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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1098065
異議申立番号 異議2003-70570  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-02-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-02-28 
確定日 2004-02-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3321338号「半導体装置の製造方法および製造装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3321338号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3321338号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成7年7月24日に特許出願され、平成14年6月21日にその特許権が設定登録され、その後、渡邊繁雄より請求項1ないし3に係る特許について特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成15年8月5日に訂正請求がなされたものである。
第2 訂正の適否
1 訂正請求の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲に記載の
「 【請求項1】 被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置の製造方法において、前記研磨クロス内に、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの光学的窓を開口し、研磨中にこの窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、前記被研磨膜の研磨率を変化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】 被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置において、前記研磨クロスに、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの開口部を備え、この開口部の背後に、研磨中に前記研磨クロスの裏面側から、光学的手段を用いてウェハ表面の被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を測定する測定装置と、研磨中に前記測定装置で測定された前記被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、研磨を制御する制御装置とを具備することを特徴とする半導体製造装置。」を、
「 【請求項1】 被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置の製造方法において、前記研磨クロス内に、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの光学的窓を開口し、研磨中にこの窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、前記被研磨膜の研磨率を時間的に変化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】 被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置において、前記研磨クロスに、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの開口部を備え、この開口部の背後に、研磨中に前記研磨クロスの裏面側から、光学的手段を用いてウェハ表面の被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を測定する測定装置と、研磨中に前記測定装置で測定された前記被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、研磨率が時間的に変化するように制御する制御装置とを具備することを特徴とする半導体製造装置。」と訂正する。
(2)訂正事項b
特許明細書の【0009】項に記載の
「・・・本発明による半導体装置の製造方法は、研磨クロス内に開口され、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの光学的窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて前記被研磨膜の研磨率を変化させることにより、所望の膜厚あるいは反射率で、被研磨膜研磨を終了させることを特徴とする。
また本発明による半導体製造装置は、研磨クロスに設けられ、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの開口部を通して研磨クロスの裏面側から光学的に被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を研磨中に測定する測定装置と、測定結果に応じて研磨を制御する制御装置とを有することを特徴とする。」を、
「・・・本発明による半導体装置の製造方法は、研磨クロス内に開口され、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの光学的窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて前記被研磨膜の研磨率を時間的に変化させることにより、所望の膜厚あるいは反射率で、被研磨膜研磨を終了させることを特徴とする。
