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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G03F
審判 全部申し立て 2項進歩性  G03F
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  G03F
管理番号 1099701
異議申立番号 異議2003-72062  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-09-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-08-18 
確定日 2004-07-05 
異議申立件数
事件の表示 特許第3377265号「感光性樹脂組成物の製造方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3377265号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3377265号〔平成5年12月6日(優先日、平成4年12月24日)に出願、平成14年12月6日設定登録〕の請求項1ないし7に係る発明(以下、順に「本件発明1」ないし「本件発明7」という)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項7に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】ノボラック樹脂とo-ナフトキノンジアジド化合物とを含む感光性樹脂組成物の製造方法において、該ノボラック樹脂として、一般式(Ia)

(式中、R1〜R3は各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキルもしくはアルケニル基又はアリール基を表わし、mは0、1又は2を表わす。)或いは一般式(Ib)

(式中、R1〜R3は各々独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキルもしくはアルケニル基又はアリール基を表わす。k’は0、1又は2を表わし、pは2又は3を表わす。)で示される芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類とフェノール化合物とを酸触媒の存在下に反応させて得られる低分子量成分を単離せずに、さらにフェノール類及びホルムアルデヒドと縮合させて得られるノボラック樹脂を用いることを特徴とする感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】フェノール化合物が一般式(II)

(式中、R4〜R6は各々独立して水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルキルもしくはアルケニル基、又はアリール基を表わす。)で示される、少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】一般式(II)で示される、少なくとも1種の化合物がフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール、3,5-キシレノール、3,4-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール及び3-メチル-6-t-ブチルフェノールの群れから選ばれる化合物である請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】フェノール類がm-クレゾール、p-クレゾール、2,5-キシレノール又はこれらの2種以上の混合物である請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】低分子量成分が、50〜160℃の沸点を有する有機溶剤の共存下に芳香族アルデヒドとフェノール化合物とを反応させて得られたものである請求項1に記載の感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】ノボラック樹脂の分子量900以下の範囲のGPCパターン面積比が未反応のフェノール類のパターン面積を除く全パターン面積に対して25%以下(ポリスチレン換算)である請求項1〜5のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】分子量900未満のアルカリ可溶性多価フェノールを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の感光性樹脂組成物の製造方法。」

2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人 鈴木三男(以下、「申立人」という)は、甲第1号証(特開平2-300751号公報)、甲第2号証(特開平2-84414号公報)、甲第3号証(特開昭63-261257号公報)、甲第4号証(特開昭64-90250号公報)、甲第5号証(特開平4-299348号公報)、甲第6号証(特開平4-101147号公報)及び甲第7号証(特開平2-275955号公報)を提示し、本件発明1ないし本件発明7は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであること(理由1)、及び、請求項記載の「低分子量成分」に関しての記載が明確でないので、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないこと(理由2)、を理由としてその特許を取り消すべき旨主張する。

3.理由1について
3-1.証拠に記載された発明
(1).甲第1号証には次の事項が記載されている。
(1a).「A)下記一般式(I)で表されるフェノール化合物と下記一般式(II)で表されるヒドロキシ芳香族アルデヒドとを縮合して得られる多価フェノール化合物と、(なお、炭素数1〜9のアルキル基で核置換されてもよいフェノール化合物を表す一般式(I)、および炭素数1〜9のアルキル基で核置換されてもよいヒドロキシベンズアルデヒドを表す一般式(II)は省略する) B)感光剤 とを含有してなるポジ型フォトレジスト組成物。」(特許請求の範囲)
(1b).「合成例1・・・反応容器内に、m-クレゾール1296g(12モル)とサリチルアルデヒド976g(8モル)を加え内容物を撹拌しながら80℃に加温する。・・・濃塩酸26gをゆっくりと滴下し、・・・100℃まで昇温し、100℃にて3時間反応させた。次に・・・150℃まで上昇し、さらに5mmHgの減圧下190℃まで加熱して塩酸、水、末反応クレゾールを留去し、生成物1965gを得た。」(4頁左上欄2〜13行)
(1c).「実施例1〜7 合成例各1〜7で製造した多価フェノール化合物10gに対し、ナフトキノン-(1,2)-ジアジド-(2)-5-スルホン酸クロリドと2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノンの縮合反応物3.5gを酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルに溶解して、フォトレジスト溶液を調製した。」(4頁左下欄13〜19行)

