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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する B23K
審判 訂正 発明同一 訂正する B23K
審判 訂正 1項3号刊行物記載 訂正する B23K
審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する B23K
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B23K
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B23K
審判 訂正 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) 訂正する B23K
管理番号 1101784
審判番号 訂正2004-39071  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-04-09 
確定日 2004-06-22 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3152945号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3152945号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯

特許出願(特願平11-548053号、国内優先権主張の先の出願:特願平10-100141号(平成10年3月26日)、特願平10-324482号(平成10年10月28日)、特願平10-324483号(平成10年10月28日)) 平成11年 3月15日
設定登録 平成13年 1月26日
異議決定(一部取消) 平成15年 2月18日
出訴(平成15年(行ケ)112号) 平成15年 3月27日
訂正審判(訂正2003-39243号) 平成15年11月18日
訂正審判請求取下(訂正2003-39243号)
平成16年 4月12日
訂正審判(訂正2004-39071号) 平成16年 4月 9日

2.請求の要旨
本件審判の要旨は、特許第3152945号に係る明細書及び図面を審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正図面のとおり、すなわち、下記(1)〜(15)のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項a
特許明細書中、特許請求の範囲を下記の通り訂正する。
【請求項1】Cu0.3〜0.7重量%、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snからなる、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上したことを特徴とする無鉛はんだ合金。
【請求項2】Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項3】Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項4】請求項1に対して、さらにGe0.001〜1重量%を加えた無鉛はんだ合金。
(2)訂正事項b
表1のサンプル3、5、6及び7の欄、およびGaの縦の欄を削除する。
(3)訂正事項c
明細書第2頁第4行目の「・・・できるはんだ合金を・・・」を、「・・・できる、金属間化合物の発生を抑制し流動性が向上したはんだ合金を・・・」と訂正する。
(4)訂正事項d
明細書第2頁第7〜8行目の「、Cu0.1〜2重量%、好ましくは」を削除する。
(5)訂正事項e
明細書第2頁第8行目の「Ni0.002〜1重量%」を、「Ni0.04〜0.1重量%」と訂正する。
(6)訂正事項f
明細書第3頁第1行目の「Niを0.002〜1重量%」を、「Niを0.04〜0.1重量%」と訂正する。
(7)訂正事項g
明細書第3頁第16行目の「上限を1重量%に」を、「上限を0.1重量%に」と訂正する。
(8)訂正事項h
明細書第3頁第17行目の「0.002重量%以上であれば」を、「0.04重量%以上であれば」と訂正する。
(9)訂正事項i
明細書第3頁第19〜20行目の「0.002重量%に規定した。」を、「0.04重量%に規定した。」と訂正する。
(10)訂正事項j
明細書第4頁第2行目の「Niは0.002〜1重量%、Cuは0.1〜2重量%」を、「Niは0.04〜0.1重量%、Cuは0.3〜0.7重量%」と訂正する。
(11)訂正事項k
明細書第4頁第4〜5行目の「Cuの含有量が0.1〜2重量%」を、「Cuの含有量が0.3〜0.7重量%」と訂正する。
(12)訂正事項l
明細書第4頁第5〜6行目の「Niを0.002〜1重量%」を、「Niを0.04〜0.1重量%」と訂正する。
(13)訂正事項m
明細書第4頁第7〜8行目の「Niの含有量が0.002〜1重量%」を、「Niの含有量が0.04〜0.1重量%」と訂正する。
(14)訂正事項n
明細書第4頁第9行目の「Cuを0.1〜2重量%」を、「Cuを0.3〜0.7重量%」と訂正する。
(15)訂正事項o
図1の記載のうち、ニッケルの含有量を示すY軸上の数値「0.002」を「0.04」と、「1」を「0.1」と、銅の含有量を示すX軸上の数値「0.1」を「0.3」と、「2」を「0.7」と訂正する。

3.当審の判断
3-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2を削除し、特許明細書の訂正前の請求項3〜6の項番号を繰り上げ、新たに請求項1〜4とし、訂正後の請求項1〜4において引用する項番号を整合させるものである。また、上記訂正事項aは、特許明細書の訂正前の請求項3において発明特定事項を引用形式で記載していたのを改め、訂正後の請求項1において発明特定事項を独立形式で記載し、訂正前の請求項3に記載されていた「好ましくは」を削除するものである。更に、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書の「本発明において・・・NiはSnとCuが反応してできるCu6Sn5あるいはCu3Snのような金属間化合物の発生を抑制する作用を行う。このような金属間化合物は・・・合金溶融時に溶湯の中に存在して流動性を阻害し、はんだとしての性能を低下させる。」との記載(本件特許公報第2頁第3欄第44〜50行)、同明細書の「Niの添加量を・・・はんだ流動性の向上が確認でき」との記載(本件特許公報第2頁第4欄第16〜18行)及び同明細書の「SnにNiを単独で徐々に添加した場合には・・・Sn-Ni化合物の発生によって溶解時の流動性が低下するが、Cuを投入することによって・・・流動性が改善され」との記載(本件特許公報第2頁第4欄第24〜28行)に基づいて、訂正後の請求項1において無鉛はんだ合金に関し「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」点を限定するものである。
してみれば、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
上記訂正事項b〜oは、訂正後の請求項1の記載と発明の詳細な説明及び図面の記載との整合を図るものであるから、それぞれ、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
更に、上記訂正事項a〜oは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3-2.独立特許要件
(1)訂正発明
訂正請求された請求項1〜4に記載の発明は、本件審判請求書に添付した明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】Cu0.3〜0.7重量%、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snからなる、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上したことを特徴とする無鉛はんだ合金。
【請求項2】Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項3】Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項4】請求項1に対して、さらにGe0.001〜1重量%を加えた無鉛はんだ合金。」(以下、請求項1〜4に記載された発明をそれぞれ「訂正発明1」〜「訂正発明4」」という。)

