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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16J
管理番号 1099707
異議申立番号 異議2003-72738  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-04 
確定日 2004-06-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3413458号「オイルシール用芯材」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3413458号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3413458号は、平成7年11月29日の出願に係り、その請求項1及び2に係る発明について平成15年4月4日に特許権の設定の登録がされ、平成15年6月3日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、平成15年11月4日付けで宇根正昭より、特許異議の申立てがあり、取消しの理由を通知したところ、その指定期間内である平成16年4月8日に意見書の提出があったものである。

2.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、登録された特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 ハウジングと軸間に装着され該二部材間の密封をなすオイルシールにあって、前記オイルシールの構成材である弾性体製シール部の補強をなすオイルシール用芯材において、
前記芯材へ表裏面で凹部と凸部が形成される突形部を交互に凹凸させて刻設配置し、
前記芯材を弾性材料と共に成形型へ投入してオイルシールを成形する時、成形型の型締めによって前記突形部の表裏の凸頂面が成形型の圧縮方向両表面に接触する配置としたことを特徴とするオイルシール用芯材。
【請求項2】 前記弾性体製シール部の補強をなす芯材を平リング形状とし、その表裏面へ突形部を交互に凹凸させて刻設配置することを特徴とした請求項1のオイルシール用芯材。」

(2)刊行物
本件出願前に頒布された刊行物である「実開昭63-61968号(実開平1-166706号)のマイクロフィルム」(特許異議申立人宇根正昭提示の甲第1号証に相当。以下、「刊行物1」という。)には、「バルブステムシール」に関し、図面とともに次の記載が認められる。
[イ]「本考案は、主として内燃機関の吸・排気弁等に用いられるバルブステムシールに関するものである。」(1頁12〜14行)
[ロ]「本考案は、かかるバルブステムシールにおいて、従来の金属製補強環2に対し平面部6に6個所の小さな突起5を製作時に、具体的にはプレス加工による板材の打ち抜き工程で同時加工により形成した突起を設けた金属製補強環2’とゴム製シール本体1を一体成型することによりゴム製シール本体1に完全に突起を設けた金属製補強環2’を埋設し突起を設けた金属製補強環2’の大気側露出部分を消滅させた構成となっている。」(4頁6〜14行)
[ハ]「尚、本考案の突起を設けた金属製補強環2’に設ける突起5の形状、数、位置等は、前記実施例に限定されるものではなく、必要に応じて変更するとよい。」(4頁18行〜5頁1行)
[ニ]「ゴム製シール本体1に突起を設けた金属製補強環2’が完全に埋設されることにより、従来の問題点であったゴム製シール本体1と金属製補強環2の境界部に生じていた、使用時の熱によって発生する応力集中部がなくなり、ゴム製シール本体1と突起を設けた金属製補強環2’の剥離を長期にわたり防止しバルブステムシールの密封性能を長期間安定させることができるとともに、ゴム製シール本体1で突起を設けた金属製補強環2’が被覆されるので防錆効果を向上させることができる。」(5頁4〜14行)
[ホ]第1〜3及び6図から、金属製補強環2’は平リング形状のものであること、及び突起5は金属製補強環2’の表裏面に形成されかつ交互に凹凸させて配置されていることが看取できる。

以上からみて、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

[引用発明]
バルブステムシールにおいて、ゴム製シール本体1を補強する平リング形状の金属製補強環2’であって、その平面部6に、6個所の小さな突起5が表裏面に形成されかつ交互に凹凸させて配置されるように、プレス加工による板材の打ち抜き工程で同時加工により形成してなる、突起5が設けられた金属製補強環2’と、ゴム製シール本体1とを一体成型することにより、ゴム製シール本体1に金属製補強環2’を完全に埋設し、金属製補強環2’の大気側露出部分を消滅させた構成となる金属製補強環2’。

(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
本件発明1と、上記引用発明とを対比すると、引用発明の「バルブステムシール」は本件発明1の「ハウジングと軸間に装着され該二部材間の密封をなすオイルシール」に相当するものであり、以下、同様に「ゴム製シール本体1」は「弾性体製シール部」に、「金属製補強環2’」は「芯材」に、「小さな突起5」は「突形部」に、それぞれ相当する。そして、突起をプレス加工による板材の打ち抜き工程で同時加工により形成することは、突形部を刻設することであるから、両者は、本件発明1の用語に倣うと、
「ハウジングと軸間に装着され該二部材間の密封をなすオイルシールにあって、前記オイルシールの構成材である弾性体製シール部の補強をなすオイルシール用芯材において、前記芯材へ表裏面で凹部と凸部が形成される突形部を交互に凹凸させて刻設配置したオイルシール用芯材。」
で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本件発明1においては、「芯材を弾性材料と共に成形型へ投入してオイルシールを成形する時、成形型の型締めによって前記突形部の表裏の凸頂面が成形型の圧縮方向両表面に接触する配置とした」ものであるのに対し、引用発明ではその点が不明である点

