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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  B60R
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B60R
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B60R
審判 全部申し立て 2項進歩性  B60R
審判 全部申し立て 特174条1項  B60R
管理番号 1101148
異議申立番号 異議2001-73567  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-05-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-28 
確定日 2004-06-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3203593号「車両安全システム」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3203593号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 【1】 手続の経緯
特許第3203593号の発明についての出願は、平成11年8月18日に特許出願(パリ条約による優先権主張:平成10年8月28日、ドイツ(DE))され、平成13年6月29日にその発明について特許の設定登録がされた(請求項の数:5)。
これに対して、表記の異議申立人より全請求項について特許異議の申立てがあったので、審理のうえ取消理由を通知し、その指定期間内に訂正請求(後日、取下げ)がなされたものであるところ、再度の取消理由が通知され、その指定期間内の平成15年8月1日に意見書とともに再度の訂正請求書が提出されたものである。

【2】 訂正の適否について
1.訂正の内容
<訂正事項a>
特許第3203593号明細書(以下、単に明細書という)の特許請求の範囲の請求項1を、次のとおり訂正する。
【請求項1】 車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置、及び
それぞれ所属の無線制御通信チャネル(4a,5a,4b,5b)を介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3)を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素(6,7)
を有する車両安全システムにおいて、
選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分(2,3)を制御するために、操作を必要とする認証要素(6)として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)、及び操作を必要としない1つ又は複数の認証要素(7)を有する、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)が設けられており、かつ
それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、
キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b、5b)を介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない時にのみ、実行される
ことを特徴とする、車両安全システム。
<訂正事項b>
明細書の特許請求の範囲の請求項2を、次のとおり訂正する。
【請求項2】 車両側のアクセス制御部分(2)が、それぞれの電子キー(6)を介してロック命令を受信した際に、キーを必要としないロック無線制御通信チャネル(4b)がロック解除された状態を表示したときにも、所属の閉鎖ユニットをそのロック状態に制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両安全システム。
<訂正事項c>
明細書の特許請求の範囲の請求項4を、次のとおり訂正する。
【請求項4】 車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置、及び
それぞれ所属の無線制御通信チャネル(4a,5a,4b,5b)を介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3)を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素(6,7)
を有する車両安全システムにおいて、
選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分(2,3)を制御するために、操作を必要とする認証要素(6)として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)、及び操作を必要としない1つ又は複数の認証要素(7)を有する、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)が設けられており、かつ
それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、
キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない時にのみ、実行され、
電子運び去り禁止装置(3)が、車両側のキー収容部を有し、このキー収容部へ挿入された電子キー(6)によって認証通信を行い、有効なキーが認識された際、走行の権利を利用者に与え、かつ
有効と認識されたキー(6)がキー収容部内にある間、キーを必要としない運び去り禁止無線制御チャネル(5b)が不活性化状態に維持され、
キー収容部が、点火オフキー位置及び点火オンキー位置を有し、かつ有効なキーが、接続された車両用機関において、点火オフ位置においてキー収容部へ挿入された場合に、電子運び去り禁止装置が、車両が停止するとすぐに、車両用機関を遮断する
ことを特徴とする、車両安全システム。
<訂正事項d>
明細書の特許請求の範囲の請求項5を、次のとおり訂正する。
【請求項5】 それぞれ1つの電子キー(6)及び操作を必要としない認証要素(7)が、共通の認証要素となるようにまとめられていることを特徴とする、請求項1ないし4の1つに記載の車両安全システム。
<訂正事項e>
明細書の段落【0001】の第2行〜第5行を、次のとおり訂正する。
「本発明は、車両側のアクセス制御部分を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分を備えた電子運び去り禁止装置、及びそれぞれ所属の無線制御通信チャネルを介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素を有する車両安全システムに関する。」
<訂正事項f>
明細書の段落【0006】の第3行〜第10行「すなわち・・・られている。」を、次のとおり訂正する。
「すなわち選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分を制御するために、操作を必要とする(以下操作を伴うと称する)認証要素として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする(以下キーを伴うと称する)無線制御通信チャネル、及び操作を必要としない(以下操作のないと称する)1つ又は複数の認証要素を有する、キーを必要としない(以下キーのないと称する)無線制御通信チャネルが設けられており、かつそれぞれのキーを伴う無線制御通信チャネルに、キーのない無線制御通信チャネルに対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル及びキーを必要としない無線制御通信チャネルを介して制御命令が受信されかつ処理され、キーを必要としない無線制御通信チャネルを介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネルを介して受信されない時にのみ、実行される。」

