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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B65G
管理番号 1100274
審判番号 無効2003-35256  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-10-12 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-06-23 
確定日 2004-02-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2521588号発明「熱交換器付き縦型回転棚」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2521588号の請求項1,2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
(1)平成 3年 3月14日 特許出願
(2)平成 8年 5月17日 特許権設定登録(請求項の数2)
(3)平成15年 6月23日 審判請求書
(4)平成15年 9月10日 答弁書、訂正請求書
(5)平成15年11月18日 被請求人口頭審理陳述要領書
(6)平成15年11月18日 請求人口頭審理陳述要領書(1)(2)
(7)平成15年11月18日 口頭審理
(8)平成15年11月27日 被請求人上申書

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
被請求人は、平成15年9月10日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、【発明の詳細な説明】の欄の段落【0016】を下記のとおり訂正することを求めるものである。
特許明細書の【発明の詳細な説明】の欄の段落【0016】
「【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、無端チェンのガイドフレーム内の制約された遊び空間を利用して熱交換器を設置したから、熱交換器の設置のために余分なスペースを箱体の外側に確保する必要がなく、小さな床面積で大量の物品を収納できるという縦型回転棚の長所を最大限度に活かすことができる上、熱損失が少なく熱効率を高めることができる。しかも、前記熱交換器による温風又は冷風の均一な強制循環作用と収納棚が循環移動することが相俟って、温風による乾燥や冷風による冷却保存が均一に行なえる。また、請求項2に係る発明によれば、箱体1内の温風又は冷風が多孔板26により均一化されて循環空気通路27へ流入するので、熱風又は冷風の強制循環作用を一層均一にできる。特に、熱風に比べて強制循環に大きな吸引力を必要とする冷風の場合に効果的である。」を、
「【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、無端チェンのガイドフレーム内の制約された遊び空間を利用して熱交換器を設置したから、熱交換器の設置のために余分なスペースを箱体の外側に確保する必要がなく、小さな床面積で大量の物品を収納できるという縦型回転棚の長所を最大限度に活かすことができる上、熱損失が少なく熱効率を高めることができ、そして、前記熱交換器が下向き吹出し口を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクトが接続されていること、さらに前記箱体内の上部に形成される循環空気通路が循環ダクトに接続されていることによって、前記箱体内に温風又は冷風を均一に強制循環させることができる。しかも、前記熱交換器による温風又は冷風の均一な強制循環作用と収納棚が循環移動することが相俟って、温風による乾燥や冷風による冷却保存が均一に行なえる。また、請求項2に係る発明によれば、箱体1内の温風又は冷風が多孔板26により均一化されて循環空気通路27へ流入するので、熱風又は冷風の強制循環作用を一層均一にできる。特に、熱風に比べて強制循環に大きな吸引力を必要とする冷風の場合に効果的である。」と訂正する。(なお、下線は当審が付加)

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正は、特許明細書の【特許請求の範囲】に記載された熱交換器による温風又は冷風の強制循環作用の根拠を明りょうにしたものであり、該強制循環作用は、特許明細書の段落【0007】『【作用】 上記構成によれば、熱交換器の設置に余分なスペースを要しない。また、熱交換器から吹き出た温風や冷風の均一な強制循環作用と収納棚が循環移動することが相俟って、収納棚に収納した物品の乾燥や冷却が均一に行われる。』の記載と、特許明細書の段落【0012】第1行目〜第10行目『上記構成において、熱交換器14の熱交換チューブに蒸気を供給し、送風機21,22を運転すると、ダクト23と循環空気分配ダクト19を経て分配された空気が熱交換器14に入り、温風となって熱交換器14から空間Sで下向きに吹き出される。この温風は図3に矢印で示したように空間Sから箱体1の内部に強制的に循環され、拡散しながら上昇する。そして、多孔板26の孔を通過して循環空気通路27に入る。このとき、多孔板26は温風流出を抑制する邪魔板として役立つため、有孔板26によって箱体1の内部に温風を均一に循環させることができるようになる。一方、循環空気通路27に入った温風は循環ダクト25を経て送風機21,22に吸い込まれ、再びダクト23と循環空気分配ダクト19と熱交換器14を通り、温風となって空間Sに下向きに吹き出される。』との記載及び図3の記載から明らかである。
したがって、上記訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書、及び同条第5項で準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.請求人の主張
請求人株式会社ダイフクは、本件特許第2521588号発明の明細書の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、『1)本件特許の請求項1、2に係る本件特許発明は、甲第3号証〜甲第14号証に基づき、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、したがって、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。 2)平成2年12月1日から施行された平成2年6月13日法律第30号に基づく特許法第36条第4項の規定により、特許を受けることができないものであり、したがって、本件特許は特許法第123条第1項第3号の規定により、無効とすべきである。』旨主張し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出している。

4.被請求人の主張
一方、被請求人株式会社マキシンコー、株式会社中西製作所は、本件審判は成り立たない、との審決を求め、その理由として、『1)本件特許発明の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第3号証〜甲第14号証に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。 2)本件特許公報の明細書及び図面の記載から、当業者は直ちに「循環空気通路27」の構成が如何なるものであるかを理解できるから、特許法第36条第4項の規定の要件を満たしていることは明らかである。』旨主張している。