(2).甲第2号証には次の事項が記載されている。
(2a).「5.ノボラック樹脂及び光増感剤を含んで成るポジ型感光性レジスト(photoresist)であって、ノボラック樹脂として、(a)フェノール、フェノール誘導体又はその混合物及び(b)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド前駆体及びモノヒドロキシ芳香族アルデヒドを含んで成るアルデヒドの混合物の縮合生成物を使用することを特徴とするポジ型感光性レジスト。」(特許請求の範囲請求項5)
(2b).「7.前記ノボラック樹脂のアルデヒド成分が、ホルムアルデヒドと2-ヒドロキシベンズアルデヒド、3-ヒドロキシベンズアルデヒド及び4-ヒドロキシベンズアルデヒドから選択されたモノヒドロキシ芳香族アルデヒドとの混合物である請求項5記載のポジ型感光性レジスト」(特許請求の範囲請求項7)
(2c).「使用されるノボラック樹脂がホルムアルデヒド(又はホルムアルデヒド前駆体)及びモノヒドロキシ芳香族アルデヒドを含んで成るアルデヒドの混合物から製造される場合、高い程度の熱安定性及び高い解像能の両者を有するポジ型感光性レジストが製造され得ことが見された。」(4頁右下欄14〜20行)
(2d).「ポジ型感光性レジストにおいて・・・光活性成分はジアゾキノン化合物である。ジアゾキノン化合物の例として、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン-1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸モノ-、ジ-及びトリエステル・・・を挙げることができる。」(6頁右下欄18行〜7頁左上欄8行)
(2e).「例1 この例は、本発明のノボラック樹脂の典型的な製造方法を例示する。 次の試薬が、下記に示される量で使用された:・・・m-クレゾール・・・p-クレゾール・・・o-ヒドロキシベンズアルデヒド・・・トリオキサン・・・イソプロピルアセテート・・・p-トルエンスルホン酸・H2O触媒・・・触媒を除くすべての成分を、適切な反応容器に入れた。つぎに触媒を添加し・・・反応混合物を還流温度で加熱した。・・・得られたノボラック樹脂を回収した。」(7頁右下欄3〜19行)
(2f).「例2〜30 本発明のノボラック樹脂を、下記第表1に示される試薬を用いて、例1の方法に類似する方法で調製した。」(8頁左上欄1〜4行)
(2g).第8頁の第1表中の例2〜17には、m-クレゾール及びp-クレゾールと、ホルムアルデヒド及びモノ(2-又は4-)ヒドロキシベンズアルデヒドとの反応によりノボラック樹脂を得たこと。

(3).甲第3号証には次の事項が記載されている。
(3a).「アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド化合物を必須成分として含んでなるレジスト組成物において、アルカリ可溶性樹脂がフェノール化合物とアルデヒド類との酸性触媒下における縮合生成物であって、該アルデヒド類が、一般式(なお、芳香族ジアルデヒド又はそのアルキル置換体を表す一般式は省略する)で示される化合物を少なくとも5重量%含有するものであることを特徴とするポジ型フォトレジスト組成物。」(特許請求の範囲)
(3b).「フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、t-ブチルフェノール、ナフトール等を単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。」(2頁右下欄下から9〜6行)
(3c).「本発明におけるフェノール樹脂の縮合反応は反応物を一括して投入して行ってもよいし、何段階かに分けて反応させてもよい。」(3頁左上欄5〜7行)

