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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1101146
異議申立番号 異議2003-71333  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-20 
確定日 2004-06-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3348053号「基板の洗浄・乾燥処理方法ならびにその処理装置」の請求項1〜20に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3348053号の請求項1〜16に係る発明についての特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3348053号の請求項1〜20に係る発明についての出願は、平成5年5月17日に出願した特願平5-140086号の一部を平成11年9月27日に新たな特許出願としたものであって、平成14年9月6日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされ、平成15年5月20日に、請求項1〜20に係る発明についての特許に対して、異議申立人永田大樹より特許異議の申立てがなされ、平成15年11月18日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年1月23日に訂正請求がなされ(その後取り下げ)、平成16年2月17日付けで再度取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年4月26日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
〈訂正事項a〉
本件特許権の設定登録時の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1を、
「洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させるまで、前記密閉された空間を形成する壁面を加熱することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
なお、下線は、訂正個所を示すために、当審で付したものである。以下同様。
〈訂正事項b〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2、4、5、15を削除する。
〈訂正事項c〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を、請求項2に繰り上げるとともに、
「洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に、前記密閉された空間内へ不活性ガスを供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項d〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項6を、請求項3に繰り上げるとともに、
「請求項1または請求項2に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、少なくとも前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させている間に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項e〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項7を、請求項4に繰り上げるとともに、
「請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記洗浄槽内への純水の供給を停止させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項f〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項8を、請求項5に繰り上げるとともに、
「請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項g〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項9を、請求項6に繰り上げるとともに、
「請求項5に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、前記密閉された空間を減圧させている間にも、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項h〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項10を、請求項7に繰り上げるとともに、
「請求項5に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させる操作と前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給する操作とを交互に繰り返すことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項i〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項11を、請求項8に繰り上げるとともに、
「請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することにより基板の表面に有機溶剤を凝縮させ、前記密閉された空間を減圧させてこの凝縮した有機溶剤を蒸発させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項j〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項12を、請求項9に繰り上げるとともに、
「請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、不活性ガスは、加熱された不活性ガスであることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項k〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項13を、請求項10に繰り上げるとともに、
「請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、基板を上昇させて、基板の上端が純水中から露出する時点から基板の全体が純水中から露出し終わるまで、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。」と訂正する。
〈訂正事項l〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項14を、請求項11に繰り上げるとともに、
「純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から 前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する基体供給手段と、少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させるまで、前記密閉チャンバの壁面を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」と訂正する。
〈訂正事項m〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項16を、請求項12に繰り上げるとともに、
「純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給するとともに、前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に前記密閉チャンバ内へ不活性ガスを供給する基体供給手段と、を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」と訂正する。
