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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1099746
異議申立番号 異議2003-70943  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-03-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-15 
確定日 2004-07-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第3333504号「共振型電力変換回路の駆動手段、共振型電力変換回路の駆動制御手段、及び、共振型電力変換回路」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3333504号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 (1) 本件発明
特許第3333504号(平成2年4月13日出願、平成14年7月26日設定登録。)の請求項1に係る発明は(以下、「本件発明」という。)、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】「2つのノーマリィ・オフで、ゲート絶縁型もしくは制御電極絶縁型の可制御スイッチング手段」、「複数のインダクタンス手段を磁気結合した変圧手段」及び「直列共振手段に負荷手段を接続した負荷共振手段」が有って、
前記負荷共振手段に対してどちらの前記可制御スイッチング手段も前記変圧手段の入力側インダクタンス手段を介して直接あるいは等価的に直列接続され、
前記変圧手段が前記負荷共振手段の電流から各前記可制御スイッチング手段の駆動信号を形成してそれぞれに正帰還し、両前記可制御スイッチング手段が正反対にオン・オフ駆動される様に前記変圧手段の出力側インダクタンス手段が各前記可制御スイッチング手段に接続される場合、
前記変圧手段のプラス、マイナスの入力電圧を同じ最大絶対値に制限する定電圧手段を有することを特徴とする共振型電力変換回路の駆動手段。」

(2) 申立ての理由の概要
特許異議申立人伴瀬久夫は、請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開昭63-310597号公報)に記載された発明及び甲第2号証(特開昭62-107684号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に該当するので、本件発明の特許を取り消すべきと主張している。

(3) 甲第1、2号証に記載の発明
(3)-1 甲第1号証
甲第1号証には、「共振型の直流-交流変換器」の発明が記載され、具体的には、以下の構成を備える点が、記載されているものと認められる。
a.2つのMOS型FETからなるスイッチング手段(6,7)、複数のインダクタンス手段を磁気結合した変成器(5,21)および直列共振手段(1,5,37,39)にランプ(1)を接続した負荷共振手段。(3頁左下欄5〜12行、5頁右上欄3〜4行)
b.2つのスイッチング手段(6,7)のいずれに対しても変成器(5,21)の入力側インダクタンスであるコイル(5)を介して直列接続された負荷共振手段。(3頁左下欄5〜12行))
c.変成器(5,21)の補助(二次側)巻線(21)に発生する電圧をLC発振回路(19,20)に与え、該LC発振回路(19,20)の取出点(p)から抵抗(25)を介して一方のスイッチング手段(7)の制御電圧として取出すと共に、該スイッチング手段(7)の制御端子と両スイッチング手段の接続点(A)間には、互いに逆向きに直列接続した2個のツエナーダイオードが接続される点。(4頁左上欄11行〜右上欄18行)
d.他方のスイッチング手段(6)は、前記取出点(p)の電圧に応じて前記一方のスイッチング手段(7)と交互に導通させる点。(3頁左下欄12行〜18行)

(3)-2 甲第2号証
甲第2号証には、共振回路を備えたコンバータについて記載され、特に、次のような点が記載されている。
a.一対のMOS-FET(12,20)を変流器を用いて交互にオン・オフさせるために、該変流器には、負荷(15)と並列に接続される1次巻線(16)と、各MOS-FETの制御電極に電圧を与える2つの2次巻線(21,22)を備える点。
b.前記巻線(21,22)は、それぞれコンデンサ(29,25)を介して一対のMOS-FETの制御電極に接続されるとともに、互いに反対導通方向にて接続した2個のツエナーダイオード(23と24、26と27)からなる電圧制限回路が並列接続される点。

(4)対比
そこで、本件発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、後者の「MOS-FET」は、前者の「ノーマリィ・オフで、ゲート絶縁型もしくは制御電極絶縁型の可制御スイッチング手段」に相当し、又後者の変成器は複数のコイル(5,21)を備えるから本件発明の「複数のインダクタンス手段を磁気結合した変圧手段」に相当するから、
両者は「2つのノーマリィ・オフで、ゲート絶縁型もしくは制御電極絶縁型の可制御スイッチング手段」、「複数のインダクタンス手段を磁気結合した変圧手段」及び「直列共振手段に負荷手段を接続した負荷共振手段」が有って、
前記負荷共振手段に対してどちらの前記可制御スイッチング手段も前記変圧手段の入力側インダクタンス手段を介して直接あるいは等価的に直列接続される共振形電力変換回路の駆動手段」で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]
本件発明が、「変圧手段が前記負荷共振手段の電流から各前記可制御スイッチング手段の駆動信号を形成してそれぞれに正帰還し、両前記可制御スイッチング手段が正反対にオン・オフ駆動される様に前記変圧手段の出力側インダクタンス手段が各前記可制御スイッチング手段に接続される場合、」との構成を備えているのに対し、甲第1号証に記載の発明はこのような構成を備えていない点。
[相違点2]
本件発明が、「前記変圧手段のプラス、マイナスの入力電圧を同じ最大絶対値に制限する定電圧手段を有すること」との構成を備えているのに対し、甲第1号証に記載の発明はこのような構成を備えていない点。