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否
<訂正事項aについて>
明細書の請求項1の「車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置」とする下線部分の訂正は、出願当初の明細書の段落【0001】に記載の「車両側のアクセス制御部分を備えたアクセス管理装置及び/又は車両側の運び去り禁止制御部分を備えた電子運び去り禁止装置」の範囲内においてなされたものである。この訂正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、請求項1の「介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3)」とする下線部分の訂正は、何によって制御するかを明確にしたもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
更に、請求項1の「それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b、5b)を介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない時にのみ、実行される 」とする下線部分の訂正は、優先権を与えることによる結果を明確にしたもので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
<訂正事項bについて>
取消理由通知における指摘に基づいた訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
<訂正事項cについて>
訂正された請求項1及びこの請求項1に従属する請求項3を含ませて、請求項4を独立形式の請求項として書き直したものであるから、この訂正は、請求項1の訂正の目的と同様に特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
<訂正事項dについて>
取消理由通知における指摘に基づいた訂正であり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
<訂正事項eについて>
訂正事項aにより請求項1の訂正に伴い、発明の詳細な説明において、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るために訂正されたものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。
<訂正事項fについて>
訂正事項aにより請求項1の訂正に伴い、発明の詳細な説明において、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明との整合を図るために訂正されたものであるから、不明瞭な記載の釈明を目的とするものである。

これらの訂正事項a〜fは、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.訂正の容認
したがって、前記各訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】 特許異議の申立てについて
1.異議申立の理由の概要
特許異議申立人は、異議申立ての理由として以下の(1)〜(6)を主張している。
(1)本件特許の請求項1〜4に記載された発明は、特許を受けようとする発明が明確ではなく、特許法第36条第4項及び同条第6項第2号の要件を満たしていないため、特許法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項1〜3及び5の記載は、出願当初の明細書又は図面から、直接的かつ一義的に導き出せる事項ではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないため、特許法第113条第1号の規定により取り消されるべきものである。
(3)本件特許の請求項1,3,5に係る発明は、本件特許出願の出願日前に出願された先願である甲第1号証若しくは甲第2号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(4)本件特許の請求項1,2,5に係る発明は、出願時技術常識である甲第6,7,8号証を参酌すると、本件特許出願の出願日前に出願された先願である甲第3号証の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(5)本件特許の請求項1,2に記載の発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証に記載された発明と同一の発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するため、特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(6)本件特許の請求項2に記載された発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物である甲第4号証及び甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

2.本件発明
前述のとおり、平成15年8月1日付けの訂正請求は認められたので、本件特許の請求項1〜5に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された事項により構成される、次のとおりのものと認める。
なお、便宜上、請求項1を(A)〜(F)に分説して記載する。

【請求項1】
(A) 車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車 両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置、 及び
(B) それぞれ所属の無線制御通信チャネル(4a,5a,4b,5b) を介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3) を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素(6,7 )を有する車両安全システムにおいて、
(C) 選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそ れぞれの制御部分(2,3)を制御するために、操作を必要とする認 証要素(6)として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要と する無線制御通信チャネル(4a,5a)、及び 操作を必要としな い1つ又は複数の認証要素(7)を有する、キーを必要としない無線 制御通信チャネル(4b,5b)が設けられており、かつ
(D) それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a) に,キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対す る優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御 通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チ ャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、
(E) キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して 受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必 要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない 時にのみ、実行される
(F) ことを特徴とする、車両安全システム。
(以下、請求項1に係る発明を本件発明という)

【請求項2】
車両側のアクセス制御部分(2)が、それぞれの電子キー(6)を介してロック命令を受信した際に、キーを必要としないロック無線制御通信チャネル(4b)がロック解除された状態を表示しときにも、所属の閉鎖ユニットをそのロック状態に制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両安全システム。
【請求項3】
電子運び去り禁止装置(3)が、車両側のキー収容部を有し、このキー収容部へ挿入された電子キー(6)によって認証通信を行い、有効なキーが認識された際,走行の権利を利用者に与え、かつ有効と認識されたキー(6)がキー収容部内にある間、キーを必要としない運び去り禁止無線制御チャネル(5b)が不活性化状態に維持されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両安全システム。
【請求項4】
車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置、及び、
それぞれ所属の無線制御通信チャネル(4a,5a,4b,5b)を介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3)を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素(6,7)を有する車両安全システムにおいて、
選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分(2,3)を制御するために、操作を必要とする認証要素(6)として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)、及び操作を必要としない1つ又は複数の認証要素(7)を有する、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b.5b)が設けられており、かつ
それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、
キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない時にのみ、実行され、
電子運び去り禁止装置(3)が、車両側のキー収容部を有し、このキー収容部へ挿入された電子キー(6)によって認証通信を行い、有効なキーが認識された際、走行の権利を利用者に与え、かつ
有効と認識されたキー(6)がキー収容部内にある間、キーを必要としない運び去り禁止無線制御チャネル(5b)が不活性化状態に維持され、
キー収容部が、点火オフキー位置及び点火オンキー位置を有し、かつ有効なキーが、接続された車両用機関において、点火オフ位置においてキ一収容部へ挿入された場合に、電子運び去り禁止装置が、車両が停止するとすぐに、車両用機関を遮断する
ことを特徴とする、車両安全システム。
【請求項5】
それぞれ1つの電子キー(6)及び操作を必要としない認証要素(7)が、共通の認証要素となるようにまとめられていることを特徴とする、請求項1ないし4の1つに記載の車両安全システム