〈訂正事項n〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項17を、請求項13に繰り上げるとともに、
「請求項11または請求項12に記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、前記気体供給手段は、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させている間に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」と訂正する。
〈訂正事項o〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項18を、請求項14に繰り上げるとともに、
「請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、前記気体供給手段は、前記密閉チャンバの内部に連通するように接続され、有機溶剤の蒸気が流される蒸気供給用管路と、前記蒸気供給用管路に設けられ有機溶剤の蒸気を生成する蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段へ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管路と、を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」と訂正する。
〈訂正事項p〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項19を、請求項15に繰り上げるとともに、
「請求項14に記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、前記気体供給手段は、前記不活性ガス供給管路を通して供給される不活性ガスを加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」と訂正する。
〈訂正事項q〉
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項20を、請求項16に繰り上げるとともに、
「請求項11ないし請求項15のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させた後に前記密閉チャンバ内を減圧させる減圧手段をさらに備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」と訂正する。
〈訂正事項r〉
本件特許明細書の段落【0007】の記載を、
「・・・基板を上昇させ、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させるまで、前記密閉された空間を形成する壁面を加熱することを特徴とする。」と訂正する。
〈訂正事項s〉
本件特許明細書の段落【0008】の記載を、
「請求項2に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う方法において、洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に、前記密閉された空間内へ不活性ガスを供給することを特徴とする。請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の方法において、少なくとも前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させている間に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする。請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記洗浄槽内への純水の供給を停止させることを特徴とする。請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させることを特徴とする。請求項6に係る発明は、請求項5記載の方法において、前記密閉された空間を減圧させている間にも、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給することを特徴とする。請求項7に係る発明は、請求項5記載の方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させる操作と前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給する操作とを交互に繰り返すことを特徴とする。請求項8に係る発明は、請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の方法において、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することにより基板の表面に有機溶剤を凝縮させ、前記密閉された空間を減圧させてこの凝縮した有機溶剤を蒸発させることを特徴とする。請求項9に係る発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の方法において、不活性ガスは、加熱された不活性ガスであることを特徴とする。請求項10に係る発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の方法において、基板を上昇させて、基板の上端が純水中から露出する時点から基板の全体が純水中から露出し終わるまで、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする。」と訂正する。
〈訂正事項t〉
本件特許明細書の段落【0009】の記載を、
「請求項11に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う装置において、純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する基体供給手段と、少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させるまで、前記密閉チャンバの壁面を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴とする。」と訂正する。
〈訂正事項u〉
本件特許明細書の段落【0010】の記載を、
「請求項12に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う装置において、純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給するとともに、前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に前記密閉チャンバ内へ不活性ガスを供給する基体供給手段と、を備えたことを特徴とする。請求項13に係る発明は、請求項11または請求項12に記載の装置において、前記気体供給手段は、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させている間に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする。請求項14に係る発明は、請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の装置において、前記気体供給手段は、前記密閉チャンバの内部に連通するように接続され、有機溶剤の蒸気が流される蒸気供給用管路と、前記蒸気供給用管路に設けられ有機溶剤の蒸気を生成する蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段へ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管路と、を備えたことを特徴とする。請求項15に係る発明は、請求項14に記載の装置において、前記気体供給手段は、前記不活性ガス供給管路を通して供給される不活性ガスを加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする。請求項16に係る発明は、請求項11ないし請求項15のいずれかに記載の装置において、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させた後に前記密閉チャンバ内を減圧させる減圧手段をさらに備えたことを特徴とする。」と訂正する。