また本発明による半導体製造装置は、研磨クロスに設けられ、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの開口部を通して研磨クロスの裏面側から光学的に被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を研磨中に測定する測定装置と、測定結果に応じて研磨率が時間的に変化するように制御する制御装置とを有することを特徴とする。」と訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
この訂正は、特許請求の範囲の請求項1に記載された「被研磨膜の研磨率を変化させる」を、「被研磨膜の研磨率を時間的に変化させる」と限定し、また、特許請求の範囲の請求項3に記載された「被研磨膜の研磨率を変化させる」を、「被研磨膜の研磨率を時間的に変化させる」と限定することから、いずれも特許請求の減縮を目的とするものに該当する。
そして、この訂正は明細書の段落【0026】〜【0028】、【0030】及び図4の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
この訂正は、訂正事項aによる特許請求の範囲の請求項1ないし3の訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載をこれに整合するように訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する同法第126条第2項から第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
第3 取消理由についての判断
1 本件発明
本件特許第3313582号の請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明3」という。)は、訂正明細書及び出願当初の図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された上記第2の1の(1)のとおりのものと認める。
2 引用刊行物
当審が通知した取消しの理由に引用した本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1(米国特許第5,433,651号明細書(クラス451/6)、特許異議申立人の提出した甲第1号証及びその部分訳)及び刊行物2(特開平6-252113号公報、同甲第2号証)には、それぞれ次の事項が記載されている。
(1)刊行物1
ア「1.本発明の分野
本発明は、半導体ウエハの機械化学研磨過程における平坦化終点を決定するのに使用される方法及び装置に関する。」(第1欄第5〜9行)
イ「図1は、高性能VLSI回路14において・・・メタライズ層18が全面に付着される(図1)。メタライズ層18は次に、図2に示すような平坦な金属スタッド10(またはワイヤ)が形成されるように研削される。メタライズ層18の平坦化は、CMPによる研磨を行うことで成されるが、これまでこの過程に伴ってきた困難さは、メタライズ層18の平坦化の間に、いつエンドポイントに達したかを正確に判定できないことである。」(第2欄第12〜27行)
ウ「このように、半導体製造技術では、機械化学平坦化過程の研磨特性を正確かつ効率的に検出し、モニタする方法及び装置に対する需要が未だに解決されず残されており、その場で、リアルタイムで測定する方法及び装置が強く求められている。
本発明の概要
本発明の目的は、CMP研磨過程をその場でリアルタイムにモニタし、エンドポイントを検出する方法及び装置を提供することである。」(第2欄第58行〜第3欄第4行)
エ「図3は、後に金属線、コンタクト/バイア・スタッド、パッド等を形成するために、パターン化された誘電層54を有する半導体ウエハすなわちワークピース52の機械化学研磨を行なう装置50である。アルミニウム等からなるコンフォーマル金属層56は半導体ウエハ52のパターン化された誘電層54を覆っている。・・・ 装置50は、R.Howard Strasbaugh社(カリフォルニア州ハンティントン・ビーチ)の単一ウエハ研磨機、Strasbaugh 6CA等、一般に入手できる機械化学研磨装置から構成することができる。装置50は、ウエハ52を固定するための手段を備えたウエハ・ホルダ(またはキャリア)60を含む。図に示す通り、ウエハ52は、ウエハ・ホルダ60と研磨盤62の間に置かれる。ウエハ・ホルダ60は適当な手段により、研磨盤62の上に装着されて、矢印104の方向に軸A1を中心に回転する。ウエハ・ホルダ60は更に適当な制御手段(図示なし)により、起動/停止信号に従って研磨位置と非研磨位置の間に適宜に位置付けることができる。研磨位置では、ウエハ・ホルダ60は研磨面58が研磨パッド66と研磨接触するように、またウエハ・ホルダ60が研磨パッド66に対して適当な圧力Pを加えるように位置付けられる。・・・研磨盤62はプラテン64と研磨パッド66を含む。」(第4欄第3〜36行)
オ「図3は、本発明に従って、研磨装置50のワークピース52を研磨する際に、研磨過程をその場でリアルタイムにモニタするための装置70を示している。装置70は、研磨盤62内の所定位置に取り付けられたビュー・ウィンドウ72を含む。ビュー・ウィンドウ72は研磨動作時すなわち研磨盤62の回転時にビューイング・パスを横切り、また半導体ウエハ52の研磨面58をその研磨時にその場で確認できるようにする。ビュー・ウィンドウ72により、研磨動作時にビュー・ウィンドウ72が半導体ウエハ52の下を通過した時に研磨面58を研磨盤62の下側69から確認することができる。具体的には、ビュー・ウィンドウ72により、ビューイング・パスに沿った検出領域をビュー・ウィンドウ72が通過する間に、研磨面58をその場で確認することができる(詳しくは後述)。・・・再び図3を参照する。研磨過程をその場でリアルタイムにモニタする本発明の装置70は更に反射測定手段74を備える。反射測定手段74は研磨盤62の下側に接続される。具体的には、ウィンドウ72が検出領域を通過する際に、ウエハ52の研磨面58の反射を測定するように、反射測定手段74はウィンドウ72に光学的に接続される(詳しくは後述)。