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審決分類 審判 一部申し立て 発明同一  B65H
管理番号 1099747
異議申立番号 異議2003-73597  
総通号数 56 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-27 
確定日 2004-06-23 
異議申立件数
事件の表示 特許第3420787号「搬送媒体の検出装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3420787号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3420787号(平成5年1月18日出願(平成4年8月3日の特願平4-206844号を国内優先出願とする出願))の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 搬送媒体を搬送する搬送路と、この搬送路に直角に貫通する方向に光を出力する発光素子と、この発光素子と前記搬送媒体の搬送方向と直交する方向に所定の間隔を設けて配列した受光素子と、この受光素子の受光量を検出する検出回路と、前記発光素子から出力された光と、前記搬送路を挟んだ光軸上で反射すると共に前記搬送路に沿って平行に導く入光側反射面、およびこの反射光を前記受光素子の搬送路を挟んだ光軸上で再び反射して受光素子へ出光する出光側反射面を有する反射体とを備え、前記検出回路により検出される前記受光素子の複数段階の受光量に基づいて搬送媒体の斜行を検出することを特徴とする搬送媒体の検出装置。」
したがって、本件発明は、「受光素子の複数段階の受光量に基づいて搬送媒体の斜行を検出すること」をその構成の一部とするものである。

2.申立の理由の概要
異議申立人山本智美は、証拠として甲第1号証(特願平4-185687号(出願日が平成4年6月22日である特開平5-221557号公報を参照))を提出し、本件発明は、その構成の全てが本件発明の出願前の出願であって本件発明の出願後に公開された甲第1号証に記載されており、両発明は同一であると言えるから、本件発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであって、特許法第113条第1項第2号により取り消すべきものであると主張している。
なお、審判長は、平成16年4月2日付けで異議申立人と特許権者に対して、平成16年5月28日に口頭審理を行う旨通知し、平成16年5月28日に異議申立人欠席で本件特許異議申立の口頭審理を行った。

