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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F25C
管理番号 1098113
異議申立番号 異議2002-70358  
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-12-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-13 
確定日 2004-05-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3199268号「人工雪製造装置」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3199268号の請求項1ないし4、6ないし8に係る特許を取り消す。 同請求項5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3199268号の発明についての出願は、平成3年6月21日に出願され、平成13年6月15日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、異議申立人北越工業株式会社により特許異議申立がなされ、平成15年7月30日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年10月10日に意見書が提出されたものである。


2.本件発明
本件特許第3199268号の請求項1〜8に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次のとおりのものである。
「 【請求項1】 外気を吸入して圧縮空気にするコンプレッサと、
この圧縮空気を冷却する空冷アフタークーラと、
前記アフタークーラに冷媒を導くためのエンジン駆動のファンと、
前記アフタークーラで冷却時凝縮する発生水を圧縮空気から分離する水分離器と、
前記水分離器内の発生水を排出するオートドレンバルブと、
前記所定の温度を有する圧縮空気を用いて霧吹きの原理で水を外気中に霧状に噴出させて人工雪を製造するスノーガンを設けた人工雪製造装置において、
外気の冷たい空気を冷媒用のファン風として第一番目に前記アフタークーラに当てるようにアフタークーラを配置したことを特徴とする
人工雪製造装置。
【請求項2】 前記アフタークーラによる冷却後の圧縮空気の温度を雪製造に適する所定の温度に制御および前記アフタークーラで冷却時凝縮する発生水の凍結防止のためにアフタークーラを通るファン風量を制御可能な開口面積調整手段を有するシャッタを設けたことを特徴とする
請求項1記載の
人工雪製造装置。
【請求項3】 前記コンプレッサが油冷却式であることを特徴とする
請求項1ないし2記載の
人工雪製造装置。
【請求項4】 前記オートドレンバルブの位置で発生水の凍結防止のため、前記オートドレンバルブをファン排風の風下側に配置して保温するようにしたことを特徴とする
請求項1ないし3記載の
人工雪製造装置。
【請求項5】 前記アフタークーラ出口の圧縮空気回路の下流にミストセパレータを設け、
前記ミストセパレータの位置で発生水の凍結防止のため、前記ミストセパレータをファン排風の風下側に配置して保温するようにしたことを特徴とする
請求項3ないし4記載の
人工雪製造装置。
【請求項6】 ファン排風の温度をあげるため前記アフタークーラのファン風下流に、少なくともコンプレッサ用オイルクーラ、エンジン冷却水用ラジエータを配置したことを特徴とする
請求項4ないし5記載の
人工雪製造装置。
【請求項7】 前記水分離器に発生水の凍結防止用ヒータを設けたことを特徴とする
請求項1ないし6記載の
人工雪製造装置。
【請求項8】 搬送台車に外気を吸入して圧縮空気にするコンプレッサと、
この圧縮空気を冷却する空冷アフタークーラと、
前記アフタークーラに外気を冷媒として導くためのエンジン駆動のファンと、
外気をファン風として最初に前記アフタークーラに当てるようにアフタークーラを配置し、
前記アフタークーラによる冷却後の圧縮空気の温度を雪製造に適する所定の温度に制御および前記アフタークーラで冷却時凝縮する発生水の凍結防止のためにアフタークーラを通るファン風量を制御可能な開口面積調整手段を有するシャッタと、
前記アフタークーラで冷却時凝縮した発生水を圧縮空気から分離する水分離器と、
水分離器内の発生水を排出するオートドレンバルブと、
を搭載することを特徴とする
請求項1ないし7記載の
人工雪製造装置。」


3.申立の理由の概要
特許異議申立人北越工業株式会社は、
・甲第1号証:平成2年6月20日社団法人日本産業機械工業会発行、
「産業機械(第477号、平成2年6月号)」(第20〜22頁)
・甲第2号証:特開昭61-223277号公報
・甲第3号証:実願平1-84593号(実開平3-23689号)の
マイクロフイルム
・甲第4号証:実願昭59-173809号(実開昭61-88077
号)のマイクロフイルム
・甲第5号証:株式会社ジャパンマシニスト社1981年10月10日発行
「知りたい空気圧 12版」第104頁
・甲第6号証:北越工業株式会社発行
「エアマン 昭和56年度版総合カタログ」第2〜3頁
を提出し、本件の請求項1〜8に係る発明は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであり、特許法第113条第2項の規定により、その特許は取り消されるべきものである旨主張している。


4.当審が通知した取消理由通知の概要
当審が通知した取消理由通知では、
・刊行物1:平成2年6月20日社団法人日本産業機械工業会発行、
「産業機械(第477号、平成2年6月号)」(第20〜22頁)
(上記甲第1号証と同じ。)
・刊行物2:特開昭61-223277号公報(上記甲第2号証と同じ。)
・刊行物3:実願平1-84593号(実開平3-23689号)の
マイクロフイルム(上記甲第3号証と同じ。)
・刊行物4:実願昭59-173809号(実開昭61-88077号)の
マイクロフイルム(上記甲第4号証と同じ。)
・刊行物5:特公昭41-8756号公報
・刊行物6:特開昭56-121889号公報
を引用し、本件の請求項1ないし8に係る発明は、刊行物1ないし6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をうけることができないものであり、本件の請求項1ないし8に係る発明の特許は取り消されるべきものである旨が述べられている。