〈訂正事項v〉
本件特許明細書の段落【0026】の記載を、
「・・・そして、温純水中からウエハを引上げ始める以前に、エアー開閉弁88を開いて、窒素供給源から蒸気供給用管路86を通して窒素ガスを送り、密閉チャンバ16内へ蒸気供給口26からアルコール蒸気を送り込んで、温純水中からのウエハの引上げ開始時点で純水界面がアルコール蒸気で満たされた状態になっているようにしておき、さらに、温純水中から引き上げられている途中のウエハの周囲へアルコール蒸気を供給する。このアルコール蒸気の供給は、温純水中からのウエハの引上げが完全に終了するまで行う。また、ウエハの周囲へのアルコール蒸気の供給開始時点で、・・・」と訂正する。
〈訂正事項w〉
本件特許明細書の段落【0031】の記載を、
「・・・UVランプ等を使用するようにしてもよいし、また、密閉チャンバ内へアルコール蒸気と共に窒素ガスを供給する前に窒素ガスを密閉チャンバ内へ送り込むようにする場合において、特に必要が無ければ、密閉チャンバの壁面を加熱しなくてもよい。」と訂正する。
〈訂正事項x〉
本件特許明細書の段落【0032】の記載を、
「【発明の効果】請求項1ないし請求項10に係る各発明の方法により基板の洗浄および乾燥処理を行うようにしたときは、また、請求項11ないし請求項16に係る各発明の基板の洗浄・乾燥処理装置を使用したときは、・・・」と訂正する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項a〜c、l、mは、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当し、訂正事項d〜k、n〜xは、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。そして、各訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。そして、当該訂正により、平成16年2月17日付けで通知した取消しの理由のうち、特許法第36条第5項第2号違反に関する理由は解消した。

3.特許異議申立てについて
(1)申立ての理由の概要
異議申立人は、本件各発明は、特開昭62-198126号公報(甲第1号証)、実願平3-93635号(実開平4-99269号)のマイクロフィルム(甲第2号証)、特開平2-291128号公報(甲第3号証)、特開平3-169013号公報(甲第4号証)、特開昭64-20625号公報(甲第5号証)、特開平4-22125号公報(甲第6号証)、特開昭63-10528号公報(甲第7号証)、特開平3-137401号公報(甲第8号証)及び特開平4-80924号公報(甲第9号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件各発明についての特許を取り消すべき旨主張している。

(2)本件発明
本件の請求項1〜16に係る発明(以下それぞれを、「本件発明1」等という。)は、平成16年4月26日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、
前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、
少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させるまで、前記密閉された空間を形成する壁面を加熱することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項2】 洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、
前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、
前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に、前記密閉された空間内へ不活性ガスを供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
少なくとも前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させている間に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記洗浄槽内への純水の供給を停止させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項6】 請求項5に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記密閉された空間を減圧させている間にも、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項7】 請求項5に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させる操作と前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給する操作とを交互に繰り返すことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項8】 請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することにより基板の表面に有機溶剤を凝縮させ、前記密閉された空間を減圧させてこの凝縮した有機溶剤を蒸発させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
不活性ガスは、加熱された不活性ガスであることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項10】 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
基板を上昇させて、基板の上端が純水中から露出する時点から基板の全体が純水中から露出し終わるまで、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項11】 純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、
前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、
前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、
前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、
前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する基体供給手段と、
少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させるまで、前記密閉チャンバの壁面を加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項12】 純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、
前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、
前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、
前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、
前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給するとともに、前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に前記密閉チャンバ内へ不活性ガスを供給する基体供給手段と、