3.刊行物と記載事項
当審で通知した取消理由に引用した本件特許出願日前に出願された先願明細書
甲第1号証: 特願平11-187960号
(特開2000-79868号公報参照)
出願日:平成11年7月1日
国内優先日:平成10年7月10日
甲第2号証: 特願平 9-229585号
(特開平11-91508号公報参照)
出願日:平成9年8月26日
国内優先日:平成9年7月23日
甲第3号証: 特願平 9-171009号
(特開平11-2053号公報参照)
出願日:平成9年6月12日
また、同じく取消理由に引用した本件特許出願前に頒布された公知刊行物
甲第4号証: 特開平10-148050号公報
甲第5号証: 特開昭60-261873号公報
甲第6号証: 特開平 5-156851号公報
甲第7号証: 特開昭62-203854号公報
甲第8号証: 特開平 5-106376号公報

前記先願明細書及び公知刊行物には、概略、以下の発明が記載されているものと認められる。
[甲第1号証の先願明細書]
車両セキュリティ制御装置であって、(A)、(B)、(D)、(E)に相当する構成はあるが、(C)に相当する構成はない。即ち、2つの競合する無線制御通信チャネルは電子運び去り禁止装置のために設けられているが、アクセス管理装置のためにはそのうちの一方の1つの無線制御通信チャネルしか設けられていない。
[甲第2号証の先願明細書]
車両電子キー制御装置であって、 (A)、(B)、(D)、(E)に相当する構成はあるが、(C)に相当する構成はない。即ち、2つの競合する無線制御通信チャネルは電子運び去り禁止装置のためには設けられているが、アクセス管理装置のためにはそのうちの一方の1つの無線制御通信チャネルしか設けられていない。
[甲第3号証の先願明細書]
車両用パッシブエントリ制御システムであって、そもそも(A)の構成が存在しない。即ち、電子運び去り禁止装置は存在せず、アクセス管理装置のみが存在している。
[甲第4号証刊行物]
車両用ドアロックシステムであって、そもそも(A)の構成が存在しない。即ち、電子運び去り禁止装置は存在せず、アクセス管理装置のみが存在している。
そして、通常運転時においては、キーを必要としない制御通信チャネルに、キーによりキーを必要とする制御通信チャネルに対する優先権が与えられるが、例外時における優先権については、キーを必要としない制御通信チャネルとキーを必要とする制御通信チャネルの制御命令がぶつかったときの優先関係については記載されていない。
[甲第5号証刊行物]
車両用無線式アンロック制御装置であって、そもそも(A)の構成が存在しない。即ち、電子運び去り禁止装置は存在せず、アクセス管理装置のみが存在している。
[甲第6号証刊行物]
車両用ワイヤレスドアロック制御装置であって、送信機(1つの無線制御通信チャネル)を用いてドアロック(アクセス管理装置)のみを制御している。
[甲第7号証刊行物]
自動車用カードシステムであって、携帯するカードからの送信信号にてドアロック/アンロック(アクセス管理装置)及びエンジン始動(電子運び去り禁止装置)を制御している。
[甲第8号証刊行物]
キーレスエントリーシステムであって、キーレスエントリーカードからの送信信号にてドアロック/アンロック(アクセス管理装置)のみを制御している。

4.当審における検討
[特許法第36条第4項及び同条第6項第2号(請求項1〜4)について]
(請求項1について)
「キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に,キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられている」との記載事項に対応する発明の詳細な説明を参酌しても、発明が実施できない場合に該当し、特許を受けようとする発明が明確でないというものであり、また、
「操作を必要とする認証要素(6)」及び「操作を必要としない1つ又は複数の認証要素(7)」と記載されているが、用語の意味が不明であって、その結果、特許を受けようとする発明が明確でないというものであり、また、
「電子キーを有する、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)」と記載されているが、用語の意味が不明であって、その結果、特許を受けようとする発明が明確でないというものであり、また、
「キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に,キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられている」と記載されているが、優先権という用語の意味が曖昧であり、その結果、特許を受けようとする発明が明確でないというものである。
(請求項2について)
「車両側のアクセス制御部分(2)が、それぞれの電子キー(6)を介してロック命令を受信した際に、キーを必要としないロック無線制御通信チャネル(4b)がロック解除された状態を表示したときにも、所属の閉鎖ユニットをそのロック状態に制御する」との記載事項に対応する発明の詳細な説明では、機能的に記載されているにすぎず、発明が実施できない場合に該当し、特許を受けようとする発明が明確でないというものである。
(請求項3について)
「電子運び去り禁止装置(3)が、車両側のキー収容部を有し、このキー収容部へ挿入された電子キー(6)によって認証通信を行い、有効なキーが認識された際,走行の権利を利用者に与え、かつ有効と認識されたキー(6)がキー収容部内にある間、キーを必要としない運び去り禁止無線制御チャネル(5b)が不活性化状態に維持される」との記載事項に対応する発明の詳細な説明では、機能的に記載されているにすぎず、発明が実施できない場合に該当し、特許を受けようとする発明が明確でないというものである。
(請求項4について)
「キー収容部が、点火オフキー位置及び点火オンキー位置を有し、かつ有効なキーが、接続された車両用機関において、点火オフ位置においてキ一収容部へ挿入された場合に、電子運び去り禁止装置が、車両が停止するとすぐに、車両用機関を遮断する」との記載事項に対して、特許を受けようとする発明が明確でないというものである。

