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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
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管理番号 | 1099716 |
異議申立番号 | 異議2003-71778 |
総通号数 | 56 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-07-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-07-11 |
確定日 | 2004-07-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3367245号「ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート類の製造法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3367245号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本件特許第3367245号は、平成7年1月18日に特許の出願がなされ、平成14年11月8日に特許権の設定登録がなされ、その後、西野さゆりより特許異議の申立てがなされたものである。 【2】本件発明 本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、特許明細書の請求項1、2に記載された、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 中心に撹拌軸が設けられると共に、周囲に加熱ジャケットが取り付けられた円筒形の反応器本体と、該反応器本体の上部に連結された蒸留塔とを備える反応器を用い、回分法により、テレフタル酸又はテレフタル酸ジメチルエステルとエチレングリコールとを150〜280℃の温度でエステル化反応又はエステル交換反応させることによりビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート及び/又はそのオリゴマーを製造する方法において、前記反応器として、反応器本体の上部外周側に蒸留塔からの戻り液導入口を有し、かつ、該導入口の先端に該戻り液を反応器本体の中央部に滴下するための誘導ガイドを設けた反応器を用いることを特徴とするビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート類の製造法。 【請求項2】 請求項1に記載の製造法において、前記蒸留塔からの戻り液導入口が、反応器本体頂部であって、反応器本体の中心軸から反応器本体の半径の2/3より外側の外周側に位置し、かつ、前記誘導ガイドの先端が、反応器本体内の気相部であって、反応器本体の中心軸から反応器本体の半径の1/2より内側の中央部に位置することを特徴とするビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート類の製造法。」 【3】特許異議の申立ての理由の概要 特許異議申立人は、甲第1号証(H.Ludewig原著、横内澪 中村至 訳「ポリエステル繊維」初版 昭和42年3月15日 株式会社コロナ社発行 p.19〜21、77〜85)、及び、甲第2号証(社団法人化学工学協会編「化学装置便覧」第2版 昭和59年1月20日 丸善株式会社発行 p.597〜599、903〜905)を提出し、本件発明1、2は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨の主張をしている。 【4】判断 本件発明1、2は、「「中心に撹拌軸が設けられると共に、周囲に加熱ジャケットが取り付けられた円筒形の反応器であって、該反応器本体の上部に連結された蒸留塔を備え、反応器本体の上部外周側に蒸留塔からの戻り液導入口を有する反応器」(以下「本件反応器」という。)を用いるビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート類の製造法」(以下「本件製法」という。)において、戻り液導入口の先端に「戻り液を反応器本体の中央部に滴下するための誘導ガイド」(以下「本件誘導ガイド」という。)を設けることを構成要件として具備する発明であり、本件誘導ガイドを設けることにより、蒸留塔からの低温の戻り液が本件反応器本体の内壁面に接触することが防止され、ヒートショックによる本件反応器本体の亀裂等の発生が防止されるという効果を奏するものである。 そこで、本件誘導ガイドに関して、甲第1、2号証の記載を検討する。なお、甲第2号証に第596頁は含まれていないが、提出された甲第2号証の写しには該頁が含まれているので、以下においては、第596頁を含めたものを甲第2号証という。 甲第1号証には、インゴット吐出によるチップ製造設備(第21頁)、エステル交換反応の反応式(第78頁)、反応温度(第82頁)、中心に撹拌軸が設けられると共に周囲に加熱ジャケットが取り付けられた円筒形のエステル交換ソウ(第83頁)、該交換ソウに付属する精留塔(第84頁)が記載され、また、通常はエステル交換反応をエチレングリコールの沸点(197℃)で行い留出するグリコールを精留により再び反応系にもどすこと(第84頁)も記載されているから、本件反応器や本件製法については記載されていると認められる。 しかし、甲第1号証には、本件誘導ガイドについては記載も示唆もされていないし、また、本件反応器本体の亀裂等を防止するという課題やそれを解決する手段については何も記載がない。 甲第2号証には、還流冷却器を備えた攪拌機付反応器が記載され(第904頁)、また、濃度差などが濃淡電池による腐食の原因となることや、濃厚液を希薄液が入っている容器内に注入する場合に濃度差による腐食を防ぐ為に濃厚液を壁近くに入れないで中央部に導入管を通して導入すること(第597〜598頁)が記載されているが、本件製法における本件誘導ガイドについては記載も示唆もされていない。また、本件反応器本体の亀裂等を防止するという課題や、それを解決する手段についても記載がない。 以上のとおりであるから、本件発明1、2は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。 なお、特許異議申立人は、甲第1号証には本件製法が記載され、装置の腐食による損傷を防止することは恒久的課題であるのみならず、甲第2号証には反応器の腐食による損傷を防止するために誘導ガイドを設けることが示唆されているから、本件製法において誘導ガイドを設けることは容易である旨の主張をしているが、甲第1号証には、戻り液が濃淡電池による腐食を発生せしめるということは記載も示唆もされていないから、甲第1号証に記載された製法において甲第2号証記載の腐食防止法を適用することが容易であるとは認められない。また、本件発明1、2が達成したヒートショックによる亀裂等の防止は、濃淡電池による腐食とは何の関係もない。したがって、この特許異議申立人の主張は採用できない。 【5】むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1、2についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件発明1、2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2004-06-15 |
出願番号 | 特願平7-5803 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C08G)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森川 聡 |
特許庁審判長 |
井出 隆一 |
特許庁審判官 |
石井 あき子 佐野 整博 |
登録日 | 2002-11-08 |
登録番号 | 特許第3367245号(P3367245) |
権利者 | 三菱化学株式会社 |
発明の名称 | ビス(β-ヒドロキシエチル)テレフタレート類の製造法 |