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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B41J
審判 一部申し立て 2項進歩性  B41J
管理番号 1099696
異議申立番号 異議2002-72471  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-08-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-10-08 
確定日 2004-06-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第3273094号「文書処理装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3273094号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3273094号の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項6に係る発明についての出願は、平成6年1月29日に特許出願され、平成14年1月25日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に係る発明の特許について、犬束理香より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成15年3月11日に特許異議意見書の提出がなされたものである。

[2]特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
「【請求項1】文字や記号等のキャラクタ及び種々の指令を入力する為の入力手段と、入力手段から入力された複数の文字や記号からなる文書のデータを記憶するテキストメモリと、前記文書の任意の指定された部分に対して部分的印字フォーマットを設定してそのフォーマットデータをメモリに記憶させる為の部分的印字フォーマット設定手段と、ディスプレイを含む表示手段と、テキストメモリのデータを受けてそのデータ内容をディスプレイに表示する表示データを作成して表示手段に出力する表示データ作成手段とを備えた文書処理装置において、前記部分的印字フォーマット設定手段により、前記文書の1又は複数の部分に異なる複数の部分的印字フォーマットが重畳的に設定されたとき、その重畳的に設定された部分的印字フォーマットについては、前記メモリに記憶された部分的印字フォーマットのデータに基いて、最新の部分的印字フォーマットのみを有効化し、既存の部分的印字フォーマットが設定されている部分のうちの最新の部分的印字フォーマットが設定される部分と重畳する部分に設定されている部分的印字フォーマットを無効化するように部分的印字フォーマットのデータを書き換えるフォーマットデータ書換え手段を備えたことを特徴とする文書処理装置。
【請求項2】前記メモリは、前記テキストメモリに組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の文書処理装置。
【請求項3】 前記部分的印字フォーマットデータは、前記部分的印字フォーマットの、前記テキストメモリにおける開始位置と終了位置を夫々指定するデータを含むことを特徴とする請求項2に記載の文書処理装置。」(以下、それぞれ「本件発明1」乃至「本件発明3」という。)

2.刊行物等
当審が平成14年12月24日付けで通知した取消理由に引用した刊行物である、刊行物1:SE編集部編「Windows版WORD5.0 最初に読む本」、初版、株式会社翔泳社、1993年9月30日、p.149〜153、及び刊行物2:特開平5-177901号公報には、それぞれ下記の事項が図示と共に記載されている。

[刊行物1]
ア)「レイアウトを整える場合は、少しでも多く画面表示されているほうが作業しやすいので、〈最大化〉ボタンをクリックして最大化しておきましょう。」(第149頁11〜13行)。
イ)「文字書式には,フォント(書体),ポイント,文字飾り,文字間隔,色、文字の位置などがあります。WORD5.0で文字書式を設定するにはリボンを使います。」(第149頁14〜15行)。
ウ)「WORD5.0の初期設定ではプリンタフォントの“明朝”に設定されています。ここでは,全部の文字をTrue Typeフォントに変更してみましょう。・・・1.フォントを変更する文字を選択します。この場合は全部変更するわけですから,[編集]メニューの[文書全体を選択]コマンドを選択します。2.リボンの〈フォント〉ボックスの右側にある矢印をクリックします。・・・ここでは,True Typeの“MS明朝”を選択します。3.画面上のフォントが変更されます。次に見出しなど,他の文字より強調させたい文字をゴシックに変更してみましょう。フォントは各文字ごとに設定することができます。この文書では“お客様各位”と“事務所移転のお知らせ”をゴシックに変えてみることにします。・・・1.“お客様各位”と“事務所移転のお知らせ”の部分を選択します。・・・2.リボンの〈フォント〉ボックスからTrue Typeの“MSゴシック”を選択します。文字が変わります。」(第150頁1行〜第151頁9行)。
エ)図4-17には、選択された“お客様各位”と“事務所移転のお知らせ”の部分が「True Typeの“MSゴシック”」に変更された文字である状態が記載されている。