5.各刊行物記載の発明
(1)当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物1(上記甲第1号証と同じ。)に記載された発明
刊行物1には次のa.〜e.の記載がなされている。
a.刊行物1第20頁左欄1〜13行には、
「1.はじめに
・・・・・
スキー場では安定した雪の量を確保するため,人工降雪装置の採用が始まり約10年が経過した。
最近ではより広範囲に人工降雪を採り入れるスキー場が増えており、装置の大型化が望まれる傾向にある。
以上の背景から開発された,人工降雪装置用コンプレッサSM1600Sは国内で最大クラスの吐出空気量を持つディーゼルエンジン駆動のスクリュコンプレッサである。」
と記載されている。

b.刊行物1第20頁左欄14〜21行には、
「2.概要および仕様
人工降雪装置の全体構成を図1に示す。
SM1600Sを組合せることによる装置全体の降雪能力は,気温マイナス4℃において使用水量800L/分とした場合,1時間当り約640m2の面積に20cmの降雪が可能である。
スキー場でのSM1600Sの設置状況を写真に外形寸法を図2に,主要仕様を表に示す。」
と記載されている。

c.刊行物1第20頁図1.人工降雪装置の全体構成 には、
「雪」、「スノーガン」及び「アフタクーラ」
が図示されている。

d.刊行物1第20頁左欄22行〜第21頁右欄6行には、
「3.特徴および構造
SM1600Sの構造図を図3に示す。
3・1 アフタクーラ内蔵
造雪効果を高めるため,圧縮により高温となった圧縮空気を冷却する空冷式アフタクーラを内蔵している。
・・・・・
3・3 低騒音
・・・・・
(1)エンジンおよびコンプレッサのエアフィルタからの吸気音を低減する
多重障壁構造を持った吸気ダクトの採用
・・・・・
(4)冷却ファンの風切音低減のため、コンプレッサ後部軸端に取付けた大
口径ファンを、低速回転で駆動するファンドライブ付コンプレッサの採

などにより十分な騒音防止効果が得られ、建家なしでの屋外設置も可能にしている。」
と記載されている。

e.刊行物1第22頁図3.SM1600Sの構造図 には、
「コンプレッサエアフィルタ」、「アフタクーラ」、「オイルクーラ」、「ラジエータ」および「コンプレッサ本体」
が記載されている。


また、人工降雪装置用コンプレッサSM1600Sの「コンプレッサ本体」が「コンプレッサエアフィルタ」から外気を吸入することは、第20頁右欄の写真に示されたスキー場でのSM1600Sの設置状況、第22頁図3に示されたSM1600Sの構造図および上記引用箇所d.後半の「コンプレッサエアフィルタ」,「屋外設置」に関する記載から自明である。
したがって、刊行物1には、
「外気を吸入するコンプレッサ本体と、
圧縮により高温となった圧縮空気を冷却する空冷式アフタクーラと、
人工雪を製造するスノーガンを設けた人工降雪装置。」
なる発明が記載されている。


(2)当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物2(上記甲第2号証と同じ。)に記載された発明
刊行物2には次のa.〜f.の記載がなされている。
a.刊行物2第1頁右下欄3,4行には、
「本発明は、エンジン駆動圧縮機における圧縮空気の除湿装置に関し、・・・」
と記載されている。

b.刊行物2第2頁右下欄14行〜第3頁左上欄7行には、
「・・・本発明の構成を図示の実施例に基づき説明すると、圧縮機1の吐出口に連通するレシーバタンク3と、該レシーバタンク3の圧縮空気の出口に連通する空冷式の熱交換器から成るアフタクーラ4を有し、且つ、エンジン2に直結駆動される圧縮機及び関連機器を外気の吸気孔及び排気孔を有する箱体10内に収納した冷凍サイクルを備えないパッケージ型圧縮機において、前記箱体内の冷却後の排風の通過経路に前記アフタクーラ4通過後の圧縮空気を管路6を介して通過させ前記排風と熱交換し、圧縮空気を加熱乾燥することを特徴とする。」
と記載されている。

c.刊行物2第3頁右上欄2〜5行には、
「そして、エンジン駆動の油冷式圧縮機及び関連機器を外気の吸気孔及び排気孔を有する箱体内に収納したいわゆるパッケージ型(防音型)油冷式圧縮機が図示されており、・・・」
と記載されている。

d.刊行物2第3頁左下欄3行〜右下欄2行には、
「オイルクーラ7,アフタクーラ4はラジエータ8と同様、ファン9により空冷される。以上の圧縮機1及びエンジン等の関連機器は外気の吸気孔12及び排気孔11を有する箱体10内に収納されている。
・・・・・
箱体10の吸気孔12より外気がラジエータ8のファン9・・・により導入され、排気孔11より排出して、箱体内を換気し、エンジン2あるいは圧縮機1等の機器から発生した熱で箱体内の温度が上昇することを防ぐようになっている。」
と記載されている。

e.刊行物2第3頁右下欄9行〜第4頁左上欄1行には、
「・・・圧縮空気は、レシーバタンク3内のセパレータにより潤滑油分と分離され空冷式の熱交換器から成るアフタクーラ4へ導入され該部で冷却され飽和状態となる。次いで、飽和状態にある圧縮空気はドレントラップ5により凝縮水分が分離されたのち・・・・アフタウオーマ6の一次流路の入口に送られ、箱体内を換気した約60℃〜80℃の高温の排風と熱交換し、加熱乾燥されサービスエアーとして一次流路の出口より排出される。」
と記載されている。

f.刊行物2第4頁左上欄13行〜右上欄16行には、
「・・・アフタクーラにより飽和状態にある圧縮空気を、高温の廃熱媒体すなわち箱体内の圧縮機及びエンジンその他の関連機器から発生する排熱を冷却し箱体外へ排出する際の排風と熱交換し、加熱乾燥するので、特別な熱源あるいは大型の熱交換器を必要とせずに加熱媒体を得るための特別な手段を用いることなく従来そのまま単に廃棄されていた圧縮機、駆動源たるエンジンその他の関連機器から排出される廃熱を有効利用し圧縮空気の相対湿度を低下させ・・・・空気工具中での水分の凝縮を防止することができる。
・・・・・
また上記除湿装置を、エンジン駆動圧縮機等一切の機器と共に一つのパッケージ内に収納したユニットとして、設置場所を問わず、移動可能な画期的な乾燥空気供給用圧縮機ユニットを提供することができ、その実用上の効果は大なるものである。」
と記載されている。


