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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F25D
管理番号 1101166
異議申立番号 異議2003-72476  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-09-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-07 
確定日 2004-05-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3394526号「観音開き式扉装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3394526号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.訂正の適否
1-1 訂正の内容
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の「断熱箱体内に形成された冷蔵室及び/又は冷凍室」を「室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室」と、また、「前記冷蔵室及び/又は冷凍室の上面に設けられて」を「前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され」と、それぞれ訂正する。

・訂正事項b
明細書中の段落番号【0019】、【0044】の「断熱箱体内に形成された冷蔵室及び/又は冷凍室」を「室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室」と、また、同段落番号【0019】、【0044】の「前記冷蔵室及び/又は冷凍室の上面に設けられて」を「前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され」とそれぞれ訂正する。

1-2 訂正の適否
・訂正事項aについて
上記訂正事項aについては、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1中に記載された発明について、「断熱箱体内に形成された冷蔵室及び/又は冷凍室」としていた構成を、対象とする室を冷蔵庫または冷凍庫の何れか一方に限定し、それらの室が断熱箱体の上部に配置されたものであり、さらに、室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されたものであると限定し、また、「(ピンが)前記冷蔵室及び/又は冷凍室の上面に設けられて」いるとしていた構成を、(ピンが)ガイド部に形成され、ガイド部は冷蔵室又は冷凍室の上面の内箱のみに取り付けられ、且つ、ガスケットとの隙間を埋めるものであることを限定したものである。
「室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室」と訂正した構成は、本件特許の明細書中の段落番号【0004】、【0021】、【0024】及び図1、2、7、9の記載事項をまた、「前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され」と訂正した構成は、明細書中の段落番号【0021】、【0022】、【0043】及び図9の記載事項を根拠としている。

したがって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的としたものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

以上のとおりであるから、上記訂正事項aによる訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するものである。
また、その他の訂正事項bによる訂正についても同様に上記規定に適合するので当該訂正を認める。

2.異議申立てについての判断
2-1 本件発明
上記の通り、訂正は認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明」という。)は、訂正された特許明細書の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記仕切体の上端面のみに設けられて一方を開口した円弧状の溝と、前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され前記仕切体の上端面のみに設けられた溝に挿入されるピンとからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成した観音開き式扉装置。」

2-2 取消理由通知で引用された刊行物に記載された発明
・刊行物1:特開平2-133784号公報(異議申立人の提出した甲第1号証)
刊行物1の第1頁左下欄5〜20行目、第2頁右上欄20行目〜右下欄11行目、第2頁右下欄17行目〜第3頁左上欄10行目、第3頁左上欄16行目〜第3頁右上欄4行目の記載、及び、図面によれば、
刊行物1には、
「室内上下面は内箱で、断熱箱体内に配置された冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記仕切体の上下端面に設けられて一方を開口した円弧状のガイド溝部と、前記冷蔵室又は冷凍室内上下面の内箱に取り付けられたガイド部と、前記ガイド部に形成され前記仕切体の上下端面に設けられたガイド溝部に挿入される彎曲柱とからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体の上下端面に設けられた円弧状のガイド溝部と前記彎曲柱との係合により回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上下端面に設けられた円弧状のガイド溝部と前記彎曲柱との係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成した観音開き式扉装置。」
が開示されていると認められる。

・刊行物2:実願昭58-75390号(実開昭59-180188号)のマイクロフィルム(同甲第2号証)
刊行物2の第1頁4行目〜第2頁2行目、第4頁9〜15行目、第4頁18行目〜第5頁1行目、第5頁8、9行目、第5頁15〜19行目、第7頁14〜19行目、第8頁8〜10行目、第8頁15行目〜第9頁1行目、第9頁17、18行目、第10頁14〜19行目の記載、及び、図面によれば、
刊行物2には、
「室内上下面は内箱で、断熱箱体内に配置された冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記冷蔵室又は冷凍室内の内箱に取り付けられた第1、及び第2ガイド部とからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体を回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上下端部と前記第2ガイド部との係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成した観音開き式扉装置。」
が開示されていると認められる。
さらに、内箱の上下両面に設けた第2ガイド部を、何れか一方の面のみに設けても差支えないという構成も開示されている。

