各研削部材2は、その軸部4が図示省略の駆動機構に支持され、該駆動機構の駆動にて、その軸心L廻りに回転駆動される。また、研削部材2は、その軸心L方向に沿って移動することができ、一定点O間の距離を調整することができる。なお、研削部材2の回転数としては、200〜400rpm、好ましくは、250〜350rpmとする。
【0031】
次に、上述の如く構成されたゴルフボール表面研削装置を使用して、本発明に係るゴルフボール表面研削方法を説明する。
【0032】
まず、成形後のゴルフボールの金型割面のバリを、別のバリ切削除去装置にて除去し、そのゴルフボール1を、図5に示すように、3個の研削部材2,2,2にて保持する。
【0033】
この場合、図1に示すように、ゴルフボール1の表面1aの一部が、各研削部材2,2,2の円環状研削面5のみに当接し、各研削部材2,2,2が一定点Oから等距離に配置される。
【0034】
次に、この状態にて、各研削部材2,2,2を同一方向に同一回転数にて回転させ、ゴルフボール1の薄肉表皮7(図4参照)を研削除去する。本発明において、同一回転数とは、実質的に同一であればよいものとする。
【0035】
この場合、ゴルフボール1の半径rに対して、円環状研削面5の曲率半径Rは無限大(∞)であるので、ゴルフボール1の表面1aの研削面5に対する接触面積が小であり、研削時に、表面1aの温度が余り上昇せず、高能率に研削が可能である。
【0036】
また、削り量、即ち、薄肉表皮7の肉厚寸法としては、薄肉表皮7が除去された後のカバー表面8と、これに塗布されるペイントとの密着力が比較的強いものとなるような量(寸法)である。具体的には、薄肉表皮7(肉厚としては、例えば、0.01〜0.02mmとなる。又、研削量としては10〜30mg、好ましくは10〜26mgとなる。)を除去することであり、上述の装置を使用すれば、このような薄肉表皮7の研削が可能である。
【0037】
次に、本発明に係るゴルフボール表面研削装置を使用して研削した後、ペイントを施して製品としてのゴルフボールを製造し、その性能等を調べた。
【0038】
即ち、モールド成型後に金型割面バリを別のバリ除去装置にて除去し、その後、図例のゴルフボール表面研削装置を使用して薄肉表皮7を除去し、次に、ペイント前処理を施した後、ウレタンクリアを1回塗布し、次に、マーキングを施し、その後、トップコートとしてウレタンクリアを塗布してゴルフボールを完成させ、このゴルフボールについてボール飛行性能(キャリー)等の性能試験を行って、その結果を表1に示した。なお、ゴルフボールのカバーはアイオノマーが主体(50%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)であればよい。
【0039】
【表1】

【0040】
表1において、▲1▼▲2▼は、本体部3の外径寸法Dが32mmであり、本体部3の内径寸法dが25mmであり、研削面5の番手が♯230である研削部材2を3個使用した場合であり、研削の際、研削面5への圧力を3kgとし、300rpmの回転数にて同一方向に(4〜8秒間)回転させた。
【0041】
また、ささくれ状態(ボールささくれ)とは、ツルーテンパー社製のスイングロボットにより9番アイアンにてヘッドスピード32m/sで打撃したときのボール表面の傷の状態をいう。即ち、▲1▼▲2▼のゴルフボールでは、アイアンクラブ表面のフェース溝により、ペイント表面上にスジ状の線が付いたが、外観は良好であった。
【0042】
なお、キャリーとは、ウッド1番のゴルフクラブにてヘッドスピード45m/Sで打撃したときの飛行距離であり、弾道仰角とは、そのときの打ち出し角度をいい、弾道仰角幅とは、弾道仰角のバラツキ幅である。
【0043】
表1において、▲3▼のゴルフボールは、研削面5の曲率半径Rをゴルフボール1の半径rと同一に設定して形成した場合を示し、金型割面バリを前もって研削せずに行った。この場合、ボール切削重量が50mgと多くなると共に、ディンプル深さ変化量も3.0/100mmと多くなって、飛行性能が低下すると共に、弾道仰角のバラツキ幅が増加した。
【0044】
また、この場合、研削中に研削面とボールとの間に削りカスがたまり、摩擦熱により、カバー材料が融触して研削面に融着し、このためボール表面に多数の傷が付いた。
【0045】
▲4▼のゴルフボールは、▲1▼▲2▼で用いた研削部材2を使用したが、▲3▼の場合と同様、金型割面バリを前もって研削せずに行った。
【0046】
従って、▲4▼のゴルフボールでは、削りカスが比較的早く研削面とボールの間から追い出されるため、削りカスの悪影響がなく外観は良好であったが、ボール切削重量及びディンプル深さ変化量が多く、そのため、▲3▼のゴルフボールと同様、飛行性能が低下すると共に、弾道仰角のバラツキ幅が増加した。
【0047】