(2)引用例
独立特許要件を判断するに当たり、本件特許に対する特許異議申立て事件である異議2001-72269号における取消理由において引用された以下の引用例について検討する。
・引用例1に係る先願明細書:特願平11-20044号(国内優先権主張の先の出願:特願平10-16141号(平成10年1月28日)、(特開平11-277290号公報))に係る先願明細書、(異議申立人株式会社村田製作所及び東京半田錫工業協同組合の提出した甲第1号証参照)
・引用例2:特開昭60-166192号公報(異議申立人株式会社村田製作所の提出した参考資料1参照)
・引用例3:「第4回エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術シンポジウム論文集」(1998年1月29日)溶接学会、第285〜288頁(異議申立人株式会社村田製作所の提出した参考資料2参照)
・引用例4:特開昭62-230493号公報(異議申立人株式会社村田製作所の提出した参考資料3参照)
・引用例5:「SHM会誌」Vol.9,No.4(1993年7月1日)(社)ハイブリッドマイクロエレクトロニクス協会、第39〜46頁(異議申立人株式会社村田製作所の提出した参考資料4参照)
・引用例6:特開平10-180480号公報(異議申立人大阪ハンダ工業協同組合の提出した甲第1号証参照及び東京半田錫工業協同組合の提出した甲第2号証参照)
・引用例7:特開平8-17836号公報(東京半田錫工業協同組合の提出した甲第3号証参照)
・引用例8:寺澤正男編「鉄鋼技術講座別巻 金属工学辞典」(昭和37年11月30日)第292頁(東京半田錫工業協同組合の提出した甲第4号証参照)
・引用例9:特公平3-28996号公報(東京半田錫工業協同組合の提出した甲第5号証参照)

引用例1に係る先願明細書及び引用例2〜9には、それぞれ、次の事項が記載されている。

引用例1(特願平11-20044号(特開平11-277290号公報))の先願明細書
(摘示1-ア)「Ni0.01ないし0.5重量%と、Cu0.5ないし2.0重量%ならびにSb0.5ないし5.0重量%のうち少なくとも1種と、残部Snと、を含有してなることを特徴とするPbフリー半田。」(特許請求の範囲の【請求項3】)、
(摘示1-イ)「本発明の目的は、半田付け時または半田付け後にエージングを行った時に電極喰われが生じにくく、・・・Pbフリー半田および半田付き物品を提供することにある。」(段落0005)、
(摘示1-ウ)「本発明のPbフリー半田において、Niの添加量は全体100重量%のうち0.01ないし0.5重量%が好ましい。Niの添加量が0.01重量%未満であると耐電極喰われ性が劣化し半田付け時の電極残存面積が低下する。他方、Niの添加量が0.05重量%(「0.05重量%」は「0.5重量%」の誤記と認める。)を超えると、Pbフリー半田の液相線温度が上昇し、・・・」(段落0011)、
(摘示1-エ)「本発明の主にSn-Ni-Cuの3元素・・・からなるPbフリー半田において、Cuの添加量は全体100重量%のうち0.5ないし2.0重量%であることが好ましい。Cuの添加量が0.5重量%未満であると、接合強度の改善効果が小さい。他方、Cuの添加量が2.0重量%を超えると、過剰にCu6Sn5,Cu3Sn等の硬くて脆い金属化合物が析出することで接合強度が低下する。また、Pbフリー半田の液相線温度が上昇し、・・・」(段落0012)、
(摘示1-オ)「本発明のPbフリー半田によれば、電極喰われしやすい遷移金属導体を含有する部品の接合に用いても、所望する半田付き性、接合強度、・・・を維持しつつ電極喰われを防ぎ、・・・」(段落0034)

引用例2(特開昭60-166192号公報)
(摘示2-ア)「Sn-10%Cu母合金、Sn-3%Ni母合金・・・を用い、第1表に示す組成の高融点ハンダを溶製し・・・」(第2頁右下欄第4〜7行)、
(摘示2-イ)第1表にはPb-Snハンダが記載されている(第3頁第1表)。

引用例3(「第4回エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装技術シンポジウム論文集」(1998年1月29日)溶接学会、第285〜288頁)
(摘示3-ア)「2-1はんだ合金、母材
ベース合金にはSn-3.5Ag、Sn-5Sbを用いた。・・・それぞれの合金は・・・ベース合金を黒鉛るつぼに溶融し、固体状の各元素・・・を添加、・・・鋳込み作成した。」(第285頁右欄第12行〜第286頁左欄第5行)

引用例4(特開昭62-230493号公報)
(摘示4-ア)「Sn・・・を主成分とする合金・・・にゲルマニウムを0.0001〜0.1wt%添加した事を特徴とするはんだ合金」(特許請求の範囲の請求項1)、
(摘示4-イ)「本発明の特徴であるゲルマニウムの微量添加ははんだ合金の溶融時の酸化物生成量を抑制するのみでなく・・・」(第2頁右下欄第18〜20行)

引用例5(「SHM会誌」Vol.9,No.4(1993年7月1日)(社)ハイブリッドマイクロエレクトロニクス協会、第39〜46頁)
(摘示5-ア)「Tab.3に示すGe入りはんだ合金はこのような冶金学的見地から開発されたもので、耐疲労性にすぐれた効果が得られるものと期待できる。このGe入りはんだ合金は、・・・135℃以下の温度領域での熱エージング条件下では結晶の粗大化が最も少なく・・・」(第43頁右欄第17〜23行)、
(摘示5-イ)Tab.3には、Ge入りはんだ合金の合金組成(wt%)がSn63/Ge0.1/Pbであることが記載されている。(第43頁Tab.3)