[刊行物2]
ア)「本発明は印字装置に関し、特に文書の全体に対してグローバルな印字フォーマットを設定できる上、文書の一部に対してローカルな印字フォーマットを設定できるようにしたものに関する。」(段落【0001】)。
イ)「グローバルフォーマット(GFM)とは、文書のデータを印字する際に用いる印字用のフォーマット(書式)であり、特に文書の全体に対して適用するので、この名称を用いる。ローカルフォーマット(LFM)とは、文書データの一部に部分的に適用する印字用のフォーマットであり、特に文書中に格納するフォーマットなので、グローバルフォーマットに対してこの名称を用いる。」(段落【0012】)。
ウ)「RAM40のラインバッファ41には、キーボード3から入力された複数の文字や記号のコードデータからなる文書データが一時的に格納される。テキストメモリ42には、ラインバッファ41からの文書データが格納される。GFMバッファ(この内容をGFBとする)43には、設定されたGFMのデータが一時的に格納される。GFMデータメモリ44には、GFMバッファ43からのGFMデータが複数格納される。印字ポインタ(この内容を印字ポインタ値PPとする)45には、印字するコードデータを読出す為にテキストメモリ42の1つのアドレスが格納される。印字バッファ46には、イメージ展開された文字や記号の印字データが格納される。」(段落【0018】)。
エ)「次に、ラインバッファ41内の文書データにおいて、前記設定範囲の先頭位置に設定結果のLFMデータが追加格納され(S53)、更にこの設定範囲の先頭位置に開始コードが追加格納されるとともに、その範囲の末尾に終了コードが追加格納され(S54)、このラインバッファ41のデータに基いて文書がディスプレイ22に表示され(S55)、この制御を終了してリターンする。例えば、図14に示す文字コード列において文字「DEF」に対してLFMを適用する範囲を設定し、所望のLFMのフォーマット項目を設定したときには、図16に示すように、設定範囲の先頭位置に開始コード(右三角で図示)SCと2バイトのLFMデータLDが追加格納され、更に設定範囲の末尾位置に終了コード(左三角で図示)ECが追加格納される。そして、ディスプレイ22には図17に示すように、設定範囲の先頭位置に対応してLFMの開始マークSMとその末尾位置に対応して終了マークEMとが夫々挿入表示される。」(段落【0027】)。
オ)図5には、テキストメモリのデータ構成を説明する説明図が記載されている。

3.対比・判断
まず、本件発明1について検討する。
刊行物1に記載のWindows版WORD5.0は、ワードプロセッサー用ソフトウエアであり、文書処理装置において用いられることは自明である。
そして、刊行物1からは、ワードプロセッサー用ソフトウエアの発明だけでなく、Windows版WORD5.0をインストールした文書処理装置の発明も把握される。
また、上記文書処理装置が、文字や記号等のキャラクタ及び種々の指令を入力する為の入力手段と、入力手段から入力された複数の文字や記号からなる文書のデータを記憶するテキストメモリと、ディスプレイを含む表示手段とを備えることも自明である。
そして、上記文書処理装置が、テキストメモリのデータを受けてそのデータ内容をディスプレイに表示する表示データを作成して表示手段に出力する表示データ作成手段を備えることも自明である。
刊行物1の上記記載ウからみて、初期設定として「プリンタフォントの“明朝”」であった文書全体の既存のフォーマットに対して、一例として、「ここでは,全部の文字をTrue Typeフォントに変更してみましょう。」と記載の如く、全部の文字をTrue Typeフォントに変更する例が挙げられているが、これを前記文書の中の任意の指定された部分に対して、True Typeフォントである「True Typeの“MS明朝”」に変更することが可能であると、当業者が理解することができることは当然である。
してみると、上記文書処理装置が、前記文書の任意の指定された部分に対して部分的印字フォーマットを設定してそのフォーマットデータをメモリに記憶させる為の部分的印字フォーマット設定手段を備えることも自明である。