を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項13】 請求項11または請求項12に記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記気体供給手段は、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させている間に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項14】 請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記気体供給手段は、
前記密閉チャンバの内部に連通するように接続され、有機溶剤の蒸気が流される蒸気供給用管路と、
前記蒸気供給用管路に設けられ有機溶剤の蒸気を生成する蒸気発生手段と、
前記蒸気発生手段へ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管路と、
を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項15】 請求項14に記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記気体供給手段は、前記不活性ガス供給管路を通して供給される不活性ガスを加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項16】 請求項11ないし請求項15のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させた後に前記密閉チャンバ内を減圧させる減圧手段をさらに備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。」

(3)甲第1〜9号証記載の事項
甲第1〜9号証には、以下の事項が記載されていると認められる。
〈甲第1号証〉
「水洗槽4内へ純水を供給し、前記水洗槽4内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記水洗槽4上部の越流部から純水を溢れ出させ、純水の上昇水流が形成されているとともに純水が前記越流部から溢れ出ている前記水洗槽4内の純水中にウエハ11を所定時間浸漬させ、水洗が終了した段階で純水の供給を止め、イソプロピルアルコールの蒸気を筒状容器1へ導入すると共に、排水管6を開放し、水洗槽4の水抜きを行うウエハ11の水洗・乾燥方法」、及び、
「純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する水洗槽4と、前記水洗槽4の上方を閉鎖的に包囲しウエハ11を収納したウエハカートリッジ12の収容が可能である筒状容器1と、前記水洗槽4内へ純水を供給する給水管5と、水洗が終了後の水洗槽4の水抜きを行うときに前記筒状容器1内へイソプロピルアルコールの蒸気を供給する配管3、遮蔽板10、及び、加熱用のヒータ9が設置されている蒸気発生部7と、を備えたウエハ11の水洗・乾燥装置」
〈甲第2号証〉
「基板Wを洗浄・乾燥処理するに際して、基板処理槽1内で処理液2がオーバフローしている状態で、前記基板処理槽1内の純水Dw等の処理液2中から、前記基板処理槽1の上方側に形成された基板Wの収容が可能である密閉された空間へ基板Wを引き上げ、その後基板処理槽1への処理液2の供給を停止し、強制排気手段と連通する排気管45によって減圧することにより乾燥を促進する」との事項
〈甲第3号証〉
「基板1の洗浄・乾燥に際し、基板1を洗浄用バス内の液体から持ち上げ部品15により上昇させている間に、有機溶剤の蒸気と窒素ガスとの混合体による乾燥を行う」との事項
〈甲第4号証〉
「ウエハ16を水洗・乾燥処理するに際して、容器12内の水中からウエハ16を露出させている間に、イソプロパノールの蒸気を供給し、次いで不活性ガスからなるパージガスを供給する」との事項
〈甲第5号証〉
「半導体ウェハなどの被処理物4を水洗・乾燥処理するに際して、不活性ガス36aの雰囲気に保持された処理室1の内部において有機溶媒蒸気cを供給し、次いでガス温度制御部37で温度制御された高温の不活性ガス36aを供給する」との事項、及び、
「処理室1の壁面に設けられた加熱体5による加熱により、被処理物4の表面に付着している有機溶媒Cの液滴などの揮発が促進される」との事項
〈甲第6号証〉
「本発明では、被処理ウエハ2を収納したキャリア3を処理槽4の中に載置し、まず、真空容器1内を真空にして、不活性ガスで置換し、真空容器1内を不活性ガスで常圧に戻す。真空容器1内は常圧に戻った後も不活性ガスのパージを続けながら各種処理液を用いてウエハ2の処理を行う。ウエハ2の最終洗浄後、真空容器1内を再び真空に引き、続いて不活性ガスのパージを行いながら、キャリア3を処理槽4から引き上げてウエハ2を乾燥する。このとき、必要に応じてヒータを用いて乾燥を行う。」
〈甲第7号証〉
「Siウェーハ13の乾燥に際し、減圧容器11内の密封された空間をロータリー真空ポンプ12で減圧させている間にも、Siウェーハ13をイソプロパノール蒸気と接触させる」との事項
〈甲第8号証〉
「半導体ウェーハ117の清掃に際して、窒素ガスによる浄化、窒素ガスとイソプロピルアルコールを添加した水の蒸気による短いブラスト、前記蒸気のみの導入、窒素ガスと蒸気による長いブラスト、加熱した窒素ガスによる乾燥を順次行う」との事項、及び、
「半導体ウェーハ117の清掃システムにおいて、窒素ガス及びイソプロピルアルコールを添加した水の蒸気を供給する手段は、蒸気が流される蒸気出口ライン105と、蒸気を生成する蒸気発生器11と、窒素ガスを供給する窒素ガス供給ライン109と、窒素ガス供給ライン109及び蒸気出口ライン105の下流側に接続された供給ライン111と、供給ライン111の加熱手段121を備える」との事項
〈甲第9号証〉
「ウエハ2のリンス・乾燥に際し、有機溶剤蒸気による乾燥、次いで窒素ガスによる乾燥を行う」との事項、及び、
「処理槽1下部に備えられたヒータ13は、有機溶剤蒸気による乾燥の補助の熱源として使用される」との事項

(3)対比・判断
本件発明1〜16のいずれも、「洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間(密閉チャンバ内)へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内(密閉チャンバ内)へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給」することを、その発明の構成に欠くことができない事項とするものである。
しかしながら、甲第1〜9号証のいずれにも、上記の事項について記載も示唆もない。
そして、本件発明1〜16は、上記の事項をその発明の構成に欠くことができない事項として含むことにより、「乾燥処理のために使用される有機溶剤の量も少なくて済み」(段落【0006】を参照)、また、「基板を特に加熱したりしなくても基板表面の乾燥が速やかに行われ、一連の洗浄・乾燥処理における作業効率を向上させることができる。」(段落【0032】を参照)という顕著な作用効果を奏している。
したがって、本願発明1〜16は、甲第1〜9号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜16についての特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めることができない。
また、他に、本件発明1〜16についての特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めるべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜16についての特許を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
基板の洗浄・乾燥処理方法ならびにその処理装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、
前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、
少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させるまで、前記密閉された空間を形成する壁面を加熱することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項2】 洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、