3.当審の判断
甲第1号証をみると、異議申立人の主張するように、特願平4-185687号の最初に添付された明細書または図面(以下、「先願明細書」という。)には、
記載事項1-1:「【0001】 ペイパー輸送通路と組み合わせて設けられ、ドキュメントを検出する少なくとも1つの手段からなり、前記手段はフォトエミッターおよび光検出器からなり、前記光検出器はペイパー輸送通路の中に位置し、こうしてフォトエミッターと光検出器との間において光伝播通路に供給されるドキュメントは光検出器が受け取る光の量の変化を引き起こす、ペイパー輸送通路の中に供給されるドキュメントの上に文字を生成するプリンターまたは同様な出力装置に関する。」
記載事項1-2:「【0003】 ドキュメントがペイパー輸送通路の中において直線であるかどうか、すなわち、その背面のへりがペイパー輸送通路の縦方向に対して直角にあるかどうか、を検出するために、前述の基本的検出器に基づいて、いっそう進歩した構造が使用され、ここで前述の型の2つの検出器は同一線上に位置し、この線はペイパー輸送通路の縦方向に対して直角である。これらの検出器の一方のみがペイパー輸送通路の中のドキュメントの存在を示すとき、ドキュメントは直線でないことを知る。反対に、両者の検出器がドキュメントの存在を検出したとき、ドキュメントは直線であることを知る。これは、もちろん、検出器が位置する線がドキュメントのための背面のエッジガイドにおいて直角であることを必要とする。背面のエッジガイドの目的は、ドキュメントがペイパー輸送通路の中に供給される前に直線であることを確実にすることである。」
記載事項1-3:「【0010】 図1はプリンターのペイパー輸送通路1の中に位置する光学的手段を示し、ここでフォトエミッターU1と光検出器Q1との間の光伝播通路に供給されるドキュメント(図示せず)は、それが実質的にペイパー輸送通路の任意の横方向の位置に供給されるとき、光検出器Q1が受け取る信号の変化を引き起こす。この性質は、光学的手段2を使用することによってペイパー輸送通路の横方向に互いに間隔を置いて位置する点から、ペイパー輸送通路1の上面と下面との間で、光線を数回伝播させることによって達成される。図1の実施態様において、光学的手段2はプリズムからなり、このプリズムは、まず、光線を受け取り、次いでそれを屈折させ、こうして光線はペイパー輸送通路1の横方向に伝播した後、それらは再び他の点からペイパー輸送通路を横切る。プリズムを所望の方法で寸法決定することによって、所望の間隔で所望の数の点が達成され、それらから光線はペイパー輸送通路を横切る。プリズム2の適当な寸法決定により、最小の許容されうるドキュメントに等しいか、あるいはそれより大きいドキュメントが常に信頼性をもって検出されるような間隔で、このような点を設けることができる。図1の実施態様におけるプリズム2は、光線がペイパー輸送通路1を横切って垂直に伝播するように、光線を屈折するが、また、光線がペイパー輸送通路を斜めに横切るように光線を屈折することができ、この場合において、光学的手段をより簡単な構造にすることができるであろう。最も簡単には、より反射性の鏡の表面を使用して、光線をペイパー輸送通路の上において、ジグザグ様通路に沿って横方向に、フォトエミッターから光検出器へ通すことができるであろう。」
記載事項1-4:「【0016】 典型的には、フォトエミッターは赤外線を放射するLEDであるが、それらは、また、ある他の型の光を放射する成分からなる;図2の実施態様において、光学的マスク9の開口を通して2つの光信号を放射する単一の大きい面積のフォトエミッターを、また、使用することができるであろう。光検出器を、引き続いて、好ましくはフォトトランジスターである。しかしながら、フォトエミッターおよび光検出器の性質は前述のものと異なることができる;事実、すべての普通の感光性成分の使用は本発明によるプリンターにおいて可能であるが、ただしそれらは、光を移送するか、あるいは受け取るための、これらの成分に対して特別であるような方法で適用される。図2の実施態様の操作に関して、また、光検出器Q1およびQ2からの信号を普通の方法でロジック手段に接続し、これらのロジック手段は、ドキュメントがペイパー輸送通路の中に供給されたことを示す状態に両者の信号があるときを検出する。このような場合において、検出器がドキュメントの背後のエッジガイドにおいて直角に位置しているとき、ドキュメントはペイパー輸送通路に対して直角であることが知られている。」
が記載されている。
これらの記載を見れば、甲第1号証には、光が光検出器に注ぐ前に、ペイパー輸送通路を横切って数回通過するものが示され、それによりペイパーが斜行していることを検出する旨の開示は認められるものの、これは、本件発明の一部である「受光素子の複数段階の受光量に基づいて搬送媒体の斜行を検出すること」即ち、特許権者も主張するように、1つの受光素子の少なくとも3段階の受光量による出力の違いに基づいて斜行を検出することとは別異の、複数の光検出器の出力を比較することにより検出を行うことが示されるものであり、甲第1号証の残余の記載をみても、本件発明の構成の一部である、「受光素子の複数段階の受光量に基づいて搬送媒体の斜行を検出すること」である構成を記載しているとは認められない。
そして、本件発明は、「受光素子の複数段階の受光量に基づいて搬送媒体の斜行を検出すること」である構成を有することにより、本件特許の明細書に記載されたとおりの特有の効果を有するものであり、同構成を単なる設計的の事項とすることはできない。
したがって、本件請求項1に係る発明を、その構成の一部として記載しない甲第1号証出願の最初に添付された明細書または図面に記載された発明と同一であるとすることはできない。
よって、異議申立人の主張は採用しない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由によっては本件発明について特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものと認めない。
よって、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年制令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-06-07 
出願番号 特願平5-6002
審決分類 P 1 652・ 161- Y (B65H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉野 裕幸  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 市野 要助
山崎 豊
登録日 2003-04-18 
登録番号 特許第3420787号(P3420787)
権利者 沖電気工業株式会社
発明の名称 搬送媒体の検出装置  
代理人 大西 健治  

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