(3)当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物3(上記甲第3号証と同じ。)に記載された発明
刊行物3には次のa.〜d.の記載がなされている。
a.刊行物3明細書第2頁6行〜第3頁6行には、
「【従来の技術】
第2図にアフタクーラとオイルクーラとを並設した圧縮機の全体構成を示す。
・・・・・
ファン7の回転によりアフタクーラ5側から空気がファン7側に吸引され、この空気流れがアフタクーラ5およびオイルクーラ6内を流れて冷却作用を行なうものである。」
と記載されている。

b.刊行物3明細書第3頁7行〜第4頁8行には、
「【考案が解決しようとする課題】
通常の気温時においては特に問題ないが、冬期等においては気温が零下になる場合も多い。例えばスノーマシン等に付設される圧縮機の場合には可成低温の状態で使用される場合が多い。
アフタクーラ5から出る圧縮空気の温度が、例えば2℃乃至5℃以下になる場合には、ファン7により空気の吸引を続けるとアフタクーラ5内に凍結が生じ、最悪時にはアフタクーラ5が損傷する問題点が生ずる。
・・・・・
本考案は以上の問題点を解決するもので・・・アフタクーラ5の凍結を防止・・・した油気空冷式圧縮機を提供することを目的とする。」
と記載されている。

c.刊行物3明細書第5頁5行〜第6頁10行には、
「【実施例】
以下、本考案の実施例を図面に基づき説明する。
第1図は第2図におけるアフタクーラ5およびオイルクーラ6まわりのみを表示したもので、その他の構造は第2図の場合と同一である。
アフタクーラ5とオイルクーラ6間には開閉手段1が設けられる。・・・開閉手段1は・・・フード22と・・・開閉扉2とから構成される。・・・
開閉扉2が開放している場合にはファン7によりアフタクーラ5側からオイルクーラ6側に向かう空気流れが生じ、これにより圧縮空気および潤滑油の冷却が行なわれる。
冬期等において、例えば送出管14内の圧縮空気が2℃乃至5℃位になった場合には開閉扉2を図示の如く閉止する。これによりファン7を回転してもアフタクーラ5内には空気流れが生じない。
・・・・・
アフタクーラ5内の空気流れが遮断されるため、アフタクーラ5のオーバクーリングはなくなり、内部凍結が防止されることになる。」
と記載されている。

d.刊行物3明細書第6頁13行〜第7頁13行には、
「・・・送出管14には・・・検出手段4が配設される。・・・検出手段4が送出管14内の圧縮空気の温度が2℃乃至5℃位になったことを検出すると、検出信号を発する。これにより制御機構3は・・・開閉扉2の閉止を行なう。送出管14内の圧縮空気温度が前記温度値以上になれば開閉扉2は自動的に開放されることになる。以上の説明では開閉扉2の全開,前閉についてのみ説明したがアフタクーラ5の送出管14側に温度検出センサ23を設け、この信号により開閉扉2の開度を制御し、開閉扉2のハンチングを防止するように制御機構4およびアクチュエータを構成することもできる。
・・・・・
なお開閉手段の構造は図示のものに限定するものでない。」
と記載されている。


(4)当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物4(上記甲第4号証と同じ。)に記載された発明
刊行物4には次のa.〜d.の記載がなされている。
a.刊行物4明細書第2頁11行〜第5頁6行には、
「【従来の技術】
一般に広く使用されているコンプレッサの制御形式は、第3図に示す如く、レシーバタンク1内の圧力値により
・・・・・
空気制御を行っている。しかし、従来、前記の如く空気制御のために、コンプレッサ5の制御回路中に水滴が発生し、その水滴が制御回路の絞られた部分、例えば弁部に付着し、特に低温時には凍結して回路を閉塞する。この結果、コンプレッサ5の制御が不能となり装置全体の機能が果たせなくなるといった事態を招いていた。
このような事態が発生する箇所としては、まず、オートドレン装置6が掲げられる。オートドレン装置6は、レシーバタンク1、オイルセパレータ7及びアフタークーラ8等を経て供出される圧縮空気からドレンセパレータ9で分離した水を自動的に機外へ排出するものである。つまり、オートドレン装置6は分離した水がある一定量溜まると、フロートの作用で放出するものであるが、この溜まった水が、低温時等において凍結すると、水の放出ができなくなり本来の機能が果たせなくなる。
・・・・・
エンジン10で駆動されるコンプレッサ5にあっては、・・・エンジンガバナ12を・・・切換えるように制御する。
・・・・・
又、第3図において、・・・16はサービスバルブ、・・・18はオイルクーラ、・・・21は冷却ファンである。」
と記載されている。

b.刊行物4明細書第5頁8〜15行には、
「そこで、本考案は上記事情に鑑み、・・・・・コンプレッサ用制御回路の凍結防止装置を提供することを目的とする。」
と記載されている。

c.刊行物4明細書第6頁2行〜第7頁19行には、
「「第1実施例」
以下、本考案に係るコンプレッサ用制御回路の凍結防止装置の実施例を図面に基づき説明する。第1図はその凍結防止装置の第1実施例を示し、図中、第3図と同一部分は、同一符号を付して説明する。前記圧力調節弁2及びオートドレン装置6をケースで囲繞し、該ケースに2個の開口を穿設し、一方の開口を噴気口22とし、他方の開口を吐出口23とする。噴気口22には、オイルセパレータ7の空気吐出側つまりアフタークーラー8の入力側が噴気管24、25により接続されている。
・・・・・
上記構成の第1実施例において、レシーバタンク1内の圧縮空気の一部が、オイルセパレータ7を介し、更に噴気管24,25を介して各ケース内に噴出され、圧力調節弁2及びオートドレン装置6の外面からそれぞれの全体、特に弁の絞り部を保温し、更には加温し、圧力調節弁2及びオートドレン装置6内の水分の凍結を防止し、不用意に凍結した場合には解凍する。」
と記載されている。

d.刊行物4明細書第9頁19行〜第10頁7行には、
「「第3実施例」
第3実施例は詳細に図示しないが、第1図において、圧力調節弁2やオートドレン装置6等にヒータHを付設し、該ヒータHに電源を接続するものである。そして、ヒータHに通電させて、前記各実施例と同様に、圧力調節弁2やオートドレン装置6等を電熱により保温し、又加温して、圧力調節弁2やオートドレン装置6等内に付着した水分の凍結を防ぐ。」
と記載されている。