前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、
前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に、前記密閉された空間内へ不活性ガスを供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
少なくとも前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させている間に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記洗浄槽内への純水の供給を停止させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項5】 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項6】 請求項5に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記密閉された空間を減圧させている間にも、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項7】 請求項5に記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させる操作と前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給する操作とを交互に繰り返すことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項8】 請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することにより基板の表面に有機溶剤を凝縮させ、前記密閉された空間を減圧させてこの凝縮した有機溶剤を蒸発させることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項9】 請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
不活性ガスは、加熱された不活性ガスであることを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項10】 請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理方法において、
基板を上昇させて、基板の上端が純水中から露出する時点から基板の全体が純水中から露出し終わるまで、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理方法。
【請求項11】 純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、
前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、
前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、
前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、
前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する気体供給手段と、
少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させるまで、前記密閉チャンバの壁面を加熱する加熱手段と、
を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項12】 純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、
前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、
前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、
前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、
前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給するとともに、前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に前記密閉チャンバ内へ不活性ガスを供給する気体供給手段と、
を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項13】 請求項11または請求項12に記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記気体供給手段は、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させている間に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項14】 請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記気体供給手段は、
前記密閉チャンバの内部に連通するように接続され、有機溶剤の蒸気が流される蒸気供給用管路と、
前記蒸気供給用管路に設けられ有機溶剤の蒸気を生成する蒸気発生手段と、
前記蒸気発生手段へ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管路と、
を備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項15】 請求項14に記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記気体供給手段は、前記不活性ガス供給管路を通して供給される不活性ガスを加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【請求項16】 請求項11ないし請求項15のいずれかに記載の基板の洗浄・乾燥処理装置において、
前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させた後に前記密閉チャンバ内を減圧させる減圧手段をさらに備えたことを特徴とする基板の洗浄・乾燥処理装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体デバイス製造プロセス、液晶ディスプレイ製造プロセス、電子部品関連製造プロセスなどにおいて、シリコンウエハ、ガラス基板、電子部品等の各種基板を純水で洗浄した後その基板表面を乾燥させる基板の洗浄・乾燥処理方法、ならびに、その方法を実施するために使用される基板の洗浄・乾燥処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンウエハ等の各種基板を、温水を使用して洗浄し、その洗浄後に基板表面を乾燥させる方法としては、従来、例えば特開平3-30330号公報に開示されているような方法が知られている。同号公報には、基板をチャンバ内に収容し、そのチャンバ内に温水を注入して基板を温水に浸した後、チャンバ内を温水の蒸気圧以下に減圧して温水を沸騰させ、この温水の減圧沸騰により基板を洗浄し、その洗浄後にチャンバ内に純水を注入し、純水によって基板をすすいで清浄にした後、チャンバ内の水を排出させるとともに、チャンバ内を真空引きして、洗浄された基板を乾燥させるようにする基板の洗浄・乾燥処理方法が開示されている。また、同号公報には、チャンバ内の水を排出させる際に、その排水と同時に窒素ガスをチャンバ内に供給することにより、基板に塵埃が付着するのを窒素ガスによって有効に防止するようにする技術が開示されている。
【0003】
