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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特39条先願  A63F
管理番号 1101288
異議申立番号 異議2003-73011  
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-10-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-09 
確定日 2004-08-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第3415555号「カード式遊技機」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3415555号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1・手続の経緯
特許第3415555号の請求項1及び2に係る各発明(本件発明1及び2)についての特許出願(本件出願)は、平成3年8月23日に出願された特許出願(特願平3-237493号)の一部が特許法第44条第1項の規定により平成12年10月3日に新たな特許出願(特願2000-69312号)とされ、この新たな特許出願の一部が特許法第44条第1項の規定により平成12年3月30日に新たな特許出願とされたものであって、平成15年4月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人・面沢寿江より特許異議の申立てがなされたものである。
2・特許異議申立てについて
(1)本件発明
本件発明1及び2は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「1・所要の排出指令に基づいて所要の遊技媒体を排出可能な遊技媒体排出装置を備えた遊技機本体と、該遊技機本体と一対一に構成され挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数の遊技媒体を貸し出すための処理を行なう遊技媒体貸出装置と、を備え、該遊技媒体貸出装置の貸出処理に基づき出力される信号に応じて所定数の貸遊技媒体を上記遊技機本体の遊技媒体排出装置から排出するようにしたカード式遊技機であって、
上記遊技機本体の前面側に設けられた操作パネルには、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記遊技媒体貸出装置に対して与える変換ボタンと、
上記遊技媒体貸出装置およびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な情報表示手段と、
を少なくとも備え、
上記遊技媒体貸出装置には、
挿入されているカードに関する残金額データを上記情報表示手段に所要の度数情報で表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて当該表示されている残金額データの度数情報を当該度数情報以外の所要情報に切換表示可能な表示制御手段と、
当該遊技媒体貸出装置の前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する1つの表示切換ボタンと、
を備え、
上記表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報には、
上記変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額データの情報、及び、上記遊技媒体貸出装置に挿入されているカードが当該遊技媒体貸出装置に挿入された時点の当初金額データの度数情報が含まれることを特徴とするカード式遊技機。
2・上記表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報には、当該カードが挿入された上記遊技媒体貸出装置を識別する情報が含まれることを特徴とする請求項1に記載のカード式遊技機。」
(2)申立ての理由の概要
申立人は、甲第1号証(特開平1-136681号公報)、甲第2号証(特開昭61-20573号公報)、甲第3号証(実願昭54-143023号(実開昭56-60175号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(特開平2-160570号公報)、甲第5号証(特開昭64-72777号公報)、甲第6号証(特開平1-190381号公報)、甲第7号証(特開昭63-29680号公報)、甲第8号証(特開昭60-215291号公報)、甲第9号証(特開平2-279191号公報)、甲第10号証(特開昭62-100863号公報)、甲第11号証(特開昭63-102783号公報)、甲第12号証(特開昭63-122482号公報)、甲第13号証(実願昭60-151200号(実開昭62-59375号)のマイクロフィルム)、甲第14号証(特開昭64-22194号公報)及び甲第15号証(特許第3066474号公報)を引用し、
(2-1)本件発明1は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証〜甲第10号証に記載された各発明に基いて、本件発明2は、本件出願前国内において頒布された甲第1号証〜甲第14号証に記載された各発明に基いて、何れも、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、
(2-2)本件発明1及び2は、本件出願の出願の日と同日の出願に係る甲第15号証の請求項1に係る発明と実質的に同一であるから、特許法第39条第2項の規定に違反して特許されたものであり、