引用例6(特開平10-180480号公報)
(摘示6-ア)「 鉄(Fe)及びニッケル(Ni)のうち少なくとも1種を0.01〜4.99重量%、選択成分が0.01〜4.99重量%であって、その合計量が0.02〜5.0重量%、及び残部が錫(Sn)と不可避不純物からなる無鉛半田材料を用いて、電子部材と基板を、Ni被膜を介して接合した電子部品。」(特許請求の範囲の請求項5)、
(摘示6-イ)「電子部材と基板を半田付けする際にPb基半田材料を用いる場合、その接合性を向上させるためにNi、Cu等の被膜を介在させて半田付けすることが通常行われている。しかしながら、前記Sn基無鉛半田材料を用い、Ni被膜を介在させて半田付けを行った場合、Pb基半田材料を用いた時に得られたような接合性の向上が得られないという問題が生じてきた。
【発明が解決しようとする課題】
前述の従来事情に鑑み、本発明では組成が無鉛であり、Sn基であって、Ni被膜を介在させて半田付けすることによる接合性(以下Ni介在接合性という)を向上させる事が出来るSn基無鉛半田材料及びこれを用いてなる電子部品を提供することを目的とする。」(段落0005、段落0006)、
(摘示6-ウ)「Fe,Niのうち少なくとも1種を含有するSn基無鉛半田材料に於いて、Fe,Niのうち少なくとも1種の含有量が0.01重量%以上の時、0.01重量%未満と対比してNi介在接合性を大きく向上させることが出来る。この為、Fe,Niのうち少なくとも1種の含有量は0.01重量%以上である事が必要である。この中でもFe,Niのうち少なくとも1種の含有量が0.1重量%以上の時Ni介在接合性は一段と向上してくる為、好ましくは0.1重量%以上である。
Fe,Niのうち少なくとも1種の含有量が5重量%を超える時、5重量%以下と対比してNi介在接合性は低下してくる。この為、Fe,Niのうち少なくとも1種の含有量は5重量%以下であることが必要である。」(段落0019、段落0020)、
(摘示6-エ)「本発明の無鉛半田材料に於いては、Snの中に、Fe,Niのうち少なくとも1種を0.01〜4.99(「4/99」は「4.99」の誤記と認める。)重量%含有する限り、Fe,Ni以外の選択成分を0.01〜4.99重量%含有し、その合計量が0.02〜5重量%であれば、Ni介在接合性を向上させる事が出来る。・・・ 本発明において選択成分とは、Snの中に所定量のFe,Niのうち少なくとも1種を含有することで得られる効果(Ni介在接合性の向上)を失わせない機能を有する添加元素で、任意に含有させることができるいわゆる随伴元素(incidental elements) である。
本発明に係る選択成分としては、Zn,Si,Cu,P,Ag,Sb等が例示出来る。しかしFe,Ni以外の選択成分を含有しない方が、Ni介在接合性を向上させる為に好ましい。」(段落0023、段落0024)、

引用例7(特開平8-17836号公報)
(摘示7-ア)「半田材料の組成が下記〔組成I〕であり、ICチップAl電極上でリフローさせた後の剪断強度が19MPa以上であることを特徴とするICチップバンプ電極用半田ワイヤ。
〔組成I〕
Pb,Sn,Inの内少なくとも1種を主要元素とし、且つ、Cu(0.01〜5.0重量%),Ni(0.01〜5.0重量%),Zn(0.01〜5.0重量%)から選ばれる2種以上を含有する。」(特許請求の範囲の請求項1)、
(摘示7-イ)「本発明は上記従来事情に鑑み、ICチップAl電極上の半田バンプをリフロー処理するに際して、Al電極上に別工程で皮膜形成を行う工程を省略しても、リフロー処理による接合強度の劣化が小さい半田ワイヤ、バンプ電極及びその製造方法を提供せんとするものである。」(段落0005)、
(摘示7-ウ)「以下本発明の構成と作用についてさらに説明する。
〔半田材料〕
(1)Pb,Sn,Inの内少なくとも1種を主要元素とする。ここで主要元素とは50重量%以上含有されたものであり、好ましくは80重量%以上含有されたものである。
(2)本発明では上記主要元素に加えて、次の2種以上を含有することが必要である。
Cu(0.01〜5.0重量%)
Ni(0.01〜5.0重量%)
Zn(0.01〜5.0重量%)
半田材料の主要元素に対してCu,Ni,Znをこのように添加した合金半田は、Al電極上でリフローさせても半田バンプ材の剪断強度の劣化が小さく、いずれもリフロー前の剪断強度に対するリフロー後の剪断強度で表した剪断強度維持率を50%以上とすることが出来、リフロー後の剪断強度を19MPa以上に出来る。このため、接合強度は充分得られる。」(段落0009)、
(摘示7-エ)「(3)その他の成分
本発明においては半田材料を前記構成にすることに加えて、半田材料として通常含有される成分を含み得るものである。・・・」(段落0010)

引用例8(寺澤正男編「鉄鋼技術講座別巻 金属工学辞典」(昭和37年11月30日)第292頁)
(摘示8-ア)「中間合金・・・所定の合金組成のものを溶解配合して作るとき、最初から所要の組成のものを作らず、ある程度高濃度のものをまず作っておく。これを中間合金といい、更にこれをうすめて所要のものを作る。たとえば鉄に珪素やマンガンを入れる場合に、中間合金としてあらかじめ60〜80%のマンガンを含む鉄合金を作っておき、要求するときに溶融した鉄の中に所要の割合でこれをとかし込んで2%前後の珪素やマンガンを含んだ合金を作る。このようにして作ると、溶解時に均一組成のものを作りにくい場合でも、よく目的を果たすことができる。一般に合金を作るときはこのようにして作るのが常識である。」(第292頁左欄第15〜28行)、

引用例9(特公平3-28996号公報)
(摘示9-ア)「Sn又はPbあるいはその双方からなるはんだ・・・にゲルマニウムを0.0001〜0.1wt%添加したことを特徴とするはんだ合金」(特許請求の範囲第1項)、
(摘示9-イ)「・・・ゲルマニウムの微量添加ははんだ合金の溶融時の酸化物生成量を抑制する・・・」(第2頁第4欄第15〜17行)