5.当審の判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件特許の請求項1,2に係る発明(以下、「本件発明1、2」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 箱体1内の左右両側に配設されたガイドフレーム13,13の上下に軸支した駆動輪2と従動輪3とに無端チェン4を掛け渡して垂直移動経路を有する無端循環経路が形成され、前記無端チェン4に複数の収納棚5が支持アーム6,6及びガイドアーム7を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持され、前記無端チェン4の駆動により各収納棚5を出納口8に移動させるようにした縦型回転棚において、
前記ガイドフレーム13,13内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器14が設置され、該熱交換器14は下向き吹出し口18を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクト19が接続されており、
一方、前記箱体1内の上部に、循環ダクト25に接続される循環空気通路27が形成されていることを特徴とする熱交換器付き縦型回転棚。
【請求項2】 前記循環空気通路27が、前記箱体1内の上部に配設した多孔板26を介して形成されている請求項1記載の熱交換器付き縦型回転棚。」

(2)第1回口頭審理調書
平成15年11月18日になされた口頭審理において作成された第1回口頭審理調書の内容は、概略、以下のとおりである。
(両当事者の確認事項)
1 甲第4号証及び甲第11号証は非公知であるので、基礎となる刊行物は、それぞれ、実願昭63-116729号(実開平2-37641号)のマイクロフィルム,特開平1-226610号公報である。
2 甲第5号証記載の「通風案内板5」は、「空気分配ダクト」である。
(請求人)
1 甲第6号証の第5図に本件請求項1に係る発明の「循環空気通路27」に相当する、「熱交換器13」のある通路が記載されている。
(被請求人)
1 甲第6号証の第5図に記載されている「熱交換器13」のある通路は、本件請求項1に係る発明の「循環ダクト25」に相当するものであって、「循環空気通路27」に相当するものではない。

(3)甲第3号証ないし甲第7号証、甲第9号証ないし甲第14号証
甲第3号証(実願平1-34477号(実開平2-125739号)のマイクロフィルム)には、「回転棚付き恒温槽」に関して、以下の事項が記載されている。
ア.「第1図は回転棚付き恒温槽の正面図を、第2図、第3図はその断面図を示している。この恒温槽は、断熱壁11で周囲を包囲された縦長の収納室2に、回転棚15を配置し、その収納室2の側部に送風室3を設けて構成される。
回転棚15は、上下に水平に設けた軸13、14の両側に1対のスプロケット16、17を取付け、それら上下両側のスプロケット16、17間に2本のチェーン18を両側上下方向に掛け渡し、その両側のチェーン18、18に連結アーム20を一定の間隔で連結し、棚19を両側の連結アーム20、20間に水平に支持させ、下側の軸14を減速機付きのモータ21により低速で回転駆動し、各棚19を縦に長い円形の軌道上で移動させる構造である。」(明細書第7頁第8行〜第8頁第2行)
イ.「収納室2の側部には、隔壁を隔てて縦長の送風室3が形成され、送風室3の上部に、隔壁上部の吸気孔6から収納室2内の空気を吸気する送風機4が設置され、送風機4の吐出側に熱交換器5がダクトを介して接続される。 ・・(略)・・
一方、収納室2の底部にはその両側角部に、三角柱状で多数の送風孔9a,10aを室内側にもつ通風路9、10が形成され、熱交換器5の吐出側が2本のダクト7、8を介して両側の通風路9、10に連通接続される。従って、収納室内2の空気は、送風機4の運転により吸気孔6から吸引され、熱交換器5に送られて加熱或は冷却され、2本のダクト7、8を通って収納室底の角部の通風路9、10に送られ、その通風孔9a,10aから収納室2に送風され、循環される。」(明細書第9頁第17行〜第10頁第16行)
ウ.「次に、上記恒温槽の動作を説明する。
恒温槽の送風機4及び熱交換器5が運転されると、収納室内2の空気は、送風機4の運転により吸気孔6から吸引され、熱交換器5に送られて加熱或は冷却され、2本のダクト7、8を通って収納室底の角部の通風路9、10に送られ、その通風孔9a,10aから収納室2に送風され、循環される。これにより、収納室内は一定の加熱或は冷却温度に保持される。
洗浄後の各種製品や食器、食品等の物品30は、前面の扉12を開き、開口部22kら出し入れされる。例えば、物品30を恒温槽に搬入する場合、第4図のように、テーブル25の上に物品を載せ、扉12を開き、停止している回転棚15の棚19の一つの棚板19a上に物品30を押し込む。
さらに、物品を入れる場合、図示しないスタートスイッチを操作してモータ21を起動させ、回転棚15を回転させる。そして、その下の棚板19aが開口部22に達すると、検出器24がその棚板19aの位置検出片23を検出してモータ21が停止し、回転棚15は再び停止する。この状態で、空の棚板19aが開口部22に対向して位置し、上記と同様に物品30がそこに押し込まれる。
そして、再び回転棚15が起動し、上記と同様な動作が繰り返されることにより、物品30が恒温槽内に搬入される。一方、恒温槽内の回転棚15から物品を搬出する場合、上記と同様に、回転棚15を回転させて各棚板19aを開口部位置で停止させ、そこに収納された物品30を開口部22から搬出する。」(明細書第10頁第20行〜第12頁第11行)
エ.「なお、図示は省略されているが、チェーン18の揺れを防止するために、チェーンガイドがチェーンに沿って設けられる。」(明細書第9頁第14〜6行)
上記記載事項ア.ないしウ.によると、甲第3号証には、
「箱体内の上下に軸支したスプロケット17とスプロケット16とにチェーン18を掛け渡して垂直移動経路を有する無端循環経路が形成され、前記チェーン18に複数の棚19が連結アーム20,20を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持され、前記チェーン18の駆動により各棚19を開口部22に移動させるようにした回転棚付き恒温槽において、
送風室3内の空間に熱交換器5が設置され、
一方、前記箱体内の上部に、送風機4,ダクトを介して熱交換器5に接続される吸気孔6が形成され、前記箱体内の下部に、ダクト7,8を介して熱交換器5に接続される通風路9,10、通風孔9a,10aが形成されている縦型の回転棚付き恒温槽。」の発明が記載されていると認められる。