異議申立人は、以上のことを列挙し、特許明細書では機能的な表現になっていて具体的な構成については何も記載されていない旨の主張であるが、しかしながら、機能的な表現になっていても、所謂、当業者が機能の実現(実施)に際していくつかある選択肢の中から適当なハードウエアまたはソフトウエアを見出し得られるものであればよく、特定の具体的手段までを開示すべき必要はない。また、機能的な表現であっても、それが技術的に何を意味するかは、所謂、当業者にとっては明らかなことであり、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明において問題とされるほどの記載不備は存在しないと思量される。
(訂正請求された訂正明細書では、特許請求の範囲の訂正がなされ、より明瞭となっている。ちなみに、本件特許のパテントファミリーである対応特許が米国(米国特許第6549115号明細書)、独国(独国特許第19839348号明細書)で成立していることを勘案しても特段の記載不備はないものと思量される。)

[特許法第17条の2第3項(請求項1〜3,5)について]
補正後の請求項1には、「操作を必要とする認証要素」、「キーを必要とする無線制御チャネル」、「操作を必要としない1つ又は複数の認証要素」、「キーを必要としない無線制御チャネル」と記載され、また、補正後の請求項2には、「キーを必要としないロック無線制御通信チャネル」と記載され、また、補正後の請求項3には、「走行の権利を利用者に与え」、「キーを必要としない運び去り禁止制御通信チャネル」と記載され、また、補正後の請求項5には、「操作を必要としない認証要素」と記載されているが、補正後のこれらの記載は、出願当初の明細書又は図面に記載されておらず、出願当初の明細書又は図面から直接的かつ一義的に導き出せる事項ではないというものであるが、これらは表現を代えて記載したのであって、所謂、新規事項の追加というべきものではなく、出願当初の明細書又は図面から自明な範囲の補正と思量される。

[特許法第29条の2(請求項1,3,5)について]
(請求項1について)
本件発明と甲第1号証の先願発明とを対比すると、甲第1号証の先願発明には、本件発明の構成要件(C)が存在しないので、両者は、同一発明とはいえない。
また、本件発明と甲第2号証の先願発明とを対比すると、甲第2号証の先願発明には、本件発明の構成要件(C)が存在しないので、両者は、同一発明とはいえない。
(請求項3について)
請求項3に係る発明と甲第1号証の先願発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第1号証の先願発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項3に係る発明も甲第1号証の先願発明と同一とはいえない。
また、請求項3に係る発明と甲第2号証の先願発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第2号証の先願発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項3に係る発明も甲第2号証の先願発明と同一とはいえない。
(請求項5について)
請求項5に係る発明と甲第1号証の先願発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第1号証の先願発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項5に係る発明も甲第1号証の先願発明と同一とはいえない。
また、請求項5に係る発明と甲第2号証の先願発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第2号証の先願発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項5に係る発明も甲第2号証の先願発明と同一とはいえない。

[特許法第29条の2(請求項1,2,5)について]
(請求項1について)
本件発明と甲第3号証の先願発明とを対比すると、甲第3号証の先願発明には、少なくとも本件発明の構成要件(A)が存在しないので、両者は、同一発明とはいえない。
(請求項2について)
請求項2に係る発明と甲第3号証の先願発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第3号証の先願発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項2に係る発明も甲第3号証の先願発明と同一とはいえない。
(請求項5について)
請求項5に係る発明と甲第3号証の先願発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第3号証の先願発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項5に係る発明も甲第3号証の先願発明と同一とはいえない。

なお、甲第6,7,8号証刊行物に記載の技術事項が出願時に技術常識であったとしても、これらの技術常識を勘案してもなお、甲第3号証の先願発明から本件発明の構成要件(A)を含んだものにおいて、構成要件(D)「それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に,キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され」ることを示唆するような技術思想は見い出せない。

[特許法第29条第1項第3号(請求項1,2)について]
(請求項1について)
本件発明と甲第4号証の公知発明とを対比すると、甲第4号証の公知発明には、本件発明の構成要件(A)が存在せず、しかも、優先権に関して、その優先関係も異なっているので、両者は、同一発明とはいえない。
(請求項2について)
請求項2に係る発明と甲第4号証の公知発明とを対比すると、前述のとおり、本件発明と甲第4号証の公知発明とは同一ではないので、請求項1を引用した請求項2に係る発明も甲第4号証の公知発明と同一とはいえない。