反射測定手段74は更に、その場の反射率を表わす反射信号Rを供給する。その場の反射率の所定の変化は、例えば研磨エンドポイント等の、研磨過程の所定の条件に対応するものである。これに関して、ビュー・ウィンドウ72は研磨盤62内に取り付けられ・・・ビュー・ウィンドウ72の外形寸法は、5mm乃至10mmのオーダで・・・研磨パッド66には、ビュー・ウィンドウ72の位置に対応した位置にビューイング・アパーチャ73が設けられる。アパーチャの特徴は、図3に示すように、テーパー付き側壁にあり、アパーチャの上表面の直径はパッドとウィンドウの界面に近接したアパーチャの下表面より大きくなっている。・・・アパーチャの下表面の周囲寸法は、対応するウィンドウ寸法より大きいか、同程度のオーダである。・・・反射測定手段74は光源76を含み、好適な実施例では、光源76は入射光ビーム77を所定の入射角で、入射光ビーム・パスに沿ってビュー・ウィンドウ72の下側に送り、ビュー・ウィンドウ72を通過させる。入射光ビーム検出器78は、光源76から送られる入射光の量を検出し、光源76から送られた入射光の量を表わす第1光信号を与える。反射光ビーム検出器80は、ビュー・ウィンドウ72を通して反射した光81の量を、例えば検出領域内にあるビュー・ウィンドウ72上の半導体ウエハ52の表面58から反射した時に検出する。」(第4欄第47行〜第5欄第66行)
カ「制御手段82は上記の通り入射光信号と反射光信号を受取り、図5に示したようなリアルタイム・グラフのように認識可能な形式に変換され、これがCMP装置のオペレータによって、或いは自動制御のために用いられる(後述)。例えば制御手段82には、CMP装置50によるウエハ52の研磨中に研磨エンドポイント等の所望の研磨過程の条件のデータをリアルタイムに表示する手段を加えることができる。エンドポイントのデータは、好適には、特定のウエハについて、研磨時の反射率の、研磨動作の始まりの反射に対応する初期反射率に対する所定の変化によって判定される。所定の反射率変化は、研磨されている物質のタイプ及び対応する下のパターン化された物質に応じた反射変化率に対応する。」(第7欄第33〜50行)
キ「図5は、累積反射信号出力と、研磨エンドポイントに対応する時間の図である。このようなグラフは、マイクロソフト社(ワシントン州レドモンド)のQBASIC等、一般に入手できるソフトウェアを使った制御手段82の適当な周知のプログラミングを用いて、制御手段82によって作成することができる。図5は、2つのウエハ位置について、時間の関数としての反射率のシミュレーションを示している。最初の位置(破線)では、パターン化されていない未加工シリコン上にAlが被着される、第2位置(実線)では、線幅と間隔とが等しいシリコン・トレンチの列にAl膜が被着される。両位置の初期反射率は約90%で、これは全面被覆Al面に対応する。研磨エンドポイントの反射率は、位置1で約35%(未加工シリコンの反射率)であり、位置2で約65%(AlとSiの反射率の面積加重平均に近い)である。」(第9欄第20〜37行)
ク「35.研磨スラリが供給された回転可能な研磨盤を有する、ワークピースを研磨する際に、研磨過程をその場でモニタ制御する研磨機であって、a)上記研磨盤内に組込まれ、研磨時にビューイング・パスを横切り、且つ上記ビューイング・パスに沿った検出領域を横切る際に、上記研磨盤の下側から上記ワークピースの研磨面を研磨時にその場で確認することのできるウィンドウと、b)上記研磨盤の下側の上記ウィンドウに結合され、反射率を測定し、その場の反射率を表わす反射率信号を供給する手段と、を含み、上記その場の反射率の所定の変化が、上記研磨過程の所定の条件に対応する、研磨機。」(第16欄第17〜35行)
ケ「40.c)反射率信号に応答して、上記その場の反射率の所定の変化をリアルタイムに検出し、上記その場の反射率の所定の変化の検出を示す出力信号を供給する検出手段、を更に含む、請求項35記載の研磨機。」(第17欄第8〜14行)
コ「45.上記検出手段が、上記出力信号に応答して上記研磨過程を制御する手段を更に含む、請求項40記載の研磨機。」(第17欄第57行〜第18欄第3行)
サ「50.上記検出手段が、上記その場の反射率の所定の変化に対応する研磨エンドポイントを検出し、更に上記検出手段が、上記研磨エンドポイントの検出に応答して上記研磨過程を制御し、上記ワークピースの研磨を終了させることを特徴とする、請求項45記載の研磨機。」(第18欄第46〜53行)
上記記載事項ア〜サ及び図1〜3の記載からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認める。
「コンフォーマル金属層56を有する半導体ウエハ52を、研磨パッド66を用いて研磨する半導体装置の製造方法において、前記研磨パッド66内に、直径が下表面では5mm乃至10mm、上表面ではそれより大きいテーパー付き側壁を有する一つのビューイング・アパーチャ73を開口し、研磨中にこのビューイング・アパーチャ73を通して、前記研磨パッド66の裏面側から、コンフォーマル金属層56の研磨面58の反射率を、光源76、入射光ビーム検出器78及び反射光ビーム検出器80を用いて測定し、前記光源76、入射光ビーム検出器78及び反射光ビーム検出器80によって測定したコンフォーマル金属層56の研磨面58の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させる半導体装置の製造方法。」(以下、「刊行物1記載の第1発明」という。)、及び
「コンフォーマル金属層56を有する半導体ウエハ52を、研磨パッド66を用いて研磨する半導体装置において、前記研磨パッド66に、直径が下表面では5mm乃至10mm、上表面ではそれより大きいテーパー付き側壁を有する一つのビューイング・アパーチャ73を備え、このビューイング・アパーチャ73の背後に、研磨中に前記研磨パッド66の裏面側から、光源76、入射光ビーム検出器78及び反射光ビーム検出器80を用いて半導体ウエハ52表面のコンフォーマル金属層56の被研磨面58の反射率を測定する反射測定手段74と、研磨中に前記反射測定手段74で測定された前記コンフォーマル金属層56の被研磨面58の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させる制御装置とを具備する半導体製造装置。」(以下、「刊行物1記載の第2発明」という。)
