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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E01C
管理番号 1099373
審判番号 不服2002-20794  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-25 
確定日 2004-07-20 
事件の表示 平成11年特許願第202157号「舗装道路用ドレン」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月19日出願公開、特開2000-352002、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年6月11日の出願に係り、平成14年10月3日付けで拒絶の査定がされ、その拒絶査定に対する審判事件についてした、平成15年8月26日付けの審判の請求は成り立たない旨の審決に対し、東京高等裁判所において審決取消しの判決(平成15年(行ケ)第455号、平成16年5月12日判決言渡)があったので、あらためて審理する。
本願の請求項1及び2に係る発明は、平成14年3月6日受付の手続補正書により全文補正された明細書及び補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】2本の合成樹脂線を横にダブルに接着結合したものをコイル状に形成した舗装道路用ドレン。
【請求項2】請求項1において、合成樹脂がポリエステルである舗装道路用ドレン。」
以下、請求項1に係る発明を「本願発明1」、請求項2に係る発明を「本願発明2」という。

2.刊行物に記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である、特開平8-81933号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「道路の舗装部の排水装置」に関して、次の記載がある。
(ア)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、道路等の舗装部の排水装置に関し、更に詳細には道路表層のアスファルト層を浸透して基層に達した雨水等を排出する装置に関する。」、
(イ)「【0007】【実施例】本発明の実施例を図に基づいて説明する。図1,図2において、1は道路であり、該道路は・・・路盤2の上部に粗粒アスファルト混合物等よりなる基層3が設けられ、前記した路盤2と基層3の境界及び基層3の上面は道路1の横断面中央部より両側方に向けて下り勾配4,4’,5,5’とされている。6は加熱アスファルト混合物等よりなる表層で、該表層6の表面すなわち道路表面も前記基層3の上面と同様に道路の横断面中央部より両側に向けて下り勾配7、7’とされ、雨水等を道路1の両側に設けられた側溝8、8’に流れこむようにしている。また、図に示す9、9’は側溝8の適宜箇所に設けられた集水桝である。【0008】耐熱性のある合成繊維製網状管10は、所要数のたて糸11,11,・・・(本実施例では4本)に複数本のよこ糸12,12,12,・・・を編み込み網状管を形成している。前記の合成繊維は、舗装温度である160℃〜180℃に耐えられる耐熱性を有することが必要であり、通常はポリエステル、アラミド樹脂、ポリアミド等が挙げられ、糸の太さとしては1,500デニール〜35,000デニールとするのが良く、また、合成繊維性網状管10の外径は5〜25mm,好ましくは10〜20mmである。不織布13は、前記した網状管10と同材質で製され、該不織布13は前記網状管10の表面を覆うように外装され、この網状管10に不織布13を外装したもので排水用案内管14を形成している。【0009】前記した排出用案内管14を前記した基層3の上面の勾配の下端で、かつ道路端の走行方向に設けられる側溝8に沿って前記基層3に仮止めして配設し、側溝8に連通される集水桝9の基層3側の壁に穿設された孔15に挿通される導水管16を前記排水用案内管14に連結し、このような状態として排水用案内管14を含めた基層3上に加熱アスファルト混合物等を舗装し表層6を形成する。そして、前記の排水用案内管14は合成繊維製網状管10で構成されているので、どの部分においても通水機能を有するものである。」、
(ウ)「【0012】本実施例において、表層6を浸透した雨水等は、基層3の上面の勾配5,5’を流下し、勾配下端でかつ側溝8,8’に沿って基層3上に配設される合成繊維製網状管10の表面に不織布13を外装して形成した排水用案内管14に流入し、該排水用案内管14内を流れて集水桝9に連通する導水管16を介して前記集水桝9に流入する。・・・雨水等は基層3内に浸透・滞留することがなく、アスファルト混合物及び骨材の剥離を生じないため破損がない。【0013】上記した実施例においては、表層6を浸透した雨水等を排水する排水用案内管14を合成繊維製網状管10の表面を覆うように不織布13を外装したものについて説明したが、前記した合成繊維製網状管10の網目の大きさによっては必ずしも不織布は必要なく、例えば網目が細かい場合は不織布がなくとも骨材等の前記網状管10内への侵入を防ぐことが可能である。」。
上記(ア)〜(ウ)及び図面の記載からみて、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認める。
「耐熱性を有する合成繊維からなる所要数のたて糸に耐熱性を有する合成繊維からなる複数本のよこ糸を編み込んで形成した道路の舗装部の排水装置に使用する、耐熱性合成繊維製網状管。」

同じく、特公平6-19122号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の記載がある。
(エ)「本発明は、防水層を介装した瀝青コンクリート被覆体を着せたコンクリートスラブの端部近傍に設けるドレン・・・に関する。」(3欄1行〜3行)、
(オ)「第2図に示す本発明の新規ドレン3は、アルミやステンレス鋼などの錆びない材料を素材とする継目なしつるまきバネである。」(3欄48行〜50行)、
(カ)「被覆体5の中に浸透する水はスラブ4の中に浸透することなくドレンの中に流れ込み、氷結してスラブを損傷する危険性は全くない。」(4欄31行〜33行)。