[特許法第29条第2項(請求項2)について]
(請求項2について)
請求項2についてのみ特許法第29条第2項の規定により進歩性がない旨の主張となっているが、請求項2は、請求項1を引用した従属項であるから請求項1についても進歩性の有無を検討しておく必要があるので、請求項2と共に以下に検討する。
本件発明と甲第4号証の公知発明とを対比すると、甲第4号証の公知発明には、本件発明における構成要件(A)が存在せず、しかも、2つの競合する制御命令の優先権に関しての優先関係も異なっている。
この点に関して、甲第5号証の公知発明にも、本件発明の構成要件(A)及び2つの競合する制御命令の優先関係については明示されていない。また、斯かる点の構成は、甲第6,7,8号証刊行物にも記載されていないし、当業者にとって自明な構成ともいえない。
したがって、本件発明は、甲第4号証の公知発明、甲第5号証の公知発明及び甲第6〜8号証刊行物の記載事項から当業者が容易に想到し得たものではない。
また、請求項2は請求項1の従属項であり、前述のとおり本件発明が進歩性を有するものであるから、前記したのと同様の理由で請求項2に係る発明も進歩性を有する発明であるのは明白である。

【4】 むすび
以上のとおり、特許異議申立人が主張する理由及び提出した証拠によっては、本件の請求項1〜5に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1〜5に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
車両安全システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置、及び
それぞれ所属の無線制御通信チャネル(4a,5a,4b,5b)を介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3)を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素(6,7)
を有する車両安全システムにおいて、
選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分(2,3)を制御するために、操作を必要とする認証要素(6)として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)、及び操作を必要としない1つ又は複数の認証要素(7)を有する、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)が設けられており、かつ
それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、
キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない時にのみ、実行される
ことを特徴とする、車両安全システム。
【請求項2】 車両側のアクセス制御部分(2)が、それぞれの電子キー(6)を介してロック命令を受信した際に、キーを必要としないロック無線制御通信チャネル(4b)がロック解除された状態を表示したときにも、所属の閉鎖ユニットをそのロック状態に制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両安全システム。
【請求項3】 電子運び去り禁止装置(3)が、車両側のキー収容部を有し、このキー収容部へ挿入された電子キー(6)によって認証通信を行い、有効なキーが認識された際、走行の権利を利用者に与え、かつ
有効と認識されたキー(6)がキー収容部内にある間、キーを必要としない運び去り禁止無線制御チヤネル(5b)が不活性化状態に維持される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両安全システム。
【請求項4】 車両側のアクセス制御部分(2)を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分(3)を備えた電子運び去り禁止装置、及び
それぞれ所属の無線制御通信チャネル(4a,5a,4b,5b)を介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分(2,3)を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素(6,7)
を有する車両安全システムにおいて、
選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分(2,3)を制御するために、操作を必要とする認証要素(6)として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)、及び操作を必要としない1つ又は複数の認証要素(7)を有する、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)が設けられており、かつ
それぞれのキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)に、キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)に対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)及びキーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して制御命令が受信されかつ処理され、
キーを必要としない無線制御通信チャネル(4b,5b)を介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネル(4a,5a)を介して受信されない時にのみ、実行され、
電子運び去り禁止装置(3)が、車両側のキー収容部を有し、このキー収容部へ挿入された電子キー(6)によって認証通信を行い、有効なキーが認識された際、走行の権利を利用者に与え、かつ