(2)刊行物2
ア「【0017】図1には、本発明で用いられる研磨装置の要部が示されている。図1において符号13は基板保持ターンテーブルを示してている。基板保持ターンテーブル13上には、膜堆積、フォトリソグラフィー、エッチングの繰り返しにより凸凹パターンを形成した後膜堆積を行った直径150mmもしくは200mmのシリコン基板11がたとえば真空吸着により接着されている。本実施例においては、基板保持ターンテーブル13は自転のみを行うよう設計されている。一方シリコン基板11の上面にはシリコン基板11より十分小さい、たとえば直径50mmの研磨ヘッド12が配置されている。研磨ヘッド12は自転を行いながらシリコン基板11の半径方向に移動できる構造になっている。一方、シリコン基板11上の研磨ヘッド12と対称の位置には膜厚測定装置の検出ヘッド部14が設置される。膜厚測定装置の検出ヘッド部14は、研磨ヘッド12のシリコン基板の半径方向への動きに同期して、シリコン基板の半径方向に移動するように構成されている。
【0018】次に、この装置を用いての研磨による平坦化の手順を述べる。基板保持テーブル13に接着したシリコン基板11の主面に、研磨ヘッド12を圧接させるとともに、研磨ヘッド12を自転させ、シリコン基板11上をシリコン基板11の半径方向に移動させることにより、シリコン基板11の主面を研磨する。このとき、基板保持テーブル13の自転も同時に行う。シリコン基板11上に堆積したシリコン酸化膜を研磨する場合、研磨剤としては、たとえばコロイダルシリカを水溶液中に分散させ、KOHで弱アルカリ性にPH調整されたものが用いられる。研磨剤は、研磨ヘッド12の中心からシリコン基板11上に供給する。また研磨ヘッド12の研磨面には、たとえばポリウレタンパッドを取りつけ、これを研磨布とする。研磨中、膜厚検出装置の検出ヘッド部14は、シリコン基板11上で常に研磨ヘッド12と同一の円上に位置するようにコントロールされているため、シリコン基板11上の研磨ヘッド12が存在する円周上の平均の膜厚は常に膜厚測定装置によってモニターされている。膜厚検出装置により得られた膜厚データはコンピュータに送られ、コンピュータは前記膜厚データをもとに研磨ヘッド12の位置、研磨ヘッド12にかける圧力、研磨ヘッド12の回転数、研磨ヘッド12から供給する研磨剤の量、研磨ヘッド12の温度などをコントロールしながら、シリコン基板11の外周部から中心部、もしくはシリコン基板11の中心部から外周部に向かって研磨を進める。」(第4頁左欄第2〜45行)
イ「【0029】本実施例によれば実施例1および2と同様、シリコン基板31上の膜の膜厚を常に取得しつつ、膜厚データを研磨ヘッド32のコントロール部にフィードバックをかけているため、所望の残し膜厚で正確に研磨を終了することができる。」(第5頁右欄第38〜42行)
ウ「【0031】上記、実施例1、2、3において、いずれの場合も研磨中にシリコン基板上の膜の膜厚をモニターしながら研磨をおこなっている。シリコン基板に凸凹パターンが形成され、その上に膜が堆積してある場合の膜厚検出は比較的困難である。次に、本実施例で用いた膜厚検出法を示す。・・・。
【0032】光源としてたとえばタングステンランプなどの白色光源を用い、よく知られている通常の方法により、基板の反射率のスペクトルを測定する。」(第6頁左欄第33行〜同頁右欄第10行)
エ「【0038】以上のように、反射率スペクトルのフーリエ変換後のピークの位置を常にモニターし、式1により遂次膜厚に換算しながら研磨を進めることにより、凸凹段差を形成した基板上に堆積した膜を研磨する場合でも、膜厚の絶対値をモニターすることができ、正確に研磨の終点を検出することができる。」(第7頁左欄第26〜31行)
3 対比・検討
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1記載の第1発明とを対比すると、後者の「コンフォーマル金属層56」は前者の「被研磨膜」に相当し、以下、同様に「半導体ウエハ52」は「ウェハ」に、「研磨パッド66」は「研磨クロス」に、「ビューイング・アパーチャ73」は「光学的窓」に、「光源76、入射光ビーム検出器78及び反射光ビーム検出器80」は「光学的手段」にそれぞれ相当することは明らかであり、また、後者の「被研磨膜面の反射率が、所定の値に達した時点で前記被研磨膜の研磨を終了させる」ことと、前者の「被研磨膜面の反射率に応じて、・・・前記被研磨膜の研磨率を時間的に変化させる」こととは、「被研磨膜面の反射率に応じて、前記被研磨膜の研磨を制御する」限りにおいて共通しているので、両者は、
「被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置の製造方法において、前記研磨クロス内に、少なくとも一つの光学的窓を開口し、研磨中にこの窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜面の反射率に応じて、前記被研磨膜の研磨を制御する半導体装置の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:研磨クロス内に開口する光学的窓の大きさが、本件発明1では、研磨特性には影響を与えない程度の小さなものであるのに対して、刊行物1記載の第1発明では、直径が下表面では5mm乃至10mm、上表面ではそれより大きいテーパー付き側壁を有するものである点。
相違点2:本件発明1では、光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、前記被研磨膜の研磨率を時間的に変化させるのに対して、刊行物1記載の第1発明では、そのようにされてない点。
そこで、前記相違点1、2について検討すると、