従って、刊行物1の上記記載ア〜ウを含む明細書及び図面によると、刊行物1には、下記の発明が記載されている。
「文字や記号等のキャラクタ及び種々の指令を入力する為の入力手段と、入力手段から入力された複数の文字や記号からなる文書のデータを記憶するテキストメモリと、前記文書の任意の指定された部分に対して部分的印字フォーマットを設定してそのフォーマットデータをメモリに記憶させる為の部分的印字フォーマット設定手段と、ディスプレイを含む表示手段と、テキストメモリのデータを受けてそのデータ内容をディスプレイに表示する表示データを作成して表示手段に出力する表示データ作成手段とを備えた文書処理装置において、初期設定として「プリンタフォントの“明朝”」であった文書全体の既存のフォーマットに対して、前記文書の中の任意の指定された部分を「True Typeの“MS明朝”」に変更し、更に重畳的に他の文字より強調させたい文字を「True Typeの“MSゴシック”」に変更することが可能である文書処理装置。」(以下、「刊行物1発明」という。)

そこで、本件発明1と刊行物1発明とを対比する。
印字フォーマット設定を複数回繰り返す際に、全体設定と部分設定だけでなく、部分設定の繰り返しもあり、刊行物1においては重畳的に設定されたとき、先の印字フォーマット設定が無効化され、最新の印字フォーマット設定が有効化されることについては何れの場合も同様である。
そうすると、刊行物1発明において、文書の中の任意の指定された部分を「True Typeの“MS明朝”」に変更し、更に重畳的に他の文字より強調させたい文字を「True Typeの“MSゴシック”」に変更することは、本件発明1の「前記部分的印字フォーマット設定手段により、前記文書の1又は複数の部分に異なる複数の部分的印字フォーマットが重畳的に設定されたとき、」に相当する。
そして、刊行物1発明において、「True Typeの“MSゴシック”」に変更された部分については、「True Typeの“MS明朝”」は無効化されているから、刊行物1発明が、本件発明1の「前記文書の1又は複数の部分に異なる複数の部分的印字フォーマットが重畳的に設定されたとき、その重畳的に設定された部分的印字フォーマットについては、最新の部分的印字フォーマットのみを有効化し、既存の部分的印字フォーマットが設定されている部分のうちの最新の部分的印字フォーマットが設定される部分と重畳する部分に設定されている部分的印字フォーマットを無効化するように部分的印字フォーマットのデータを書き換えるフォーマットデータ書換え手段」を備えていることは自明である。

そうすると、刊行物1発明は本件発明1の全ての構成要件を備え、両者に相違はない。
従って、本件発明1は刊行物1に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。

次に、本件発明2について検討する。
刊行物2の上記記載ア〜エからみて、刊行物2において、LFMの設定データは、キーボード3から入力された複数の文字や記号のコードデータからなる文書データが一時的に格納されるラインバッファ41内の文書データに追加格納され、ラインバッファ41からのこの文書データがテキストメモリ42に格納されると解される。
そして、ラインバッファを介することなく、本件発明2の如く、部分的印字フォーマットデータを記憶するメモリを、入力手段から入力された複数の文字や記号からなる文書のデータを記憶するテキストメモリに組み込む様にすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、本件発明2は、刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

次に、本件発明3について検討する。
刊行物2の上記記載エには、「図14に示す文字コード列において文字「DEF」に対してLFMを適用する範囲を設定し、所望のLFMのフォーマット項目を設定したときには、図16に示すように、設定範囲の先頭位置に開始コード(右三角で図示)SCと2バイトのLFMデータLDが追加格納され、更に設定範囲の末尾位置に終了コード(左三角で図示)ECが追加格納される。」と記載されており、図5にはそのようなテキストメモリの構成が記載されていることから、本件発明3は、本件発明2と同様にして、刊行物1及び刊行物2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は刊行物1に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するので、特許を受けることができない。
また、本件発明2及び本件発明3は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1乃至本件発明3についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-15 
出願番号 特願平6-26266
審決分類 P 1 652・ 121- Z (B41J)
P 1 652・ 113- Z (B41J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 上田 正樹  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 津田 俊明
清水 康司
登録日 2002-01-25 
登録番号 特許第3273094号(P3273094)
権利者 ブラザー工業株式会社
発明の名称 文書処理装置  
代理人 武藤 勝典  

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