(5)当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物5に記載された発明
刊行物5には次のa.〜b.の記載がなされている。
a.刊行物5第1頁左欄15行〜右欄6行には、
「本発明は一般の冷凍機を用いず、・・・・微粒子氷、或は人工雪を製造しうる装置に関するものである。
図に於て、1は空気圧縮機であり、
・・・・・
4はバイパス弁でありベンチュリースロート6に吸揚げられる水量の調節をする。5はポンプであり。バイパス弁4よりの水量不足の時に、強制的に水を送り込むため設けられている。
6はベンチュリースロート(絞り部)であり排気管10から出る冷却空気の加速のためである。
7はノズルであり、水タンク3より水を吸揚げ霧状に吹出すものである。
8はベンチュリーディフューザ(拡大管)・・・である。」
と記載されている。

b.刊行物5第1頁右欄13〜24行には、
「本発明は以上の構造であり、空気圧縮機1で加圧された空気をアフタークーラ11で温度降下させ、空気タービン2に導き、ここで空気は断熱膨張し、冷却され排気管10に出る。
・・・・・
排気管10の冷却空気は、スロート6で加速され、ノズル7より出る水の微粒子を氷結せしめ、ベンチュリーディフューザ8より人工氷、或は人工雪として取り得る事が出来る。
本発明によれば、冷凍機を使用する事なく、簡単に微粒子氷、或は人工雪を製造しうる。」
と記載されている。


(6)当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物6に記載された発明
刊行物6には次のa.〜b.の記載がなされている。
a.刊行物6第2頁左上欄5〜8行には、
「一般に、スクリュ型圧縮機、スライドベーン型圧縮機等の油冷式圧縮機にあっては、圧縮機本体の潤滑と冷却を兼ねて潤滑油を該本体と油分離器との間で還流させている。」
と記載されている。

b.刊行物6第2頁右下欄11行〜第3頁左上欄9行には、
「第1図は本発明の第1の実施例を示す系統図で、図中1は圧縮機本体を示し、
・・・・・
圧縮機本体1に設けられた吐出側配管6には油分離器7が接続され、該油分離器7には後述の潤滑油と共に圧送された圧縮空気の中から油分を分離するためのミストセパレータ8が設けられ、該セパレータ8で清浄にされた圧縮空気は空気配管9に設けられた保圧弁10で所定圧以上に保持された圧縮空気を逆止弁11を介して空気タンク12に供給する。該空気タンク12には供給用の空気配管13が設けられ、その途中に設けられた止め弁14を介して空気タンク12内に貯留された圧縮空気を使用機器に供給する。」
と記載されている。


(7)甲第5号証に記載された発明
甲第5号証第104頁1〜13行には、
「この高温の空気が空気タンクや配管の中で常温まで下がると・・・水蒸気がガス状でいられなくなって・・・ドレンになり、・・・最も低いところに溜ります。
このようにして発生するドレンをできるだけ多く取除き、空気の湿度を下げて空気圧機器への悪影響をなくすため除湿装置やエアフィルタが使用されます。
図2-61は除湿装置(アフタクーラ)の1例です。」
と記載されている。


(8)甲第6号証に記載された発明
甲第6号証第2,3頁には、
PDS エアマン(ニュースクリューコンプレッサー)の、
機種:PDS 125S
PDS 175S
PDS 265S
PDS 370S
PDS 600S
の写真が掲載されており、これらの機種は台車を有していることが示されている。



6.本件の請求項1に係る発明について
(1)対比
請求項1に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比する。
刊行物1に記載された発明の
・コンプレッサ本体、
・空冷式アフタクーラ、
・人工降雪装置
は、請求項1に係る発明における
・コンプレッサ、
・空冷アフタークーラ、
・人工雪製造装置
にそれぞれ相当すると認められる。


(2)一致点
したがって、両発明は、
「外気を吸入して圧縮空気にするコンプレッサと、
この圧縮空気を冷却する空冷アフタークーラと、
人工雪を製造するスノーガンを設けた人工雪製造装置。」
で一致し、下記のA〜Dの点で相違する。

(3)相違点
《相違点A》
請求項1に係る発明では「前記アフタークーラに冷媒を導くためのエンジン駆動のファン」を設けているが、刊行物1にこのようなファンは記載されていない。
(以下、「相違点A」という。)

《相違点B》
請求項1に係る発明では、
「前記アフタークーラで冷却時凝縮する発生水を圧縮空気から分離する水分離器と、前記水分離器内の発生水を排出するオートドレンバルブと」を設けているが、刊行物1にこのような水分離器やオートドレンバルブは記載されていない。
(以下、「相違点B」という。)

《相違点C》
請求項1に係る発明では、
「前記所定の温度を有する圧縮空気を用いて霧吹きの原理で水を外気中に霧状に噴出させて」いるが、刊行物1にこのような噴出は記載されていない。
(以下、「相違点C」という。)

《相違点D》
請求項1に係る発明では、
「外気の冷たい空気を冷媒用のファン風として第一番目に前記アフタークーラに当てるようにアフタークーラを配置」しているが、刊行物1にこのような配置は記載されていない。
(以下、「相違点D」という。)