本件発明の特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
(3)甲号各証に記載された発明
甲第1号証には、
特に、第3図(第11頁)の記載から、度数選択スイッチA〜Eの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額が度数選択スイッチA〜Eの上部に表示されているものと認められること、からみて、
「入賞時及び玉貸し時に所要のパチンコ玉を排出可能な玉切り装置18を備えたパチンコ機本体と、該パチンコ機本体と一対一に構成され挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数のパチンコ玉を貸し出すための処理を行なうカード処理部、精算部及び選択部と、を備え、該カード処理部、精算部及び選択部の貸出処理に基づき出力される信号に応じて所定数の貸パチンコ玉を上記パチンコ機本体の玉切り装置18から排出するようにしたカード式パチンコ機であって、
上記パチンコ機本体の前面側には、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記カード処理部、精算部及び選択部に対して与える度数選択スイッチA〜Eと、
上記カード処理部、精算部及び選択部およびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な現度数表示ディスプレイ4と、
を少なくとも備え、
上記カード処理部、精算部及び選択部には、
挿入されているカードに関する残金額データを上記現度数表示ディスプレイ4に金額で表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて玉情報表示ディスプレイ7に所要情報を切換表示可能な表示回路30と、
当該カード処理部、精算部及び選択部の前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する3つのモード切換スイッチK〜Mと、
を備え、
上記度数選択スイッチA〜Eの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額が度数選択スイッチA〜Eの上部に表示されるカード式パチンコ機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第2号証には、
「遊技機本体の前面側に球数表示部23を少なくとも備え、
該球数表示部23に球数を表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて当該表示されている球数を当該球数以外の所要情報に切換表示可能な表示制御手段と、
コインボックス3の前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する1つの精算ボタン12と、
を備えるコイン式遊技機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第3号証には、
「表示器16を少なくとも備え、
該表示器16に所定の表示切換信号に基づいて複数の故障コードを順に表示する表示制御手段と、
上記表示切換信号を発生する1つのベンドテストスイッチ21と、
を備える自動販売機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第4号証には、
「前面側に設けられた操作パネル1に表示板10を少なくとも備え、
該表示板10に所定の表示切換信号に基づいて複数のモードメニューを順次変える表示制御手段と、
前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する1つの「モード」キー2と、
を備えるプリンタ装置」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第5号証及び甲第6号証には、
「パチンコ台本体と、挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数のパチンコ玉を貸し出すための処理を行なうカード玉貸機CPと、を備えた遊技カードシステムであって、
上記カード玉貸機CPの前面側に設けられた操作パネルには、
上記カード玉貸機CPおよびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な表示部102を少なくとも備え、
上記カード玉貸機CPには、
挿入されているカードに関する残金額データを上記表示部102に所要の度数情報で表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて当該表示されている残金額データの度数情報を当該度数情報以外の所要情報に切換表示可能な表示制御手段を備え、
該表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報には、
READY状態、及び、エラー状態が含まれる遊技カードシステム」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第7号証には、
「金額の範囲内で所要数のパチンコ玉を貸し出すための処理を行なうパチンコ玉貸機であって、
該パチンコ玉貸機の前面側に設けられた操作パネルには、
金額から貸パチンコ玉への変換指令を上記パチンコ玉貸機に対して与える貸玉金額を指定する選択ボタン8と、
上記パチンコ玉貸機に関わる情報を表示可能な貸玉残回数表示器12と、
を少なくとも備え、
上記パチンコ玉貸機には、
貸玉残回数を上記貸玉残回数表示器12に表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて当該表示されている貸玉残回数を当該貸玉残回数以外の所要情報に切換表示可能な表示制御手段を備え、