有効と認識されたキー(6)がキー収容部内にある間、キーを必要としない運び去り禁止無線制御チヤネル(5b)が不活性化状態に維持され、
キー収容部が、点火オフキー位置及び点火オンキー位置を有し、かつ有効なキーが、接続された車両用機関において、点火オフ位置においてキー収容部へ挿入された場合に、電子運び去り禁止装置が、車両が停止するとすぐに、車両用機関を遮断する
ことを特徴とする、車両安全システム。
【請求項5】 それぞれ1つの電子キー(6)及び操作を必要としない認証要素(7)が、共通の認証要素となるようにまとめられていることを特徴とする、請求項1ないし4の1つに記載の車両安全システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両側のアクセス制御部分を備えたアクセス管理装置及び車両側の運び去り禁止制御部分を備えた電子運び去り禁止装置、及びそれぞれ所属の無線制御通信チャネルを介して制御命令により車両側の一方又は両方の制御部分を認証に応じて制御するため利用者側で携帯可能な認証要素を有する車両安全システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
このような安全システムは、これに対して権利を有する1人又は複数の車両利用者だけに車両のアクセス及び/又は利用を可能にするために、例えば自動車において通常である。認証要素は、それぞれの無線制御通信チャネルを介してアクセス管理装置又は電子運び去り禁止装置の所望の制御処置を要求し、かつそのために権利を有するものと証明するために、これらの権利を有する車両利用者に使われ、すなわちアクセス管理装置又は電子運び去り禁止装置のそれぞれの車両側の制御部分の制御は、認証に応じて行われる。
【0003】
このような無線制御通信チャネルのための認証要素として、一方において機械的なキーを有するシステムを模した電子キーが慣用である(例えばドイツ連邦共和国特許第19531219号明細書参照)。その際、概念“電子キー”とは、当面このような無線通信する認証要素と解するものとし、ここでは認証の実行のために、認証要素自体の操作が必要であり、例えばそれぞれの認証通信過程が、電子キーに配置されたボタン等の操作によって又は車両側のキー収容部へのキーの差し込みによって起動されることによって、操作が必要である。
【0004】
このようなキー操作をもはや不要にするために、初期には電子キーを有するシステム及び所属のキーを必要とする無線制御通信チャネルの代わりに、所属のキーを必要としない制御通信チャネルを有するいわゆる“キーレスゴー”システムの利用が提案される。その際、キーレスゴーシステムとは、認証要素自体が認証通信過程を実行するために特別の操作を必要としない安全システムのこととする。このようなシステムのための認証要素として、とりわけチップカード及びトランスポンダが利用されており、これらは、車両利用者が携帯するだけでよい(定期刊行物、B.Priemer、Kleines Wunder-Vorstellung Mercedes S-Klasse、auto motor sport、15/1998、第16頁参照)。利用者によってキーレスゴーシステムの所望の制御処置を要求するために、種々の処置様式が周知である。それぞれの認証通信が、利用者の側からのそれぞれ別の処置なしで、その携帯する認証要素を有する利用者が当該の制御通信チャネルの有効範囲内に、すなわち認証要素と車両側の安全制御部分との間の通信過程が有効に実行できる範囲内に入ると、自動的に起動されるシステムが存在する。その代わりに、認証通信過程が、車両側に配置された操作要素を介し又は音声入力を介して利用者の要求で行われるシステムが周知である(ドイツ連邦共和国特許第4027491号明細書及びドイツ連邦共和国特許第4414734号明細書参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の技術的な問題は、高度な操作快適性を可能にし、かつ高度な受け入れが期待される、初めに述べたような車両安全システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、特許請求の範囲第1項の特徴を有する車両安全システムの提供によって、この問題を次のようにして解決する。すなわち選択的に一方又は他方の無線制御通信チャネルを介して車両側のそれぞれの制御部分を制御するために、操作を必要とする(以下操作を伴うと称する)認証要素として1つ又は複数の電子キーを有する、キーを必要とする(以下キーを伴うと称する)無線制御通信チャネル、及び操作を必要としない(以下操作のないと称する)1つ又は複数の認証要素を有する、キーを必要としない(以下キーのないと称する)無線制御通信チャネルが設けられており、かつそれぞれのキーを伴う無線制御通信チャネルに、キーのない無線制御通信チャネルに対する優先権が与えられていることによって、キーを必要とする無線制御通信チャネル及びキーを必要としない無線制御通信チャネルを介して制御命令が受信されかつ処理され、キーを必要としない無線制御通信チャネルを介して受信される制御命令は、この制御命令とぶつかる制御命令がキーを必要とする無線制御通信チャネルを介して受信されない時にのみ、実行される。このシステムにおいてキーレスゴーシステムは、有利な様式で電子キーに基づくシステムに組合わされており、その際、両方の部分システムは、並列に設けられているので、利用者は、電子キーによって動作する部分システムのキーを伴う通信チャネルを介して又はキーレスゴー部分システムのキーのない通信チャネルを介して、安全システムを選択的に制御することができる。電子キーによって安全システムを制御できる可能性によって、このようなシステムはすでに広く普及しているので、高度の受け入れが期待できる。他方において本システムは、キーーレスゴーシステムの高度の操作快適性を利用する可能性を利用者に提供する。
【0007】