甲第4号証(実願昭63-116729号(実開平2-37641号)のマイクロフィルム。考案の名称「棚回転式食器消毒保管機」)には、以下の事項が記載されている。
カ.「この考案は、加熱消毒保管室内に上下方向に回転自在に設置した回転棚上に食器を収納した食器篭を載せ、加熱消毒保管室内の熱気により食器を加熱消毒しながら保管するための棚回転式食器消毒保管機に関するものである。」(明細書第1頁第17行〜第2頁第1行)
キ.「左右のチェーンコンベヤ5,5の内側間には一対又は複数対の縦向き風胴状の熱風流路8,8’が設置され、各対をなす熱風流路8,8’にはその上部に加熱消毒保管室1の前後部に互いに逆向きに開口して前後均等に吸気するようにした吸気口9、および吸気用ロータリーファン10が設けられ、また内部の中間部には空気加熱用の熱交換器11が設置され、更に下部には加熱消毒保管室1の前後部に開口する排気口12,12’が設けられている。」(明細書第4頁第3〜12行)
ク.「食器類の消毒保管時において、加熱消毒保管室1内の中央部に設置された熱風流路8,8’の上部の吸気口9から加熱消毒保管室1内の上部の熱気を前後均等に吸引し、熱交換器11により所要温度に加熱した上でそれぞれ下部に開口した排気口12,12’から加熱消毒保管室1の下部に前後均等に熱気を噴出するため、加熱消毒保管室1内の熱雰囲気は常に全体として均一な温度に保持され、上下及び前後に位置を異にする各回転棚7に載せられた食器篭S内の食器を全体的に均一な温度に加熱消毒しながら保管することができる。」(明細書第5頁第4〜15行)
上記記載事項カ.ないしク.によると、甲第4号証には、縦型回転棚に関し、
「左右のチェーンコンベヤ5,5の内側間には一対又は複数対の縦向き風洞状の熱風流路8,8’が設置され、各対をなす熱風流路8,8’にはその上部に加熱消毒保管室1の前後部に互いに逆向きに開口して前後均等に吸気するようにした吸気口9、および吸気用ロータリーファン10が設けられ、また内部の中間部には空気加熱用の細長い箱形に構成した熱交換器11が設置され、更に下部には加熱消毒保管室1の前後部に開口する排気口12,12’が設けられている」技術事項が記載されていると認められる。

甲第5号証(実公昭38-11491号公報。考案の名称「暖房器」)には、以下の事項が記載されている。
サ.「その構成は図面に示すように器体1の上部の燃焼室2上に放熱型のパイプ3を数本該室内に連通して固設しパイプ3の上端を排気筒4に連通しパイプ3の背面には数枚の通風案内板5を適当の間隔をもって配置しかつ燃焼室2の片側にして通風案内板5の下方に弯曲せる仕切板6を固設して左右に分割した送風路7,8を構成し下方に設置したファンAよりの送風を前記二つの送風路7,8を経て放熱型パイプ3の基部に強制通風させるように設けて成る暖房器の考案に係るものである。」(第1頁左欄第11〜20行)
シ.「下方よりファンにより空気を該室内に送入する場合仕切板6で二つの送風路7,8に区分してあるので片側の送風路7よりの空気のみが通風案内板5を経て放熱パイプ3に吹付けせられてその空気を加熱しながら前面の放出口12より室内へ温風を送出するものである、 ・・(略)・・ また通風案内板5を適当間隔でパイプの背後に数段配置したので下方よりの送風を上下平均にパイプに与えて各部において熱風発生を行うようになっているゆえに室内で発生した熱風は放出口12より常時順調に排出して暖房の目的を達する実用的な考案である。」(第1頁右欄第1〜17行)
上記記載事項サ.シ.によると、甲第5号証には、暖房器における通風ないし送風に関し、
「通風案内板5を適当間隔で放熱パイプ3の背後に数段配置し、送風路7よりの送風を上下平均に放熱パイプ3に与える」技術事項が記載されていると認められる。