(4)判断
《相違点Aについての検討》
刊行物2の上記引用箇所5.(2)d.には、
「吸気孔12より外気(本件の「冷媒」に相当)がファン9により導入され、アフタクーラ4に導かれる。」旨が記載されている。
また、刊行物2の上記引用箇所5.(2)b.中程には、
「エンジン2に直結駆動される圧縮機及び関連機器」と記載され、刊行物2の図面には、「エンジン2にファン9が直結される」様子が図示されている。
このように、これらの記載中に示されるファン9が、本件の請求項1に記載された「アフタークーラに冷媒を導くためのエンジン駆動のファン」に相当するものであることは明らかであり、この刊行物2に記載された「ファン9」に関する技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせることは容易であったと認められる。

《相違点Bについての検討》
刊行物4の上記引用箇所5.(4)a.中程には、
「オートドレン装置6は、・・・アフタークーラ8等を経て供出される圧縮空気からドレンセパレータ9で分離した水を自動的に機外へ排出するものである。つまり、オートドレン装置6は分離した水がある一定量溜まると、フロートの作用で放出するものである」
と記載されている。
この記載中の「ドレンセパレータ9」および「オートドレン装置6」は、本件の請求項1に記載された「水分離器」および「オートドレンバルブ」にそれぞれ相当するものであることは明らかであり、刊行物4のこれら「ドレンセパレータ9」および「オートドレン装置6」に関する技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせることは容易であったと認められる。

《相違点Cについての検討》
刊行物5の上記引用箇所5.(5)a.には、
「4はバイパス弁であり、ベンチュリースロート6に吸揚げられる水量の調節をする。・・・・・
7はノズルであり、水タンク3より水を吸揚げ霧状に吹出すものである。」
と記載されている。
また、同刊行物の上記引用箇所5.(5)b.には、
「・・・空気圧縮機1で加圧された空気をアフタークーラ11で温度降下させ、空気タービン2に導き、ここで空気は断熱膨張し、冷却され排気管10に出る。
・・・・・
排気管10の冷却空気は、スロート6で加速され、ノズル7より出る水の微粒子を氷結せしめ、ベンチュリーディフューザ8より人工氷、或は人工雪として取り得る事が出来る。」
と記載されている。このベンチュリースロート6で水を吸揚げる際、本件請求項1記載のように「霧吹きの原理」に基づくことは明らかである。
そうすると、刊行物5には、相違点Cにおける、請求項1に係る発明の構成のうちの、
「・・・圧縮空気を用いて霧吹きの原理で水を・・・霧状に噴出させて」
に相当する技術が記載されている。
さらに、相違点Cにおける、請求項1に係る発明の構成の、他の部分である、
「前記所定の温度を有する圧縮空気を用いて・・・水を外気中に霧状に噴出させて」(下線は当審が付した。以下同じ。)
は、例えば、
・実願昭61-151918号(実開昭63-57477号)のマイクロ
フイルム(特に、明細書第4頁2〜4行の「・・・エヤー路(10)に供給する圧縮空気の温度を所定値(例えば5℃)以下にする」、及び同頁14,15行の「・・・水と・・・・圧縮空気を混合し大気中に噴出して雪を作る・・・」参照。)
・特公昭59-11835号公報(特に、第7欄12,13行の「・・・水小滴がノズル26を数フイート越えた大気中に放出されるまでに」、及び第10欄31,32行の「ノズルでの圧縮空気の温度は4℃であった。」参照。)
・特公昭42-26918号公報(特に、第1頁左欄下から10〜7行の「本発明は圧力を加えた水の流れと圧縮した空気とを混合し、その混合物を比較的冷たい周囲の大気中に放出して凍結した粒子・・・を製造する」参照。)
等にも記載されているように周知の技術にすぎない。
ただし、上記「前記所定の温度」とは、本件明細書段落【0029】の、
「この冬場の低温の外気を・・・吸い込んで、アフタクーラ5を強力に冷却する。この冷却方法は冷凍式ドライヤ等を用なくても、エアコプレッサー1で圧縮した比較的高温多湿な空気を確実に冷却、除湿し、スノーガンで使用できる圧縮空気にする。」
という記載、及び、本件明細書段落【0008】の、
「スノーガンのノズルのところに給送する人工雪製造用の圧縮空気の温度は(0〜4℃)ぐらいにする必要がある。」
という記載から、
“スノーガンで使用できる圧縮空気の(0〜4℃ぐらいの)温度”
を意味していると解釈した。
したがって、相違点Cにおける、請求項1に係る発明の構成は、すべて、刊行物5に記載されている技術、あるいは、周知の技術に相当するものである。
そして、これらの刊行物5記載の技術及び周知技術を、刊行物1に記載された発明に組み合わせることは容易であったと認められる。

《相違点Dについての検討》
まず最初に、刊行物3の記載について検討すると、刊行物3の上記引用箇所5.(3)b.には、
「【考案が解決しようとする課題】
通常の気温時においては特に問題ないが、冬期等においては気温が零下になる場合も多い。例えばスノーマシン等に付設される圧縮機の場合には可成低温の状態で使用される場合が多い。
アフタクーラ5から出る圧縮空気の温度が、例えば2℃乃至5℃以下になる場合には、ファン7により空気の吸引を続けるとアフタクーラ5内に凍結が生じ、最悪時にはアフタクーラ5が損傷する問題点が生ずる。」
と記載されている。
この記載中の「冬期等においては気温が零下になる場合も多い。」で言う、「気温」が通常は外気温を意味することは明らかである。
ただ、上記の「ファン7により空気の吸引を続けると」で言う「空気」については外気を意味しているとは必ずしも断定できない面もあるが、この引用箇所5.(3)b.の全体的な趣旨からして、刊行物3に記載された発明においては、
“冷たい外気、又は、これに準じる低温の空気がファン7より吸引される”
と認定できる。
また、同刊行物の上記引用箇所5.(3)a.には、
「ファン7の回転によりアフタクーラ5側から空気がファン7側に吸引され、この空気流れがアフタクーラ5およびオイルクーラ6内を流れて冷却作用を行なうものである。」
と記載されている。
この記載、及び同刊行物第1図の記載からして、
“ファン7より吸引される空気は第一番目にアフタクーラ5に当たる”
のは明らかである。
したがって、刊行物3に記載された発明には、
「スノーマシン等に付設される圧縮機において、冷たい外気、又は、これに準じる低温の空気がファン7より吸引され、この空気は第一番目にアフタクーラ5に当たる」
という構成が含まれている。