該表示制御手段により上記貸玉残回数から切り換えられる所要情報には、
トラブルコードが含まれるパチンコ玉貸機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第8号証には、
「カード式券売機であって、
該券売機本体の前面側に設けられた操作パネル1には、
金額データから切符への変換指令を上記カード式券売機に対して与える行先釦スイッチ15を少なくとも備え、
カード7には、
カード使用の都度、残額記入部71に残額が順次印字されるカード式券売機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第9号証には、
「挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数の遊技媒体を貸し出すための処理を行なう遊技媒体貸出装置4aであって、
上記遊技媒体貸出装置4aの前面側には、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記遊技媒体貸出装置4aに対して与える購入スイッチ28と、
上記遊技媒体貸出装置4aおよびこれに挿入されたカード2に関わる情報を表示可能な残高表示部26と、
を少なくとも備え、
上記遊技媒体貸出装置4aには、
挿入されているカード2に関する残金額データを上記残高表示部26に表示し、
上記カード2には、
残高表示部12にパンチ穴、マーキング等で概ねの残高が表示される遊技媒体貸出装置4a」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第10号証には、
「カード給油システムであって、
金額またはその金額に対応した油量を記憶したカード30を少なくとも備え、
上記カード30には、
給油毎に給油量等の給油内容が記録されるカード給油システム」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第11号証及び甲第12号証には、
「所要の排出指令に基づいて所要のパチンコ球を排出可能な球排出装置4を備えたパチンコ機1本体と、該パチンコ機1本体と一対一に構成され挿入されたカード21に記憶されている金額データの範囲内で所要数のパチンコ球を貸し出すための処理を行なう球貸機能部2と、を備え、該球貸機能部2の貸出処理に基づき出力される信号に応じて所定数の貸パチンコ球を上記パチンコ機1本体の球排出装置4から排出するようにしたカード式パチンコ機であって、
上記球貸機能部2の前面側には、
金額データから貸パチンコ球への変換指令を上記球貸機能部2に対して与える金額選択操作部10と、
上記球貸機能部2およびこれに挿入されたカード21に関わる情報を表示可能な金額表示部8と、
を少なくとも備え、
上記球貸機能部2は、
挿入されているカード21に関する残金額データを上記金額表示部8に表示し、
上記球貸機能部2には、台番号が表示されるカード式パチンコ機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第13号証には、
「電磁弁であって、
該電磁弁には、
ソレノイドのステーション番号を設定する番号設定部7と、
ステーション番号を表示する番号表示部5と、
を少なくとも備え、
番号設定部7により、番号表示部5に、上記電磁弁を特定するステーション番号が設定表示される電磁弁」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第14号証には、
「電話装置であって、
該電話装置の端末電話機には、
該端末電話機を識別する内線番号が設定される電話装置」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
甲第15号証である特許公報の請求項1には、
「所要の排出指令に基づいて所要の遊技媒体を排出可能な遊技媒体排出装置を備えた遊技機本体と、該遊技機本体と一対一に構成され挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数の遊技媒体を貸し出すための処理を行なう遊技媒体貸出装置と、を備え、該遊技媒体貸出装置の貸出処理に基づき出力される信号に応じて所定数の貸遊技媒体を上記遊技機本体の遊技媒体排出装置から排出するようにしたカード式遊技機であって、
上記遊技機本体の前面側に設けられた操作パネルには、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記遊技媒体貸出装置に対して与える変換ボタンと、
上記遊技媒体貸出装置およびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な情報表示手段と、
を少なくとも備え、
上記遊技媒体貸出装置には、
挿入されているカードに関する残金額データを上記情報表示手段に所要の度数情報で表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて当該表示されている残金額データの度数情報を当該度数情報以外の所要情報に切換表示可能な表示制御手段と、
当該遊技媒体貸出装置の前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する表示切換ボタンと、
を備え、
上記表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報には、
上記変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額データの情報が含まれることを特徴とするカード式遊技機」
を構成とする発明が記載されているものと認められる。
(4)上記(2-1)における特許法第29条第2項違反の主張について
(4-1)本件発明1と甲第1号証〜甲第10号証に記載された各発明との対比及び判断