・刊行物3:実願昭58-75391号(実開昭59-180189号)のマイクロフィルム(同甲第3号証)
刊行物3にも、刊行物2に開示された発明と同様の発明が開示されていると認められる。

2-3 対比・判断
本件発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された「ガイド溝部16A」、「彎曲柱12A」は、それぞれ本件発明の「溝」、「ピン」に相当するから、
両者は、
「冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記仕切体の上端面に設けられて一方を開口した円弧状の溝と、前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱に取り付けられたガイド部と、前記ガイド部に形成され前記仕切体の上端面に設けられた溝に挿入されるピンとからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体の上端面に設けられた円弧状の溝と前記ピンとの係合により回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上端面に設けられた円弧状の溝と前記ピンとの係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成した観音開き式扉装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]本願発明では、観音開き式扉装置が取り付けられる室が、室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、単一の冷蔵室又は冷凍室を有する冷蔵庫であって、それらの室は断熱箱体内の上部に配置されたものではなく、また、室内上面、下面は共に内箱で形成されており、トリムはおろか、仕切壁自体をも有するものではない点。
[相違点2]本願発明では、円弧状の溝が仕切り体の上端面のみに設けられ、また、該溝に挿入されるピンが設けられるガイド部も室内上面の内箱のみに取り付けられており、それ故、第1扉開閉時に、仕切体を回動させる円弧状の溝とピンとの係合が、仕切体の上端面の一ヶ所のみであるのに対して、刊行物1に記載された発明では、第1扉開閉時に、仕切体を回動させる円弧状の溝とピンとの係合が、仕切体の上下両端面の二ヶ所である点。
[相違点3]本願発明のガイド部は、ガスケットとの隙間を埋めるものであるのに対して、刊行物1に記載されたガイド部は、ガスケットとの隙間を埋めるものではない点。

上記相違点について検討すると、相違点1における本件発明の構成が、当業者が容易になし得る設計事項であり、また、相違点2における本件発明の構成が、刊行物2、3の示唆により、当業者が容易になし得たものであるとしても、相違点3における本件発明の構成である「ガスケットとの隙間を埋めるガイド部」について、刊行物2、3いずれにも記載されておらず、示唆もされていない。
そして、本件発明は、上記相違点1〜3における本件発明の構成をすべて備えることにより、仕切体端部との隙間が大きくなる内箱と対峙する室内上面にのみガイド部を介在されて隙間を埋め、ガイド部にピンを形成することで閉扉時のガスケットとのシール性を確保できるという格別の作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