また、特開平3-169013号公報には、密閉された容器内に温水を入れ、半導体ウエハを容器に懸架して支持し温水中に浸漬させて洗浄した後、容器内にウエハを移動させないよう保持した状態で、容器内へ水と相溶性のあるイソプロピルアルコール(IPA)等の乾燥蒸気を供給するとともに、容器下部から水を排出させ、ウエハの表面に水滴が残らないように水の流出速度および乾燥蒸気の流入速度を制御しながら、水をウエハ表面から乾燥蒸気で置換し、その後に乾燥した窒素等の不活性で非凝縮性ガスを容器内に導入してウエハ表面から乾燥蒸気をパージすることにより、ウエハを乾燥させるようにする方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記した特開平3-30330号公報に開示された方法では、温水により基板を洗浄し純水で基板をすすいだ後、基板を静止させたままチャンバ内から排水するようにしている。このように、基板を静止させた状態で排水し、チャンバ内の液面を下げていって基板の周囲から水を排除するようにしているが、チャンバからの排水過程では、洗浄によって基板表面から除去されて液中に拡散したパーティクルが液面付近に集中する。このため、静止した基板の表面上を液面が下降していく際に、基板の表面にパーティクルが再付着し易い、といった問題点がある。
【0005】
また、特開平3-169013号公報に開示された方法では、密閉容器内において温水により基板を洗浄した後、基板を静止させたまま容器から排水するとともに、容器内へIPA蒸気等の乾燥蒸気を供給し、水をIPA蒸気等で置換して基板を乾燥させるようにしている。このように、密閉容器内で基板を静止させたまま水をIPA蒸気等で置換することだけで、基板の乾燥処理を行うようにしているため、IPA等の有機溶剤を多量に必要とするばかりでなく、使用される有機溶剤の沸点、例えばIPAでは80℃の温度付近まで基板の温度を上昇させておかないと、基板表面上に蒸気凝縮したIPAが速やかに蒸発しないことにより、乾燥時間が長くなってしまう、といった問題点がある。
【0006】
この発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、シリコンウエハ等の基板を純水で洗浄した後その基板表面を乾燥させる場合に、基板表面へのパーティクルの付着を少なく抑えることができるとともに、乾燥処理のために使用される有機溶剤の量も少なくて済み、また、基板を特に加熱したりしなくても乾燥が速やかに行われるような基板の洗浄・乾燥処理方法を提供すること、ならびに、その方法を好適に実施することができる基板の洗浄・乾燥処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う方法において、洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させるまで、前記密閉された空間を形成する壁面を加熱することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う方法において、洗浄槽内へ純水を供給し、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記洗浄槽上部の越流部から純水を溢れ出させ、前記洗浄槽内の純水中に基板を所定時間浸漬させ、前記洗浄槽内において純水の上昇水流が形成されるとともに前記越流部から純水が溢れ出る状態で、前記洗浄槽内の純水中から、前記洗浄槽の上方側に形成された基板の収容が可能である密閉された空間へ基板を上昇させ、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させる前に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給し、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に、前記密閉された空間内へ不活性ガスを供給することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の方法において、少なくとも前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させている間に、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記洗浄槽内への純水の供給を停止させることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項5記載の方法において、前記密閉された空間を減圧させている間にも、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給することを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項5記載の方法において、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉された空間へ基板を上昇させた後に、前記密閉された空間を減圧させる操作と前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を供給する操作とを交互に繰り返すことを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項5ないし請求項7のいずれかに記載の方法において、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することにより基板の表面に有機溶剤を凝縮させ、前記密閉された空間を減圧させてこの凝縮した有機溶剤を蒸発させることを特徴とする。
請求項9に係る発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の方法において、不活性ガスは、加熱された不活性ガスであることを特徴とする。
請求項10に係る発明は、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の方法において、基板を上昇させて、基板の上端が純水中から露出する時点から基板の全体が純水中から露出し終わるまで、前記密閉された空間内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする。
【0009】
請求項11に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う装置において、純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する気体供給手段と、少なくとも、前記洗浄槽内の純水中に基板を浸漬させる前から前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させるまで、前記密閉チャンバの壁面を加熱する加熱手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項12に係る発明は、基板の洗浄および乾燥処理を行う装置において、純水を越流させるための越流部を上部に有し、純水を内部に収容する洗浄槽と、前記洗浄槽の上方を閉鎖的に包囲し基板の収容が可能である密閉チャンバと、前記洗浄槽内へ純水を供給する純水供給手段と、前記純水供給手段により前記洗浄槽内へ純水を連続して供給して、前記洗浄槽内部において純水の上昇水流を形成するとともに前記越流部から純水を溢れ出させた状態で、前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる基板昇降手段と、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させる前に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給するとともに、前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給する前に前記密閉チャンバ内へ不活性ガスを供給する気体供給手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項13に係る発明は、請求項11または請求項12に記載の装置において、前記気体供給手段は、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させている間に前記密閉チャンバ内へ有機溶剤の蒸気を不活性ガスと共に供給することを特徴とする。
請求項14に係る発明は、請求項11ないし請求項13のいずれかに記載の装置において、前記気体供給手段は、前記密閉チャンバの内部に連通するように接続され、有機溶剤の蒸気が流される蒸気供給用管路と、前記蒸気供給用管路に設けられ有機溶剤の蒸気を生成する蒸気発生手段と、前記蒸気発生手段へ不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管路と、を備えたことを特徴とする。