そこで、上記相違点について検討するに、引用発明においても金属製補強環2’の下面の突起5の凸頂面は成形型の圧縮方向表面に接触する配置になっているのであり、刊行物1の図面特に第6図における金属製補強環2’は、ゴム製シール本体の補強部位においては、圧縮方向のほぼ中央に配置されているとも看ることができ、成形型の反対側の表面にも接触させるかどうかは、補強部位の厚さと補強環の形状やサイズで決定し得るものと解される。
しかも、本件発明1において、「両表面」に接触する配置とすることにより格別の作用効果を奏するものとも認められない。
また、上記摘記事項[ハ]からみても、金属製補強環2’の突起の形状は刊行物1に実施例として示されたものに限定されるものではなく、成形型の両表面に接触するような形状、配置とすることを妨げる特段の事情があるものとも解されない。
したがって、引用発明において、芯材である金属製補強環2’の型内での配置を、該補強環2’に形成された突起5が成形型の圧縮方向両表面に接触する配置とし、上記相違点に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることとするのが相当である。

特許権者は、平成16年4月8日付け意見書において、「芯材を弾性材料と共に成形型へ投入してオイルシールを成形する時、成形型の型締めによって前記突形部の表裏の凸頂面が成形型の圧縮方向両表面に接触する配置とした」点の構成、すなわち上記相違点に係る構成は、刊行物1には全く記載も示唆もされていない旨主張し、また、当該構成によって特有の効果を奏するものである旨主張する。
しかしながら、上述のように、補強用の芯材を成形型内において下面のみならず上面にも接触するように配置することは、当業者が容易に想到し得ることと認められるのであり、権利者が該意見書中で主張する、
「(a)本発明の芯材が正確な位置での浮き状態を保った固定を実現することができ
(b)圧縮あるいは射出によって正確な位置へ固定された芯材を包み込むように弾性体が充填されて硬化形成できるので精密な成形を可能とし、
(c)軸への取付精度が高まり、これに伴って回転部材への適正なシールリップの接触摺動が実現し、高いシール生(「性」の誤記と認める。)を確保すると共に早期摩耗を防止する、
(d)さらに本発明の芯材は、点接触状態となって弾性体が表面まで回り込んでおり外部へ露出する部分をほとんど持たないので錆びの発生から護られる」(意見書2頁7〜14行参照)
といった効果は、いずれも、下面のみを接触させた場合であっても、程度の差はともかく、同様の効果は奏せられるものと解され、「両表面」に接触させた場合に奏される「特有の効果」とはいえないものである。そして、それらの効果は、引用発明の構成及び刊行物1の記載(上記摘記事項[ロ]及び[ニ]参照)から、当業者であれば十分予測し得るものであり、格別のものとはいえない。

よって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(3-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の構成に、さらに「弾性体製シール部の補強をなす芯材を平リング形状」のものに特定する構成を付加したものである。
本件発明2と上記引用発明とを対比すると、引用発明の金属製補強環2’は平リング形状であって本件発明2の芯材に相当し、その余の対応関係は本件発明1との対比と同様であるから、両者は、
「ハウジングと軸間に装着され該二部材間の密封をなすオイルシールにあって、前記オイルシールの構成材である弾性体製シール部の補強をなすオイルシール用芯材において、前記芯材を平リング形状とし、その表裏面へ突形部を交互に凹凸させて刻設配置したオイルシール用芯材。」
である点で一致し、前記(1)で挙げた本件発明1との相違点と同じ点で相違する。
しかるに、該相違点の判断は前記(3-1)で検討したとおりである。
したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、請求項1及び2に係る特許は拒絶の査定をしなければならない出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-04-30 
出願番号 特願平7-334087
審決分類 P 1 651・ 121- Z (F16J)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤井 昇  
特許庁審判長 船越 巧子
特許庁審判官 常盤 務
窪田 治彦
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3413458号(P3413458)
権利者 内山工業株式会社
発明の名称 オイルシール用芯材  
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