3.対比
本願発明1と刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「道路の舗装部の排水装置に使用する、耐熱性合成繊維製網状管」は本願発明1の「舗装道路用ドレン」に相当する。また、刊行物1に記載の発明の「耐熱性を有する合成繊維からなる所要数のたて糸」及び「耐熱性を有する合成繊維からなる複数本のよこ糸」と本願発明1の「2本の合成樹脂線」とは、共に、「複数本の合成樹脂線」で共通し、さらに、刊行物1に記載の発明の「編み込んで」と本願発明1の「接着結合した」とは共に、「結合した」点で共通している。
したがって、両者は、「複数本の合成樹脂線を結合して形成した舗装道路用ドレン。」で一致し、次の点で相違している。
相違点:本願発明1では、ドレンが、2本の合成樹脂線を横にダブルに接着結合するとともに、コイル状に形成しているのに対して、刊行物1に記載の発明では、そのように形成されていない点。

4.判断
上記相違点に関し、上記判決は次のように説示している。
「確かに,合成樹脂線同士を重ねる態様としては,交差する形のものも含むとはいえるものの,上記のような甲5(実願昭53-139875号(実開昭55-59736号)のマイクロフィルム)の内容を精査すると,「合成樹脂製ドレンの耐圧強度を向上させるために,合成樹脂線同士を重ねて接着結合すること」が開示されているとはいい難く,仮に,この点が開示されていると解されるとしても,甲5に開示された技術は,「ドレンの耐圧強度を向上をさせるために,合成樹脂線を横にダブルに接着結合」させるための動機付けとなり得るものとは認められない。
そうすると,審決の援用する甲5によっては,「ドレンの耐圧強度を向上をさせるために,合成樹脂線を横にダブルに接着結合」して,相違点に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得ることであるとの判断を是認することはできない。
5 審決は,周知技術として甲5を例示として説示したことは明らかであり,被告は,本訴において,周知技術を裏付けるものとして,乙1ないし5を提出するので,これらについて検討する。」、
「(6)上記乙1(実願昭59-183147(実開昭61-98112号)のマイクロフィルム)及び乙2(実願昭58-23836号(実開昭59-129930号)のマイクロフィルム)からは,・・・コイル状の補強材を2本横に並列して密接配置すれば,剪断耐力が向上することが周知であるものと認められる。しかし,2本横に並列して密接配置されたのみで,接着結合することの開示はない。
上記乙3(特開平9-178056号公報)及び乙4(特開平7-124089号公報)に記載されたものは,いずれも,2本の金属線を樹脂で埋設被覆したものである。しかし,2本の線を接着結合したものではない。
結局,乙1ないし4によれば,線材等の強度を増すために複数の線材を組み合わせて使用することは,周知の事項といえるものの,組み合わせた線材相互を接着結合することが周知の事項であることは,認めることができない。」、
「そして,乙5(実願昭60-98666号(実開昭62-7429号公報)のマイクロフィルムにおける「プラスチックス製暗渠排水管」は,合成樹脂製ドレンに相当し,網状管の1本の螺旋状ストランドと中空ストランドとを並列に重ねて接着結合しているといえるが,乙5のものでは,網状管に融着一体化された螺旋状の太い中空ストランドが耐圧強度を向上させているのであって,直ちに,「合成樹脂製ドレンの耐圧強度を向上させるために,合成樹脂線同士を重ねて接着結合すること」が開示されているということは困難である。
仮に,乙5が上記周知技術を開示するものと解し得るとしても,乙5において開示された技術は,合成樹脂製ドレンの耐圧強度を向上させるために,網状管を構成する合成樹脂線よりも太い中空の合成樹脂線を網状管の外面又は内面(内外面でもよい)に巻き回して前者の合成樹脂線に接着し,荷重に対抗させることにより,耐圧強度を向上させたというものである。このような上記乙5に記載された発明の内容にかんがみれば,「ドレンの耐圧強度を向上をさせるために,合成樹脂線を横にダブルに接着結合」させるための動機付けとはなり得ないというほかない。
なお,乙1ないし4には,接着結合されてはいないものの横に並列して密接配置されたものが開示されているので,これと乙5の技術を結び付けることができないかとも考えられなくもない。しかし,前認定の乙1ないし5に記載された発明の内容にかんがみ,動機付けの点も含めて検討するならば,これらを周知技術として用いることにより,引用発明1のドレンをコイル状に形成するとともに,コイル状に形成された「ドレンの耐圧強度を向上をさせるために,合成樹脂線を横にダブルに接着結合」して,相違点に係る本願発明の構成とすることが容易に想到し得ることであるとするには足りないというほかない。」
(上記括弧内は、当審注。)
そして、本審決は、上記判決に拘束されるので、本願発明1は、刊行物1、2に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明2は、本願発明1をさらに減縮したものであるから、本願発明1と同様に刊行物1、2に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1、2は、刊行物1、2に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、他に、本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-07-17 
結審通知日 2003-07-29 
審決日 2003-08-26 
出願番号 特願平11-202157
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 俊久深田 高義  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 伊波 猛
南澤 弘明
発明の名称 舗装道路用ドレン  
代理人 石井 良和  

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