3.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論の通り決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
観音開き式扉装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記仕切体の上端面のみに設けられて一方を開口した円弧状の溝と、前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され前記仕切体の上端面のみに設けられた溝に挿入されるピンとからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成した観音開き式扉装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は断熱箱体の開口を観音開き式の扉によって開閉すると共に扉裏面にはそれぞれシ-ル用のガスケットを備えた観音開き式扉装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の扉装置は例えば松下冷機(株)が1990年3月に発売したNR-F40VP1型冷凍冷蔵庫に採用したものがあった。
【0003】
図14〜図19にその詳細を示す。
【0004】
図において、1は冷凍冷蔵庫本体で、2は鉄板製の外箱、3は合成樹脂を成形してなる内箱、4は外箱2と内箱3の間に充填される発泡断熱材、5は前方に開口した断熱箱体、5Aは断熱箱体5の開口部である。
【0005】
6A、6Bは断熱箱体5の左右縁部の上下に設けられた上下ヒンジ7A,7Bにより回転自在に枢支された上下2枚の観音開き式の第1扉、第2扉である。
【0006】
8は扉6A,6Bの裏面周縁部にマグネットを挿入したシ-ル部材としてのガスケット、9は冷蔵室庫内、10は扉6Aの裏面の非枢支側に位置するガスケット8より内側に位置する部分に上下二箇所冷蔵室庫内9方向へ突出した支持ア-ム、11は仕切体である。
【0007】
12は、扉6A,6Bのそれぞれの非枢支側に位置する部分の断熱箱体5の開口部5A縁部の上下に相対向して形成されているガイド部、12Aは、開口部5Aの上下よりをれぞれ相対向してガイド部12より突出しているピンである。13Aはガイド部12を開口部5Aに取付けるねじである。14は、ガイド部12に取付けられ、仕切体11に密着するシ-ル材である。
【0008】
15Aは、開口部5Aの上下寸法よりも少許小さい長さで、上下に延在し、前面は平面とし、後部は角部を曲面とした形状となっている仕切体11の上下端部にガイド部12のピン12Aに摺動自在に合致する円弧状の溝で、一方を開口15Cとし他方に円弧状の溝15Aの終端部15Bを設けている。
【0009】
16は仕切体11と扉6A,6Bの内板6’の側面6”に端部を取付け、途中にトグル部17を有したバネである。尚仕切体11にはバネ16が入る孔(図示せず)が設けられている。
【0010】
以上のように構成された冷凍冷蔵庫について以下その動作を説明する。
【0011】
扉6Aを閉じていくと、仕切体11は冷蔵室庫内9に侵入し、ピン12Aが、仕切体11の円弧状の溝15Aに当接し、更に、摺動自在に合致する円弧状の溝15Aに沿って移動していく。
【0012】
このことにより、仕切体11が、反時計回りに回動していき、扉6Aが閉じた状態では、扉6A,6Bの非枢支側のガスケット8は仕切体11前面に密着し、更にシ-ル材14は仕切体11上下端部に密着し冷蔵室庫内9を気密にシ-ルする。尚、バネ16により冷蔵室仕切体11は原位置にすばやく移動させられている。
【0013】
次に、扉6Aを開く時には、扉6Aを手前に引く事により、ピン12Aは摺動自在に合致する円弧状の溝15Aを有する仕切体11を移動して、仕切体11は時計回りに回動され、それによってガスット8は仕切体11前面より離れ、その後は扉6Aを容易に回動し開放される。このとき、バネ16のトグル部17によりいままでと逆方向の力が仕切体11に付与されるので仕切体11がすみやかに移動する。
【0014】
以上のように、従来例によれば、ガイド部上下端部にもシ-ル材が取り付けられている為、冷蔵室庫内の気密を保持することができた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の構成では、ガイド部のピンが上下にあるため取付バラツキにより上下のピンが左右もしくは前後に位置ズレした場合、仕切体がこじて仕切体が動作しない場合があった。
【0016】
また、仕切体の支持ア-ムは鉄板製であり、扉を開けた時に露が付着し錆が発生したり、仕切体に異常な力が加わった場合変形して回転に支障をきたすといった問題があった。