甲第6号証(実願昭62-131447号(実開昭64-40364号)のマイクロフィルム。考案の名称「垂直回転棚装置」)には、以下の事項が記載されている。
タ.「本考案は、食堂、学校給食等で大量に使用される食器類、ナイフ、フォーク、箸等の乾燥、殺菌消毒、除湿、冷却等を行うのに好適な垂直回転棚装置に関する。」(明細書第1頁第10〜13行)
チ.「又、熱交換器13、空気の流れを生ぜしめる手段18は、フレーム10の前面11内に取付け、保守、管理が容易に行えるようにしているが、第5図のように本体10の上部61又は背部62に取付けてもよい。」(明細書第7頁第20行〜第8頁第4行)
ツ.「本考案によれば、 ・・(略)・・ フレーム内の空気の流れが各棚に及ぼす影響を均一化できるので、食器等の品物の乾燥、殺菌消毒等を均一、かつ速やかに行えること、等の効果を奏する。」(明細書第8頁第13〜19行)
上記記載事項タ.ないしツ.によると、甲第6号証には、縦型の回転棚に関し、
「本体10の上部61に、(ファン16,17、熱交換器13が配置された)循環空気通路が形成されている」技術事項が記載されていると認められる。

甲第7号証(実願昭58-96575号(実開昭60-5488号)のマイクロフィルム。考案の名称「回転棚式清浄装置」)には、以下の事項が記載されている。
ナ.「回転棚室10の対向する両側壁間には上下方向に離間して配置された下部スプロケット軸13と上部スプロケット軸14が架設され、夫々の軸上には一対の駆動スプロケット15,15及び従動スプロケット16,16が離間固設されている。そして、一対の駆動スプロケット15,15及び従動スプロケット16,16間には上下方向に無端チェーン17,17が懸回され、該チェーン17,17はチェーンの上昇経路及び下降経路に沿って回転棚室10の両側壁間に架設された対向する一対の中央隔壁18,19に夫々取付けられたチェーン案内レール20,21に誘導案内される。」(明細書第4頁第20行〜第5頁第12行)
上記記載事項ナ.によると、甲第7号証には、縦型回転棚に関し、
「チェーン17,17はチェーンの上昇経路及び下降経路に沿って回転棚室10の両側壁間に架設された対向する一対の中央隔壁18,19に夫々取付けられたチェーン案内レール20,21に誘導案内される」技術事項が記載されていると認められる。

甲第9号証(特公昭38-13341号公報)には、「乾燥装置」に関して、以下の事項が記載されている。
ハ.「前記熱空気送り込み室及び排気室と乾燥室との間に通気量を後端から送風口側に至るに従って漸増する様穿孔した多孔板を設置したもので」(第1頁左欄第9〜12行)
ヒ.「元来送風機から熱空気送り込み室に送られる風は相当強い風速で送られるから熱風は熱空気送り込み室の最後端に突き当り其の附近の風圧が最も強く為に多孔板に於けるこの部分の通気孔を通過する空気量が自然大となり送風口の部分に於ける多孔板の通気孔を通過する空気量が自然少くなる傾向があるものでこれが為本発明はこの欠陥を除去する為通気孔を通過する風圧の低い空気の通過する部分には孔数を増加し通過空気量の多い傾向のある部分には通気孔の孔数を減じて乾燥室内に進入する空気量を各部均等ならしめたものである
尚排気室を熱空気送り込み室に使用する場合も同様の現象を生じるからこの部分の多孔板を熱空気送り込み室の多孔板と同様の構造としたもので尚この室が排気室とした場合にも多孔板の通気孔の穿ち方が熱空気送り込み室の多孔板と同一形状にして対向さしてあるから自然通気に応じた排気が行われるものである。」(第1頁右欄第16〜33行)

甲第10号証(実願昭62-133826号(実開昭64-40365号)のマイクロフィルム。考案の名称「食器篭収納兼乾燥殺菌装置」)には、以下の事項が記載されている。
マ.「側板14の外面に後述枢着片を枢着させる為の貫通孔16を有する取付板17を固着し、該取付板17側部に突部18を設けている。次に前記チェーン8に板状の2個の突出片19,19の一端をそれぞれ軸着し、この2個の突出片19,19の他端を重ね合わせ、ピン等で棚12の取付板17に枢支することにより、棚12を支持するとともに、チェーン8の回転による該棚12の軌跡に伴なう突部18の軌跡に対し該突部18を遊嵌させる図示しない溝部を設けることにより棚軌道の案内をし、且つ棚12の支持の役割を果たすことになる。」(明細書第6頁第7〜18行)
上記記載事項マ.によると、甲第10号証には、縦型の回転棚に関し、
「チェーン8に複数の棚12が突出片19,19及び突部18を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持された」技術事項が記載されていると認められる。

甲第11号証(特開平1-226610号公報。発明の名称「回転式棚設備」)には、以下の事項が記載されている。
ヤ.「前記囲壁体21内でかつインサイドカバー3A,3Bの外側において、その上部には左右一対の従動輪体23が、また下部には左右一対の駆動輪体24が配設され、上下方向で対向する両輪体23,24間には無端回動体(チェンなど)25が巻張される。前記駆動輪体24を取付けた駆動軸26は、囲壁体1内を左右方向に通るとともに、前記支持枠2A,2Bに軸受27を介して回転自在に支持され、そして囲壁体1内に設けた正逆駆動自在な駆動装置28に連動連結している。また前記従動輪体23は、支持枠2A,2B側に取付けた従動軸29に回転自在に支持されている。」(第3頁左上欄第13行〜右上欄第4行)
ユ.「左右一対の無端回動体25間には多数のバケット33がリンクプレート34を介して取付けてある。すなわちリンクプレート34は2本一組で、その遊端間を連結するピン35にバケット33が揺動自在に支持されている。そしてピン35側からのレバー36の遊端に取付けたローラ37を案内するガイドレール38が前記支持枠2A,2Bの内面側に配設してある。」(第3頁右上欄第8〜15行)
上記記載事項ヤ.ユ.によると、甲第11号証には、縦型回転棚に関し、
「囲壁体1内の左右両側に配設された支持枠2A,2Bの上下に駆動輪体24と従動輪体23とを軸支した」技術事項、「無端回動体25に複数のバケット33がリンクプレート34,34及びレバー36を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持された」技術事項が記載されていると認められる。