相違点1については、研磨クロス内に開口部を形成すれば研磨特性に影響を与えることは技術常識であって、その大きさを研磨特性には影響を与えない程度の小さな大きさとすることは当業者にとって自明なことである。従って、刊行物1記載の発明の光学的窓の大きさを研磨特性には影響を与えない程度の小さな大きさとすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎないことである。
相違点2については、刊行物2には、シリコン酸化膜を有するシリコン基板11を、研磨布を用いて研磨する半導体装置の製造方法において、光学的手段によって反射率のスペクトルを測定することにより測定したシリコン酸化膜の膜厚に応じて、研磨布の張られた研磨ヘッド12の回転数、研磨布に対してシリコン基板11に加えられる圧力、研磨ヘッド12から供給する研磨剤の量などを変化させることで、前記シリコン酸化膜の研磨率を時間的に変化させ、所望の膜厚で研磨を終了させることが記載されていると認められる。(刊行物2の上記記載事項ア〜エ参照。)
そして、前記刊行物2記載の技術的事項における「シリコン酸化膜」、「シリコン基板11」、「研磨布」及び「研磨ヘッド12」は、本件発明1の「被研磨膜」、「ウェハ」、「研磨クロス」及び「底盤」に相当するものであり、しかも、前記刊行物2の技術的事項は、刊行物1記載の第1発明と被研磨膜を有するウェハを研磨クロスを用いて研磨する半導体装置の製造方法において、光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率が所定の値に達した時点で研磨を終了させる点で課題及び技術分野が共通していて、刊行物1記載の第1発明に対する適用を阻害する特段の事由も見出せないことから、刊行物2記載の技術的事項を、刊行物1記載の第1発明に適用することにより、相違点2における本件発明1のよう構成する事は、当業者であればが容易に想到し得たことである。
そして、本件発明1の奏する効果も、刊行物1記載の第1発明及び刊行物2記載の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成にさらに「光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させること」の特定事項を付加したものであるが、当該事項は、刊行物1記載の第1発明も具備している以上、本件発明2は、刊行物1記載の第1発明及び刊行物2記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件発明2の奏する効果も、刊行物1記載の第1発明及び刊行物2記載の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
(3)本件発明3について
本件発明3と刊行物1記載の第2発明とを対比すると、後者の「コンフォーマル金属層56」は前者の「被研磨膜」に相当し、以下、同様に「半導体ウエハ52」は「ウェハ」に、「研磨パッド66」は「研磨クロス」に、「ビューイング・アパーチャ73」は「開口部」に、「光源76、入射光ビーム検出器78及び反射光ビーム検出器80」は「光学的手段」に、「コンフォーマル金属層56の被研磨面58」は「被研磨膜面」に、「反射測定手段74」は「測定装置」にそれぞれ相当することは明らかであり、また、後者の「被研磨膜面の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させる制御装置」と前者の「被研磨膜面の反射率に応じて、・・・研磨率を時間的に変化するように制御する制御装置」は、「被研磨膜面の反射率に応じて、前記被研磨膜の研磨を制御する制御装置」である限りにおいて共通しているので、両者は、
「被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置において、前記研磨クロスに、少なくとも一つの開口部を備え、この開口部の背後に、研磨中に前記研磨クロスの裏面側から、光学的手段を用いてウェハ表面の被研磨膜面の反射率を測定する測定装置と、研磨中に前記測定装置で測定された前記被研磨膜面の反射率に応じて、研磨を制御する制御装置とを具備する半導体製造装置。」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点1:研磨クロスに備えた開口部の大きさが、本件発明3では、研磨特性には影響を与えない程度の小さなものであるのに対して、刊行物1記載の第2発明では、直径が下表面では5mm乃至10mm、上表面ではそれより大きいテーパー付き側壁を有するものである点。
相違点2:本件発明3では、研磨中に測定装置で測定された被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、研磨率が時間的に変化するように制御する制御装置であるのに対して、刊行物1記載の第2発明では、そのように制御する制御装置でない点。
ところで、前記相違点1、2については既に検討したとおりである。
そして、本件発明3の奏する効果も、刊行物1記載の第2発明及び刊行物2記載の技術的事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別なものでもない。
なお、特許権者は、意見書において、本件発明1及び本件発明3は「研磨率を時間的に変化させること」及び「研磨率が時間的に変化するように制御する制御装置」を具備することにより訂正明細書の段落【0029】記載の効果を奏する旨主張しているが、研磨率を時間的に変化することは、研磨率が変化することと同義であると解され、しかも、どのように変化するかが何ら特定されてない以上、特許請求の範囲の記載に基づかない前記主張は採用することができない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし2は、上記刊行物1記載の第1発明及び刊行物2記載の技術的事項に基づいて、また、本件発明3は、刊行物1記載の第2発明及び刊行物2記載の技術的事項に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし3についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置の製造方法および製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置の製造方法において、前記研磨クロス内に、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの光学的窓を開口し、研磨中にこの窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、前記被研磨膜の研磨率を時間的に変化させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】 