【0017】
さらに、本冷凍冷蔵庫は仕切体が回転する観音開き式扉装置は冷蔵室にしか採用されておらず、その構造を冷凍室に採用すると、庫内と外部の温度差によりガスケット面に露付が発生したり、外気が庫内に侵入して来て庫内に霜発生する危険があった。
【0018】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、仕切体の動作をスム-ズにすると共に、冷凍室にも採用出来る観音開き式扉装置を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に記載の発明は、室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記仕切体の上端面のみに設けられて一方を開口した円弧状の溝と、前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され前記仕切体の上端面のみに設けられた溝に挿入されるピンとからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成したものであり、仕切体の上面のみに設けられた円弧状の溝とこれに相対するピンの係合作用により仕切体が回動するため、上下双方に円弧状の溝とピンを設けて係合させる場合のように上下の取付バラツキで仕切体がこじるようなことがなく第1扉の開閉がスムーズに行われる。また、下面の溝をなくすことにより溝内の冷気のよどみをなくすことができ結露発生の要因が抑えられる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。尚従来と同一構成部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0021】
(実施の形態1)
18は冷凍室庫内で、19は冷凍室庫内18と冷蔵室庫内9を区画する仕切壁で、20は仕切壁前面板である。21は冷凍室庫内18の開口縁部の上部に形成されているガイドトップ部、22はガイドトップ部21を冷凍冷蔵庫本体1に取付ける以前にガイドトップ部21に取付けられ、仕切体11に密着するガイドシ-ル材である。
【0022】
このガイドシ-ル材22の取付方はガイドトップ部21の扉側にシ-ル材孔23を開けて、このシ-ル材孔23へ挿入して上押え板24Aで係合されている。このとき、ガイドシ-ル材22は、ガイドトップ部21の先端を覆うようになっている。
【0023】
25は発泡断熱材4に埋設されている補強板で、26はねじ13Bにより補強板25に保持されたベ-スガイド部、27は冷凍室庫内18の上下部に設けられたPTCヒ-タである。尚、ガイドトップ部21はねじ13Cと爪28Aによりベ-スガイド部26と固定されている。29は水抜き用切り欠きである。
【0024】
30は前方を開口した断面ほぼコの字形をなすトリムで、ピン12Aを突出して一体形成している。24BはPTCヒ-タ27を保持するための下押え板で、31はカバ-である。32はカバ-31より突出して形成されたボスで、下押え板24Bを溶着固定する。前記トリム30に形成された凹部33が前記カバ-31に形成された爪28B嵌合するよう構成されている。
【0025】
34A,34Bは仕切体11を第1扉6Aに取付ける上下樹脂性支持ア-ムで、34Bは下方の間口を大きくした2段段付孔34Cを有している。上下樹脂性支持ア-ム34A、34Bは側面6’とねじ13Gにより固定されている。34Dは肉抜き穴である。
【0026】
35A、35Bは仕切体11のトリムフレンチで、36は上部キャップ、37A、37Bは下部キャップ、38Aは断面形状がほぼコの字形をなし薄肉材で構成され左右フランジに切り欠きを有する磁性体の仕切体前面板で、38Bは断面がほぼコの字形をなし薄肉材で構成された磁性体の仕切体前面板、39A、39Bはトリムフレンチ35A、35Bと仕切体前面板38A、38B内の断熱材である。
【0027】
40A、40Bは前面板ヒ-タである。41は仕切体11下部に取付けられ、カバ-31に密着するカバ-シ-ル材である。このカバ-シ-ル材41は、仕切体前面板38Aのフランジと下部キャップ37Aに挟み込まれて係合されている。このとき、カバ-シ-ル材41はカバ-31の先端を覆うようになっている。
【0028】
13Dは上部キャップ部36と下部キャップ部37A、37Bを仕切体前面板38A、38Bを固定するねじ、13Eは上部キャップ部37Aと下部キャップ部37A、37Bをトリムフレンチ35A、35Bと固定するねじである。
【0029】