甲第12号証(実公昭46-21839号公)には、「瓦斯熱による食器消毒保管庫」に関して、以下の事項が記載されている。
ラ.「さらに、食器消毒室Rの上部と、その一側部に熱気を食器消毒室Rの上部を経由し側部を下降させて前記底部の熱流室Hに導入させる風洞17,18を連設し、上壁5に上部風洞17への熱気導出路19を設け、」(第1頁第2欄第14〜18行)

甲第13号証(実公昭36-7495号公報)には、「気流式熱風消毒機」に関して、以下の事項が記載されている。
リ.「この考案は上述のように構成したので電熱ヒーター9に送電して之を加熱し熱源室7を高温にさせ送風機12を作動し熱源室7の熱空気を消毒室5内に導入上昇させ載棚6上の被消毒物を加熱消毒させながら消毒室5の熱気を通気口4より上部のダクト2に導き之より周囲のダクト2を下降させ送風機10の吸気作用により吸気路10より熱源室7内に導入し、」(第1頁左欄第27行〜右欄第1行)

甲第14号証(特開昭53-145150号公報)には、「強制対流型ガス式消毒乾燥保管庫」に関して、以下の事項が記載されている。
ル.「天井板(ル)の吸気孔(ヲ)群から庫室(ワ)内の空気を吸込んでサイドダクト(カ)を通り」(第1頁右下欄第13〜15行)

(4)対比・判断
(本件発明1について)
本件発明1と甲第3号証記載の発明とを対比する。
甲第3号証記載の発明における「箱体」は本件発明1の「箱体1」に相当し、以下同様に、「スプロケット17」は「駆動輪2」に、「スプロケット16」は「従動輪3」に、「チェーン18」は「無端チェーン4」に、「棚19」は「収納棚5」に、「連結アーム20,20」は「支持アーム6,6」に、「開口部22」は「出納口8」に、「回転棚付き恒温槽」は「縦型回転棚」に、「熱交換器5」は「熱交換器14」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「箱体内の上下に軸支した駆動輪と従動輪とに無端チェンを掛け渡して垂直移動経路を有する無端循環経路が形成され、前記無端チェンに複数の収納棚が支持アームを介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持され、前記無端チェンの駆動により各収納棚を出納口に移動させるようにした縦型回転棚。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕
本件発明1においては、箱体内の左右両側に配設されたガイドフレーム13,13の上下に駆動輪と従動輪とを軸支したのに対して、甲第3号証記載の発明においては、箱体内の上下に駆動輪と従動輪とを軸支した点。
〔相違点2〕
本件発明1においては、収納棚が支持アーム及びガイドアーム7を介して吊下げ支持されるのに対して、甲第3号証記載の発明においては、収納棚が支持アームを介して吊下げ支持される点。
〔相違点3〕
本件発明1においては、前記ガイドフレーム13,13内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器が設置され、該熱交換器は下向き吹出し口18を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクト19が接続されており、一方、前記箱体内の上部に、循環ダクト25に接続される循環空気通路27が形成されているのに対して、甲第3号証記載の発明においては、送風室3内の空間に熱交換器が設置され、一方、前記箱体内の上部に、送風機4,ダクトを介して熱交換器に接続される吸気孔6が形成され、前記箱体内の下部に、ダクト7,8を介して熱交換器に接続される通風路9,10、通風孔9a,10aが形成されている点。