(3)特許法第29条の2についての検討
訂正発明1は、引用例1に係る先願明細書に記載された発明と同一であるか、また、訂正発明2〜4は、引用例2〜4に記載のものを考慮すれば、引用例1に係る先願明細書に記載された発明と同一であるか否かについて検討する。
(a)訂正発明1〜4に係る出願及び引用例1に係る出願の国内優先権の効果について
訂正発明1〜4に係る特許の出願は、3つの優先権主張の基礎とされた先の出願に基づいて優先権を主張した出願であるところ、訂正発明1の「流動性が向上した」との発明特定事項は、当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付したいずれの明細書にも記載されておらず、更に、訂正発明2〜4は訂正発明1を引用する発明であるから、訂正発明1〜4に係る特許の出願は、国内優先権の効果が認められず、平成11年3月15日に出願されたものである。
これに対して、引用例1の先願明細書の摘示1-ア、摘示1-イ、摘示1-ウ、摘示1-エ及び摘示1-オの記載事項は、それぞれ、引用例1に係る出願の優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1、段落0005、段落0010、段落0012及び段落0036に記載されているから、引用例1に係る出願は、摘示1-ア乃至摘示1-オの記載事項について、優先権の主張の基礎とされた先の出願である特願平10-16141号の出願の時、すなわち、平成10年1月28日にされたものとみなされ、引用例1に係る出願について出願公開された時に先の出願について出願公開がされたものとみなされる。
してみれば、引用例1に係る出願は、摘示1-ア乃至摘示1-オの記載事項について、特許法第29条の2で規定する「(本件特許の)特許出願の日前の他の特許出願であ」るとみなされる。
(b)引用例1の先願明細書記載の発明
引用例1の先願明細書には、「Ni0.01ないし0.5重量%と、Cu0.5ないし2.0重量%ならびにSb0.5ないし5.0重量%のうち少なくとも1種と、残部Snと、を含有してなることを特徴とするPbフリー半田。」が記載されており(摘示1-ア)、択一成分のCu乃至SbのうちからCuを選択すると、引用例1の先願明細書には、「Ni0.01ないし0.5重量%と、Cu0.5ないし2.0重量%と、残部Snと、を含有してなることを特徴とするPbフリー半田」が記載されていると云える(以下、「引用例1の先願明細書発明」という)。
(c)対比・判断
訂正発明1と引用例1の先願明細書発明を対比する。
引用例1の先願明細書発明の「Pbフリー半田」は訂正発明1の「無鉛はんだ合金」と言い換えることができるから、両者は、「Cu0.5〜0.7重量%、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snからなる無鉛はんだ合金」である点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:訂正発明1は、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した無鉛はんだ合金であるのに対し、引用例1の先願明細書発明は、無鉛はんだ合金がこのような性質を有していない点。
そこで、相違点について検討する。
訂正発明1の無鉛はんだ合金は、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金であり、錫基の無鉛はんだ合金において、Niの添加量の下限を0.04重量%に限定することにより、SnとCuが反応してできるCu6Sn5あるいはCu3Snのようなはんだの流動性を阻害する金属間化合物の発生を抑制し、はんだの流動性を向上させ、更に、Cuの添加量の下限を0.3重量%と限定することにより、Sn-Ni化合物の発生によりはんだの流動性が低下するのを阻止して流動性を改善したというものである(特許公報第2頁第3欄第35〜37行、第3欄第44〜50行、第4欄第16〜18行、第4欄第24〜28行参照)。
これに対して、引用例1の先願明細書発明は、半田付き性、接合強度を維持しつつ電極喰われを防ぐことのできるPbフリー半田であり(摘示1-オ参照)、Pbフリー半田においてNiを0.01重量%以上添加することは、耐電極喰われ性を改善するためのものであって(摘示1-ウ参照)、Niの添加による金属間化合物の発生を抑制するためのものではない。また、Pbフリー半田においてSbとの選択成分であるCuを0.5重量%以上添加することは、Pbフリー半田の接合強度を改善するためのものであって(摘示1-エ参照)、Cuの添加による金属間化合物の発生を抑制するためのものではない。
してみれば、引用例1の先願明細書発明は、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金であると全く云えないから、訂正発明1は、上記相違点で、引用例1の先願明細書発明と相違するといわざるを得ない。
したがって、訂正発明1は、引用例1の先願明細書発明と同一であるとすることはできない。
(d)訂正発明2〜4について
訂正発明2は、訂正発明1を引用し、Sn-Cuの「溶解母合金」に対してNiを添加した点を発明特定事項として付加するものである。
引用例2には、「Sn-Cu母合金」を用いハンダを溶製することが記載されており(摘示2-ア参照)、また、引用例3には、「母合金」を溶融し固体状の元素を添加しはんだ合金を製造することが記載されている(摘示3-ア参照)ことから、Sn-Cuの「溶解母合金」に対してNiを添加することが本件特許の出願前慣用手段であるとしても、訂正発明2は、訂正発明1を引用する発明であるから、訂正発明1と同様の理由により引用例1の先願明細書発明と同一であるとすることはできない。
訂正発明3は、訂正発明1を引用し、Sn-Niの「溶解母合金」に対してCuを添加した点を発明特定事項として付加するものである。
引用例2には、「Sn-Ni母合金」を用いハンダを溶製することが記載されており(摘示2-ア参照)また、引用例3には、「母合金」を溶融し固体状の元素を添加しはんだ合金を製造することが記載されている(摘示3-ア参照)ことから、Sn-Niの「溶解母合金」に対してCuを添加することが本件特許の出願前慣用手段であるとしても、訂正発明3は、訂正発明1を引用する発明であるから、訂正発明1と同様の理由により引用例1の先願明細書発明と同一であるとすることはできない。
訂正発明4は、訂正発明1を引用し「さらにGe0.001〜1重量%を加えた」点を発明特定事項として付加するものである。
引用例4には、Snを主成分とする合金にゲルマニウムを0.0001〜0.1wt%添加したはんだ合金が記載されており(摘示4-ア参照)、また、引用例5には、Ge入りはんだ合金が記載されているが(摘示5-ア参照)、引用例5に記載のものは、Sn63wt%、Ge0.1wt%、残部Pbの合金組成を有するものであり(摘示5-イ参照)、引用例5に記載のGe入りはんだ合金は無鉛はんだ合金でないから、引用例4及び5に記載のものから、訂正発明4の発明特定事項である「Ge0.001〜1重量%を加えた無鉛はんだ合金」が本件特許の出願前周知のものであると必ずしも云えず、更に、訂正発明4は、訂正発明1を引用する発明であるから、訂正発明1と同様の理由により引用例1の先願明細書発明と同一であるとすることはできない。
以上のとおりであるので、訂正発明2〜4は、引用例2〜5に記載のものを考慮しても、それぞれ、引用例1の先願明細書発明と同一であるとすることはできない。