本件発明1(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)とを対比すると、
後者の
「入賞時及び玉貸し時に」、「パチンコ玉」、「玉切り装置18」、「パチンコ機」、「カード処理部、精算部及び選択部」、「度数選択スイッチA〜E」、「現度数表示ディスプレイ4」、「表示回路30」及び「モード切換スイッチK〜M」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ、
前者の
「所要の排出指令に基づいて」、「遊技媒体」、「遊技媒体排出装置」、「遊技機」、「遊技媒体貸出装置」、「変換ボタン」、「情報表示手段」、「表示制御手段」及び「表示切換ボタン」
に相当するものと認められるから、
両者は、
「所要の排出指令に基づいて所要の遊技媒体を排出可能な遊技媒体排出装置を備えた遊技機本体と、該遊技機本体と一対一に構成され挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数の遊技媒体を貸し出すための処理を行なう遊技媒体貸出装置と、を備え、該遊技媒体貸出装置の貸出処理に基づき出力される信号に応じて所定数の貸遊技媒体を上記遊技機本体の遊技媒体排出装置から排出するようにしたカード式遊技機であって、
上記遊技機本体の前面側には、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記遊技媒体貸出装置に対して与える変換ボタンと、
上記遊技媒体貸出装置およびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な情報表示手段と、
を少なくとも備え、
上記遊技媒体貸出装置には、
挿入されているカードに関する残金額データを上記情報表示手段に表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて所要情報を切換表示可能な表示制御手段と、
当該遊技媒体貸出装置の前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する表示切換ボタンと、
を備え、
上記変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額が表示されるカード式遊技機」である、
点において一致し、
ア・情報表示手段に表示されるカードに関する残金額データが、
前者は、度数情報である、
のに対し、
後者は、金額である、
イ・前者においては、表示切換信号を発生する表示切換ボタンを1つ備え、上記表示切換信号に基づいて情報表示手段に表示されている度数情報を当該度数情報以外の所要情報に切換表示する、
のに対し、
後者においては、表示切換信号を発生する表示切換ボタンを3つ備え、上記表示切換信号に基づいて玉情報表示ディスプレイ7に所要情報を切換表示する、
ウ・変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額が、
前者は、表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報に含まれる、
のに対し、
後者は、変換ボタンの上部に表示される、
エ・表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報に、
前者が、遊技媒体貸出装置に挿入されているカードが当該遊技媒体貸出装置に挿入された時点の当初金額データの度数情報を含む、
のに対し、
後者が、かかる構成を備えていない、
点において相違しているものと認められる。
そこで、この相違点ア・〜エ・について検討する。
先ず、相違点ア・についてみると、
情報表示手段に度数情報を表示することは、
甲第5,6号証に記載された各発明の
「パチンコ台」、「パチンコ玉」、「カード玉貸機CP」及び「表示部102」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技機」、「遊技媒体」、「遊技媒体貸出装置」及び「情報表示手段」
に相当するものと認められるから、
例えば、甲第5,6号証に記載された各発明もそうなっているように、遊技機において従来周知の技術的事項にすぎない。したがって、後者が、情報表示手段に表示されるカードに関する残金額データとして、金額に代えて度数を用いることは、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきである。
次に、相違点イ・についてみるに、
要するにこの点は、表示切換ボタンが1つであるかどうか、また、所要情報の表示を1つの情報表示手段で行うかどうかの相違であると認められるところ、
甲第3号証に記載された発明の
「表示器16」、「複数の故障コード」、「順に表示する」及び「ベンドテストスイッチ21」
がその機能に照らし、
前者の
「情報表示手段」、「所要情報」、「切換表示可能な」及び「表示切換ボタン」
に相当するものと認められ、
また、
甲第4号証に記載された発明の
「表示板10」、「複数のモードメニュー」、「順次変える」及び「「モード」キー2」
がその機能に照らし、
前者の
「情報表示手段」、「所要情報」、「切換表示可能な」及び「表示切換ボタン」
に相当するものと認められるから、
甲第3号証及び甲第4号証に記載された各発明には、
「情報表示手段を備え、該情報表示手段に所定の表示切換信号に基づいて所要情報を切換表示可能な表示制御手段と、上記表示切換信号を発生する1つの表示切換ボタンと、を備える」という構成、
すなわち、
「表示切換ボタンが1つであり、また、所要情報の表示を1つの情報表示手段で行う」という構成、
が備わっているものと認められる。