請求項15に係る発明は、請求項14に記載の装置において、前記気体供給手段は、前記不活性ガス供給管路を通して供給される不活性ガスを加熱するヒータをさらに備えたことを特徴とする。
請求項16に係る発明は、請求項11ないし請求項15のいずれかに記載の装置において、前記基板昇降手段により前記洗浄槽内の純水中から前記密閉チャンバ内へ基板を上昇させた後に前記密閉チャンバ内を減圧させる減圧手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、この発明に係る基板の洗浄・乾燥処理方法を実施するために使用される装置の全体構成の1例を示す概略図であり、図2は、その装置の洗浄・乾燥処理部の構成を示す側面断面図である。
【0017】
まず、洗浄・乾燥処理部10の構成について説明する。洗浄・乾燥処理部10は、洗浄槽12、溢流水受け部14および密閉チャンバ16から構成されている。洗浄槽12には、その底部に純水供給口18が形成され、一方、その上部に越流部20が形成されていて、越流部20を越えて洗浄槽12から溢れ出た純水が溢流水受け部14内へ流れ込むように、洗浄槽12と溢流水受け部14とで二重槽構造となっている。また、洗浄槽12は、その内部に収容された純水中に基板、例えばシリコンウエハを複数枚収容したカセットCが完全に浸漬され得るような内容積を有している。そして、洗浄槽12および溢流水受け部14の上方空間は、密閉チャンバ16によって閉鎖的に包囲されている。密閉チャンバ16の前面側には、複数枚のウエハを収容したカセットCを出し入れするための開口22が形成されており、その開口22を開閉自在に気密に閉塞することができる密閉蓋24が設けられている。また、密閉チャンバ16の側壁面には、蒸気供給口26が形成されている。さらに、密閉チャンバ16の外壁面には、それを被覆するようにラバーヒータ25が配設されており、また、密閉蓋24には、密閉チャンバ16の内壁面の温度を検出するための温度計27が、密閉蓋24の壁面を貫通して取り付けられている。
【0018】
また、密閉チャンバ16内には、ウエハを収容したカセットCを保持する保持部材28が配設されており、この保持部材28を上下方向に往復移動させて、保持部材28に保持されたカセットCを、二点鎖線で示した洗浄槽上方位置と実線で示した洗浄槽内部位置との間で昇降移動させる昇降駆動機構が密閉チャンバ16に併設されている。昇降駆動機構は、上端部が保持部材28に連接された駆動ロッド30、この駆動ロッド30を摺動自在に支持する軸受装置32、駆動プーリ34および従動プーリ36、両プーリ34、36間に掛け渡され、駆動ロッド30の下端部が固着されたベルト38、ならびに、駆動プーリ34を回転駆動する駆動用モータ40から構成されている。なお、上記保持部材28により複数のウエハを直接保持させることにより、カセットCを省略する構成とすることも可能である。
【0019】
洗浄槽12の純水供給口18には、純水供給源に連通接続された純水供給管路42が管路44、46を介して連通接続されており、純水供給管路42には、エアー開閉弁48、フィルター装置50およびボール弁52が介設されている。また、純水供給管路42の途中に純水リターン管路54が分岐接続されており、純水リターン管路54にはエアー開閉弁56が介設されている。洗浄槽12の純水供給口18は、純水供給管路42とは別に、管路44から分岐した純水排出管路58に連通接続されており、純水排出管路58は、管路60を介してドレンに接続している。一方、溢流水受け部14には排水口62が形成され、その排水口62に管路64を介して排水管路66が連通接続されており、排水管路66は、純水排出管路58と合流して管路60を介しドレンに接続している。純水排出管路58および排水管路66には、それぞれエアー開閉弁68、70が介設されている。
【0020】
さらに、洗浄槽12の純水供給口18は、管路46から分岐した真空排気管路72に連通接続されており、一方、溢流水受け部14の排水口62は、管路64から分岐した真空排気管路74に連通接続されている。各真空排気管路72、74には、エアー開閉弁76、78がそれぞれ介設されており、両真空排気管路72、74は合流し、真空排気管路80を介して水封式真空ポンプ82に連通接続している。図中の84は、真空排気管路80に介設されたボール弁である。
【0021】
また、密閉チャンバ16の蒸気供給口26には、不活性ガス、例えば窒素(N2)ガスの供給源に連通接続された蒸気供給用管路86が連通接続されており、蒸気供給用管路86には、エアー開閉弁88、ヒータ90、アルコール蒸気発生ユニット92およびフィルター94が介設されている。アルコール蒸気発生ユニット92では、メチルアルコール、エチルアルコール、IPA等のアルコール類の蒸気が生成される。なお、アルコール類以外に、アルコール類と同様に水溶性でかつ基板に対する純水の表面張力を低下させる作用を有する有機溶剤として、アセトン、ジエチルケトン等のケトン類、メチルエーテル、エチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコール等の多価アルコールなどを使用することもできるが、金属等の不純物の含有量が少ないものが市場に多く提供されている点などからすると、IPAを使用するのが最も好ましい。このアルコール蒸気発生ユニット92におけるアルコール蒸気の発生方法としては、アルコール中に不活性ガスを吹き込む方法、バブリングする方法、超音波を利用する方法など、適宜の方法を使用するようにすればよい。また、アルコール蒸気発生ユニット92には、温調機能が備わっており、所定温度に調節されたアルコール蒸気が生成されるようになっている。さらに、この蒸気供給用管路86の途中には、エアー開閉弁88とヒータ90との間の区間で分岐しアルコール蒸気発生ユニット92とフィルター94との間の区間で合流する分岐管路95が設けられており、その分岐管路95にイオナイザー96およびエアー開閉弁98が介設されている。そして、エアー開閉弁88が開いた状態で、窒素ガス供給源から送られる窒素ガスがヒータ90によって加熱され、その加熱された窒素ガスにより、アルコール蒸気発生ユニット92で発生したアルコール蒸気が蒸気供給用管路86を通して送られ、アルコール蒸気が窒素ガスと共にフィルター94によって清浄化された後、蒸気供給口26を通して密閉チャンバ16内へ供給される構成となっている。また、エアー開閉弁98を開くことにより、窒素ガス供給源から送られヒータ90によって加熱された窒素ガスをイオナイザー96によってイオン化させ、その加熱されかつイオン化されフィルター94によって清浄化された窒素ガスを蒸気供給口26を通して密閉チャンバ16内へ供給することができるようにもなっている。
【0022】
さらに、この装置には、温度計27の検出信号に基づいてラバーヒータ25を制御することにより、密閉チャンバ16の内壁面の温度を所定温度、例えば温純水の温度以上に所望期間保持させるための制御器100が設けられている。
【0023】
次に、上記した構成の基板の洗浄・乾燥処理装置を使用し、基板、例えばシリコンウエハの洗浄および乾燥処理を行う方法の1例について説明する。
【0024】
まず、エアー開閉弁48、70を開き、それ以外のエアー開閉弁56、68、76、78、88、98を閉じた状態で、純水供給源から純水供給管路42および管路46、44を通して純水、例えば温純水を送り、洗浄槽12内へその底部の純水供給口18から温純水を連続して供給することにより、洗浄槽12の内部に温純水の上昇水流を形成する。このとき、洗浄槽12内部を満たした温純水は、その上部の越流部20から溢れ出て、洗浄槽12の上部で温純水の横溢水流を形成する。洗浄槽12上部の越流部20から溢れ出た温純水は、溢流水受け部14内へ流入し、溢流水受け部14から排水口62を通り、排水管路66および管路60を通ってドレンに排出される。また、同時に、ラバーヒータ25により密閉チャンバ16の壁面を加熱する。この加熱は、密閉蓋24の壁面に取り付けられた温度計27の検出信号に基づき、制御器100によってラバーヒータ25を制御し、密閉チャンバ16の内壁面の温度が所定温度、例えば温純水の温度(1例として60°)以上に保持されるように行われる。このように密閉チャンバ16の内壁面を加熱しておくことにより、後述するウエハの洗浄中や温純水中からのウエハの引上げ過程において、密閉チャンバ16の内壁面などへの水蒸気の結露が起こらず、アルコール蒸気がウエハの周囲へ供給された際に、その蒸気の熱エネルギーが結露した水滴で奪われる、といったことが防止されて、ウエハの乾燥効率が向上することになる。そして、カセットCに収容された複数枚のウエハが開口22を通して密閉チャンバ16内へ搬入され、密閉蓋24が気密に閉塞される。