(4).甲第4号証には次の事項が記載されている。
(4a).「アルカリ可溶性ノボラック樹脂と1,2-キノンジアジド化合物とを含有する感放射線性樹脂組成物において、前記アルカリ可溶性ノボラック樹脂が、m-クレゾールを20〜80モル%、p-クレゾールを5〜60モル%ならびに2,3-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノールおよび3,4,5-トリメチルフェノールから選ばれる少なくとも1種のポリアルキルフェノールを5〜60モル%含むフェノール類と、アルデヒド類とを縮合重合させて得られ、かつ単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミェーションクロマトグラフ法により求めたポリスチレン換算重量平均分子量が6,300〜25,000、2,500〜6,000および150〜900の範囲にあるピークの最大の高さの値をそれぞれa、bおよびcとしたとき、a/b=0〜1.5およびc/b=0.4〜2の範囲にある樹脂であり、また前記1,2-キノンジアジド化合物が、テトラヒドロキシベンゾフェノンの1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸エステルであることを特徴とする感放射線性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
(4b).「またアルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、・・・o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド・・・等が挙げられ」(2頁右下欄6〜19行)
(4c).「ノボラック樹脂を得る重合法としては、フェノール類、アルデヒド類および酸触媒等を一括して仕込む重合法、フェノール類を反応の進行とともに加えて行く重合法等が用いられる。フェノール類を反応の進行とともに加える方法の場合は、ノボラック樹脂をより再現性よく、安定的に製造するために、まずフェノール類の一部、アルデヒド類および酸触媒を仕込んで重合させ、その後残りのフェノール類を加えて重合させる方法をとることが好ましい。」(3頁左下欄4〜13行)
(4d).「実施例1・・・セパラブルフラスコに、m-クレゾール・・・p-クレゾール・・・3,5-ジメチルフェノール・・・ホルムアルデヒド水溶液・・・およびシュウ酸・・・を仕込み・・・内温を100℃に保持しながら0.5時間反応させ、その後さらにm-クレゾール・・・3,5-ジメチルフェノール・・・を反応の進行とともに連続的にセパラブルフラスコに仕込み、0.5時間反応させた。次いで・・・未反応のホルムアルデヒド・・・シュウ酸を除去し・・・ノボラック樹脂を回収した。・・・ノボラック樹脂100重量部と表1記載の1,2-ナフトキノンジアジド化合物(I)30重量部とを、エチルセルソルブアセテート300重量部に溶解し、組成物溶液を調製した。」(6頁左下欄16行〜7頁左上欄3行)