(4)新規性及び進歩性についての検討
(A)引用例6について
3-2.(3)(a)で前示したように訂正発明1〜4に係る特許の出願は、国内優先権の効果が認められず、平成11年3月15日に出願されたものであるから、引用例6は、訂正発明1〜4に係る特許の特許出願前に頒布された刊行物である。
そこで、訂正発明1は、引用例6に記載された発明であるか、また、引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。
(a)引用例6記載の発明
引用例6には、Fe及びNiのうち少なくとも1種を0.01〜4.99重量%、選択成分が0.01〜4.99重量%であって、その合計量が0.02〜5.0重量%、及び残部がSnと不可避不純物からなり、Ni介在接合性(Ni被膜を介在させて半田付けすることによる接合性)を向上させた無鉛半田材料が記載されている(摘示6-ア、摘示6-イ参照)。
引用例6に記載の半田材料において、択一成分のFe乃至NiのうちからNiを選択し、更に、摘示6-エによれば、「選択成分」とは、Ni介在接合性の向上を劣化させない添加元素で、任意に含有させることができる随伴元素のことであり、Zn,Si,Cu,P,Ag,Sb等であることが示されているから、選択成分としてCuを選択すると、
引用例6には、せいぜい、「Niを0.01〜4.99重量%、Cuが0.01〜4.99重量%であって、その合計量が0.02〜5.0重量%、及び残部がSnと不可避不純物からなり、Ni介在接合性を向上させた無鉛半田材料」が記載されていると云える(以下、「引用例6発明」という。)。
(b)対比・判断
訂正発明1と引用例6発明を対比する。
引用例6発明の「無鉛半田材料」は訂正発明1の「無鉛はんだ合金」と言い換えることができるから、両者は、「Cu0.3〜0.7重量%、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snからなる無鉛はんだ合金」である点で一致し、次の点で相違している。
相違点:訂正発明1は、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した無鉛はんだ合金であるのに対し、引用例6発明は、Ni介在接合性を向上させた無鉛はんだ合金である点。
そこで、相違点について検討する。
3-2.(3)(c)で前示したように、訂正発明1の無鉛はんだ合金は、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金であり、錫基の無鉛はんだ合金において、Niの添加量の下限を限定することにより、SnとCuが反応してできるCu6Sn5あるいはCu3Snのようなはんだの流動性を阻害する金属間化合物の発生を抑制し、はんだの流動性を向上させ、更に、Cuの添加量の下限を限定することにより、Sn-Ni化合物の発生によりはんだの流動性が低下するのを阻止して流動性を改善したものである。
これに対して、引用例6発明は、Ni被膜を介在させて半田付けすることによる接合性、すなわち、Ni介在接合性を向上させたSn基無鉛半田材料であり(摘示6-イ参照)、無鉛半田材料において、Snに、Niを0.01〜4.99重量%含有する限り、Ni介在接合性の向上を劣化させない随伴元素であるCuを0.01〜4.99重量%含有し、その合計量が0.02〜5重量%であれば、Ni介在接合性を向上させることができるというものであるから(摘示6-エ参照)、引用例6発明は、錫基の無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性を向上させたものでは全くない。
更に、引用例6発明は、Sn基無鉛半田材料においてNi介在接合性の向上のためにNiの添加量及び随伴元素のCuの添加量を限定するというものであるから、錫基の無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性の向上のためにNi及びCuの添加量を規制した訂正発明1とNi及びCuの作用が全く相違する。
そして、引用例6には、錫基の無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性を向上させるためにNi及びCuの添加量を規制する点を示唆する記載が全くない。
してみれば、訂正発明1の相違点は、引用例6発明から容易に想到しえたものであるとすることができない。
したがって、訂正発明1は、引用例6に記載された発明であるとすることができず、また、訂正発明1は、引用例6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。

(B)引用例7〜9について
訂正発明1は、引用例7に記載された発明であるか、引用例7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か、また、訂正発明2及び3は、引用例7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否か、訂正発明4は、引用例7及び9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて検討する。
(a)引用例7記載の発明
引用例7には、Pb,Sn,Inの内少なくとも1種を主要元素とし、且つ、Cu(0.01〜5.0重量%),Ni(0.01〜5.0重量%),Zn(0.01〜5.0重量%)から選ばれる2種以上を含有し、ICチップAl電極上でリフローさせた後の剪断強度が19MPa以上であるICチップバンプ電極用半田ワイヤが記載されており(摘示7-ア参照)、また、該半田ワイヤにおける主要元素とは好ましくは80重量%以上含有された元素であることが記載されている(摘示7-ウ参照)。
そこで、引用例7に記載の半田ワイヤにおいて、択一的な主要元素であるPb,Sn及びInからSnのみを選択し、択一成分のCu,Ni及びZnからCu及びNiを選択し、更に、Sn、Cu及びNi以外の成分であって、半田材料として通常含有される成分を含有しないものを考慮すると、
引用例7には、せいぜい、「0.01〜5.0重量%Cu,0.01〜5.0重量%Niを含有し、残部が主要成分のSnからなり、ICチップAl電極上でリフローさせた後の剪断強度が19MPa以上であるICチップバンプ電極用半田ワイヤ」が記載されていると云える(以下、「引用例7発明」という)。
(b)対比・判断
訂正発明1と引用例7発明を対比する。
引用例7発明の「半田ワイヤ」は訂正発明1の「はんだ合金」と言い換えることができるから、引用例7発明は、「0.01〜5.0重量%Cu及び0.01〜5.0重量Niを含有し、残部が主要元素のSnからなり、ICチップAl電極上でリフローさせた後の剪断強度が19MPa以上である無鉛はんだ合金」であると云える。
してみれば、両者は、「Cu0.3〜0.7重量%、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snからなる無鉛はんだ合金」で一致し、次の点で相違している。
相違点:訂正発明1は、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した無鉛はんだ合金であるのに対し、引用例7発明は、ICチップAl電極上でリフローさせた後の剪断強度が19MPa以上である無鉛はんだ合金である点。
そこで、相違点について検討する。
3-2.(3)(c)で前示したように、訂正発明1の無鉛はんだ合金は、「金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上した」無鉛はんだ合金であり、錫基の無鉛はんだ合金において、Ni及びCuの添加量の下限を限定することにより、金属間化合物の発生を抑制し、流動性を改善したものである。
これに対して、引用例7発明は、ICチップAl電極上の半田バンプをリフロー処理するに際して、Al電極上に皮膜形成を行う工程を省略しても、リフロー処理による接合強度の劣化が小さい半田であり(段落0005参照)、半田の主要元素のSnに対して、0.01〜5.0重量%Cu及び0.01〜5.0重量Niを添加することにより、Al電極上でリフローさせても半田バンプ材の剪断強度の劣化が小さく、いずれもリフロー前の剪断強度に対するリフロー後の剪断強度で表した剪断強度維持率を50%以上とすることが出来、リフロー後の剪断強度を19MPa以上に出来、接合強度の劣化が少ない半田を得ることができるというものであるから(摘示7-イ、摘示7-ウ参照)、引用例7発明は、錫基の無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性を向上させたものでは全くない。更に、引用例7発明は、半田の主要元素のSnに対して、0.01〜5.0重量%Cu及び0.01〜5.0重量Niを添加することによりリフロー後の接合強度の劣化が少ない半田が得られるというものであるから、錫基の無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性の向上のためにNi及びCuの添加量を規制した訂正発明1とNi及びCuの作用が相違する。
そして、引用例7には、錫基の無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性を向上させるためにNi及びCuの添加量を規制する点が全く示唆されていない。
してみれば、訂正発明1の相違点は、引用例7発明から容易に想到しえたものであるとすることができない。
したがって、訂正発明1は、引用例7に記載された発明であるとすることができず、また、訂正発明1は、引用例7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
(c)訂正発明2〜4について
訂正発明2は、訂正発明1を引用し「Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した」点を発明特定事項として付加するものであり、また、訂正発明3は、訂正発明1を引用し「Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した」点を発明特定事項として付加するものである。
引用例8には、合金を溶製するとき予め中間合金を作っておき、この中間合金を用いて合金を溶製することが記載されているにすぎず(摘示8-ア参照)、引用例8には、無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性を向上させるためにNi及びCuの添加量を規制する点が示唆されていないから、訂正発明2乃至3は、訂正発明1と同様な理由により、引用例7及び8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。
次に、訂正発明4は、訂正発明1を引用し「さらにGe0.001〜1重量%を加えた」点を発明特定事項として付加するものである。
引用例9には、Snからなるはんだにゲルマニウムを0.0001〜0.1wt%添加することによりはんだ合金の溶融時の酸化物生成量を抑制することが記載されているが(摘示9-ア、摘示9-イ参照)、引用例9には、無鉛はんだ合金において金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上させるためにNi及びCuの添加量を規制する点が示唆されていないから、訂正発明4は、訂正発明1と同様な理由により、引用例7及び9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、訂正発明1〜4は、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明である。