42はガスケット8より開口部5Aの中央側上下にだしたシ-ル用ヒレである。43Aは上樹脂性支持ア-ム34Aを保持する為の樹脂で成形された上部サポ-ト、43Bは下樹脂性支持ア-ム34Bを保持し、前面板ヒ-タ40A、40Bのコ-ドを収納するケ-ス43Cを一体化した樹脂性の下部サポ-トである。
【0030】
上部サポ-ト43A、下部サポ-ト43Bの取付け方は、ドア内板6’にあけられた位置決め孔44に上部サポ-ト43A、下部サポ-ト43Bより突出形成た位置決めピン45を、ドア内板6’土手6”裏面より差し込み、ねじ13Fにより仮止めする。その後ドア内板6’内には発泡断熱材4が充填される為、上部サポ-ト43A、下部サポ-ト43Bは強固に保持される。
【0031】
46はカバ-ハ-ネス、47はクッションゴム、13Hはカバ-ハ-ネス46を固定するねじである。
【0032】
以上のように構成された冷凍冷蔵庫について以下その動作を説明する。
【0033】
冷凍室扉6Aを閉じていくと、仕切体11は冷凍室庫内18に侵入し、ピン12Aが、仕切体11の円弧状の溝15Aに当接し、更に、摺動自在に合致する円弧状の溝15Aに沿って移動していく。
【0034】
このことにより、仕切体11が、反時計回りに回動していき、扉6Aが閉じた状態では、扉6A、6Bの非枢支側のガスケット8は仕切体11前面に密着し、上下のシ-ル用ヒレ42はラップしている。
【0035】
更に、ガイドシ-ル材22、カバ-シ-ル材41は仕切体11上下端部に密着して冷凍室庫内18を気密にシ-ルする。又、PTCヒ-タ27により可動部の凍結、発汗を防止している。尚、バネ16により仕切体11は原位置にすばやく移動させられている。
【0036】
ここで仕切体11は、仕切体前面板38Aのみは磁性材料で構成すれば非枢支側支持のガスケット8の密着は良くなる。又、下樹脂性支持ア-ム34Bの2段段付孔34Cより前面板ヒ-タ40Aのコ-ドを通した後、間口を大きくした2段段付孔34Cよりチュ-ブ等を通す事により、コ-ドの傷付き対策となる。又、仕切体11の幅は非枢支側のガスケット8の間隔よりも十分大となる様予め設定する。
【0037】
次に、扉6Aを開く時には、扉6Aを手前に引く事により、ピン12Aが仕切体11に設けた円弧状の溝15A内を摺動し、仕切体11は時計回りに回動される。それによってガスケット8は仕切体11前面より離れ、その後は扉6Aを容易に回動し開放される。このとき、バネ16のトグル部17によりいままでと逆方向の力が仕切体11に付与されているので仕切体11がすみやかに移動する。
【0038】
冷蔵室扉6Aを閉じていくと、仕切体11は冷蔵室庫内9に侵入し、ピン12Aが、仕切体11の円弧状の溝15Aに当接し、更に、摺動自在に合致する円弧状の溝15Aに沿って移動していく。このことにより、仕切体11が、反時計回りに回動していき、扉6Aが閉じた状態では、扉6A、6Bの非枢支側のガスケット8は仕切体11の前面に密着し、上下のシ-ル用ヒレ42はラップしている。尚、バネ16により仕切体11は原位置にすばやく移動させられている。
【0039】
ここで仕切体11は、仕切体前面板38Bのみは磁性材料で構成すれば非枢支側支持のガスケット8の密着は良くなる。又、下樹脂性支持ア-ム34Bの2段段付孔34Cより前面板ヒ-タ40Bのコ-ドを通した後、間口を大きくした2段段付孔34Cよりチュ-ブ等を通す事により、コ-ドの傷付き対策となる。また、仕切体11の幅は非枢支側のガスケット8の間隔よりも十分大となる様予め設定する。
【0040】
次に、扉6Aを開く時には、扉6Aを手前に引く事により、ピン12Aが仕切体11に設けた円弧状の溝15A内を摺動し、仕切体11は時計回りに回動される。それによってガスケット8は仕切体11前面より離れ、その後は扉6Aを容易に回動し開放される。このとき、バネ16のトグル部17によりいままでと逆方向の力が仕切体11に付与されているので仕切体11がすみやかに移動する。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、ピンを仕切体の上下いずれか一方の対向する面にのみ設ける事により、上下にピンがある時と比べ上下のピン位置のズレによるドア開閉に支障をきたす事がなく、更に、冷蔵室のピンをトリムと一体化する事により、ピン位置の組合せバラツキによるずれを少なくする事ができる。又、一方のピンをなくす事により、これに対応する一方の円弧状の溝をなくす事ができ、溝内の冷気のよどみをなくすことができる。
【0042】
仕切体支持ア-ムを樹脂で成形している為、金属で作った場合、コ-ドに傷が付くとか、露が付く事もなく、肉抜きする事により、樹脂の弾性により異常な力が加わったときの折れ防止及び成形時のたおれ防止にもなり、更に、2段段付け構造が可能となりチュ-ブ等を挿入する事により、コ-ドの傷付きを防止できる。