(5).甲第5号証には次の事項が記載されている。
(5a).「アルカリ可溶性樹脂、下記一般式(1)[なお、ノボラック型多価フェノールを表す一般式は省略する]で表される化合物の少なくとも1種および1,2-キノンジアジド化合物を含有していることを特徴とする感放射線性樹脂組成物。」(特許請求の範囲)
(5b).「アルカリ可溶性樹脂 本発明において用いられる「樹脂(A)」としては、例えばノボラック樹脂・・・特にノボラック樹脂が好適に使用される。またノボラック樹脂のうちでも、下記式(3)で表されるフェノール類とアルデヒド類とを重縮合することによって得られたものが特に好適である。【化3】HO-C6H5-n-(CH3)n 式中、nは1〜3の整数を表す。・・・また上記フェノール類と重縮合させるアルデヒド類として、例えば・・・o-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド・・・等を挙げることができ」(【0005】〜【0007】)
(5c).「重縮合の方法としては、フェノール類、アルデヒド類、酸性触媒等を一括して仕込む方法、および酸性触媒の存在下にフェノール類、アルデヒド類等を反応の進行とともに加えていく方法を採用することができる。」(【0009】)
(5d).「樹脂(A)のアルカリ溶解性を促進する目的で、低分子量のフェノール化合物を溶解促進剤として使用することもできる。この低分子量のフェノール化合物としては、ベンゼン環数が2〜6程度のフェノール化合物が好適であり、特に限定されるものではないが、下記式(4)で表される化合物を例示することができる。(なお、式は省略)」(【0011】)
(5e).「同様の目的で、溶解促進剤として、低分子量のアルカリ可溶性ノボラック樹脂・・・(以下、これらを単に、「樹脂(B)」と称する)を使用することができる。ここで樹脂(B)はフェノール類とアルデヒド類との重縮合によって得られるが、フェノール類としては、前記樹脂(A)の合成に用いられるフェノール類として例示したもの・・・またアルデヒド類としても、前記樹脂(A)の合成に用いられるものを使用することができる。・・・樹脂(B)のMwは、通常、10,000以下であることが好ましく・・・300〜1,000であることが特に好ましい。」(【0012】)
(5f).「<樹脂Aの合成> 合成例1・・・m-クレゾール・・・2,3,5-トリメチルフェノール・・・p-クレゾール・・・ホルムアルデヒド水溶液・・・およびシュウ酸2水和物・・・を仕込み・・・100℃に保持して撹拌しながら30分間重縮合を行ったのちに、m-クレゾール・・・および2,3,5-トリメチルフェノール・・・を加えてさらに40分間重縮合を行った。・・・未反応の原料等を除去し・・・樹脂を・・・回収した。この樹脂を、樹脂(A1)という。・・・合成例3・・・樹脂を回収した。この樹脂を、樹脂(A3)という。・・・合成例4・・・樹脂を回収した。この樹脂を、樹脂(A4)という。・・・合成例5・・・樹脂を回収した。この樹脂を、樹脂(A5)という。」(【0038】、【0040】〜【0042】)
(5g).「合成例2 樹脂(A1)をエチルセロソルブアセテートに・・・溶解した後、・・・メタノールおよび等量の水を加えて撹拌し、放置した。・・・樹脂溶液層(下層)を取り出し、濃縮し、脱水し、乾燥して樹脂を回収した。この樹脂を樹脂(A2)という。」(【0039】)
(5h).「<樹脂Bの合成> 合成例6・・・m-クレゾール・・・ホルムアルデヒド水溶液・・・およびシュウ酸2水和物・・・を仕込み・・・100℃に保持しながら40分間重縮合を行った。次いで、合成例1と同様にして樹脂を回収した。この樹脂を、樹脂(B1)という。」(【0043】)
(5i).「実施例1〜7、比較例1〜2 樹脂A、キノンジアジド化合物、化合物(A)および溶剤を混合し・・・本発明の組成物の溶液を調製した。・・・評価を行った。結果を使用した樹脂等と併せて表1に示す。」(【0049】)
(5j).第17頁の表1中の実施例1〜7には、1,2-キノンジアジド化合物と、樹脂(A)の種類がA1〜A5と、化合物(A)の種類がA1〜A4とを組み合わせて使用し、レジスト組成物を製造したこと、及び、実施例7の組成には、合成例6で得られた樹脂B1が配合されていること(【0050】)

(6).甲第6号証には次の事項が記載されている。
(6a).「(1)キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性樹脂とを含有してなるポジ型レジスト組成物において、フェノール性OH基を少なくとも1つ有し、分子量が100〜900である化合物を含有することを特徴とするポジ型レジスト組成物。
(2)アルカリ可溶性樹脂がノボラック樹脂であって、そのGPC(検出器UV-254nm使用)パターン全面積に対するポリスチレン換算分子量で6000以下の範囲の面積比が65%以下であり、900以下の範囲の面積比が30%以下であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型レジスト組成物。」(特許請求の範囲の請求項1 、2)
(6b).「フェノール性OH基を少なくとも1つ有し、分子量が100〜900の化合物の例としては、・・・2-ヒドロキシフェニル-ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)メタン、2-ヒドロキシフェニル-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタン、2-ヒドロキシフェニル-ビス(2-ヒドロキシ-4,5-ジメチルフェニル)メタン(注:以上の構造式が示されている。)・・・等が例示される。」(2頁右下欄7行〜3頁左上欄1行)、
(6c).「アルカリ可溶性樹脂A:メタクレゾール/パラクレゾール=55/45、クレゾール/ホルマリン=1/0.75のモル比でシュウ酸を用い還流下に反応させることにより得られた重量平均分子量9600(ポリスチレン換算)のノボラック樹脂。
ノボラック樹脂B:ノボラック樹脂Aを分別して得られたノボラック樹脂であり、GPCによるポリスチレン換算分子量900以下の面積%が7%である重量平均分子量15500のノボラック樹脂。」(7頁左上欄1〜11行)