4.むすび
したがって、本件審判請求は、特許法特許法126条第1項ただし書第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3乃至第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
無鉛はんだ合金
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu0.3〜0.7重量%、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snからなる、金属間化合物の発生を抑制し、流動性が向上したことを特徴とする無鉛はんだ合金。
【請求項2】
Sn-Cuの溶解母合金に対してNiを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項3】
Sn-Niの溶解母合金に対してCuを添加した請求項1記載の無鉛はんだ合金。
【請求項4】
請求項1に対して、さらにGe0.001〜1重量%を加えた無鉛はんだ合金。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、新規な無鉛はんだ合金の組成に関するものである。
背景技術
従来からはんだ合金において鉛は錫を希釈して流動性およびヌレ特性を改善する重要な金属であるとされていた。しかし、最近では、はんだ付けを行なう作業環境、はんだ付けされた物品を使うときの使用環境、およびはんだを廃棄するときの地球環境などを考慮すると、毒性の強い重金属である鉛の使用を回避するのが好ましいという観点から、はんだにおいて鉛合金を避ける傾向が顕著である。
ところで、いわゆる無鉛はんだ合金を組成する場合であっても、合金自体が相手の接合物に対してヌレ性を有していることが不可欠であるから、このような性質を有する錫は合金母材としては不可欠である。従って、無鉛はんだ合金としては、錫の特性を十分に活かし、かつ従来の錫鉛共晶はんだに劣らない接合信頼性を発揮させることができる添加金属をどの範囲で特定するかということが非常に重要になる。
そこで、本発明では無鉛でかつ錫を基材としたはんだ合金を開発し、工業的に入手しやすい材料で、従来の錫鉛共晶はんだにも劣ることがなく、強度が高く安定したはんだ継手を構成することができる、金属間化合物の発生を抑制し流動性が向上したはんだ合金を開示することを目的としたものである。
発明の開示
本発明では、上記目的を達成するためのはんだ合金として、Cu0.3〜0.7重量%に、Ni0.04〜0.1重量%、残部Snの3元はんだを構成した。この成分中、Snは融点が約232℃であり、接合母材に対するヌレを得るために必須の金属である。ところが、Snのみでは鉛含有はんだのように比重の大きい鉛を含まないので、溶融時には軽くふわふわした状態になってしまい、噴流はんだ付けに適した流動性を得ることができない。又、結晶組織が柔らかく機械的強度が十分に得られない。従って、Cuを加えて合金自体を強化する。CuをSnに約0.7%加えると、融点がSn単独よりも約5℃低い約227℃の共晶合金となる。又、はんだ付け中にリード線などで通常用いられる母材であるCuの表面からCuが溶出するという銅食われを抑制する機能も果たす。ちなみに、錫鉛共晶はんだにおける銅のくわれ速度と比較すると、260℃のはんだ付け温度において上記Cuを添加した場合には約半分程度の速度に抑制される。又、銅くわれを抑制することは、はんだ付け界面における銅濃度差を小さくして、脆い化合物層の成長を遅らせる機能も果たすことになる。
また、Cuの添加はディップはんだ付け工法で長期使用した場合のはんだ自身の急激な成分変化を防止する機能も発揮する。
Cuの添加量としては、0.3〜0.7重量%が最適であり、これ以上Cuを添加すればはんだ合金の融点が再び上昇する。融点が上昇するとはんだ付け温度も上げなければならないので、熱に弱い電子部品には好ましくはない。しかし、一般的なはんだ付け温度の上限を考慮すると、300℃程度まで許容範囲ということができる。そして、液相温度が300℃の場合にはCuの添加量は約2重量%である。そこで、最適値と限界値を上述した通りに設定した。
本発明において重要な構成は、Snを主としてこれに少量のCuを加えるだけでなく、Niを0.04〜0.1重量%添加したことである。NiはSnとCuが反応してできるCu6Sn5あるいはCu3Snのような金属間化合物の発生を抑制する作用を行う。このような金属間化合物は融点が高く、合金溶融時に溶湯の中に存在して流動性を阻害し、はんだとしての性能を低下させる。そのためにはんだ付け作業時にはんだパターン間に残留すると、導体同士をショートさせるいわゆるブリッジとなることや、溶融はんだと離れるときに、突起状のツノを残すことになる。そこで、これを回避するためにNiを添加したが、Ni自身もSnと反応して化合物を発生させるが、CuとNiは互いにあらゆる割合で溶け合う全固溶の関係にあるため、NiはSn-Cu金属間化合物の発生に相互作用をする。本発明では、SnにCuを加えることによってはんだ接合材としての特性を期待するものであるから、合金中にSn-Cu金属間化合物が大量に形成されることは好ましくないものということができる。そこで、Cuと全固溶の関係にあるNiを採用し、CuのSnに対する反応を抑制する作用を行わしめるものである。
ただし、Snに融点の高いNiを添加すると液相温度が上昇する。従って、通常のはんだ付けの許容温度を考慮して添加量の上限を0.1重量%に規定した。また、Niの添加量を減らしていった場合、0.04重量%以上であればはんだ流動性の向上が確認でき、またはんだ接合性、およびはんだ継手としての強度などが確保されることが判明した。従って、本発明ではNiの添加量として下限を0.04重量%に規定した。
ところで、上記説明ではSn-Cu合金に対してNiを添加するという手順を基本として説明したが、逆にSn-Ni合金に対してCuを添加するという手順も成立する。SnにNiを単独で徐々に添加した場合には融点の上昇と共に、Sn-Ni化合物の発生によって溶解時に流動性が低下するが、Cuを投入することによって粘性はあるものの流動性が改善され、さらさらの状態になる。これら何れの手順から見ても、CuとNiが相互作用を発揮した結果、はんだ合金として好ましい状態に達することがわかる。即ち、Sn-Cu母合金に対してNiを添加する場合であっても、Sn-Ni母合金に対してCuを添加する場合であっても、何れも同様のはんだ合金とすることが可能である。
