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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 C07C 審判 全部申し立て 出願日、優先日、請求日 C07C |
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管理番号 | 1101201 |
異議申立番号 | 異議1998-73411 |
総通号数 | 57 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-04-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1998-07-17 |
確定日 | 1999-06-18 |
異議申立件数 | 3 |
事件の表示 | 特許第2698339号「8-メトキシキノロンカルボン酸誘導体の製造中間体」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2698339号の特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第2698339号にかかる発明についての出願は、国内優先権主張を伴う昭和62年3月30日(優先日、昭和61年3月31日、昭和61年9月24日)の出願である特願昭62-76892号(以下「原出願」という)の一部を、特許法第44条第1項の規定に基づき平成2年6月13日に分割出願した特許出願(特願平2-153306号、以下「子出願」という)から、さらに平成6年3月28日に分割出願した特許出願(特願平6-56950号、以下「孫出願」という)を、さらに平成8年7月12日にもう一度分割して特許出願(特願平8-182903号)したものであり、平成9年9月19日に設定登録され、その後、元橋完之、杏林製薬株式会社、大日本製薬株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、指定期間内である平成11年1月5日に意見書が提出されたものである。 II.本件発明 本件特許請求の範囲第1項記載の発明は、特許明細書の記載からみて、特許請求の範囲第1項に記載された次のとおりのものである。 「一般式(XXXII) 【化I】 ![]() (式中、Qはシアノ基またはカルボキシ基を示す)で表される化合物。」 III.取消理由通知の概要 これに対して、当審で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 「本件特許出願を含めた原出願からのいずれの分割出願についても、出願時に国内優先権主張の手続がなされていないので、本件特許出願には優先権主張の効果は認められず通常の分割出願として扱うにとどまり、新規性及び進歩性の判断基準日は、原出願の出願日である昭和62年3月30日となる。 特許請求の範囲の第1項記載の発明は、本件特許出願日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開された特願昭61-220149号の特許出願(以下「先願」という)の願書に添付した明細書(以下「先願明細書」という)に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また本件出願の時にその出願人がその出願前の出願にかかる上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件発明にかかる特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものである。」 IV.当審の判断 1.分割の適否 本件出願は、原出願から分割出願(子出願)をし、そして子出願を分割出願(孫出願)し、さらに孫出願を分割出願をしたものであるが、子出願及び孫出願にかかる発明は、それぞれ適法な分割出願にかかる発明であるとしてすでに登録されている。 そして、本件出願が、孫出願に対して分割要件を満たし、かつ原出願に対しても実体的な要件を満たすことから、本件出願は適法な分割出願であると認められる。 2.優先権主張の手続 国内優先権主張に関する特許法第42条の2第4項には「第一項の規定による優先権を主張しようとする者は、その旨及び先の出願の表示を記載した書面を特許出願と同時に特許庁長官に提出しなければならない。」と規定されている。 また、分割出願に関する特許法第44条第2項には、「・・・前項の場合は、新たな特許出願は、もとの特許出願の時にしたものとみなす。 ただし、新たな特許出願が第29条の2〔特許要件〕に規定する他の特許出願又は実用新案法第3条の2に規定する特許出願に該当する場合におけるこれらの規定の適用並びに第三十条第四項〔新規性喪失の例外〕、第四十2条の2第4項並びに前条第一項及び第二項の規定の適用については、この限りでない。」と規定されている。 上記ただし書きは、適法に分割された新たな特許出願においては、出願日が自動的に遡及することから、このままでは、新たな特許出願において新規性喪失の例外、国内優先権主張及びパリ条約による優先権主張の適用を主張しようとする際に必要な ▲1▼新規性喪失の例外の適用を受けるための証明書類の提出、 ▲2▼国内優先権主張をする際の書面の提出、 ▲3▼パリ条約による優先権主張をする際の書面の提出 の期間の起算日が、遡及効果によりもとの特許出願日となり、上記書類の提出が不可能となる場合が想定されるため、この不都合をなくすために、上記手続についての起算日については分割出願の日となるように例外的に便宜を図った規定であって、新たな特許出願において上記手続をしなくてもよいことを意味しているものではない。 そして、本件出願においては、優先権主張する旨の表示及び先の出願の表示を記載した書面が出願と同時に提出されていない。 してみると、特許法第42条の2第4項において出願と同時にしなければならないと規定されている国内優先権主張の手続がなされていない本件出願は、国内優先権主張を伴う出願であるとは認められない。 3.新規性、進歩性の判断基準日 本件出願は、上記1.で指摘したように、適法な分割出願と認められ、孫出願及び子出願も適法な分割出願であるので、本件出願の出願日は、原出願の出願日である昭和62年3月30日まで遡及する。 そして、上記したように本件出願には、優先権主張が認められないので、上記遡及日が新規性、進歩性の判断基準日となる。 4.先願明細書記載の発明(元橋完之の提出した甲第1号証である特開昭62-252772号公報参照) 先願明細書には、次の事項が記載されている。 「3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロ安息香酸の合成 1、2、3、4-テトラフルオロベンゼン50gを・・・を減圧蒸留して無色油状の3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロベンゾニトリルを14.25g得た。・・・得られた結晶をn-ヘキサンにより再結晶して無色針状晶の目的物を9.61g得た。 融点98〜101℃ 元素分析値:C8H5F3O3 計算値:C;46.62 ,H;2.45 分析値:C;46.68 ,H;2.48 」 (甲第1号証の第11頁右上欄第12行〜同頁右下欄第6行参照。) つまり、先願明細書には、3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロ安息香酸の製造方法及びその物性値についての測定結果が記載されており、またその合成過程において、沸点94℃/8mmHgの無色油状の3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロベンゾニトリルが中間体として得られたことが記載されていることから、「3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロ安息香酸」及び「3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロベンゾニトリル」の発明が記載されているものと認められる。 4.対比・判断 本件特許請求の範囲第1項記載の発明と先願明細書に記載された発明を対比すると、先願明細書に記載された「3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロベンゾニトリルニトリル」、「3-メトキシ-2、4、5-トリフルオロ安息香酸安息香酸」は、本件特許請求の範囲第1項に記載された一般式(XXXII)において、「Qがシアノ基である化合物」及び「Qがカルボキシ基である化合物」にそれぞれ相当する。 したがって、本件特許請求の範囲第1項記載の発明と先願明細書に記載された発明は同一である。 V.結び したがって、本件特許請求の範囲第1項記載の発明は、本件特許出願日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開された先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明の発明者が先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また本件出願の時にその出願人がその出願前の出願にかかる上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本件発明にかかる特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 1999-04-13 |
出願番号 | 特願平8-182903 |
審決分類 |
P
1
651・
03-
Z
(C07C)
P 1 651・ 161- Z (C07C) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 脇村 善一、佐野 整博 |
特許庁審判長 |
嶋矢 督 |
特許庁審判官 |
山口 由木 星野 浩一 |
登録日 | 1997-09-19 |
登録番号 | 特許第2698339号(P2698339) |
権利者 | 三共株式会社 宇部興産株式会社 |
発明の名称 | 8-メトキシキノロンカルボン酸誘導体の製造中間体 |
代理人 | 桜井 周矩 |
代理人 | 吉岡 拓之 |
代理人 | 大野 彰夫 |
代理人 | 箕浦 清 |