(7).甲第7号証には次の事項が記載されている。
(7a).「(1)一般式(I)で表されるポリフェノール(I)を含むアルカリ可溶性樹脂および1,2-キノンジアジド化合物を含有するポジ型感放射線性レジスト組成物。(なお、一般式(I)は省略)」(特許請求の範囲)
(7b).「合成例4・・・2,5-キシレノール・・・サリチルアルデヒド・・・パラ-トルエンスルホン酸・・・トルエン・・・を仕込み・・・16時間反応させた。・・・下記式(1)の精製ケーキ・・・が得られた。・・・(なお、2-ヒドロキシフェニル-ビス(4-ヒドロキシ-2,5-ジメチルフェニル)メタンを表す式(1)は省略)・・・
合成例5・・・3,4-キシレノール・・・サリチルアルデヒド・・・乾燥させることで下記式(2)の精製ケーキ・・・が得られた。・・・(なお、2-ヒドロキシフェニル-ビス(2-ヒドロキシ-4,5-ジメチルフェニル)メタンを表す式(2)は省略)・・・
合成例6・・・2,6-キシレノール・・・サリチルアルデヒド・・・乾燥後下記式(3)の精製ケーキ・・・が得られた。・・・(なお、2-ヒドロキシフェニル-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メタンを表す式(3)は省略)・・・」(7頁右上欄19行〜8頁左下欄5行)
(7c).「合成例7・・・三つ口フラスコにメタクレゾール・・・パラクレゾール・・・エチルセロソルブアセテート・・・5%シュウ酸・・・を仕込み、ホルマリン水溶液・・・を40分かけて滴下しその後7時間さらに加熱撹拌反応させた。その後中和、水洗脱水してノボラック樹脂のエチルセロソルブアセテート溶液を得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は9600であった。」(8頁左下欄6〜16行)
(7d).「実施例1〜7及び比較例1〜2 合成例1〜6で得られた縮合物(注:ポリフェノール)ならびに合成例7、8で得られたノボラック樹脂を各々、感光剤とともに表-1に示す組成でエチルセロソルブアセテートに溶かしレジスト液を調合した。」(8頁右下欄10〜14行)

3-2.判断
(1).本件発明1について
本件発明1と甲第1〜3号証に記載された発明とを対比すると、両者は、
「ノボラック樹脂とo-ナフトキノンジアジド化合物とを含む感光性樹脂組成物の製造方法において、該ノボラック樹脂として、一般式(Ia)或いは一般式(Ib)で示される芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類とフェノール化合物とを酸触媒の存在下に反応させて得られるノボラック樹脂を用いる感光性樹脂組成物の製造方法」である点で一致し、
本件発明1が、「芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類とフェノール化合物とを酸触媒の存在下に反応させて得られる低分子量成分を単離せずに、さらにフェノール類及びホルムアルデヒドと縮合させて得られる」ことを規定するのに対して、甲第1〜3号証には、その旨の記載がない点で相違する。
相違点について検討する。
甲第4号証には、ノボラック樹脂を得るためにフェノール類とアルデヒド類とを重縮合させる際に、フェノール類の必要量を最初から反応系に添加せず、反応の進行と共に加えながら反応させること(4c、4d)が記載されている。また、甲第5号証にも、ノボラック樹脂を得るための原料であるフェノール類、アルデヒド類を反応の進行と共に加えていく方法が採用できること(5c)が記載され、具体的には、原料フェノールの一部である、m-クレゾール、2,3,5-トリメチルフェノールを反応途中で添加して、重縮合を進行させる例(5f)が示されている。
しかしながら、そこに示されている内容は、あくまでも、反応当初からの原料の一部を、小分けに添加することを意味するだけのものにすぎないし、また、甲第3号証の記載(3c)も同様のものである。
それに対して、本件発明1において規定するのは、必須成分として一般式(Ia)或いは一般式(Ib)で示される芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類をまず反応させた後、さらに、該一般式(Ia)或いは一般式(Ib)で示される芳香族アルデヒドとは異なる、「ホルムアルデヒド」と、フェノール類を添加して、反応を継続するものと解されるから、相違点に関する教示が、甲第3〜5号証に記載されているものではない。
また、甲第1号証、甲第2号証、甲第6号証及び甲第7号証には、ノボラックの原料成分を段階的に反応系に添加することを意味する記載は認められない。
したがって、上記の相違点によって、本件発明1は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとすることはできない。