前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率が、所定の値に達した時点で研磨を終了させることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】 被研磨膜を有するウェハを、研磨クロスを用いて研磨する半導体装置において、前記研磨クロスに、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの開口部を備え、この開口部の背後に、研磨中に前記研磨クロスの裏面側から、光学的手段を用いてウェハ表面の被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を測定する測定装置と、研磨中に前記測定装置で測定された前記被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて、スラリー中の研磨剤濃度、研磨クロスの張られた底盤の回転速度およびウェハの回転速度、研磨クロスに対してウェハに加えられる圧力のいずれかを変化させることで、研磨率が時間的に変化するように制御する制御装置とを具備することを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置の表面を平坦化する方法およびその装置に関し、特に、半導体装置の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing :化学的機械研磨)法により平坦化する場合に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の微細化、高集積化に伴い、半導体装置の表面の段差が問題となってきている。そのため表面を平坦化する方法として、CMP法が注目されている。以下、従来のCMP法を簡単に説明する。まずCMP装置の研磨クロスを張り替えて研磨を開始する時、研磨率を測定するために、サンプル用のウェハを研磨する。なおサンプル用のウェハの初期膜厚はあらかじめ測定しておく。研磨後の残膜厚と初期膜厚および研磨時間とから、研磨率を算出する。この後のウェハの研磨においては、この研磨率に基ずいて、所望の膜厚にするために算出した時間で研磨を行う。
【0003】
しかし、CMP法における研磨率は、研磨クロスの表面状態に依存して変動する。そのため、多数枚のウェハを固定された研磨時間だけ研磨すると、研磨率の変動に伴い残膜厚にばらつきが生じるという問題があった。この様なばらつきを最小限に押さえるため、従来のCMP法では、ウェハを数枚研磨する毎に研磨時間の設定を見直す作業を必要としていた。この見直し作業は多大な時間と手間がかかり、装置のスループットを落とす原因となっていた。
【0004】
この様な問題を解決する方法として、研磨を行うと同時に膜厚の測定を行う方法が提案されている(特開平5-309559号公報)。この方法を図5を用いて簡単に説明する。図5(a)は従来例による研磨装置の断面図、図5(b)は上定盤を除いた平面図である。遊星運動するキャリア112上に保持されたウェハ113が、上定盤110および下底盤111により加圧研磨される。このウェハ113は、研磨加工中に上下の定盤110、111から部分的にオーバーハングし、測定点114において、上下に設置されたレーザー変位センサ115、116を用いてウェハ上下面の位置が検出され、演算処理により膜厚が測定される。
【0005】
しかし、この方法では、膜厚測定のためにオーバーハングされたウェハの外周部分はオーバーハングされない他の内周部分に比べて、常に短い時間しか研磨されず、したがって測定部分とその他の部分において、実際には膜厚が異なるという問題がある。さらにこの研磨装置ではウェハ上下面の位置を測定し演算処理により膜厚を測定しているが、例えば干渉を利用して、直接被研磨膜の膜厚を測定する方法に比べて、測定精度が劣る。また、ウェハ上下方向から位置を測定するためにレーザー変位センサを二つ必要とするため、経済効率が悪い。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来のCMP装置による研磨方法では、被研磨部分と膜厚測定部分との間に研磨時間の差を生じてしまい、正確な膜厚が測定できず、所望の膜厚で研磨を終了させることは困難であった。
【0007】
本発明の第1の目的は、研磨中の被研磨膜の膜厚あるいは反射率を研磨領域内で直接測定し、所望の膜厚あるいは反射率で研磨を終了させることができる半導体装置の製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の第2の目的は、研磨中の被研磨膜の膜厚あるいは反射率を研磨領域内で自動測定し、その測定結果に応じて研磨を制御する機構を有する半導体製造装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明の半導体装置の製造方法および半導体製造装置は、以下の如く構成されている。
本発明による半導体装置の製造方法は、研磨クロス内に開口され、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの光学的窓を通して、前記研磨クロスの裏面側から、被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を、光学的手段を用いて測定し、前記光学的手段によって測定した被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率に応じて前記被研磨膜の研磨率を時間的に変化させることにより、所望の膜厚あるいは反射率で、被研磨膜の研磨を終了させることを特徴とする。