(5)当審の判断
[相違点1について]
甲第1号証は、従来例(オランダ国特許出願第8400923号(特開昭60-218799号公報参照)として、上記相違点1に係る構成である2つの二次巻線を有している変成器付きの半ブリッジ変換器について記載されている。甲第1号証に記載の発明は、この従来例の2つの二次巻線を有することによる欠点を解消するためになされたものであるから、甲第1号証に記載の発明において、その2次巻線を従来例の構成に戻すことは、甲第1号証に記載の目的と矛盾することになる。
しかしながら、これと同様の技術分野である甲第2号証においても、各MOS-FETの制御電極に電圧を与える2つの2次巻線(21,22)を備える点が記載されている(上記(3)-2-a.参照)ように、この構成は本件出願前に周知の事項と認められるから、甲第1号証に記載の発明において、このような構成を設けることはそれなりの欠点は存在するものの、当業者が適宜実施し得るものと認められる。

[相違点2について]
甲第1号証に記載の発明における構成c.の「該スイッチング手段(7)の制御端子と両スイッチング手段の接続点(A)間には、互いに逆向きに直列接続した2個のツエナーダイオードが接続される点」は、その作用について明記されていないが、同様の回路構成を備える甲第2号証では「2個のツエナーダイオード23及び24の直列回路から成る電圧制限回路」(3頁左上欄13〜14行)と記載されているように、該構成c.は、甲第1号証の図2の回路構成によれば、LC発振回路の取出し点(p)に生じる電圧を抵抗25を介して取出し、スイッチング手段(7)の制御電極に入力させる際、ツェナー電圧以上の大きな電圧を制御電極に与えないようにするためのものと考えるのが相当と認められる。
そして、甲第1号証に記載の発明は、上記相違点1に係る構成が無い以上、その構成に基づく課題である(a)「駆動用変圧器の励磁インダクタンスがその共振回路のインダクタンス成分として組込まれないようにすること」、(b)「駆動用変圧器の飽和がその共振電圧の増減に影響されないこと」、(c)「共振電流の大きさに関係なく駆動用変圧器の小型化が望まれる」について、想起することはあり得ない。
したがって、スイッチング手段の制御端子に電圧を制限するための「互いに逆向きに直列接続した2個のツエナーダイオードが接続される点」が、甲第1号証に記載の発明及び甲第2号証に記載の発明が備えているように周知であっても、相違点1に係る変圧手段の構成を付加した甲第1号証に記載の発明において、さらに、上記周知の構成を前記変圧手段の1次側に移動することにより、相違点2に係る構成を得ることが、当業者にとって容易に行えるとは認められない。

(6) 申立人の主張について
申立人は、甲第1号証に記載の発明は、定電圧手段が回路上変圧手段の出力側に接続されているため、・・・変圧手段の出力側が上昇してツエナー電圧を超えようとすると定電圧手段が出力電圧を制限するが、・・・結果的に入力側インダクタンス手段に印加される入力電圧も同様に制限されることになる。」と主張している(特許異議申立書(6-2)参照)が、
しかしながら、上記定電圧手段は、過電圧により大きなツェナー電流が流れれば、前記抵抗25には電圧降下が生じ、その電圧降下の分、前記取出し点(p)の電圧及び補助巻線(21)の端子電圧は上昇するから、前記ツェナーダイオードの直列回路が変圧器の誘導電磁作用を抑制しているとは認められない。
しかも、変圧手段の出力側に定電圧手段が設けられると、該手段に流入する電流も変圧器を通ることになり、少なくとも上記本件発明の上記課題(c)を果せないことになる。
また、請求人は、本件発明の「定電圧手段」と甲第1号証に記載の変圧手段の出力側の電圧制限回路とは区別がつかない旨主張する(特許異議申立書(6-4)参照)が、上記[相違点2について]で記したように本件発明の定電圧手段は本件発明の課題を解決するためのものであり、甲第1号証に記載の発明の「互いに逆向きに直列接続した2個のダイオード」(電圧制限回路)はスイッチング素子の制御端子に入力される電圧を制限するためのものであり、技術的に異なるものであることは明かである。

(7) むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する 。
 
異議決定日 2004-06-15 
出願番号 特願平2-96579
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H02M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 西村 泰英  
特許庁審判長 三友 英二
特許庁審判官 岩本 正義
安池 一貴
登録日 2002-07-26 
登録番号 特許第3333504号(P3333504)
権利者 鈴木 利康
発明の名称 共振型電力変換回路の駆動手段、共振型電力変換回路の駆動制御手段、及び、共振型電力変換回路  

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