次に、▲5▼のゴルフボールは、▲3▼に使用したものと同一の研削部材を使用し、この場合、研削量、つまり、ボール切削重量を25mgと減らした。
【0048】
しかしながら、この場合も、金型割面バリの研削を行わなかったので、金型割面の一部に削り残りが有り、外観上好ましくなく、飛行性能も低かった。
【0049】
また、▲6▼のゴルフボールは、金型割面バリの研削のみ行った場合を示している。この場合、ボール外観は良好であるが、ゴルフクラブのフェース溝により、ペイントが削り取られ、「ささくれ」が発生し、好ましくなかった。
【0050】
このように、このゴルフボール表面研削装置を使用して形成した▲1▼▲2▼のゴルフボールは、ゴルフクラブで打撃した際に生じる「ささくれ」(ペイント部と共にカバー部が削り取られる現象)を有効に防止することができ、しかも、ディンプルの寸法、形状を高精度に形成することができ、飛行性能等が優れたものとなる。
【0051】
次に、図6は研削部材2の変形例を示し、この場合、研削部材2が、円錐形状の盲状孔部10を有する中実体からなる本体部11と、該本体部11に連設される軸部12と、からなる。
【0052】
即ち、円錐形状の孔部10の壁面の一部が円環状研削面5とされる。従って、この研削面5の曲率半径Rも、ゴルフボール1の半径rより大きく設定され、上述の図2等に示す研削部材2と同様、表面1aの高温をあまり上昇させることなく、薄肉表皮7を研削除去することができる。
【0053】
なお、この場合も、研削面5の傾斜角度θを、約45°(具体的には、39〜51°程度)とする。
【0054】
ところで、上述の各実施例においては、円環状研削面5はその曲率半径Rが無限大(∞)であるが、ゴルフボール1の半径rに比べてはるかに大きい凹状の弯曲面とするも可能である。
【0055】
また、ゴルフボール1の半径rとは、研削前(つまり、モールド成型されたゴルフボール素材であって薄肉表皮7が研削除去されずに金型割面バリのみが除去されたもの)の半径であっても、研削後(薄肉表皮7が研削除去されたもの)の半径であってもよい。つまり、研削前後におけるゴルフボール1の半径rはほとんど差がないのに対して、円環状研削面5の曲率半径Rはこれらの半径rに比べて極めて大に設定されるからである。
【0056】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成されているので、次に記載する効果を奏する。
【0057】
本発明に係るゴルフボール表面研削方法によれば、研削時において、ゴルフボール1の表面1aの温度をあまり上昇させることなく美しく薄肉表皮7を研削することができ、また、薄肉表皮7を研削することにより、ペイント密着強度が大であってささくれ傷に強いゴルフボールを提供できる。研削部材2を、一定点Oから相互に120°ずらされて放射状に延びる同一平面上の3本の軸線A,B,C上に配置して、これらの研削部材2を各軸心L廻りに回転させるものでは、薄肉表皮7を極めて薄い略均一の肉厚として研削することができ、ディンプルの形状、寸法を高精度に仕上げることができる。
【0058】
金型割面バリを前もって研削することにより、完成したボールの外観を良好にすることができると共に、研削部材2によるボール切削重量を適切にし、また、ディンプル深さ変化量を小さくできる。従って、作製されるゴルフボールの飛行性能を低下させることがなく、また、弾道仰角のバラツキ幅を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明に係るゴルフボール表面研削方法に使用する研削部材の要部拡大断面図である。
【図2】
研削部材の断面図である。
【図3】
研削部材の平面図である。
【図4】
ゴルフボールの要部拡大断面図である。
【図5】
研削状態を示す簡略図である。
【図6】
研削部材の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ゴルフボール
1a 表面
2 研削部材
5 円環状研削面
7 薄肉表皮
A 軸線
B 軸線
C 軸線
O 一定点
R 曲率半径
r 半径
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-03-09 
出願番号 特願平6-74433
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A63B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 中村 圭伸
藤井 靖子
登録日 2002-11-22 
登録番号 特許第3372344号(P3372344)
権利者 住友ゴム工業株式会社
発明の名称 ゴルフボール表面研削方法  
代理人 中谷 武嗣  
代理人 豊田 武久  
代理人 中谷 武嗣  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