キーを伴う制御通信チャネルに、基本的にキーのない制御通信チャネルに対する優先権を与える、両方の部分システムの特殊な組合せにより、車両利用者自身は、それ以上両方の部分システムの間の場合によっては生じる切換えに注意する必要はない。それどころか安全システムは、動作中にそれぞれの時点に、基本的に一方及び他方の制御通信チャネルを介して起動される制御命令を受け入れ、かつこれらを前記の優先権方式にしたがって処理する。このことは、電子キーを介して送出される制御命令に通常即座に又はいずれにせよ適当に遅延して追従し、すなわちそれぞれ現在の車両状況を可能にするかぎり、追従するが、一方キーのない通信チャネルを介して入力される制御命令は、キーを伴う部分システムのこれと衝突する制御命令が存在しないとき、注意されるだけであるということを意味する。
【0008】
特許請求の範囲第2項により変形されるシステムは、所属のアクセス管理装置によって実行される車両ロック機能のための望ましい様式の優先権付与を考慮している。選ばれた優先権付与は、電子キーに慣れた利用者が、車両から離れる際に、彼にとって慣れた様式でその電子キーを介して車両をロックすることができ、かつキーレスゴー部分システムを介して場合によっては逆のロック解除命令が存在するかどうかに関係なく、システムがこの要求に従うことを保証する。このことは、キーレスゴー部分システムのために、所属の有効な認証要素が当該のキーのない制御通信チャネルの有効範囲内にあるときに相応するロック又はロック解除命令を自動的に起動するものが利用されるときに、とくに当然である。
【0009】
特許請求の範囲第3項により変形されるシステムにおいて、通常の様式の電子運び去り禁止装置は、車両側のキー収容部を含み、このキー収容部内に利用者による運び去り禁止の制御のために、有効な電子キーが挿入され、それによりこの時、ほとんどの場合に自動的に認証通信過程が経過し、この認証通信過程は、成功した場合、運び去り禁止の解除に至る。この時、この装置の変形において、キーのない制御通信チャネルは、キー収容部に有効と認識されたキーがある間、不活性化状態に維持される。それにより電子キーに慣れた利用者は、このことを意図する場合、キーレスゴー部分システムの介入によって影響を受けることなく、そのキーによって慣れたように車両を動作させることができる。他方において彼は、電子キーをキー収容部にが挿入しないが、キーレスゴー部分システムの認証要素を携帯することによって、キーレスゴー部分システムの高度な快適性を利用することができる。
【0010】
特許請求の範囲第4項により変形される安全システムは、利用者によって有効な電子キーが、動作中の車両用機関において、キー収容部へ挿入され、かつここにとくに点火オフ位置において挿入された場合に、車両が停止しているときに初めて、機関が遮断されることによって、動作中の走行運転においてキーレスゴー部分システムからキーを伴う部分システムへの有利な移行処置を提供する。
【0011】
特許請求の範囲第5項により変形されるシステムは、それぞれ1つの電子キー及びキーレスゴー部分システムのための操作のない認証要素が、共通の組合わされた認証要素に統合されていることによって、高度な利用快適性を提供する。それぞれ権利を与えられたシステム利用者は、この時、1つの認証要素を携帯するだけでよく、この認証要素は、電子キーとして、かつ操作のないキーレスゴー認証要素として使用することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の有利な構成は図面に示されており、かつ次に説明する。
【0013】
図に概略的に示されただけの車両安全システムは、アクセス管理装置の形の第1の部分システム、及び電子運び去り禁止装置の形の第2の部分システムを有し、これらのシステムの部品は、次に詳細に説明するかぎり、従来の構成のものであり、かつ従来のように互いに配線されている。車両1に収容されたアクセス管理装置の車両側の部分2は、とくにアクセス制御ユニット及びこれにより制御可能な車両ドア及びリヤハッチのための閉鎖ユニットを有するが、一方電子運び去り禁止の車両側の部分3は、運び去り禁止制御ユニットを含み、この運び去り禁止制御ユニットは、車両の動作に必要な部品を、例えば点火を投入及び遮断するかつ機関を始動するスイッチ要素によって制御する。車両側の両方の制御部分2、3は、切離されたユニットとして実現することができ、又は1つの制御装置に統合することができる。
【0014】
アクセス制御ユニット2に対しかつ運び去り禁止制御ユニット3に対して特徴的に、電子キー6又はチップカード7を介して選択的に認証を伴う制御を行うそれぞれ2つの無線制御通信チャネル4a、4b、5a、5bが設けられており、その際、チップカード7の代わりに、択一的に別の従来の操作のない認証要素を設けてもよい。一般に権利を有する複数の車両利用者のために複数の電子キー6及びチップカード7が存在することは明らかである。したがって権利を有する利用者は、電子キー6及び所属のキーを伴うアクセス管理制御通信チャネル4aを介して又はチップカード7及び所属のキーのないアクセス管理制御通信チャネル4bを介して選択的にアクセス管理装置を、かつ電子キー6及び所属のキーを伴う運び去り禁止制御通信チャネル5aを介して又はチップカード7及び所属のキーのない運び去り禁止制御通信チャネル5bを介して選択的に電子運び去り禁止を制御することができる。
【0015】
図示したシステムにおいて、一方において1つ又は複数の電子キー6及び他方において1つ又は複数のチップカード7は、切離されたユニットとして示されているが、一方その代わりに、例えばチップカード7を電子キー6のハウジング内に統合することによって、それぞれ1つの電子キー6とチップカード7を、共通の認証要素になるようにまとめることが可能である。この場合、それぞれの車両利用者は、1つの組合わされた認証要素を携帯するだけでよい。
【0016】