次に、この構成を、刊行物1に記載された発明へ組み合わせることについて検討する。
刊行物1に記載された発明の「空冷式アフタクーラ」の冷却に用いる空気を、刊行物3に記載された発明の上記構成のように、空気は第一番目にアフタクーラに当たる、ようにしてアフタクーラの冷却を行うことは当業者が容易に行うことができたと認める。また、冷却に用いる空気をこのような流れとする場合、この空気として同構成においては2種類の空気(冷たい外気、又は、これに準じる低温の空気)が想定されており、選択が可能である。
この2種類の空気の選択について以下述べると、刊行物1に記載された発明の「空冷式アフタクーラ」の周囲には大量の外気が存在している。
なぜなら、この「空冷式アフタクーラ」は、刊行物1の「人工降雪装置用コンプレッサSM1600S」に内蔵されており、この「人工降雪装置用コンプレッサSM1600S」は屋外設置可能であり、その結果、外気に晒され、その周囲には大量の外気が存在している。(刊行物1第20頁右欄の写真に示されたスキー場でのSM1600Sの設置状況および同刊行物上記引用箇所5.(1)d.末尾の「・・・建家なしでの屋外設置も可能にしている。」参照。)
そうすると、刊行物1に記載された発明の「空冷式アフタクーラ」を冷却する空気を、刊行物3の発明の上記構成のように流動させるにあたり、この「空冷式アフタクーラ」の周囲に大量の外気が存在していることを考慮すれば、刊行物3の発明の上記構成においてファン7より吸引される空気として想定されている2種類の空気(冷たい外気、又は、これに準じる低温の空気)の内から「冷たい外気」を採用し、このような選択の上で、上記刊行物3の発明の構成のように空気を流動させることに格別の困難性は認められない。
したがって、刊行物1に記載された発明に、上記の刊行物3に記載された発明の構成を組み合わせ、相違点Dにおける請求項1に係る発明の構成に到達することは当業者が容易に行えたものである。


《発明の効果についての検討》
本件の請求項1に係る発明の効果については、本件明細書【0020】段落に、
“2次アフタークーラ、ドライヤおよび建屋を不要とする為、大幅なコストの削減と低減等ができる”
旨が記載されている。
これに対し、上記《相違点Dについての検討》の欄で、刊行物1に記載された発明に、刊行物3に記載された発明の上記構成を組み合わせることについて記載したが、このように組み合わせた場合には、上記のように、冷たい外気により、圧縮空気の温度が2℃乃至5℃を下回らない程度まで冷却される。(特に、刊行物3の上記引用箇所5.(3)d.前半参照。)
このように、圧縮空気が十分に冷却されるのであれば、さらに、これを2次アフタークーラ、ドライヤで冷却する必要はないのは明らかである。
また、本件明細書【0004】段落中程では、「冷凍式ドライヤ」について言及されているが、このようなものを設けないことに関しては、刊行物5の上記引用箇所5.(5)b.末尾に、「本発明によれば、冷凍機を使用する事なく、簡単に微粒子氷、或は人工雪を製造しうる。」と記載されている。
よって、本件の請求項1に係る発明の効果は、上記刊行物1ないし5の記載および上記の周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものである。


《まとめ》
したがって、請求項1に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。



7.本件の請求項2に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項2に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項2には、
「前記アフタークーラによる冷却後の圧縮空気の温度を雪製造に適する所定の温度に制御および前記アフタークーラで冷却時凝縮する発生水の凍結防止のためにアフタークーラを通るファン風量を制御可能な開口面積調整手段を有するシャッタを設けた」と記載されている。
刊行物1にはこのような「シャッタ」を設けることは記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点E」という。)
本件の請求項2は請求項1を引用して記載されているので、両発明は、上記の「6.請求項1に係る発明について」の欄(3)に記載した「相違点AないしD」でも相違しており、そして、同欄の(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Eについて検討すると、刊行物3の上記引用箇所5.(3)c.後半には、
「冬期等において、例えば送出管14内の圧縮空気が2℃乃至5℃位になった場合には開閉扉2を図示の如く閉止する。これによりファン7を回転してもアフタクーラ5内には空気流れが生じない。
・・・・・
アフタクーラ5内の空気流れが遮断されるため、アフタクーラ5のオーバクーリングはなくなり、内部凍結が防止されることになる。」
と記載されている。
また、刊行物3の上記引用箇所5.(3)d.には、
「・・・送出管14には・・・検出手段4が配設される。・・・検出手段4が送出管14内の圧縮空気の温度が2℃乃至5℃位になったことを検出すると、検出信号を発する。これにより制御機構3は・・・開閉扉2の閉止を行なう。送出管14内の圧縮空気温度が前記温度値以上になれば開閉扉2は自動的に開放されることになる。以上の説明では開閉扉2の全開,前閉についてのみ説明したがアフタクーラ5の送出管14側に温度検出センサ23を設け、この信号により開閉扉2の開度を制御し、開閉扉2のハンチングを防止するように制御機構4およびアクチュエータを構成することもできる。」
と記載されている。この記載中の「開閉扉2」は、本件の請求項2に係る発明の「シャッタ」に相当する。
そうすると、刊行物5の上記記載の技術を、刊行物1に記載された発明の人工降雪装置に組み合わせることは当業者が容易になし得たと認められる。