なお、CuとNi両者の含有比については、適正範囲が問題になるが、図1に示したようにNiは0.04〜0.1重量%、Cuは0.3〜0.7重量%の範囲で示された部分は全てはんだ継手として好ましい結果を示す。即ち、上述したように母合金をSn-Cu合金と考えた場合には、X軸に示されたCuの含有量が0.3〜0.7重量%の範囲で一定の値に固定されることになるが、その場合にはNiを0.04〜0.1重量%の範囲で添加量を変えた場合でも好ましい結果を示す。一方、母合金をSn-Ni合金と考えた場合にはY軸に示されたNiの含有量が0.04〜0.1重量%の範囲で一定の値に固定されることになるが、その場合であってもCuを0.3〜0.7重量%の範囲で添加量を変えた場合でも好ましい結果を示す。なお、これらの値については、Niの作用を低下させてしまう元素以外の不可避不純物が混入している場合でも同様であることはいうまでもない。
Geは融点が936℃であり、Sn-Cu合金中には微量しか溶解せず、凝固するときに結晶を微細化する機能を有する。また、結晶粒界に出現して結晶の粗大化を防止する。さらに、合金溶解時の酸化物生成を抑える機能も有する。ただし、1重量%を越えて添加するとコストが高くつくばかりでなく、過飽和状態になって均一に拡散しないので、実益はない。これを理由として上限を定めた。
図面の簡単な説明
図1は本発明の添加合金の適正範囲を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の組成を有するはんだ合金の物性を表に示す。サンプル組成は、発明者が本発明の無鉛はんだ合金の最適配分の1つであると考える、Cu0.6重量%、Ni0.1重量%、残部Snの合金を調整して用いた。
(溶融温度)液相温度約227℃、固相温度約227℃である。試験方法は示差熱分析器で昇温速度20℃/分で行った。
(比重)比重測定器によって約7.4を示した。
(室温25℃雰囲気における引張試験)破断強度が3.3Kgf/mm2、伸びが約48%であった。なお、従来のSn-Pb共晶はんだ合金は、ほぼ同じ条件で測定した強度は約4〜5Kgf/mm2であり、これと比較すると強度は低い数値を示した。しかし、本発明のはんだ合金の用途は主に、はんだ継手で接合する目的物としては比較的軽量の範疇である電子部品をプリント基板に実装することを想定しているものであり、この用途に用いる限りにおいては強度的にも満足できる範囲である。
(広がり試験)JIS Z 3197規格で測定したところ、240℃においては77.6%、260℃においては81.6%、280℃においては83.0%を示した。従来の錫鉛共晶はんだと比較すると広がり率は低いが、使用において問題となる数値ではなかった。
(ヌレ性試験)7×20×0.3mmの銅板を2%の希塩酸で酸洗いしたものを用い、浸漬速度15mm/秒、浸漬深さ4mm、浸漬時間5秒の条件下において行い、ヌレ性試験装置によって測定した。使用したフラックスはRAタイプである。結果としては、0クロス時間と最大ヌレ力をそれぞれ測定したところ、240℃では1.51秒、0.27N/m、250℃では0.93秒、0.33N/m、260℃では0.58秒、0.33N/m、270℃では0.43秒、0.33N/mであった。この結果から。共晶はんだと比較すると融点が高いのでヌレ始めが遅くはなるが、温度の上昇につれてヌレ速度が速くなっていることが分かる。実際にははんだ付け対象物は小さく熱容量が低いので、ヌレの遅れはさほど問題にはならない。
(接合強度試験)QFPリードピール試験によって、約0.9Kgf/ピンの強度を得た。ところが、破断部分を目視したところ、すべての基板と銅箔ランド間で起こっていたため、はんだ継手部は十分な強度を保っていることが確認できた。
(電気抵抗試験)直径0.8mmの線はんだ1メートルを4端子測定法によって測定したところ、0.13μΩの抵抗値を得た。抵抗値はSnの値に近かった。低い抵抗値であれば、電気の伝播速度が上がるため、高周波特性が向上し、音響特性も変化する。ちなみに、同様に測定した錫鉛共晶はんだの電気抵抗は0.17μΩであり、錫銀銅はんだでは0.15μΩであった。
(クリープ強度試験)片面紙フェノール基板に設けたランド径3mm、穴径1mmに0.8mm角の錫メッキ真鍮ピンをフローはんだ付けした。次に、重量1kgのおもりをステンレス線でぶら下げ、それぞれを恒温槽に吊るしてピンが抜け落ちるまでの時間を計測した。その結果、恒温槽の温度145℃では300時間を経過しても落下しなかった。また、180℃でも300時間を経過してもまだ落下しなかった。ちなみに錫鉛共晶はんだでは数時間から数分間程度で落下する。この結果から、鉛含有はんだの挙動とは全く異なり、クリープしにくいと共に、高温雰囲気下での信頼性が特に保証されることが判明した。
(ヒートショック試験)-40/80℃で各1時間のヒートショックを与えたところ、1000サイクル以上の耐久性を確認した。従来の錫鉛共晶はんだでは500〜600サイクルの耐久性であった。
(マイグレーション試験)JIS規格で規定されている2型櫛形試験片にRMAフラックスでディップはんだを行った。フラックスの残滓を洗浄し、リード線を端子に取り付けて抵抗値を測定して、これを初期値とし、恒温恒湿器に投入した後、それぞれに規定に直流電圧を印加して1000時間までの所定の時間単位で抵抗値を測定し、試験片を20倍のルーペで観察した。温度40℃、湿度95%でDC100Vを印加した場合も、温度85℃、湿度85%でDC50Vを印加した場合も、共に経時的な異常は見られなかった。これは従来の錫鉛共晶はんだと異なった挙動がなかったことを意味する。
(食われ試験)260±2℃で溶解しているはんだ槽中にRAタイプのフラックスを付けた直径0.18mmの銅線を浸漬し、槽中で揺らしながら線材が食われてなくなるまでの時間をストップウォッチで計測した。その結果、本実施形態のはんだでは約2分で食われたが、錫鉛共晶はんだでは約1分で食われてしまった。これは本実施形態では適量のCuが添加されていることに起因するものと推測される。即ち、Snの含有量が多いにもかかわらず、Cuの溶解速度は比較的遅いことで、当初から添加されているCuが食われを抑制したことが原因である。また、はんだの融点が共晶はんだと比較して約40℃も高いことが溶解速度を遅くしている一因であるとも推測される。
次に、別の組成についてそれぞれ融点および強度を測定した結果表1に示す。