(2).本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、いずれも本件発明1を引用して記載し、本件発明1をさらに特定するものである。そして、本件発明2〜4で特定する事項は、(1b)、(2e)、(2g)、(3b)、(4a)、(4d)、(5b)、(5f)、(7c)に、本件発明5で特定する事項は、(2e)、(7b)、(7c)に、本件発明6で特定する事項は、(4a)、(6c)に、本件発明7で特定する事項は、(6b)、(7b)に、それぞれ記載されているとしても、上記(1)本件発明1について、の項で述べたとおり、各発明で引用する本件発明1が甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、同様の理由により、本件発明2〜7も、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

4.理由2について
(1).特許法第36条違反の趣旨について
申立人が、本件特許明細書について特許法第36条違反を主張する趣旨は、具体的には次のようなものである。
A 本件請求項1には、「低分子量成分」という記載があるが、この内容についての特定はなされていない上に、これを単離せずに、さらにフェノール類及びホルムアルデヒドと低分子量成分を形成させるときに用いる芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類やフェノール化合物とは異なった表現となっているため、低分子量成分の生成の前後における反応成分の関係が不明確である。そのため、特許法第36条第5項第2号にいう、特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した項に区分してあることという要件を満たしていない。
B 本件特許明細書の発明の詳細な説明の欄には、請求項1にいう低分子量成分として、特定の化学構造をもつ化合物が示されているにもかかわらず、各実施例においては、この低分子量成分の構造確認が全く行われていないので、本件請求項1の特許発明についての目的、構成及び効果が全く不明である。そのため、本件特許明細書は、特許法第36条第4項に定める要件を備えていない。

(2).Aについて、
ノボラック化のような重縮合反応が行われる場合、その反応開始から完結までの間には、重合度の低い「低分子量」段階を経ることは当然であり、まして、本件発明あるいは、甲第3号証(3c)、甲第4号証(4c)、甲第5号証(5c、5f)のように原料化合物を段階的に添加して行けば、反応途中でそのような「低分子量成分」が出現することは明らかである。そして、本件発明は、製造方法に係る発明であり、製造方法を特定する構成として、反応途中で生成する中間物質の構造まで確認する必要はない。
また、本件特許明細書の請求項1の記載に基づけば、上記3-2の、判断の項に示すとおり、前段として、必須成分として一般式(Ia)或いは一般式(Ib)で示される「芳香族アルデヒドを含むアルデヒド類」をフェノール化合物とまず反応させた後、後段として、さらに、該一般式(Ia)あるいは一般式(Ib)で示される芳香族アルデヒドとは異なる、「ホルムアルデヒド」とフェノール類を添加して、反応を継続するものと解され、前段で使用するものを「フェノール化合物」、後段で使用するものを「フェノール類」、と使い分けをしているにすぎず、これらについては本件特許明細書の段落番号【0011】〜【0014】、【0021】に具体的に記載されており、両者が同一のものであるか、相違するものであるかを問わないことは明らかである。

(3).Bについて
本件各発明は、物の製造方法に係る発明であり、物そのものの発明ではない。本件の各製造方法の発明において、製造工程中に現れる中間物質としてどの様な物質が生成しているのかを特に明示しなくても、製造に必要な原料物質が特定でき、製造するための操作条件等が示されていれば、当業者にとって製造方法は実施可能なものと認められる。

したがって、本件特許明細書の記載が不備であるとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜7に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-06-14 
出願番号 特願平5-305319
審決分類 P 1 651・ 531- Y (G03F)
P 1 651・ 534- Y (G03F)
P 1 651・ 121- Y (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山鹿 勇次郎  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 六車 江一
秋月 美紀子
登録日 2002-12-06 
登録番号 特許第3377265号(P3377265)
権利者 住友化学工業株式会社
発明の名称 感光性樹脂組成物の製造方法  

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