もっとも、甲第3号証及び甲第4号証に記載された各発明は、カード式遊技機に関するものではないが、かかる構成は、甲第3号証に記載された発明が自動販売機に関するものであり、また、甲第4号証に記載された発明がプリンタ装置に関するものであることからも明らかなように、極めて汎用性のあるものであるから、かかる構成を後者に適用して、相違点イ・の後者の構成を相違点イ・の前者の構成に変えることは、当業者が格別創意工夫を要することではないというべきである。
また、相違点ウ・についてみるに、
要するにこの相違は、「変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額」が、前者は必要に応じて表示されるのに、後者は常時表示されるという相違であると認められるが、何れにせよ、「変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額」が表示されるということにおいては相違がないから、この相違点ウ・が格別の相違とは言い難い。
最後に、相違点エ・についてみるに、
相違点エ・の前者の構成は、甲第1号証〜甲第14号証に記載された各発明の何れにも備わっていないものと認められる。
申立人は、この点に関し、相違点エ・の前者の構成は、甲第8号証〜甲第10号証に開示されている旨主張するので検討するに、
甲第8号証に記載された発明の
「行先釦スイッチ15」
がその機能に照らし、
前者の
「変換ボタン」
に相当すると認められるから、
甲第8号証に記載された発明には、
「カード式券売機であって、
該券売機本体の前面側に設けられた操作パネルには、
金額データから切符への変換指令を上記カード式券売機に対して与える変換ボタンを少なくとも備え、
カードには、
カード使用の都度、残額記入部71に残額が順次印字されるカード式券売機」という構成が、
また、
甲第9号証に記載された発明の
「購入スイッチ28」及び「残高表示部26」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「変換ボタン」及び「情報表示手段」
に相当すると認められるから、
甲第9号証に記載された発明には、
「挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数の遊技媒体を貸し出すための処理を行なう遊技媒体貸出装置であって、
上記遊技媒体貸出装置の前面側には、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記遊技媒体貸出装置に対して与える変換ボタンと、
上記遊技媒体貸出装置およびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な情報表示手段と、
を少なくとも備え、
上記遊技媒体貸出装置には、
挿入されているカードに関する残金額データを上記情報表示手段に表示し、
上記カードには、
残高表示部12にパンチ穴、マーキング等で概ねの残高を表示する遊技媒体貸出装置」という構成が、
また、
甲第10号証に記載された発明には、
「カード給油システムであって、
金額またはその金額に対応した油量を記憶したカードを少なくとも備え、
該カードには、
給油毎に給油量等の給油内容を記録するカード給油システム」という構成が、
それぞれ備わっているものと認められるものの、
甲第8号証〜甲第10号証に記載された各発明の構成は、カードに、「残額」、「残高」及び「給油内容」等の履歴が表示されるというものであって、このような構成によれば、なるほど、カード自体を手に取って見ることで前回までの履歴を確認できるであろうけれども、このような構成は、カードを遊技媒体貸出装置に挿入したままで、カードが挿入された時点の当初金額データを確認できる、という相違点エ・の前者の構成とはほど遠いものであるから、相違点エ・の前者の構成が、甲第8号証〜甲第10号証に記載された各発明から容易に想到し得るとは到底いえない。
しかも、相違点エ・の前者の構成により、前者は、特許明細書の段落【0191】に記載された「遊技者等がカード挿入時に記憶されていた当初金額データと現在の残金額データを比較することで現在の使用金額を確認でき・・・る」及び「遊技者は安心して遊技を行うことができ、遊技者に対するサービスの向上を図ることができる」という効果を奏するものと認められる。
(4-2)本件発明2と甲第1号証〜甲第14号証に記載された各発明との対比及び判断
本件発明2(前者)と甲第1号証に記載された発明(後者)とを対比すると、
両者間には、上記(4-1)の所に記した相違点ア・〜エ・の他に、
オ・表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報に、
前者が、カードが挿入された遊技媒体貸出装置を識別する情報を含む、
のに対し、
後者が、かかる構成を備えていない、
という新たな相違が認められるところ、
甲第11号証及び甲第12号証に記載された各発明の
「パチンコ球」、「球排出装置4」、「パチンコ機1」、「球貸機能部2」、「金額選択操作部10」、「金額表示部8」及び「台番号」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「遊技媒体」、「遊技媒体排出装置」、「遊技機」、「遊技媒体貸出装置」、「変換ボタン」、「情報表示手段」及び「遊技媒体貸出装置を識別する情報」
に相当するものと認められ、
また、
甲第13号証に記載された発明の
「ステーション番号」及び「特定する」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
前者の
「情報」及び「識別する」
に相当するものと認められるから、