この実験例からも明らかなように、発明の範囲外である比較例と比べても、全てのサンプルが強度的に満足いくものである。なお、従来の錫鉛共晶はんだ合金は、ほぼ同じ条件で測定した強度は約4〜5Kgf/mm2であり、これと比較すると全サンプルともに強度は低い数値を示した。しかし、本発明のはんだ合金の用途は上述したように主に、はんだ継手で接合する対象物としては比較的軽量の電子部品をプリント基板に実装することを想定しているものであり、この用途に用いる限りにおいては強度的にも満足できる範囲である。
伸びについては、Niの添加によって合金自体が良好な伸びを示したものと考えられる。
ところで、融点を2つの温度で示しているが、低いほうが固相温度であり、高いほうが液相温度を示す。一般的にこれらの温度差が小さいほうがはんだ付け後のはんだ固化中における部品の移動がなく、安定しているという点については、従来の錫鉛系はんだの場合と同様である。しかし何れが優れているかという点については一般的に決定できるものではなく、はんだ付け製品の用途などに応じて適宜適正な温度差を有するはんだ合金を採用すればよい。
はんだ付けにおいて重要な性質であるヌレ性については、活性力の弱いRMAタイプのフラックスによっても銅板に対するヌレが良好である。従って、このフラックスを採用することによってヌレの良好性を確保することができる。
なお、本発明における錫銅ニッケル3元はんだについては、先ずSn-Niの母合金を予め設け、Sn-Cuの溶解はんだ中に前記母合金を混合して均一に拡散して無鉛はんだ合金を得るという逐次的な手段を用いることがある。上述したように、Niは融点が高いので、Sn-Cu中に純Niを投入した場合には溶解しにくいうえに均一に拡散させることが困難である。そこで、本発明の合金を調整する際には、予めSnにNiが十分に混ざり合うように比較的高温で溶解して母合金を作製し、この母合金を、溶解したSn-Cu浴中に投入する。このようにすると比較的低温でNiがSn中に拡散した無鉛はんだ合金を得ることができる。
上述したように予めSn-Ni母合金を作ることは、他の好ましくない金属の混入を避けることにもつながっている。本発明では、NiがCuと全固溶し、かつCuとSnの合金によるブリッジの発生などを抑制できることに着目しているが、Ni独自の効果を阻害する金属が合金中に存在することは好ましくない。言い換えると、Cu以外の金属でNiと容易に相互作用する金属の添加については、本発明の意図するところではない。
産業上の利用可能性
本発明の無鉛はんだは、従来の錫鉛共晶はんだと比較すると融点が高くなるためにヌレ開始は遅れるものの、ヌレ始めると各種の表面処理に適応して界面の合金層を急速かつ確実に形成することができる。また、クリープ強度が非常に強く、大型重量部品や発熱性部品の取り付けにも十分適合することが可能である。しかも、従来のはんだ合金では根本的な問題とされていた銅食われが減少するので、リード線の耐久性が飛躍的に向上することになる。
さらに、その物性から電気特性、熱伝導性が高いので、電子部品の高速動作性や放熱性に優れており、音響特性も向上させることができる。
また、組成中にビスマスや亜鉛、インジウムを含んでいないため、電子部品の電極材などから混入してくる鉛を含んだメッキ層、またはSn-Agはんだ、Sn-BiはんだあるいはSn-Cuはんだなどの他の無鉛メッキなどに対しても異常な反応を引き起こすことがない。これは、従来の錫鉛はんだから本発明品への切り換え時におけるはんだ槽の継続利用や鉛リード線などに対しても異常なく適合できることをも意味するものである。
【図面】

 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2004-06-10 
出願番号 特願平11-548053
審決分類 P 1 41・ 161- Y (B23K)
P 1 41・ 856- Y (B23K)
P 1 41・ 113- Y (B23K)
P 1 41・ 841- Y (B23K)
P 1 41・ 121- Y (B23K)
P 1 41・ 851- Y (B23K)
P 1 41・ 853- Y (B23K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 深坂 俊司  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 三浦 悟
綿谷 晶廣
平塚 義三
奥井 正樹
登録日 2001-01-26 
登録番号 特許第3152945号(P3152945)
発明の名称 無鉛はんだ合金  
代理人 濱田 俊明  
代理人 濱田 俊明  
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