上記相違点1ないし3について検討する。
〔相違点1〕について
上記5.(3)のとおり、甲第11号証には、「囲壁体1内の左右両側に配設された支持枠2A,2Bの上下に駆動輪体24と従動輪体23とを軸支した」技術事項が記載され、甲第7号証には、「チェーン17,17はチェーンの上昇経路及び下降経路に沿って回転棚室10の両側壁間に架設された対向する一対の中央隔壁18,19に夫々取付けられたチェーン案内レール20,21に誘導案内される」技術事項が記載されている。
ここで、甲第11号証記載の技術事項における「囲壁体1」、「支持枠2A,2B」、「駆動輪体24」、「従動輪体23」は、それぞれ、本件発明1における「箱体1」、「フレーム13,13」、「駆動輪2」、「従動輪3」に、甲第7号証記載の技術事項における「チェーン案内レール20,21」は、本件発明1における「ガイドフレーム13,13」に、相当するものと認められ、甲第3号証、甲第7号証、甲第11号証記載のものは、「縦型回転棚」という同一技術分野に属するものであり、しかも、甲第3号証には、上記5.(3)の記載事項エ.によれば、チェーン18の揺れを防止するために、チェーンガイドをチェーンに沿って設ける旨の示唆があるから、甲第3号証記載の発明において、甲第7号証、甲第11号証記載の技術事項を適用して、「箱体内の左右両側に配設されたガイドフレームの上下に駆動輪と従動輪とを軸支する」ように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。
〔相違点2〕について
上記5.(3)のとおり、甲第10号証には、「チェーン8に複数の棚12が突出片19,19及び突部18を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持された」技術事項が記載され、甲第11号証には、「無端回動体25に複数のバケット33がリンクプレート34,34及びレバー36を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持された」技術事項が記載されている。
ここで、甲第10号証記載の技術事項における「チェーン8」、「棚12」、「突出片19,19」、「突部18」は、それぞれ、本件発明1における「無端チェン4」、「収納棚5」、「支持アーム6,6」、「ガイドアーム7」に、甲第11号証記載の技術事項における「無端回動体25」、「バケット33」、「リンクプレート34,34」「レバー36」は、それぞれ、本件発明1における「無端チェン4、「収納棚5」、「支持アーム6,6」、「ガイドアーム7」に、相当するものと認められ、甲第3号証、甲第10号証、甲第11号証記載のものは、「縦型回転棚」という同一技術分野に属するものであるから、甲第3号証記載の発明において、甲第10号証又は甲第11号証記載の技術事項を適用して、「収納棚が支持アーム及びガイドアームを介して吊下げ支持される」ように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。
〔相違点3〕について
先ず、本件発明1における「前記箱体内の上部に、循環ダクト25に接続される循環空気通路27が形成されている」点について、検討する。
上記5.(3)のとおり、甲第6号証には、「本体10の上部61に、(ファン16,17、熱交換器13が配置された)循環空気通路が形成されている」技術事項が記載されている。
ここで、甲第6号証記載の技術事項における「本体10」、「上部61」、「(ファン16,17、熱交換器13が配置された)循環空気通路」は、それぞれ、本件発明1における「箱体」、「上部」、「循環空気通路27」に相当するものと認められ、甲第3号証、甲第6号証記載のものは、「縦型回転棚」という同一技術分野に属するものであり、しかも、棚装置において、「箱体内の上部に、循環ダクトに接続される何らかの部材によって区画形成された循環空気通路を形成する」ことは、従来周知の技術事項(甲第12号証ないし甲第14号証記載の上記5.(3)記載事項ラ.ないしル.参照。)と認められるから、甲第3号証記載の発明において、甲第6号証記載の技術事項を適用し、当該適用に際し、甲第12号証ないし甲第14号証記載の従来周知の技術事項を勘案して、「前記箱体内の上部に、循環ダクトに接続される循環空気通路が形成されている」ように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。

次に、本件発明1における「前記ガイドフレーム13,13内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器が設置され、該熱交換器は下向き吹出し口18を有し、かつ、上部入口に循環空気分ダクト19が接続されている」点について、検討する。
上記5.(3)のとおり、甲第4号証には、「左右のチェーンコンベヤ5,5の内側間には一対又は複数対の縦向き風洞状の熱風流路8,8’が設置され、各対をなす熱風流路8,8’にはその上部に加熱消毒保管室1の前後部に互いに逆向きに開口して前後均等に吸気するようにした吸気口9、および吸気用ロータリーファン10が設けられ、また内部の中間部には空気加熱用の細長い箱形に構成した熱交換器11が設置され、更に下部には加熱消毒保管室1の前後部に開口する排気口12,12’が設けられている」技術事項が記載され、甲第5号証には、「通風案内板5を適当間隔で放熱パイプ3の背後に数段配置し、送風路7よりの送風を上下平均に放熱パイプ3に与える」技術事項が記載されている。
ここで、甲第4号証記載の技術事項における「左右のチェーンコンベヤ5,5の内側間」、「吸気口9」、「熱交換器11」、「排気口12,12’」は、それぞれ、本件発明1における「ガイドフレーム13,13内の遊び空間」、「上部入口」、「熱交換器」、「下向き吹出し口18」に相当するものと認められ、甲第3号証記載の発明と甲第4号証記載の技術事項とは「縦型回転棚」という同一技術分野に属するものであり、また、甲第5号証記載の技術事項における「通風案内板5」は、送風路よりの送風を平均的に分配するために設けられるものであって、本件発明1における「循環空気分配ダクト」と同様の機能を有するものと認められ、しかも、このような通風案内板を設けることは従来周知の技術事項というべきものであるから、甲第3号証記載の発明において、甲第4号証記載の技術事項を適用し、当該適用に際し、甲第5号証記載の技術事項を勘案して、「前記ガイドフレーム内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器が設置され、該熱交換器は下向き吹出し口を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクトが接続されている」ように構成することは、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。

以上のとおり、甲第3号証記載の発明において、「前記ガイドフレーム内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器が設置され、該熱交換器は下向き吹出し口を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクトが接続されており、一方、前記箱体内の上部に、循環ダクトに接続される循環空気通路が形成されている」ように構成することは、甲第4号証ないし甲第6号証記載の技術事項、甲第12号証ないし甲第14号証記載の従来周知の技術事項に基いて、当業者が格別困難なく想到し得るものと認められる。

なお、本件発明1の効果は、甲第3号証記載の発明、甲第4号証ないし甲第7号証,甲第10,11号証記載の技術事項、甲第12号証ないし甲第14号証記載の従来周知の技術事項から当業者が予測し得る程度のものである。