電子キー6を介するそれぞれの制御命令の送出は、利用者によって従来のように電子キー6を相応して操作することにより、キー6における操作ボタンの操作によりアクセス管理装置が、かつ電子点火錠に又はここからキー6を差込みかつ抜取ることにより電子運び去り禁止が制御されることによって行われる。従来の方式にしたがってチップカード7を介するシステム制御も、例えばチップカード7がその両方の通信チャネル4b、5bの有効範囲内に到達したとき、常にそれぞれの制御命令を自動的に送出することによって、同様に行われる。これらの有効範囲は、例えば車両側に配置されたアンテナ装置の捕獲範囲によって定義することができる。アクセス制御通信チャネル4bに対してこの有効範囲は、目的に合うように少なくともその立ち入りのために必然的に車両に近付いた際に車両利用者が侵入する車両外側のアクセス領域にわたって延びている。チップカード7の運び去り禁止制御通信チャネル5bの有効範囲は、少なくとも車両乗客が位置を取り又は携帯したチップカード7が置かれることがある範囲を越えて車両内部空間内に延びている。
【0017】
その代わりにそれぞれの認証通信過程を、当該の通信チャネル有効範囲内へのチップカード7の侵入によってすでに自動的に起動するのではなく、利用者の要求において初めて起動することを考慮することができ、そのためにこの時、アクセス管理制御を行う1つ又は複数の車両ドアの外側におけるロック解除及びロック操作要素及び/又は運び去り禁止制御を行う内部空間側の操作要素のように、車両側において相応する操作要素が設けられている。
【0018】
アクセス管理装置又は電子運び去り禁止のための並列の両方の制御通信チャネルの存在による命令衝突を避けるために、図示した安全システムにおいて、それぞれのキーのない制御通信チャネル4b、5bに対するそれぞれのキーを伴う制御通信チャネル4a、5aの優先権付与が実行されている。このことは、通常、すなわちそれぞれの車両の状況を可能にするかぎり、チップカード7を介する制御命令に対して、電子キー6を介する制御命令に優先権が与えられていることを意味する。電子キー6による取扱いに慣れた利用者は、それによりチップカード7によるキーレスゴー部分システムによって妨害されることなく、彼にとって慣れた様式で安全システムを利用することができる。他方においてキーレスゴー部分システムの高度な操作快適性によって利得を得ようとする利用者は、電子キー6を利用しないことによって、このことを簡単に達成することができる。そのために車両利用者は、両方の部分システムの間におけるなんらかの切換え処置を行う必要はない。キーを伴う制御通信チャネル4a、5aの優先権付与は、当該技術分野の専門家にとってよく知られたように、車両側のシステム部分2、3によって実行されており、かつとくに次の2つの処置を含んでいる。
【0019】
車両のロックのため、すなわちそのロックされた状態へのアクセス制御部分による閉鎖ユニットの制御のために、車両の外部にいる利用者は、その電子キー6の操作により、例えばここのロックボタンを押すことによって相応するロック命令を起動することができ、かつこの時このことは、同時に有効なチップカード7がそのアクセス制御通信チャネル4bの有効範囲内にあるかどうか、かつそれ故におそらく逆のロック解除命令を送出しているかどうかに関係なく、実際に所望の車両ロックにも至ることが考慮されている。このようなチップカードロック解除命令は、有効な電子キー6からロック命令が送出されるとき、無視される。
【0020】
運び去り禁止制御のために優先権付与処置として、電子点火錠に有効な電子キーが差込まれているかぎり、キーレスゴー部分システムがこれに関して不活性化されたまま維持されることが考慮されている。通常のように、その際、点火錠における電子キーの単なる差込まれていることは、走行権利テストが行われる点火オフキー位置に相当するが、点火と機関は、まだ遮断されている。この位置からキーは、点火を投入するために、点火オン位置に動かすことができる。スタータオン位置にさらに回した際、機関が始動され、その後、キーは、点火オン位置に戻される。車両がキーレスゴー部分システムを介して動作させられ、かつその後、機関が回転している際に有効な電子キーが点火錠に差込まれ、すなわちここにおいて点火オフ位置にある場合、さらに進行した優先権付与処置として、キーが点火錠内にあるかぎり、キーレスゴー部分システムは不活性化されたままであるが、キーの点火オフ位置によって要求される機関の遮断は、車両が停止したときに初めて行われるという移行処置が考慮されている。このことは、例えば自動変速機選択レバーがパーク位置にあるときに、システムによって受け入れることができる。続いて車両利用者は、点火錠におけるキーを相応して操作することによって、キーを伴う制御通信チャネルを介して再び車両を動作させることができ、又はキーを点火錠から抜取りかつ場合によってはなお認証過程を起動するためにキーレスゴー部分システムの起動操作要素を操作することによって、キーレスゴー部分システムを介して再び車両を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
アクセス管理装置と電子運び去り禁止を有する車両安全システムの概略的なブロック図である。
【符号の説明】
1 車両
2 アクセス制御部分
3 運び去り禁止制御部分
4 制御通信チャネル
5 制御通信チャネル
6 キー
7 操作のない認証要素
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-25 
出願番号 特願平11-267580
審決分類 P 1 651・ 55- YA (B60R)
P 1 651・ 121- YA (B60R)
P 1 651・ 537- YA (B60R)
P 1 651・ 113- YA (B60R)
P 1 651・ 161- YA (B60R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大谷 謙仁  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 鈴木 久雄
増岡 亘
登録日 2001-06-29 
登録番号 特許第3203593号(P3203593)
権利者 ダイムラークライスラー・アクチエンゲゼルシヤフト
発明の名称 車両安全システム  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 中平 治  
代理人 中平 治  
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