【0043】
冷凍室上部にベ-スガイド部とガイドトップ部を設けている為、ガスケットとの隙間が生ぜずガスケット表面の発汗や庫内に霜が発生することもない。ガイドトップ部やカバ-内にPTCヒ-タを取付けている為、外気が高湿度になってもガスケット表面に露が付く事も防止できる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明は、室内上面は内箱で、室内下面は前方を開口したトリムよりなる仕切壁で形成されて断熱箱体内の上部に配置された冷蔵室又は冷凍室の前面開口部を閉塞するよう前記前面開口部両側に回動自在に枢支された観音開き式の第1及び第2扉と、前記第1及び第2扉の裏面周縁にそれぞれ設けられ前記前面開口部周縁に当接するガスケットと、前記第1扉の非枢支部分の裏面に前記前面開口部周縁に渡る長さで前記第1扉の回転軸方向に延在して回動自在に取付られた仕切体と、前記仕切体の上端面のみに設けられて一方を開口した円弧状の溝と、前記冷蔵室又は冷凍室内上面の内箱にのみ取り付けられて前記ガスケットとの隙間を埋めるガイド部と、前記ガイド部に形成され前記仕切体の上端面のみに設けられた溝に挿入されるピンとからなり、前記仕切体を前記第1扉が開成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉と当接しない位置に移動し、前記第1扉が閉成するときに前記仕切体の上端面のみに設けられた円弧状の溝と前記ピンとの一ヶ所のみの係合により回動させて前記第2扉の反枢支側と当接する位置へ移動させるよう構成したので、仕切体の上面のみに設けられた円弧状の溝とこれに相対するピンの係合作用により仕切体が回動するため、上下双方に円弧状の溝とピンを設けて係合させる場合のように上下の取付バラツキで仕切体がこじるようなことがなく第1扉の開閉がスムーズに行われる。また、下面の溝をなくすことにより溝内の冷気のよどみをなくすことができ結露発生の要因を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態1における観音開き式扉装置を用いた冷蔵庫の正面図
【図2】
同実施の形態の観音開き式扉装置の仕切体を故意に起こした冷蔵庫の正面図
【図3】
同実施の形態の観音開き式扉装置の仕切体の要部斜視図
【図4】
同実施の形態の観音開き式扉装置の冷凍室扉の分解斜視図
【図5】
同実施の形態の観音開き式扉装置の冷蔵室扉の分解斜視図
【図6】
同実施の形態の観音開き式扉装置の冷凍室上下部分解斜視図
【図7】
同実施の形態の観音開き式扉装置の冷凍室下部の分解斜視図
【図8】
同実施の形態の観音開き式扉装置の冷蔵室上下部斜視図
【図9】
図1のA-A方向からの断面図
【図10】
同実施の形態の観音開き式扉装置のガイドトップ部の斜視図
【図11】
同実施の形態の観音開き式扉装置のカバ-の斜視図
【図12】
図3のB-B方向からの断面図
【図13】
図3のC-C方向からの断面図
【図14】
従来の冷蔵庫の扉装置の扉閉状態の断面図
【図15】
従来の冷蔵庫の扉装置の扉開状態の断面図
【図16】
従来の冷蔵庫の扉装置の要部断面図
【図17】
従来の冷蔵庫の斜視図
【図18】
従来の冷蔵庫の要部正面図
【図19】
図17のD-D方向からの断面図
【符号の説明】
6A、6B 第1、第2扉
8 ガスケット
11 仕切体
12A ピン
15A 円弧状の溝
19 仕切壁
20 仕切壁前板
24A、24B 押え板
27 PTCヒ-タ
30 トリム
31 カバ-
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-04-20 
出願番号 特願2001-34934(P2001-34934)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F25D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長崎 洋一  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 原 慧
岡本 昌直
登録日 2003-01-31 
登録番号 特許第3394526号(P3394526)
権利者 松下冷機株式会社
発明の名称 観音開き式扉装置  
代理人 坂口 智康  
代理人 外川 英明  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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