機器に、機器を識別する情報を表示すること自体は、甲第11号証〜甲第13号証に記載された各発明にも備わっているように、従来周知の技術的事項であるものと認められ、しかも、甲第11号証及び甲第12号証に記載された各発明は、そもそも遊技媒体貸出装置に、遊技媒体貸出装置を識別する情報が表示されているものであり、したがって、前者と甲第11号証〜甲第13号証に記載された各発明は、「情報」が、前者は必要に応じて表示されるのに、甲第11号証〜甲第13号証に記載された各発明は常時表示されるという若干の相違はあるものの、何れにせよ、「情報」が表示されるということにおいては相違がないのであるから、この相違点オ・の前者の構成は、後者に甲第11号証〜甲第13号証に記載された各発明を適用することにより、当業者が格別創意工夫を要することなく構成し得るものというべきである。
しかし、上記(4-1)の所に記したように、相違点エ・の前者の構成が後者には備わっていないから、前者が、甲第1号証〜甲第14号証に記載された各発明から容易に想到し得るとは到底いえない。
なお、上記(4-1)及び(4-2)の所で深く検討しなかった甲第2号証、甲第7号証及び甲第14号証に記載された各発明について、念のために触れると、
甲第2号証に記載された発明の
「球数表示部23」及び「精算ボタン12」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
本件発明1の
「情報表示手段」及び「表示切換ボタン」
に、
また、
甲第7号証に記載された発明の
「パチンコ玉」、「パチンコ玉貸機」、「貸玉金額を指定する選択ボタン8」及び「貸玉残回数表示器12」
がそれぞれの機能に照らし、それぞれ
本件発明1の
「遊技媒体」、「遊技媒体貸出装置」、「変換ボタン」及び「情報表示手段」
に、
また、
甲第14号証に記載された発明の
「内線番号」
がの機能に照らし、
本件発明2の
「情報」
に、
それぞれ相当するものと認められる。
(5)上記(2-2)における特許法第39条第2項違反の主張について
本件発明1及び2と甲第15号証の請求項1に係る発明とを対比すると、
本件発明1及び2と甲第15号証の請求項1に係る発明は、
「所要の排出指令に基づいて所要の遊技媒体を排出可能な遊技媒体排出装置を備えた遊技機本体と、該遊技機本体と一対一に構成され挿入されたカードに記憶されている金額データの範囲内で所要数の遊技媒体を貸し出すための処理を行なう遊技媒体貸出装置と、を備え、該遊技媒体貸出装置の貸出処理に基づき出力される信号に応じて所定数の貸遊技媒体を上記遊技機本体の遊技媒体排出装置から排出するようにしたカード式遊技機であって、
上記遊技機本体の前面側に設けられた操作パネルには、
金額データから貸遊技媒体への変換指令を上記遊技媒体貸出装置に対して与える変換ボタンと、
上記遊技媒体貸出装置およびこれに挿入されたカードに関わる情報を表示可能な情報表示手段と、
を少なくとも備え、
上記遊技媒体貸出装置には、
挿入されているカードに関する残金額データを上記情報表示手段に所要の度数情報で表示する一方、所定の表示切換信号に基づいて当該表示されている残金額データの度数情報を当該度数情報以外の所要情報に切換表示可能な表示制御手段と、
当該遊技媒体貸出装置の前面側に配設され、上記表示切換信号を発生する1つの表示切換ボタンと、
を備え、
上記表示制御手段により上記残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報には、
上記変換ボタンの1回の操作により貸遊技媒体に変換される変換金額データの情報が含まれることを特徴とするカード式遊技機」である、
点において一致し、
本件発明1と甲第15号証の請求項1に係る発明とは、
(5-1)表示制御手段により残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報に、
本件発明1が、遊技媒体貸出装置に挿入されているカードが当該遊技媒体貸出装置に挿入された時点の当初金額データの度数情報を含む、
のに対し、
甲第15号証の請求項1に係る発明が、かかる構成を備えていない、
点において相違し、
本件発明2と甲第15号証の請求項1に係る発明とは、
上記(5-1)に記した点、
及び
(5-2)表示制御手段により残金額データの度数表示から切り換えられる所要情報に、
本件発明2が、カードが挿入された遊技媒体貸出装置を識別する情報を含む、
のに対し、
甲第15号証の請求項1に係る発明が、かかる構成を備えていない、
点において相違しているものと認められる。
そして、相違点(5-2)の本件発明2の構成は、上記(4-2)の相違点オ・の所で判断したように、甲第15号証の請求項1に係る発明に甲第11号証〜甲第13号証に記載された各発明を適用することにより、当業者が格別創意工夫を要することなく構成し得るものというべきであるものの、相違点(5-1)の本件発明1の構成は、上記(4-1)の相違点エ・の所で判断したように、甲第8号証〜甲第10号証に記載された各発明から容易に想到し得ないのであるから、本件発明1及び2と甲第15号証の請求項1に係る発明が同一であるなどとは到底いえない。
(6)むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明の特許を取り消すことはできない。
又、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-07-23 
出願番号 特願2000-93646(P2000-93646)
審決分類 P 1 651・ 4- Y (A63F)
P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩崎 進吉村 尚土屋 保光  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡部 葉子
渡戸 正義
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3415555号(P3415555)
権利者 株式会社ソフィア
発明の名称 カード式遊技機  
代理人 大日方 富雄  

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