したがって、本件の請求項2に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。


8.本件の請求項3に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項3に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項3には「前記コンプレッサが油冷却式である」と記載されている。刊行物1にはこのように「コンプレッサが油冷却式である」とは記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点F」という。)
本件の請求項3は請求項1ないし2を引用して記載されているので、両発明は、上記の6.(3)に記載した「相違点AないしD」または7.に記載した「相違点E」でも相違している。そして、両発明は、6.(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Fについて検討すると、刊行物2の上記引用箇所5.(2)c.には、
「エンジン駆動の油冷式圧縮機」
と記載されている。
刊行物2のこの技術を、刊行物1に記載された発明の人工降雪装置に組み合わせることは当業者が容易になし得たと認められる。

したがって、本件の請求項3に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。


9.本件の請求項4に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項4に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項4には「前記オートドレンバルブの位置で発生水の凍結防止のため、前記オートドレンバルブをファン排風の風下側に配置して保温するようにした」と記載されている。刊行物1にはこのように配置することは記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点G」という。)
本件の請求項4は請求項1ないし3を引用して記載されているので、両発明は、上記の6.(3)に記載した「相違点AないしD」または7.に記載した「相違点E」、8.に記載した「相違点F」でも相違している。そして、両発明は、6.(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Gについて検討すると、相違点Gにおける、請求項4に係る発明の構成における「オートドレンバルブ」には、上記の6.(4)《相違点Bについての検討》の欄で述べたように、刊行物4に記載された「オートドレン装置6」が相当する。
しかも、この「オートドレン装置6」について、刊行物4の上記引用箇所5.(4)c.後半には、
「レシーバタンク1内の圧縮空気の一部が、・・・噴気管24,25を介して各ケース内に噴出され、・・・オートドレン装置6の外面から・・・保温し、更には加温し、・・・オートドレン装置6内の水分の凍結を防止し、」
と、保温により同装置6内の水分の凍結を防止する技術が記載されている。
また、相違点Gにおける、請求項4に係る発明の構成のうち、「ファン排風の風下側に配置して保温する」には、刊行物2の上記引用箇所5.(2)d.及びf.に、
「オイルクーラ7,アフタクーラ4はラジエータ8と同様、ファン9により空冷される。」(引用箇所d.)
「・・・箱体内の圧縮機及びエンジンその他の関連機器から発生する排熱を冷却し箱体外へ排出する際の排風と熱交換し、加熱・・・するので、特別な熱源・・・を必要とせずに加熱媒体を得るための特別な手段を用いることなく従来そのまま単に廃棄されていた圧縮機、駆動源たるエンジンその他の関連機器から排出される廃熱を有効利用・・・することができる。」(引用箇所f.)
と記載されている技術が相当すると認められる。
そして、刊行物2および4のこれらの技術を、刊行物1に記載された発明の人工降雪装置に組み合わせることは当業者が容易になし得たと認める。
したがって、本件の請求項4に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。


10.本件の請求項5に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項5に係る発明を、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項5には「前記アフタークーラ出口の圧縮空気回路の下流にミストセパレータを設け、前記ミストセパレータの位置で発生水の凍結防止のため、前記ミストセパレータをファン排風の風下側に配置して保温するようにした」と記載されている。刊行物1にはこのように「ミストセパレータ」を配置することは記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点H」という。)
本件の請求項5は請求項3ないし4を引用して記載されているので、両発明は、上記の6.(3)に記載した「相違点AないしD」または7.〜9.に記載した「相違点E〜G」でも相違している。そして、両発明は、6.(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Hについて検討すると、「ミストセパレータ」は刊行物6に記載されている。(刊行物6上記引用箇所3.(6)b.の「ミストセパレータ8」を特に参照。)
しかし、本件の請求項5に係る発明のような「アフタークーラ出口の下流にミストセパレータを設け、発生水の凍結防止のため、前記ミストセパレータを保温する」は、同刊行物に記載されていない。
刊行物2には、「高温の排風で圧縮空気を加熱する」ことが記載されている(刊行物2の上記引用箇所5.(2)d.及びf.参照。)ものの、上記のようにミストセパレータを保温することは記載されていない。
このように、相違点Hにおける、本件の請求項5に係る発明の構成である
「前記アフタークーラ出口の圧縮空気回路の下流にミストセパレータを設け、前記ミストセパレータの位置で発生水の凍結防止のため、前記ミストセパレータをファン排風の風下側に配置して保温するようにした」
は、刊行物2,6に記載されていない。また、刊行物1,3ないし5、および特許異議申立人が提出した甲第5,6号証にも記載されていない。
そして、上記のようにミストセパレータを設け、保温することにより、本件明細書の【0024】段落に記載されているような顕著な効果を達成できる。
したがって、本件の請求項5に係る発明は、当審が通知した取消理由通知で引用した刊行物に記載された各発明及び上記の周知技術、あるいは特許異議申立人の提出した甲号証に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

なお、特許異議申立人は、特許異議申立書第15頁25行〜第16頁20行において、本件の請求項5に係る発明の「前記アフタークーラ出口の圧縮空気回路の下流にミストセパレータを設け、前記ミストセパレータの位置で発生水の凍結防止のため、前記ミストセパレータをファン排風の風下側に配置して保温するようにした」は、刊行物1第20頁図1に図示された「オイルセパレータ」等に基づいて、容易に想到されたものである旨を述べている。
しかし、この図1に示されているものは、「オイルセパレータ」であり、「ミストセパレータ」ではない。
仮に、この「オイルセパレータ」が、「ミストセパレータ」の1種であると仮定してみても、この刊行物1図1の「オイルセパレータ」は、同図の記載によれば、「人工降雪装置用コンプレッサ」とは別体になっており、かつ、別のコンプレッサからの圧縮空気と合流後にオイルセパレートを行っている。
このような別体の「オイルセパレータ」では、「人工降雪装置用コンプレッサ」内に存在すると思われる「ファン排風」を用いて保温することが容易であるとは認め難い。したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。