また本発明による半導体製造装置は、研磨クロスに設けられ、研磨特性には影響を与えない程度の小さな少なくとも一つの開口部を通して研磨クロスの裏面側から光学的に被研磨膜の膜厚あるいは被研磨膜面の反射率を研磨中に測定する測定装置と、測定結果に応じて研磨率が時間的に変化するように制御する制御装置とを有することを特徴とする。
【0010】
このように、本発明による研磨方法では被研磨膜の膜厚あるいは反射率を研磨中に被研磨領域内で測定するため、膜厚を正確に測定することができ、その結果に応じて研磨を制御するので、常に所望の膜厚あるいは反射率で正確に研磨を終了させることができ、研磨膜厚の制御性の大幅な向上を図ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1(a)は本発明によるCMP装置の断面図である。CMP装置は底盤10と底盤10上にはられた研磨クロス11と、底盤10の上方に設けられたウェハホルダ13と、スラリー14を研磨クロス11上に供給するスラリー供給管15とを有する。スラリー供給管15からスラリー14が研磨クロス11上に滴下される。ウェハ12はウェハホルダ13により研磨クロス11に対して加圧される。ウェハホルダ13および底盤10がそれぞれ回転し、ウェハ12は研磨クロスおよびスラリー14で研磨される。
【0012】
本発明においては、研磨クロス11の一部には光学用センサ窓16が形成されている。なお、この光学用センサ窓16はCMPの研磨特性には影響を与えない程度に十分小さくなければならない。
【0013】
この下には、光学センサ17が底盤10に固定されている。光学センサはウェハ12の被研磨膜に光を照射し、その反射光を受光測定し、解析することにより、被研磨膜の膜厚または反射率を検知する。
【0014】
この光学センサ17で得られた実測値に応じて、制御装置18は研磨率を変化させる。研磨率を変化させるための制御には例えば次のようないくつかの方法がある。すなわち、第1に制御装置18は底盤10およびウェハホルダ13の回転数を制御することができる。また、第2に制御装置18は、例えば純水を用いて希釈率を増減することにより、スラリー14中の研磨剤濃度を制御することができる。さらに、第3に制御装置18はウェハホルダ13の位置を調節することにより、ウェハ12の研磨クロス11に対する圧力を制御することができる。またこれらの方法を組み合わせて制御することも可能である。それらの方法により、制御装置18は測定された膜厚または反射率に基づいて、研磨率を調節する。
【0015】
なお、図1(a)では光学センサ17は底盤10に一体化して固定されており、底盤10と共に回転するようになっているが、これに限らず、底盤10にも開口部を形成し、光学センサ17は底盤10と別に設置してもよい。
【0016】
ところで、光学用センサ窓16はCMPの研磨特性には影響を与えない程度に十分小さく研磨クロス11内部に形成されなければならない。この様子を図1(b)を用いて説明する。図1(b)は本発明によるCMP装置を上から見た概略図である。光学用センサ窓16は研磨クロス11に比べて、十分に小さく形成されている。さらに、光学用センサ窓16が研磨クロス11と共にQを中心として回転し、ウェハホルダー13により研磨クロス11に加圧されているウェハ12の下を通過する度に、光学センサ17は被研磨膜からの反射光を観測する。
【0017】
以下、本発明によるCMP装置を用いた研磨方法について具体的に例を挙げながら説明する。
第1の実施の形態として、被研磨膜として例えばW、Al、Cuのような反射率の高い金属膜を使用して、これら金属膜の埋め込み配線を本発明によるCMP装置を用いて形成する場合を、図2を用いて説明すると、図2(a)は層間絶縁膜29に配線用の溝もしくはコンタクトホールを形成した後埋め込み配線材料として金属膜30が堆積された直後の半導体装置の断面図である。この金属膜30を研磨して、図2(b)に示すように埋め込み配線部以外の金属膜を除去し、埋め込み配線部のみに残す場合を考える。
【0018】
まず研磨が開始すると同時(時刻t=0)に光学センサ17は反射光の測定を開始する。光学センサ17は底盤10が一回転する度に一回、ウェハの下を通過し、この間にウェハ表面の反射率rを測定する。
【0019】
図2(c)は研磨時間tに対する表面の反射率の変化を示している。研磨開始当初は堆積された金属膜30が表面全体を覆っているためこの金属膜30の反射率R0が測定される。研磨が進み、埋め込み配線部以外の金属膜が除去されると、光学センサ17はウェハの大部分を占める層間絶縁膜29の反射率R1を測定し、反射率の低下が検知される。制御装置18はこの情報を受けた時点(t=Tc)で研磨を終了させる。
【0020】
この方法によれば、光学センサ17が金属膜の反射率の低下を常に被研磨領域内で検知するため、埋め込み配線部以外の金属膜が除去される時刻を正確に検知することができ、制御性良く所望の埋め込み形状を得ることができる。
【0021】
なお、前記実施の形態では、制御装置18は、埋め込み配線部以外の金属膜が研磨されて反射率の低下が検出された時点で研磨を終了させていたが、第2の実施の形態として、ウェハ面内における金属膜の残りをなくす方法を説明する。この方法では、反射率を常に観測し、埋め込み配線部以外の金属膜が研磨されて反射率の低下が検出された時点よりさらに適切な時間T0だけ長い時間研磨を行ったのちに研磨を終了させる。このようにすれば、ウェハ面内で金属膜厚にばらつきがある場合でも、金属膜が残ることが無く、配線のショートを防ぐことができる。
【0022】
第3の実施の形態として、被研磨膜として層間絶縁膜を想定し、この層間絶縁膜を本発明によるCMP装置を用いた研磨により平坦化する場合を、図3を用いて説明する。図3(a)は電極39上に層間絶縁膜40が膜厚X0で堆積された直後の半導体装置の断面図である。この層間絶縁膜40を所望の膜厚Xcまで研磨して、図3(b)に示すように平坦化する場合を考える。