(本件発明2について)
本件発明2と甲第3号証記載の発明とを対比すると、本件発明1との対比に加え、前記循環空気通路27が、前記箱体内の上部に配設した多孔板26を介して形成されている点で両者はさらに相違するが、多孔板を介して循環空気通路を形成することは、従来周知の技術事項(甲第9号証の上記記載事項ハ.ヒ.参照。)であるから、この点は、当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないものと認められる。

(6)むすび
以上のとおりであるから、本件発明1,2は、甲第3号証記載の発明、甲第4号証ないし甲第7号証,甲第10号証ないし甲第12号証記載の技術事項、甲第9号証,甲第12号証ないし甲第14号証記載の従来周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1,2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱交換器付き縦型回転棚
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 箱体1内の左右両側に配設されたガイドフレーム13,13の上下に軸支した駆動輪2と従動輪3とに無端チェン4を掛け渡して垂直移動経路を有する無端循環経路が形成され、前記無端チェン4に複数の収納棚5が支持アーム6,6及びガイドアーム7を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持され、前記無端チェン4の駆動により各収納棚5を出納口8に移動させるようにした縦型回転棚において、
前記ガイドフレーム13,13内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器14が設置され、該熱交換器14は下向き吹出し口18を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクト19が接続されており、
一方、前記箱体1内の上部に、循環ダクト25に接続される循環空気通路27が形成されていることを特徴とする熱交換器付き縦型回転棚。
【請求項2】 前記循環空気通路27が、前記箱体1内の上部に配設した多孔板26を介して形成されている請求項1記載の熱交換器付き縦型回転棚。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、垂直移動経路を有する無端循環経路に沿って多数の収納棚が循環移動する縦型回転棚に関するもので、特に食器の乾燥や保管、食品や薬品の冷却や保存などに用いられる熱交換器付き縦型回転棚に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
縦型回転棚として、箱体内に上下に配設した駆動輪と従動輪とに無端チェンを掛け渡して垂直移動経路を有する無端循環経路を形成し、上記無端チェンに支持アームを介して複数の収納棚を循環移動するように支持させ、無端チェンの駆動により各収納棚を出納口に移動させるようにしたものは知られている。このような縦型回転棚は、小さな床面積で多くの物品を収納することができるという長所を有しているため、学校給食設備やホテルの厨房設備として大量の食器類の乾燥・保管に用いられたり、あるいは病院で大量の薬品類の冷蔵・保存に用いられている。そして、乾燥や冷蔵に用いられる縦型回転棚では収納棚が循環する箱体の内部の収納室で温風や冷風を循環させる形式になっている。
【0003】
この種の熱交換器付き縦型回転棚において、従来、温風や冷風を生じさせるための熱交換器(冷凍機を含む。)が収納室の外側に付設されているものが知られている(例えば、実開平2-125739号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、そのような熱交換器付き縦型回転棚によると、熱交換器が収納室を形成している箱体の外側に配置され、設置にそれだけ広い床面積が必要になる。このため、小さな床面積で多くの物品を収納することができるという縦型回転棚の長所が損なわれ、その長所を最大限度に活かすことができないという問題があった。また、熱損失が大きくなるという欠点があった。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決することを目的としてなされたもので、収納室内に設けられる無端チェンのガイドフレーム内に存在する狭い遊び空間を利用して熱交換器を設置することにより、縦型回転棚が具備する上記長所を最大限度に活かしながら、熱効率を高めた熱交換器付き縦型回転棚を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の熱交換器付き縦型回転棚は、箱体1内の左右両側に配設されたガイドフレーム13,13の上下に軸支した駆動輪2と従動輪3とに無端チェン4を掛け渡して垂直移動経路を有する無端循環経路が形成され、前記無端チェン4に複数の収納棚5が支持アーム6,6及びガイドアーム7を介して水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持され、前記無端チェン4の駆動により各収納棚5を出納口8に移動させるようにした縦型回転棚において、前記ガイドフレーム13,13内の遊び空間に細長い箱形に構成した熱交換器14が設置され、該熱交換器14は下向き吹出し口18を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクト19が接続されており、一方、前記箱体1内の上部に、循環ダクト25に接続される循環空気通路27が形成されていることを特徴とする。循環空気通路27は多孔板26を介して形成されることが好ましい。
【0007】
【作用】
上記構成によれば、熱交換器の設置に余分なスペースを要しない。また、熱交換器から吹き出た温風や冷風の均一な強制循環作用と収納棚が循環移動することが相俟って、収納棚に収納した物品の乾燥や冷却が均一に行なわれる。
【0008】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例による熱交換器付き縦型回転棚の全体斜視図、図2はその概略構造図、図3は同要部の正面図である。
【0009】