11.本件の請求項6に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項6に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項6には、
「ファン排風の温度をあげるため前記アフタークーラのファン風下流に、少なくともコンプレッサ用オイルクーラ、エンジン冷却水用ラジエータを配置した」
と記載されている。刊行物1にはこのように配置することは記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点I」という。)
本件の請求項6は請求項4ないし5を引用して記載されているので、両発明は、上記の6.(3)に記載した「相違点AないしD」または7.〜10.に記載した「相違点E〜H」でも相違している。そして、両発明は、6.(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Iについて検討すると、刊行物2の上記引用箇所5.(2)d.及びf.には、
「オイルクーラ7,アフタクーラ4はラジエータ8と同様、ファン9により空冷される。以上の圧縮機1及びエンジン等の関連機器は外気の吸気孔12及び排気孔11を有する箱体10内に収納されている。
・・・・・
箱体10の吸気孔12より外気がラジエータ8のファン9・・・により導入され、排気孔11より排出して、箱体内を換気し、エンジン2あるいは圧縮機1等の機器から発生した熱で箱体内の温度が上昇することを防ぐようになっている。」(引用箇所d.)
「箱体内の圧縮機及びエンジンその他の関連機器から発生する排熱を冷却し箱体外へ排出する際の排風と熱交換し、加熱・・・するので、特別な熱源・・・を必要とせずに加熱媒体を得るための特別な手段を用いることなく従来そのまま単に廃棄されていた圧縮機、駆動源たるエンジンその他の関連機器から排出される廃熱を有効利用・・・することができる。」(引用箇所f.)
と記載されている。
また、本件請求項6のような「アフタークーラのファン風下流に、少なくともコンプレッサ用オイルクーラ、エンジン冷却水用ラジエータを配置した」という、アフタークーラ、オイルクーラおよびラジエータの配置順は、刊行物2の図面の記載から明らかである。
そして、刊行物2のこれらの技術を、刊行物1に記載された発明の人工降雪装置に組み合わせることは当業者が容易になし得たと認められる。

したがって、本件の請求項6に係る発明(請求項5を引用するものを除く。)は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。


12.本件の請求項7に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項7に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項7には「水分離器に発生水の凍結防止用ヒータを設けた」と記載されている。刊行物1にはこのように「凍結防止用ヒータを設け」ることは記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点J」という。)
本件の請求項7は請求項1ないし6を引用して記載されているので、両発明は、上記の6.(3)に記載した「相違点AないしD」または7.〜11.に記載した「相違点E〜I」でも相違している。そして、両発明は、6.(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Jについて検討すると、本件請求項7のように「凍結防止用ヒータを設け」ることは、刊行物4の上記引用箇所5.(4)d.に記載されている。
そして、刊行物4のこの技術を、刊行物1に記載された発明の人工降雪装置に組み合わせることは当業者が容易になし得たと認められる。

したがって、本件の請求項7に係る発明(請求項5を引用するものを除く。)は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。


13.本件の請求項8に係る発明について
《一致点および相違点》
本件の請求項8に係る発明と、刊行物1に記載された発明を対比すると、請求項8には、
「搬送台車に外気を吸入して圧縮空気にするコンプレッサと、
この圧縮空気を冷却する空冷アフタークーラと、
前記アフタークーラに外気を冷媒として導くためのエンジン駆動のファンと、
外気をファン風として最初に前記アフタークーラに当てるようにアフタークーラを配置し、
前記アフタークーラによる冷却後の圧縮空気の温度を雪製造に適する所定の温度に制御および前記アフタークーラで冷却時凝縮する発生水の凍結防止のためにアフタークーラを通るファン風量を制御可能な開口面積調整手段を有するシャッタと、
前記アフタークーラで冷却時凝縮した発生水を圧縮空気から分離する水分離器と、
水分離器内の発生水を排出するオートドレンバルブと、
を搭載する」
と記載されている。
したがって、本件の請求項8に係る発明は、本件請求項1,2に既に記載されている、「コンプレッサ」,「アフタークーラ」,「ファン」,「シャッタ」,「水分離器」,「オートドレンバルブ」を搬送台車に配置、搭載するものであるが、これらのものを搬送台車に配置、搭載することは、刊行物1に記載されていない。この点で両発明は相違している。(以下、「相違点K」という。)
本件の請求項8は請求項1ないし7を引用して記載されているので、両発明は、上記の6.(3)に記載した「相違点AないしD」または7.〜12.に記載した「相違点E〜J」でも相違している。そして、両発明は、6.(2)に記載した「一致点」で一致している。

《判断》
この相違点Kについて検討すると、上記のように「コンプレッサ」等の機器を搬送台車に配置、搭載することは、刊行物1の、SM 1600S がスキー場での屋外設置が可能である旨の技術(上記引用箇所5.(1)b.後半,e.後半)、また、刊行物2上記引用箇所5.(2)f.後半の、
「エンジン駆動圧縮機等一切の機器と共に一つのパッケージ内に収納したユニットとして、設置場所を問わず、移動可能な画期的な乾燥空気供給用圧縮機ユニットを提供する」
という技術より当業者が容易に想到できたものである。

したがって、本件の請求項8に係る発明(請求項5を引用するものを除く。)は、その出願前日本国内において頒布された上記刊行物1ないし5に記載された各発明及び上記の周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易になし得たものである。



14.むすび
このように、本件の請求項1ないし4及び6ないし8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件の請求項1ないし4及び6ないし8に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものである。
また、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件の請求項5に係る発明の特許を取り消すことはできない。他に本件の請求項5に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件の請求項5に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-03-12 
出願番号 特願平3-175834
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (F25C)
最終処分 一部取消  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 会田 博行
岡本 昌直
登録日 2001-06-15 
登録番号 特許第3199268号(P3199268)
権利者 仁山高原観光株式会社 三井精機工業株式会社 コマツ北海道株式会社 株式会社小松製作所
発明の名称 人工雪製造装置  
代理人 小倉 正明  

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