【0025】
次に、昇降駆動機構を作動させ、保持部材28に保持されたカセットCを図2の実線位置まで下降させて、洗浄槽12内の温純水中にウエハを浸漬させ、温純水の上昇水流中にウエハを所定時間置くことによりウエハを洗浄する。これにより、ウエハの表面からパーティクルが除去される。そして、ウエハ表面から除去されて温純水中へ拡散していったパーティクルは、洗浄槽12の上部の越流部20から溢れ出る温純水と共に洗浄槽12から排出される。
【0026】
ウエハの洗浄が終了すると、昇降駆動機構を作動させて、保持部材28に保持されたカセットCを図2の二点鎖線で示した位置まで上昇させ、ウエハを洗浄槽12内の温純水中から引き上げる。このようにウエハを上昇させて温純水中から引き上げるようにしているので、温純水中に拡散していったパーティクルがウエハの表面に再付着するといったことは起こらない。そして、温純水中からウエハを引上げ始める以前に、エアー開閉弁88を開いて、窒素供給源から蒸気供給用管路86を通して窒素ガスを送り、密閉チャンバ16内へ蒸気供給口26からアルコール蒸気を送り込んで、温純水中からのウエハの引上げ開始時点で純水界面がアルコール蒸気で満たされた状態になっているようにしておき、さらに、温純水中から引き上げられている途中のウエハの周囲へアルコール蒸気を供給する。このアルコール蒸気の供給は、温純水中からのウエハの引上げが完全に終了するまで行う。また、ウエハの周囲へのアルコール蒸気の供給開始時点で、ラバーヒータ25による密閉チャンバ16の壁面の加熱操作を終了する。勿論、引き続き、ウエハの乾燥が終了するまで密閉チャンバ16の壁面を加熱するようにしても差し支えない。
【0027】
なお、エアー開閉弁88を開いて密閉チャンバ16内へアルコール蒸気を供給する前に、エアー開閉弁98を開いて、窒素供給源から分岐管路95を通して加熱された窒素ガス(イオン化されていることは不要)を密閉チャンバ16内へ送り込むようにし、フィルター94を加温しておくことが好ましい。また、エアー開閉弁88を開いて密閉チャンバ16内へアルコール蒸気を供給するのと併行し、エアー開閉弁98も開いて、加熱されイオン化された窒素ガスを密閉チャンバ16内へ送り込むようにしてもよい。このように加熱されイオン化された窒素ガスを密閉チャンバ16内へ送り込むことにより、密閉チャンバ16が耐食性材料で形成されて絶縁体構造となっていることにより密閉チャンバ16内に静電気が多量に発生(2kV〜10kV)しても、その静電気は、イオン化された窒素ガスによって電気的に中和されて消失する。このため、静電気が原因となってウエハの表面にパーティクルが付着するといったことが有効に防止される。
【0028】
温純水中からのウエハの引上げが終了すると、エアー開閉弁48を閉じるとともにエアー開閉弁56を開いて、洗浄槽12への温純水の供給を停止させ、同時に、エアー開閉弁68を開いて、洗浄槽12内の温純水を純水排出管路58および管路60を通してドレンへ排出し、洗浄槽12からの温純水の排出が終わると、エアー開閉弁68、70を閉じる。また、洗浄槽12から温純水を排出し始めるのと同時に、エアー開閉弁76、78を開いて、水封式真空ポンプ82を作動させ、各真空排気管路72、74および真空排気管路80を通して密閉チャンバ16内を真空排気し、密閉チャンバ16内を減圧状態にすることにより、ウエハの表面に凝縮して純水と置換したアルコールを蒸発させてウエハを乾燥させる。なお、温純水中からのウエハの引上げが終了して密閉チャンバ16内の減圧操作を開始した時点で、エアー開閉弁88を閉じて密閉チャンバ16内へのアルコール蒸気の供給を停止するようにするが、密閉チャンバ16内の減圧操作時にもアルコール蒸気を少量だけ密閉チャンバ16内へ供給し続けてもよい。また、密閉チャンバ16内の減圧操作と密閉チャンバ16内へのアルコール蒸気の供給操作とを交互に繰り返すようにしてもよい。
【0029】
ウエハの乾燥が終了すると、真空ポンプ82を停止させて、密閉チャンバ16内を減圧下から大気圧下へ戻すようにする。なお、上記したように、密閉チャンバ16内へアルコール蒸気を供給するのと併行して加熱されイオン化された窒素ガスを密閉チャンバ16内へ送り込むようにしたときは、減圧状態下でのウエハの乾燥が終了するまで加熱されイオン化された窒素ガスを少量だけ密閉チャンバ16内へ供給し続け、ウエハの乾燥が終了した後密閉チャンバ16内を大気圧下へ戻すまでの間も、密閉チャンバ16内へ加熱された窒素ガス(イオン化されていることは不要)を供給するようにしてもよい。そして、最後に、エアー開閉弁98を閉じて、密閉チャンバ16の窒素ガスの供給を停止した後、密閉蓋24を開放し、洗浄・乾燥処理が終了したウエハを収容したカセットCが開口22を通して密閉チャンバ16外へ取り出される。
【0030】
以上の一連のウエハ洗浄・乾燥処理工程におけるタイムチャートを図3に示す。
【0031】
なお、上記した説明では、窒素ガス供給源から送られる窒素ガスをヒータによって加熱し、その加熱された窒素ガスにより、アルコール蒸気発生ユニットで発生したアルコール蒸気を密閉チャンバ内へ送るようにしているが、窒素ガス供給源から送られる窒素ガスを加熱せずに、その窒素ガスによってアルコール蒸気を密閉チャンバ内へ送り込むようにしてもよい。また、洗浄槽内において基板を洗浄するのに温純水ではなく純水を使用するようにしてもよい。さらに、密閉チャンバの壁面を加熱する手段としては、上記説明ならびに図面に示したようなラバーヒータに代えて、UVランプ等を使用するようにしてもよいし、また、密閉チャンバ内へアルコール蒸気と共に窒素ガスを供給する前に窒素ガスを密閉チャンバ内へ送り込むようにする場合において、特に必要が無ければ、密閉チャンバの壁面を加熱しなくてもよい。
【0032】
【発明の効果】
請求項1ないし請求項10に係る各発明の方法により基板の洗浄および乾燥処理を行うようにしたときは、また、請求項11ないし請求項16に係る各発明の基板の洗浄・乾燥処理装置を使用したときは、洗浄によって基板の表面から一旦除去されたパーティクルが基板表面に再付着する、といったことを殆んど無くすことができるとともに、基板を特に加熱したりしなくても基板表面の乾燥が速やかに行われ、一連の洗浄・乾燥処理における作業効率を向上させることができる。また、有機溶剤の蒸気は、不活性ガスをキャリアガスとして不活性ガスと共に基板の周囲へ供給されるため、有機溶剤の蒸気だけを基板へ供給する場合と違って、少ない量の有機溶剤の使用で基板の乾燥処理を行うことができる。
【0033】
【0034】
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明に係る基板の洗浄・乾燥処理方法を実施する装置の全体構成の1例を示す概略図である。
【図2】
図1に示した装置の洗浄・乾燥処理部の構成を示す側面断面図である。
【図3】
この発明の方法による一連のウエハ洗浄・乾燥処理工程におけるタイムチャートの1例を示す図である。
【符号の説明】
10 洗浄・乾燥処理部
12 洗浄槽
14 溢流水受け部
16 密閉チャンバ
18 純水供給口
20 越流部
24 密閉蓋
25 ラバーヒータ
26 蒸気供給口
27 温度計
28 保持部材
30 駆動ロッド
38 ベルト
40 駆動用モータ
42 純水供給管路
48、56、68、70、76、78、88 エアー開閉弁
58 純水排出管路
62 排水口
66 排水管路
72、74、80 真空排気管路
82 水封式真空ポンプ
86 蒸気供給用管路
90 ヒータ
92 アルコール蒸気発生ユニット
100 制御器
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-14 
出願番号 特願平11-273336
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
P 1 651・ 534- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
神崎 孝之
登録日 2002-09-06 
登録番号 特許第3348053号(P3348053)
権利者 大日本スクリーン製造株式会社
発明の名称 基板の洗浄・乾燥処理方法ならびにその処理装置  
代理人 間宮 武雄  
代理人 間宮 武雄  

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