この縦型回転棚自体は公知であり、断熱パネルで作られた箱体1の上下に軸支配設した駆動輪2と従動輪3との間に無端チェン4を掛け渡して垂直移動経路Aを有する無端循環経路が形成され、無端チェン4の所定間隔を隔てた複数箇所に収納棚5が支持アーム6,6及びガイドアーム7を介して常に水平姿勢を保ちながら循環移動するように吊下げ支持され、無端チェン4の駆動により各収納棚5が箱体1の前面に設けた出納口8に移動されるようになっている。収納棚5には食器類や薬品類、その他の物品を出納口8を通じて出し入れできるようになっている。
【0010】
図2と図3に示すように、駆動輪2は箱体1の下部に配設された水平軸9の左右の端部にそれぞれ設けられ、駆動輪3は箱体1の上部に配設されており、1つの駆動輪2が駆動モータ11に減速機構12を介して連結されている。上下方向で対応している駆動輪2と従動輪3とに掛け渡された無端チェン4はガイドフレーム13によってその走行が案内されるようになっている。
【0011】
無端チェン4に支持された収納棚5は、上記無端循環経路の外側即ち前後左右の4本のガイドフレーム13によって取り囲まれた空間Sの外側を移動する。したがって、その空間Sは遊び空間になっている。熱交換器14はこの空間Sに受台15を介して設置されている。この熱交換器14は内部に熱交換チューブを内蔵し、その熱交換チューブに箱体1を挿通して配設された蒸気入口管16と蒸気出口管17とが接続されている。また、熱交換器14は下向きの温風吹出し口18を有、かつ、その上部入口に循環空気分配ダクト19が接続されている。一方、箱体1の外側に付設された支持台20に上下2段に送風機21,22が設置されており、それらの送風機21,22の出口が別々のダクト23,24を介して循環空気分配ダクト19に接続され、また、箱体1内の上部にパンチングメタルなどの多孔板26が設けられており、該多孔板26を介して形成された循環空気通路27に循環ダクト25が接続され、循環ダクト25は送風機21,22の入口に接続されている。
【0012】
上記構成において、熱交換器14の熱交換チューブに蒸気を供給し、送風機21,22を運転すると、ダクト23と循環空気分配ダクト19を経て分配された空気が熱交換器14に入り、温風となって熱交換器14から空間Sで下向きに吹き出される。この温風は図3に矢印で示したように空間Sから箱体1の内部に強制的に循環され、拡散しながら上昇する。そして、多孔板26の孔を通過して循環空気通路27に入る。このとき、多孔板26は温風流出を抑制する邪魔板として役立つため、有孔板26によって箱体1の内部に温風を均一に循環させることができるようになる。一方、循環空気通路27に入った温風は循環ダクト25を経て送風機21,22に吸い込まれ、再びダクト23と循環空気分配ダクト19と熱交換器14を通り、温風となって空間Sに下向きに吹き出される。したがって、収納棚5に収納した物品、たとえば食器類は箱体1内の収納室を循環する温風により乾燥される。
【0013】
このような運転状態において、熱交換器14には空間Sで循環する温風が接触する。そのため、熱交換器14が箱体1の外側に配置されて外気に接触する場合に比べると、熱交換器14の熱効率が高くなる。また、無端チェン4で収納棚5を移動させると、収納棚5が移動していることと、上述した温風の均一な強制循環作用とが相俟ってそれぞれの収納棚5に収納した物品の乾燥がより均一に行なわれる。
【0014】
上記実施例では、熱交換器14への送風を2台の送風機21,22で行ない、かつ2台の送風機21,22を上下2段に設置したので、1台の大型送風機で熱交換器14に送風したり、2台の送風機を横に並べて設置して熱交換器14に送風するものに比べ、箱体1からの送風機21,22の出幅が短くなり、それだけ床面積を小さくすることができる。
【0015】
また、上記実施例では食器類などの乾燥用として用いられる縦型回転棚を説明したが、本発明は薬品類などを冷却保存する縦型回転棚にも適用することができる。その場合、熱交換器14は熱交換器の一種である冷却機に置き換えられる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、無端チェンのガイドフレーム内の制約された遊び空間を利用して熱交換器を設置したから、熱交換器の設置のために余分なスペースを箱体の外側に確保する必要がなく、小さな床面積で大量の物品を収納できるという縦型回転棚の長所を最大限度に活かすことができる上、熱損失が少なく熱効率を高めることができ、そして、前記熱交換器が下向き吹出し口を有し、かつ、上部入口に循環空気分配ダクトが接続されていること、さらに前記箱体内の上部に形成される循環空気通路が循環ダクトに接続されていることによって、前記箱体内に温風又は冷風を均一に強制循環させることができる。しかも、前記熱交換器による温風又は冷風の均一な強制循環作用と収納棚が循環移動することが相俟って、温風による乾燥や冷風による冷却保存が均一に行なえる。また、請求項2に係る発明によれば、箱体1内の温風又は冷風が多孔板26により均一化されて循環空気通路27へ流入するので、熱風又は冷風の強制循環作用を一層均一にできる。特に、熱風に比べて強制循環に大きな吸引力を必要とする冷風の場合に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例による熱交換器付き縦型回転棚の全体斜視図である。
【図2】
同縦型回転棚の概略構造図である。
【図3】
同縦型回転棚の要部の正面図である。
【符号の説明】
1 箱体
2 駆動輪
3 従動輪
4 無端チェン
5 収納棚
8 出納口
14 熱交換器
A 垂直移動経路
S 無端循環経路の内側の空間
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-12-25 
結審通知日 2003-12-25 
審決日 2004-01-07 
出願番号 特願平3-74562
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B65G)
最終処分 成立  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 清田 栄章
亀井 孝志
登録日 1996-05-17 
登録番号 特許第2521588号(P2521588)
発明の名称 熱交換器付き縦型回転棚  
代理人 高良 英通  
代理人 笹原 敏司  
代理人 森本 義弘  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 筒井 豊  
代理人 高良 英通  
代理人 筒井 豊  
代理人 高良 英通  
代理人 筒井 豊  

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