【0023】
図3(c)は研磨時間tに対する層間絶縁膜40の膜厚xを示している。まず研磨が開始すると同時(時刻t=0)に光学センサ17は反射光の測定を開始する。光学センサ17は底盤10が一回転する度に一回、ウェハの下を通過し、この間に層間絶縁膜40の膜厚xを測定する。制御装置18はこの情報を受けて、層間絶縁膜40の膜厚が所望の値Xcに達した時点(t=Tc)で研磨を終了させる(実線参照)。
【0024】
ところで、研磨クロスの表面状態その他の影響により、研磨率は変化することがある。図3(c)中の破線(f)は研磨率が大きい場合、図3(c)中の破線(s)は研磨率が小さい場合をそれぞれ示している。この様に研磨率の変動に対応して、所望の膜厚に達する時刻はそれぞれTf,Tsのように変化する。本実施の形態の方法によれば残膜厚を被研磨領域内で常に観測しているため、層間絶縁膜40の膜厚が所望の値Xcに達した時点(t=Tf、もしくはTs)で研磨を終了させることができる。すなわち、研磨率の変動に対応して、研磨時間を増減させることにより、常に所望の膜厚Xcを得ることができる。
【0025】
第4の実施の形態として、研磨のスループットを改善し、さらに被研磨膜の膜厚の制御性を向上させる研磨方法について説明する。前記第3の実施の形態と同様に、被研磨膜として層間絶縁膜を使用し、この層間絶縁膜を本発明によるCMP装置を用いた研磨により平坦化する場合を説明する。
【0026】
図4は研磨時間tに対する層間絶縁膜40の膜厚xを示している。実線(a)は本実施の形態に対応し、実線(b)は前記第3の実施の形態に対応している。以下、実線(a)にしたがって説明する。
【0027】
まず研磨が開始すると同時(時刻t=0)に光学センサ17は反射光の測定を開始する。光学センサ17は底盤10が一回転する度に一回、ウェハの下を通過し、この間に層間絶縁膜40の膜厚xを測定する。
【0028】
なお、研磨開始当初はスループットの向上を目的として、スラリー中の研磨剤濃度を高くして、研磨率を大きめに設定しておく。そして層間絶縁膜40の膜厚が所望の膜厚X2に近い値X1になった時点T1で制御装置18はスラリー14中の研磨剤濃度を低下させ、研磨率を低下させる。そして層間絶縁膜40の膜厚が所望の値X2になった時点T2で制御装置18は研磨を終了させる。
【0029】
本実施の形態によれば研磨終了間際の研磨率が小さいために研磨時間のばらつきに対する膜厚のばらつきを小さく抑えることができる。例えば、図4に示すように、研磨時間のばらつきΔTに対する膜厚のばらつきΔX2は前記第1の実施の形態による膜厚のばらつきΔX3よりも小さくすることができる。さらに研磨開始当初(t=0〜T1)の研磨率を高く設定しているため、研磨にかかる全体の時間T2は、前記第1の実施の形態における研磨時間T3よりも短くてすむ。この様に本実施の形態によれば研磨のスループットを改善し、さらに被研磨膜の膜厚の制御性を向上させることができる。
【0030】
なお前記第4の実施の形態では、スラリー14中の研磨剤濃度を変えることで、研磨率を変化させたが、これに限らず、底盤10とウェハホルダ13の少なくとも一方の回転数を変化させることにより研磨率を変化させることも可能である。あるいは、ウェハホルダ13の位置を調節することによりウェハ12に加えられる圧力を変化させることで研磨率を変化させることもできる。
【0031】
【発明の効果】
本発明による研磨方法によれば、研磨クロス内に開口された光学的窓を通して研磨中にこの研磨クロス裏面側から被研磨膜の膜厚あるいは反射率を測定しているので、従来のCMP装置による研磨方法のように、被研磨部分と膜厚測定部分との間に研磨時間の差が生じることがなく、実際の被研磨膜と等しい膜厚を常に測定することが可能である。したがって、この測定結果に応じて研磨を制御する本発明による研磨方法によれば、従来の研磨方法よりいっそう正確に所望の結果を得ることができる。また、本発明のCMP装置は光学センサを一つしか必要としないため、光学センサを二つ必要としていた従来の方法に比べ、経済効率が優れており、また測定手段をウェハの一方の側に設置すればよいので、装置の構成も簡略化することができる。さらに、本発明のCMP装置は、例えば干渉による光学的手段を用いて直接被研磨膜の膜厚を測定しているため、精度良く膜厚を測定することができるので、より厳密に研磨の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明CMP装置の構造を示す図である。
【図2】本発明CMP装置による第1の実施の形態の説明図である。
【図3】本発明CMP装置による第3の実施の形態の説明図である。
【図4】本発明CMP装置による第4の実施の形態の説明図である。
【図5】従来のCMP装置を示す図である。
【符号の説明】
O、Q…回転軸、10…底盤、11…研磨クロス、12…ウェハ、13…ウェハホルダ、14…スラリー、15…スラリー供給管、16…光学センサ窓、17…光学センサ、18…制御装置、39…電極、29、40…層間絶縁膜、30…金属膜、110…上定盤、111…下定盤、112…キャリア、113…ウェハ、114…測定部、115、116…レーザー光学センサ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-01-08 
出願番号 特願平7-187155
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H01L)
最終処分 取消  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
上原 徹
登録日 2002-06-21 
登録番号 特許第3321338号(P3321338)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 半導体装置の製造方法および製造装置  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 哲  

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